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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】分光器、及び分光器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/18 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G01J3/18
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019014159
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020122698
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】能野 隆文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝彦
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148487(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108457(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-4/04
G01J 7/00-9/04
G02B 5/18,5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部、及び前記底壁部の一方の側に配置された側壁部を有する支持体と、
分光空間を介して、前記底壁部における前記一方の側の表面と向かい合うように、前記支持体によって支持された光検出素子と、
少なくとも前記底壁部における前記一方の側の前記表面に設けられた樹脂成形層と、
前記樹脂成形層上に設けられ、前記底壁部上において光学機能部を構成する反射層と、を備え、
前記樹脂成形層は、前記光学機能部に対応する形状を有する第1部分と、前記第1部分を包囲し且つ前記第1部分よりも薄い第2部分と、を有
前記樹脂成形層は、少なくとも前記底壁部における前記一方の側の前記表面に形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に形成された第2樹脂層と、を含み、
前記第1部分は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層によって構成されており、
前記第2部分は、前記第1樹脂層によって構成されている、分光器。
【請求項2】
前記第1樹脂層は、前記第2樹脂層よりも薄い、請求項に記載の分光器。
【請求項3】
前記光学機能部は、分光部である、請求項1又は2に記載の分光器。
【請求項4】
前記光学機能部は、ミラーである、請求項1~のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項5】
前記第1部分は、前記底壁部における前記一方の側の前記表面のうちの凹曲面に設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項6】
前記第2部分の少なくとも一部は、前記底壁部における前記一方の側の前記表面と前記側壁部における前記分光空間側の表面との境界領域に達している、請求項1~のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項7】
前記第2部分の少なくとも一部は、前記側壁部における前記分光空間側の前記表面に達している、請求項に記載の分光器。
【請求項8】
前記側壁部は、前記底壁部の前記一方の側において前記分光空間を包囲している、請求項1~のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項9】
前記第1部分の厚さは、21μm~210μmであり、前記第2部分の厚さは、1μm~10μmである、請求項1~のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項10】
前記樹脂成形層において、前記第1部分と前記第2部分との間には、前記樹脂成形層の厚さが変化する領域が存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項11】
前記第2部分の面積は、前記第1部分の面積よりも大きい、請求項1~1のいずれか一項に記載の分光器。
【請求項12】
底壁部、及び前記底壁部の一方の側に配置された側壁部を有する支持体を用意する第1工程と、
前記底壁部における前記一方の側の表面に第1樹脂材料を配置し、加熱によって前記第1樹脂材料を層状に拡げ、前記第1樹脂材料を硬化させて、少なくとも前記底壁部における前記一方の側の前記表面に第1樹脂層を形成する第2工程と、
前記第1樹脂層上に第2樹脂材料を配置し、成形型によって前記第2樹脂材料を光学機能部に対応する形状に成形し、前記第2樹脂材料を硬化させて、少なくとも前記底壁部における前記一方の側の前記表面に第2樹脂層を形成する第3工程と、
前記第2樹脂層上に反射層を形成する第4工程と、
分光空間を介して、前記底壁部における前記一方の側の前記表面と向かい合うように、前記支持体に光検出素子を支持させる第5工程と、を備える、分光器の製造方法。
【請求項13】
前記第2工程においては、前記第1樹脂材料の量、加熱の温度及び加熱の時間の少なくとも1つを調整することにより、前記第1樹脂層の拡がり状態を調整する、請求項1に記載の分光器の製造方法。
【請求項14】
前記第1樹脂材料及び前記第2樹脂材料は、同一の樹脂材料である、請求項1又は1に記載の分光器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光器、及び分光器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体と、支持体の底壁部の表面に設けられた分光部と、分光部と向かい合うように支持体の側壁部によって支持された光検出素子と、を備える分光器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-354176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような分光器においては、分光部が次のように形成される場合がある。すなわち、底壁部の表面に樹脂材料を配置し、成形型によって樹脂材料を分光部に対応する形状に成形し、樹脂材料を硬化させて、樹脂成形層を形成する。続いて、樹脂成形層上に反射層を形成して、分光部を形成する。
【0005】
この場合に、樹脂成形層を薄く形成すると、底壁部の表面状態の影響が樹脂成形層に現れ、結果として、分光精度が低下するおそれがある。一方で、樹脂成形層を厚く形成すると、分光器の使用環境の温度変化による樹脂成形層の変形量が大きくなり、結果として、分光精度が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、信頼性の高い分光器、及びそのような分光器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分光器は、底壁部、及び底壁部の一方の側に配置された側壁部を有する支持体と、分光空間を介して、底壁部における一方の側の表面と向かい合うように、支持体によって支持された光検出素子と、少なくとも底壁部における一方の側の表面に設けられた樹脂成形層と、樹脂成形層上に設けられ、底壁部上において光学機能部を構成する反射層と、を備え、樹脂成形層は、光学機能部に対応する形状を有する第1部分と、第1部分を包囲し且つ第1部分よりも薄い第2部分と、を有する。
【0008】
この分光器では、樹脂成形層において、反射層が設けられた第1部分が、第1部分よりも薄い第2部分によって包囲されている。これにより、底壁部の表面状態の影響が現れ難く、且つ分光器の使用環境の温度変化による変形量が大きくなり難い、必要十分な厚さを第1部分において確保しつつ、第1部分よりも薄い第2部分によって、支持体から樹脂成形層が剥がれるのを抑制することができる。よって、この分光器によれば、高い信頼性を確保することができる。
【0009】
本発明の分光器では、樹脂成形層は、少なくとも底壁部における一方の側の表面に形成された第1樹脂層と、第1樹脂層上に形成された第2樹脂層と、を含み、第1部分は、第1樹脂層及び第2樹脂層によって構成されており、第2部分は、第1樹脂層によって構成されていてもよい。これにより、光学機能部に対応する形状として必要十分な厚さを有する第1部分と、第1部分を包囲し且つ第1部分よりも薄い第2部分と、を確実に得ることができる。
【0010】
本発明の分光器では、第1樹脂層は、第2樹脂層よりも薄くてもよい。これにより、第1樹脂層によって構成された第2部分において、支持体の表面の凹凸を埋め得ると共に支持体からの剥がれを抑制し得る必要十分な厚さを確保しつつ、第1樹脂層及び第2樹脂層によって構成された第1部分において、分光器の使用環境の温度変化による変形量が大きくなり難い必要十分な厚さを確保することができる。
【0011】
本発明の分光器では、光学機能部は、分光部であってもよい。これにより、分光部に所望の光学機能を適切に発揮させることができる。
【0012】
本発明の分光器では、光学機能部は、ミラーであってもよい。これにより、ミラーに所望の光学機能を適切に発揮させることができる。
【0013】
本発明の分光器では、第1部分は、底壁部における一方の側の表面のうちの凹曲面に設けられていてもよい。これにより、適切な樹脂成形が困難な凹曲面においても、光学機能部に対応する形状として必要十分な厚さを有する第1部分を確実に得ることができる。
【0014】
本発明の分光器では、第2部分の少なくとも一部は、底壁部における一方の側の表面と側壁部における分光空間側の表面との境界領域に達していてもよい。これにより、支持体から樹脂成形層が剥がれるのを確実に抑制することができる。
【0015】
本発明の分光器では、第2部分の少なくとも一部は、側壁部における分光空間側の表面に達していてもよい。これにより、支持体から樹脂成形層が剥がれるのをより確実に抑制することができる。
【0016】
本発明の分光器では、側壁部は、底壁部の一方の側において分光空間を包囲していてもよい。これにより、分光空間に迷光が進入するのを抑制することができる。
【0017】
本発明の分光器では、第1部分の厚さは、21μm~210μmであり、第2部分の厚さは、1μm~10μmであってもよい。これにより、第1部分においては、底壁部の表面状態の影響が現れたり、分光器の使用環境の温度変化による変形量が大きくなったりするのを抑制することができ、第2部分においては、支持体から樹脂成形層が剥がれるのを抑制することができる。
【0018】
本発明の分光器では、樹脂成形層において、第1部分と第2部分との間には、樹脂成形層の厚さが変化する領域が存在してもよい。これにより、第1部分及び第2部分のそれぞれにおいて、適切な厚さを確保することができる。
【0019】
本発明の分光器では、第2部分の面積は、第1部分の面積よりも大きくてもよい。これにより、支持体から樹脂成形層が剥がれるのをより確実に抑制することができる。
【0020】
本発明の分光器の製造方法は、底壁部、及び底壁部の一方の側に配置された側壁部を有する支持体を用意する第1工程と、底壁部における一方の側の表面に第1樹脂材料を配置し、加熱によって第1樹脂材料を層状に拡げ、第1樹脂材料を硬化させて、少なくとも底壁部における一方の側の表面に第1樹脂層を形成する第2工程と、第1樹脂層上に第2樹脂材料を配置し、成形型によって第2樹脂材料を光学機能部に対応する形状に成形し、第2樹脂材料を硬化させて、少なくとも底壁部における一方の側の表面に第2樹脂層を形成する第3工程と、第2樹脂層上に反射層を形成する第4工程と、分光空間を介して、底壁部における一方の側の表面と向かい合うように、支持体に光検出素子を支持させる第5工程と、を備える。
【0021】
この分光器の製造方法では、光学機能部に対応する形状を有する第2樹脂層において、底壁部の表面状態の影響が現れたり、分光器の使用環境の温度変化による変形量が大きくなったりするのを抑制することができる。よって、この分光器の製造方法によれば、信頼性の高い分光器を得ることができる。
【0022】
本発明の分光器の製造方法では、第2工程においては、第1樹脂材料の量、加熱の温度及び加熱の時間の少なくとも1つを調整することにより、第1樹脂層の拡がり状態を調整してもよい。これにより、所望の厚さ及び面積を有する第1樹脂層を得ることができる。
【0023】
本発明の分光器の製造方法では、第1樹脂材料及び第2樹脂材料は、同一の樹脂材料であってもよい。これにより、安定的な樹脂成形層を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、信頼性の高い分光器、及びそのような分光器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態の分光器の斜視図である。
図2図1に示されるII-II線に沿っての分光器の断面図である。
図3図1に示されるIII-III線に沿っての分光器の断面図である。
図4】一実施形態の分光器の製造方法の第2工程を示す図である。
図5図4に示される第2工程が終了した時点での支持体の斜視図である。
図6】一実施形態の分光器の製造方法の第3工程を示す図である。
図7】実施例の方法によって製造された分光器の分光部の写真、及び比較例の方法によって製造された分光器の分光部の写真を示す図である。
図8】実施例の方法によって製造された分光器のスペクトル形状を示す図である。
図9】比較例の方法によって製造された分光器のスペクトル形状を示す図である。
図10図4に示される第2工程が終了した時点での支持体の斜視図である。
図11図4に示される第2工程が終了した時点での支持体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[分光器の構成]
【0027】
図1に示されるように、分光器1は、支持体10と、カバー20と、を備えている。分光器1では、支持体10及びカバー20によって箱形のパッケージ2が構成されている。支持体10は、成形回路部品(MID:Molded Interconnect Device)として構成されており、支持体10には、複数の配線11が設けられている。一例として、分光器1は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれの方向における長さが15mm以下の直方体状の形状を呈している。特に、分光器1は、Y軸方向における長さが数mm程度にまで薄型化されている。
【0028】
図2及び図3に示されるように、パッケージ2内には、光検出素子30、樹脂成形層40及び反射層50が設けられている。反射層50は、光学機能部として、ミラー51及び分光部52を構成している。光検出素子30には、光通過部31、ミラー32及び光検出部33が設けられている。光通過部31、ミラー51、ミラー32、分光部52及び光検出部33は、Z軸方向から見た場合に、X軸方向に平行な同一直線上に並んでいる。
【0029】
分光器1では、Z軸方向に沿って光通過部31を通過した光L1は、ミラー51で反射され、ミラー51で反射された光L1は、ミラー32で反射される。ミラー32で反射された光L1は、分光部52で分光されると共に反射される。分光部52で分光されると共に反射された光のうち0次光以外の光L2は、光検出部33に入射して光検出部33で検出される。このように、分光器1では、光通過部31から分光部52に至る光L1の光路、及び分光部52から光検出部33に至る光L2の光路を含む分光空間Sがパッケージ2内に形成されている。
【0030】
支持体10は、底壁部12及び側壁部13を有している。底壁部12及び側壁部13は、例えばLCP(Liquid Crystal Polymer)等の合成樹脂によって一体的に形成されている。底壁部12における分光空間S側(一方の側)の表面12aには、凹部14及び周辺部15,16が設けられている。側壁部13は、底壁部12の分光空間S側に配置されている。側壁部13は、底壁部12の分光空間S側において分光空間Sを包囲している。本実施形態では、側壁部13は、Z軸方向から見た場合に凹部14及び周辺部15,16を包囲する矩形枠状の形状を呈している。より具体的には、側壁部13は、一対の第1側壁17及び一対の第2側壁18を有している。一対の第1側壁17は、Z軸方向から見た場合に、X軸方向において分光空間Sを挟んで向かい合っている。一対の第2側壁18は、Z軸方向から見た場合に、Y軸方向において分光空間Sを挟んで向かい合っている。
【0031】
側壁部13には、第1拡幅部13a及び第2拡幅部13bが設けられている。第1拡幅部13aは、分光空間Sに対して底壁部12とは反対側(分光空間Sの一方の側)において、分光空間Sよりも、X軸方向に拡幅された段差部である。第2拡幅部13bは、第1拡幅部13aに対して底壁部12とは反対側(第1拡幅部13aの一方の側)において、第1拡幅部13aよりも、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向に拡幅された段差部である。第2拡幅部13bは、側壁部13によって構成された開口部である。第1拡幅部13aの底面には、各配線11の一方の端部が端子11aとして配置されている。各配線11は、第1拡幅部13aから、第2拡幅部13b、及び第1側壁17の外側表面を介して、図1に示されるように、一方の第2側壁18の外側表面18bに至っている。外側表面18bには、各配線11の他方の端部が端子11bとして配置されている。
【0032】
図2に示されるように、X軸方向において向かい合う第1拡幅部13aの側面13aは、第1拡幅部13aの底面13aと鈍角を成すように傾斜している。X軸方向において向かい合う第2拡幅部13bの側面13bは、第2拡幅部13bの底面13bと鈍角を成すように傾斜している。これらにより、配線11を容易に且つ精度良く引き回すことができると共に、配線11に生じる応力を低減することができる。また、支持体10における底壁部12とは反対側の端面10aのうち、配線11が配置される領域10aは、底壁部12側に凹んでいる。これにより、例えば分光器1の実装時等に、配線11が他の部材と接触するのを防止することができると共に、配線11の長さを低減することができる。
【0033】
図2及び図3に示されるように、凹部14の内面は、凹曲面14aである。すなわち、底壁部12の表面12aは、凹曲面14aを含んでいる。本実施形態では、凹曲面14aは、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向において曲面状に湾曲している。凹曲面14aは、例えば、球面の一部に対応する形状を呈している。各周辺部15,16は、X軸方向において凹部14と隣接している。周辺部15は、Z軸方向から見た場合に、凹部14に対して一方の第1側壁17側に位置している。周辺部16は、Z軸方向から見た場合に、凹部14に対して他方の第1側壁17側に位置している。周辺部15は、傾斜面15aを含んでいる。傾斜面15aは、X軸方向に沿って凹部14から離れるほどZ軸方向に沿って光検出素子30から離れるように、傾斜している。
【0034】
光検出素子30は、側壁部13の第1拡幅部13aに配置されている。光検出素子30は、分光空間Sを介して、底壁部12の表面12aと向かい合うように、側壁部13によって支持されている。光検出素子30は、基板35を有している。基板35は、半導体材料(例えば、シリコン等)によって矩形板状に形成されている。光通過部31は、基板35に形成された光通過孔である。本実施形態では、光通過部31は、Y軸方向に延在するスリットであり、光通過部31における光L1の入射側の端部は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向において、光L1の入射側に向かって末広がりとなっている。ミラー32は、基板35における分光空間S側の表面35aのうち、光通過部31と光検出部33との間の領域に設けられている。ミラー32は、例えば、Al、Au等からなる金属膜である。本実施形態では、ミラー32は、平面ミラーである。
【0035】
光検出部33は、基板35の表面35aに設けられている。より具体的には、光検出部33は、基板35に貼り付けられているのではなく、半導体材料からなる基板35に作り込まれている。つまり、光検出部33は、半導体材料からなる基板35内の第1導電型の領域と、該領域内に設けられた第2導電型の領域とで形成された複数のフォトダイオードによって、構成されている。光検出部33は、例えば、フォトダイオードアレイ、C-MOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等として構成されたものであり、X軸方向に沿って並ぶ複数の光検出チャネルを有している。光検出部33の各光検出チャネルには、異なる波長を有する光L2が入射させられる。光検出部33は、表面入射型のフォトダイオードとして構成されており、基板35の表面35aには、光検出部33に対して電気信号を入出力するための複数の端子36が設けられている。
【0036】
第1拡幅部13aにおいて向かい合う光検出素子30の端子36と配線11の端子11aとは、例えば、Au、半田等からなる複数のバンプ(接続部材)61によって、電気的且つ物理的に接続されている。光検出素子30と第1拡幅部13aとの間には、複数のバンプ61を覆うように、樹脂からなる補強部材7が配置されている。
【0037】
カバー20は、側壁部13の第2拡幅部13bに配置されている。カバー20は、光検出素子30から離間している。カバー20と第2拡幅部13bとの間には、樹脂からなる接合部材4が配置されている。カバー20は、光透過部材21及び遮光層22を有している。光透過部材21は、光L1を透過させる材料(例えば、石英、硼珪酸ガラス(BK7)、パイレックス(登録商標)ガラス、コバールガラス等)によって矩形板状に形成されている。遮光層22は、光透過部材21における分光空間S側の表面21aに設けられている。遮光層22には、Z軸方向において光検出素子30の光通過部31と向かい合うように、光通過開口22aが形成されている。本実施形態では、光通過開口22aは、Y軸方向に延在するスリットである。カバー20は、光透過部材21、及び遮光層22の光通過開口22aを介して、Z軸方向沿って光L1を透過させる。
【0038】
なお、光L1が赤外域の光である場合には、光透過部材21の材料として、シリコン、ゲルマニウム等も有効である。また、光透過部材21に、AR(Anti Reflection)コートを施したり、所定波長の光のみを透過させるフィルタ機能を持たせたりしてもよい。また、遮光層22の材料としては、例えば、黒レジスト、Al等を用いることができる。
【0039】
樹脂成形層40は、少なくとも底壁部12の表面12aに設けられている。樹脂成形層40は、成形材料である樹脂材料を所定の形状で硬化(例えば、紫外線等による光硬化、熱硬化等)させることにより、形成されている。
【0040】
樹脂成形層40は、第1部分41及び第2部分42を有している。第1部分41は、ミラー51及び分光部52に対応する形状を有する部分であり、底壁部12の表面12aのうちの凹曲面14aに設けられている。より具体的には、第1部分41は、ミラー51に対応する形状を有する部分41a、及び分光部52に対応する形状を有する部分41bを含んでいる。本実施形態では、ミラー51に対応する形状は、凹面ミラーパターンであり、分光部52に対応する形状は、グレーティングパターンである。第2部分42は、第1部分41を包囲し且つ第1部分41よりも薄い部分である。本実施形態では、第2部分42は、底壁部12の表面12aのうちの傾斜面15a、周辺部16側の第1側壁17の内側表面17a、及び各第2側壁18の内側表面18aに達しており、周辺部15側の第1側壁17の内側表面17aに達していない。このように、第2部分42の少なくとも一部は、底壁部12の表面12aと側壁部13における分光空間S側の表面との境界領域を越えて、側壁部13における分光空間S側の表面に達している。
【0041】
なお、第1部分41が底壁部12の表面12aの全体に設けられ、第2部分42が底壁部12の表面12aに設けられていなくてもよい。また、第1部分41の少なくとも一部が側壁部13における分光空間S側の表面に達していてもよい。つまり、第1部分41は、底壁部12の表面12aの少なくとも一部に設けられていればよく、第2部分42は、第1部分41を包囲し且つ第1部分41よりも薄い部分であれば、底壁部12の表面12a及び側壁部13における分光空間S側の表面のうち、それらの少なくとも一部に設けられていればよい。
【0042】
底壁部12の表面12aの少なくとも一部に設けられた第1部分41は、当該少なくとも一部の表面形状に沿うように拡がる部分である。底壁部12の表面12a及び側壁部13における分光空間S側の表面のうち、それらの少なくとも一部に設けられた第2部分42は、当該少なくとも一部の表面形状に沿うように、例えば略均一な厚さで拡がる部分である。樹脂成形層40において、第1部分41と第2部分42との間には、樹脂成形層40の厚さが変化する領域が存在する。第2部分42の面積(支持体10の表面のうち第2部分42が拡がる部分の面積)は、第1部分41の面積(支持体10の表面のうち第1部分41が拡がる部分の面積)よりも大きい。本実施形態では、底壁部12の表面12aと、側壁部13における分光空間S側の表面とは、不連続な状態(物理的に互いに離れた状態、面と面との交線を介して互いに接続された状態等)で互いに接続されており、第2部分42の少なくとも一部は、不連続な部分を介して側壁部13における分光空間S側の表面に至っている。なお、第2部分42の少なくとも一部が、側壁部13における分光空間S側の表面の少なくとも一部に至っていればよい。第2部分42の少なくとも一部が、側壁部13における分光空間S側の表面のうち、分光空間Sを挟んで向かい合う一対の側壁(本実施形態では、一対の第1側壁17、一対の第2側壁18)の表面に至っていると、樹脂成形層40の剥がれ等を抑制することができる。本実施形態では、第1部分41の厚さは、21μm~210μmであり、第2部分42の厚さは、1μm~10μmである。第2部分42の厚さは、第1部分41の厚さの1/2以下であることが好ましく、第1部分41の厚さの1/3以下であることがより好ましい。これにより、樹脂成形層40の全体の厚さを抑制できると共に、支持体10と直接接触する第2部分42に生じる応力を抑制することができ、結果として、樹脂成形層40の全体に生じる応力を抑制することが可能となる。第1部分41及び第2部分42のそれぞれの厚さに関する数値は、支持体10の表面の凹凸を埋めた状態の表面を0とした場合の数値である。なお、第1部分41の厚さ(第1部分41の各部における支持体10の内側表面からの距離)が変化している場合には、その平均値を第1部分41の厚さと捉えることができる。また、第2部分42の厚さ(第2部分42の各部における支持体10の内側表面からの距離)が変化している場合には、その平均値を第2部分42の厚さと捉えることができる。
【0043】
反射層50は、樹脂成形層40上に設けられている。反射層50は、例えば、Al、Au等からなる金属膜である。反射層50は、樹脂成形層40のうち少なくとも第1部分41(より具体的には、少なくとも部分41a,41b)を覆うことにより、底壁部12上においてミラー51及び分光部52を構成している。本実施形態では、ミラー51は、凹面ミラーであり、分光部52は、X軸方向に沿って並ぶ複数のグレーティング溝52aを有する反射型グレーティングである。このように、ミラー51及び分光部52は、樹脂成形層40を介して、底壁部12の表面12aに設けられている。
[分光器の製造方法]
【0044】
まず、支持体10を用意する(第1工程)。続いて、図4の(a)に示されるように、底壁部12の表面12a(より具体的には、凹曲面14a)に第1樹脂材料43mを配置する(第2工程)。本実施形態では、第1樹脂材料43mは、紫外線硬化樹脂である。続いて、図4の(b)に示されるように、加熱によって第1樹脂材料43mを層状に拡げる。一例として、100℃に加熱されたホットプレート上に支持体10を5分間載置することにより、第1樹脂材料43mを層状に拡げる。第1樹脂材料43mが加熱されると、第1樹脂材料43mの粘度が低下し、支持体10の表面の凹凸を埋めるように、毛細管現象によって第1樹脂材料43mが拡がる。続いて、図4の(c)に示されるように、紫外線の照射によって第1樹脂材料43mを硬化させて、少なくとも底壁部12の表面12aに第1樹脂層43を形成する(第2工程)。
【0045】
以上の第2工程においては、第1樹脂材料43mの量、加熱の温度及び加熱の時間の少なくとも1つを調整することにより、第1樹脂層43の拡がり状態(すなわち、第1樹脂層43の厚さ、面積等)を調整する。例えば、第1樹脂材料43mの量、加熱の温度及び加熱の時間の少なくとも1つを増加させることにより、第1樹脂層43の面積を増加させることができる。本実施形態では、第1樹脂層43は、図5に示されるように、底壁部12の表面12aのうちの傾斜面15a、周辺部16側の第1側壁17の内側表面17a、及び各第2側壁18の内側表面18aに達する。
【0046】
続いて、図6の(a)に示されるように、第1樹脂層43上(より具体的には、第1樹脂層43のうち凹曲面14aに形成された部分上)に第2樹脂材料44mを配置する(第3工程)。本実施形態では、第2樹脂材料44mは、第1樹脂材料43mと同一の紫外線硬化樹脂である。続いて、図6の(b)に示されるように、成形型Mによって第2樹脂材料44mをミラー51及び分光部52(図2参照)に対応する形状に成形する(第3工程)。本実施形態では、成形型Mは、紫外線に対して透過性を有している。一例として、成形型Mは、底壁部12の表面12a(より具体的には、凹曲面14a)に対して一定の距離(21μm~210μm)で停止させられる。続いて、図6の(c)に示されるように、紫外線の照射によって第2樹脂材料44mを硬化させ、更に、必要に応じて加熱キュアを実施して、少なくとも底壁部12の表面12aに第2樹脂層44を形成する(第3工程)。
【0047】
以上の第2工程及び第3工程によって、樹脂成形層40は、少なくとも底壁部12の表面12aに形成された第1樹脂層43と、第1樹脂層43上に形成された第2樹脂層44と、を含むことになる。より具体的には、樹脂成形層40の第1部分41は、第1樹脂層43及び第2樹脂層44によって構成され、樹脂成形層40の第2部分42は、第1樹脂層43によって構成されることになる。第1樹脂層43は、第2樹脂層44よりも薄い。第1樹脂層43の厚さは、支持体10の表面の凹凸を埋め得る程度の厚さであり、1μm~10μmである。第2樹脂層44の厚さは、ミラー51及び分光部52に対応する形状を成形し得る程度の厚さであり、20μm~200μmである。第1樹脂層43の厚さに関する数値は、支持体10の表面の凹凸を埋めた状態の表面を0とした場合の数値であり、第2樹脂層44の厚さに関する数値は、第1樹脂層43の表面を0とした場合の数値である。なお、樹脂成形層40においては、第1樹脂層43と第2樹脂層44との境界が判別できない場合がある。
【0048】
続いて、例えば金属材料の蒸着によって第2樹脂層44上に反射層50を形成する(第4工程)。続いて、分光空間Sを介して、底壁部12の表面12aと向かい合うように、側壁部13に光検出素子30を支持させる(第5工程)。最後に、側壁部13にカバー20を支持させて、分光器1を得る。
[作用及び効果]
【0049】
分光器1では、樹脂成形層40において、反射層50が設けられた第1部分41が、第1部分41よりも薄い第2部分42によって包囲されている。これにより、底壁部12の表面状態の影響が現れ難く、且つ分光器1の使用環境の温度変化による変形量が大きくなり難い、必要十分な厚さを第1部分41において確保しつつ、第1部分41よりも薄い第2部分42によって、支持体10から樹脂成形層40が剥がれるのを抑制することができる。したがって、反射層50においてミラー51及び分光部52に所望の光学機能を適切に発揮させることができる。よって、分光器1によれば、高い信頼性を確保することができる。
【0050】
特に、分光器1では、ミラー51及び分光部52という反射型の光学機能部が設けられているため、透過型の光学機能部に比べ、支持体10の表面形状が光学機能部の光学特性与える影響が大きくなる。したがって、上述したような第1部分41及び第2部分42を樹脂成形層40が有することは、反射型の光学機能部が設けられ分光器1において、極めて有効である。
【0051】
また、分光器1では、樹脂成形層40の第1部分41が第1樹脂層43及び第2樹脂層44によって構成されており、樹脂成形層40の第2部分42が第1樹脂層43によって構成されている。これにより、ミラー51及び分光部52に対応する形状として必要十分な厚さを有する第1部分41と、第1部分41を包囲し且つ第1部分41よりも薄い第2部分42と、を確実に得ることができる。
【0052】
また、分光器1では、第1樹脂層43が第2樹脂層44よりも薄い。これにより、第1樹脂層43によって構成された第2部分42において、支持体10の表面の凹凸を埋め得ると共に支持体10からの剥がれを抑制し得る必要十分な厚さを確保しつつ、第1樹脂層43及び第2樹脂層44によって構成された第1部分41において、分光器1の使用環境の温度変化による変形量が大きくなり難い必要十分な厚さを確保することができる。
【0053】
また、分光器1では、樹脂成形層40の第1部分41が、底壁部12の表面12aのうちの凹曲面14aに設けられている。これにより、適切な樹脂成形が困難な凹曲面14aにおいても、ミラー51及び分光部52に対応する形状として必要十分な厚さを有する第1部分41を確実に得ることができる。
【0054】
また、分光器1では、樹脂成形層40の第2部分42の少なくとも一部が、側壁部13における分光空間S側の表面(すなわち、内側表面17a,18a)に達している。これにより、支持体10から樹脂成形層40が剥がれるのを確実に抑制することができる。
【0055】
また、分光器1では、側壁部13が、底壁部12の分光空間S側において分光空間Sを包囲している。これにより、分光空間Sに迷光が進入するのを抑制することができる。
【0056】
また、分光器1では、樹脂成形層40の第1部分41の厚さが21μm~210μmであり、樹脂成形層40の第2部分42の厚さが1μm~10μmである。これにより、第1部分41においては、底壁部12の表面状態の影響が現れたり、分光器1の使用環境の温度変化による変形量が大きくなったりするのを抑制することができ、第2部分42においては、支持体10から樹脂成形層40が剥がれるのを抑制することができる。
【0057】
また、分光器1では、樹脂成形層40において、第1部分41と第2部分42との間に、樹脂成形層40の厚さが変化する領域が存在する。これにより、第1部分41及び第2部分42のそれぞれにおいて、適切な厚さを確保することができる。また、当該領域において樹脂成形層40の厚さが徐々に変化し、第1部分41と第2部分42との間において急激な厚さの変化がなくなるため、応力が集中するのを抑制できる。
【0058】
また、分光器1では、第2部分42の面積が第1部分41の面積よりも大きい。これにより、支持体10から樹脂成形層40が剥がれるのをより確実に抑制することができる。
【0059】
また、分光器1の製造方法では、ミラー51及び分光部52に対応する形状を有する第2樹脂層44において、底壁部12の表面状態の影響が現れたり、分光器1の使用環境の温度変化による変形量が大きくなったりするのを抑制することができる。よって、分光器1の製造方法によれば、信頼性の高い分光器1を得ることができる。
【0060】
また、分光器1の製造方法では、第2工程において、第1樹脂材料43mの量、加熱の温度及び加熱の時間の少なくとも1つを調整することにより、第1樹脂層43の拡がり状態を調整する。これにより、所望の厚さ及び面積を有する第1樹脂層43を得ることができる。
【0061】
また、分光器1の製造方法では、第1樹脂材料43m及び第2樹脂材料44mは、同一の樹脂材料である。これにより、安定的な樹脂成形層40を得ることができる。
【0062】
分光器1においては、光検出素子30との熱膨張率の差を小さくすべきこと、配線11を形成する必要があること等を考慮すると、支持体10の材料選択の自由度が制限される。具体的には、支持体10の材料は、上述した合成樹脂の他では、セラミック等に制限される。これらの材料は、半導体、ガラス等に比べ、表面の凹凸(表面粗さ)が大きくなり易い。支持体10の表面の凹凸が大きいことは、樹脂成形層40の密着性が向上するという点では有効であるが、支持体10の表面状態の影響が樹脂成形層40に現れ、不要な縞模様、歪等がミラー51及び分光部52に生じる原因になる。また、支持体10の表面の凹凸が大きいことは、樹脂成形層40中にボイドが残存する原因にもなる。仮に、滑らかな表面を有する支持体10を形成することができたとしても、樹脂成形層40の密着性が低下するおそれがある。支持体10においては、底壁部12の一方の側に側壁部13が配置されているため、塗布及びブローで均一なプライマー層(樹脂成形層40の密着性を向上させるための下地層)を形成することも困難である。このような状況下、上述した分光器1の製造方法によれば、第1樹脂層43によって、支持体10の表面の凹凸の影響を緩和しつつ、第2樹脂層44によって、不要な縞模様、歪等がミラー51及び分光部52に生じたり、樹脂成形層40中にボイドが残存したりするのを防止することができる。なお、第1樹脂層43を形成せずに、第2樹脂層44を底壁部12の表面12aに直接且つ厚く形成しただけでは、樹脂成形層40中にボイドが残存し易く、また、分光器1の使用環境の温度変化による樹脂成形層40の変形量が大きくなり易い。
【0063】
図7の(a)は、実施例の方法によって製造された分光器1の分光部52の写真であり、図7の(b)は、比較例の方法によって製造された分光器1の分光部52の写真である。実施例の方法は、上述した分光器1の製造方法と同様であり、第1樹脂層43を厚さ5μmに形成し、第2樹脂層44を厚さ40μmに形成した。比較例の方法は、第1樹脂層43を形成しなかった点のみ、上述した分光器1の製造方法と異なり、第2樹脂層44を厚さ40μmに形成した。実施例の方法によって製造された分光器1の分光部52には、図7の(a)に示されるように、不要な縞模様、歪等が生じなかった。それに対し、実施例の方法によって製造された分光器1の分光部52には、図7の(b)に示されるように、不要な縞模様、歪等が生じた。
【0064】
図8は、実施例の方法によって製造された分光器1のスペクトル形状を示す図であり、図9は、比較例の方法によって製造された分光器1のスペクトル形状を示す図である。実施例の方法によって製造された分光器1については、図8に示されるように、複数のサンプルにおいて良好なスペクトル形状が得られた。それに対し、比較例の方法によって製造された分光器1については、図9に示されるように、基準の分光器1(理想的な分光器1)のスペクトル形状に比べ、各ピーク値の裾が拡がってしまい、良好なスペクトル形状が得られなかった。
[変形例]
【0065】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、分光器1は、複数の配線を有するフレキシブル配線基板によって構成された配線ユニットを更に備えていてもよい。その場合、配線ユニットにおける各配線の一方の端部は、支持体10の外側表面18bに配置された各配線11の端子11bと電気的且つ物理的に接続され(図1参照)、配線ユニットにおける各配線の他方の端部は、例えばコネクタとして構成される。また、支持体10は、合成樹脂によって形成されたものに限定されず、例えば、AlN、Al等のセラミックによって形成されたものであってもよい。また、支持体10は、四角形筒状の側壁部13を有するものに限定されず、四角形筒状以外の多角形筒状の側壁部13を有するものであってもよいし、円形筒状、楕円形筒状等の側壁部13を有するものであってもよい。また、支持体10において、側壁部13は、底壁部12の分光空間S側において分光空間Sを包囲しているものに限定されず、例えば、一対の第1側壁17を有し、一対の第2側壁18を有しないものであってもよい。また、側壁部13には、第1拡幅部13a及び第2拡幅部13bが設けられていなくてもよい。また、支持体10には、配線11が設けられていなくてもよい。その場合、支持体10とは別体で設けられたフレキシブル配線基板が光検出素子30と電気的に接続されていてもよいし、光検出素子30が外部配線と電気的に接続されるように構成されていてもよい。また、支持体10において、底壁部12の表面12aに設けられた凹部14の内面は、凹曲面14aに限定されず、例えば、平坦な底面を含むものであってもよい。
【0066】
また、光検出素子30には、例えばミラー32と分光部52との間に位置するように、0次光捕捉部(例えば、基板35に形成された光通過孔等)が設けられていてもよい。これにより、分光部52で分光されると共に反射された光のうち0次光を0次光捕捉部に入射させて0次光捕捉部で捕捉することができる。また、光検出素子30は、例えば、支持体10に取り付けられた別の部材に取り付けられることにより、支持体10に支持されていてもよい。一例として、光検出素子30は、側壁部13に掛け渡された支持部材に取り付けられることにより、側壁部13によって支持されていてもよい。その場合、光通過部31、ミラー32及び0次光捕捉部の少なくとも1つが当該支持部材に設けられていてもよい。また、光検出素子30は、例えば、カバー20、支持部材等と共に、光検出ユニットとして構成されていてもよい。その場合、光検出素子30は、例えば、カバー20、支持部材等に設けられた配線と電気的に接続されていてもよい。
【0067】
また、第1拡幅部13aにおいて向かい合う光検出素子30の端子36と配線11の端子11aとは、半田層(接続部材)によって、電気的且つ物理的に接続されていてもよい。また、光検出部33は、裏面入射型のフォトダイオードとして構成されていてもよい。その場合、基板35における表面35aとは反対側の表面に複数の端子36が配置されるため、対応する光検出素子30の端子36と配線11の端子11aとがワイヤ(接続部材)によって電気的に接続されていてもよい。また、例えば、分光部52が移動可能又は揺動可能に構成されることにより、分光部52で分光されると共に反射された複数の光L2(異なる波長を有する複数の光L2)が光検出部33に順次に入射させられる場合には、光検出部33は、単素子(1つの光検出チャネルを有するもの)として構成されていてもよい。その場合、分光部52は、光検出素子30側に設けられていてもよい。一例として、分光部52は、光検出素子30において移動可能又は揺動可能に構成されていてもよいし、光検出素子30が取り付けられた別の部材において移動可能又は揺動可能に構成されていてもよいし、カバー20において移動可能又は揺動可能に構成されていてもよい。
【0068】
また、光通過部31を通過した光L1が分光部で分光されると共に反射され、分光部で分光されると共に反射された光L2が光検出部33に入射するように、分光器1が構成されている場合、反射層50は、光学機能部として、分光部を構成していればよい。その場合、第1部分41は、当該分光部に対応する形状を有する部分である。つまり、第1部分41は、当該分光部に対応する形状を有する部分を含んでいる。また、光通過部31を通過した光L1が第1ミラーで反射され、第1ミラーで反射された光L1が分光部で分光されると共に反射され、分光部で分光されると共に反射された光L2が第2ミラーで反射され、第2ミラーで反射された光L2が光検出部33に入射するように、分光器1が構成されている場合、反射層50は、光学機能部として、第1ミラー及び第2ミラーを構成していればよい。その場合、第1部分41は、当該第1ミラー及び当該第2ミラーに対応する形状を有する部分である。より具体的には、第1部分41は、当該第1ミラーに対応する形状を有する部分、及び当該第2ミラーに対応する形状を有する部分を含んでいる。
【0069】
樹脂成形層40においては、第2部分42が底壁部12の表面12a内に収まっていてもよい。その場合にも、支持体10から樹脂成形層40が剥がれるのを確実に抑制することができる。ただし、第2部分42の少なくとも一部が、底壁部12の表面12aと側壁部13における分光空間S側の表面との境界領域に達していれば、支持体10から樹脂成形層40が剥がれるのをより確実に抑制することができる。
【0070】
また、分光器1の製造方法の第2工程においては、第1樹脂材料43mの量、加熱の温度及び加熱の時間の少なくとも1つを増加させることにより、図10に示されるように、第1樹脂層43の面積を増加させてもよい。図10に示される例では、第1樹脂層43が第1拡幅部13aの底面13aに達している。ただし、各配線11の端子11aは、第1樹脂層43によって覆われていない。なお、第1拡幅部13aの底面13aに第1樹脂材料43mを到達させないための工夫としては、側壁部13における分光空間S側の表面と第1拡幅部13aの底面13aとの間の境界領域を緩やかにしたり、当該境界領域を滑らかにしたり、或いは、当該境界領域に凹部又は凸部を設けたりすることが挙げられる。ただし、光検出素子30との電気的な接続が可能であれば、各配線11の端子11aの一部が第1樹脂層43によって覆われていてもよい。また、各配線11の端子11aが第1拡幅部13aの底面13aに配置されていない場合には、第1樹脂層43が第1拡幅部13aの底面13aの全体を覆っていてもよい。
【0071】
また、分光器1の製造方法の第2工程においては、第1樹脂材料43mの量、加熱の温度及び加熱の時間の少なくとも1つを減少させることにより、図11に示されるように、第1樹脂層43の面積を減少させてもよい。図11に示される例では、第1樹脂層43が凹曲面14a内に収まっている。その場合、第1樹脂層43が第2樹脂層44によって完全に覆われてもよい。
【0072】
また、分光器1の製造方法の第2工程においては、加熱によって粘度が低下し、且つ、光照射、加熱等によって硬化する樹脂材料であれば、第1樹脂材料43mとして用いることができる。同様に、分光器1の製造方法の第3工程においては、成形型Mによる成形が可能であり、且つ、光照射、加熱等によって硬化する樹脂材料であれば、第2樹脂材料44mとして用いることができる。また、第1樹脂材料43m及び第2樹脂材料44mは、同一の樹脂材料でなくてもよい。また、第3工程は、複数回実施してもよい。
【0073】
また、分光器1が備える各構成には、上述した材料及び形状の一例に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した一の実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…分光器、10…支持体、12…底壁部、12a…表面、13…側壁部、14a…凹曲面、17a…内側表面(表面)、18a…内側表面(表面)、30…光検出素子、40…樹脂成形層、41…第1部分、42…第2部分、43…第1樹脂層、43m…第1樹脂材料、44…第2樹脂層、44m…第2樹脂材料、50…反射層、51…ミラー(光学機能部)、52…分光部(光学機能部)、M…成形型、S…分光空間。
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9
図10
図11