(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20221201BHJP
A23F 3/06 20060101ALI20221201BHJP
A23F 3/14 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A23F3/16
A23F3/06 F
A23F3/14
(21)【出願番号】P 2018246681
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 誠
(72)【発明者】
【氏名】冨田 佳祐
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108031(JP,A)
【文献】特許第5969717(JP,B1)
【文献】国際公開第2010/098391(WO,A1)
【文献】中川致之ほか,緑茶煎汁の化学成分と味との関係,日本食品工業学会誌,第20巻, 第4号,1973年04月,第119-125頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00~3/42
A23L 2/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶葉を焙煎して焙煎緑茶葉を得(この処理を「焙煎工程」と称する)、該焙煎緑茶葉を溶媒中で溶出することによって緑茶抽出液を得(この処理を「抽出工程」と称する)、該緑茶抽出液に乳成分を配合して乳含有緑茶飲料を得(この処理を「調合工程」と称する)、該乳含有緑茶飲料を容器に充填する(この処理を「容器充填工程」と称する)容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法において、
焙煎緑茶葉における、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が0.75~2.75質量%となり、且つ、焙煎緑茶葉における、没食子酸含有量に対する二糖含有量の質量比率(二糖/没食子酸)が3.50~6.50となるように焙煎を行い、且つ、
容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)が0.007~0.023となるように、緑茶抽出液の抽出を行うことを特徴とする容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法。
【請求項2】
容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン量が210~450ppmとなるように、緑茶抽出液の抽出を行うことを特徴とする請求項1に記載の容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法。
【請求項3】
容器詰乳含有緑茶飲料におけるテアニン量が3.10~4.90ppmとなるように、緑茶抽出液の抽出を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法。
【請求項4】
前記調合工程において、前記容器詰乳含有緑茶飲料における乳固形分が0.5質量%以上3.0質量%以下となるように乳成分を配合することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法。
【請求項5】
緑茶葉を焙煎して焙煎緑茶葉を得(この処理を「焙煎工程」と称する)、該焙煎緑茶葉を溶媒中で溶出することによって緑茶抽出液を得(この処理を「抽出工程」と称する)、該緑茶抽出液に乳成分を配合して乳含有緑茶飲料を得(この処理を「調合工程」と称する)、該乳含有緑茶飲料を容器に充填する(この処理を「容器充填工程」と称する)容器詰乳含有緑茶飲料の後味向上方法であって、
焙煎緑茶葉における、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が0.75~2.75質量%となり、且つ、焙煎緑茶葉における、没食子酸含有量に対する二糖含有量の質量比率(二糖/没食子酸)が3.50~6.50となるように焙煎を行い、且つ、
容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)が0.007~0.023となるように緑茶抽出液の抽出を行うことを特徴とする、容器詰乳含有緑茶飲料の後味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳成分を含有する茶飲料としては、旧来よりミルクティーとして愛飲されてきた紅茶飲料が広く知られており、容器詰乳含有紅茶飲料も市販され、その製造方法についての技術も多く開示されている。例えば、特許文献1には、乳含有紅茶飲料の製造方法として、紅茶茶葉を85℃の水で抽出する工程と、抽出後の茶葉と抽出液とを固液分離して茶抽出液を得る工程と、該茶抽出液に乳成分と混合する工程と、を有する容器詰乳含有茶飲料の製造方法が開示されている。
【0003】
最近では、紅茶に限らず、緑茶飲料を含む茶飲料についても、乳成分を含有する乳含有茶飲料が注目されるようになり、その製造方法について新たな技術が開示されている。
【0004】
例えば特許文献2には、液体に粉砕茶葉を供給し、粉砕茶葉入りの乳含有茶飲料を調製した後、前記乳含有茶飲料を固液分離することなく容器詰めして、容器詰乳含有茶飲料を製造する工程を含み、前記容器詰乳含有茶飲料は、前記粉砕茶葉を飲料1Lあたり1g以上6g以下含有し、かつ乳固形分を飲料中に8.0質量%未満含有する、容器詰乳含有茶飲料の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、液体に粉砕茶葉を供給し、粉砕茶葉入りの乳含有茶飲料を調製した後、前記乳含有茶飲料を固液分離することなく容器詰めして、容器詰乳含有茶飲料を製造する工程を含み、前記容器詰乳含有茶飲料は、前記粉砕茶葉を飲料1Lあたり1g以上6g以下含有し、かつ乳固形分を飲料中に8.0質量%未満含有する、容器詰乳含有茶飲料の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、没食子酸の含有量に対するカテキン類の含有量の比率が、3.5~8.0である茶抽出液を調製する抽出工程と、タンパク質の含有量に対するカテキン類の含有量の比率が、3.00×10-2~7.00×10-2となるように、前記茶抽出液と乳成分とを混合して、乳含有焙じ茶飲料を調製する混合工程と、を有し、前記乳成分が、牛乳、脱脂粉乳、及び全粉乳の少なくとも2種を含む、容器詰乳含有焙じ茶飲料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-139155号公報
【文献】WO2016/199673A1号公報
【文献】特開2017-65号公報
【文献】特開2018-108031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、消費者の食生活が大きく変わってきている。特に主食のご飯に関しては変化が著しく、近年の高齢化や単身世帯の増加を背景に、準備や後片付けが楽なパンを主食にする日本人が急速に増えている。しかしながら、パンを主食にするからといって昔からの食や味付けの好みが全て変わり、欧米スタイルのソーセージやベーコンなどの肉類と卵料理などの副食とを合わせて食するわけではなく、パン食の中にも和食の要素を取り入れたものが多く見受けられる。例えば近年では“納豆パン”や“しらすパン”といった従来の惣菜パンとも違った味わいの“和風パン”が生まれてきている。
【0009】
一般的に和食は、様々な素材を掛け合わせ複雑な味わいをつくる料理が多いため、一緒に飲用される飲料として、食事の余韻に浸りながら、口内をすっきりさせる緑茶が好まれている。
一方で、洋食は、素材そのままの味わいをシンプルな味付けで楽しむ料理が多かったため、一緒に飲用される飲料としては、一口一口をリセットさせることができる渋味や苦味のあるコーヒーや紅茶が好まれ、飲料の味や香りをより強くするためにミルクや果汁を混ぜながら飲用する場合もあった。
高齢化や孤食を背景に、パンを主食とする日本人が増えつつあるものの、パン食に対して和食の味わいを求める人々も多いのが事実である。
例えば、近年新たに生まれた“納豆パン”などの“和風パン”は、味わいは和食と洋食の良いところを足し合わせたパンであり、パンそのものの小麦の味わいが際立ちながらも納豆の発酵由来の複雑な味わいも重なり合い、シンプルな味わいながらも素材と素材が掛け合わさり、和食の味わいが垣間見られる。
しかし、このような新たな“和風パン”には、今まで飲用されていた和食に合う緑茶や、洋食に合う紅茶、コーヒーは合わないため、新たな飲料が望まれていた。
【0010】
上記のような日本人の食生活の変化や高齢化において生まれた新たなニーズに対応した飲料はまだなく、新たなニーズ、すなわち“和風パン”の味わいに適した新たなジャンルの飲料が求められている。
【0011】
そこで本発明は、食事の味わいを引き立てる味わいと香りを有しながらも、口中を洗い流すことが可能な容器詰乳含有緑茶飲料、云わば、上述したような、洋食を主体としながらも、繊細な和食の味わいを有する食事に合う新たな容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、緑茶葉を焙煎して焙煎緑茶葉を得(この処理を「焙煎工程」と称する)、該焙煎緑茶葉を溶媒中で溶出することによって緑茶抽出液を得(この処理を「抽出工程」と称する)、該緑茶抽出液に乳成分を配合して乳含有緑茶飲料を得(この処理を「調合工程」と称する)、該乳含有緑茶飲料を容器に充填する(この処理を「容器充填工程」と称する)容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法において、
焙煎緑茶葉における、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が0.75~2.75質量%となり、且つ、焙煎緑茶葉における、没食子酸含有量に対する二糖含有量の質量比率(二糖/没食子酸)が3.50~6.50となるように焙煎を行い、且つ、
容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)が0.007~0.023となるように、緑茶抽出液の抽出を行うことを特徴とする容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法を提案する。
【0013】
本発明はまた、緑茶葉を焙煎して焙煎緑茶葉を得(この処理を「焙煎工程」と称する)、該焙煎緑茶葉を溶媒中で溶出することによって緑茶抽出液を得(この処理を「抽出工程」と称する)、該緑茶抽出液に乳成分を配合して乳含有緑茶飲料を得(この処理を「調合工程」と称する)、該乳含有緑茶飲料を容器に充填する(この処理を「容器充填工程」と称する)容器詰乳含有緑茶飲料の後味向上方法であって、
焙煎緑茶葉における、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が0.75~2.75質量%となり、且つ、焙煎緑茶葉における、没食子酸含有量に対する二糖含有量の質量比率(二糖/没食子酸)が3.50~6.50となるように焙煎を行い、且つ
容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)が0.007~0.023となるように、緑茶抽出液の抽出を行うことを特徴とする、容器詰乳含有緑茶飲料の後味向上方法を提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提案する容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法及び容器詰乳含有緑茶飲料の後味向上方法によれば、容器詰乳含有緑茶飲料の後味を向上させることができるばかりか、適度な渋みを有しながらも、後味のキレが良く、食事の味わいを引き立てる味わいと香りを有しながらも、口中を洗い流すことが可能な容器詰乳含有緑茶飲料、云わば、洋食を主体としながらも、繊細な和食の味わいを有する食事に合う新たな容器詰乳含有緑茶飲料を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<<本乳含有緑茶飲料の製造方法>>
本実施形態の一例としての容器詰乳含有緑茶飲料の製造方法(「本乳含有緑茶飲料の製造方法」と称する)は、緑茶葉を焙煎して焙煎緑茶葉を得(この処理を「焙煎工程」と称する)、該焙煎緑茶葉を溶媒中で溶出することによって緑茶抽出液を得(この処理を「抽出工程」と称する)、該緑茶抽出液に乳成分を配合して乳含有緑茶飲料を得(この処理を「調合工程」と称する)、該乳含有緑茶飲料を容器に充填する(この処理を「容器充填工程」と称する)ことを特徴とする製造方法である。
【0017】
本乳含有緑茶飲料の製造方法は、上記工程を備えていれば、他の工程乃至他の処理を備えることは可能である。
【0018】
<原料茶葉>
本乳含有緑茶飲料の製造方法において、原料として用いる緑茶葉は、茶の品種、茶の栽培方法及び摘採時期を限定するものではない。例えば、一番茶、二番茶、三番茶、四番茶、秋冬番茶などを使用することもできる。また、茶の品種や、茶の栽培方法や、摘採時期などが異なる二種類以上の茶葉を組み合わせて使用することも可能である。
中でも、本乳含有緑茶飲料の製造方法の原料としては、飲用時に口に広がる甘味の点から、一番茶、二番茶及び三番茶が好ましく、中でも一番茶及び二番茶が特に好ましい。
かかる観点から、原料として用いる緑茶葉のテアニン量は0.1質量%~5質量%であるのが好ましく、中でも0.3質量%以上或いは3質量%以下、その中でも0.5質量%以上或いは2質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0019】
また、原料としての緑茶葉は、殺青済の茶葉、すなわち酵素失活された茶葉であればよく、中でも荒茶、煎茶、碾茶などを好適に例示することができる。これら2種類以上をブレンドして用いることもできる。
なお、当該荒茶とは、生葉を蒸し、炒り等によって殺青した後、揉捻及び乾燥を施して得られる茶葉であり、煎茶は、該荒茶を更に仕上げ加工して得られる茶葉であり、碾茶は、生葉を蒸し、炒り等によって殺青した後、揉捻せずに乾燥して得られる茶葉である。
【0020】
<焙煎工程>
緑茶葉の焙煎方法としては、例えば熱風焙煎、遠赤外線焙煎、開放釜焙煎、回転ドラム式焙煎、媒体焙煎など、当業者に公知の焙煎方法を適宜採用することができる。これらの方法を組み合わせて実施することもできる。
中でも、本乳含有緑茶飲料の製造方法においては、緑茶葉にかかる焙煎熱のかかり方の観点から、緑茶葉の外面に素早く焙煎熱が伝達される焙煎方法が好ましく、具体的には回転ドラム式焙煎、媒体焙煎、開放釜焙煎が好ましい。また、フライパンで炒るようにしてもよい。特に、高温短時間で緑茶葉の外面をムラなく焙煎できる回転ドラム式焙煎が好ましい。
【0021】
焙煎工程では、焙煎緑茶葉における、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が0.75~2.75質量%となるように焙煎条件を調整するのが好ましく、中でも1.00質量%以上或いは2.50質量%以下、その中でも1.20質量%以上或いは2.00質量%以下となるように焙煎条件を調整するのがさらに好ましい。
【0022】
また、焙煎工程では、焙煎緑茶葉における、没食子酸含有量に対する二糖含有量の質量比率(二糖/没食子酸)が3.50~6.50となるように焙煎条件を調整するのが好ましく、中でも4.00以上或いは6.00以下、その中でも4.30以上或いは5.50以下となるように焙煎条件を調整するのがさらに好ましい。
【0023】
焙煎緑茶葉における、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)を上記範囲とし、且つ、焙煎緑茶葉における、没食子酸含有量に対する二糖含有量の質量比率を上記範囲とすることにより、飲用直後に口中に広がる味わいと香ばしい香りによって食事を引き立てるといった効果を得ることができる。そして、そのように焙煎条件を調整するには、焙煎条件を強化することにより、単糖及び二糖の含有量が低減する点、没食子酸含有量は一般的に焙煎することによって増加する点、および、没食子酸は、焙煎手段への茶葉の投入量などの焙煎条件によっても増加量が変化する点などを考慮して、焙煎条件、すなわち焙煎手段への投入量、焙煎温度及び焙煎時間などを調整するのが好ましい。
【0024】
なお、本発明において、「単糖」とは、グルコース(ブドウ糖)、ガラクトース及びフルクトースを意味し、「単糖の含有量」とはこれらの合計含有量である。
「二糖」とは、ラクトース、スクロース、セロビオース及びマルトースを意味し、「二糖の含有量」とはこれらの合計含有量である。
【0025】
焙煎工程における焙煎温度は、上記のように、単糖及び二糖の合計含有量、及び、没食子酸含有量に対する二糖含有量の質量比率を満足することができれば特に限定するものではない。焙煎温度の目安を挙げるならば、150℃~370℃、中でも200℃以上或いは350℃以下、その中でも220℃以上或いは300℃以下を挙げることができる。
他方、焙煎時間についても、上記のように、単糖及び二糖の合計含有量、及び、没食子酸含有量に対する二糖含有量の質量比率を満足することができれば特に限定するものではない。焙煎時間の目安を挙げるならば、0.2分~10分であり、中でも0.4分以上或いは8分以下、その中でも0.5分以上或いは5分以下を挙げることができる。
【0026】
焙煎条件の具体例を挙げるならば、例えば、品温を180~230℃で30~90秒間維持するように焙煎する例、品温を130~180℃で500~600秒間維持するように焙煎する例、品温を270~320℃で20~50秒間維持するように焙煎する例などを挙げることができる。
【0027】
焙煎緑茶葉の品質劣化を防ぐ観点から、必要に応じて焙煎後に焙煎緑茶葉を冷却するようにしてもよい。この際の冷却方法は特に限定されるものではない。例えば放冷、送風冷却、水冷却などを例示することができる。
【0028】
(抽出工程)
焙煎緑茶葉の抽出方法は、特に限定するものではない。例えば浸漬抽出、ドリップ抽出、シャワーリングによる抽出など、公知の抽出方法を適宜採用することができる。
抽出に用いる溶媒としては、例えば純水、水道水、蒸留水、脱塩水、アルカリイオン水、湖水、海洋深層水、イオン交換水、脱酸素水、天然水、水素水或いは水溶性の有機化合物(例えば、アルコール類)や無機塩類を含む水などを用いることができる。
一例として、焙煎緑茶葉を水、温水又は熱水中に浸漬させて攪拌して抽出する方法を挙げることができる。
【0029】
抽出工程では、容器詰乳含有緑茶飲料における、異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)が0.007~0.023となるように、緑茶抽出液を抽出するのが好ましい。
容器詰乳含有緑茶飲料における、異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)を上記範囲に調整することにより、飲用後にさっぱり感を得ることができる。
かかる観点から、抽出工程では、容器詰乳含有緑茶飲料における上記質量比率(テアニン/異性化カテキン)が0.007~0.023となるように緑茶抽出液を抽出するのが好ましく、中でも0.008以上或いは0.020以下、その中でも0.009以上或いは0.019以下となるように緑茶抽出液を抽出するがさらに好ましい。
【0030】
抽出工程ではさらに、容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン含有量が210~450ppmとなるように調整するのが好ましい。
当該異性化カテキン含有量が210ppm以上であれば、渋みにより味が引き締まり、450ppm以下であれば、収斂味などの雑味が発生しづらいため、好ましい。
かかる観点から、抽出工程ではさらに、容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン含有量が210~450ppmとなるように調整するのが好ましく、中でも220ppm以上或いは440ppm以下、その中でも240ppm以上或いは430ppm以下とするのがさらに好ましい。
【0031】
抽出工程ではさらに、容器詰乳含有緑茶飲料におけるテアニン量が3.10~4.90ppmとなるように調整するのが好ましい。
当該テアニン量が3.10ppm以上とすれば、味全体により一層の厚みがでるから好ましく、4.90ppm以下とすれば、味全体に厚みが出過ぎることなくまとまりが良い味わいとなることから、好ましい。
かかる観点から、抽出工程ではさらに、容器詰乳含有緑茶飲料におけるテアニン量が3.10~4.90ppmとなるように調整するのが好ましく、中でも3.20ppm以上或いは4.70ppm以下、その中でも3.50ppm以上或いは4.50ppm以下となるように調整するのがさらに好ましい。
【0032】
上記のように容器詰乳含有緑茶飲料における(テアニン/異性化カテキン)の比率、テアニン量、異性化カテキン量を調整するためには、緑茶抽出液を抽出する際の抽出条件を強化、例えば抽出温度を上げたり、抽出時間を長くしたりすることにより、異性化カテキンの含有量が増加する一方、抽出条件を変化させてもテアニンの含有量はそれほど変化しないなどの点を考慮して、抽出条件、すなわち抽出温度及び抽出時間などを調整するのが好ましい。
なお、異性化カテキン量は、殺菌工程でも変化するが、殺菌条件は飲料の種類によって一定であるため、殺菌工程では、容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン量、並びに、上記質量比率(テアニン/異性化カテキン)を調整することは難しい。そのため、これらの数値を調整するためには、抽出工程における抽出条件を調整するのが好ましい。
【0033】
本発明において、「カテキン」とは、カテキン(C)、エピカテキン(EC)、ガロカテキン(GC)、エピガロカテキン(EGC)、カテキンガレート(Cg)、エピカテキンガレート(ECg)、ガロカテキンガレート(GCg)、及びエピガロカテキンガレート(EGCg)を意味し、このうち「異性化カテキン」とは、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)及びガロカテキンガレート(GCg)の4種類であり、「異性化カテキンの含有量」はこれら4種類の合計量の意味である。
【0034】
抽出工程における抽出温度、すなわち抽出に用いる溶媒(水)の温度は、上記数値範囲を満足することができれば特に限定するものではない。但し、目安としては、45℃~95℃である。
抽出時間、すなわち茶葉を溶媒(水)に接触させる時間は、上記数値範囲を満足することができれば特に限定するものではない。但し、目安としては、3~90分である。
【0035】
抽出条件の具体例を挙げるならば、例えば、50℃以上の水で10~120分間抽出する例、70~80℃の水で30~70分間抽出する例、80~90℃の水で20~60分間抽出する例などを挙げることができる。
【0036】
上記のように抽出して得られた緑茶抽出液は、必要に応じて急冷し、その後濾過するのが好ましい。急冷することにより、濁り原因物質の沈殿乃至懸濁を一層促進させることができ、懸濁及び沈殿の発生をより一層確実に防止できるばかりか、製造時間の短縮を図ることもできる。
この際、急冷方法は、特に限定されない。冷却効率等を鑑みれば、例えばプレート式熱交換機などを用いて約5~30℃程度に急冷するのがよい。
また、上記濾過の方法としては、遠心分離濾過と形状選別濾過とを組合せて行うのが好ましく、特に形状選別濾過を行うことが効果的である。
【0037】
<調合工程>
調合工程では、緑茶抽出液に乳成分を配合して乳含有緑茶飲料を得ると共に、各種成分量を調整するのが好ましい。
【0038】
乳成分としては、牛乳、脱脂粉乳及び全粉乳を挙げることができる。これらのうちの1種又は2種以上を乳成分として用いることができる。
そして、乳成分の配合量は、容器詰乳含有緑茶飲料における乳固形分が0.5質量%以上3.0質量%以下となるように調整するのが好ましく、中でも0.7質量%以上或いは2.7質量%以下、その中でも1.2質量%以上或いは2.2質量%以下となるように調整するのがさらに好ましい。
【0039】
緑茶抽出液に乳成分を配合する際、緑茶抽出液を、pH調整剤などを用いてpH6.0~6.8にした後に乳成分を配合するようにするのが特に好ましい。
【0040】
調合工程では、乳成分のほか、必要に応じて、純水、ミネラル成分のほか、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤、香料、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、乳化剤、保存料、甘味料、着色料、増粘安定剤、調味料、強化剤等の添加剤を単独又は組み合わせて配合するようにしてもよい。
【0041】
<容器充填工程>
次の容器充填工程では、上記のように調合して得た乳含有緑茶飲料を容器に充填すればよい。この際、充填方法としては、特に限定されず、従来公知の食品規格等に沿った方法で行うことができる。
【0042】
乳含有緑茶飲料を充填する容器としては、例えばガラス瓶、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、多層成形容器等のプラスチック容器、紙容器、金属容器等を挙げることができる。
【0043】
容器としてプラスチック容器を用いた場合は、25℃、湿度55%RHにおける容器の酸素透過量(cc/Day/500mLボトル)が、0.01~0.10であるのが好ましく、中でも0.015以上或いは0.08以下、その中でも0.02以上或いは0.06以下であるのがさらに好ましい。
【0044】
容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン量が210~450ppmとなるように、容器詰乳含有緑茶飲料を製造することが好ましい。
容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン量が210ppm以上であれば、味が引き締まるため好ましく、450ppm以下であれば、収斂味などの雑味が発生しづらいため好ましい。
かかる観点から、容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン量が210~450ppmとなるように製造することが好ましく、中でも220ppm以上或いは440ppm以下、その中でも240ppm以上或いは430ppm以下となるように製造するのがさらに好ましい。
このように異性化カテキン量を調整した容器詰乳含有緑茶飲料を製造するためには、緑茶抽出液を抽出する際の抽出条件を強化、例えば抽出温度を挙げたり、抽出時間を長くしたりすればよい。但し、この方法に限定するものではない。
【0045】
<殺菌>
本乳含有緑茶飲料の製造方法では、適宜殺菌処理を行うのが好ましい。殺菌処理は、製造工程のいずれかの段階で行ってもよい。
殺菌の条件は、食品衛生法に定められた条件と同等の効果が得られる方法を選択すればよい。例えば、容器として耐熱容器を使用する場合、レトルト殺菌を行えばよい。また、容器として非耐熱性容器を用いる場合、本容器詰乳含有茶飲料は、例えば、乳含有茶飲料を予めプレート式熱交換機等で高温短時間殺菌後、所定温度まで冷却し、熱時充填するか低温、たとえば10~50℃で無菌充填を行えばよい。
【0046】
<<語句の説明>>
本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0048】
<実施例1>
摘採後の茶葉(やぶきた種、静岡県産1番茶)を荒茶加工した緑茶葉(テアニン1質量%)40gを、サーモメーターを用いて300℃まで熱した25cm径のフライパンにて、1.5分間、該フライパンを振りながら焙煎加工を施して焙煎緑茶葉を得た。その焙煎緑茶葉を、茶葉12g、85℃の熱水300mL、抽出時間50分の条件にて抽出し、この抽出液をステンレスメッシュ(20メッシュ)で濾過して茶殻を取り除いた後、さらにステンレスメッシュ(80メッシュ)で濾過し、その濾液を、SA1連続遠心分離機(ウエストファリアー社製)を用いて流速300L/h、回転数10000rpm、遠心沈降液面積(Σ)1000m2の条件にて遠心分離して緑茶抽出液を得た。
この緑茶抽出液300mlに対して、牛乳(生乳、乳固形分12.6質量%)60ml及び脱脂粉乳10.2g(乳固形分96.8質量%)を加え、さらにアスコルビン酸、重曹を加えてpHを6.8に調整し、イオン交換水を加えて全量を1000mLに調整して乳含有緑茶飲料を得、この乳含有緑茶飲料を、高温短時間殺菌処理(137.5℃、30秒)した後、25℃に冷却し、ペットボトルに無菌環境で充填し、プラスチックキャップにて巻き締め、密封することにより、容器詰乳含有緑茶飲料(サンプル)を得た。
なお、表1中の原料使用量は、全量1000mLに調整した乳含有緑茶飲料に対して使用した茶葉の量を意味するものである。
【0049】
<実施例2-9>
実施例1において、表4及び表6に示したように製造条件を変更した以外、実施例1と同様にして、容器詰乳含有緑茶飲料(サンプル)を得た。
【0050】
<実施例10-13>
実施例1において、表4及び表6に示したように製造条件を変更した以外、実施例1と同様にして、容器詰乳含有緑茶飲料(サンプル)を得た。
【0051】
<実施例14、15>
実施例1において、表4及び表6に示したように製造条件を変更すると共に、緑茶抽出液に加える牛乳(生乳、乳固形分12.6質量%)及び脱脂粉乳(乳固形分96.8質量%)の添加量をそれぞれ以下のように変更以外、実施例1と同様に緑茶抽出液を得、容器詰乳含有飲料(サンプル)を得た。
実施例14では、牛乳(生乳、乳固形分12.6質量%)20ml、脱脂粉乳2.6g(乳固形分96.8質量%)を加えた。
実施例15では、牛乳(生乳、乳固形分12.6質量%)100ml、脱脂粉乳17.9g(乳固形分96.8質量%)を加えた。
【0052】
<比較例1-8>
実施例1において、表5及び表6に示したように製造条件を変更した以外、実施例1と同様にして、容器詰乳含有緑茶飲料(サンプル)を得た。
【0053】
<成分分析>
(異性化カテキン及び没食子酸)
異性化カテキン及び没食子酸の含有量については、これら分析対象成分の標準液を4段階の濃度に調製し、下記条件により高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置(Allianceシステム(Waters株式会社製))を用いて、各希釈標準液のクロマトグラムを得た。分析対象成分それぞれについて、得られた4つずつのクロマトグラムから、希釈標準液中の分析対象成分の濃度を横軸にし、ピーク面積を縦軸にして、分析対象成分それぞれについて検量線を作成した。同一の条件で、茶抽出液をサンプルとして導入し、クロマトグラムを記録し,ピーク面積(y)から検量線によって分析対象成分の量(x)を求め,試料中の濃度を算出した。
【0054】
なお、焙煎緑茶葉中の没食子酸を測定する場合は、下記の方法で試料を調整した。
1.ウォーターバスを80℃に設定した。
2.粉砕機に茶葉を適量取り、粉砕した。
3.粉砕した茶葉を1mm目のメッシュに通し、通過したものを4.以降用いた。
4.3.で得たサンプル100mgを100mlのメスフラスコにとり、70~80mlの沸騰水を加え、80℃のウォーターバスで30分間抽出した。
5.30分後流水で冷却した。
6.冷却後、蒸留水で100mlにメスアップした。
7.よく振ってから、NO.2ろ紙で濾過した。このとき最初の20mlは捨てた。
8.ろ過した液を試料として分析に使用した。
【0055】
=測定条件=
カラム:wakosil 3C18HG φ3.0×100mm(和光純薬工業株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:A液5%アセトニトリル(リン酸0.1%含有)
B液:50%アセトニトリル(リン酸0.1%含有)
流速:0.43mL/min
注入量:5μL
検出:UV230nm
グラジエントプログラム:
【0056】
【0057】
(糖類)
茶葉約3gを、ミキサーミル (MM 400,50mL粉砕ジャー, Retsch社) を用いて25Hz、1分間粉砕し、ビーカーへ約500mg量り取り、30mLの蒸留水を添加して室温で30分間超音波抽出した。これをメスフラスコへ移し、蒸留水で50mLに定容した。この抽出液を3500rpmで5分間遠心分離し、上清を回収した。これを各糖の終濃度が10mg/L以下になるように蒸留水で希釈した。その際、内部標準(ラクトース)を終濃度が10mg/Lとなるように添加した。この希釈液を固相抽出カートリッジ (Bond Elut(登録商標)SAX (100mg/1mL), Agilent社) に200μL通液し、通過液を廃棄し、続けて300μL通液し、通過液を回収した。この通過液を、シリンジフィルター (エキクロディスク13, 0.45μm、日本ポール社) で濾過し、イオンクロマトグラフィーに供し、単糖、二糖の含有量を測定した。
【0058】
=測定条件=
装置:DIONEX ICS-5000+(Thermo Fisher Scientific 社)
カラム:Dionex CarboPac(商標) PA1 4×250mm(分離用),4×50mm(ガード)(Thermo Fisher Scientific 社)
流速:1.0mL/min
カラム温度:30℃
検出:パルスドアンペロメトリ
移動相:
A液:200mM水酸化ナトリウム水溶液
B液:1M酢酸ナトリウム水溶液
C液:水
グラジエント条件:
【0059】
【0060】
各糖の標品を用いて作成した検量線によって注入試料中の濃度を求め、内標の実測値と理論値を用いた回収率の補正と希釈倍率による補正によって抽出液中の濃度を求めた。さらに、抽出に用いた茶葉量の値から茶葉中の各糖の含量を求めた。
抽出液中糖濃度[mg/L]=注入試料中糖濃度[mg/L]/(内標実測値[mg/L]/内標理論値[mg/L])×希釈倍率
茶葉中の糖含量[w/w%]=抽出液中糖濃度[mg/L]/(茶葉[mg]/0.05[L])×100
【0061】
(テアニン)
テアニンは、Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を以下の条件で操作し、検量線法により定量して測定した。
【0062】
サンプル調整法:
サンプルを適量秤りとり、蒸留水に懸濁後、フィルターろ過して分析に供した。
HPLC測定条件:
カラム :XBridge Shield RP18 3.0×100mm
温度 :40℃
注入量 :5μL
移動相A:50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)
移動相B:アセトニトリル
検出器 :Waters 2475マルチ波長蛍光検出器
検出波長:励起335nm エミッション450nm(アミノ酸、テアニンの測定方法)
グラジエントプログラム:
【0063】
【0064】
<pHの測定>
飲料のpHは、pH計(堀場製作所製、製品名F-52型・卓上pHメーター)を用いて測定した。
【0065】
<Brixの測定>
飲料のBrixは、光学屈折率計(アタゴ社製、製品名RX5000α-Bev)を用いて測定した。
【0066】
<官能評価試験>
実施例・比較例で得られた容器詰乳含有緑茶飲料(サンプル)について、緑茶飲料の開発・製造に従事する10人のパネラーを選出して官能評価試験を行った。
実施例・比較例で得られた容器詰乳含有緑茶飲料(サンプル)を5℃又は55℃に調整するか(試験系1)、又は25℃で9ヶ月間保管して(試験系2)、各パネラーは、それぞれの飲料について、納豆パンを食しながら飲用して、以下の評価方法に基づいて、次の基準に基づき点数評価を行い、最も多かった点数を表に示した。
5℃又は55℃に調整した場合(試験系1)の官能評価結果を表4及び表5に示し、25℃で9ヶ月間保管した場合(試験系2)の官能評価結果を表6に示した。
【0067】
なお、事前にパネラーに、各実施例・比較例で得られた容器詰乳含有緑茶飲料(サンプル)について、「飲用直後に感じる味」「飲用直後に感じる香り」及び「飲用後のさっぱり感」が最も良かったと感じるサンプルを選択してもらった。その結果、コントロールとして実施例9を選択した。
その後、パネラー間でコントロールの「飲用直後に感じる味」「飲用直後に感じる香り」及び「飲用後のさっぱり感」についてディスカッションを行ってもらうことで、コントロールにおける「飲用直後に感じる味」「飲用直後に感じる香り」及び「飲用後のさっぱり感」の共通認識を持つようにした。
【0068】
(飲用直後に感じる味)
1:飲料の味が、食事に強く影響した。
2:飲料の味が、食事に影響した。
3:飲料の味が、食事を引き立てた。
4:飲料の味が、やや強く食事を引き立てた。
5:飲料の味が、強く食事を引き立てた。
【0069】
(飲用直後に感じる香り)
1:香ばしい香りが弱く、食事に影響を与えなかった。
2:香ばしい香りがやや弱く、食事に影響を与えなかった。
3:香ばしい香りを感じ、食事を引き立てた。
4:香ばしい香りがやや強く、食事を引き立てた。
5:香ばしい香りが強く、食事を引き立てた。
【0070】
(飲用後のさっぱり感)
1:弱い
2:やや弱い
3:普通
4:やや強い
5:強い
【0071】
(評価 試験系1)
◎(very good):合計25点以上
○(good) :合計16~24点
×(very poor):合計15点以下若しくは1が一つでもある。
【0072】
(評価 試験系2)
◎(very good):合計12点以上
○(good) :合計6~11点
△(poor) :合計4~5点
×(very poor):合計3点以下
【0073】
【0074】
【0075】
(考察)
上記実施例・比較例、並びに、これまで発明者が行ってきた試験結果から、焙煎緑茶葉における、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が0.75~2.75質量%となり、且つ、焙煎緑茶葉における、没食子酸含有量に対する二糖含有量の質量比率(二糖/没食子酸)が3.50~6.50となるように焙煎を行い、さらに、容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)が0.007~0.023となるように、緑茶抽出液の抽出を行えば、容器詰乳含有緑茶飲料の後味を向上させることができるばかりか、適度な渋みを有しながらも、後味のキレが良く、食事の味わいを引き立てる味わいと香りを有しながらも、口中を洗い流すことが可能な容器詰乳含有緑茶飲料を得ることができることが分かった。
【0076】
また、試験結果から単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が1.00質量%になると、飲用直後に感じる味わいの中に僅かに焦げ味を感じはじめ、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が0.30質量%ほどまで減少すると、飲用直後に感じる味わいの中に食事の味わいに強く影響するほどの焦げ味を感じた。反対に、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が2.50質量%になると、飲用直後に感じる味わいの中に僅かに青みを感じはじめ、単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が3.00質量%ほどまで増加すると、飲用直後に感じる味わいの中に食事の味わいに強く影響するほどの青みを感じた。単糖及び二糖の合計含有量(単糖+二糖)が1.50質量%の実施例9においては、飲用直後に感じる味わいの中に焦げ味及び青みは一切感じず、食事の味わいを引き立てる香ばしい味わいを感じた。
【0077】
また、異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)が0.06になると、渋みが強すぎるため飲用後のさっぱり感に欠け、異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)がに0.024になると、渋みが弱すぎるため飲用後のさっぱり感に欠けた。異性化カテキン含有量に対するテアニン含有量の質量比率(テアニン/異性化カテキン)が0.013である実施例9においては、飲用後に強いさっぱり感を感じる適度な渋みを有していた。
【0078】
なお、上記の試験系1と同様に、官能評価時に納豆パン以外のパンや、その他食品を用いて試験を行なった結果、上記と同じような結果を得ることができた。
【0079】
【0080】
(考察)
上記実施例・比較例、並びに、これまで発明者が行ってきた試験結果から、実施例で得られた容器詰乳含有緑茶飲料(サンプル)はいずれも、経時の影響を受けずらい容器詰乳含有緑茶飲料であることが分かった。これに対し、比較例7及び8で得られた容器詰乳含有緑茶飲料(サンプル)の9ヶ月経時品を官能評価したところ、各々の5℃品や55℃品と比較にならないほど香味が劣化しており、雑味なども発生し製造直後とは味わいが大きく変化していた。
また、実施例3、4と実施例10~13との対比からすると、容器詰乳含有緑茶飲料における異性化カテキン量を210~450ppm、テアニン量を3.10~4.90ppmになるように緑茶抽出液の調整を行うことにより、経時の影響を受けづらい容器詰乳含有緑茶飲料を得られることが分かった。
【0081】
実施例14、15の結果から、乳固形分の含有量を増減しても常に香味が良好なサンプルが得られることが分かった。また、25℃、9ヶ月間の保管をした際には、乳固形分量が多い場合、または少ない場合ともに飲用直後の味わいや香りが劣化しやすい傾向であることが分かった。