(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
G21K 5/00 20060101AFI20221201BHJP
G21K 5/04 20060101ALI20221201BHJP
G21K 1/093 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G21K5/00 W
G21K5/04 E
G21K5/00 B
G21K5/00 D
G21K1/093 F
(21)【出願番号】P 2019091020
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 英明
(72)【発明者】
【氏名】紀井 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】全 炳俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍太
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 拓人
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-151327(JP,A)
【文献】特開2017-122723(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115572(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電子線発生器が配置された真空チャンバと、
前記電子線発生器からの電子線を真空チャンバの外部まで透過させる透過窓と、
前記透過窓からの電子線を成形して導く電子線成形部材と、
前記電子線成形部材で成形された電子線を導くノズルと、
前記電子線成形部材およびノズルの内部を、低真空または空気よりも密度の小さい気体雰囲気にする気体雰囲気調整部とを備え、
前記透過窓の電子線を透過させる部分が、前記ノズルの内部における横断面よりも大きいことを特徴とする電子線照射装置。
【請求項2】
電子線成形部材が、透過窓からの電子線を収束させる第1磁石と、第1磁石で収束されて反転により発散した電子線をコリメートする第2磁石とを有することを特徴とする請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項3】
真空チャンバに設けられて透過窓を冷却する透過窓冷却機構を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電子線照射装置。
【請求項4】
透過窓を着脱自在に保持する保持具を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル式の電子線照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子線照射装置は、電子線を照射する装置であるから、工業的に広い用途がある。特に、容器などに電子線を照射して滅菌する用途は、化学薬品を使用しないことから、化学薬品の残留を懸念することがなく、安全性が重視される先進諸国で注目を浴びている。
【0003】
電子線照射装置の中でも、先端から電子線を出射するノズルを備えるものは、ペットボトルなどの小さな開口を有する容器などの内部の滅菌に適する。開口が小さくても、当該開口にノズルを先端から挿入し、当該ノズルの先端から電子線を出射することで、前記ノズルが挿入された容器などの内部を適切に滅菌できるからである。このようなノズルは内部が高真空にされて、電子線を透過させる透過窓が当該ノズルの先端に配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の電子線照射装置では、その
図2に示すように、透過窓(電子線出射窓11)の電子線を透過させる部分が、内径の小さいノズル(ガイド部10)の内部における横断面となるので、非常に小さくなる。このような小さな透過窓を透過する電子線は、その横断面の小ささから電子密度が高くなることにより、当該透過窓を透過する際に損傷させるおそれがある。したがって、前記特許文献1の電子線照射装置では、透過窓を損傷させないためにも、電子線の出力を大きくすることができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、電子線の出力を大きくし得る電子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1の発明に係る電子線照射装置は、内部に電子線発生器が配置された真空チャンバと、
前記電子線発生器からの電子線を真空チャンバの外部まで透過させる透過窓と、
前記透過窓からの電子線を成形して導く電子線成形部材と、
前記電子線成形部材で成形された電子線を導くノズルと、
前記電子線成形部材およびノズルの内部を、低真空または空気よりも密度の小さい気体雰囲気にする気体雰囲気調整部とを備え、
前記透過窓の電子線を透過させる部分が、前記ノズルの内部における横断面よりも大きいものである。
【0008】
また、第2の発明に係る電子線照射装置は、第1の発明に係る電子線照射装置における電子線成形部材が、透過窓からの電子線を収束させる第1磁石と、第1磁石で収束されて反転により発散した電子線をコリメートする第2磁石とを有するものである。
【0009】
さらに、第3の発明に係る電子線照射装置は、第1または第2の発明に係る電子線照射装置において、真空チャンバに設けられて透過窓を冷却する透過窓冷却機構を備えるものである。
【0010】
加えて、第4の発明に係る電子線照射装置は、第1乃至第3のいずれかの発明に係る電子線照射装置において、透過窓を着脱自在に保持する保持具を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
前記電子線照射装置によると、透過窓を透過する電子線の電子密度が低くなるので、電子線の出力を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電子線照射装置の概略を示す縦断面図である。
【
図2】同電子線照射装置が透過窓冷却機構を備える場合の概略を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の実施例に係る電子線照射装置の全体を示す斜視図である。
【
図4】同電子線照射装置の概略を示す縦断面図である。
【
図5】同電子線照射装置の電子線案内ユニットを示す分解斜視図である。
【
図6】同電子線案内ユニットの透過窓冷却ブロックを示す分解斜視図である。
【
図7】同透過窓冷却ブロックの中央横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る電子線照射装置について、図面に基づき説明する。
【0014】
前記電子線照射装置は、概略的に、ノズルの先端から電子線を照射する装置である。
図1に示すように、この電子線照射装置1は、内部に電子線発生器3が配置された真空チャンバ2と、前記電子線発生器3からの電子線Eを真空チャンバ2の外部まで透過させる透過窓4と、この透過窓4からの電子線Eを成形して導く電子線成形部材5とを備える。また、前記電子線照射装置1は、前記電子線成形部材5で成形された電子線Eを導くノズル7と、前記電子線成形部材5およびノズル7の内部を、低真空(気圧が10
2Pa以上10
5Pa未満)または空気よりも密度の小さい気体雰囲気にする気体雰囲気調整部8とをさらに備える。前記透過窓4の電子線Eを透過させる部分Dは、前記ノズル7の内部における横断面dよりも大きい。
【0015】
前記透過窓4は、前記電子線発生器3からの電子線Eを真空チャンバ2の外部まで透過させるものであれば特に限定されないが、例えば、チタン箔などの金属箔である。前記透過窓4の電子線Eを透過させる部分Dが平面視円形で、且つ、前記ノズル7の内部における横断面dが円形の場合、前記部分Dは、前記横断面dよりも大径である。また、前記透過窓4は、当該透過窓4にノズル7の内部を電子線Eの逆行方向で投影した場合、投影されたノズル7の内部が透過窓4の電子線Eを透過させる部分Dに完全に包含される大きさであることが好ましい。さらに、前記透過窓4は、後述する実施例で詳細に説明するが、保持具(
図1では省略する)で着脱自在に保持されることが好ましい。
【0016】
前記電子線成形部材5は、前記透過窓4からの電子線Eを成形して導くものであれば特に限定されないが、例えば、電子線Eを磁力により成形するために、複数の磁石を有するものが好ましい。この場合、当該複数の磁石のうち、1つは透過窓4からの電子線Eを収束させる第1磁石51であり、他の1つは収束されて反転により発散した電子線Eをコリメートする第2磁石52である。ここで、コリメートとは、完全な平行状態のみを意味するのではなく、電子線Eを磁石で平行状態にしようとした際の実質的な誤差まで含めた意味である。なお、前記第1磁石51および第2磁石52は、電磁石でもよいが、永久磁石であることが好ましい。
【0017】
前記気体雰囲気調整部8は、前記電子線成形部材5およびノズル7の内部を低真空にするものである場合、例えば真空ポンプである。この真空ポンプは、低真空の真空引きが可能であれば足り、中真空以上の真空引きまでは要求されない。また、前記ノズル7は、その内部における横断面dが前記透過窓4の電子線Eを透過させる部分Dよりも小さい(つまり細長い)ので、コンダクタンスが小さく、これにより、前記真空ポンプは排気速度の小さいものでも足りる。このため、前記真空ポンプは、故障しにくく安価なものとして、アスピレータであることが好ましい。低真空であっても真空の雰囲気であれば、電子線Eの散乱および吸収が極めて抑制されるので、電子線Eの飛距離が大きくなる。
【0018】
前記気体雰囲気調整部8は、前記電子線成形部材5およびノズル7の内部を密度の小さい気体(以下、軽量ガスという)雰囲気にするものである場合、例えば電子線成形部材5に軽量ガスを供給する軽量ガス供給部である。軽量ガス雰囲気であれば、電子線Eの散乱および吸収が抑制されるので、電子線Eの飛距離が小さくなりにくい。前記軽量ガスは、ヘリウムガスであることが好ましい。ヘリウムガスは、不活性ガスとして安定しているだけでなく、同じ条件で大気よりも熱伝達係数が高いので、前述した大きな透過窓4から大きな接触面積で熱を奪うことにより、当該透過窓4を冷却するからである。
【0019】
前記ノズル7は、その内部における横断面dが透過窓4の電子線Eを透過させる部分Dよりも小さく、前記電子線成形部材5で成形された電子線Eを導くものであれば特に限定されないが、例えば、前記電子線成形部材5に着脱式であることが好ましい。また、前記ノズル7は、前記気体雰囲気調整部8が軽量ガス供給部である場合、基端(電子線成形部材5側)よりも先端(電子線Eの出射側)が下になる配置であることが好ましい。この配置により、気体の放出口でもあるノズル7の先端が基端よりも下に位置するので、前記軽量ガス(大気よりも軽い)が電子線成形部材5およびノズル7の内部に滞留しやすくなり、その結果、前記軽量ガス供給部から供給する軽量ガスの流量を低減可能だからである。
【0020】
以下、前記電子線照射装置1の作用について説明する。
【0021】
図1に示すように、電子線発生器3からの電子線Eは、真空雰囲気である真空チャンバ2の内部から、透過窓4を透過して真空チャンバ2の外部である電子線成形部材5に導かれる。この電子線Eは、電子線成形部材5で成形されてノズル7に導かれる。ノズル7では、成形された電子線Eが基端から先端まで導かれて、当該先端から電子線Eが出射される。電子線成形部材5およびノズル7の内部では、低真空および/または軽量ガス雰囲気であるから、電子線Eの散乱および吸収が抑制される。
【0022】
透過窓4は、ノズル7の内部における横断面dよりも大きな部分Dで電子線Eを透過させるので、従来のようなノズル7の内部に設けられたものよりも、透過させる電子線Eの電子密度が低くなる。
【0023】
このように、前記電子線照射装置1によると、透過窓4を透過する電子線Eの電子密度が低くなるので、電子線Eの出力を高くすることができる。
【0024】
ところで、
図1では、透過窓4を冷却する機構について説明しなかったが、前記電子線照射装置1は、例えば
図2に示すように、真空チャンバ2に設けられて透過窓4を冷却する透過窓冷却機構9を備えてもよい。
【0025】
前記透過窓冷却機構9は、前記透過窓4の近傍に形成された冷媒通路93と、この冷媒通路93に冷媒を供給する冷媒供給部91と、前記冷媒通路93から冷媒を回収する冷媒回収部95とを有する。前記透過窓4と冷媒通路93との距離は、電子線Eを透過させることで温度が上昇した透過窓4を冷媒により冷却可能な程度に設計される。
【0026】
このように、前記電子線照射装置1は、前記透過窓冷却機構9を備えることにより透過窓4が冷却されるので、電子線Eの出力を一層高くすることができる。
【0027】
また、ノズルの先端に透過窓が配置された従来の電子線照射装置とは異なり、前記電子線照射装置1は、ノズル7の先端まで冷媒を供給および回収する必要が無いので、当然ながら、ノズル7の先端およびその近傍を冷媒通路としての二重管構造にする必要が無い。このため、前記電子線照射装置1は、前記ノズル7の構造を簡素にすることができる。
【実施例】
【0028】
以下、前記実施の形態をより具体的に示した実施例に係る電子線照射装置1について、図面に基づき説明する。本実施例では、前記実施の形態とは異なる構成に着目して説明するとともに、前記実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、本実施例に係る電子線照射装置1は、内部が高真空(気圧が10
-5Pa以上10
-1Pa未満)またはそれより高い真空度(気圧が10
-5Pa未満)である真空雰囲気の真空チャンバ2と、この真空チャンバ2が固定される固定フランジ21と、この固定フランジ21に真空チャンバ2とは反対側に固定された電子線案内ユニット60とを備える。
【0030】
図4に示すように、前記真空チャンバ2は、その内部における一端側に電子線発生器3が固定治具31により固定される。この電子線発生器3は、大量の電子を発生させる電子発生部(図示省略)と、発生した大量の電子を成形して前記真空チャンバ2の他端側に向かわせる電子線Eにする静電レンズ(図示省略)とを有する。ここで、本実施例に係る透過窓4の電子線Eを透過させる部分Dが従来の透過窓(ノズルの内部に設けられる)よりも大きいことから、前記静電レンズは、電子線Eを従来ほど収束させる必要が無い。このため、前記静電レンズは、従来ほど性能が要求されないので、従来のような2個ではなく、例えば1個であってもよい。
【0031】
前記固定フランジ21は、その内部が真空チャンバ2の内部に連通するとともにL字管22を介してイオンポンプ23に接続される。すなわち、前記固定フランジ21は、イオンポンプ23により真空チャンバ2の内部を高真空雰囲気にし得る構成である。
【0032】
前記電子線案内ユニット60は、
図5に示すように、透過窓4が配置されるとともに当該透過窓4を冷却する透過窓冷却ブロック90と、ノズル7が接続されてなるノズルブロック6,7とを有する。前記実施の形態での電子線成形部材5に相当するのは、前記電子線案内ユニット60からノズル7を除く部分、すなわち、透過窓冷却ブロック90およびノズルブロック6(ノズル7を除く)である。
【0033】
前記透過窓冷却ブロック90は、
図6に示すように、透過窓4が配置される架体になるブロック本体41と、配置された透過窓4の周囲で気密を確保するメタルシール42と、配置された透過窓4をブロック本体41との挟み込みにより保持する保持具43とを有する。これらブロック本体41、メタルシール42、透過窓4、および、保持具43は、ボルトによる締結で一体にされる。
【0034】
前記ブロック本体41には、
図7および
図8に示すように、配置された透過窓4を冷却するための冷媒が通過する冷媒通路93が形成されている。この冷媒通路93には、冷媒供給部91および冷媒回収部95がそれぞれ配管92,94を介して接続されている。前記透過窓冷却ブロック90(少なくともブロック本体41の一部)は、透過窓4を効果的に冷却するために、熱伝導率が銅以上の材質で構成されることが好ましい。
図8では、矢印で冷媒供給部91から冷媒回収部95までの冷媒の流れを示す。前記実施の形態での透過窓冷却機構9に相当するのは、前記冷媒供給部91、冷媒を冷媒通路93に供給する配管92、冷媒通路93が形成された透過窓冷却ブロック90のブロック本体41、冷媒通路93から冷媒を回収する配管94、および、冷媒回収部95である。
【0035】
図5に示すように、前記ノズルブロック6,7は、透過窓冷却ブロック90とボルトによる締結で一体にされる円盤部80と、この円盤部80から突出して設けられた円筒部50と、この円筒部50に接続された前記ノズル7とを有する。
図4に示すように、前記円盤部80には、気体雰囲気調整部8に接続されて気体を通過させる気体通路81が形成されている。この気体通路81は、円盤部80の内部における電子線Eを導く空間に連通している。前記円筒部50には、電子線Eを円盤部80からノズル7まで導く空間が形成されている。このノズル7は、前記円筒部50に接続された基端が鉛直上方、電子線Eを出射する先端が鉛直下方になるように配置される。なお、前記気体雰囲気調整部8は、軽量ガス(ヘリウムガス)供給部であり、前記ノズルブロック6,7の内部における電子線Eを導く空間にヘリウムガスを供給するものである。
【0036】
前記ノズルブロック6(ノズル7を除く)には、前記円盤部80の内部における電子線Eを導く空間の外周囲に第1磁石51が配置され、前記円筒部50の内部における電子線Eを導く空間の外周囲に第2磁石52が配置される。
【0037】
以下、前記電子線照射装置1の作用について説明する。
【0038】
まず、
図4に示すように、イオンポンプ23により固定フランジ21の内部を介して真空チャンバ2の内部が高真空雰囲気にされる。一方で、前記気体雰囲気調整部8は、ノズルブロック6,7の内部における電子線Eを導く空間にヘリウムガスを供給する。ノズルブロック6,7の内部では、ヘリウムガスが供給されることで、既存の気体がノズル7の下端である先端から放出されて、上方置換によりヘリウムガスで満たされる。
【0039】
その後、電子線発生器3から電子線Eを発生させる。この電子線Eは、高真空雰囲気である真空チャンバ2および固定フランジ21の内部を介して、透過窓冷却ブロック90に配置された透過窓4を透過する。透過窓4を透過した電子線Eは、円盤部80および円筒部50の内部で、第1磁石51および第2磁石52により成形されてノズル7に導かれる。この成形は、透過窓4からの電子線Eの第1磁石51による収束と、この収束の後に反転して発散した電子線Eの第2磁石52によるコリメートとである。ノズル7では、コリメートされた電子線Eが基端から先端まで導かれて、当該先端から電子線Eが出射される。電子線案内ユニット60の内部では、ヘリウムガス雰囲気であるから、電子線Eの散乱および吸収が抑制される。
【0040】
透過窓4は、ノズル7の内部における横断面dよりも大きな部分Dで電子線Eを透過させるので、従来のようなノズル7の内部に設けられたものよりも、透過させる電子線Eの電子密度が低くなる。
【0041】
このように、本実施例に係る電子線照射装置1によると、透過窓4を透過する電子線Eの電子密度が低くなるので、電子線Eの出力を高くすることができる。
【0042】
また、第1磁石51および第2磁石52により電子線Eがコリメートされてからノズル7に導かれるので、電子線Eがノズル7に遮られにくくなることにより、電子線Eの出力を一層高くすることができる。
【0043】
さらに、透過窓冷却機構9およびヘリウムガスにより透過窓4が冷却されるので、電子線Eの出力を一層高くすることができる。
【0044】
加えて、
図6に示すように、透過窓4を保持する保持具43が着脱自在であることにより、透過窓4のみの取替えが可能になるので、透過窓4が劣化または破損した際の補修費用を低減することができる。
【0045】
ところで、前記実施の形態および実施例では、透過窓冷却機構9として、冷媒の供給および回収により透過窓4を冷却する機構について説明したが、これに限定されるものではなく、真空チャンバ2に設けられて透過窓4を冷却するものであればよい。
【0046】
また、前記実施の形態および実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。前記実施の形態および実施例で説明した構成のうち「課題を解決するための手段」での第1の発明として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
E 電子線
D 透過窓の電子線を透過させる部分
d ノズルの内部における横断面
1 電子線照射装置
2 真空チャンバ
3 電子線発生器
4 透過窓
5 電子線成形部材
7 ノズル
8 気体雰囲気調整部
9 透過窓冷却機構
41 ブロック本体
43 保持具
50 円筒部
51 第1磁石
52 第2磁石
60 電子線案内ユニット
80 円盤部
81 気体通路
90 透過窓冷却ブロック
91 冷媒供給部
93 冷媒通路
95 冷媒回収部