(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】頂部燃焼炉
(51)【国際特許分類】
C21B 9/10 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
C21B9/10 303
(21)【出願番号】P 2018527947
(86)(22)【出願日】2016-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2016078926
(87)【国際公開番号】W WO2017093152
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-10-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-13
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509299064
【氏名又は名称】ポールワースドイチェラントゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】セイラー、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シャウブ、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ザドディン、オッセン
(72)【発明者】
【氏名】ルフト、ユリィ
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】宮部 裕一
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1680608(CN,A)
【文献】中国実用新案第201819218(CN,U)
【文献】特開2009-052123(JP,A)
【文献】中国実用新案第201288198(CN,Y)
【文献】特表2010-533241(JP,A)
【文献】特開昭51-133108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 9/02-9/06
C21B 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナーシェルにより囲まれており、円形断面を有するバーナーと;
空気をバーナーにバーナーの円形断面に対して接線方向に供給するために配置され、1つ以上の空気分配室に接続された複数の空気ノズルと;
ガスをバーナーにバーナーの円形断面に対して接線方向に供給するために配置され、1つ以上のガス分配室に接続された複数のガスノズルを包含する、頂部燃焼熱風炉のためのバーナー組立体であって、
空気ノズルは、空気ノズルの1つ以上のバーナーの垂直軸に対して傾斜した又は垂直な積層されたアレイとして配置されており、各傾斜した又は垂直な積層されたアレイは1つのバーナーの垂直軸に対して傾斜した又は垂直な空気分配室に接続され、ガスノズルは、ガスノズルの1つ以上のバーナーの垂直軸に対して傾斜した又は垂直な積層されたアレイとして配置されており、各傾斜した又は垂直な積層されたアレイは1つのバーナーの垂直軸に対して傾斜した又は垂直なガス分配室に接続され、バーナーシェルが隣接する傾斜した又は垂直な分配室間にバーナーの垂直軸に対して傾斜した又は垂直な上下連続壁部を包含するように、傾斜した又は垂直な空気分配室と傾斜した又は垂直なガス分配室がバーナーシェルの外周に沿って分布している、ことを特徴とするバーナー組立体。
【請求項2】
傾斜した又は垂直な空気及びガス分配室はバーナーシェル内に配置されている、請求項1に記載されたバーナー組立体。
【請求項3】
積層されたアレイ当たりのノズルの数は、2と20の間である、請求項1又は2に記載されたバーナー組立体。
【請求項4】
傾斜して積層されたアレイは、バーナーの垂直軸に対して、最大60°までの角度で傾斜している、請求項1から3のいずれかに記載されたバーナー組立体。
【請求項5】
円錐形シェルに囲まれかつバーナーの下に配置された円錐台形の二次燃焼室をさらに包含している、請求項1から4のいずれかに記載されたバーナー組立体。
【請求項6】
バーナーはフランジ組立体を用いて円錐台形の二次燃焼室の円錐形シェルに着脱可能に固定されている、請求項5に記載されたバーナー組立体。
【請求項7】
円錐台形の二次燃焼室の孔の前記円錐の直径方向両側の間で計測された角度が50°と70°の間である、請求項5又は6に記載されたバーナー組立体。
【請求項8】
円錐台形部分の高さは一次燃焼室の高さの0.3から5倍であるように選択される、請求項5から7のいずれかに記載されたバーナー組立体。
【請求項9】
2つ以上の空気分配室と2つ以上のガス分配室を包含し、バーナーシェルの外部に配置されていると共に空気及びガス分配室を空気及びガス供給源にそれぞれ流体接続するマニホールド型の空気供給管及びガス供給管をさらに包含している、請求項1から8のいずれかに記載されたバーナー組立体。
【請求項10】
炉シェルと、炉シェル内に配置されたチェッカーレンガの容積と、請求項1から9のいずれかに記載されたバーナー組立体とを包含し;かつバーナーが熱風炉の頂部に配置され、チェッカーレンガがバーナー組立体の下方に位置している、頂部燃焼熱風炉。
【請求項11】
チェッカーレンガの容積の上方に循環ゾーンをさらに包含している、請求項10に記載された熱風炉。
【請求項12】
既存の熱風炉を改造、改修又は改良するための、請求項1から9のいずれかに記載されたバーナー組立体の使用。
【請求項13】
熱風炉から既存のバーナー組立体を除去し、請求項1から
9のいずれかに記載されたバーナー組立体を熱風炉に取り付ける工程を包含する、既存のバーナー組立体を備えた既存の熱風炉を改造、改修又は改良する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高炉稼働における送風の予備加熱のための熱風炉(蓄熱型空気加熱装置(air heating devices))用のバーナー組立体に関する。より具体的には、本発明は、バーナーが炉の頂部に配置されているいわゆる頂部又はドーム燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱型加熱の技術、特に熱風炉の技術において、空気を、通常チェッカーレンガ(checker bricks)と呼ぶ予備加熱された耐火物を通過させることにより加熱することはよく知られている。チェッカーレンガの加熱は、通常天然ガス又はコークス炉ガスで富化した高炉からの炉頂ガス(top gas)を、空気の存在下で燃焼させ、その結果生じた煙道ガス(flue gases)がチェッカーレンガを通過することでなされる。
【0003】
燃焼媒体(ガス及び空気)の燃焼は、従来は熱風炉内の分離シャフト(バーナーシャフト)内で、又はより最近ではいわゆる頂部又はドーム燃焼熱風炉の頂部ドーム内でなされる。
【0004】
既知の頂部燃焼熱風炉は、通常、ガス及び空気が別々に又は予混合されてノズルを介して燃焼室(combustion chamber)に供給される、熱風炉の頂部に配置されたバーナーを包含している。これらの既知の構造は、燃焼媒体がリング状分布となる円筒形燃焼室を有している。このような構造において、各媒体(空気及びガス)は、バーナーのシェル(外郭;shell)内で通常一体に設けられた連携するノズルを備えた、それ自身の円形の伝導系(conduct system)を有している。このタイプの典型的な例は、WO00/58526、US4,054,409、CN201288198Y又はWO2015/094011に記載されている。これらのシステムの主な欠点は、シェルの構造が、円周状の伝導の存在により壊れやすくなることである。さらに、これらの構造は、膨大な数の異なった形状のレンガを必要とし、それ故に大幅な組み立て作業を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、好ましくは良好な又はさらに良好な燃焼性能を提供することで、前記既知の欠点の少なくともいくつかを解決することができる頂部燃焼熱風炉(top combustion hot blast stoves)のためのバーナー構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題の少なくともいくつかを解決するために、本発明は、第1の態様において、バーナーシェルにより囲まれており、円形断面を有するバーナーと、空気をバーナーに接線方向に供給するために(バーナーシェル内に)配置され、1つ以上の(分離した)空気分配室に接続された複数の空気ノズルと、ガスをバーナーに接線方向に供給するために(バーナーシェル内に)配置され、1つ以上の(分離した)ガス分配室に接続された複数のガスノズルを包含する、頂部燃焼熱風炉のためのバーナー組立体を提案する。既知の解決手段に反して、空気ノズルは、空気ノズルの1つ以上の傾斜した又は垂直な積層されたアレイ(arrays)として配置されており、各傾斜した又は垂直な積層されたアレイは1つの傾斜した又は垂直な空気分配室に接続され、ガスノズルは、ガスノズルの1つ以上の傾斜した又は垂直な積層されたアレイとして配置されており、各傾斜した又は垂直な積層されたアレイは1つの傾斜した又は垂直なガス分配室に接続され、空気分配室とガス分配室がバーナーシェルの外周に沿って配置されて(即ち、分布して)いる。
【0007】
第2の態様において、本発明は、炉シェルと、前記炉シェル内に配置されたチェッカーレンガの容積(volume)と、バーナーシェルにより囲まれており円形断面を有し、かつ炉シェルの上部に軸方向に配置されたバーナーと、空気をバーナーに接線方向に供給するために配置され、1つ以上の(分離した)空気分配室に接続された複数の空気ノズルと、ガスをバーナーに接線方向に供給するために配置され、1つ以上の(分離した)ガス分配室に接続された複数のガスノズルを包含する頂部燃焼熱風炉に関するものである。この場合もやはり、既知の解決手段に反して、空気ノズルは、空気ノズルの1つ以上の傾斜した又は垂直な積層されたアレイとして配置されており、各傾斜した又は垂直な積層されたアレイは1つの傾斜した又は垂直な空気分配室に接続され、ガスノズルは、ガスノズルの1つ以上の傾斜した又は垂直な積層されたアレイとして配置されており、各傾斜した又は垂直な積層されたアレイは1つの傾斜した又は垂直なガス分配室に接続され、空気分配室とガス分配室がバーナーシェルの外周に沿って配置されて(即ち、分布して)いる。
【0008】
従って、バーナーシェルにより囲まれたバーナーは、頂部がドーム状のカバーで塞がれかつ底部側が開口した、基本的に円筒形の内部(通常は外部も)容積を定めており、前記底部側はここでさらに説明する熱風炉に取り付けるように構成されている。
【0009】
空気及びガス分配室は、バーナーシェル内に配置されてもよく又は前記シェルの外部に取り付けられてもよい。好ましい変更例においては、空気及びガス分配室はバーナーシェルの壁内に、必ずしも必須ではないが好ましくはバーナーシェルの厚さに関して中心位置に配置されている。各空気及びガス分配室の2つ以上がバーナーシェルの外周に沿って配置されている場合、それらは通常交互(空気-ガス-空気-ガス…)に配置されるが、2つずつ(空気-空気-ガス-ガス…)のような別の配置も本発明の範囲内とみなされる。異なる媒体(空気又はガス)が供給されるいかなる2つの分離した分配室も決して相互に接続されない(空気とガスはバーナーの一次燃焼室に一緒に送られるだけである)ことは明らかであるが、同じ媒体を運ぶいかなる2つの傾斜した又は垂直な分配室も決してバーナーシェル内で相互に接続されない。言い換えれば、仮に同じ媒体を運ぶ2つ以上の傾斜した又は垂直な分配室があるとしても、これらは分離しており、バーナーシェル内でそれらの間にいかなる流体接続も有していない。したがって、本発明のバーナー組立体が2つ以上の傾斜した又は垂直な空気分配室及び2つ以上の傾斜した又は垂直なガス分配室を包含している場合、前記2つ以上の傾斜した又は垂直な空気分配室はバーナーシェル内で流体相互接続を有しておらず、前記2つ以上の傾斜した又は垂直なガス分配室もバーナーシェル内で流体相互接続を有していない。
【0010】
傾斜した又はむしろ基本的に垂直な積層されたノズルと、バーナーの外周に沿う接線方向のガス及び空気入口との独特な組み合わせが、燃焼媒体の改善された重なりと焼尽を伴う渦流を可能にしている。さらに重要なことには、仮に分配室がバーナーシェル内に配置された場合であっても、バーナーの構造的安定性を、円周方向の水平分配室を備えた既知の解決手段と比較して大幅に増大させた状態において、この有利な燃焼条件を実現することができる。実際に、分配室は傾斜した又は垂直な状態でバーナーの外周に沿って配置又は分布されており、バーナーシェルは、分離した複数の分配室の間に傾斜した又は垂直な上下連続壁部を包含している。さらに、バーナーシェルの壁構造は、レンガの形状及びその建設に必要な組立作業に関して著しく簡素化されている。本発明に係るバーナー組立体は、環状又は同軸の分配室、又はバーナーシェル内での分配室間の他のタイプの相互接続を包含していないので、本発明の構造により、既知の解決手段のような弱いリング状のレンガは回避される。従って、ここに説明するようなバーナーは、その構造的安定性を保証するための更なる構造上の対策を必要としない。前記空気及びガス分配室の高さは、通常、燃焼室、より具合的には一次燃焼室とも呼ばれるバーナーの円筒形内部容積の高さの約0.3から約1、好ましくは約0.5から約0.9、より好ましくは約0.6から約0.8倍であることを表している。バーナーのサイズ及び意図した容量によって、この数は、必要な場合又は所望により10を超えてもよいが、燃焼媒体当たりの分配室の数は、通常、1と10の間、好ましくは2と4の間である。
【0011】
通常、分配室は、バーナーに燃焼媒体を供給するためのノズルである、バーナーに対して、垂直方向に(傾斜している場合は横方向に)間隔を置いた複数の孔(apertures)を有する、好ましくは円形又は多角形の断面を有する傾斜した又は垂直な軸部分であろう。基本的に垂直な分配室の場合、それらは通常基本的に真っ直ぐな軸になる。分配室が傾斜している場合、それらは湾曲形状を有していてもよく、その場合は、曲線がバーナーシェルの円形形状に基本的に従う(又は対応する)。軸の傾斜角及び長さ(即ち、バーナーの高さ)に応じて、分配室はそれぞれ渦巻き又は螺旋の(断面の)形状を有するであろう。構造(空気及びガス分配室の数、バーナーの傾斜角及び高さ)に応じて、分配室は複数の絡み合った螺旋を呈してもよい。バーナーシェル内のそのような傾斜した(螺旋形状の)分配室の円周角は最大90°まで又は所望によりそれ以上を呈してもよい。しかし、いかなる場合でも、バーナーシェルの安定性は、バーナーシェルの上下方向の連続した(傾斜した又は垂直な)壁部分により守られる。
【0012】
従って、分配室に連携するノズルは、いかなる場合でも積層された(重畳)アレイを呈し、ノズルの出口は厳密に垂直又は最大60°まで、好ましくは前記垂直から最大50°まで、具体的には例えば0°から約45°の角度で相互にずらして(傾斜して)並べられてもよい。ノズルの非垂直アレイ(垂直に対してある角度で整列するノズル出口)の場合、連携する分配室は同じように角度を付しても又は垂直であってもよく、後者の場合、ノズル伝導(conducts)は選択した相互にずらした位置にあるノズル出口を有するように適合される。ジグザグ配置のような、積層されたノズルの他の非整列の変更例もまた可能である。本発明に係る傾斜した又は垂直な分配室を有することの利点により、バーナーシェルに対して最大の安定性が保証される。さらに、分配室は傾斜又は垂直であると共に通常ノズルアレイの全体高さを超えるので、分配室からノズル出口へのノズル伝導は水平に実行されてもよく、これがまた、バーナーシェルのデザイン及び組立体を簡素化する。所望により、特にもし傾斜した又は垂直な分配室の垂直高さが、連携するノズルの積層されたアレイの垂直高さより低い場合には、ノズル伝導はもちろん、非水平又は非直線でもよい。ノズル及び/又はノズル伝導の断面は、適切な任意の形状でよい。ノズルの数は、バーナーのサイズ及び意図した容量によって適切に選択することができる。積層されたアレイ当たりのノズルの数は、その数は必要な場合又は所望により20を上回ってもよいが、通常は、2と20の間、ほとんどの場合3と10の間である。
【0013】
特に好適な実施形態において、バーナー組立体又は熱風炉は、円錐形シェルに囲まれかつバーナーの下に配置された、即ちバーナーとチェッカーレンガの容積との間の熱風炉内にある、円錐台形の二次燃焼室をさらに包含している。実際に、二次燃焼室は、好ましくは50°と70°の間の円錐の孔の角度(即ち、円錐の直径方向両側の間で計測された角度)を有する、頂部の頂点側が指向性の直円錐台の形状を有している。
【0014】
燃焼媒体の燃焼は、通常バーナー(燃焼室又は一次燃焼室とも言う)内で起こる。本発明に係る円筒形バーナーの構造、特にノズルアレイによって、媒体の燃焼は燃焼媒体の層をなす渦流の中で行われる。円錐台形の二次燃焼室を備えたことで、通常であればもはや燃え尽きる媒体の渦流が、円錐形シェルの内面に沿った回転を続け、その結果その直径が広がり、それがまたバーナー(一次燃焼室)への垂直方向(軸方向)の部分的な逆流を生成する。この熱煙道ガスの逆流は、入ってくる燃焼媒体が過度に冷えている時でも、バーナー内の温度を発火点よりも高い値に維持可能にしながら、バーナー内での燃焼媒体の集中的な混合を促進する。
【0015】
従って、バーナー(一次燃焼室)と二次燃焼室(円錐台形部分)の寸法は、好ましくは逆流ゾーンが必要な負荷区域(load ranges)で安定して形成し得るように選択される。通常、円錐台形部分の高さは一次燃焼室の0.3から5倍、好ましくは0.5から2倍であるように選択される。
【0016】
バーナーシェル及び円錐形シェルは1部片で形成されてもよいし、又好ましくはバーナーシェルはフランジなどで円錐台形の二次燃焼室の炉シェル又は円錐形シェルに着脱可能に固定される。フランジ組立体(flange assembly)などでバーナーを取り付けることは、バーナーを修理及び点検のために地面に置いたり又は同じ仕様のバーナーと、又はより有利には異なる仕様(例えば、より大きい容量/より多くのノズル等)のバーナーと簡単に交換できるという特別な利点を有している。そのような交換又は改良がさらに迅速になるので、炉又はさらにプラントの稼働停止時間が低減する。
【0017】
実際には、ここに述べたようなバーナー組立体は、通常、2つ以上の空気分配室と2つ以上のガス分配室を包含している。故に、そのようなバーナー組立体は、好ましくはバーナーシェルの内部で一体化されているか又は外部に配置されていると共に、空気及びガス分配室を空気及びガス供給源にそれぞれ流体接続するマニホールド型の空気供給管及びガス供給管をさらに包含している。上述した2つずつの空気-空気-ガス-ガス…の配置のように、2つの隣接する分配室が同じ媒体を運ぶ構造において、2つのそれぞれの室は一体化された供給管により接続されてもよい。
【0018】
好ましくは、炉シェルの全断面にわたる煙道ガスの分配を強化するために、チェッカーレンガの上方に循環ゾーン(典型的には円筒形空間又は上部空間)が備えられる。従って、この循環ゾーンは、ここに説明するようにバーナー組立体の下方に位置している。
【0019】
熱風炉は、無軸熱風炉(shaftless hot blast stove)でもよい、即ちチェッカーレンガの容積が基本的に炉の全断面を占めていると共に、熱風立下り管が炉シェルの外側に配置されていてもよい。また、熱風炉は、内側軸又は熱風立下り管を有する熱風炉であってもよい。
【0020】
第3の態様において、本発明は、既存の任意のタイプの熱風炉を改造、改修又は改良してそれを頂部燃焼又はバーナーシャフト型熱風炉にするための、ここで説明するバーナー組立体の使用にも関する。また、本発明は、前記熱風炉から既存のバーナー組立体を除去し、ここで説明するバーナー組立体を好ましくはフランジ組立体を用いて前記熱風炉に取り付ける工程を包含している、既存の熱風炉を改造、改修又は改良する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の好適な実施形態を、添付図面を参照して例示により以下で説明する。
【
図1】本発明に係るバーナー組立体の好適な実施形態を備えている熱風炉の上部の断面図であり、
【
図2】本発明に係るバーナー組立体の好適な実施形態の部分断面の上面図である。
【0022】
本発明のさらなる細部及び利点は、添付図面に関して行う、非限定的ないくつかの実施形態の下記の詳細な説明から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、高炉のための蓄熱器(熱風炉)の稼働のために空気を加熱する装置の好適な実施形態の上部の断面を示している。
【0024】
バーナー10は、円形断面のバーナーシェル11を有していると共に、熱を蓄えかつ熱交換するための蓄熱式チェッカーレンガ40の主容積(main volume)とチェッカーレンガの存在しない循環ゾーン又は上部空間(head room)30を含む炉シェル2を包含する熱風炉1の上部に、フランジ組立体111により軸方向に取り付けられている。
【0025】
バーナー(又は燃焼室)10は、頂部がドーム140により閉じられていると共に、燃焼媒体空気12及びガス13のための別々の供給装置(feeding arrangements)を有している。この供給装置は、空気及びガス供給管125,135と、供給管を垂直な空気及びガス分配室121,122,131,132にそれぞれ接続する空気及びガス接続管123,124,133,134とを含んでいる。空気及びガスは、空気ノズル120及びガスノズル130が交互になった複数の垂直なアレイ(arrays)を介してバーナー10に供給される。垂直ノズルアレイの数は、2つ以上(4つのアレイが
図1及び2に示されている)にすることができ、主にバーナーのサイズ(直径)によって決まる。1つのアレイ内のノズルの数は、通常は2から10の間、又はそれ以上(5つのノズルが
図1の各アレイに示されている)である。
【0026】
図2においてとくに明らかなように、垂直な空気及びガス分配室121,122,131,132は、多数の積層されたノズル(及びその結果としてのかなりの高さを有するバーナー)を有するアレイに供給可能にするだけではなく、より重要なことに、バーナーシェル11の支持壁構造のために十分な余地を残している。バーナーシェル構造を弱化する、バーナーシェル内における分配室の間の水平な流体接続が無いので、仮に2つの隣接する分配室が同じ燃焼媒体を運ぶとしても各垂直分配室は隣接する分配室から分離している。事実、従前の解決手段は、燃焼媒体のリング状の分配に基づくものであって、バーナーシェルとして組み立てるための形状の異なる非常に多くのレンガを必要とするだけではなく、全体的な構造的安定性が低くなる。
【0027】
代替的には、空気及びガス分配室121,122,131,132をバーナーの垂直軸に対して傾斜させることができれば、それによって各分配室は螺旋の部分を形成することになる。
図2に示された断面は、ガス-空気交互の室を備えたそのような傾斜分配室構造の部分でもあり得る。
図1において、傾斜構造は、通常(しかし、必然的ではないが)、分配室のそれ以上の同じ傾斜角度で積層されたノズル120,130を有している。
【0028】
ノズル120,130は、燃焼媒体の実質的に接線方向の取り入れ(inlet)がバーナー10において起こるように配置されている。バーナーにおけるこの接線方向の取り入れは、全ノズルをバーナーシェル11内で(
図2に示されているように)一つの角度で配向する又はノズルの出口部分だけに適切なデザインを施すことにより行うことができる。外周における空気及びガス交互のノズルアレイの分布及びバーナーの高さに全体にわたる各アレイ中のノズル120,130の数は、プラントのサイズに対して調整可能である。より重要なことは、バーナーにおける交互の接線方向のガス及び空気の噴射が、バーナーの燃焼室内での混合及び燃焼にとって有利である燃焼媒体の交互の層の渦流を作り出すことである。
【0029】
従って、本発明のバーナーの形状及びノズルの配置は、燃焼室内において、高速な渦流を軸方向及び接線方向の両方向で生み出すように設計されている。
【0030】
特に好適な実施形態において、このバーナー10は、チェッカーレンガ40にわたる生成された煙道ガス用の分配装置としてのみならず、バーナー10に対して長い燃焼室としての役割を果たす円錐形(実際は円錐台形)の二次バーナー20と組み合わさっている。実際に、二次燃焼室の円錐台形によって、バーナー10内で生成された渦流が円錐形シェル21に沿って流れ落ちる時に広がり、それによってバーナー10に向かって軸方向の内部(部分)逆流が生成される。円錐形の二次燃焼室20からバーナー10への熱煙道ガスの激しい逆流は、燃焼媒体を更に混合する効果をもつのみならず、入ってくる燃焼媒体を加熱し、それによってそれらの着火可能性を高める。
【0031】
燃焼媒体は通常バーナー10を離れる前に燃え尽きるが、二次燃焼室20内の渦流は必要なら完全な燃尽、とくに燃焼段階の開始期間での完全な燃尽、に貢献する。
【符号の説明】
【0032】
1 熱風炉
2 炉シェル
10 バーナー又は燃焼室又は一次燃焼室
11 バーナーシェル
111 フランジ組立体
12 空気
120 空気ノズル
121,122 空気分配室
123,124 空気接続管
125 空気供給管
13 ガス
130 ガスノズル
131,132 ガス分配室
133,134 ガス接続管
135 ガス供給管
140 ドーム
20 円錐形二次バーナー又は二次燃焼室
21 円錐形シェル
30 循環ゾーン又は上部空間
40 チェッカーレンガ
SF 渦流
BF 逆流