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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20221201BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/02 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019073600
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020172129
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】伊東 宏司
(72)【発明者】
【氏名】今用 和也
(72)【発明者】
【氏名】西原 旨利
(72)【発明者】
【氏名】安江 諒
(72)【発明者】
【氏名】潘 小龍
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-199350(JP,A)
【文献】特開2002-283892(JP,A)
【文献】特開2013-035333(JP,A)
【文献】特開2016-159819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/72
A47C 7/00-7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの前後方向に延びるように設けられる複数のワイヤと、それら複数のワイヤの前後の両端側が接続される前部フレーム及び後部フレームを有するクッションフレームと、を備える車両用シートにおいて、
シートベルトを固定するためのバックルが接続され前記後部フレームに溶接される後部ブラケットを備え、
前記複数のワイヤのうちの少なくとも一のワイヤは、後端側が前記後部ブラケットに溶接されることで前記後部ブラケットを介して前記後部フレームに接続される第1ワイヤとして構成されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記後部ブラケットは、その前端側の上面に凹む凹部を備え、
前記凹部に前記第1ワイヤが溶接されることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記凹部の凹みの深さは、前記第1ワイヤの外径よりも大きく設定されることを特徴とする請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記凹部は、前記後部ブラケットの左右方向端部に形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記後部フレームは、円筒状に形成され、
前記後部ブラケットは、前記後部フレームの下面側の外周面に沿って湾曲し左右の両端が前記後部フレームの下面に沿って溶接される下面湾曲部を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項6】
前記後部フレームに対する前記下面湾曲部の左右の両端の溶接位置と、前記後部ブラケットに対する前記第1ワイヤの溶接位置とが左右方向でずれた位置に設定されることを特徴とする請求項5記載の車両用シート。
【請求項7】
前記複数のワイヤのうちの前記第1ワイヤを除くワイヤは、後端側が前記後部フレームに直接溶接される第2ワイヤとして構成され、
前記後部フレームに対する前記下面湾曲部の溶接範囲と、前記後部フレームに対する前記第2ワイヤの溶接範囲とが前記後部フレームの軸方向視において重ならない位置に設定されることを特徴とする請求項5又は6に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記後部フレームに溶接される前記第2ワイヤの後端部分は、前記後部フレームの上面側の外周面に沿って湾曲し、
前記後部フレームに対する前記第2ワイヤの溶接範囲は、車両に前記クッションフレームが固定された使用状態において前記後部フレームの上端よりも前方側であって前記後部フレームの斜め上方側の外周面に設定されることを特徴とする請求項7記載の車両用シート。
【請求項9】
前記前部フレームは、筒状に形成され、
前記前部フレームに溶接される前記第2ワイヤの前端部分は、前記前部フレームの外周面に沿って湾曲するか、若しくは、直線状に形成され、
前記前部フレームの周長に対する前記第2ワイヤと前記前部フレームとの接触長さの割合は、前記後部フレームの周長に対する前記第2ワイヤと前記後部フレームとの接触長さの割合よりも小さく設定されることを特徴とする請求項7又は8に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、クッションフレームの強度を向上させることができる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
クッションパッドを支持するワイヤをクッションフレームに溶接する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ワイヤの前後の両端側をクッションフレームの前部フレーム(フロントパイプ)や後部フレーム(補強パイプ)に溶接する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-094104号公報(例えば、段落0024、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術のワイヤに加え、バックル(シートベルトを固定するためのもの)が接続される後部ブラケットを後部フレームに溶接する場合、ワイヤや後部ブラケットの溶接位置が近くなると後部フレームが溶接時の熱影響を受けやすくなる。よって、クッションフレームの強度が低下するおそれがあるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、クッションフレームの強度を向上させることができる車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の車両用シートは、シートの前後方向に延びるように設けられる複数のワイヤと、それら複数のワイヤの前後の両端側が接続される前部フレーム及び後部フレームを有するクッションフレームと、を備えるものであり、シートベルトを固定するためのバックルが接続され前記後部フレームに溶接される後部ブラケットを備え、前記複数のワイヤのうちの少なくとも一のワイヤは、後端側が前記後部ブラケットに溶接されることで前記後部ブラケットを介して前記後部フレームに接続される第1ワイヤとして構成される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の車両用シートによれば、次の効果を奏する。シートベルトを固定するためのバックルが接続され後部フレームに溶接される後部ブラケットを備え、複数のワイヤのうちの少なくとも一のワイヤは、後端側が後部ブラケットに溶接されることで後部ブラケットを介して後部フレームに接続される第1ワイヤとして構成される。これにより、後部フレームに第1ワイヤが直接溶接されないので、後部フレームが第1ワイヤの溶接時の熱影響を受けることを抑制できる。よって、クッションフレームの強度を向上させることができるという効果がある。
【0008】
請求項2記載の車両用シートによれば、請求項1記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。後部ブラケットは、その前端側の上面に凹む凹部を備え、その凹部に第1ワイヤが溶接されるので、凹部の凹みの深さの分、第1ワイヤの溶接位置から後部フレームまでの熱の伝達経路を長くすることができる。よって、後部フレームが第1ワイヤの溶接時の熱影響を受けることを抑制できるので、クッションフレームの強度を向上させることができるという効果がある。
【0009】
請求項3記載の車両用シートによれば、請求項2記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。凹部の凹みの深さは、第1ワイヤの外径よりも大きく設定されるので、ワイヤ(後部ブラケット)に支持されるクッションパッド側に第1ワイヤが突出することを抑制できる。これにより、クッションパッドに第1ワイヤの後端部分が食い込んでクッションパッドが損傷することや、着座者が第1ワイヤの突出による異物感を感じることを抑制できるという効果がある。
【0010】
請求項4記載の車両用シートによれば、請求項2又は3に記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。凹部は、後部ブラケットの左右方向端部に形成されるので、凹部の左右方向端部を開放させることができる。これにより、凹部に第1ワイヤを溶接する際の作業性を向上させることができるという効果がある。
【0011】
請求項5記載の車両用シートによれば、請求項1から4のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。後部フレームは、円筒状に形成され、後部ブラケットは、後部フレームの下面側の外周面に沿って湾曲し左右の両端が後部フレームの下面に沿って溶接される下面湾曲部を備えるので、後部フレームと下面湾曲部との溶接部分の強度を高めることができる。
【0012】
即ち、後部ブラケットにはバックルが固定されているため、前面衝突時に着座者の荷重によってシートベルトが前方側に牽引されると、バックルを介して後部ブラケットが前方の斜め上方に引っ張られ、後部フレームと後部ブラケットの下面湾曲部との溶接部分にせん断方向の荷重が作用する。これに対し、下面湾曲部の左右の両端を後部フレームの下面に沿って溶接することにより、かかる溶接部分をせん断方向に長く形成することができる。よって、前面衝突時にシートベルトから作用する荷重に対し、後部フレームと下面湾曲部との溶接部分の強度を高めることができるという効果がある。
【0013】
請求項6記載の車両用シートによれば、請求項5記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。後部フレームに対する下面湾曲部の溶接位置と、後部ブラケットに対する第1ワイヤの溶接位置とが左右方向でずれた位置に設定される。これにより、仮に、第1ワイヤの溶接時の熱が後部ブラケットを介して後部フレームに伝達されたとしても、その熱を下面湾曲部と後部フレームとの溶接位置から離れた位置に伝えることができる。よって、第1ワイヤや下面湾曲部の溶接時の熱影響が後部フレームの一部に集中することを抑制できるので、クッションフレームの強度を向上させることができるという効果がある。
【0014】
請求項7記載の車両用シートによれば、請求項5又は6に記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。複数のワイヤのうちの第1ワイヤを除くワイヤは、後端側が後部フレームに直接溶接される第2ワイヤとして構成されるので、第2ワイヤが溶接される領域においては後部フレームが溶接時の熱影響を受けやすくなる。
【0015】
これに対し、後部フレームに対する後部ブラケットの下面湾曲部の溶接範囲と、第2ワイヤの溶接範囲とを後部フレームの軸方向視において重ならない位置に設定することにより、第2ワイヤが下面湾曲部に近接した位置で後部フレームに溶接される場合でも、第2ワイヤや下面湾曲部の溶接時の熱影響が後部フレームの一部に集中することを抑制できる。よって、クッションフレームの強度を向上させることができるという効果がある。
【0016】
請求項8記載の車両用シートによれば、請求項7記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。後部フレームに溶接される第2ワイヤの後端部分は、後部フレームの上面側の外周面に沿って湾曲し、後部フレームに対する第2ワイヤの溶接範囲は、車両にクッションフレームが固定された使用状態において後部フレームの上端よりも前方側であって後部フレームの斜め上方側の外周面に設定されるので、後部フレームと第2ワイヤとの溶接部分の強度を高めることができる。
【0017】
即ち、上述したように、前面衝突時には後部ブラケットが前方の斜め上方に向けて引っ張られるため、その引っ張り方向に向けて後部フレームが変形しようとする。この変形に対し、後部フレームにおける前方斜め上方側の外周面に第2ワイヤを溶接することにより、かかる溶接部分にせん断方向の荷重が作用することを抑制できる。よって、前面衝突時の荷重に対し、後部フレームと第2ワイヤとの溶接部分の強度を高めることができるという効果がある。
【0018】
請求項9記載の車両用シートによれば、請求項7又は8に記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。前部フレームは、筒状に形成され、第2ワイヤの前端は、前部フレームの外周面に溶接されるので、第2ワイヤは前後の両端側が筒状の前部フレーム及び後部フレームの外周面に溶接される。
【0019】
この場合、例えば、第2ワイヤの前後の両端のそれぞれが前部フレームや後部フレームの外周面に沿う湾曲形状であると、例えば、第2ワイヤの長さの公差等により、第2ワイヤの前端側の湾曲部分が所望の位置よりも前部フレームに対して前後でずれた位置に配置されることがある。その前後方向での位置ずれにより、第2ワイヤの湾曲部分が前部フレームに対して浮き上がった状態となる場合があり、その浮き上がりは、前部フレームの外周面(周長)に対する第2ワイヤの接触長さが長いほど大きくなりやすい。
【0020】
これに対して請求項9によれば、第2ワイヤの前端は、前部フレームの外周面に沿って湾曲するか、若しくは、直線状に形成され、前部フレームの周長に対する第2ワイヤと前部フレームとの接触長さの割合は、後部フレームの周長に対する第2ワイヤと後部フレームとの接触長さの割合よりも小さく設定される。これにより、第2ワイヤの前端が所望の位置よりも前部フレームに対して前後でずれた位置に配置された場合でも、前部フレームに対する第2ワイヤの浮き上がりを比較的小さくすることができる。よって、前部フレームに対して第2ワイヤを適切な高さで溶接し易くできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態における車両用シートの正面斜視図である。
図2図1の矢印II方向視における車両用シートの部分拡大上面図である。
図3】(a)は、図2のIIIa-IIIa線における車両用シートの部分拡大断面図であり、(b)は、図2のIIIb-IIIb線における車両用シートの部分拡大断面図である。
図4図3のIV部分を拡大した車両用シートの部分拡大断面図である。
図5図1の矢印V方向視における車両用シートの部分拡大側面図である。
図6】(a)は、図5のVIa-VIa線における車両用シートの部分拡大断面図であり、(b)は、図6(a)の矢印VIb方向視における車両用シートの部分拡大側面図である。
図7】(a)は、図5のVIIa-VIIa線における車両用シートの部分拡大断面図であり、(b)は、第2実施形態における車両用シートの部分拡大断面図である。
図8】(a)は、第3実施形態における車両用シートの部分拡大側面図であり、(b)は、第4実施形態における車両用シートの部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、車両用シート1の全体構成について説明する。図1は、第1実施形態における車両用シート1の正面斜視図である。なお、図1では、図面を簡素化するために、車両用シート1の一部を省略し、フレーム部分を模式的に図示している。また、図1の矢印U方向、矢印D方向、矢印F方向、矢印B方向、矢印L方向、矢印R方向は、それぞれ車両用シート1の上方向、下方向、前方向、後方向、左方向、右方向を示しており、図2以降においても同様とする。
【0023】
図1に示すように、車両用シート1は、車両(例えば、自動車)に搭載されるシートであり、左座席(矢印L側の席)と、中央座席と、右座席(図示せず)とを備える3人掛けのシートとして構成される。なお、図1では、左座席および中央座席の骨格となるフレームのみを図示しており、右座席を構成するフレームの図示を省略している。
【0024】
車両用シート1は、左座席および中央座席の座面を形成するクッションフレーム2と、そのクッションフレーム2の後端部(矢印B側の端部)に連結される一対のサイドブラケット3と、それら一対のサイドブラケット3のそれぞれに配設されるリクライニング装置4と、そのリクライニング装置4に連結されるバックフレーム5と、そのバックフレーム5に固定されるリトラクタ6と、を備える。
【0025】
クッションフレーム2は、着座者が着座するシートクッションのフレームであり、主に鋼材から構成される。クッションフレーム2は、車体(図示せず)に取り付けられている。クッションフレーム2は、左右(矢印L-R方向)に延設され前後(矢印F-B方向)に所定間隔を隔てて設けられる円筒状の前部フレーム20及び後部フレーム21と、それら前部フレーム20及び後部フレーム21の左右の両端を前後に連結する一対のサイドフレーム23と、それら一対のサイドフレーム23の対向間において前部フレーム20及び後部フレーム21の間に架け渡されるワイヤ24と、後部フレーム21の左右方向中央部分に連結される後部ブラケット25と、を備えている。
【0026】
弾力性のある軟質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂製のクッションパッド(図示せず)をワイヤ24や後部ブラケット25により支持し、ファブリックや合成皮革または皮革等から構成されるカバー(図示せず)でクッションパッドを覆うことでシートクッションが形成される。
【0027】
サイドブラケット3は、サイドフレーム23の後端側から上方(矢印U側)に向けて突出する金属製の板状体であり、サイドブラケット3の上端側にリクライニング装置4を介してバックフレーム5が連結される。
【0028】
リクライニング装置4は、左右方向に延びる回転軸(図示せず)を中心にクッションフレーム2(サイドブラケット3)に対してバックフレーム5を回転可能に連結する装置である。図示しないレバーやスイッチを着座者などが操作することでリクライニング装置4のロックが解除され、クッションフレーム2に対するバックフレーム5の傾斜角度が調整可能となる。一方、レバーやスイッチを着座者などが操作していないとき、クッションフレーム2に対するバックフレーム5の傾斜角度がロックされる。
【0029】
バックフレーム5は、着座者の背もたれとなるシートバックのフレームであり、主に鋼材から構成される。弾力性のある軟質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂製のバックパッド(図示せず)をバックフレーム5により支持し、ファブリックや合成皮革または皮革等から構成されるカバー(図示せず)でバックパッドを覆うことでシートバックが形成される。
【0030】
バックフレーム5は、左右方向に互いに離れて上下方向(矢印U-D方向)に延びる第1縦フレーム50及び第2縦フレーム51と、第1縦フレーム50及び第2縦フレーム51の上部間を連結して左右方向に延びるアッパーフレーム52と、第1縦フレーム50及び第2縦フレーム51の下部間を連結して左右方向に延びるロアフレーム53と、を備える。
【0031】
第1縦フレーム50は、バックフレーム5の左右方向の略中央に配置されるフレームであって、中央座席と左座席との境界部分に配置されるフレームである。第2縦フレーム51は、バックフレーム5の左端に配置されるフレームであり、第2縦フレーム51の下端部がリクライニング装置4を介して左側(矢印L側)のサイドブラケット3に連結される。
【0032】
ロアフレーム53の右側(矢印R側)の端部は第1縦フレーム50よりも中央座席側(矢印R側)に突出しており、その突出先端が被連結部材54を介してリクライニング装置4に連結される。被連結部材54は、ロアフレーム53との接続部分から上方に突出し、被連結部材54の上端には補強フレーム55が接続される。補強フレーム55は、収納状態におけるアームレスト(図示せず)を支えるための部位であり、被連結部材54の上端と第1縦フレーム50の側面とを左右方向に接続している。
【0033】
被連結部材54は、リクライニング装置4を介して右側のサイドブラケット3に連結されている。よって、左右一対のリクライニング装置4の回転軸周りに第2縦フレーム51及び被連結部材54が回転することにより、左右一対のサイドブラケット3(クッションフレーム2)に対してバックフレーム5が回転可能に設けられる。
【0034】
バックフレーム5の第1縦フレーム50の内面に固定されるリトラクタ6は、3点式のシートベルト7を巻き取るための巻取装置である。シートベルト7は、中央座席に着座した着座者の上体を拘束する第1シートベルト7aと、左座席に着座した着座者の上体を拘束する第2シートベルト7bと、から構成される。
【0035】
第1シートベルト7aのウエビング70aの一端がリトラクタ6に巻回され、他端がクッションフレーム2の後部ブラケット25に固定される。第2シートベルト7bのウエビング70bは、その両端のそれぞれが車体(図示せず)に接続される。即ち、第1シートベルト7aは、車両用シート1が備えるものであり、第2シートベルト7bは、車体が備えるものである。
【0036】
リトラクタ6は、前面衝突時や急ブレーキ時に車両が急激に減速した場合に、第1シートベルト7aのウエビング70aをロックしたり、ウエビング70aを巻き取ったりして、ウエビング70aがそれ以上引き出されることを防止する。但し、リトラクタ6は、第1シートベルト7aに所定値以上の荷重(引張力)が入力された場合に、徐々にウエビング70aを送り出すフォースリミッタの機能を有している。
【0037】
なお、第2シートベルト7bのウエビング70aも車体側のリトラクタ(図示せず)に接続されているが、車体側のリトラクタは、車両用シート1のリトラクタ6と同様の機能を有するものであるのでその説明は省略する。
【0038】
クッションフレーム2の右側(矢印R側)の端部にはバックル8aが固定され、後部ブラケット25にはバックル8bが固定される。リトラクタ6から引き出される第1シートベルト7aのウエビング70aは、バックフレーム5の背面からアッパーフレーム52の上端部分に掛けられるようにしてバックフレーム5の前面側に引き出される。ウエビング70aが挿通されるタング71aがバックル8aに差し込まれる(固定される)ことにより、ウエビング70aが中央座席の着座者の肩から腰まで斜めに掛けられる。
【0039】
また、車体側のリトラクタ(図示せず)から引き出される第2シートベルト7bのウエビング70bは、バックフレーム5の左端側の背面からアッパーフレーム52の上端部分に掛けられるようにしてバックフレーム5の前面側に引き出される。ウエビング70bが挿通されるタング71bがバックル8bに差し込まれる(固定される)ことにより、ウエビング70bが左座席の着座者の肩から腰まで斜めに掛けられる。
【0040】
前面衝突時や急ブレーキ時など、着座者を拘束する第1,2シートベルト7a,7bが前方側に引っ張られると、後部ブラケット25(後部フレーム21)には前方の斜め上方側に向けた荷重Faが加わる。この荷重を、以下の説明においては単に「シートベルトからの荷重Fa」と記載する。
【0041】
シートベルトからの荷重Faによって後部フレーム21が前方の斜め上方側へ向けて屈曲するように変形しようとするが、本実施形態では、後部フレーム21は、引張強さが約490MPa(50kgf/mm)以上の高張力鋼(ハイテン)製の鋼材を用いて形成される。よって、シートベルトからの荷重Faに対して後部フレーム21の強度を確保できる。
【0042】
なお、後部フレーム21は、焼入れ及び焼戻しの熱処理が施された、引張強さが約980MPaの調質高張力鋼製のものから構成しても良い。これにより、シートベルトからの荷重Faに対して後部フレーム21の強度をより効果的に確保できる。
【0043】
この一方で、後部フレーム21にはワイヤ24や後部ブラケット25が溶接されるため、後部フレーム21が高張力鋼製であると、通常の(例えば、引張強さが490MPa未満の)鋼材に比べて溶接時の熱影響によって靭性が低下し易いため、クッションフレーム2の強度が低下するおそれがある。これに対して本実施形態では、溶接時に後部フレーム21に加わる熱影響を低減させることができる構成を採用している。この構成について、図2図4を参照して説明する。
【0044】
図2は、図1の矢印II方向視における車両用シート1の部分拡大上面図である。図3(a)は、図2のIIIa-IIIa線における車両用シート1の部分拡大断面図であり、図3(b)は、図2のIIIb-IIIb線における車両用シート1の部分拡大断面図である。図4は、図3のIV部分を拡大した車両用シート1の部分拡大断面図である。
【0045】
なお、図2図4では、図示しない車両に取付けられた使用状態(着座者が着座可能な状態。以下、単に「使用状態」と記載する)における車両用シート1の上面や断面を図示している。また、図3及び図4では、各部を連結する溶接部W1~W6(溶接金属)にドット状のハッチングを付して模式的に図示している。
【0046】
図2及び図3に示すように、クッションフレーム2の後部ブラケット25は、後部フレーム21の前端よりも前方側に突出する突出部25aと、その突出部25aの上面に凹む凹部25bと、を備える。
【0047】
突出部25aには、左右に所定間隔を隔てて一対の貫通孔25c(図2参照)が形成され、それら一対の貫通孔25cのうち、右側(矢印R側)に位置する貫通孔25cにバックル8b(図1参照)が固定され、左側(矢印L側)に位置する貫通孔25cに第1シートベルト7aのウエビング70a(図1参照)が固定される。
【0048】
ワイヤ24は、前後の両端が前部フレーム20及び後部フレーム21が溶接され前後に延びる複数(本実施形態では、4本)のワイヤ24(図2参照)と、前後に延びるワイヤ24の上面に溶接され左右に延びる複数(本実施形態では、2本)のワイヤ24と、から構成される。
【0049】
前後に延びる複数のワイヤ24のうち、後部ブラケット25の貫通孔25cに最も近接した位置に配置されるものを第1ワイヤ24aと定義する。また、前後に延びる複数のワイヤ24のうち、第1ワイヤ24aを除く残りのワイヤ24を第2ワイヤ24bと定義すると、第1ワイヤ24aの後端部24a1は後部ブラケット25に溶接される。
【0050】
即ち、後部ブラケット25よりも左右方向外側に位置する第2ワイヤ24bは、前後の両端が前部フレーム20及び後部フレーム21にそれぞれ溶接されるのに対し、上面視において後部ブラケット25と重なる位置に配置される第1ワイヤ24aは、前端が前部フレーム20に溶接される一方、後端は後部フレーム21に直接溶接されることなく、後部ブラケット25の突出部25aに溶接される。これにより、第1ワイヤ24aの溶接時の熱影響を後部フレーム21が受けることを抑制できるので、後部フレーム21の靭性の低下を抑制し、クッションフレーム2の強度を向上させることができる。
【0051】
また、後部ブラケット25の突出部25aには下方に凹む凹部25bが形成され、その凹部25bに第1ワイヤ24aの後端が溶接される。これにより、凹部25bが形成によって生じる段差部25d(後部ブラケット25の曲げ部分)の長さ、即ち、凹部25bの凹みの深さの分、第1ワイヤ24aの溶接位置から後部フレーム21までの熱の伝達経路を長くすることができる。よって、第1ワイヤ24aの溶接時の熱影響を後部フレーム21が受けることをより効果的に抑制できる。
【0052】
この場合、単に第1ワイヤ24aの溶接位置から後部フレーム21までの熱の伝達経路を長くすることを目的とするのであれば、例えば、突出部25aの左右方向中央に凹部25bを形成する構成や、突出部25aの左右方向の両端にわたって凹部25bを形成することも可能である。
【0053】
しかしながら、突出部25aの左右方向中央に凹部25bを形成すると、凹部25bを取り囲むように段差部25dが形成されるため、第1ワイヤ24aの溶接作業を可能とする(凹部25bを取り囲む段差部25dと溶接トーチとの干渉を抑制する)ために凹部25bを左右に比較的広く形成する必要がある。そのような左右に広い凹部25bを貫通孔25cを避けて形成しようとすると、突出部25aが左右方向で大型化する。
【0054】
また、突出部25aの左右方向の両端にわたって凹部25bを形成すると、段差部25dが突出部25aの左右の両端にわたって形成されることになり、上述したシートベルトからの荷重Fa(図3参照)によって段差部25dにおいて後部ブラケット25に曲げが生じやすくなる。
【0055】
これに対して本実施形態では、突出部25aの左右方向端部(本実施形態では、矢印L側の左端)に凹部25bが形成されるので、凹部25bの左右方向端部(左端)を開放させることができる。これにより、左右方向における凹部25bの形成領域を比較的小さくしても、段差部25dに溶接トーチが干渉することを抑制できる。よって、例えば、凹部25bを突出部25aの左右方向中央に形成する場合に比べ、後部ブラケット25を小型化しつつ、第1ワイヤ24aを凹部25bに溶接する際の作業性を向上させることができる。
【0056】
更に、突出部25aの左右方向端部(本実施形態では、左端)に凹部25bを形成することにより、凹部25bを取り囲む段差部25dの一部を突出部25aの前後方向に延設させることができる。これにより、例えば、突出部25aの左右方向の両端にわたって凹部25bを形成する場合に比べ、シートベルトからの荷重Faに対する後部ブラケット25の強度を向上させることができる。
【0057】
図3(a)に示すように、凹部25bの凹みの深さ(突出部25aの板厚方向における段差部25dの寸法)は、第1ワイヤ24aの外径よりも大きく設定されるので、ワイヤ24(突出部25a)に支持されるクッションパッド(図示せず)側に第1ワイヤ24aが突出することを抑制できる。これにより、第1ワイヤ24aの後端部分が食い込んでクッションパッドが損傷することや、着座者が第1ワイヤ24aの突出による異物感を感じることを抑制できる。
【0058】
後部ブラケット25の突出部25aは、前方下側に向けて下降傾斜する姿勢で後部フレーム21に連結されており、凹部25bの底面も同様に前方下側に向けて下降傾斜している。
【0059】
第1ワイヤ24aは、凹部25bの底面に沿って前方側に下降傾斜する後端部24a1と、その後端部24a1の前端(矢印F側の端部)から前方側に直線状に延びる底部24a2と、その底部24a2の前端から前方側に向けて上昇傾斜する傾斜部24a3と、その傾斜部24a3の前端から前方側に直線状に延びる前端部24a4と、を備える。
【0060】
凹部25bの底面が前方下側に向けて下降傾斜し、その凹部25bの底面に沿って第1ワイヤ24aの後端部24a1が溶接されることで溶接部W1が形成される。これにより、シートベルトからの荷重Faが後部ブラケット25に作用した場合に、凹部25bと第1ワイヤ24aとの溶接部W1がせん断方向の荷重を受けることを抑制できる。よって、シートベルトからの荷重Faに対する溶接部W1の強度を確保できる。
【0061】
また、凹部25bと第1ワイヤ24aの後端部24a1との溶接部W1の溶接長さは、前部フレーム20と第1ワイヤ24aの前端部24a4との溶接部W2の溶接長さよりも長く設定されている。これにより、シートベルトからの荷重Faが作用し易い(必要とされる強度が比較的大きい)溶接部W1の強度を確保しつつ、シートベルトからの荷重Faが作用し難い溶接部W2の長さを短くして溶接作業の工数を低減させることができる。
【0062】
このように、溶接部W1,W2の強度を高めるためには、その溶接長さを長くすれば良い。よって、例えば、第1ワイヤ24aの前端部24a4を湾曲形状にし、筒状の前部フレーム20の上面に沿って配置する構成を採用することで溶接部W2の溶接長さを確保することも可能である。
【0063】
しかしながら、第1ワイヤ24aの前端部24a4を湾曲形状にすると、前端部24a4の湾曲部分の曲率の公差や第1ワイヤ24aの長さの公差により、前部フレーム20の外周面に沿って前端部24a4を嵌め込むことが困難になる場合がある。言い換えると、第1ワイヤ24aの前端部24a4の湾曲部分が前部フレーム20に対して浮き上がり、前部フレーム20に対して適切な高さ(相対位置)で第1ワイヤ24aを溶接することが困難となる場合がある。
【0064】
これに対して本実施形態では、第1ワイヤ24aの前端部24a4が前後方向に沿う直線状に形成され、その直線状の前端部24a4が前部フレーム20の上面に溶接されるので、第1ワイヤ24aの前端部24a4が前部フレーム20に対して浮き上がった状態で溶接されることを抑制できる。よって、前部フレーム20に対して適切な高さ(相対位置)で第1ワイヤ24aを溶接することができる。
【0065】
一方、第1ワイヤ24aの前端部24a4が前後に沿う直線状に形成されることにより、前部フレーム20と第1ワイヤ24aとの溶接部W2の溶接長さが比較的(溶接部W1に比べて)短くなるが、上述した通り、溶接部W2はシートベルトからの荷重Faが比較的作用し難い部位である。よって、溶接部W2の長さを比較的短くしてもシートベルトからの荷重Faによって溶接部W2が破壊されることを抑制できる。
【0066】
図3(b)に示すように、第2ワイヤ24bは、後部フレーム21の外周面に沿って湾曲する後端部24b1と、その後端部24b1の下端から前方側に下降傾斜する第1傾斜部24b2と、その第1傾斜部24b2の前端から前方側に直線状に延びる底部24b3と、その底部24b3の前端から前方側に上昇傾斜する第2傾斜部24b4と、その第2傾斜部24b4の前端から前方側に直線状に延びる前端部24b5と、から構成される。
【0067】
第2ワイヤ24bの後端部24b1が後部フレーム21の上面側の外周面に沿って溶接されることで溶接部W3が形成される。また、第2ワイヤ24bの直線状の前端部24b5が前部フレーム20の上面に溶接されることで溶接部W4が形成される。
【0068】
このように、第2ワイヤ24bの後端部24b1が湾曲形状であると、上述したように、後部フレーム21に対して第2ワイヤ24bの後端部24b1が浮き上がることがあるため、本実施形態では、第2ワイヤ24bの後端部24b1を後部フレーム21に溶接した後、前端部24b5を前部フレーム20に溶接する工程を採用している。
【0069】
これにより、第2ワイヤ24bの前端部24b5が拘束されていない状態で後部フレーム21に第2ワイヤ24bの後端部24b1を溶接できる。よって、後部フレーム21に対して後端部24b1が極力浮き上がらない位置に第2ワイヤ24bを配置した状態で溶接を行うことができる。
【0070】
このように、前後に延びるワイヤ24の一端が湾曲形状である場合、その湾曲部分を先に溶接することで前部フレーム20や後部フレーム21に対するワイヤ24の浮き上がりを抑制できる。しかしながら、前後に延びるワイヤ24の両端が湾曲形状である場合、例えば、第2ワイヤ24bの前端部24b5も前部フレーム20の外周面に沿う湾曲形状である場合には、第2ワイヤ24bが前部フレーム20に対して浮き上がり易くなる。
【0071】
即ち、後部フレーム21と第2ワイヤ24bの後端部24b1との溶接を所望の位置で行っても、前部フレーム20と前端部24b5との相対位置が所望の位置よりも前後にずれることがあり、前部フレーム20に対して第2ワイヤ24bが浮き上がり易くなる。このような第2ワイヤ24bの浮き上がりは、前部フレーム20の外周面(周長)に対する前端部24b5の接触長さ(湾曲部分の長さ)が長いほど大きくなりやすい。
【0072】
これに対して本実施形態では、第2ワイヤ24bの前端部24b5が前後方向に沿う直線状に形成され、その直線状の前端部24b5が前部フレーム20の上面に溶接される。言い換えると、前部フレーム20の周長に対する第2ワイヤ24b(前端部24b5)と前部フレーム20との接触長さ(溶接部W4の長さ)の割合は、後部フレーム21の周長に対する第2ワイヤ24b(後端部24b1)と後部フレーム21との接触長さ(溶接部W3の長さ)の割合よりも小さく設定される。これにより、仮に、第2ワイヤ24bの前端部24b5が所望の位置よりも前部フレーム20に対して前後でずれた位置に配置された場合でも、前部フレーム20に対する第2ワイヤ24bの前端部24b5の浮き上がりを抑制できる。よって、前部フレーム20に対して第2ワイヤ24bを適切な高さで溶接し易くできる。
【0073】
一方、第2ワイヤ24bの前端部24b5が前後方向に沿う直線状に形成されることにより、前部フレーム20と第2ワイヤ24bの前端部24b5との溶接部W4の溶接長さが比較的(溶接部W3に比べて)短くなるが、上述した通り、溶接部W4はシートベルトからの荷重Fa(図3(a)参照)が比較的作用し難い部位である。よって、溶接部W4の長さを比較的短くしても、シートベルトからの荷重Faによって溶接部W4が破壊されることを抑制できる。
【0074】
なお、本実施形態では、第2ワイヤ24bの前端部24b5が前後方向に沿う直線状に形成されているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2ワイヤ24bの前端部が前部フレーム20の外周面に沿う湾曲形状であっても良い。この場合でも、前部フレーム20の周長に対する第2ワイヤ24bの前端部と前部フレーム20との接触長さの割合を、後部フレーム21の周長に対する第2ワイヤ24bの後端部24b1と後部フレーム21との接触長さの割合よりも小さく設定すれば良い。これにより、第2ワイヤ24bの前端部が前部フレーム20に対して前後でずれた位置に配置された場合でも、第2ワイヤ24bの浮き上がりを比較的小さくすることができる。
【0075】
図4に示すように、後部ブラケット25は、突出部25aを後部フレーム21の下面に接続する下面湾曲部25eを備え、金属製の板状体をプレス加工することで突出部25a、凹部25b、及び、下面湾曲部25eが一体的に形成される。
【0076】
下面湾曲部25eは、その後端(矢印B側の端部)から前端(矢印F側の端部)にかけて後部フレーム21の下面に沿って湾曲し、下面湾曲部25eの前端部分から突出部25aが前方側に突出している。下面湾曲部25eの左右の両端(図4の紙面垂直方向における手前側の端部と奥側の端部)が後部フレーム21に溶接されることで溶接部W5が形成され、下面湾曲部25eの後端が後部フレーム21に溶接されることで溶接部W6が形成される。なお、溶接部W6は、左右方向(紙面垂直方向)において下面湾曲部25eの後端部分の略全長にわたって形成されている。
【0077】
後部ブラケット25にシートベルトからの荷重Faが加わると、後部フレーム21の下面に沿って下面湾曲部25eが変位(回転)しようとするため、後部フレーム21と下面湾曲部25eの左右の両端との溶接部W5にせん断方向(矢印A方向)の荷重が作用する。これに対し、下面湾曲部25eの左右の両端が後部フレーム21の下面に沿って溶接されているため、せん断方向(矢印A方向)に長く溶接部W5を形成することができる。よって、シートベルトからの荷重Faに対して後部フレーム21と下面湾曲部25eとの溶接部W5の強度を高めることができる。
【0078】
また、下面湾曲部25eの左右の両端と後部フレーム21との溶接部W5や、下面湾曲部25eの後端と後部フレーム21との溶接部W6は、後部フレーム21の周方向において第2ワイヤ24bと後部フレーム21との溶接部W3と異なる位置(ずれた位置)に形成される。より具体的には、下面湾曲部25eと後部フレーム21との溶接部W5,W6は、後部フレーム21の軸を挟んで溶接部W3と対面する位置に形成され、各溶接部W3,W5,W6は、後部フレーム21の軸方向視において互いに重ならない位置に配置される。
【0079】
これにより、後部ブラケット25に近接した位置で第2ワイヤ24bが後部フレーム21に溶接される場合でも、各溶接部W3,W5,W6の溶接時の熱影響が後部フレーム21の一部に集中することを抑制できる。
【0080】
また、後部フレーム21の周方向における溶接部W3や溶接部W5の溶接長さは、それぞれ後部フレーム21の周長の15%以上30%未満に設定されている。これにより、溶接部W3,W5の強度を確保しつつ、溶接部W3,W5の溶接時に後部フレーム21が受ける熱影響が過大となることを抑制できる。
【0081】
ここで、上述した通り、シートベルトからの荷重Faが後部ブラケット25を介して後部フレーム21に作用すると、後部フレーム21が前方の斜め上方側(矢印B方向)へ向けて変形しようとする。この変形により後部フレーム21と第2ワイヤ24bとの溶接部W3が破壊されるおそれがある。
【0082】
これに対して本実施形態では、第2ワイヤ24bの後端部24b1は、使用状態において後部フレーム21の上端よりも前方側であって後部フレーム21の斜め上方側の外周面に溶接される。言い換えると、後部フレーム21と第2ワイヤ24bの後端部24b1との溶接部W3の溶接範囲は、シートベルトからの荷重Faの入力方向と平行な直線であって後部フレーム21の軸を通る直線上(図4の矢印Bと重なる位置)に形成されている。
【0083】
これにより、シートベルトからの荷重Faによって後部フレーム21が変形しようとした場合に、後部フレーム21と第2ワイヤ24bとの溶接部W3にせん断方向の荷重が作用することを抑制できる。よって、シートベルトからの荷重Faに対する溶接部W3の強度を高めることができる。
【0084】
更に、使用状態において後部フレーム21の前方の斜め上方側の外周面のみに第2ワイヤ24bの後端部24b1を溶接することにより、例えば、溶接部W3の溶接範囲に加えて更に後方側(後部フレーム21の上端付近から後方側)にわたって溶接を行う場合に比べ、第2ワイヤ24bの後端部24b1の湾曲部分の長さを短くできる。これにより、後部フレーム21の外周面と第2ワイヤ24bの後端部24b1との接触長さを短くし、上述したような後部フレーム21に対する第2ワイヤ24bの浮き上がりを抑制できる。
【0085】
このように、本実施形態では、後部フレーム21の外周面と第2ワイヤ24bの後端部24b1との接触長さが比較的短く設定されており、第2ワイヤ24bの後端部24b1は、使用状態において後部フレーム21の上端と一致するか、若しくは、それよりも前方側に配置される構成となっている。この構成の場合、後部フレーム21に対する第2ワイヤ24bの浮き上がりを抑制しつつ、後部フレーム21の変形方向に溶接部W3を形成できる一方で、着座者が着座した際の荷重に対しては溶接部W3にせん断方向の荷重が作用し易くなる。
【0086】
これに対して本実施形態では、後部フレーム21と第2ワイヤ24bの後端部24b1との溶接部W3の溶接範囲は、使用状態において後部フレーム21の前端よりも下方側の領域に達する範囲に設定されている。これにより、着座者が着座した際の荷重に対し、溶接部W3をせん断方向に極力長く形成することができるので、溶接部W3の強度を確保できる。
【0087】
また、下面湾曲部25eの左右の両端と後部フレーム21との溶接部W5は、第1ワイヤ24aの後端部24a1と後部ブラケット25(凹部25b)との溶接部W1に対して左右方向でずれた位置に配置されている。言い換えると、図2に示すように、第1ワイヤ24aの後端部24a1は、下面湾曲部25eの左右方向端部よりも内側で後部ブラケット25に溶接される。
【0088】
これにより、仮に、第1ワイヤ24aの溶接時の熱が後部ブラケット25を介して後部フレーム21に伝達されたとしても、その熱を下面湾曲部25eの左右の両端と後部フレーム21との溶接部W5から離れた位置に伝えることができる。よって、第1ワイヤ24aや下面湾曲部25eの溶接時の熱影響が後部フレーム21の一部に集中することを抑制できる。
【0089】
この一方で、下面湾曲部25eの左右の両端が後部フレーム21に溶接され、突出部25aの左端側に第1ワイヤ24aが溶接されるため、それらの溶接部W1,W5どうしが近づきやすくなるものの、上述した通り、第1ワイヤ24aが凹部25bに溶接されているので、後部フレーム21に及ぶ熱影響が過大になることを抑制できる。
【0090】
図1に戻って説明する。上述した通り、リトラクタ6から引き出されるウエビング70aは、バックフレーム5の背面からアッパーフレーム52の上端部分に掛けられるようにしてバックフレーム5の前面側に引き出される。よって、前面衝突時や急ブレーキ時など、着座者を拘束する第1シートベルト7aが前方側に引っ張られると、その荷重がアッパーフレーム52に作用することでバックフレーム5が前傾しようとする(バックフレーム5がリクライニング装置4の回転軸周りに前方側へ回転しようとする)。
【0091】
リクライニング装置4によって傾斜角度がロックされた状態でバックフレーム5が前傾しようとすると、その前傾による荷重がサイドブラケット3を介して左右一対のサイドフレーム23に作用する。このバックフレーム5の前傾時の荷重によってサイドフレーム23が潰れるように変形するおそれがあるが、本実施形態では、そのようなサイドフレーム23の変形を抑制できる構成となっている。この構成について、図5図7を参照して説明する。
【0092】
まず、図5及び図6を参照して、サイドフレーム23とサイドブラケット3との連結部分の構成について説明する。
【0093】
図5は、図1の矢印V方向視における車両用シート1の部分拡大側面図である。図6(a)は、図5のVIa-VIa線における車両用シート1の部分拡大断面図であり、図6(b)は、図6(a)の矢印VIb方向視における車両用シート1の部分拡大側面図である。
【0094】
なお、以下に説明する車両用シート1のサイドフレーム23の構成(サイドブラケット3との連結構造や、補強部材9の配設構造)は、左右一対のサイドフレーム23において実質的に同一の構成(左右対称)であるので、左端側に位置するサイドフレーム23の構成のみを説明する。
【0095】
図5に示すように、サイドブラケット3は、サイドフレーム23の後端部分と、その後端部分よりも前方かつ下側(サイドフレーム23の前後方向中央より後方側)との2個所でボルト及びナットによって連結される。これらのボルト及びナットのうち、サイドブラケット3の前端部分をサイドフレーム23に連結するものにボルトB及びナットN(ナットNについては、図6参照)と符号を付して説明する。
【0096】
バックフレーム5(図1参照)の前傾による荷重がサイドブラケット3に作用すると、ボルトB及びナットNには前方下側に向けて傾斜する方向の荷重Fbが作用する。この荷重を、以下の説明においては単に「バックフレームからの荷重Fb」と記載する。本実施形態では、このバックフレームからの荷重Fbに対するサイドフレーム23の強度を向上させている。
【0097】
図6に示すように、サイドフレーム23は、サイドブラケット3が外面に連結される第1フレーム230と、その第1フレーム230に左右方向で対向配置される第2フレーム231と、を備える。
【0098】
第1フレーム230は、上下に延びるウェブ230aと、そのウェブ230aの上下の両端から第2フレーム231側に向けて延びる上フランジ230b及び下フランジ230cと、を備え、金属製の板状体を用いて略C形(溝形鋼状)に形成される。
【0099】
第2フレーム231は、上下に延びるウェブ231aと、そのウェブ231aの上端から第1フレーム230側に向けて延びる上フランジ231bと、ウェブ231aの下端から左右方向内方側(第1フレーム230側とは反対側)に延びる下フランジ231cと、を備え、金属製の板状体を用いてZ形鋼状に形成される。
【0100】
第1フレーム230の上フランジ230bは、第2フレーム231の上フランジ231bと上下に重ね合わせられた状態で溶接され、第1フレーム230の下フランジ230cの上面には、第2フレーム231の下フランジ231cが溶接される。これにより、第1フレーム230及び第2フレーム231によって閉断面構造のサイドフレーム23が構成される。
【0101】
第1フレーム230及び第2フレーム231のそれぞれのウェブ230a,231aには貫通孔230d,231dが形成され、サイドブラケット3には貫通孔30が形成される。これらの各貫通孔は、ボルトB及びナットNが挿通される部位であり、各貫通孔が左右方向で対向する位置に形成される。
【0102】
ナットNは、軸部N1と、その軸部N1の一端(第1フレーム230側の端部)に接続され軸部N1よりも外径が小さくされる挿通部N2と、軸部N1の他端(第2フレーム231側の端部)からフランジ状に張り出す張出部N3と、を備える。ナットNは、軸部N1、挿通部N2、張出部N3の各部が一体に形成された筒状に形成され、その内周面にはボルトBを締め付けるためのめねじが形成される。
【0103】
挿通部N2の外径は、第1フレーム230の貫通孔230dの内径と同一か、若しくはそれよりも僅かに小さく形成され、軸部N1の外径は、第1フレーム230の貫通孔230dの内径よりも大きく形成される。また、軸部N1の外径は、第2フレーム231の貫通孔231dの内径と同一か、若しくはそれよりも僅かに小さく形成され、張出部N3の外径は、第2フレーム231の貫通孔231dの内径よりも大きく形成される。
【0104】
次いで、サイドフレーム23の組立て方法と、サイドフレーム23へのサイドブラケット3の連結方法とを説明する。
【0105】
サイドフレーム23を組み立てる場合、まず、第2フレーム231の貫通孔231dにナットNの軸部N1を挿通させる(嵌め込む)ことで、張出部N3を第2フレーム231のウェブ231aの外面に引っ掛ける(当接させる)。その状態で張出部N3の外縁をウェブ231aの外面に溶接して溶接部W7(図6(b)参照)を形成することにより、第2フレーム231にナットNが固定される。
【0106】
この場合、第2フレーム231へのナットNの固定は、第2フレーム231のウェブ231aの内面に軸部N1を溶接することでも可能である。しかしながら、ウェブ231aの内面に軸部N1を溶接する構成であると、溶接時に溶接トーチが第2フレーム231の上フランジ231bに干渉し易くなる。
【0107】
これに対して本実施形態では、ナットNの張出部N3の外縁をウェブ231aの外面に溶接する構成であるため、溶接時に溶接トーチが第2フレーム231の上フランジ231bに干渉することを抑制できる。よって、第2フレーム231にナットNを溶接する際の作業性を向上させることができる。
【0108】
なお、第2フレーム231(ウェブ231a)の外面とは、車両用シート1の左右方向中央側の面(図6(a)の矢印R側の面)であり、第2フレーム231(ウェブ231a)の内面とは、第1フレーム230と対向する側の面(図6(a)の矢印L側の面)である。
【0109】
次いで、第2フレーム231に固定(溶接)されたナットNの挿通部N2を、第1フレーム230の貫通孔230dに挿通させる(嵌め込む)。ナットNの挿通部N2を第1フレーム230の貫通孔230dに挿通させた状態で、第1フレーム230及び第2フレーム231の上フランジ230b,231bどうしと、下フランジ230c,231cどうしとをそれぞれ溶接することにより、サイドフレーム23の組立てが完了する。
【0110】
ここで、例えば、ナットNが挿通部N2を備えていない構成であると、ナットNの内周(めねじが形成される孔)と第1フレーム230の貫通孔230dとの連通状態を調節しながら第1フレーム230と第2フレーム231との溶接を行う必要があるため、溶接作業に手間を要する。
【0111】
これに対して本実施形態では、ナットNの軸部N1よりも小径の挿通部N2を備え、その挿通部N2が第1フレーム230の貫通孔230dに嵌め込み可能に構成されているため、挿通部N2を貫通孔230dに嵌め込むことでナットNに対する貫通孔230dの位置決めを容易にできる。また挿通部N2を貫通孔230dに嵌め込んで軸部N1に第1フレーム230(ウェブ230a)の内面を当接させることにより、左右方向での第2フレーム231に対する第1フレーム230の位置決めを容易にできる。言い換えると、挿通部N2を貫通孔230dに嵌め込むことにより、ナットNの内周と貫通孔230dとを連通させた状態を常に維持した状態で第1フレーム230と第2フレーム231との溶接を行うことができるので、その溶接作業の作業性が向上する。
【0112】
次いで、組み立てが完了したサイドフレーム23に対し、ナットNの内周とサイドブラケット3の貫通孔30とを連通させた状態で、ボルトBを貫通孔30に挿通させつつナットNに締付けることにより、サイドフレーム23にサイドブラケット3が連結される。
【0113】
このように構成された車両用シート1によれば、ナットNの軸部N1とボルトBの頭部とによってサイドブラケット3と第1フレーム230(ウェブ230a)とが締め付けられ、ナットNの張出部N3が第2フレーム231(ウェブ231a)の外面に溶接されているため、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が広がるような変形を、張出部N3やボルトBの頭部によって規制できる。更に、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が狭まるような変形を、第2フレーム231とナットNの張出部N3との溶接部W7(図6(b)参照)や、ナットNの軸部N1によって規制できる。
【0114】
これにより、バックフレームからの荷重FbがボルトB及びナットNを介してサイドフレーム23に作用しても、サイドフレーム23が潰れるようにして変形することを抑制できる。即ち、バックフレーム5(サイドブラケット3)をサイドフレーム23に連結するためのボルトB及びナットNを利用してサイドフレーム23の強度を高めることができるので、車両用シート1の重量増を抑制しつつ、バックフレームからの荷重Fbに対するサイドフレーム23の強度を向上させることができる。
【0115】
また、第2フレーム231の外面にはナットNの張出部N3が引っ掛けられているので、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が広がるような変形を張出部N3によって規制できる。よって、第2フレーム231とナットNとの溶接部W7に作用する荷重を低減できるので、溶接部W7に破壊が生じることを抑制できる。
【0116】
ここで、単に第2フレーム231と張出部N3との溶接部W7の強度を高めることを目的とするのであれば、張出部N3の全周にわたって溶接部W7を形成すれば良い。しかしながら、そのような構成では、溶接部W7の強度を高めることはできるものの、溶接時の工数が増加する(サイドフレーム23の重量が増加する)。
【0117】
これに対して本実施形態では、側面視における第2フレーム231とナットN(張出部N3)との溶接範囲(溶接部W7)は、使用状態において前方下側に向けて傾斜する方向を挟んだナットN(張出部N3)の両脇に設定される。より具体的には、溶接部W7は、バックフレームからの荷重Fbの入力方向に沿う直線であってナットNの軸を通る直線を挟んで対称に2箇所形成される。
【0118】
これにより、第2フレーム231とナットNとの溶接部W7を、バックフレームからの荷重Fbの入力方向に沿って形成することができる。即ち、バックフレームからの荷重Fbに対し、第2フレーム231とナットNとの溶接部W7をせん断方向(矢印Fb方向)に長く形成することができるので、バックフレーム5の前傾時の荷重Fbに対する溶接部W7の強度を高めることができる。
【0119】
このように、本実施形態では、バックフレームからの荷重Fbの入力方向に延びる一対の溶接部W7を形成しつつ、バックフレームからの荷重Fbの入力方向と直交する方向においては溶接部W7を非形成としている。これにより、強度が比較的向上し易い部位に溶接部W7を形成しつつ、強度が比較的向上し難い部位(せん断方向に長く溶接部W7を形成することができない張出部N3の前方斜め下側や、後方斜め上側の外縁)には溶接部W7を非形成とすることができる。よって、溶接部W7の強度を確保しつつ、溶接時の工数を低減させる(サイドフレーム23の重量の増加を抑制する)ことができる。
【0120】
また、一対の溶接部W7を合計した溶接長さは、張出部N3の周長の40%以上60%未満に設定されている。これにより、第2フレーム231と張出部N3との溶接部W7の溶接長さが長く、若しくは、短くなり過ぎることを抑制できるので、溶接部W7の強度を確保しつつ、溶接時の工数を低減させる(サイドフレーム23の重量の増加を抑制する)ことができる。
【0121】
次いで、図5及び図7(a)を参照して、サイドフレーム23の内部に配設される補強部材9について説明する。図7(a)は、図5のVIIa-VIIa線における車両用シート1の部分拡大断面図である。
【0122】
図5に示すように、サイドフレーム23にはボルトBによってサイドブラケット3の前端部分が連結されているため、サイドブラケット3の配設領域(ボルトBよりも後方側の領域)においてはサイドフレーム23の強度が比較的高められている。一方、サイドブラケット3が配設されていない領域、即ち、ボルトBよりも前方側の領域においては、サイドフレーム23の強度が比較的低くなっている。これに対して本実施形態では、ボルトBよりも前方側の領域においてサイドフレーム23の内部に補強部材9が配設される。
【0123】
第1フレーム230のウェブ230aには、補強部材9と対面する位置に2つの溶接孔230e,230fが形成されている。また、第2フレーム231のウェブ231aにも同様に、補強部材9と対面する位置に2つの溶接孔231e,231f(溶接孔231eについては、図1参照)が形成されている。
【0124】
また、第1フレーム230の溶接孔230eは、補強部材9の下部後端側に形成され、溶接孔230fは、補強部材9の上部前端側に形成されている。一対の溶接孔230e,230fに対し、左右方向視において第2フレーム231の一対の溶接孔231e,231fの全体がそれぞれ重なる位置(同一の形状に)に形成されている。これらの各溶接孔は、補強部材9を第1フレーム230及び第2フレーム231溶接するための孔であり、各溶接孔は前後方向に細長く形成されている。
【0125】
補強部材9は、側面視において矩形状に形成され、その後端は側面視においてサイドブラケット3の前端と近接した位置に配置される。また、補強部材9の前端はサイドフレーム23の前後方向略中央部分に位置している。
【0126】
図7(a)に示すように、補強部材9は、第1フレーム230及び第2フレーム231を左右に接続するウェブ90と、そのウェブ90の左右の両端から下方に延びる一対のフランジ91と、を備え、金属製の板状体を用いて略C字状(溝形鋼状)に形成されている。
【0127】
補強部材9の一対のフランジ91が溶接孔230e,230f,231e,231fの内周面に溶接されることにより、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間に補強部材9が連結される。これにより、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が広がる、若しくは、狭まるような変形を補強部材9によって規制することができる。補強部材9は、ボルトBよりも前方側で第1フレーム230及び第2フレーム231の内面に溶接されるので、サイドフレーム23のうち、サイドブラケット3が側面に配設されていない部位の強度を補強部材9によって高めることができる。
【0128】
また、補強部材9が溶接孔230e,230f,231e,231fの内周面に溶接されるので、第1フレーム230及び第2フレーム231の外面側から溶接孔230e,230f,231e,231fを介して補強部材9を溶接できる。これにより、例えば、第1フレーム230及び第2フレーム231の内面に補強部材9を溶接する場合に比べ、補強部材9を溶接する際の作業性が向上する。
【0129】
ここで、サイドフレーム23の第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が狭まるような変形は、補強部材9自体の剛性によって規制できるため、そのような変形に対するサイドフレーム23の強度は、補強部材9が溶接されない領域においても比較的高くなる。
【0130】
一方、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が広がるような変形は、主に補強部材9が溶接される部位において規制されるため、そのような変形に対するサイドフレーム23の強度は、溶接孔230e,230fが形成される領域において向上し易い。以下に、第1フレーム230及び第2フレーム231の溶接孔230e,230f,231e,231fの詳細構成について説明する。
【0131】
バックフレームからの荷重Fbは、サイドフレーム23のうち、使用状態においてボルトBの前方の斜め下方側に位置する部位に加わりやすいため、本実施形態では、第1フレーム230に対する補強部材9の溶接位置、即ち、溶接孔230e,231eが形成される位置は、バックフレームからの荷重Fbの入力方向(前方の斜め下方側に向けた方向)視においてボルトBに重なる位置に設定されている。これにより、バックフレームからの荷重Fbが加わりやすい領域において、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が広がるような変形を補強部材9によって規制できる。よって、バックフレームからの荷重Fbに対するサイドフレーム23の強度を向上させることができる。
【0132】
このような第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔の広がりを規制し易くするためには、第1フレーム230及び第2フレーム231に対する補強部材9の溶接範囲を広くすれば良い。しかしながら、例えば、第1フレーム230に対する溶接範囲を広くするために第1フレーム230の溶接孔230e,230fを前後に長く形成すると、第1フレーム230の剛性が低下し易くなる。
【0133】
これに対して本実施形態では、図5に示すように、第1フレーム230の溶接孔230e,230fは、バックフレームからの荷重Fbの入力方向においてボルトBと重なる位置に配置される溶接孔230eと、その溶接孔230eよりも上方かつ前方側に位置する溶接孔230fと、から構成される。
【0134】
即ち、前後に延びる2つの溶接孔230e,230fが、前後方向および上下方向で互いに離れた位置に形成されているため、溶接孔230e,230fの形成領域を極力小さくしつつ、補強部材9によって補強される領域を前後方向および上下方向に広くし易くできる。よって、第1フレーム230の剛性の低下を抑制しつつ、補強部材9によってサイドフレーム23の強度を高めることができる。
【0135】
また、溶接孔230eよりも上方側に位置する溶接孔230fは、補強部材9の上端側(補強部材9の上下方向中央よりも上側)に形成されているため、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が広がるような変形をより効果的に抑制できる。
【0136】
即ち、図7(a)に示すように、補強部材9は、一対のフランジ91が第1フレーム230及び第2フレーム231に溶接されているため、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が広がるように変形しようとすると、一対のフランジ91も同様に外側に広がるように変形しようとする。このようなフランジ91の変形は、フランジ91の下端部が外方に引っ張られるほど生じやすくなる(ウェブ90とフランジ91との接続部分に作用するモーメントが大きくなりやすいため)。
【0137】
これに対して本実施形態では、溶接孔230f,231fが補強部材9の上端側(補強部材9の上下方向中央よりも上側)に形成されているため、第1フレーム230や第2フレーム231とフランジ91との溶接部を極力ウェブ90に近い位置に形成することができる。これにより、サイドフレーム23の変形によってフランジ91が外方に引っ張られた場合に、ウェブ90とフランジ91との接続部分に作用するモーメントを小さくし易くできる。よって、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が広がるような変形を補強部材9によって効果的に規制できる。
【0138】
また、溶接孔230f,231fは、第1フレーム230及び第2フレーム231の前後方向略中央部分(ボルトBや溶接孔230eよりも前方側)であって、第1フレーム230及び第2フレーム231の上下方向略中央部分(前後方向視においてボルトB及びナットNに重なる位置)に形成されている。これにより、サイドフレーム23における比較的剛性が低い部位(サイドブラケット3から離れた位置、且つサイドフレーム23の上下方向中央部分)に補強部材9の上端部分を溶接することができる。よって、サイドフレーム23の強度を補強部材9によって効果的に高めることができる。
【0139】
次いで、図7(b)を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、補強部材9が一対のフランジ91を下方に向ける姿勢で配置される場合を説明したが、第2実施形態では、補強部材9が一対のフランジ91を側方に向ける姿勢で配置される場合について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0140】
図7(b)は、第2実施形態における車両用シート201の部分拡大断面図である。図7(b)は、上述した第1実施形態における図7(a)に対応した位置で切断した断面図である。
【0141】
図7(b)に示すように、第2実施形態の車両用シート201における補強部材9は、第1フレーム230に溶接されると共に上下に延びるウェブ90と、そのウェブ90の上下の両端から第2フレーム231側に延びる一対のフランジ91と、それら一対のフランジ91の上方および下方に屈曲する屈曲部92と、を備える。なお、第2実施形態における補強部材9の側面視形状(矩形である点)、前後方向寸法、及び、前後方向でのサイドフレーム23に対する配設位置は、上述した第1実施形態の補強部材9と同一である。
【0142】
第1フレーム230のウェブ230aには、補強部材9のウェブ90と対面する位置に1つの溶接孔230gが形成されている。また、第2フレーム231のウェブ231aには、補強部材9の屈曲部92と対面する位置に2つの溶接孔231g,231hが形成されている。これらの各溶接孔は、前後方向において補強部材9の略全長にわたって形成されている。
【0143】
溶接孔230gは、第1フレーム230の上下方向略中央に形成され、溶接孔231gは、溶接孔230gよりも上方側(前後方向視においてボルトB及びナットNと重なる位置)に形成され、溶接孔231hは、溶接孔230gよりも下方側に形成される。
【0144】
補強部材9のウェブ90が溶接孔230gの内周面に溶接され、一対の屈曲部92が溶接孔231g,231hに溶接されることにより、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間に補強部材9が連結される。これにより、サイドフレーム23(サイドブラケット3が側面に配設されていない部位)の強度を補強部材9によって高めることができる。
【0145】
また、一対のフランジ91が第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間を接続する態様で左右に延設されるので、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間隔が狭まるような変形を、上下に所定間隔を隔てる一対のフランジ91によって(上下に離れた2点で)規制することができる。よって、上述した第1実施形態の補強部材9に比べ、サイドフレーム23の強度を効果的に向上させることができる。
【0146】
また、一対のフランジ91から上方および下方に屈曲する屈曲部92が形成されるので、その屈曲部92によって溶接孔231g,231fに対する溶接範囲を確保できる。これにより、屈曲部92が非形成である(一対のフランジ91を第2フレーム231に溶接する)場合に比べ、溶接孔231g,231hを介して第2フレーム231に補強部材9を容易に溶接することができる。
【0147】
次いで、図8を参照して、第3実施形態および第4実施形態について説明する。図8(a)は、第3実施形態における車両用シート301の部分拡大側面図であり、図8(b)は、第4実施形態における車両用シート401の部分拡大側面図である。なお、第3実施形態および第4実施形態における補強部材9は、第1実施形態と同一の構成である。
【0148】
図8(a)に示すように、第3実施形態の車両用シート301における第1フレーム230は、補強部材9に対面する位置に1つの溶接孔230hがウェブ230aに形成される。また、第1フレーム230の溶接孔230hに対し、左右方向視において全体が重なる位置に(同一の形状の)溶接孔(図示せず)が第2フレーム231にも形成されている。
【0149】
第1フレーム230の溶接孔230hは、補強部材9の下部後端側から上部前端側にかけて傾斜して形成され、バックフレームからの荷重Fbの入力方向視において溶接孔230hとボルトBとが重なる位置に形成される。これにより、第1実施形態と同様、バックフレームからの荷重Fbに対するサイドフレーム23の強度を補強部材9によって向上させることができる。
【0150】
また、第1フレーム230の溶接孔230hが補強部材9の下部後端側から上部前端側にかけて傾斜して形成されるので、溶接孔230hの形成領域を極力小さくしつつ、補強部材9によって補強される領域を前後方向および上下方向に広くし易くできる。
【0151】
なお、本実施形態では、第1フレーム230の溶接孔230hと全体が重なる位置に第2フレーム231の溶接孔(図示せず)が形成されているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2フレーム231の溶接孔を補強部材9の上部後端側から下部前端側にかけて傾斜して形成し、第2フレーム231の溶接孔と第1フレーム230の溶接孔230fとが側面視でX字状に形成される構成でも良い。この構成によっても、各溶接孔の形成領域を極力小さくしつつ、補強部材9によって補強される領域を前後方向および上下方向に広く形成し易くできる。
【0152】
図8(b)に示すように、第4実施形態の車両用シート401は、第1実施形態の第2フレーム231の溶接孔231e,231fを前後にずらして配置したものである。
【0153】
具体的には、第2フレーム231の溶接孔231eは、補強部材9の下部前端側に位置し、溶接孔231fは、補強部材9の上部後端側に位置している。このような構成によっても、各溶接孔230e,230f,231e,231fの形成領域を極力小さくしつつ、補強部材9によって補強される領域を前後方向および上下方向に広くし易くできる。
【0154】
また、バックフレームからの荷重が入力されるボルトB(サイドブラケット3)に近接した位置に、第1フレーム230の溶接孔230eと、第2フレーム231の溶接孔231fとの2つの溶接孔を形成できる。よって、バックフレームからの荷重に対するサイドフレーム23の強度を補強部材9によって向上させることができる。
【0155】
以上、上記実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0156】
上記各実施形態では、車両用シート1,201,301,401が、左座席と、中央座席と、右座席とを備える3人掛けのシートとして構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、車両用シート1,201,301,401が2人掛けや1人掛けのシートであっても、上記各実施形態の技術思想を適用できる。
【0157】
即ち、バックルが接続される後部ブラケットを備え、その後部ブラケットが後部フレームに溶接されるものであれば、2人掛けの車両用シートであっても上記第1実施形態の技術思想(前後に延びるワイヤを後部ブラケットに溶接する構成)を適用することができる。
【0158】
また、左右に対向する第1フレーム及び第2フレーム(サイドフレーム)を備え、バックフレームの前傾時の荷重が第1フレーム及び第2フレーム(サイドフレーム)に作用するものであれば、2人掛けや1人掛けのシート車両用シートであっても上記各実施形態の技術思想(サイドフレームをボルト及びナットによって補強する構成)を適用することができる。
【0159】
上記各実施形態では、前部フレーム20や後部フレーム21が円筒状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、前部フレーム20や後部フレーム21が角筒状に形成される構成でも良い。
【0160】
上記各実施形態では、引張強さが約490MPa(50kgf/mm)以上の高張力鋼(ハイテン)製の鋼材を用いて後部フレーム21が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、通常の(例えば、引張強さが約490MPa未満の)の鋼材、若しくは、その他の金属材料を用いて後部フレーム21を形成しても良い。即ち、後部フレーム21がどのような材質であっても、後部ブラケット25に第1ワイヤ24aを溶接することにより、溶接時の熱影響によって後部フレーム21が劣化することを抑制できる。
【0161】
上記各実施形態では、後部ブラケット25に凹部25bを形成し、その凹部25bに第1ワイヤ24aを溶接する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、凹部25bを省略し、後部ブラケット25の突出部25a(バックル8bが固定される固定面と同じ高さ)に第1ワイヤ24aを溶接する構成でも良い。
【0162】
上記各実施形態では、後部ブラケット25の左右方向端部に凹部25bを形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、後部ブラケット25の左右方向中央に凹部25bを形成する構成や、後部ブラケット25の左右方向両端にわたって凹部25bを形成する(凹部25bに貫通孔25cを形成する)構成でも良い。
【0163】
上記各実施形態では、後部ブラケット25の左右方向端部側に第1ワイヤ24aを溶接する場合や、後部ブラケット25に1本の第1ワイヤ24aを溶接する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、後部ブラケット25の左右方向中央に第1ワイヤ24aを溶接する構成や、後部ブラケット25に複数の第1ワイヤ24aを溶接する構成でも良い。即ち、上面視において後部ブラケット25と重なる位置に配置されるワイヤ24が存在する場合に、そのワイヤ24を後部ブラケット25に溶接すれば良い。これにより、ワイヤ24の溶接時の熱影響を後部フレーム21が受けることを抑制できる。
【0164】
上記各実施形態では、第1ワイヤ24aの外径よりも凹部25bの凹みの深さが深く形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1ワイヤ24aの外径よりも凹部25bの凹みの深さを浅く形成しても良い。
【0165】
上記各実施形態では、後部ブラケット25の下面湾曲部25eが後部フレーム21の下面に沿って溶接される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、後部ブラケット25の後端部分を後部フレーム21の上面に沿って溶接する構成でも良い。
【0166】
上記各実施形態では、後部ブラケット25の下面湾曲部25eの左右の両端と、下面湾曲部25eの後端とのそれぞれが後部フレーム21に溶接される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、後部ブラケット25の下面湾曲部25eの左右の両端、又は、下面湾曲部25eの後端のいずれか一方のみを後部フレーム21に溶接する構成でも良い。
【0167】
上記各実施形態では、後部フレーム21に対する下面湾曲部25eの左右両端の溶接位置と、後部ブラケット25に対する第1ワイヤ24aの溶接位置とが左右方向でずれた位置に設定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、それらの各溶接位置が左右方向で一致する構成でも良い。
【0168】
上記各実施形態では、後部フレーム21に対する下面湾曲部25eの溶接範囲と、後部フレーム21に対する第2ワイヤ24bの溶接範囲とが後部フレーム21の軸方向視において重ならない位置に設定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、それらの各溶接範囲が後部フレーム21の軸方向視において重なっていても良い。
【0169】
上記各実施形態では、第2ワイヤ24bの後端部24b1が後部フレーム21の外周面に沿って湾曲して形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2ワイヤ24bの後端部を直線状に形成しても良い。
【0170】
上記各実施形態では、後部フレーム21と第2ワイヤ24bの後端部24b1との溶接部W3が、後部フレーム21の前方の斜め上方側の外周面のみに形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2ワイヤ24bの後端部24b1を後部フレーム21の後方側に延長させ、後部フレーム21の上端や後方側まで溶接部W3を延長させる構成や、後部フレーム21の後方の斜め上方側の外周面のみに溶接部W3を形成する構成でも良い。
【0171】
上記各実施形態では、第1ワイヤ24aの前端部24a4や、第2ワイヤ24bの前端部24b5が前後方向に延びる直線状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1ワイヤ24aの前端部や、第2ワイヤ24bの前端部を、前部フレーム20の外周面に沿う湾曲形状に形成する構成でも良い。これにより、前部フレーム20に対する第1ワイヤ24aや第2ワイヤ24bの溶接範囲を長く形成することができる。
【0172】
上記各実施形態では、ナットNが挿通部N2や張出部N3を備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ナットNの挿通部N2や張出部N3を省略して軸部N1のみから構成し、軸部N1の外周面を第2フレーム231に溶接する構成でも良い。
【0173】
上記各実施形態では、ナットNの張出部N3の外縁が第2フレーム231の外面に溶接される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ナットNの軸部N1の外周面を第2フレーム231の内面に溶接する構成でも良い。このように、ナットNの軸部N1を第2フレーム231に溶接する場合においても、バックフレームからの荷重Fbの入力方向を挟んだ軸部N1の両脇で溶接を行うことが好ましい。これにより、せん断方向に長く溶接部を形成し、かかる荷重Fbに対する溶接部の強度を確保できる。
【0174】
上記各実施形態では、第2フレーム231とナットNとの溶接部W7が、バックフレームからの荷重Fbの入力方向を挟んで張出部N3の両脇に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、張出部N3の全周にわたって溶接部W7を形成しても良い。これにより、溶接部W7の強度を高めることができる。
【0175】
上記各実施形態では、第1フレーム230及び第2フレーム231の対向間に補強部材9が配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、補強部材9を省略しても良い。
【0176】
上記各実施形態では、第1フレーム230及び第2フレーム231のそれぞれに溶接孔が形成され、その溶接孔に補強部材9が溶接される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1フレーム230及び第2フレーム231のいずれか一方の溶接孔を省略する構成でも良い。この場合には、第1フレーム230又は第2フレーム231のいずれか一方に補強部材9を溶接しておき、いずれか他方に形成される溶接孔に補強部材9を溶接すれば良い。これにより、溶接孔の数を減らすことができるので、第1フレーム230又は第2フレーム231の剛性を向上させることができる。
【0177】
また、第1フレーム230及び第2フレーム231のいずれか一方の溶接孔を省略する場合には、第2フレーム231の溶接孔を省略することが好ましい。これにより、第1フレーム230の溶接孔に補強部材9を溶接する作業と、第1フレーム230及びサイドブラケット3をボルトBによって締め付ける(第2フレーム231に連結する)作業とをそれぞれ第1フレーム230の外面側で行うことができる。
【0178】
上記各実施形態では、第1フレーム230及び第2フレーム231の溶接孔における補強部材9の溶接長さについての説明を省略したが、溶接孔に対する補強部材9の溶接長さは、例えば、前後方向における溶接孔の寸法の50%以上90%未満に設定すれば良い。
【0179】
上記第1実施形態では、補強部材9が一対のフランジ91の先端を下方に向ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、一対のフランジ91の先端を上方に向ける構成でも良い。
【0180】
上記第1実施形態では、第1フレーム230の溶接孔230e,230fが、前後方向で互いに離れた位置に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、溶接孔230e(溶接孔231e)や溶接孔230f(溶接孔231f)を補強部材9の略全長にわたって形成し、それらの溶接孔どうしが上下に重なる位置に形成される構成でも良い。
【0181】
上記第2実施形態では、補強部材9が屈曲部92を備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、屈曲部92を省略し、一対のフランジ91の先端を第2フレーム231の溶接孔231g,231hに溶接する構成でも良い。
【符号の説明】
【0182】
1,201,301,401 車両用シート
2 クッションフレーム
7b 第2シートベルト(シートベルト)
8b バックル
20 前部フレーム
21 後部フレーム
24 ワイヤ
24a 第1ワイヤ
24b 第2ワイヤ
25 後部ブラケット
25b 凹部
25e 下面湾曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8