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特許7186134半導体装置及びそれを備えた半導体システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】半導体装置及びそれを備えた半導体システム
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/96 20060101AFI20221201BHJP
   H03K 17/955 20060101ALI20221201BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20221201BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H03K17/96 H
H03K17/955 G
G06F3/044 120
G06F3/041 500
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019098605
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020195032
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】荒木 雅宏
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-12377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0300438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K17/94-17/98
G06F3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信電極及び受信電極を有する電極対の前記送信電極に向けてパルス信号を出力するパルス信号出力回路と、
前記受信電極において発生した第1電流を第2電流に変換する電流変換回路と、
前記第2電流に応じた周波数の発振信号を出力する電流制御発振回路と、
前記発振信号の所定期間当たりの発振回数をカウントするカウンタと、
を備え、
前記電流変換回路は、
第1定電流を出力する第1定電流源と、
前記第1定電流及び前記第1電流の合成電流がソース-ドレイン間に流れるダイオード接続された第1トランジスタと、
前記第1トランジスタにカレントミラー接続された第2トランジスタと、
前記第2トランジスタに直列に設けられ、前記パルス信号に基づいてオンオフを切り替えることにより前記第2電流を出力する第3トランジスタと、
を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記パルス信号及びその反転信号の何れかを選択して前記電流変換回路または前記送信電極に向けて出力するパルス信号切替回路をさらに備える、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
演算処理部をさらに備え、
前記演算処理部は、前記パルス信号切替回路から前記パルス信号が出力されたときの前記第2電流に基づく第1カウント値と、前記パルス信号切替回路から前記パルス信号の反転信号が出力されたときの前記第2電流に基づく第2のカウント値との差分に応じて、前記送信電極および受信電極間の容量値を検出する、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電流変換回路は、
前記第1トランジスタのソース-ドレイン間に流れる電流に応じて、前記第2トランジスタのソース-ドレイン間に流れる電流を制御するカレントミラー回路をさらに備えた、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記カレントミラー回路は、
前記第1トランジスタにカレントミラー接続された第8トランジスタと、
前記第8トランジスタに直列に設けられ、前記第8トランジスタと導電型の異なる第9トランジスタと、
前記第9トランジスタにカレントミラー接続された、前記第9トランジスタと同一導電型の第10トランジスタと、
前記第10トランジスタに直列に設けられた、前記第8トランジスタと同一導電型の第11トランジスタと、
を有し、
前記第2トランジスタは、前記第11トランジスタにカレントミラー接続されている、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電流変換回路は、
前記第1定電流に比例する第2定電流を出力する第2定電流源と、
前記第2定電流源に直列に設けられ、前記第1トランジスタにカレントミラー接続された第4トランジスタと、
前記第2定電流と、前記第4トランジスタのソース-ドレイン間に流れる電流と、の差分電流がソース-ドレイン間に流れるダイオード接続された第5トランジスタと、
前記第5トランジスタにカレントミラー接続された第6トランジスタと、
前記第6トランジスタに直列に設けられ、前記第3トランジスタと相補的にオンオフを切り替えることにより、前記第3トランジスタとともに前記第2電流を出力する第7トランジスタと、
をさらに有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記パルス信号及びその反転信号の何れかを選択して前記電流変換回路に向けて出力するパルス信号切替回路をさらに備え、
前記電流変換回路に設けられた前記第3トランジスタは、前記パルス信号切替回路の出力信号に基づいてオンオフを切り替え、かつ、前記電流変換回路に設けられた前記第7トランジスタは、前記パルス信号切替回路の出力信号の反転信号に基づいてオンオフを切り替える、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記電流変換回路は、
前記第1トランジスタのソース-ドレイン間に流れる電流に応じて、前記第2トランジスタのソース-ドレイン間に流れる電流を制御するカレントミラー回路をさらに備えた、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記カレントミラー回路は、
前記第1トランジスタにカレントミラー接続された第8トランジスタと、
前記第8トランジスタに直列に設けられ、前記第8トランジスタと導電型の異なる第9トランジスタと、
前記第9トランジスタにカレントミラー接続された、前記第9トランジスタと同一導電型の第10トランジスタと、
前記第10トランジスタに直列に設けられた、前記第8トランジスタと同一導電型の第11トランジスタと、
を有し、
前記第2トランジスタは、前記第11トランジスタにカレントミラー接続されている、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記電流変換回路は、
前記第3トランジスタと相補的にオンオフを切り替え、かつ、オンした場合に前記第2トランジスタと前記第3トランジスタとの間のノードに電荷を供給する第12トランジスタと、
前記第7トランジスタと相補的にオンオフを切り替え、かつ、オンした場合に前記第6トランジスタと前記第7トランジスタとの間のノードに電荷を供給する第13トランジスタと、
を備えた、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
電源電圧端子と、前記電流変換回路の出力端子のうち前記第2電流が出力される第1出力端子とは別の第2出力端子と、の間に設けられたダミートランジスタをさらに備え、
前記第12トランジスタは、前記第2トランジスタと前記第3トランジスタとの間のノードと、前記第2出力端子と、の間に設けられ、
前記第13トランジスタは、前記第6トランジスタと前記第7トランジスタとの間のノードと、前記第2出力端子と、の間に設けられる、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ダミートランジスタは、前記電流制御発振回路の入力段に設けられたトランジスタと同一導電型、同一サイズ及び同一形状である、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記電極対と、
請求項1に記載の半導体装置と、
を備えた、半導体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置及びそれを備えた半導体システムに関し、例えば回路規模の増大を抑制するのに適した半導体装置及びそれを備えた半導体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチキーやタッチスクリーンの技術分野において、静電容量方式のタッチセンサ回路が一般的に採用されている。特許文献1には、指によってタッチ電極がタッチされたか否かを検出する相互容量方式のタッチセンサの構成が開示されている。
【0003】
このタッチセンサは、タッチ電極対に電界を発生させるために当該タッチ電極対に印加される定電圧を生成する電源電圧降下回路と、前記電源電圧降下回路からタッチ電極対に定電圧を印加するときに流れる電流の値に応じた周波数のクロック信号を出力する電流制御発振回路と、電流制御発振回路から出力されるクロック信号の所定時間当たりの発振回数をカウントするカウンタと、を備える。また、このタッチセンサには、電源電圧降下回路によって生成される定電圧の変動を抑制するためのタンクコンデンサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-204900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、関連技術のタッチセンサの構成では、一対のタッチ電極対に対して一組の電源電圧降下回路及びタンクコンデンサが必要になるため、回路規模が増大してしまうという問題があった。特に並行して複数のタッチ電極対のセンシングを行う場合、関連技術のタッチセンサの構成では、複数のタッチ電極対に応じた複数組の電源電圧降下回路及びタンクコンデンサが必要になるため、回路規模の増大が顕著になる。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、半導体装置は、送信電極及び受信電極を有する電極対の前記送信電極に向けてパルス信号を出力するパルス信号出力回路と、前記受信電極において発生した第1電流を第2電流に変換する電流変換回路と、前記第2電流に応じた周波数の発振信号を出力する電流制御発振回路と、前記発振信号の所定期間当たりの発振回数をカウントするカウンタと、を備え、前記電流変換回路は、第1定電流を出力する第1定電流源と、前記第1定電流及び前記第1電流の合成電流がソース-ドレイン間に流れるダイオード接続された第1トランジスタと、前記第1トランジスタにカレントミラー接続された第2トランジスタと、前記第2トランジスタに直列に設けられ、前記パルス信号に基づいてオンオフを切り替えることにより前記第2電流を出力する第3トランジスタと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施の形態によれば、回路規模の増大を抑制することが可能な半導体装置及びそれを備えた半導体システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1にかかる半導体装置の構成例を示す図である。
図2図1に示す半導体装置に設けられた電流変換回路の具体的な構成例を示す回路図である。
図3図2に示す電流変換回路の動作を説明するための電流波形を示す図である。
図4図1に示す半導体装置に設けられた電流制御発振回路の入力電流及び出力発振周波数の関係を示す図である。
図5】実施の形態2にかかる半導体装置に設けられた電流変換回路の具体的な構成例を示す回路図である。
図6図5に示す電流変換回路の動作を説明するための電流波形を示す図である。
図7】実施の形態3にかかる半導体装置に設けられた電流変換回路の具体的な構成例を示す回路図である。
図8】実施の形態4にかかる半導体装置に設けられた電流変換回路の具体的な構成例を示す回路図である。
図9】実施の形態1にかかる半導体装置が適用されたセンサシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0011】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置1の構成例を示す図である。本実施の形態にかかる半導体装置1は、相互容量方式のタッチセンサとして用いられ、電源電圧降下回路及びタンクコンデンサを用いることなくタッチ電極対のセンシングを行う機能を持つ。それにより、本実施の形態にかかる半導体装置1は、回路規模の増大を抑制することができる。以下、具体的に説明する。
【0012】
図1に示すように、半導体装置1は、パルス信号出力回路11と、ドライバ12と、電流変換回路13と、電流制御発振回路(CCO;Current Controlled Oscillator)14と、カウンタ15と、端子TX1,TR1と、を備える。図1には、タッチ電極対TP1も示されている。なお、図1には、半導体装置1の構成要素のうち、タッチ電極対TP1の静電容量の変化を検出する容量検出部の構成要素のみが示されている。
【0013】
タッチ電極対TP1は、送信電極PX1及び受信電極PR1によって構成されている。送信電極PX1は、半導体装置1の端子TX1に接続されている。受信電極PR1は、半導体装置1の端子TR1に接続されている。半導体装置1によってタッチ電極対TP1の電極間に電圧が印加されることにより、当該タッチ電極対TP1の電極間には、静電容量C1が形成される。
【0014】
例えば、接地された指FNGとタッチ電極対TP1との距離が十分に離れている場合、指FNGと電極PX1,PR1との間に形成される静電容量Cfの値は、電極PX1,PR1間に形成される静電容量C1の値と比較して無視できる程度に小さい。
【0015】
それに対し、指FNGとタッチ電極対TP1との距離が短くなるにつれて、電極PX1,PR1間に形成されていた複数の電気力線のうち指FNGに吸収される電気力線の数が増加する。そのため、指FNGとタッチ電極対TP1との距離が短くなるにつれて、電極PX1,PR1間に形成される静電容量C1の容量値は小さくなる。半導体装置1は、このときの静電容量C1の変化を検出することにより、指FNGがタッチ電極対TP1にタッチした(又は接近した)ことを検出することができる。
【0016】
半導体装置1において、パルス信号出力回路11は、所定周波数のパルス信号PS1を出力する。ドライバ12は、パルス信号PS1を端子TX1に向けて出力する。それにより、タッチ電極対TP1の送信電極PX1には、端子TX1を介して、パルス信号PS1が印加される。
【0017】
パルス信号切替回路16は、切替信号MODEに基づいてパルス信号PS1及びその反転信号の何れかを選択し、パルス信号P1として出力する。パルス信号P1は、電流変換回路13に入力される。本例では、MODE=1の場合に、パルス信号PS1が選択され、MODE=0の場合に、パルス信号PS1の反転信号が選択される。
【0018】
電流変換回路13は、送信電極PX1に印加されるパルス信号PS1が変化することによって受信電極PR1に発生した電流Iinを、電流Ioutに変換して出力する。なお、電流Iinは、静電容量C1及びパルス信号PS1の振幅に比例した電流値を示す。
【0019】
<電流変換回路13の具体的な構成例>
図2は、電流変換回路13の具体的な構成例を示す回路図である。
図2に示すように、電流変換回路13は、PチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)MP1と、NチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)MN1~MN3と、を有する。
【0020】
トランジスタMP1では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインがノードN1に接続され、ゲートにバイアス電圧VBが印加されている。つまり、トランジスタMP1は定電流源を構成している。それにより、トランジスタMP1のソース-ドレイン間には、定電流(アイドル電流)Iidleが流れる。
【0021】
トランジスタ(第1トランジスタ)MN1では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ドレイン及びゲートがノードN1に接続されている。つまり、トランジスタMN1はダイオード接続されている。
【0022】
ノードN1には、さらに端子TR1が接続されている。そのため、トランジスタMN1のソース-ドレイン間には、トランジスタMP1からノードN1に供給される定電流Iidleと、受信電極PR1から端子TR1を介してノードN1に供給される電流Iinと、の合成電流(Iidle+Iin)が流れる。
【0023】
トランジスタ(第2トランジスタ)MN2では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ドレインがノードN2に接続され、ゲートがノードN1に接続されている。つまり、トランジスタMN2は、トランジスタMN1にカレントミラー接続されている。それにより、トランジスタMN2のソース-ドレイン間には、トランジスタMN1のソース-ドレイン間に流れる電流に比例する電流が流れる。図2の例では、トランジスタMN2のソース-ドレイン間には、トランジスタMN1のソース-ドレイン間に流れる電流と同じ電流値の電流(Iidle+Iin)が流れる。
【0024】
トランジスタ(第3トランジスタ)MN3では、ソースがノードN2に接続され、ドレインが電流変換回路13の出力端子に接続され、ゲートにパルス信号P1が印加される。トランジスタMN3は、パルス信号P1によってオンオフを切り替える。
【0025】
<電流変換回路13の動作>
続いて、図3を用いて、電流変換回路13の動作について説明する。
図3は、電流変換回路13の動作を説明するための電流波形を示す図である。
【0026】
まず、パルス信号切替回路16がパルス信号PS1をそのままパルス信号P1として出力している場合(MODE=1の場合)における電流変換回路13の動作について説明する。
【0027】
例えば、パルス信号PS1が立ち上がると、それに応じて、受信電極PR1(即ち、端子TR1)には正極性の電流Iinが一時的に発生する。このとき、電流変換回路13では、パルス信号P1の立ち上がりによってトランジスタMN3がオフからオンに切り替わる。それにより、トランジスタMN3のソース-ドレイン間には、電流Iidle+Iinが流れる。電流変換回路13は、パルス信号P1がHレベルを示す期間中、電流Iidle+Iinを電流Ioutとして出力する。
【0028】
その後、パルス信号PS1が立ち下がると、それに応じて、受信電極PR1には負極性の電流Iinが一時的に発生する。このとき、電流変換回路13では、パルス信号P1の立ち下がりによってトランジスタMN3がオンからオフに切り替わる。それにより、トランジスタMN3のソース-ドレイン間には、電流が流れなくなる。電流変換回路13は、パルス信号P1がLレベルを示す期間中、出力電流Ioutを0Aに維持する。
【0029】
つまり、電流変換回路13は、電流Iidle+Iinをパルス信号P1のデューティ比で乗じた電流を、電流Ioutとして出力する。
【0030】
次に、パルス信号切替回路16がパルス信号PS1の反転信号をパルス信号P1として出力している場合(MODE=0の場合)における電流変換回路13の動作について説明する。
【0031】
例えば、パルス信号PS1が立ち上がると、それに応じて、受信電極PR1(即ち、端子TR1)には正極性の電流Iinが一時的に発生する。このとき、電流変換回路13では、パルス信号P1の立ち下がりによってトランジスタMN3がオンからオフに切り替わる。それにより、トランジスタMN3のソース-ドレイン間には、電流が流れなくなる。電流変換回路13は、パルス信号P1がLレベルを示す期間中、出力電流Ioutを0Aに維持する。
【0032】
その後、パルス信号PS1が立ち下がると、それに応じて、受信電極PR1には負極性の電流Iinが一時的に発生する。このとき、電流変換回路13では、パルス信号P1の立ち上がりによってトランジスタMN3がオフからオンに切り替わる。それにより、トランジスタMN3のソース-ドレイン間には、電流Iidle-Iinが流れる。電流変換回路13は、パルス信号P1がHレベルを示す期間中、電流Iidle-Iinを電流Ioutとして出力する。
【0033】
つまり、電流変換回路13は、電流Iidle-Iinをパルス信号P1のデューティ比で乗じた電流を、電流Ioutとして出力する。
【0034】
電流制御発振回路14は、電流変換回路13から出力された電流Ioutに応じた周波数のクロック信号(発振信号)CLK2を出力する。具体的には、電流制御発振回路14は、リング発振器と、バッファ回路と、を備える。リング発振器では、電流Ioutに応じて遅延時間が変化する複数のインバータ回路がリング状に接続されている。バッファ回路は、複数のインバータ回路のうち最終段のインバータ回路の出力を増幅して、クロック信号CLK2として出力する。カウンタ15は、所定期間当たりのクロック信号CLK2の発振回数をカウントし、カウント値NC2を出力する。
【0035】
図4は、電流制御発振回路14の入力電流及び出力発振周波数の関係を示す図である。
例えば、電流Ioutの値が増加すると、電流制御発振回路14に設けられた各インバータ回路の遅延時間が減少するため、クロック信号CLK2の周波数は大きくなり、その結果、カウント値NC2は増加する。それに対し、電流Ioutの値が減少すると、電流制御発振回路14に設けられた各インバータ回路の遅延時間が増加するため、クロック信号CLK2の周波数は小さくなり、その結果、カウント値NC2は減少する。
【0036】
半導体装置1は、電流Ioutの電流値がIidle(即ちIin=0)である場合のカウント値NC2と、電流Ioutの電流値がIidle+Iin(又はIidle-Iin)である場合のカウント値NC2と、の差分電流Iinによって、タッチ電極対TP1の静電容量C1の容量値を求めることができる。
【0037】
このように、本実施の形態にかかる半導体装置1は、アンプ等を構成要素とする電源電圧降下回路を備えていない電流変換回路13を用いて、タッチ電極対TP1の静電容量の変化を検出する。また、本実施の形態にかかる半導体装置1は、タンクコンデンサも必要としない。それにより、本実施の形態にかかる半導体装置1は、回路規模の増大を抑制することができる。また、それにより、本実施の形態にかかる半導体装置1は、複数のタッチ電極対のそれぞれの静電容量を並行して計測するための回路構成を搭載しても、回路規模の増大を抑制することができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、パルス信号切替回路16によって選択されたパルス信号PS1及びその反転信号の何れかが電流変換回路13に入力される場合を例に説明したが、これに限られない。パルス信号PS1及びその反転信号の何れか一方のみが電流変換回路13に入力されていてもよい。また、パルス信号切替回路16がパルス信号出力回路11とドライバ12との間に設けられ、電流変換回路13にパルス信号PS1が、ドライバ12に選択的にパルス信号PS1およびその反転信号が、入力されていてもよい。
【0039】
また、本実施の形態では、電流Ioutの電流値がIidleを示す場合のカウント値NC2と、電流Ioutの電流値がIidle+Iin(又はIidle-Iin)を示す場合のカウント値NC2と、の差分電流Iinによって、タッチ電極対TP1の静電容量C1の容量値が求められる場合を例に説明したが、これに限られない。電流Ioutの電流値がIidle+Iinを示す場合のカウント値NC2と、電流Ioutの電流値がIidle-Iinを示す場合のカウント値NC2と、のカウント値の差分に基づいて、タッチ電極対TP1の静電容量C1の容量値が求められてもよい。このとき、カウント値の差分は差分電流2×Iinに相当し、かつ、定電流Iidleの変動成分が相殺されるため、静電容量C1の容量値の変化量の計測精度が向上する。
【0040】
<実施の形態2>
続いて、実施の形態2にかかる半導体装置2について説明する。
本実施の形態にかかる半導体装置2は、半導体装置1と比較して、電流変換回路13の代わりに電流変換回路23を備える。半導体装置2のその他の構成については、半導体装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0041】
図5は、電流変換回路23の具体的な構成例を示す回路図である。
図5に示すように、電流変換回路23は、電流変換回路13と比較して、PチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)MP2と、NチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)MN4~MN7と、をさらに有する。
【0042】
トランジスタMP2では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインがノードN3に接続され、ゲートにバイアス電圧VBが印加されている。つまり、トランジスタMP2は定電流源を構成している。ここで、図5の例では、トランジスタMP2の電流駆動能力がトランジスタMP1の電流駆動能力の2倍である。そのため、トランジスタMP2のソース-ドレイン間には、トランジスタMP2のソース-ドレイン間に流れる定電流Iidleの2倍の定電流(アイドル電流)2×Iidleが流れる。
【0043】
トランジスタ(第4トランジスタ)MN4では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ドレインがノードN3に接続され、ゲートがノードN1に接続されている。つまり、トランジスタMN4は、トランジスタMN1にカレントミラー接続されている。それにより、トランジスタMN4のソース-ドレイン間には、トランジスタMN1のソース-ドレイン間に流れる電流に比例する電流が流れる。図5の例では、トランジスタMN4のソース-ドレイン間には、トランジスタMN1のソース-ドレイン間に流れる電流と同じ電流値の電流(Iidle+Iin)が流れる。
【0044】
トランジスタ(第5トランジスタ)MN5では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ドレイン及びゲートがノードN3に接続されている。つまり、トランジスタMN5はダイオード接続されている。そのため、トランジスタMN5のソース-ドレイン間には、トランジスタMN2からノードN3に流れる定電流2×Iidleと、ノードN3からトランジスタMN4に流れる電流(Iidle+Iin)と、の差分電流(Iidle-Iin)が流れる。
【0045】
トランジスタ(第6トランジスタ)MN6では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ドレインがノードN4に接続され、ゲートがノードN3に接続されている。つまり、トランジスタMN6は、トランジスタMN5にカレントミラー接続されている。それにより、トランジスタMN6のソース-ドレイン間には、トランジスタMN5のソース-ドレイン間に流れる電流に比例する電流が流れる。図5の例では、トランジスタMN6のソース-ドレイン間には、トランジスタMN5のソース-ドレイン間に流れる電流と同じ電流値の電流(Iidle-Iin)が流れる。
【0046】
トランジスタ(第7トランジスタ)MN7では、ソースがノードN4に接続され、ドレインが電流変換回路23の出力端子に接続され、ゲートにパルス信号P1の反転信号PB1が印加される。トランジスタMN7は、パルス信号PB1によってトランジスタMN3と相補的にオンオフを切り替える。
【0047】
電流変換回路23のその他の構成については、電流変換回路13の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0048】
<電流変換回路23の動作>
続いて、図6を用いて、電流変換回路23の動作について説明する。
図6は、電流変換回路23の動作を説明するための電流波形を示す図である。
【0049】
まず、パルス信号切替回路16がパルス信号PS1をそのままパルス信号P1として出力している場合(MODE=1の場合)における電流変換回路23の動作について説明する。
【0050】
例えば、パルス信号PS1が立ち上がると、それに応じて、受信電極PR1(即ち、端子TR1)には正極性の電流Iinが一時的に発生する。このとき、電流変換回路23では、パルス信号P1の立ち上がりによってトランジスタMN3がオンし、パルス信号PB1の立ち下がりによってトランジスタMN7がオフする。それにより、トランジスタMN3のソース-ドレイン間には、電流Iidle+Iinが流れる。電流変換回路23は、パルス信号PS1がHレベルを示す期間中、電流Iidle+Iinを電流Ioutとして出力する。なお、このときの電流Iinは正極性を示すため、電流Ioutは電流Iidle+|Iin|と表すこともできる。
【0051】
その後、パルス信号PS1が立ち下がると、それに応じて、受信電極PR1には負極性の電流Iinが一時的に発生する。このとき、電流変換回路13では、パルス信号P1の立ち下がりによってトランジスタMN3がオフし、パルス信号PB1の立ち上がりによってトランジスタMN7がオンする。それにより、トランジスタMN7のソース-ドレイン間には、電流Iidle-Iinが流れる。電流変換回路23は、パルス信号PS1がLレベルを示す期間中、電流Iidle-Iinを電流Ioutとして出力する。なお、このときの電流Iinは負極性を示すため、電流Ioutは電流Iidle+|Iin|と表すこともできる。
【0052】
つまり、電流変換回路23は、電流Iidle+|2×Iin|を、電流Ioutとして出力する。
【0053】
次に、パルス信号切替回路16がパルス信号PS1の反転信号をパルス信号P1として出力している場合(MODE=0の場合)における電流変換回路13の動作について説明する。
【0054】
例えば、パルス信号PS1が立ち上がると、それに応じて、受信電極PR1(即ち、端子TR1)には正極性の電流Iinが一時的に発生する。このとき、電流変換回路23では、パルス信号P1の立ち下がりによってトランジスタMN3がオフし、パルス信号PB1の立ち上がりによってトランジスタMN7がオンする。それにより、トランジスタMN7のソース-ドレイン間には、電流Iidle-Iinが流れる。電流変換回路23は、パルス信号PS1がHレベルを示す期間中、電流Iidle-Iinを電流Ioutとして出力する。なお、このときの電流Iinは正極性を示すため、電流Ioutは電流Iidle-|Iin|と表すこともできる。
【0055】
その後、パルス信号PS1が立ち下がると、それに応じて、受信電極PR1には負極性の電流Iinが一時的に発生する。このとき、電流変換回路13では、パルス信号P1の立ち上がりによってトランジスタMN3がオンし、パルス信号PB1の立ち下がりによってトランジスタMN7がオフする。それにより、トランジスタMN3のソース-ドレイン間には、電流Iidle+Iinが流れる。電流変換回路23は、パルス信号PS1がLレベルを示す期間中、電流Iidle+Iinを電流Ioutとして出力する。なお、このときの電流Iinは負極性を示すため、電流Ioutは電流Iidle-|Iin|と表すこともできる。
【0056】
つまり、電流変換回路23は、電流Iidle-|2×Iin|を、電流Ioutとして出力する。
【0057】
このように、本実施の形態にかかる半導体装置2は、アンプ等を構成要素とする電源電圧降下回路を備えていない電流変換回路23を用いて、タッチ電極対TP1の静電容量の変化を検出する。また、本実施の形態にかかる半導体装置2は、タンクコンデンサも必要としない。それにより、本実施の形態にかかる半導体装置2は、回路規模の増大を抑制することができる。また、それにより、本実施の形態にかかる半導体装置2は、複数のタッチ電極対のそれぞれの静電容量を並行して計測するための回路構成を搭載しても、回路規模の増大を抑制することができる。
【0058】
さらに、本実施の形態にかかる半導体装置2では、電流変換回路23が、受信電極PR1に発生する正極性及び負極性の電流Iinの双方を含む電流Ioutを出力する。それにより、本実施の形態にかかる半導体装置2は、半導体装置1の場合と比較して、検出精度を約2倍程度向上させることができる。あるいは、本実施の形態にかかる半導体装置2は、半導体装置1の場合と比較して、同等の検出精度を約2分の1の時間で得ることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、パルス信号切替回路16によって選択されたパルス信号PS1及びその反転信号の何れかが電流変換回路23に入力される場合を例に説明したが、これに限られない。パルス信号PS1及びその反転信号の何れか一方のみが電流変換回路23に入力されていてもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、電流Ioutの電流値がIidleを示す場合のカウント値NC2と、電流Ioutの電流値がIidle+|2×Iin|(又はIidle-|2×Iin|)を示す場合のカウント値NC2と、の差分電流|2×Iin|によって、タッチ電極対TP1の静電容量C1の容量値が求められる場合を例に説明したが、これに限られない。電流Ioutの電流値がIidle+|2×Iin|を示す場合のカウント値NC2と、電流Ioutの電流値がIidle-|2×Iin|を示す場合のカウント値NC2と、のカウント値の差分に基づいて、タッチ電極対TP1の静電容量C1の容量値が求められてもよい。このとき、カウント値の差分は差分電流4×Iinに相当し、かつ、定電流Iidleの変動成分が相殺されるため、静電容量C1の容量値の変化量の計測精度が向上する。
【0061】
<実施の形態3>
続いて、実施の形態3にかかる半導体装置3について説明する。
本実施の形態にかかる半導体装置3は、半導体装置2と比較して、電流変換回路23の代わりに電流変換回路33を備える。半導体装置3のその他の構成については、半導体装置2の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0062】
図7は、電流変換回路33の具体的な構成例を示す回路図である。
図7に示すように、電流変換回路33は、電流変換回路23と比較して、PチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)MP3、MP4と、NチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)MN8、MN9と、をさらに有する。なお、トランジスタMP3,MP4,MN8,MN9によって、カレントミラー回路が構成されている。
【0063】
トランジスタ(第8トランジスタ)MN8では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ドレインがノード5に接続され、ゲートにノードN1が接続されている。つまり、トランジスタMN8は、トランジスタMN1にカレントミラー接続されている。それにより、トランジスタMN8のソース-ドレイン間には、トランジスタMN1のソース-ドレイン間に流れる電流に比例する電流が流れる。図7の例では、トランジスタMN8のソース-ドレイン間には、トランジスタMN1のソース-ドレイン間に流れる電流と同じ電流値の電流(Iidle+Iin)が流れる。
【0064】
トランジスタ(第9トランジスタ)MP3では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン及びゲートがノードN5に接続されている。トランジスタ(第10トランジスタ)MP4では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインがノードN6に接続され、ゲートがノードN5に接続されている。
【0065】
トランジスタ(第11トランジスタ)MN9では、ソースが接地電圧端子GNDに接続され、ドレイン及びゲートがノードN6に接続されている。したがって、トランジスタMN9のソース-ドレイン間には、トランジスタMN8のソース-ドレイン間に流れる電流に比例する電流が流れる。図7の例では、トランジスタMN9のソース-ドレイン間には、トランジスタMN8のソース-ドレイン間に流れる電流と同じ電流値の電流(Iidle+Iin)が流れる。
【0066】
ここで、トランジスタMN2のゲートは、ノードN1に接続される代わりに、ノードN6に接続されている。つまり、トランジスタMN2のゲートには、トランジスタMP3,MP4,MN8,MN9からなるカレントミラー回路を介して、ノードN1の電圧が印加されている。
【0067】
電流変換回路33のその他の構成については、電流変換回路23の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0068】
本実施の形態にかかる半導体装置3は、半導体装置2と同等程度の効果を奏することができる。さらに、本実施の形態にかかる半導体装置3では、電流変換回路33が、トランジスタMN7のゲートと、電流変換回路33の電流入力端子と、の間にカレントミラー回路を設けることにより、トランジスタMN7のゲートにインパルスな電流波形の電流Iinが直接印加されないように構成されている。それにより、電流変換回路33は、電流Ioutの電流波形をなまらせることができる。それにより、電流Ioutが次段の電流制御発振回路14の入力電流レンジの範囲内に抑えられるため、計測特性が向上する。
【0069】
なお、本実施の形態では、半導体装置2に設けられた電流変換回路23において、トランジスタMN7のゲートと、電流変換回路33の電流入力端子と、の間にカレントミラー回路が追加された場合を例に説明したが、これに限られない。当然ながら、半導体装置1に設けられた電流変換回路13において、トランジスタMN7のゲートと、電流変換回路33の電流入力端子と、の間にカレントミラー回路が追加された場合でも、計測特性が向上する。
【0070】
<実施の形態4>
続いて、実施の形態4にかかる半導体装置4について説明する。
本実施の形態にかかる半導体装置4は、半導体装置3と比較して、電流変換回路33の代わりに電流変換回路43を備え、かつ、ダミートランジスタMP6をさらに備える。半導体装置4のその他の構成については、半導体装置3の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0071】
図8は、電流変換回路43の具体的な構成例を示す回路図である。
図8に示すように、電流変換回路43は、電流変換回路33と比較して、NチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)MN10,MN11をさらに有する。また、電流変換回路43は、電流Ioutを出力する出力端子OUTに加えて、電流IoutBを出力する出力端子OUTBをさらに備える。
【0072】
トランジスタ(第12トランジスタ)MN10では、ソースがノードN2に接続され、ドレインが電流変換回路43の出力端子OUTBに接続され、ゲートにパルス信号P1の反転信号PB1が印加される。トランジスタMN10は、パルス信号PB1によってオンオフを切り替える。トランジスタ(第13トランジスタ)MN11では、ソースがノードN4に接続され、ドレインが電流変換回路43の出力端子OUTBに接続され、ゲートにパルス信号P1が印加される。トランジスタMN11は、パルス信号P1によってオンオフを切り替える。つまり、トランジスタMN10,MN11は、それぞれトランジスタMN3,MN7と相補的にオンオフを切り替える。
【0073】
そのため、出力端子OUTに流れる電流Ioutの電流値がIidle+|2×Iin|を示す場合には、出力端子OUTBに流れる電流IoutBの電流値はIidle-|2×Iin|を示す。それに対し、出力端子OUTに流れる電流Ioutの電流値がIidle-|2×Iin|を示す場合には、出力端子OUTBに流れる電流IoutBの電流値はIidle+|2×Iin|を示す。
【0074】
ダミートランジスタMP6は、PチャネルMOSトランジスタであって、電流制御発振回路14の入力段に設けられたPチャネルMOSトランジスタ(以下、トランジスタと称す)MP5に対応して設けられている。なお、ダミートランジスタMP6は、トランジスタMP5と同一サイズかつ同一形状であることが好ましい。
【0075】
具体的には、電流制御発振回路14の入力段に設けられたトランジスタMP5では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン及びゲートが電流変換回路43の出力端子OUTに接続されている。ダミートランジスタMP6では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン及びゲートが電流変換回路43の出力端子OUTBに接続されている。
【0076】
ノードN2には、例えば、トランジスタMN2,MN3,MN10の電極等が持つジャンクション容量、及び、配線容量などの寄生の静電容量が形成されている。また、ノードN4には、例えば、トランジスタMN6,MN7,MN11の電極等が持つジャンクション容量、及び、配線容量などの寄生の静電容量が形成されている。
【0077】
ここで、図7に示す電流変換回路33では、トランジスタMN3がオフすると、ノードN2の電圧がグランドレベル(0V)まで放電される。そのため、その後、トランジスタMN3がオフからオンに切り替わると、トランジスタMN3のソース-ドレイン間には、所望の電流Iidle+Iinのみならず、ノードN2の寄生容量を充放電するための電流が余分に流れる。同様に、図7に示す電流変換回路33では、トランジスタMN7がオフすると、ノードN4の電圧がグランドレベル(0V)まで放電される。そのため、その後、トランジスタMN7がオフからオンに切り替わると、トランジスタMN7のソース-ドレイン間には、所望の電流Iidle-Iinのみならず、ノードN4の寄生容量を充放電するための電流が余分に流れる。その結果、電流Ioutには、ノードN2,N4の寄生容量を充放電するための余分な電流が誤差成分として含まれてしまう。なお、この誤差成分は、パルス信号P1の周波数の増加に比例して大きくなる。
【0078】
それに対し、図8に示す電流変換回路43では、トランジスタMN3がオフしても、トランジスタMN10がオンすることによってノードN2に電荷が供給されるため、ノードN2の電圧がグランドレベルまで放電されることはない。そのため、その後、トランジスタMN3がオフからオンに切り替わった場合においてトランジスタMN3のソース-ドレイン間に流れる余分な電流(寄生容量を充放電するための電流)は抑制される。同様に、図8に示す電流変換回路43では、トランジスタMN7がオフしても、トランジスタMN11がオンすることによってノードN4に電荷が供給されるため、ノードN4の電圧がグランドレベルまで放電されることはない。そのため、その後、トランジスタMN7がオフからオンに切り替わった場合においてトランジスタMN7のソース-ドレイン間に流れる余分な電流(寄生容量を充放電するための電流)は抑制される。その結果、電流Ioutに含まれる誤差成分は抑制される。
【0079】
なお、本実施の形態では、半導体装置3に設けられた電流変換回路33に対して、ノードN2,N4をグランドレベルまで放電させないようにトランジスタMN10,MN11が追加された場合を例に説明したが、これに限られない。当然ながら、半導体装置1に設けられた電流変換回路13に対して、ノードN2をグランドレベルまで放電させないようにトランジスタMN10が追加されても良い。また、半導体装置2に設けられた電流変換回路23に対して、ノードN2,N4をグランドレベルまで放電させないようにトランジスタMN10,MN11が追加されても良い。
【0080】
<半導体装置1の適用事例>
続いて、図9を用いて、半導体装置1の適用事例について説明する。図9は、半導体装置1が適用されたセンサシステム(半導体システム)SYS1の構成例を示す図である。
【0081】
図9に示すように、センサシステムSYS1は、タッチスクリーン100と、半導体装置1に対応する半導体装置1aと、を備える。タッチスクリーン100上には、n行×m列の複数のタッチ電極対TP1が配置されている。半導体装置1aは、パルス信号出力回路11と、セレクタ18と、ドライバ12_1~12_mと、電流変換回路13_1~13_nと、電流制御発振回路14_1~14_nと、カウンタ15_1~15_nと、パルス信号切替回路16と、演算処理部(CPU)17と、を備える。
【0082】
セレクタ18は、パルス信号出力回路11から出力されたパルス信号PS1を、ドライバ12_1~12_mの何れかに選択的に出力する。ドライバ12_1~12_mは、何れもドライバ12に対応し、それぞれ1~m列目のn個のタッチ電極対TP1の送信電極に選択的にパルス信号PS1を出力する。
【0083】
電流変換回路13_1~13_nは、何れも電流変換回路13に対応し、それぞれ1~n行目のm個のタッチ電極対TP1の受信電極に何れかに発生した電流Iin_1~Iin_nを電流Iout_1~Iout_nに変換する。電流制御発振回路14_1~14_nは、何れも電流制御発振回路14に対応し、それぞれ電流Iout_1~Iout_nに応じた周波数のクロック信号CLK2_1~CLK2_nを出力する。カウンタ15_1~15_nは、何れもカウンタ15に対応し、それぞれ所定期間当たりのクロック信号CLK2_1~CLK2_nの発振回数をカウントしてカウント値NC2_1~NC2_nを出力する。そして、演算処理部17は、カウント値NC2_1~NC2_nに基づいて、何れのタッチ電極対TP1に指がタッチされたかを検出する。半導体装置1aのその他の構成については、半導体装置1と同様であるため、その説明を省略する。
【0084】
ここで、半導体装置1aには複数の電流変換回路13_1~13_nが設けられているが、既に説明したように各電流変換回路13_1の回路規模は小さい。そのため、センサシステムSYS1は、回路規模の増大を抑制することができる。
【0085】
なお、本例では、各電流変換回路13_1~13_nにパルス信号P1が入力されているが、実施の形態1と同様に、パルス信号PS1が入力され、パルス信号切替回路16がパルス信号出力回路11およびセレクタ18間に設けられ、ドライバ12_1~12_mに選択的にパルス信号PS1およびその反転信号のいずれかが入力されてもよい。
【0086】
なお、本例では、半導体装置1の構成がセンサシステムに適用される場合について説明したが、これに限られず、当然ながら、半導体装置2~4の何れかの構成がセンサシステムに適用されてもよい。
【0087】
以上のように、上記実施の形態1~4にかかる半導体装置は、アンプ等を構成要素とする電源電圧降下回路を備えていない電流変換回路を用いて、タッチ電極対TP1の静電容量の変化を検出する。また、上記実施の形態1~4にかかる半導体装置は、タンクコンデンサも必要としない。それにより、上記実施の形態1~4にかかる半導体装置は、回路規模の増大を抑制することができる。また、それにより、上記実施の形態1~4にかかる半導体装置は、複数のタッチ電極対のそれぞれの静電容量を並行して計測するための回路構成を搭載しても、回路規模の増大を抑制することができる。
【0088】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0089】
例えば、上記の実施の形態に係る半導体装置では、半導体基板、半導体層、拡散層(拡散領域)などの導電型(p型もしくはn型)を反転させた構成としてもよい。そのため、n型、及びp型の一方の導電型を第1の導電型とし、他方の導電型を第2の導電型とした場合、第1の導電型をp型、第2の導電型をn型とすることもできるし、反対に第1の導電型をn型、第2の導電型をp型とすることもできる。
【符号の説明】
【0090】
1 半導体装置
1a 半導体装置
2 半導体装置
3 半導体装置
4 半導体装置
11 パルス信号出力回路
12 ドライバ
13 電流変換回路
14 電流制御発振回路
15 カウンタ
16 パルス信号切替回路
23 電流変換回路
33 電流変換回路
43 電流変換回路
100 タッチスクリーン
MN1~MN11 トランジスタ
MP1~MP5 トランジスタ
MP6 ダミートランジスタ
PX1 送信電極
PR1 受信電極
SYS1 センサシステム
TX1 端子
TR1 端子
TP1 タップ電極対
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9