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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ホーム柵および両開きホーム柵
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20221201BHJP
   E05F 17/00 20060101ALI20221201BHJP
   E05F 15/635 20150101ALI20221201BHJP
【FI】
B61B1/02
E05F17/00 A
E05F15/635
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019010221
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020117084
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 育雄
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209175(JP,A)
【文献】特開2003-056252(JP,A)
【文献】特開2013-087592(JP,A)
【文献】特開2009-220817(JP,A)
【文献】特開2005-076213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E05F 17/00
E05F 15/635
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸袋部から第1~第N可動扉(Nは2以上の整数)を進退させるようにスライド移動させることで乗降口を開閉するホーム柵であって、
前記戸袋部に枢支された第1ピニオンと第1可動扉に設けられた第1ラックとを有し、前記戸袋部に対して前記第1可動扉をスライド移動させるための第1ラック・アンド・ピニオン機構部と、
前記第1ピニオンと連なり前記戸袋部に枢支された第2ピニオンと第2可動扉に設けられた第2ラックとを有し、前記第1可動扉に対して前記第2可動扉をスライド移動させるための第2ラック・アンド・ピニオン機構部と、
前記第1ラック・アンド・ピニオン機構部の第1ピニオンを駆動するモータと、
を備え、
前記モータにより駆動される前記第1ピニオンの回転に噛合して前記第2ピニオンが回転することで、前記第1可動扉および前記第2可動扉が連動するホーム柵。
【請求項2】
可動扉の進退方向において、前記第2ピニオンは、前記第1ピニオンより進出側の位置で前記戸袋部に枢支されている、
請求項1に記載のホーム柵。
【請求項3】
前記第1可動扉に枢支された第3ピニオンと前記第2可動扉に設けられた第3ラックとを有する第3ラック・アンド・ピニオン機構部と、
前記第3ピニオンと連なり前記第1可動扉に枢支された第4ピニオンと第3可動扉に設けられた第4ラックとを有する第4ラック・アンド・ピニオン機構部と、
を備え、
前記第2可動扉の移動に伴う前記第3ピニオンの回転に噛合して前記第4ピニオンが回転することで、前記第1~第3可動扉が連動する請求項1又は2に記載のホーム柵。
【請求項4】
可動扉の進退方向において、前記第4ピニオンは、前記第3ピニオンより進出側の位置で前記第1可動扉に枢支されている、
請求項3に記載のホーム柵。
【請求項5】
前記第2可動扉に枢支された第5ピニオンと前記第3可動扉に設けられた第5ラックとを有する第5ラック・アンド・ピニオン機構部と、
前記第5ピニオンと連なり前記第2可動扉に枢支された第6ピニオンと第4可動扉に設けられた第6ラックとを有する第6ラック・アンド・ピニオン機構部と、
を備え、
前記第3可動扉の移動に伴う前記第5ピニオンの回転に噛合して前記第6ピニオンが回転することで、前記第1~第4可動扉が連動する請求項3又は4に記載のホーム柵。
【請求項6】
可動扉の進退方向において、前記第6ピニオンは、前記第5ピニオンより進出側の位置で前記第2可動扉に枢支されている、
請求項5に記載のホーム柵。
【請求項7】
前記第1~第N可動扉は入れ子構造である、
請求項1~6の何れか一項に記載のホーム柵。
【請求項8】
第m可動扉(mは2~Nまでの整数)のスライド移動速度は、前記第1可動扉のスライド移動速度のm倍に設定されている、
請求項1~7の何れか一項に記載のホーム柵。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載のホーム柵2台を、一方のホーム柵がプラットホーム長手方向の一方向側を前記乗降口とし、他方のホーム柵がプラットホーム長手方向の他方向側を前記乗降口とするように配置して構成した両開きホーム柵であって、
前記ホーム柵2台の中間に非常扉部を備えた両開きホーム柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のプラットホームに設置されるホーム柵に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホームの軌道側端部に設置され、車両への乗降タイミングに合わせて開閉されるホーム柵には、1つの戸袋部から複数段の引戸式の可動扉を進退させるようにスライド移動させるホーム柵が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2段の可動扉を同期させて駆動するホーム柵であって、駆動機構にタイミングベルトとプーリーを用いた2段引戸式ホーム柵が開示されている。当該ホーム柵では、先端側扉(2段のうち可動扉の進退方向の進出側にある扉)と後端側扉(2段のうち進退方向の後退側にある扉)とが連動して開閉駆動され、先端側扉の開閉速度は後端側扉の2倍となっている。
【0004】
また、特許文献2には、駆動機構の紐状駆動伝達部材にタイミングベルト、ワイヤー、チェーン等が採用され、特許文献1のホーム柵と同様に動作する2段引戸式ホーム柵が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-76213号公報
【文献】特開2015-209175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のホーム柵の場合、駆動機構にタイミングベルトを採用しているので、ベルトの摩耗や張りの低下が生ずると、機能低下を招くので定期的な点検が必要とされる。
また、特許文献2のホーム柵では、紐状駆動伝達部材にタイミングベルト、ワイヤー、チェーン等が採用されているが、ワイヤーの場合は、素線切れや錆び、張りの低下による緩みが生じる可能性があり、定期的な点検が欠かせない。また、チェーンを採用する場合は、ピンの摩耗や錆びの発生、張りの低下による緩み等が伝達効率の低下を招くので、やはり定期的な点検が欠かせない。定期的な点検は事業者の負担となるので、点検周期を従来より長くできる多段式のホーム柵が望まれている。
【0007】
本発明は、こうした要望に応ずるべく考案されたものであって、点検周期を従来より長くできる多段式のホーム柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、戸袋部から第1~第N可動扉(Nは2以上の整数)を進退させるようにスライド移動させることで乗降口を開閉するホーム柵であって、前記戸袋部に枢支された第1ピニオンと第1可動扉に設けられた第1ラックとを有し、前記戸袋部に対して前記第1可動扉をスライド移動させるための第1ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記第1ピニオンと連なり前記戸袋部に枢支された第2ピニオンと第2可動扉に設けられた第2ラックとを有し、前記第1可動扉に対して前記第2可動扉をスライド移動させるための第2ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記第1ラック・アンド・ピニオン機構部の第1ピニオンを駆動するモータと、を備え、前記モータにより駆動される前記第1ピニオンの回転に噛合して前記第2ピニオンが回転することで、前記第1可動扉および前記第2可動扉が連動するホーム柵である。
【0009】
第2の発明は、可動扉の進退方向において、前記第2ピニオンは、前記第1ピニオンより進出側の位置で前記戸袋部に枢支されている、第1の発明のホーム柵である。
【0010】
第3の発明は、前記第1可動扉に枢支された第3ピニオンと前記第2可動扉に設けられた第3ラックとを有する第3ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記第3ピニオンと連なり前記第1可動扉に枢支された第4ピニオンと第3可動扉に設けられた第4ラックとを有する第4ラック・アンド・ピニオン機構部と、を備え、前記第2可動扉の移動に伴う前記第3ピニオンの回転に噛合して前記第4ピニオンが回転することで、前記第1~第3可動扉が連動する第1又は第2の発明のホーム柵である。
【0011】
第4の発明は、可動扉の進退方向において、前記第4ピニオンは、前記第3ピニオンより進出側の位置で前記第1可動扉に枢支されている、第3の発明のホーム柵である。
【0012】
第5の発明は、前記第2可動扉に枢支された第5ピニオンと前記第3可動扉に設けられた第5ラックとを有する第5ラック・アンド・ピニオン機構部と、前記第5ピニオンと連なり前記第2可動扉に枢支された第6ピニオンと第4可動扉に設けられた第6ラックとを有する第6ラック・アンド・ピニオン機構部と、を備え、前記第3可動扉の移動に伴う前記第5ピニオンの回転に噛合して前記第6ピニオンが回転することで、前記第1~第4可動扉が連動する第3又は第4の発明のホーム柵である。
【0013】
第6の発明は、可動扉の進退方向において、前記第6ピニオンは、前記第5ピニオンより進出側の位置で前記第2可動扉に枢支されている、第5の発明のホーム柵である。
【0014】
第7の発明は、前記第1~第N可動扉は入れ子構造である、第1~第6の何れかの発明のホーム柵である。
【0015】
第8の発明は、第m可動扉(mは2~Nまでの整数)のスライド移動速度は、前記第1可動扉のスライド移動速度のm倍に設定されている、第1~第7の何れかの発明のホーム柵である。
【0016】
第9の発明は、第1~第8の何れかの発明のホーム柵2台を、一方のホーム柵がプラットホーム長手方向の一方向側を前記乗降口とし、他方のホーム柵がプラットホーム長手方向の他方向側を前記乗降口とするように配置して構成した両開きホーム柵であって、前記ホーム柵2台の中間に非常扉部を備えた両開きホーム柵である。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明のホーム柵は、駆動機構として、ラック・アンド・ピニオン機構を用いる。ラック・アンド・ピニオン機構は、タイミングベルトやワイヤー、チェーンを用いる駆動機構に比べて、歯車の噛み合わせにより動力を伝達するので伝達効率が安定的且つ高効率で、更に耐久性に優れる。よって、従来よりも点検周期が長い2段式のホーム柵を実現できる。
【0018】
第2の発明によれば、第2可動扉の進出量をより稼ぐことができる。
【0019】
第3の発明によれば、従来よりも点検周期が長い3段式のホーム柵を実現できる。
【0020】
第4の発明によれば、第3可動扉の進出量をより稼ぐことができる。
【0021】
第5の発明によれば、従来よりも点検周期が長い4段式のホーム柵を実現できる。
【0022】
第6の発明によれば、第4可動扉の進出量をより稼ぐことができる。
【0023】
第7の発明によれば、可動扉を入れ子構造とすることができる。
【0024】
第8の発明によれば、複数の可動扉が等速で移動する構成に比べて、乗降口の開閉に要する時間を大幅に短縮できる。
【0025】
第9の発明によれば、第1~第8の何れかの発明の効果を奏するホーム柵2台の中間に非常扉部を備えた両開きホーム柵を実現できる。
例えば、5ドアや6ドアのようなドア間隔が短い車両の列車が停車するホームに設置するホーム柵とする場合、特許文献1や特許文献2のような2段式ホーム柵にすると、広開口にした分だけ戸袋の長さを短くする必要がある。ところが、扉の駆動機構の構成機器が戸袋を占領しているので、非常扉を設ける場合は、2つの戸袋の間に非常扉を追加することになり、非常扉と2つの戸袋を含めた戸袋の長さが長くなって広開口が出来なくなることが起こる。そのため、広開口を優先し、非常扉の無いものしかできなかった。本発明の場合は戸袋の進出側に駆動機構があり、後退側は可動扉を収めるだけなので、2つのホーム柵を合わせた戸袋の中の可動扉が進出したスペースに非常口を設けることができる。しかも、両ホーム柵の互いの第1可動扉をラップさせると更に戸袋の長さを短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態におけるホーム柵の構成の一例を示す図であって、軌道側から見た正面図。
図2】第1実施形態におけるホーム柵の主要構成要素を選択して示した図であって、軌道側から見た閉状態の正面透視図。
図3】第1実施形態におけるホーム柵の主要構成要素を選択して示した図であって、進退方向の進出側から見た側面透視図。
図4】第1実施形態におけるホーム柵の動作について説明するための図であって、主要構成要素を選択して示した軌道側から見た正面透視図。
図5】第1実施形態におけるホーム柵の主要構成要素を選択して示した図であって、軌道側から見た開状態の正面透視図。
図6】第2実施形態における両開きホーム柵の構成の一例を示す図であって、軌道側から見た正面透視図。
図7】2段引戸式ホーム柵の構成例を示す軌道側から見た正面透視図。
図8】4段引戸式ホーム柵の構成例を示す軌道側から見た正面透視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態の一例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0028】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態におけるホーム柵の構成の一例を示す図であって、軌道側から見た正面図である。図1(1)が、可動扉を進出させて乗降口を閉じた全閉状態、図1(2)が、可動扉を戸袋部に収納して乗降口を開いた全開状態、をそれぞれ示している。なお、理解を容易にするために、可動扉をスライド可能に支持する支持構造や、制御装置、電源装置などの図示は省略されている。
【0029】
ホーム柵2(2R,2L)は、プラットホーム3の軌道側端部に設置され、戸袋部10から第1可動扉11と第2可動扉12と第3可動扉13とを進退させるようにスライド移動させることで乗降口を開閉する3段引戸式のホーム柵である。
【0030】
ホーム柵2には、右型ホーム柵2Rと、左型ホーム柵2Lと、の2種類がある。
右型ホーム柵2Rは、第1可動扉11と第2可動扉12と第3可動扉13とを軌道側から見て戸袋部10の右方向へ進出させるように構成されている。左型ホーム柵2Lは、第1可動扉11と第2可動扉12と第3可動扉13とを軌道側から見て戸袋部10の左方向へ進出させるように構成されている。右型ホーム柵2Rの構成と、左型ホーム柵2Lの構成は、基本的には左右が反転しているが同じ構成を有する。ゆえに、第1実施形態の説明では、両者を代表して右型ホーム柵2Rを本実施形態のホーム柵2として詳しく述べることとする。また、右型ホーム柵2Rを示す各図の右方向を可動扉の進退方向の「進出側」「先端側」「前」として説明する。
【0031】
図2は、ホーム柵2の主要構成要素を選択して示した図であって、軌道側から見た正面透視図である。図3は、ホーム柵2の主要構成要素を選択して示した図であって、進退方向の進出側から見た側面透視図である。なお、これらの図では、理解を容易にするために、可動扉をスライド可能に支持する支持構造や、制御装置、電源装置などの図示は省略されている。支持構造は、ガイドレールとスライダとの組み合わせなどで実現できる。
【0032】
戸袋部10は、進退方向の進出側が開口する箱形構造体であって、プラットホーム3に据え付けられる。第1可動扉11は、下方と進退方向の進出側とが開口する箱形構造体であって、戸袋部10の内側で、進退方向へスライド可能に支持されている。第2可動扉12は、下方と進退方向の進出側が開口する箱形構造体であって、第1可動扉11の内側で、進退方向へスライド可能に支持されている。第3可動扉13は、板状体であって、第2可動扉12の内側で、進退方向へスライド可能に支持されている。つまり、第1可動扉11~第3可動扉13は、入れ子構造である。
【0033】
そして、これらの可動扉をスライド移動させるための要素として、ホーム柵2は、第1ラック・アンド・ピニオン機構部21と、第2ラック・アンド・ピニオン機構部22と、第3ラック・アンド・ピニオン機構部23と、第4ラック・アンド・ピニオン機構部24と、モータ30と、を有する。
【0034】
第1ラック・アンド・ピニオン機構部21は、戸袋部10に枢支された第1ピニオン21pと、第1可動扉11に設けられた第1ラック21rとを有する。具体的には、第1ラック21rは、第1可動扉11の下部にて歯が上向きとなるように設けられている。第1ピニオン21pは第1ラック21rに上方から噛み合うように設置されている。つまり、第1ラック・アンド・ピニオン機構部21は、戸袋部10に対して第1可動扉11をスライド移動させる機構部である。
【0035】
第2ラック・アンド・ピニオン機構部22は、第1ピニオン21pと連なり戸袋部10に枢支された第2ピニオン22pと、第2可動扉12に設けられた第2ラック22rとを有する。具体的には、第2ラック22rは、第2可動扉12の下部にて歯が下向きとなるように設けられている。第2ピニオン22pは、回転軸32が戸袋部10のホーム側の内側面に固定されており、第2ラック22rに下方から噛み合うように設置されている。つまり、第2ラック・アンド・ピニオン機構部22は、戸袋部10に対して第2可動扉12をスライド移動させる機構部である。また、第2ピニオン22pが第1ピニオン21pと連なるため、第2ラック・アンド・ピニオン機構部22は、第1可動扉11に対して第2可動扉12をスライド移動させる機構部であるとも言える。
【0036】
第1ピニオン21pと第2ピニオン22pとの相対位置に着目すると、可動扉の進退方向において、第2ピニオン22pは、第1ピニオン21pより進退方向の進出側の位置で戸袋部10に枢支されている。これにより、第1ピニオン21pより第2可動扉12の進退方向の後退側の位置にて第2ピニオンを枢支する場合よりも、第2可動扉12がより進出できるように、進出距離を稼ぐことができる。
【0037】
第3ラック・アンド・ピニオン機構部23は、第1可動扉11に枢支された第3ピニオン23pと、第2可動扉12に設けられた第3ラック23rと、を有する。具体的には、第3ラック23rは、第2可動扉12の下部にて歯が上向きとなるように設けられている。第3ピニオン23pは、回転軸33が第1可動扉11のホーム側の内側面に固定されており、第3ラック23rに上方から噛み合うように設置されている。
【0038】
第4ラック・アンド・ピニオン機構部24は、第3ピニオン23pと連なり第1可動扉11に枢支された第4ピニオン24pと、第3可動扉13に設けられた第4ラック24rとを有する。具体的には、第4ラック24rは、第3可動扉13の下部にて歯が下向きとなるように設けられている。第4ピニオン24pは、回転軸34が第1可動扉11のホーム側の内側面に固定されており、第4ラック24rに下方から噛み合うように設置されている。
【0039】
第3ピニオン23pと第4ピニオン24pとの相対位置に着目すると、可動扉の進退方向において、第4ピニオン24pは、第3ピニオン23pより進退方向の進出側の位置で第1可動扉11に枢支されている。これにより、第3ピニオン23pより第3可動扉13の進退方向の後退側の位置にて第4ピニオンを枢支する場合よりも、第3可動扉13がより進出できるように、進出距離を稼ぐことができる。
【0040】
モータ30は、戸袋部10に固定されており、その駆動軸31は第1ピニオン21pの回転軸に接続されている。つまり、モータ30は、第1ラック・アンド・ピニオン機構部21の第1ピニオン21pを駆動する。本実施形態では、駆動軸31が第1ピニオン21pの回転軸と同じ構成となっているが、適宜、中間歯車を介して連なる構成としてもよい。
【0041】
そして、第1ラック・アンド・ピニオン機構部21と、第2ラック・アンド・ピニオン機構部22と、第3ラック・アンド・ピニオン機構部23と、第4ラック・アンド・ピニオン機構部24との各諸元の関係は、第m可動扉(mは2~Nまでの整数)のスライド移動速度が第1可動扉11のスライド移動速度のm倍となるように歯車比が設定されている。
【0042】
図4は、ホーム柵2(2R)の動作について説明するための図であって、主要構成要素を選択して示した軌道側から見た正面透視図である。なお、図4中の白矢印は、白矢印1つの長さで第1可動扉11の移動速度を表し、白矢印2つの場合には第1可動扉11の2倍の移動速度で移動することを表している。
ホーム柵2(2R)を、乗降口を閉じた全閉状態(図1(1)参照)から、乗降口を開いた全開状態(図1(2)参照)へ、状態を変化させるには、第1ピニオン21pが軌道側から見て時計回りに回転するようにモータ30を駆動させる。
【0043】
第1ピニオン21pが時計回りに回転することで、第1ラック21rは進退方向の後退側へ引かれ、第1可動扉11が進退方向の後退側(戸袋部10へ収容される方向)へ移動する。
また、第2ピニオン22pは、第1ピニオン21pと噛み合って直接連なっているので、反時計回りに回転する。これにより、第2ラック22rも進退方向の後退側へ引かれ、第2可動扉12は進退方向の後退側へ移動する。
【0044】
そして、第2可動扉12が進退方向の後退側へ移動することで、第3ラック23rも進退方向の後退側へ引かれる。第3ピニオン23pは、第1可動扉11に枢支されているので、第1可動扉11とともに進退方向の後退側へ移動しながらも、第1可動扉11に対する第2可動扉12の相対移動に伴って時計回りに回転することとなる。そして、第4ピニオン24pは、第3ピニオン23pと噛み合って直接連なっているので、反時計回りに回転することとなる。これにより、第4ラック24rも進退方向の後退側へ引かれ、第3可動扉13も進退方向の後退側へ移動する。
【0045】
よって、モータ30により駆動される第1ピニオン21pの回転に噛合して第2ピニオン22pが回転することで、第1可動扉11および第2可動扉12が連動する。そして、第2可動扉12の移動に伴う第3ピニオン23pの回転に噛合して第4ピニオン24pが回転することで、結果的に、第1可動扉11と第2可動扉12と第3可動扉13とが連動する。
【0046】
そして、モータ30を所定量回転させる、または、第1可動扉11の後端位置が全開状態の所定位置に達したことを検出するセンサー(非図示)を設けておいて、当該センサーによる検出があるまでモータ30を回転させると、図5に示すように、ホーム柵2の各可動扉が全開状態の所定位置に収容される。また、当該センサーによる検出に応じてモータ30を停止させる。
【0047】
なお、全開状態から全閉状態へ状態を変化させるには、モータ30を、第1ピニオン21pが反時計回りに回転するように駆動させればよい。
【0048】
以上、本実施形態によれば、駆動機構として、ラック・アンド・ピニオン機構を用いる。ラック・アンド・ピニオン機構は、タイミングベルトやワイヤー、チェーンを用いる駆動機構に比べて、歯車の噛み合わせにより動力を伝達するので伝達効率が安定的且つ高効率で、更に耐久性に優れる。よって、点検周期が従来より長い多段式のホーム柵を実現することができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、本発明を適用した第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付与して重複する説明は省略する。
【0050】
図6は、両開きホーム柵5の構成例を示す図であって、主要構成要素を選択的に示した軌道側から見た正面透視図である。図6(1)が全閉状態、図6(2)が全開状態を示している。
【0051】
両開きホーム柵5は、右型ホーム柵2Rと左型ホーム柵2Lとを、1つの戸袋部10Bのホーム長手方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けた可動柵であって、隣接する2つの乗降口の間に設置される。
【0052】
具体的には、両開きホーム柵5の戸袋部10Bは、プラットホーム長手方向の一方側と他方側との2方向に開口している。そして、両開きホーム柵5の戸袋部10Bは、右型ホーム柵2Rを、戸袋部10Bのプラットホーム長手方向の一方向側(図6における右側)に有し、当該一方向側の乗降口を開閉する。また、両開きホーム柵5は、左型ホーム柵2Lを、戸袋部10Bのプラットホーム長手方向の他方向側(図6における左側)に有し、当該他方向側の乗降口を開閉する。そして、両開きホーム柵5は、戸袋部10Bの右型ホーム柵2Rと左型ホーム柵2Lとの中間に、非常扉部19を備える。
【0053】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる、非常口を備えた両開きホーム柵を実現できる。
【0054】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な形態は上記実施形態に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0055】
上記実施形態では、ホーム柵2(2R,2L)として、可動扉が3枚の例を例示したが、可動扉の数は適宜設定可能である。例えば、図7に示す2段引戸式ホーム柵2Dのように、上記第1実施形態をベースにして、第3可動扉13と、第3ラック・アンド・ピニオン機構部23と、第4ラック・アンド・ピニオン機構部24と、を省略する構成も可能である。同様の省略は、第2実施形態にも適用できる。
【0056】
また、図8に示す4段引戸式ホーム柵2Qのように、第4可動扉14と、第5ラック・アンド・ピニオン機構部25と、第6ラック・アンド・ピニオン機構部26と、を追加する構成も可能である。
【0057】
具体的には、4段引戸式ホーム柵2Qの第3可動扉13は、第1実施形態の第2可動扉12と同様の箱型構造とし、第4可動扉14を第1実施形態の第3可動扉13と同様の構成とする。
【0058】
第5ラック・アンド・ピニオン機構部25は、第2可動扉12に枢支された第5ピニオン25pと、第3可動扉13に設けられた第5ラック25rとを有する。
第6ラック・アンド・ピニオン機構部26は、第5ピニオン25pと連なり第2可動扉12に枢支された第6ピニオン26pと、第4可動扉14に設けられた第6ラック26rとを有する。
【0059】
よって、4段引戸式ホーム柵2Qでは、第3可動扉13の移動に伴う第5ピニオン25pの回転に噛合して第6ピニオン26pが回転することで、結果として、第1可動扉11・第2可動扉12・第3可動扉13・第4可動扉14が連動することとなる。
同様の構成は、第2実施形態にも適用できる。
【0060】
また、上記実施形態においては、第1ピニオン21pと第2ピニオン22p、第3ピニオン23pと第4ピニオン24pとは、それぞれ直接噛み合って連なる構成となっているが、適宜、中間歯車を介して連なる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
2…ホーム柵
2L…左型ホーム柵
2R…右型ホーム柵
3…プラットホーム
5…両開きホーム柵
10、10B…戸袋部
11…第1可動扉
12…第2可動扉
13…第3可動扉
14…第4可動扉
19…非常扉部
21…第1ラック・アンド・ピニオン機構部
21p…第1ピニオン
21r…第1ラック
22…第2ラック・アンド・ピニオン機構部
22p…第2ピニオン
22r…第2ラック
23…第3ラック・アンド・ピニオン機構部
23p…第3ピニオン
23r…第3ラック
24…第4ラック・アンド・ピニオン機構部
24p…第4ピニオン
24r…第4ラック
25…第5ラック・アンド・ピニオン機構部
25p…第5ピニオン
25r…第5ラック
26…第6ラック・アンド・ピニオン機構部
26p…第6ピニオン
26r…第6ラック
30…モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8