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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ホーム柵および両開きホーム柵
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20221201BHJP
   E05F 17/00 20060101ALI20221201BHJP
   E05F 15/635 20150101ALI20221201BHJP
【FI】
B61B1/02
E05F17/00 A
E05F15/635
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019010220
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020117083
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 育雄
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209175(JP,A)
【文献】特開昭62-288768(JP,A)
【文献】特開平10-299339(JP,A)
【文献】特開2009-220817(JP,A)
【文献】特開2016-164048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E05F 17/00
E05F 15/635
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸袋部から後端側扉および先端側扉を進退させるようにスライド移動させることで乗降口を開閉するホーム柵であって、
前記戸袋部に枢支された第1ピニオンと前記後端側扉に設けられた第1ラックとを有し、前記戸袋部に対して前記後端側扉をスライド移動させるための第1ラック・アンド・ピニオン機構部と、
前記戸袋部に枢支された第2ピニオンと前記先端側扉に設けられた第2ラックとを有する第2ラック・アンド・ピニオン機構部と、
前記第1ピニオンを駆動するモータと、
前記戸袋部に枢支され、前記第1ピニオンと前記第2ピニオンとに噛合された伝動ギアと、
を備え、前記第1ピニオンが駆動されることによる前記後端側扉のスライド移動と、前記伝動ギアを介した前記第2ピニオンの回転による前記先端側扉のスライド移動とが連動するホーム柵。
【請求項2】
前記スライド移動の進退方向において、前記第2ピニオンは、前記第1ピニオンより進出側で前記戸袋部に枢支されている、
請求項1に記載のホーム柵。
【請求項3】
前記後端側扉および前記先端側扉は入れ子構造である、
請求項1又は2に記載のホーム柵。
【請求項4】
前記第1ラック・アンド・ピニオン機構部は、ギア歯を下方に向けて前記後端側扉に設けられた前記第1ラックが、前記第1ピニオンの上方から噛合されており、
前記第2ラック・アンド・ピニオン機構部は、ギア歯を下方に向けて前記先端側扉に設けられた前記第2ラックが、前記第2ピニオンの上方から噛合されており、
前記伝動ギアは、前記第1ラックおよび前記第2ラックより下方位置で前記第1ピニオンおよび前記第2ピニオンに噛合する、
請求項1~3の何れか一項に記載のホーム柵。
【請求項5】
前記第1ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記第2ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記伝動ギアとは、前記先端側扉が前記後端側扉の倍速でスライド移動するように歯車比が設定されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のホーム柵。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のホーム柵2台を、一方のホーム柵がプラットホーム長手方向の一方向側を前記乗降口とし、他方のホーム柵がプラットホーム長手方向の他方向側を前記乗降口とするように配置して構成した両開きホーム柵であって、
前記ホーム柵2台の中間に非常扉部を備えた、
両開きホーム柵。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載のホーム柵2台を、一方のホーム柵がプラットホーム長手方向の一方向側を前記乗降口とし、他方のホーム柵がプラットホーム長手方向の他方向側を前記乗降口とするように配置して構成した両開きホーム柵であって、
全開時に、前記一方のホーム柵の前記先端側扉と、前記他方のホーム柵の前記先端側扉とが、プラットホームから見て前後に重なり合うように格納される、
両開きホーム柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のプラットホームに設置されるホーム柵等に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホームの軌道側に設置され、車両への乗降タイミングに合わせて扉を開閉するホーム柵には、1つの戸袋から2段の引戸式の可動扉を進退させるようにスライド移動させる2段引戸式ホーム柵が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2段の可動扉を同期させて駆動するホーム柵であって、駆動機構にタイミングベルトとプーリーを用いた2段引戸式ホーム柵が開示されている。当該ホーム柵では、先端側扉(2段のうち可動扉の進退方向の進出側にある扉)と後端側扉(2段のうち進退方向の後退側にある扉)とが連動して開閉駆動され、先端側扉の開閉速度は後端側扉の2倍となっている。
【0004】
また、特許文献2には、駆動機構の紐状駆動伝達部材にタイミングベルト、ワイヤー、チェーン等が採用され、特許文献1のホーム柵と同様に動作する2段引戸式ホーム柵が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-76213号公報
【文献】特開2015-209175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のホーム柵の場合、駆動機構にタイミングベルトを採用しているので、ベルトの摩耗や張りの低下が生ずると、機能低下を招くので定期的な点検が必要とされる。
また、特許文献2のホーム柵では、紐状駆動伝達部材にタイミングベルト、ワイヤー、チェーン等が採用されているが、ワイヤーの場合は、素線切れや錆び、張りの低下による緩みが生じる可能性があり、定期的な点検が欠かせない。また、チェーンを採用する場合は、ピンの摩耗や錆びの発生、張りの低下による緩み等が伝達効率の低下を招くので、やはり定期的な点検が欠かせない。定期的な点検は事業者の負担となるので、点検周期を従来より長くできる2段式のホーム柵が望まれている。
【0007】
また、ホーム柵は、列車のドア間隔に合わせて2台1組の両開き式のホーム柵として設置されることが多い。入線する列車の種類が1種類の場合は、2台のホーム柵の間の間隔が確保できるので、戸袋などにカバーや非常扉を取り付けることができる。ところが、入線する列車の種類が増え、様々なドア数やドア間隔に対応できるように2台のホーム柵の間の間隔を設定すると、非常扉を設けられない場合がでてくる。特に、相互乗り入れが行われる駅では、列車の車種が多数におよび非常扉を設けるのが難しくなりやすい。そのため、戸袋の幅(ホーム長手方向の長さ)が短くても非常扉の設置スペースを確保できる両開き式で且つ2段引戸式のホーム柵が望まれている。
【0008】
本発明は、こうした要望に応ずるべく考案されたものである。第1の目的は、点検周期を従来より長くできる2段式のホーム柵の技術を提供することである。第2の目的は、第1の目的を達成したうえで、更に戸袋の幅が短くても非常扉の設置スペースが確保できる両開き式のホーム柵の技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明は、戸袋部から後端側扉および先端側扉を進退させるようにスライド移動させることで乗降口を開閉するホーム柵であって、前記戸袋部に枢支された第1ピニオンと前記後端側扉に設けられた第1ラックとを有し、前記戸袋部に対して前記後端側扉をスライド移動させるための第1ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記戸袋部に枢支された第2ピニオンと前記先端側扉に設けられた第2ラックとを有する第2ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記第1ピニオンを駆動するモータと、前記戸袋部に枢支され、前記第1ピニオンと前記第2ピニオンとに噛合された伝動ギアと、を備え、前記第1ピニオンが駆動されることによる前記後端側扉のスライド移動と、前記伝動ギアを介した前記第2ピニオンの回転による前記先端側扉のスライド移動とが連動するホーム柵である。
【0010】
また、第2の発明は、前記スライド移動の進退方向において、前記第2ピニオンは、前記第1ピニオンより進出側で前記戸袋部に枢支されている、第1の発明のホーム柵である。
【0011】
また、第3の発明は、前記後端側扉および前記先端側扉は入れ子構造である、第1又は第2の発明のホーム柵である。
【0012】
また、第4の発明は、前記第1ラック・アンド・ピニオン機構部は、ギア歯を下方に向けて前記後端側扉に設けられた前記第1ラックが、前記第1ピニオンの上方から噛合されており、前記第2ラック・アンド・ピニオン機構部は、ギア歯を下方に向けて前記先端側扉に設けられた前記第2ラックが、前記第2ピニオンの上方から噛合されており、前記伝動ギアは、前記第1ラックおよび前記第2ラックより下方位置で前記第1ピニオンおよび前記第2ピニオンに噛合する、第1~第3の何れかの発明のホーム柵である。
【0013】
また、第5の発明は、前記第1ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記第2ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記伝動ギアとは、前記先端側扉が前記後端側扉の倍速でスライド移動するように歯車比が設定されている、第1~第4の何れかの発明のホーム柵である。
【0014】
また、第6の発明は、第1~第5の何れかの発明のホーム柵2台を、一方のホーム柵がプラットホーム長手方向の一方向側を前記乗降口とし、他方のホーム柵がプラットホーム長手方向の他方向側を前記乗降口とするように配置して構成した両開きホーム柵であって、前記ホーム柵2台の中間に非常扉部を備えた、両開きホーム柵である。
【0015】
また、第7の発明は、第1~第5の何れかの発明のホーム柵2台を、一方のホーム柵がプラットホーム長手方向の一方向側を前記乗降口とし、他方のホーム柵がプラットホーム長手方向の他方向側を前記乗降口とするように配置して構成した両開きホーム柵であって、全開時に、前記一方のホーム柵の前記先端側扉と、前記他方のホーム柵の前記先端側扉とが、プラットホームから見て前後に重なり合うように格納される、両開きホーム柵である。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明のホーム柵は、駆動機構として、ラック・アンド・ピニオン機構を用いる。ラック・アンド・ピニオン機構は、タイミングベルトやワイヤー、チェーンを用いる駆動機構に比べて、歯車の噛み合わせにより動力を伝達するので伝達効率が安定的且つ高効率で、更に耐久性に優れる。よって、従来よりも点検周期が長い2段式のホーム柵を実現できる。
【0017】
第2の発明によれば、第2ピニオンを第1ピニオンより進出側で戸袋部に枢支していない構成よりも、先端側扉の進出量をより稼ぐことができる。
【0018】
第3の発明によれば、可動扉を戸袋部の内側に収容できるので、安全なホーム柵を実現できる。
【0019】
第4の発明によれば、ラックのギア歯を下向きにしているので、ラックのギア歯を上向きにしている構成に比べて、異物の噛み込みを低減できる。また、第1ラックおよび第2ラックより下に、第1ピニオンや第2ピニオンそして伝動ギアを配置するので、それらを枢支する回転軸が先端側扉や後端側扉を貫通しない配置構成が可能になる。
【0020】
第5の発明によれば、後端側扉と先端側扉とが同時または略同時に収納完了、または進出完了となるように設定できる。
【0021】
第6の発明によれば、第1~第5の何れかの発明の効果を奏するホーム柵2台の中間に非常扉部を備えた両開きホーム柵を実現できる。
例えば、5ドアや6ドアのようなドア間隔が短い車両の列車が停車するホームに設置するホーム柵とする場合、特許文献1や特許文献2のような2段式ホーム柵にすると、広開口にした分だけ戸袋の長さを短くする必要がある。ところが、扉の駆動機構の構成機器が戸袋を占領しているので、非常扉を設ける場合は、2つの戸袋の間に非常扉を追加することになり、非常扉と2つの戸袋を含めた戸袋の長さが長くなって広開口が出来なくなることが起こる。そのため、広開口を優先し、非常扉の無いものしかできなかった。本発明の場合は、戸袋の進出側に駆動機構があり、戸袋の後退側は可動扉を収めるだけなので、2つのホーム柵を合わせた戸袋の中の可動扉が進出したスペースに非常口を設けることができる。しかも、両ホーム柵の互いの先端側扉をラップさせると更に戸袋の長さを短くできる。
【0022】
第7の発明によれば、戸袋部および非常扉部を含む扉収容部分の全長が短くても非常扉の設置スペースが確保できる両開きが可能な2段式のホーム柵を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態におけるホーム柵の構成の一例を示す図であって、軌道側から見た正面図。
図2】第1実施形態のホーム柵の主要構成要素を選択して示した乗降口を全閉にする全閉状態における図であって、軌道側から見た正面透視図。
図3図2のIII-III断面図。
図4】ホーム柵を進退方向の進出側から見た側面図。
図5】ホーム柵の駆動機構周りの構成例を示す拡大上面視透視図。
図6】ホーム柵の動作について説明するための図であって、主要構成要素を選択して示した軌道側から見た全閉と全開の中間状態における正面透視図。
図7】ホーム柵の動作について説明するための図であって、主要構成要素を選択して示した軌道側から見た全開状態における正面透視図。
図8】第2実施形態における両開きホーム柵の構成例を示す図であって、主要構成要素を選択的に示した軌道側から見た正面透視図。
図9】第3実施形態における両開きホーム柵の構成例を示す図であって、主要構成要素を選択的に示した軌道側から見た正面透視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0025】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態におけるホーム柵の構成の一例を示す図であって、軌道側から見た正面図である。図1(1)が、先端側扉12および後端側扉11からなる引戸式の2段の可動扉を進出させて乗降口を閉じた全閉状態、図1(2)が、可動扉を後退させて戸袋部に収納して乗降口を開いた全開状態、をそれぞれ示している。なお、理解を容易にするために、可動扉をスライド可能に支持する支持構造や、制御装置、電源装置などの図示は省略されている。
【0026】
ホーム柵2(2R,2L)は、プラットホーム3の軌道側端部に設置され、戸袋部10から後端側扉11および先端側扉12を進退させるようにスライド移動させることで乗降口を開閉する2段引戸式のホーム柵である。
【0027】
ホーム柵2には、右型ホーム柵2Rと、左型ホーム柵2Lと、の2種類がある。
右型ホーム柵2Rは、後端側扉11と先端側扉12とを軌道側から見て戸袋部10の右方向へ進出させるように構成されている。左型ホーム柵2Lは、後端側扉11と先端側扉12とを軌道側から見て戸袋部10の左方向へ進出させるように構成されている。右型ホーム柵2Rの構成と、左型ホーム柵2Lの構成は、基本的には左右が反転しているが同じ構成を有する。ゆえに、第1実施形態の説明では、両者を代表して右型ホーム柵2Rを本実施形態のホーム柵2として詳しく述べることとする。また、右型ホーム柵2Rを示す各図の右方向を可動扉の進退方向(スライド移動の方向)の「進出側」「先端側」「前」として説明する。
【0028】
図2は、ホーム柵2の主要構成要素を選択して示した乗降口を全閉にする全閉状態における図であって、軌道側から見た正面透視図である。図3は、図2のIII-III断面図である。図4は、ホーム柵2を進退方向の進出側から見た側面図である。図5は、ホーム柵2の駆動機構周りの構成例を示す拡大上面視透視図である。なお、これらの図では、理解を容易にするために、可動扉をスライド可能に支持する支持構造や、制御装置、電源装置などの図示は省略されている。支持構造は、ガイドレールとスライダとの組み合わせなどで実現できる。
【0029】
さて、戸袋部10は、進退方向の進出側が開口する箱形構造体であって、プラットホーム3に据え付けられる。
後端側扉11は、下方と進退方向の進出側とが開口する箱形構造体であって、戸袋部10の内側で、進退方向へスライド移動が可能に支持されている。
先端側扉12は、板状体であって、後端側扉11の内側で、進退方向へスライド移動が可能に支持されている。つまり、戸袋部10と、後端側扉11と、先端側扉12とは、この順に次順の要素を内部に収容する、いわゆる「入れ子構造」を成している。
【0030】
そして、これらの可動扉をスライド移動させるための要素として、ホーム柵2は、第1ラック・アンド・ピニオン機構部21と、第2ラック・アンド・ピニオン機構部22と、伝動ギア23と、モータ30と、を有する。
【0031】
第1ラック・アンド・ピニオン機構部21は、戸袋部10の下部にて枢支された第1ピニオン21pと、後端側扉11に設けられた第1ラック21rとを有する。具体的には、第1ラック21rは、ギア歯を下方に向けて後端側扉11の下部に設けられており、第1ピニオン21pの上方から噛合される。つまり、第1ラック・アンド・ピニオン機構部21は、戸袋部10に対して後端側扉11をスライド移動させる機構部である。
【0032】
第2ラック・アンド・ピニオン機構部22は、戸袋部10の所定位置に固定された回転軸22sで枢支された第2ピニオン22pと、先端側扉12に設けられた第2ラック22rとを有する。具体的には、第2ラック22rは、ギア歯を下方に向けて先端側扉12の下部に設けられており、第2ピニオン22pの上方から噛合される。
【0033】
伝動ギア23は、戸袋部10の所定位置に固定された回転軸23sで枢支されたギアであって、第1ピニオン21pと第2ピニオン22pとに噛合する。具体的には、軌道側から見ると、伝動ギア23は、後端側扉11および先端側扉12よりも下方の戸袋部10の内部空間にて、第1ラック21rおよび第2ラック22rより下方位置にて、第1ピニオン21pと第2ピニオン22pとの間に枢支されている。なお、本実施形態では、単独のギアとしているが、複数のギアで構成してもよい。
【0034】
第1ピニオン21pと第2ピニオン22pとの相対位置関係に着目すると、進退方向において、第2ピニオン22pは、第1ピニオン21pより進出側寄りの位置で戸袋部10に枢支されている。
【0035】
そして、第1ラック・アンド・ピニオン機構部21と、第2ラック・アンド・ピニオン機構部22と、伝動ギア23とは、後端側扉11が戸袋部10に収納された収納完了位置に到達するタイミングと、先端側扉12が戸袋部10に収納された収納完了位置に到達するタイミングとが、同じ又は略同じになるように歯車比が設定されている。逆説的に言えば、このとき、後端側扉11が戸袋部10から突出完了位置に到達するタイミングと、先端側扉12が戸袋部10から突出完了位置に到達するタイミングとが、同じ又は略同じになるように歯車比が設定されている。先端側扉12が後端側扉11の2倍速でスライド移動するように関連する各種諸元(例えば、歯車比、歯数、ピッチ円直径、ラック長、モジュール、中心点距離、など)が設定されている。
【0036】
モータ30は、戸袋部10に固定されており、その駆動軸31は第1ピニオン21pの回転軸21sに接続されている。つまり、モータ30は、第1ラック・アンド・ピニオン機構部21の第1ピニオン21pを駆動する。本実施形態では、駆動軸31が第1ピニオン21pの回転軸21sと同じ構成となっているが、適宜、中間歯車を介して連なる構成としてもよい。
【0037】
図6は、ホーム柵2(2R)の動作について説明するための図であって、主要構成要素を選択して示した軌道側から見た正面透視図である。ホーム柵2(2R)が、乗降口を閉じた全閉状態(図1(1)参照)から、乗降口を開いた全開状態(図1(2)参照)に至る中間にあたる全閉と全開の中間状態を示している。なお、図6中の白矢印は、白矢印1つの長さで後端側扉11の移動速度を表し、先端側扉12に付記した2つの白矢印は後端側扉11の2倍の移動速度で移動することを表している。
【0038】
ホーム柵2を、全閉状態から全開状態へ(言い換えると可動扉が全進出した状態から、戸袋部10へ全収容された状態へ)変更させるには、第1ピニオン21pが軌道側から見て反時計回りに回転するようにモータ30を駆動させる。
【0039】
第1ピニオン21pが反時計回りに回転することで、第1ラック21rは進退方向の後退側へ引かれ、後端側扉11が進退方向の後退側(戸袋部10へ収容される方向)へスライド移動する。また、第1ピニオン21pの回転は、伝動ギア23により第2ピニオン22pへ伝達される。第1ピニオン21pが反時計回りに回転すると、第2ピニオン22pも反時計回りに回転するように従動して連動する。この時、先端側扉12は後端側扉11の2倍速でスライド移動することとなる。
【0040】
そして、モータ30を所定量回転させる、または、後端側扉11の後端位置が全開状態の所定位置に達したことを検出するセンサー(非図示)を設けておいて、当該センサーによる検出があるまでモータ30を回転させると、図7に示すように、ホーム柵2の各可動扉が全開状態(収容完了状態)の所定位置に収容される。そして、モータ30を停止させる。
【0041】
なお、ホーム柵2(2R)を、全開状態から全閉状態へ戻すには、モータ30を、軌道側から見て第1ピニオン21pが時計回りに回転するように駆動させればよい。
【0042】
以上、本実施形態によれば、可動扉をスライド移動させるための駆動機構として、ラック・アンド・ピニオン機構を用いている。ラック・アンド・ピニオン機構は、タイミングベルトやワイヤー、チェーンを用いる駆動機構に比べて、歯車の噛み合わせにより動力を伝達するので伝達効率が安定的且つ高効率で、更に耐久性に優れている。よって、従来よりも点検周期が長い2段式のホーム柵を実現できる。
【0043】
また、進退方向において、第2ピニオン22pを第1ピニオン21pより進出側の位置(前方位置)で戸袋部10に枢支させているので、第2ピニオン22pを第1ピニオン21pより後退側の位置で戸袋部10に枢支させる場合よりも、先端側扉12の進出量をより稼ぐことができる。
【0044】
また、戸袋部10・後端側扉11・先端側扉12は、入れ子構造を成しているので、可動扉を全て戸袋部の内側に収容でき、安全なホーム柵を実現できる。
【0045】
〔第2実施形態〕
次に、本発明を適用した第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付与して重複する説明は省略する。
【0046】
図8は、両開きホーム柵5の構成例を示す図であって、主要構成要素を選択的に示した軌道側から見た正面透視図である。図8(1)が全閉状態、図8(2)が全開状態を示している。
【0047】
両開きホーム柵5は、戸袋部10Bを共通として、右型ホーム柵2Rと左型ホーム柵2Lとを、戸袋部10Bのホーム長手方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けた可動柵であって、隣接する2つの乗降口の間に設置される。
【0048】
具体的には、両開きホーム柵5の戸袋部10Bは、プラットホーム長手方向の一方側と他方側との2方向に開口している。そして、両開きホーム柵5は、右型ホーム柵2Rを、戸袋部10Bのプラットホーム長手方向の一方向側(図8における図の右側)に有し、当該一方向側の乗降口を開閉する。また、両開きホーム柵5は、左型ホーム柵2Lを、戸袋部10Bのプラットホーム長手方向の他方向側(図8における図の左側)に有し、当該他方向側の乗降口を開閉する。そして、両開きホーム柵5は、戸袋部10Bの右型ホーム柵2Rと左型ホーム柵2Lとの中間に、非常扉部19を備える。
【0049】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるホーム柵であって、非常口を備えた両開きホーム柵を実現できる。
【0050】
〔第3実施形態〕
次に、本発明を適用した第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態や第2実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態や第2実施形態と同じ符号を付与して重複する説明は省略する。
【0051】
図9は、両開きホーム柵5Cの構成例を示す図であって、主要構成要素を選択的に示した軌道側から見た正面透視図である。図9(1)が全閉状態、図9(2)が全開状態を示している。
【0052】
両開きホーム柵5Cは、第2実施形態と同様に隣接する2つの乗降口の間に非常扉部19を備えるホーム柵であるが、右型ホーム柵2を2台備えるところが第2実施形態と異なる。より具体的には、第3実施形態の両開きホーム柵5Cは、図9に向かって右側の1台目の右型ホーム柵2Rを、戸袋部10Bのプラットホーム長手方向の一方向側に有し、この1台目の右型ホーム柵2Rで当該一方向側の乗降口を開閉する。また、両開きホーム柵5Cは、図9に向かって左側の2台目の右型ホーム柵2として、1台目の右型ホーム柵2Rの進退方向を図9に向かって左右に反転させて構成した右型ホーム柵2RAを有し、この2台目の右型ホーム柵2RAで戸袋部10Bのプラットホーム長手方向の他方向側の乗降口を開閉する。そして、両開きホーム柵5は、戸袋部10Bの2台の右型ホーム柵2(2R,2RA)の中間に、非常扉部19を備える。
【0053】
ここで、改めて右型ホーム柵2Rにおける可動扉の入れ子構造に着目すると(図3参照)、先端側扉12は、後端側扉11のホーム幅方向の中心よりも軌道側に寄って支持されている。そのため、両開きホーム柵5Cの全開状態においては、2台のうち一方の右型ホーム柵2Rの先端側扉12(12R)と、他方の右型ホーム柵2RAの先端側扉12(12L)とが、プラットホーム(または軌道側)から見て前後に重なり合うように格納される。つまり、戸袋部10Bおよび非常扉部19を含む扉収容部分の全長を、第2実施形態におけるそれよりも短くできる。
よって、本実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果が得られるとともに、戸袋部および非常扉部を含む扉収容部分の全長(プラットホーム長手方向の長さ)が短くても非常扉の設置スペースを確保できる両開き式且つ2段式のホーム柵を実現することができる。
【0054】
なお、本発明を適用可能な形態は、上記実施形態に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0055】
2…ホーム柵
2L…左型ホーム柵
2R…右型ホーム柵
3…プラットホーム
5…両開きホーム柵
5C…両開きホーム柵
10…戸袋部
11…後端側扉
12…先端側扉
19…非常扉部
21…第1ラック・アンド・ピニオン機構部
21p…第1ピニオン
21r…第1ラック
21s…回転軸
22…第2ラック・アンド・ピニオン機構部
22p…第2ピニオン
22r…第2ラック
22s…回転軸
23…伝動ギア
23s…回転軸
30…モータ
31…駆動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9