(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】磁気メモリ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8239 20060101AFI20221201BHJP
H01L 27/105 20060101ALI20221201BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20221201BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20221201BHJP
G11C 11/16 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L29/82 Z
H01L43/08 Z
G11C11/16 100C
(21)【出願番号】P 2019050515
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】大寺 泰章
(72)【発明者】
【氏名】中西 務
(72)【発明者】
【氏名】矢ヶ部 恵弥
(72)【発明者】
【氏名】梅津 信之
(72)【発明者】
【氏名】アグン セテイアデイ
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-009806(JP,A)
【文献】特開2013-080748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8239
H01L 29/82
H01L 43/08
G11C 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延び第1端部と第2端部を有する筒状の磁性体部を備え、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に交差する第1面と、前記第1方向に交差し前記第1面と異なる第2面と、
前記第1面および前記第2面と異なる第3面を有し、前記第3面は前記第1面と前記第2面にそれぞれ接続する磁気メモリ。
【請求項2】
第1方向に沿って延びた非磁性絶縁体部と、前記第1方向に沿って延び前記非磁性絶縁体部の周囲を取り囲む磁性体部と、を備え、前記磁性体部は第1端部と第2端部を有し、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に交差する第1面と、前記第1方向に交差し前記第1面と異なる第2面と、
前記第1面および前記第2面と異なる第3面を有し、前記第3面は前記第1面と前記第2面にそれぞれ接続する磁気メモリ。
【請求項3】
第1方向に沿って延び第1端部と第2端部を有する筒状の磁性体部を備え、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に垂直な面に対して傾いた面を有し、
前記第1端部は、第1部分と、前記第1方向に沿って前記第1部分よりも前記第2端部側に配置された第2部分とを有し、前記第1部分の前記第1方向に垂直な面における第1断面積が前記第2部分の前記第1方向に垂直な面における第2断面積よりも小さい磁気メモリ。
【請求項4】
第1方向に沿って延び第1端部と第2端部を有する筒状の磁性体部を備え、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に交差する第1面と、前記第1方向に交差し前記第1面と異なる第2面と、を有し、
前記第1端部は、第1部分と、前記第1方向に沿って前記第1部分よりも前記第2端部側に配置された第2部分とを有し、前記第1部分の前記第1方向に垂直な面における第1断面積が前記第2部分の前記第1方向に垂直な面における第2断面積よりも小さい磁気メモリ。
【請求項5】
第1方向に沿って延びた非磁性絶縁体部と、前記第1方向に沿って延び前記非磁性絶縁体部の周囲を取り囲む磁性体部と、を備え、前記磁性体部は第1端部と第2端部を有し、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に垂直な面に対して傾いた面を有し、
前記第1端部は、第1部分と、前記第1方向に沿って前記第1部分よりも前記第2端部側に配置された第2部分とを有し、前記第1部分の前記第1方向に垂直な面における第1断面積が前記第2部分の前記第1方向に垂直な面における第2断面積よりも小さい磁気メモリ。
【請求項6】
第1方向に沿って延びた非磁性絶縁体部と、前記第1方向に沿って延び前記非磁性絶縁体部の周囲を取り囲む磁性体部と、を備え、前記磁性体部は第1端部と第2端部を有し、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に交差する第1面と、前記第1方向に交差し前記第1面と異なる第2面と、を有し、
前記第1端部は、第1部分と、前記第1方向に沿って前記第1部分よりも前記第2端部側に配置された第2部分とを有し、前記第1部分の前記第1方向に垂直な面における第1断面積が前記第2部分の前記第1方向に垂直な面における第2断面積よりも小さい磁気メモリ。
【請求項7】
前記第1面と前記第2面は接続し、前記第1面が前記第1方向に交差する角度と前記第2面が前記第1方向に交差する角度は互いに異なる
請求項4または6に記載の磁気メモリ。
【請求項8】
前記端面は、前記第1面および前記第2面と異なる第3面を更に有し、前記第3面は前記第1面と前記第2面にそれぞれ接続する
請求項4または6に記載の磁気メモリ。
【請求項9】
前記第1端部は、前記第1方向に沿って前記第1部分から前記第2部分に向かうにつれて前記第1方向に垂直な面における断面積が同じである部分を有する
請求項3乃至8のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項10】
前記第1端部は、前記第1方向に沿って前記第1部分から前記第2部分に向かうにつれて前記第1方向に垂直な面における断面積が減少する部分を有する
請求項3乃至8のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項11】
前記磁性体部は、前記第1端部と前記第2端部との間の部分における前記第1方向に垂直な面における断面の外周の形状が円、楕円、または多角形のいずれかである請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項12】
前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び前記第1端部に接続された第1磁性層と、前記第1磁性層の少なくとも一部分に対向して配置された第2磁性層と、前記第1磁性層の前記少なくとも一部分と前記第2磁性層との間に配置された非磁性層と、を更に備えた請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項13】
前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び前記第1端部に接続された磁性層と、前記磁性層に情報を書き込むフィールドラインと、を更に備えた請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項14】
前記第1磁性層および前記第2磁性層の一方に電気的に接続された第1電極と、前記第2端部に電気的に接続された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極を介して前記磁性体部に電流を供給する回路と、を更に備えた請求項12に記載の磁気メモリ。
【請求項15】
前記第1端部の内表面に対向して配置された磁性層と、前記磁性層と前記第1端部の内表面との間に配置された非磁性層と、を更に備えた請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項16】
第1方向に沿って延び第1端部と第2端部を有する筒状の磁性体部を備え、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に垂直な面に対して傾いた面を有し、
前記第1端部の内表面に対向して配置された磁性層と、前記磁性層と前記第1端部の内表面との間に配置された非磁性層と、を更に備えた磁気メモリ。
【請求項17】
第1方向に沿って延び第1端部と第2端部を有する筒状の磁性体部を備え、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に交差する第1面と、前記第1方向に交差し前記第1面と異なる第2面とを有し、
前記第1端部の内表面に対向して配置された磁性層と、前記磁性層と前記第1端部の内表面との間に配置された非磁性層と、を更に備えた磁気メモリ。
【請求項18】
第1方向に沿って延びた非磁性絶縁体部と、前記第1方向に沿って延び前記非磁性絶縁体部の周囲を取り囲む磁性体部と、を備え、前記磁性体部は第1端部と第2端部を有し、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に垂直な面に対して傾いた面を有し、
前記第1端部の内表面に対向して配置された磁性層と、前記磁性層と前記第1端部の内表面との間に配置された非磁性層と、を更に備えた磁気メモリ。
【請求項19】
第1方向に沿って延びた非磁性絶縁体部と、前記第1方向に沿って延び前記非磁性絶縁体部の周囲を取り囲む磁性体部と、を備え、前記磁性体部は第1端部と第2端部を有し、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に交差する第1面と、前記第1方向に交差し前記第1面と異なる第2面とを有し、
前記第1端部の内表面に対向して配置された磁性層と、前記磁性層と前記第1端部の内表面との間に配置された非磁性層と、を更に備えた磁気メモリ。
【請求項20】
前記第1端部に情報を書き込むフィールドラインを更に備えた請求項15乃至19のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体部に電流を流すことにより磁性体部の磁壁を移動(シフト)させる磁気メモリが知られている。この磁気メモリは、磁性体部の一端に第1電極が電気的に接続され、他端に第2電極が接続され、第1電極と前記第2電極との間に磁壁をシフトさせるシフト電流を流すことにより、磁壁が移動する。この磁気メモリにおいては、磁性体部の一端を磁化させることで記録を行う。
【0003】
しかし、この磁気メモリの書き込みにおいて、磁性体部の一端を磁化することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、磁性体部の一端を磁化することが可能な磁気メモリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による磁気メモリは、第1方向に沿って延び第1端部と第2端部を有する筒状の磁性体部を備え、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に垂直な面に対して傾いた面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による磁気メモリを示す断面図。
【
図2】第1実施形態の磁気メモリにおける磁性体部の一部を示す斜視図。
【
図3A】比較例による磁気メモリの磁性体部を示す断面図。
【
図3B】比較例における磁性体部へデータの書き込み方法を説明する外形図。
【
図4】比較例の磁気メモリの書き込みの問題点を説明する図。
【
図5】フィールドラインFLを記録部として備えた比較例の磁気メモリを示す外形図。
【
図6】フィールドラインFLを記録部として備えた比較例の磁気メモリを示す外形図。
【
図7A】比較例における磁性体部へのデータ書き込み時における電流密度分布を示す図。
【
図7B】第1実施形態の磁性体部へのデータ書き込み時における電流密度分布を示す図。
【
図8A】第1実施形態の磁性体部において、電流密度の最小値と第2面の占有割合との関係を示す図。
【
図8B】第2面の占有割合が0であるの磁性体部の電流密度の最小位置を示す展開図。
【
図8C】第2面の占有割合が0.26である磁性体部の電流密度の最小位置を示す展開図。
【
図8D】第2面の占有割合が0.39である磁性体部の電流密度の最小位置を示す展開図。
【
図8E】第2面の占有割合が0.71である磁性体部の電流密度の最小位置を示す展開図。
【
図9A】端面が第3面を有する磁性体部において、電流密度の最小値と第2面の占有割合との関係を示す図。
【
図9B】端面が第3面を有する磁性体部において、第2面の占有割合が0であるの磁性体部の電流密度の最小位置を示す展開図。
【
図9C】端面が第3面を有する磁性体部において、第2面の占有割合が0.26である磁性体部の電流密度の最小位置を示す展開図。
【
図9D】端面が第3面を有する磁性体部において、第2面の占有割合が0.84である磁性体部の電流密度の最小位置を示す展開図。
【
図9E】第1面、第2面、および第3面を有する磁性体部を示す斜視図。
【
図10B】第2面の占有割合が0であるの磁性体部の最小電流密度およびその位置を示す展開図。
【
図10C】第3面の位置が180度の場合の最小電流密度およびその位置を示す展開図。
【
図10D】第3面の位置が90度、270度の場合の最小電流密度およびその位置を示す展開図。
【
図10E】第3面の位置が0度の場合の最小電流密度およびその位置を示す展開図。
【
図11】第2実施形態による磁気メモリを示す断面図。
【
図12】
図12A乃至12Gは第2実施形態の磁気メモリの製造工程を示す断面図。
【
図13】第3実施形態による磁気メモリを示す断面図。
【
図14A】第4実施形態による磁気メモリを示す断面図。
【
図15A】第4実施形態の磁気メモリの第1製造方法の製造工程を示す断面図。
【
図15B】第4実施形態の磁気メモリの第1製造方法の製造工程を示す上面図。
【
図15C】第4実施形態の磁気メモリの第1製造方法の製造工程を示す上面図。
【
図16】
図16A乃至16Cは、第4実施形態の磁気メモリの第2製造方法の製造工程を示す平面図。
【
図17】
図17A乃至17Dは磁気メモリのレイアウトの例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態による磁気メモリは、第1方向に沿って延び第1端部と第2端部を有する筒状の磁性体部を備え、前記第1端部は端面を有し、前記端面は前記第1方向に垂直な面に対して傾いた面を有する。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態による磁気メモリを
図1に示す。
図1は、第1実施形態の磁気メモリを示す断面図である。この第1実施形態に磁気メモリは、中空部110を有する筒状の磁性体部101を備えている。この磁性体部101は垂直磁化材料から構成される。すなわち、磁化容易軸はz方向に垂直な平面内にある。本実施形態および他の実施形態においては、磁性体部101をx-y平面で切断した断面は、円環形状を有しているが、この形状に限られるものではない。なお、中空部110は、後述する製造方法で示すように、非磁性絶縁体(例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アルミナ等)で満たされていてもよい。
【0010】
この磁性体部101は、z方向に沿って延びており、端部101aおよび端部101bを備えている。端部101aと端部101bとの間の磁性体部101は、z方向に垂直な平面で切断した断面の外周の形状が円、楕円、または多角形であってもよい。
【0011】
磁性体部101の端部101aには、磁性層102の一端が接続し、この磁性層102上に磁気抵抗素子103(例えばMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子)が配置される。磁性層102の他端には電極104が電気的に接続される。また、磁性体部101の端部101bには電極105が電気的に接続される。磁気抵抗素子103の上面に第3電極106が電気的に接続される。本明細書では、「AとBが電気的に接続される」とは、AとBが直接接続されてもよいし、AとBとの間に導電体が存在してAとBが間接的に接続されてもよいことを意味する。
【0012】
磁気抵抗素子103は、磁化が固定され磁化固定層103aと、この磁化固定層103aと磁性層102との間に配置された非磁性層103bと、を備えている。
【0013】
磁性体部101は、z方向に沿って配列された複数の領域101cを備え、これらの領域101cは、磁性体部101の外表面に配列された縊れ部101dによって分離される。また、これらの領域101cは、少なくとも1つの磁区を有する。電極104と電極105との間に駆動電流が供給されると、磁性体部101の磁壁がz方向に沿って移動し、駆動電流が供給されない状態では縊れ部101dに磁壁が停止する。
【0014】
(書き込み方法)
この磁性体部101へのデータの書き込みは、磁気抵抗素子103を介して電極104と第3電極106との間に書き込み電流を流すことにより行う。この書き込み電流は回路300から供給される。磁化固定層103aの磁化方向と同じ向きの磁化方向(情報)を磁性層102に書き込む場合は、電極104から磁気抵抗素子103を介して第3電極106に書き込み電流を流す。この場合、電子は第3電極106から磁気抵抗素子103の磁化固定層103aに流れ、スピン偏極される。このスピン偏極された電子は、磁化固定層103aの磁化方向と同じスピンを持つ電子がマジョリティスピンとなり、このマジョリティスピンが非磁性層103bを通って磁性層102に流れ、磁性層102のスピンに作用して磁性層102の磁化方向を磁化固定層103aの磁化方向と同じにする。
【0015】
磁化固定層103aの磁化方向と反対の向き(反平行)の磁化方向(情報)を磁性層102に書き込む場合は、第3電極106から磁気抵抗素子103を介して電極104に書き込み電流を流す。この場合、電子は電極104から磁性層102に流れスピン偏極される。スピン偏極された電子は非磁性層103bを通って磁化固定層103aに流れる。このとき、磁化固定層103aの磁化方向と同じ向きのスピンを有する電子は磁化固定層103を通過するが、磁化固定層103aの磁化方向と同じ向きのスピンを有する電子は、非磁性層103bと磁化固定層103aとの界面で反射され、磁性層102に戻り、磁性層102のスピンに作用し、磁性層102の磁化方向を磁化固定層103aの磁化方向と反対の向きにする。
【0016】
このようにして、磁性層102に情報(磁化方向)を書き込まれる。書き込まれた情報は磁性層102の膜面に垂直な磁化方向とすることができる。ここで、磁性層102の材料、膜厚、その他の条件に応じて磁性層102の膜面に平行な磁化方向、すなわちy方向とすることもできる。その後、電極105から電極104に磁性体部101を介して駆動電流を流し、磁性層102に書き込まれたデータを磁性体部101の端部101aに最も近い領域101cに送る。
【0017】
(読み出し方法)
電極104から電極105に駆動電流を供給し、読み出すべき情報(データ)を磁性層102に移動(シフト)させる。駆動電流は回路300から供給される。また、駆動電流は、回路300を用いて電極105と電極106との間に供給してもよい。
【0018】
その後、電極104と第3電極106の間に磁気抵抗素子103を介して読出し電流を流し、磁性層102に磁化方向(情報)を読む。読み出し電流は回路300から供給される。
【0019】
磁性体部101は、例えばコバルト、ニッケルなどを含む多層膜から構成される。磁性体部101の材料としては、コバルト、ニッケル以外にも、鉄、コバルト、白金、パラジウム、マグネシウム、および希土類元素から選択された元素を含む合金を用いることができる。磁性層102は、鉄、コバルトなどの磁性元素を含む。
【0020】
本実施形態および以下の実施形態の磁性体部101においては、
図2に示すように、端部101aが端面101fを有する。この端面101fは、端部101bからz方向に沿って最も遠い面である。この端面101fは、第1面101f
1と、第2面101f
2とを有する。第1面101f
1は、端部101aに最も近い領域101cの磁性層102が接続された部分101gを含みz方向に交差する。第2面101f
2は、z方向に交差し、z方向に垂直な面に対して傾いている。
図2に示す磁性体部101においては、第1面101f
1と第2面101f
2とは接続している。
【0021】
また、端部101aは、z方向に垂直な第1平面および第2平面でそれぞれ切断した面の断面積が互いに異なる第1部分および第2部分を有している。第1部分は端部101bから第2部分よりも遠くに位置し、第1部分の上記第1平面で切断した第1断面積が第2部分の上記第2平面で切断した第2断面積よりも小さい。第1部分は例えば、第2面101f2を含む磁性体部101の端部101a側の部分であり、第2部分は例えば、第2面101f2を含む磁性体部101の端部101b側の部分である。
【0022】
この磁性体部101の端部101aは、z方向に沿って第1部分から第2部分に向かうにつれてz方向に垂直な断面積が減少する部分を有している。
【0023】
本明細書においては、この構造を有している磁性体部101の端面101fにおける第2面101f
2の占有割合(以下、第2面101f
2の占有割合とも云う)を以下にように定義する(
図2参照)。すなわち、端面における第2面101f
2の占有割合は、第2面101f
2をz方向に直交する平面に投影したときの外周長(破線で示す外周長a)を、第1面101f
1をz方向に直交する平面に投影したときの外周長(実線で示す外周長b)と外周長aとを合計した値(=a+b)で割った値である。すなわち、第2面101f
2の占有割合は、a/(a+b)である。
【0024】
(比較例)
図3Aは中空部110を有する柱状の磁性体部101Aを備えた比較例の磁気メモリを示す断面図である。この比較例における磁性体部101Aは、
図1に示す第1実施形態における磁性体部101とは、端部101aに最も近い領域101cの磁性層102が接続された部分(書き込み位置)101gと反対側の角部(101e(
図3A参照)がz方向に垂直な平面内に位置する。すなわち、比較例の磁性体部101Aの端面は磁性体101の端面101fと異なり、第1面101f
1を有するが第2面101f
2を備えていない。したがって、比較例の磁性体部101Aは、第2面101f
2の占有割合は「0」となる。
【0025】
この比較例における磁性体部101Aの端部101aには、磁性層102に接続される側と反対側に丸い破線で示す角部101eが存在する。このため、
図3Bに示すように、磁性層102に書き込まれたデータが端部101aに最も近い領域101cに送られたとき、角部101eには上記データが届きにくく、磁性層102に最も近い領域101cの磁化方向は
図3Bの矢印に示すようにy方向に対して傾く。これは、
図4に示す矢印のように、角部101eの近辺では磁化方向を安定的に制御することができないためである。すなわち、磁性体部101の端部101aに最も近い領域101cを、放射状に安定的に磁化することができない。
【0026】
また、
図3Aおよび
図3Bにおいては、磁気抵抗素子103を用いて書き込みを行った。磁気抵抗素子103の代わりに、
図5に示すように、フィールドラインFLを用いて磁性層102にデータを書き込むことが可能である。なお、
図5は、フィールドラインFLを記録部として備えた磁気メモリを示す外形図である。この場合、フィールドラインFLは、磁性層102の近傍に設けられ、x方向に沿って延びている。このフィールドラインFLに書き込み電流を供給すると、フィールドラインFLの周囲に、この書き込み電流によって生じる磁場が生じる。この磁場によって磁性層102に書き込みを行う。磁性層102に書き込まれる情報(磁化方向)は、フィールドラインFLに供給される書き込み電流の向きによって異なる。この場合も、磁性体部101Aの端部101aには、磁性層102に接続される側と反対側に丸い破線で示す角部101eが存在する。このため、
図3A乃至
図4で説明した場合と同様に、角部101e近辺では磁化方向を安定的に制御することができず、磁性体部101Aの端部101aに最も近い領域101cを、放射状に安定的に磁化することができない。
【0027】
また、
図6に示すように、磁性層102を設けず、電極104を磁性体部101Aの端部101aに接続し、端部101aの近傍にフィールドラインFLを設けてもよい。なお、
図6は、フィールドラインFLを記録部として備えた磁気メモリを示す外形図である。この場合、フィールドラインFLに書き込み電流を供給し、フィールドラインFLから生じる磁場によって端部101aに最も近い領域101cに直接データを書き込む。しかし、この場合も磁性体部101Aの端部101aには、磁性層102に接続される側と反対側に丸い破線で示す角部101eが存在する。このため、
図3A乃至
図4で説明した場合と同様に、角部101e近辺では磁化方向を安定的に制御することができず、磁性体部101Aの端部101aに最も近い領域101cを、放射状に安定的に磁化することができない。
【0028】
そこで、本願発明者達は、以下のようなシミュレーションを行って、本実施形態における磁性体部101と、比較例の磁性体部101Aを比較した。本実施形態および以下の実施形態における磁性体部101においては、第2面101f2の占有割合は0より大きく1より小さい値となる。
【0029】
図3Aに示す比較例における磁性体部101Aおよび
図1に示す磁性体部101に書き込み位置101gからデータの書き込みを行った場合のそれぞれの書き込み電流の密度分布をシミュレーションで求めた結果をそれぞれ
図7Aおよび
図7Bに示す。
図7Aおよび
図7Bは、磁性体部101および磁性体部101Aの書き込み位置101gに最も近い領域101cを、書き込み位置101gを中心として展開した面を示し、展開した面において、色の黒い部分は電流密度が高く、薄い部分は電流密度が低いことを表している。
【0030】
図7Aからわかるように、
図3Aに示す比較例の磁性体部101Aは、書き込み位置101gから電流密度が広がっているが、角部101eは電流密度が低い状態を示している。このことが、角部101eの近傍は磁化方向が制御されていないことを表している。
【0031】
これに対して、
図7Bからわかるように、本実施形態においては電流密度が書き込み位置101gから下方に向かって高く、縊れ部101dに近づくにつれて小さくなっている。これにより、書き込み位置に最も近い領域101cにおける磁化方向の制御が容易に行うことができることを表している。
【0032】
次に、磁性体部101における第2面101f
2の占有割合を、0、0.26、0.39、0.71とし、それぞれに書き込みを行った場合の電流密度の最小値をおよびその位置をシミュレーションで求めた結果を
図8A乃至
図8Eに示す。
図8Aは、電流密度の最小値と第2面101f
2の占有割合との関係を示す図である。
図8Aにおいて、横軸は第2面101f
2の占有割合を示し、縦軸は電流密度の最小値を示す。
図8Aに示すA、B、C、Dは、第2面101f
2の占有割合がそれぞれ0、0.26、0.39、0.71である磁性体部101における電流密度の最小値のシミュレーション結果を示す。
【0033】
図8B乃至8Eはそれぞれ書き込み位置101gに最も近い領域101cの書き込み位置101gを中心として展開した面であり、第2面101f
2の占有割合が0、0.26、0.39、0.71である場合をそれぞれ示す。
図8Bからわかるように、第2面101f
2の占有割合が0の場合は、電流密度が最小となる位置は、磁性体部101Aの角部101eであり、書き込み位置101gと同じ平面上、すなわち端部101aの上面上に位置する。
図8A乃至8Eからわかるように、第2面101f
2を有する磁性体部101では、電流密度の最小値は第2面101f
2を有していない磁性体部101A(
図8B)に比べて大きく、磁性体部101の端部101aに最も近い領域101cを、放射状に安定的に磁化することができる。また、
図8Aからわかるように、第2面101f
2の占有割合は0.3以上である場合の電流密度の最小値は高く、第2面101f
2の占有割合が大きくなると、電流密度の最小値が減少する。このため、第2面101f
2の占有割合は0.3以上であることが好ましい。
【0034】
なお、第2面101f2と端部101aとが交差して形成される曲線のz方向における端部101bに最も近い位置は、端面101fを有する領域101cに接続する縊れ部101dに達しないようにすることが望ましい。上記曲線のz方向における端部101bに最も近い位置が縊れ部101dを超えた場合は、この縊れ部101で磁壁を停止する効果が弱まり、好ましくない。
【0035】
以上の説明においては、
図2に示すように端面101fは、z方向に交差し、z方向に直交する面に対して傾いた第2面101f
2を有している。
【0036】
これに対して端面101fがz方向に交差する第1面101f
1と、z方向に交差しz方向に対する角度が第1面101f
1のz方向に対する角度と異なる第2面101f
2と、第1面101f
1と第2面101f
2に接続する第3面101f
3とを有する磁性体部101を
図9Eに示す。
【0037】
この
図9Eに示す磁性体部101に対して、電流密度の最小値をおよびその位置をシミュレーションで求めた結果を
図9A乃至
図9Dに示す。例えば、第1面101f
1はz方向に直交する面であり、第2面101f
2はz方向に直交する面であり、第3面101f
3はz方向に平行な面である。
【0038】
図9Aは、電流密度の最小値と、端面101fに対する第2面101f
2の占有割合(以下、第2面101f
2の占有割合とも云う)との関係を示す図である。第2面101f
2の占有割合は、
図2で説明した場合と同様に、第2面101f
2をz方向に直交する平面に投影したときの外周長(破線で示す外周長a)を、第1面101f
1をz方向に直交する平面に投影したときの外周長(実線で示す外周長b)と外周長aとを合計した値(=a+b)で割った値である(
図9E)。すなわち、第2面101f
2の占有割合は、a/(a+b)である。
【0039】
図9Aにおいて、横軸は第2面101f
2の占有割合を示し、縦軸は電流密度の最小値を示す。
図9Aに示すA、B、Cは第2面101f
2の占有割合がそれぞれ0、0.26、0.84である磁性体部101における電流密度の最小値のシミュレーション結果を示す。また、
図9Aにおいては、端面101fが第1面101f
1、第2面101f
2を有しかつ第3面101f
3を有していない場合(例えば、
図2に示す場合)を黒丸で示し、端面101fが第1面101f
1、第2面101f
2、および第3面101f
3を有する場合(例えば、
図9Eに示す場合)を白丸で示している。
【0040】
第1面101f
1、第2面101f
2、および第3面101f
3を有する端面101fを備えた磁性体部101(
図9E参照)においては、第3面101f
3はz方向に平行な面であるので、端部101aをz方向に垂直な第1平面で切断した第1部分(例えば、
図9Eに示す第1面101f
1の近くの部分)の断面積は、z方向に垂直な第2平面で切断した第2部分(例えば、
図9Eに示す第2面101f
2の近くの部分)の断面積と同じである。ここで、第1部分は第2部分よりもz方向に沿って磁性体部101Aの端部101bから遠い位置に位置する。
【0041】
図9B乃至9Dはそれぞれ書き込み位置101gに最も近い領域101cの書き込み位置101gを中心として展開した面であり、第2面101f
2の占有割合が0、0.26、0.84である場合をそれぞれ示す。
図9Bからわかるように、第2面101f
2の占有割合が0の場合は、電流密度が最小となる位置は、磁性体部101Aの角部101eであり、書き込み位置101gと同じ平面上、すなわち端部101aの端面101f上に位置する。
図9Cおよび9Dからわかるように、端面101fに第3面101f
3を有する磁性体部101では、電流密度の最小値は、端面101fに第3面101f
3を有しない磁性体部101Aに比べて大きく、磁性体部101の端部101aに最も近い領域101cを、放射状に安定的に磁化することができる。
【0042】
端面101fに第3面101f
3を有する磁性体部101(
図9C、9Dに示す磁性体部)では、電流密度の最小値は、端面101fに第3面101f
3を有しない磁性体部101A(例えば、
図9Bに示す磁性体部)に比べて大きく、磁性体部101の端部101aに最も近い領域101cを、放射状に安定的に磁化することができる。
【0043】
また、
図9Aからわかるように、例えば
図9Eに示す磁性体部101の場合は、例えば
図2に示す磁性体部101の場合に比べて電流密度の最小値が小さくなる。このため、端面101fは、z方向に交差しz方向に直交する平面に対して傾いた第2面101f
2を有している、例えば
図2に示す磁性体部101の方が好ましい。また、
図9Aからわかるように、第2面101f
2の占有割合が0.8を超えると、電流密度の最小値は、第3面101f
3を有せず第2面101f
2の占有割合が0である
図9Bに示す磁性体部101Aの場合と同じ値となる。このため、端部101aに最も近い領域101cを、放射状に安定的に磁化することができなくなる。以上の説明により、第2面101f
2の占有割合は0.3以上0.8以下であることが好ましい。
【0044】
次に、第3面101f
3が設けられる位置を変えた場合の電流密度の分布をシミュレーションによって求めた。第3面101f
3が設けられる位置が、
図10Aに示すように、書き込み位置101gと同じ位置(角度0)、書き込み位置101gに対して90度、180度、270度となる場合についてシミュレーションを行った。第3面101f
3の深さは書き込み位置に最も近い縊れ位置101dまでである。
【0045】
図10B乃至
図10Eは、書き込み位置101gを中心にして領域101cを展開した面を示す。
図10Bは、端面101fが第2面101f
2および第3面101f
3を有していない場合、
図10Cは第3面101f
3の位置が180度の場合、
図10Dは面101f
3の位置が90度および270度の場合、
図10Eは第3面101f
3の位置が0度の場合のシミュレーション結果を示す。
【0046】
図10Bに示す端面101fが第2面101f
2および第3面101f
3を有していない磁性体部の場合の最小電流密度を1とした場合、
図10Cに示す磁性体の場合の最小電流密度が1.22、
図10Dに示す磁性体部の場合の最小電流密度が0.18、
図10Eに示す磁性体部の場合の最小電流密度が0.71である。なお、
図10B乃至
図10Eに示す丸で示した箇所が最小電流密度となる位置である。
【0047】
図10Cからわかるように、第3面101f
3の位置が180度の場合、すなわち書き込み位置101gの反対側の位置にある場合は最小電流密度が1.22であり、
図10Bに示す場合(最小電流密度が1の場合)に比べて最小電流密度は増加する。しかし、
図10Dおよび
図10E示すように、面101f
3の位置が90度、270度、および0度の場合は、
図10Bに示す場合に比べて最小電流密度は減少する。以上により、第3面101f
3が設けられる位置は、書き込み位置101gのz方向に対して反対側の位置にあることが好ましい。
【0048】
以上説明したように、第1実施形態の磁気メモリによれば、磁性体部の一端を放射状に安定的に磁化することが可能な書き込みを行うことができる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態による磁気メモリを
図11に示す。この第2実施形態の磁気メモリは、
図1に示す第1実施形態の磁気メモリにおいて、磁気抵抗素子103の代わりに、フィールドラインFLを設けた構成を備えている。フィールドラインFLを用いて磁性層102に書き込みを行うのは、
図5で説明した場合と同様に行う。この第2実施形態の磁気メモリも、第1実施形態と同じ磁性体部101を備えているので、磁性体部の一端を放射状に安定的に磁化することが可能な書き込みを行うことができる。なお、本実施形態においても、読み出しのための磁気抵抗素子103を磁性層102上に設けることができる。
【0050】
(製造方法)
次に、第2実施形態の磁気メモリの製造方法について
図12A乃至12Gを参照して説明する。
【0051】
まず、
図12Aに示すように、アルミニウム200である基板を用意し、この基板に対して陽極酸化処理を施す。この陽極酸化処理は、上記基板を陽極とし、電解質溶液(例えば、硫酸、シュウ酸、リン酸のいずれか若しくはこれらの混合物)の中で通電することにより行う。このとき、陽極金属(アルミニウム)が酸化されて金属イオンとなり、融解する。この金属イオンは液中の酸素と結合して金属酸化物(アルミナ)となり、陽極金属表面に残り成長していくことになる。この際、溶解と成長が同時に進むことで、陽極のアルミニウム200の表面にアルミナの微細なホール202が作製される。このホール202の作製時に、ホール作製に印加される第1電圧とは異なる第2電圧を周期的に印加する。この第2電圧が印加されている間は、y方向における寸法(径)が小さい部分200aが形成される。なお、ホール202が形成された領域近傍はアルミニウムからアルミナに変化する。
【0052】
続いて
図12Bに示すように、ホール202の内表面およびアルミナ200の上面を覆うように磁性層204を形成する。その後、
図12Cに示すように、ホール202が埋め込まれるとともにアルミナ200の上面が覆われるように非磁性の絶縁膜206を成膜し、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて絶縁膜206の表面を平坦化して絶縁膜206aを形成する。
【0053】
次に
図12Dに示すように、ホール202の一部を覆う例えば感光樹脂からなるマスク208を形成する。続いて、
図12Eに示すように、斜め方向から露出している絶縁膜206aの一部、磁性層204の一部およびアルミナ200の一部を、ミリング加工を用いて除去する。この工程によって磁性層204が磁性体部101になる。その後、マスク208を除去し(
図12F)、マスク208が除去された絶縁膜206の領域上にフィールドラインFLを形成する(
図12G)。
【0054】
なお、
図1に示す第1実施形態の磁気メモリは、
図12Fまでは同じ工程で行い、磁性層204上に残存している絶縁膜206を除去し、アルミナ202の上面に位置する磁性層204上に磁気抵抗素子103を形成すればよい。
【0055】
(第3実施形態)
第3実施形態による磁気メモリを
図13に示す。この第3実施形態の磁気メモリは、
図11に示す第2実施形態の磁気メモリにおいて、磁性層102を削除し、電極104を磁性体部101に直接接続した構成を有している。この場合、フィールドラインFLは、磁性体部101の最上部の領域101cに近接して設けられる。この第3実施形態の磁気メモリの書き込みは、
図6で説明した場合と同様に行う。
【0056】
この第3実施形態の磁気メモリも第1実施形態と同じ磁性体部101を備えているので、磁性体部の一端を放射状に安定的に磁化することが可能な書き込みを行うことができる。
【0057】
(第4実施形態)
第4実施形態による磁気メモリについて
図14Aおよび
図14Bを参照して説明する。
図14Aは第4実施形態の磁気メモリを示す断面図であり、
図14Bは、第4実施形態の磁気メモリの上面図である。
【0058】
この第4実施形態の磁気メモリは、
図13に示す第3実施形態の磁気メモリにおいて、フィールドラインFLの代わりに、磁気抵抗素子(例えば、MTJ素子)103Aを設けた構成を有している。この磁気抵抗素子103Aは、電極104が接続する側の磁性体部103Aの内壁(内表面)の一部に対向して設けられた磁化固定層103Aaと、この磁化固定層103Aaと磁性体部103Aの内表面の一部との間に設けられた非磁性絶縁層103Abと、を備えている。磁化固定層103Aaは第3電極106に電気的に接続する。
【0059】
この第3実施形態における書き込みは、磁気抵抗素子103Aを用いて行い、この磁気抵抗素子103Aが接続する磁性体部101の領域に情報(磁化方向)を書き込む。読み出しは、磁性体部101の1つの領域101cの近傍に設けられる図示しない読み出し素子によって行う。なお、第2および第3実施形態における読み出しは、第4実施形態と同様に行う。
【0060】
この第4実施形態の磁気メモリも第1実施形態と同じ磁性体部101を備えているので、磁性体部の一端を放射状に安定的に磁化することが可能な書き込みを行うことができる。
【0061】
次に、第4実施形態の磁気メモリの第1製造方法について、
図15A乃至15Cを参照して説明する。
図15Aは第1製造方法の製造工程を示す断面図、
図15Bおよび
図15Cは第1製造方法の製造工程を示す平面図である。
【0062】
まず、
図12Cに示す工程まで、第2実施形態の磁気メモリの製造方法と同じ工程を用いて製造する。その後、
図15Aに示すように、絶縁膜206を磁性層204の表面が露出するまでエッチングによって除去する。続いて、ホール202(
図12C参照)に埋め込まれた絶縁膜206の一部をエッチングにより除去し凹部を形成する。その後、上記凹部の底面および側面を覆うように、磁気抵抗素子103Aの非磁性絶縁層となる絶縁層210を形成する。この絶縁層210を覆うように磁化固定層となる磁性層212を形成する。
【0063】
次に、磁化固定層となる磁性層212と、絶縁層210を例えばCMPを用いて削除し、磁性層204の表面を露出させる(
図15B)。その後、磁性層204、非磁性絶縁層210、磁性層212の一部を加工する(
図15C)。これにより、磁性層204は一部が削除された構造(切り欠き構造)を有する磁性体部101となり、非磁性絶縁層210は磁気抵抗素子103Aの非磁性絶縁層103Abとなる。その後、加工された磁性層212の磁化を固定する処理を行う。これにより、加工された磁性層212は磁気抵抗素子103Aの磁化固定層103Aaとなる。続いて、磁化固定層103Aaに電気的に接続する図示しない第3電極106(
図14A参照)を形成する。
【0064】
次に、第4実施形態の磁気メモリの第2製造方法について、
図16A乃至16Cを参照して説明する。
図16A乃至16Cは、第2製造方法の製造工程を示す平面図である。
【0065】
まず、磁性体部101となる磁性層204の内壁に非磁性絶縁層210を形成する(
図16A)。その後、磁性層204の一部を削除する加工(切り欠き加工)を行う。このとき、非磁性絶縁層210も加工される。この加工によって、磁性層204は磁性体部101となり、非磁性絶縁層210は磁気抵抗素子103Aの非磁性絶縁層103Abとなる(
図16B)。続いて、非磁性絶縁層103Abに接続する磁性層212を形成し、この磁性層212の磁化方向を固定する処理を行う。この処理により、磁性層212は磁気抵抗素子103Aの磁化固定層103Aaとなる。
【0066】
以上説明した第1乃至第4実施形態の磁気メモリにおいては、磁性体部101は1個である場合について説明したが、通常は磁性体部101Aを複数備えている。磁性体部101を複数備えた磁気メモリの磁気メモリのレイアウトの例について
図17A乃至17Dを参照して説明する。
【0067】
(第1例)
この磁気メモリのレイアウトの第1例を
図17Aに示す。この第1例は、磁性体部101が六方最密充填構造(平面構造)となるように配列されている。すなわち、第1行に配列された磁性体部101の間に第2行の磁性体部101が配置され、第2行に配列された磁性体部101の間に第3行の磁性体部101が配列され、第1列に配置された磁性体部101の間に第2列の磁性体部101が配置され、第2列に配置された磁性体部101の間に第3列の磁性体部101が配列された平面構造を備えている。磁性体部101をこのような配置にすることにより、最小の占有面積で磁気メモリを製造することができる。
【0068】
これらの磁性体部101には、例えば第1実施形態または第4実施形態の磁気メモリのように、磁気抵抗素子103または磁気抵抗素子103Aが設けられるが、これらの磁気抵抗素子103または磁気抵抗素子103Aは、各磁性体部101Aの一方の側(図では右側)に配置される。
【0069】
(第2例)
磁気メモリのレイアウトの第2例を
図17Bに示す。この第2例は、磁性体部101は
図17Aに示す第1例と同じ六方最密充填構造(平面構造)となるように配列されるが、磁気抵抗素子103または磁気抵抗素子103Aは対角線方向(
図17Bにおいて、行方向および列方向に交差する方向)に沿って設けられる。この第2例も最小の占有面積で磁気メモリを製造することができる。
【0070】
(第3例)
磁気メモリのレイアウトの第3例を
図17Cに示す。この第3例は、第2または第3実施形態の磁気メモリのレイアウトであって、磁性体部101は
図17Aに示す第1例と同じ六方最密充填構造(平面構造)となるように配列される。フィールドラインFLが各行に配列された磁性体部101に対して共通に設けられる。なお、第3例では、フィールドラインFLは各行に設けられたが、各列に配列された磁性体部101に対して共通に設けてもよい。また、対角線方向に配列された磁性体部101に対して共通に設けてもよい。この第3例も最小の占有面積で磁気メモリを製造することができる。
【0071】
(第4例)
磁気メモリのレイアウトの第4例を
図17Dに示す。この第4例は、磁性体部101Aがマトリクス状に配列される。そして、磁気抵抗素子103または磁気抵抗素子103Aが各磁性体部101の一方の側(図では左側)に配置される。なお、磁気抵抗素子103または磁気抵抗素子103Aは
図17Bで説明した場合と同様に対角線方向に設けてよい。また、磁気抵抗素子103または磁気抵抗素子103Aとともに、或いは磁気抵抗素子103または磁気抵抗素子103Aの代わりにフィールドラインFLを設けてよい。この場合、フィールドラインFLは、
図17Cで説明した場合と同様に、各行に配列された磁性体部101に対して共通に設けてもよいし、各列に配列された磁性体部101に対して共通に設けてもよいし、各対角線に配列された磁性体部101に対して共通に設けてもよい。
【0072】
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、磁性体部の一端を放射状に安定的に磁化することのできる書き込みを行うことが可能な磁気メモリを提供することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
101,101A・・・磁性体部、101a・・・端部、101b・・・端部、101c・・・領域、101d・・・縊れ部、101e・・・角部、101f・・・端面、101f1・・・第1面、101f2・・・第2面、101f3・・・第3面、102・・・磁性層、103・・・磁気抵抗素子、103A・・・磁気抵抗素子、103Aa,103a・・・磁化固定層、103Ab,103b・・・非磁性絶縁層、104・・・電極、105・・・電極、106・・・第3電極、110・・・中空部、200・・・アルミニウム(アルミナ)、202・・・ホール、204・・・磁性層、206,206a・・・絶縁膜、208・・・マスク、210・・・非磁性絶縁層、212・・・磁性層、300・・・回路