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特許7186124粉体の比表面積の推定方法、推定装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】粉体の比表面積の推定方法、推定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/08 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G01N15/08 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019066431
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165801
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼見 淳也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐一
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206134(JP,A)
【文献】特開2019-045389(JP,A)
【文献】特開2011-141185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/08
G01N 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色差計を用いてコンクリート組成物の製造に用いる粉体の色差を測定するステップと、
前記ステップにおいて測定された前記粉体の色差、及び、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、前記粉体の比表面積を推定するステップと、
を有する粉体の比表面積の推定方法。
【請求項2】
複数種別の粉体のそれぞれに対し、請求項1に記載の推定方法を行い、推定された前記比表面積を用いて、前記複数種別の粉体の中から1以上の種別の粉体を選択するステップと、
前記ステップにおいて選択された前記1以上の種別の粉体を用いてコンクリート組成物を製造するステップと、
を有する前記コンクリート組成物の製造方法。
【請求項3】
色差計を用いて測定された、コンクリート組成物の製造に用いる粉体の色差を取得する取得部と、
取得した前記粉体の色差、及び、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、前記粉体の比表面積を推定する推定部と、
を有する推定装置。
【請求項4】
コンピュータに、
色差計を用いてコンクリート組成物の製造に用いる粉体の色差を測定させるステップと、
前記ステップにおいて測定された前記粉体の色差、及び、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、前記粉体の比表面積を推定するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の比表面積の推定方法、コンクリート組成物の製造方法、推定装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レディーミクストコンクリート工場、又はプレキャストコンクリート工場において製造されるコンクリート組成物であって、設計基準強度が100ニュートン毎平方ミリメートル(以下[N/mm2]ともいう)を超えるコンクリート組成物を「超高強度コンクリート」という。
【0003】
非特許文献1は、超高強度コンクリートを製造する一般的な方法として、低熱ポルトランドセメントと、BET比表面積が20平方メートル程度のシリカフュームとを、概ね9:1の割合で予め混合(プレミックス)したセメントを用いる方法が記載されている。以下、シリカフュームが混合されたセメントを「シリカフューム混合セメント」と呼ぶ。
【0004】
また、非特許文献1では、上述したシリカフューム混合セメントの他に、このセメントに使用されるシリカフュームよりもBET比表面積が小さい(例えば15平方メートル以下)シリカフュームを、混和材として使用している。
【0005】
以下、超高強度コンクリートに用いられる、シリカフュームを含有する材料を「シリカフューム含有物」と呼ぶ。上述したシリカフューム混合セメント、及び、混和材として使用されるシリカフュームは、いずれも、シリカフューム含有物である。
【0006】
シリカフューム含有物をプレミックス又は混和材として使用する目的は、マイクロフィラー効果や最密充填効果により、コンクリート組成物の高強度化を図るとともに流動性を改善することにある。しかし、同一銘柄のシリカフューム含有物であっても、それらの品質は、ロットごとに大幅なバラツキがあり、安定しない。なぜなら、シリカフューム混合セメントの成分であるシリカフュームや、シリカフューム含有物として用いられるシリカフュームは、フェロシリコン、金属シリコンおよび電融ジルコニア等を製造する際に発生するダストを集塵した際に得られる副産物であるためである。
【0007】
特に、シリカフューム含有物の比表面積のバラツキは一般的に大きく、同一銘柄のシリカフューム含有物に対して化学混和剤の添加量を増減させても目的とする流動性および施工性が確保できないことがあった。
【0008】
なお、シリカフュームの単体としての平均粒径は、一次粒子である場合、望ましくは0.1μm以上1.0μm以下であるが、これにもバラツキがあり、一般的には0.01μm以上20.0μm以下である。
【0009】
なかでも、スランプフローが小さいコンクリート組成物の場合、ワーカビリティーが低下し、工事現場において、対象の部材に打ち込むことができなくなる可能性がある。また、この場合、粘性が非常に大きくなり、工場の混練機で十分に混練できない等の不具合も予想される。
【0010】
スランプフローに大きく影響を及ぼす要因の一つとして考えられるのが、シリカフューム含有物の比表面積である。非特許文献2では、シリカフューム含有物の比表面積がスランプフローに大きな影響を与えていることが確認されている。したがって、高強度コンクリート製造時には、シリカフューム含有物の比表面積を測定し、事前に評価する必要がある。
【0011】
従来、シリカフューム含有物の比表面積は、透過法又は気体吸着法によって測定されていた。透過法とは、粉体の充填層に水、空気等の流体を流して、粉体の粒径と流体の透過性の関係により、粉体の比表面積を求める方法である。気体吸着法とは、BET法とも呼ばれる方法であり、粉体粒子の表面に、予め吸着占有面積が分かっているガス分子を吸着させ、その吸着量から試料の比表面積を測定する方法である。
【0012】
特許文献1には、小角X線散乱法によって得られる小角X線散乱曲線の始点から終点までの散乱角度についての積分値であるX線散乱積分強度と、比表面積とがほぼ直線関係にあることに基づき、被測定物についてX線散乱積分強度を求め、既知のX線散乱積分強度と比表面積の関係から、その被測定物の比表面積を求める比表面積の測定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2006-133221号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】井戸康浩他:Fc200N/mm2超高強度コンクリートの製造品質に関する研究、コンクリート工学年次論文集、vol.36、No.1、pp.1456-1461、2014
【文献】高橋祐一他:結合材の比表面積が超高強度コンクリートのワーカビリティーに及ぼす影響に関する基礎検討、コンクリート工学年次論文集、Vol.40、No.1、pp.1209-1214、2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、従来の透過法や気体吸着法は、測定に時間がかかる上、高価な測定装置が必要であるため、高強度コンクリート製造時に適さない。また、特許文献1の技術は、小角X線散乱法を用いるため、X線源が必要である。
【0016】
本願の発明の目的の一つは、X線源が不要で、かつ、透過法や気体吸着法に比べて容易にシリカフューム含有物の比表面積を推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1に係る粉体の比表面積の推定方法は、色差計を用いてコンクリート組成物の製造に用いる粉体の色差を測定するステップと、前記ステップにおいて測定された前記粉体の色差、及び、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、前記粉体の比表面積を推定するステップと、を有する粉体の比表面積の推定方法である。
【0018】
本発明の請求項2に係るコンクリート組成物の製造方法は、複数種別の粉体のそれぞれに対し、請求項1に記載の推定方法を行い、推定された前記比表面積を用いて、前記複数種別の粉体の中から1以上の種別の粉体を選択するステップと、前記ステップにおいて選択された前記1以上の種別の粉体を用いてコンクリート組成物を製造するステップと、を有する前記コンクリート組成物の製造方法である。
【0019】
本発明の請求項3に係る推定装置は、色差計を用いて測定された、コンクリート組成物の製造に用いる粉体の色差を取得する取得部と、取得した前記粉体の色差、及び、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、前記粉体の比表面積を推定する推定部と、を有する推定装置である。
【0020】
本発明の請求項4に係るプログラムは、コンピュータに、色差計を用いてコンクリート組成物の製造に用いる粉体の色差を測定させるステップと、前記ステップにおいて測定された前記粉体の色差、及び、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、前記粉体の比表面積を推定するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、X線源が不要で、かつ、透過法や気体吸着法に比べて容易にシリカフューム含有物の比表面積を推定することできる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
本発明に係る粉体の比表面積の推定方法は、コンクリート組成物の製造に用いる粉体について、その比表面積の推定値が求められているときに、例えば以下の(1)から(5)までに示した各ステップに沿って実施される。
【0023】
ここで、「コンクリート組成物の製造に用いる粉体」とは、シリカフューム含有物を含む粉体である。この粉体におけるシリカフューム含有物の含有率は、例えば、重量基準で50%以上であることが望ましい。
【0024】
(1)シリカフューム含有物の比表面積の測定
まず、本発明の実施者は、シリカフューム含有物の試料を複数、準備し、それぞれの比表面積を測定する。比表面積の測定には、透過法や気体吸着法等の従来の方法を用いればよい。
【0025】
(2)シリカフューム含有物の色差の測定
また、実施者は、色差計を用いて上述した複数の試料の色差をそれぞれ測定する。実施者は、色差の測定として、例えば、試料であるシリカフューム含有物の各々を、開口部を上方に向けた有底筒状の容器であるシャーレに溢れる程度に収容し、シャーレの開口部側から転圧する。そして、この実施者は、スライドガラスを使用して、シャーレの開口部に合わせてその試料をすり切り、試料の上面に載せたスライドガラス越しに色差計を設置して、試料の上面の色差を測定すればよい。色差計により、Lab表色系におけるL*値、a*値、b*値が得られたら、実施者は、これらの値から、例えば、総合色差DEを算出する。総合色差DEは次の式(1)で求める。
【0026】
(数1)
DE=……(1)
【0027】
すなわち、総合色差DEは、L*値、a*値、b*値をそれぞれ2乗した値の合計の平方根である。これは、Lab表色系を示す三次元空間において、原点と、L*値、a*値、b*値で表される点とのユークリッド距離に相当する。
【0028】
なお、これらの試料についての、比表面積の測定、及び色差の測定は、順序を問わない。
【0029】
(3)検量線作成
次に、これらの試料について、比表面積及び色差の測定値が得られたら、実施者は、これらの測定値に基づいて検量線を作成する。この検量線は、本発明における、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係である。
【0030】
(4)粉体の色差の測定
検量線が得られたら、実施者は、比表面積の推定が求められている粉体を準備し、色差計を用いてこの粉体の色差を測定する。このステップは、本発明における、色差計を用いてコンクリート組成物の製造に用いる粉体の色差を測定するステップである。
【0031】
(5)粉体の比表面積の推定
本発明の実施者は、測定した粉体の色差と、作成した検量線とを用いて、粉体の比表面積を推定する。このステップは、本発明における、測定された粉体の色差、及び、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、粉体の比表面積を推定するステップである。
【0032】
上述した通り従来技術では、コンクリート組成物の製造に用いる粉体を、その比表面積により選択する場合、その粉体に対して、毎回、透過法や気体吸着法等、時間のかかる測定をしなければならなかった。また、比表面積を推定する場合にX線源が必要になっていた。
【0033】
一方、本発明によれば、予め準備したシリカフューム含有物の試料について、比表面積と色差との関係を求めておけば、コンクリート組成物の製造に用いる粉体に対し、可視光の下で色差計を用いて、その色差を測定するだけで、この粉体の比表面積を推定することができる。
【0034】
<実験例>
本発明の発明者は、コンクリート組成物の製造に用いる粉体として採用するシリカフューム含有物について、色差計による色差の測定、及び上述した気体吸着法(すなわち、BET法)による比表面積の測定をそれぞれ行った。色差の測定には、TES社製「TES-135」カラーアナライザー色差計を用いた。シリカフューム含有物には、シリカフューム、及びシリカフューム混合セメントをそれぞれ準備した。これらは、それぞれ同一銘柄の異なるロットの試料である。
【0035】
(1)シリカフュームについての実験
シリカフュームの試料(試料番号1~4)について測定した色差及びBET比表面積の測定結果は表1の通りとなった。
【0036】
【表1】
【0037】
この結果から、L*を説明変数x、比表面積を目的変数yとして解析すると以下の式(2)に示す回帰直線が得られた。
【0038】
(数2)
y=49.905855-0.498096・x …(2)
【0039】
この式(2)における決定係数はR2=0.8578であり、残差標準偏差はSE=0.9604である。
【0040】
一方、表1に示す結果から、総合色差DEを説明変数x、比表面積を目的変数yとして解析すると以下の式(3)に示す回帰直線が得られた。
【0041】
(数3)
y=50.019304-0.499065・x …(3)
【0042】
この式(3)における決定係数はR2=0.8588であり、残差標準偏差はSE=0.9572である。
【0043】
すなわち、説明変数xをL*にするよりも、総合色差DEにした方が、決定係数R2が増加し(0.8578<0.8588)、残差標準偏差SEが減少した(0.9604>0.9572)。
【0044】
決定係数R2は、推定された回帰式の適合の良さを示す指標であり、その数値が高いほど回帰式の適合度が高いことを示している。また、残差標準偏差SEは、推定された回帰式からのデータのばらつき程度を示すものであり、その数値が低いほど回帰式の精度が高いことを示している。
【0045】
したがって、表1に示す結果によると、説明変数xをL*にするよりも、総合色差DEにした方が、回帰式の適合度及び精度の少なくともいずれかが高くなる可能性があることがわかった。
【0046】
上述した検量線を実験室で得た後、さらに、発明者は、上述した4つの試料(試料番号1~4)とは別に、コンクリート組成物の製造に用いる粉体として、上述した試料と同一ロットのシリカフューム(以下、粉体Aという)を用意した。そして、発明者は、この粉体Aの色差を測定するとともに、確認のため、この粉体AのBET比表面積を上述した気体吸着法により測定した。
【0047】
粉体Aの色差は、a*=-2.485、b*=2.300、L*=79.97であった。したがって、総合色差DE=80.0417である。また、粉体AのBET比表面積の実測値は、10.3457であった。
【0048】
発明者は、上述した式(2)に粉体Aについて測定したL*を代入して比表面積を推定した。また、発明者は、上述した式(3)に粉体Aについて算出したDEを代入して比表面積を推定した。すなわち、発明者は、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、粉体の比表面積を推定した。
【0049】
上述した式(2)によれば、粉体Aの比表面積の推定値はy=49.905855-0.498096・(79.97)=10.0731である。
また、上述した式(3)によれば、粉体Aの比表面積の推定値はy=50.019304-0.499065・(80.0417)=10.0733である。
【0050】
(2)シリカフューム混合セメントについての実験
シリカフューム混合セメントの試料(試料番号5~8)について測定した色差及びBET比表面積の測定結果は表2の通りとなった。
【0051】
【表2】
【0052】
この結果から、L*を説明変数x、比表面積を目的変数yとして解析すると以下の式(4)に示す回帰直線が得られた。
【0053】
(数4)
y=4.791392-0.034286・x …(4)
【0054】
この式(4)における決定係数はR2=0.9662であり、残差標準偏差はSE=0.0160である。
【0055】
一方、表2に示す結果から、総合色差DEを説明変数x、比表面積を目的変数yとして解析すると以下の式(5)に示す回帰直線が得られた。
【0056】
(数5)
y=4.868414-0.035356・x …(5)
【0057】
この式(5)における決定係数はR2=0.9666であり、残差標準偏差はSE=0.0159である。
【0058】
すなわち、説明変数xをL*にするよりも、総合色差DEにした方が、決定係数R2が増加し(0.9662<0.9666)、残差標準偏差SEが減少した(0.0160>0.0159)。
【0059】
したがって、表2に示す結果によると、説明変数xをL*にするよりも、総合色差DEにした方が、回帰式の適合度及び精度の少なくともいずれかが高くなる可能性があることがわかった。
【0060】
上述した検量線を実験室で得た後、さらに、発明者は、上述した4つの試料(試料番号5~8)とは別に、コンクリート組成物の製造に用いる粉体として、上述した試料と同一銘柄のロットの異なるシリカフューム混合セメント(以下、粉体Bという)を用意した。そして、発明者は、この粉体Bの色差を測定するとともに、確認のため、この粉体BのBET比表面積を上述した気体吸着法により測定した。
【0061】
粉体Bの色差は、a*=-0.730、b*=7.622、L*=54.87であった。したがって、総合色差DE=55.4017である。また、粉体BのBET比表面積の実測値は、2.9159であった。
【0062】
発明者は、上述した式(4)に粉体Bについて測定したL*を代入して比表面積を推定した。また、発明者は、上述した式(5)に粉体Bについて算出したDEを代入して比表面積を推定した。すなわち、発明者は、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、粉体の比表面積を推定した。
【0063】
上述した式(4)によれば、粉体Bの比表面積の推定値はy=4.791392-0.034286・(54.87)=2.9101である。
また、上述した式(5)によれば、粉体Bの比表面積の推定値はy=4.868414-0.035356・(55.4017)=2.9096である。
【0064】
上述の実験例(1)(2)に示した通り、シリカフューム含有物は、同一銘柄であってもロットが異なることで比表面積にバラツキが生じ易い。本発明によれば、こういった特性を有するシリカフューム含有物について、簡易に測定可能な色差を測定するだけで、その比表面積を比較的高精度で推定することができる。
【0065】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組合せてもよい。
【0066】
<1>
上述した実施形態において、推定された比表面積は、コンクリート組成物の製造方法に利用されるとよい。本発明の実施者は、複数種別の粉体のそれぞれに対し、上述した推定方法を行う。そして、この実施者は、推定された比表面積を用いて、複数種別の粉体の中から1以上の種別の粉体を選択するとよい。この実施者は、選択された1以上の種別の粉体を用いてコンクリート組成物を製造するとよい。
【0067】
本発明に係る比表面積の推定方法をコンクリート組成物の製造方法に利用することで、シリカフュームの比表面積をロット毎に簡便に評価できるので、コンクリート組成物の流動性及び施工性が確保される。
【0068】
<2>
上述した粉体の比表面積の推定方法は、装置によって行われてもよい。この装置は、色差計を用いて測定された、コンクリート組成物の製造に用いる粉体の色差を取得する取得部と、取得したこの粉体の色差、及び、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、この粉体の比表面積を推定する推定部と、を有する推定装置である。
【0069】
<3>
上述した推定装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の制御手段、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有するコンピュータでもよい。このコンピュータは、粉体の色差を測定する色差計や推定した比表面積を利用者に報知する報知機器(例えば、液晶ディスプレイ等)に接続され、これらを制御するとよい。このコンピュータによって実行されるコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)は、磁気テープ及び磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリ等の、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムは、インターネット等の通信回線経由でダウンロードされてもよい。すなわち、このプログラムは、コンピュータに、色差計を用いてコンクリート組成物の製造に用いる粉体の色差を測定させるステップと、前記ステップにおいて測定された前記粉体の色差、及び、予め特定されたシリカフューム含有物の比表面積と色差との関係を用いて、前記粉体の比表面積を推定するステップと、を実行させるためのプログラムである。なお、上述した推定装置によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサ等が用いられる。