(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】砂杭造成工法の砂材料供給方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
E02D3/10 104
(21)【出願番号】P 2019110802
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 憲史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】今給黎 健一
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-239141(JP,A)
【文献】特開2015-063803(JP,A)
【文献】実開昭52-145009(JP,U)
【文献】特開2003-253661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に砂材料を排出して砂杭を造成する地盤改良施工機に材料運搬車両で砂材料を供給する砂杭造成工法の砂材料供給方法であって、
地盤改良施工機に演算処理部を備え、演算処理部において、地盤中に1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料の量に基づいて材料運搬車両で地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量を算出する第1の工程と、
演算処理部で算出した地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量の情報を材料運搬車両に無線で送信する第2の工程と、
材料運搬車両に通知部を備え、通知部において、受信した地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量の情報を通知する第3の工程と、
材料運搬車両に砂材料の重量を検出する重量検出部を備え、材料運搬車両において、通知部で通知された地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量になるように重量検出部を用いて砂材料を積み込む第4の工程と、
積み込んだ砂材料を材料運搬車両で運搬して地盤改良施工機に供給する第5の工程と、
を有することを特徴とする砂杭造成工法の砂材料供給方法。
【請求項2】
請求項1に記載された砂杭造成工法の砂材料供給方法において、
通知部は表示装置又は音声出力装置であり、第3の工程において、地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量の情報を表示装置で表示するか、又は音声出力装置で音声出力することを特徴とする砂杭造成工法の砂材料供給方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された砂杭造成工法の砂材料供給方法において、
地盤改良施工機に、ケーシングパイプ内の砂材料の量を検出する砂材料検出部を備え、砂材料検出部で検出した砂材料の量が所定量以下になったときに、砂材料を地盤改良施工機に供給する指示を材料運搬車両に無線で送信することを特徴とする砂杭造成工法の砂材料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に砂材料を排出して砂杭を造成する地盤改良施工機に材料運搬車両で砂材料を供給する砂杭造成工法の砂材料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を改良するための砂杭造成工法は、例えば、地盤中に砂材料を排出し、排出した砂材料を圧縮することで、地盤中に拡径した砂杭を造成して、地盤を強固なものに改良するサンドコンパクションパイル工法や静的締固め砂杭工法などが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
砂杭造成工法では、地盤改良施工機を用いて地盤の改良が行われる。
地盤改良施工機は、前部にマストを立設した車体を備えるとともに、マストに沿って上下に向かう地盤中に貫入可能なケーシングパイプを備える。ケーシングパイプは、円筒形の管で、下部に排出口を設けて、排出口から砂材料を地盤中に排出する。また、マストには、昇降動自在の昇降バケットを取り付け、昇降バケットに砂材料を入れてマストの上方まで搬送し、マストの上方において、昇降バケットに入れた砂材料をケーシングパイプ内に投入する。
【0004】
砂杭造成工法は、地盤改良施工機の昇降バケットに砂材料を入れて、この昇降バケットからケーシングパイプ内に砂材料を投入する。ケーシングパイプ内に砂材料を投入した後、ケーシングパイプを所定深度まで貫入する。貫入後、ケーシングパイプを少し引抜き、引抜いた跡にケーシングパイプの排出口から砂材料を排出する。地盤中に砂材料を排出した後、ケーシングパイプを打ち戻して排出した砂材料を圧縮する。このケーシングパイプの引抜きと、ケーシングパイプからの砂材料の排出と、ケーシングパイプの打ち戻しによる砂材料の圧縮を、上方に向かって繰り返し行うことで、地盤中に拡径した砂杭を造成して地盤を強固なものに改良する。
【0005】
この砂杭造成工法において、地盤改良施工機に砂材料を供給する砂杭造成工法の砂材料供給方法としては、材料運搬車両を用いて行われる。材料運搬車両は、ショベルローダー、ログローダー、バックホウなどのバケットを有する建設機械である。
砂杭造成工法の砂材料供給方法は、材料運搬車両のバケットで砂材料をすくい上げて積み込み、積み込んだ砂材料を運搬する。材料運搬車両に積み込んだ砂材料を地盤改良施工機まで運搬した後に、地盤改良施工機の昇降バケットに砂材料を入れることで、地盤改良施工機に砂材料を供給する。
【0006】
砂杭造成工法では、地盤中に1本の砂杭を造成するのに必要な量の砂材料を地盤改良施工機のケーシングパイプ内に投入して、地盤中に砂杭を造成する。砂杭を地盤中に造成する場合、ケーシングパイプの容量の数倍の量の砂材料が必要になり、ケーシングパイプ内への砂材料の投入を繰り返し行わなくてはならない。また、材料運搬車両を用いた砂材料供給方法では、昇降バケットや材料運搬車両のバケットの大きさ(容量)に限度があることで、材料運搬車両による1回の供給で、ケーシングパイプの容量を満たすことはできず、そのため、砂材料の供給を複数回に分けて行う必要がある。
即ち、地盤改良施工機への砂材料の供給において、地盤改良施工機に1本の砂杭を造成するのに必要な量の砂材料を供給しようとすると、材料運搬車両による砂材料の供給は、複数回行わなくてはならず、造成する砂杭の長さが長くなると、砂材料の供給する回数はさらに多くなる。
【0007】
ところで、砂杭造成工法の砂材料供給方法において、材料運搬車両のバケットで砂材料をすくい上げて積み込む際に、熟練した作業者であれば、砂材料のすくう量を調整し、適切な量の砂材料をすくい上げて積み込み、積み込んだ砂材料を材料運搬車両で地盤改良施工機に運搬して、地盤改良施工機に正確な量の砂材料を供給することができる。また、地盤改良施工機への砂材料の供給も、必要最小限の回数で行うことができる。
【0008】
しかしながら、熟練していない作業者では、材料運搬車両のバケットで砂材料をすくい上げて積み込む際に、適切な量の砂材料をすくい上げることが難しく、そのため、地盤改良施工機に正確な量の砂材料を供給することができない虞がある。これにより、材料運搬車両のバケットで砂材料をすくい上げて積み込む量が少ないと、地盤改良施工機への砂材料の供給する回数が増え、砂杭の造成作業において、材料運搬車両から砂材料が供給されるのを待つ時間が大幅に増える。つまり、作業ロスが生じ、作業効率が悪くなるという問題がある。
また、複数回に分けて行う地盤改良施工機に供給する砂材料の量が、1本の砂杭を造成するのに必要な量よりも少ないと、地盤中に造成した砂杭において、品質不良(砂杭の強度不足など)になる。また、供給する砂材料の量が1本の砂杭を造成するのに必要な量よりも多いと、砂杭の造成の作業終了後に、ケーシングパイプ内に砂材料が残り、材料ロスという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、材料運搬車両において、バケットで砂材料をすくい上げて積み込む際に、作業者の技量に関係なく、どのような作業者であっても、適切な量の砂材料をすくい上げて積み込むことができ、地盤改良施工機に正確な量の砂材料を供給することができる砂杭造成工法の砂材料供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、地盤中に砂材料を排出して砂杭を造成する地盤改良施工機に材料運搬車両で砂材料を供給する砂杭造成工法の砂材料供給方法であって、地盤改良施工機に演算処理部を備え、演算処理部において、地盤中に1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料の量に基づいて材料運搬車両で地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量を算出する第1の工程と、演算処理部で算出した地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量の情報を材料運搬車両に無線で送信する第2の工程と、材料運搬車両に通知部を備え、通知部において、受信した地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量の情報を通知する第3の工程と、材料運搬車両に砂材料の重量を検出する重量検出部を備え、材料運搬車両において、通知部で通知された地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量になるように重量検出部を用いて砂材料を積み込む第4の工程と、積み込んだ砂材料を材料運搬車両で運搬して地盤改良施工機に供給する第5の工程とを有する砂杭造成工法の砂材料供給方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、材料運搬車両において、通知部で通知された地盤改良施工機に供給する1回当たりの砂材料の供給量になるように重量検出部を用いて砂材料を積み込むことで、地盤改良施工機に正確な量の砂材料を供給することができ、また、地盤改良施工機への砂材料の供給も、必要最小限の回数で行うことができる。これにより、地盤改良施工機への砂材料の供給回数が増えるのをなくし、砂材料の供給の待ち時間を減らして、作業ロスを低減する。これとともに、地盤改良施工機に供給する砂材料の量が、1本の砂杭を造成するのに必要な量よりも少なくなったり又は多くなったりすることをなくして、造成した砂杭の品質不良という問題をなくすとともに、作業終了後にケーシングパイプ内に砂材料が残るのを防止して、材料ロスの問題をなくす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の砂杭造成工法の砂材料供給方法で用いる地盤改良施工機と材料運搬車両を説明する図である。
【
図2】材料運搬車両に備える表示装置を説明する図である。
【
図3】地盤改良施工機に備える砂材料検出部及び深度検出部を説明する図である。
【
図4】本発明の砂杭造成工法の砂材料供給方法の手順を示すフロー図である。
【
図5】
図5Aは、砂材料を地表面に野積みしたときの図、
図5Bは、砂材料をケーシングパイプ内に投入したときの図、
図5Cは、砂材料を地盤中に排出して圧縮したときの図である。
【
図6】
図6Aは、地表面に野積みしたときの砂材料の量を示す図、
図6Bは、ケーシングパイプ内に投入したときの砂材料の量を示す図、
図6Cは、地盤中に排出して圧縮したときの砂材料の量を示す図である。
【
図7】地盤中に造成する複合型砂杭を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の砂杭造成工法の砂材料供給方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る砂杭造成工法の砂材料供給方法(以下、単に本砂杭造成工法の砂材料供給方法という)は、地盤中に貫入可能なケーシングパイプを備える地盤改良施工機で、砂材料を地盤中に排出し、地盤中に砂杭を造成する砂杭造成工法において、地盤改良施工機に材料運搬車両で砂材料を供給する砂材料供給方法である。ここで使用する砂材料は、砂のみ、あるいは砂に添加剤を混ぜたものである。ただし、これらに限らず、砂利、砕石、建設発生土、再生材(コンクリート廃材などを破砕したもの)などでもよく、また、これらと砂などを混ぜたものでもよい。
なお、ここでの砂杭造成工法は、地盤中に砂材料を排出し、排出した砂材料を圧縮することで、地盤中に拡径した砂杭を造成して、地盤を強固なものに改良する方法である。ただし、砂杭造成工法は、これに限らず、地盤中に砂材料を排出して、砂材料を圧縮することなく、地盤中に砂杭を造成し、造成した砂杭で地盤の間隙水を排出するサンドドレーン工法などでもよい。
【0015】
図1は、本砂杭造成工法の砂材料供給方法で用いる地盤改良施工機と材料運搬車両を説明する図である。
図2は、材料運搬車両に備える表示装置を説明する図である。
図3は、地盤改良施工機に備える砂材料検出部及び深度検出部を説明する図である。
材料運搬車両1は、
図1に示すように、例えば、バケット10を有するショベルローダーである。材料運搬車両1は、地表面に野積みされた砂材料Sをバケット10ですくい上げて積み込み、積み込んだ砂材料Sを地盤改良施工機2に運搬する。なお、材料運搬車両1は、ショベルローダーに限らず、ログローダーやバックホウなどの他の建設機械でもよい。
【0016】
材料運搬車両1には、バケット10ですくい上げた砂材料Sの重量を検出する重量検出部11を備える。重量検出部11は、例えばバケット10のアーム12に取り付けたロードセルであり、このロードセルで測定した荷重によりバケット10ですくい上げた砂材料Sの重量を検出できる。
【0017】
材料運搬車両1の運転室13には、通知部14を備え、通知部14は、例えば表示装置15である。表示装置15は、
図2に示すように、重量検出部11で検出した砂材料Sの重量、つまりバケット10ですくい上げた砂材料Sの重量を数字で表示(デジタル表示)する。また、表示装置15は、後述する地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量も数字で表示(デジタル表示)する。
なお、通知部14は、表示装置15に限らず、音声出力する音声出力装置でもよい。
また、表示装置15(通知部14)には、地盤改良施工機2への砂材料Sの供給の開始の合図を表示する、例えばスタートランプ16を設ける。これにより、作業者は、スタートランプ16の点灯を確認すると、材料運搬車両1を操作して、地盤改良施工機2への砂材料Sの供給を開始する。
【0018】
地盤改良施工機2は、
図1に示すように、運転室21を有する車体20を備え、車体20の前部にマスト22を立設し、立設したマスト22に沿って上下に向かう地盤中に貫入可能なケーシングパイプ23を備える。ケーシングパイプ23は、円筒形の管で、その内部を砂材料Sの通る供給路にし、下部に排出口24を設けて、排出口24から砂材料Sを地盤中に排出する。
【0019】
マスト22は、その上部にケーシングパイプ23を地盤中に貫入し又は地盤中から引抜くための昇降装置25及び回転装置26を取り付けるとともに、ケーシングパイプ23内に砂材料Sを投入するためのホッパー27を取り付ける。また、マスト22には、砂材料Sを入れて昇降動する昇降バケット28を取り付けている。昇降バケット28は、マスト22の上部まで上昇して、マスト22の上部において、ホッパー27内に砂材料Sを移すことで、砂材料Sをケーシングパイプ23内に投入する。
【0020】
また、地盤改良施工機2は、車体に演算処理部30を備える。演算処理部30は、コンピューターであり、例えば車体20の運転室21内に設置する。演算処理部30は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を行う。
【0021】
地盤改良施工機2には、ケーシングパイプ23内の砂材料Sの量を検出する砂材料検出部31を備える。砂材料検出部31は、
図3に示すように、ケーシングパイプ23内にワイヤー32で錘33を吊り下げ、吊り下げた錘33をケーシングパイプ23内の砂材料Sの上面に載せる。これにより、ワイヤー32が引き出された長さから砂材料Sの上面の高さを検出することで、ケーシングパイプ23内の砂材料Sの量を検出できる。砂材料検出部31で検出したケーシングパイプ23内の砂材料Sの量は、演算処理部30に伝達される。なお、砂材料検出部31は、従来用いている既存の機器である。
【0022】
また、地盤改良施工機2には、ケーシングパイプ23先端の深度を検出する深度検出部34を備える。深度検出部34は、
図3に示すように、ケーシングパイプ23にワイヤー35を固着し、ワイヤー35の移動がケーシングパイプ23の昇降動と連動するようにしている。これにより、ワイヤー35の移動量を検出することで、ケーシングパイプ23先端の深度を検出できる。深度検出部34で検出したケーシングパイプ23先端の深度は、演算処理部30に伝達される。なお、深度検出部34は、従来用いている既存の機器である。
【0023】
また、地盤改良施工機2には通信機40を備え、材料運搬車両1にも通信機41を備える。これにより、地盤改良施工機2と材料運搬車両1の間で情報を伝達(送受信)することができ、この情報の伝達は、無線で行う。
【0024】
次に、本砂杭造成工法の砂材料供給方法について説明する。
図4は、本砂杭造成工法の砂材料供給方法の手順を示すフロー図である。
本砂杭造成工法の砂材料供給方法は、図示のように、演算処理部30で地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量を算出する第1の工程P1と、地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量の情報を材料運搬車両1に送信する第2の工程P2と、材料運搬車両1の通知部14で地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量の情報を通知する第3の工程P3と、材料運搬車両1において、通知部14で通知された地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量となる砂材料Sを積み込む第4の工程P4と、砂材料Sを材料運搬車両1で運搬して地盤改良施工機2に供給する第5の工程P5を有する。
【0025】
(第1の工程)
演算処理部30で地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量を算出する第1の工程P1は、地盤改良施工機2に備える演算処理部30において、地盤中に1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量に基づいて材料運搬車両1で地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量を算出する。
【0026】
即ち、演算処理部30において、地盤中に1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量を求める。砂材料Sの量は、体積によって表されるものである。求め方は、実際に地盤中に砂杭を1本造成し、このときの使用した砂材料Sの量(体積)から、1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量を求める。また、実際に地盤中に砂杭を1本造成したときに、砂杭を例えば1m造成するのに必要な砂材料Sの量も求めておくことで、地盤中に造成する砂杭の長さが変わっても、その長さに応じて必要な砂材料Sの量を求めることができる。
なお、1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量の求め方は、上記のような実際に地盤中に砂杭を造成して求める方法に限らず、例えば、造成予定の砂杭の出来型(直径及び砂杭長さ)との関係から、従来行っている既存の計算式で必要な砂材料Sの量を求めるようにしてもよい。
【0027】
1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量は、体積で表され、この体積によって管理する。ところが、砂材料Sは、地表面に野積みしたとき、ケーシングパイプ23内に投入したとき、地盤中に排出して圧縮したときのそれぞれで、その体積が変化する。
即ち、
図5Aに示す、地表面に野積みしたときの砂材料Sの量(体積)を、
図6Aのような体積とした場合、
図5Bに示す、ケーシングパイプ23内に投入したときの砂材料Sの量は、
図6Bのように、投入時の落下による衝撃や振動などにより密度が高くなり、体積が減少する。また、
図5Cに示す、地盤中に排出して圧縮したときの砂材料Sの量は、
図6Cのように、締固めによる圧縮などにより密度がさらに高くなり、体積がさらに減少する。つまり、砂材料Sにおいては体積変化が起こる。
そのため、この体積変化を考慮して砂材料Sの量を管理し、1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量を求めるようにしている。
【0028】
次に、演算処理部30において、上記で求めた地盤中に1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量に基づいて材料運搬車両1で地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量を算出する。砂材料Sの供給量は、重量によって表されるものである。1回当たりの砂材料Sの供給量の算出は、地盤中に1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量(体積)に基づいて、材料運搬車両1のバケット10の容量及び地盤改良施工機2の昇降バケット28の容量などから、材料運搬車両1で地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量と、材料運搬車両1で地盤改良施工機2に砂材料Sを供給する回数をそれぞれ算出する。つまり、砂材料Sを供給する回数が複数の場合、例えば、1回目の砂材料Sの供給量、2回目の砂材料Sの供給量、3回目以降の砂材料Sの供給量、それから最後の砂材料Sの供給量というように、それぞれの砂材料Sの供給量を算出する。
【0029】
また、1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量から材料運搬車両1で地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量を算出しているが、1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量が体積で表され、算出する1回当たりの砂材料Sの供給量が重量で表されることから、体積から重量に換算する必要がある。つまり、砂材料Sにおいて、その重量は、体積が同じでも砂材料Sの密度及びその成分などの砂の質や状態により変わる。砂の質や状態とは、砂の密度やその成分(砂の種類や含まれる物質)、砂が乾燥した状態かあるいは湿った状態かなどである。例えば、砂材料Sの密度が高いと重量が重くなり、密度が低いと重量が軽くなる。また、砂材料Sに含まれる水分量が多いと重量が重くなり、水分量が少ないと重量が軽くなる。これらのことから、体積から重量への換算は、砂材料Sの密度及びその成分などの砂の質や状態を考慮して行うようにする。
【0030】
なお、体積から重量に換算する場合は、体積で表した1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量を、砂の質や状態を考慮して重量に換算する。これにより、1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量について、体積から換算した重量で表して管理する。このように重量で管理することで、上記のような体積変化に影響されることなく、1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量(ここでは重量)から1回当たりの砂材料Sの供給量(重量)を算出することができる。
【0031】
(第2の工程)
地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量の情報を材料運搬車両1に送信する第2の工程P2は、上記の第1の工程P1において、地盤改良施工機2の演算処理部30で算出した地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量の情報を、地盤改良施工機2に備えた通信機40から材料運搬車両1に備えた通信機41に無線で送信する。
【0032】
(第3の工程)
材料運搬車両1の通知部14で地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量の情報を通知する第3の工程P3は、材料運搬車両1の運転室13に備えた表示装置15(通知部14)において、受信した(地盤改良施工機2から送信されてきた)地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量の情報を表示する。つまり、表示装置15では、1回当たりの砂材料Sの供給量(重量)が数字で表示される。
【0033】
(第4の工程)
材料運搬車両1において、通知部14で通知された地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量となる砂材料Sを積み込む第4の工程P4は、作業者が材料運搬車両1を操作して砂材料Sを積み込む。例えば、作業現場の地表面に野積みされた砂材料Sを材料運搬車両1のバケット10ですくい上げて積み込む。
即ち、材料運搬車両1において、作業者が表示装置15で表示された地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量を見て、それに基づいて、材料運搬車両1を操作して砂材料Sを積み込む。このとき、表示装置15には、地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量とともに、重量検出部11で検出した砂材料S(バケット10ですくい上げた砂材料S)の重量も表示される。これにより、作業者は、表示装置15に表示された重量検出部11で検出した砂材料Sの重量が、地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量になるように、表示装置15を見ながら、材料運搬車両1を操作して、砂材料Sをバケット10ですくい上げて積み込む。つまり、材料運搬車両1において、適切な量の砂材料Sをすくい上げて積み込む。
【0034】
(第5の工程)
砂材料Sを材料運搬車両1で運搬して地盤改良施工機2に供給する第5の工程P5は、上記の第4の工程P4において、材料運搬車両1に積み込んだ地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量となる砂材料Sを地盤改良施工機2まで運搬して、地盤改良施工機2の昇降バケット28に砂材料Sを入れる。これにより、地盤改良施工機2に砂材料Sを供給する。
地盤改良施工機2では、砂材料Sを入れた昇降バケット28がマスト22の上部まで上昇し、マスト22の上部でホッパー27を介してケーシングパイプ23内に砂材料Sが投入される。
【0035】
次に、上記の第5の工程P5での地盤改良施工機2への砂材料Sの供給が終わった後、砂材料Sの供給が所定回数(演算処理部で算出した砂材料Sを供給する回数)に達していない場合は、次の砂材料Sの供給、例えば、2回目、3回目の砂材料Sの供給を行う。また、砂材料Sの供給が所定回数に達した場合は、これが最後の砂材料Sの供給となり、砂材料Sの供給作業を終了する。
これにより、地盤改良施工機2への砂材料Sの供給において、1回当たりの適切な量の砂材料Sの供給と、砂材料Sの供給を所定回数行うことで、地盤改良施工機2に正確な量(1本の砂杭を造成するのに必要な量)の砂材料Sを供給することができる。
【0036】
また、砂材料Sにあっては、その重量は、上記で述べた通り、砂の質や状態によって変わる。つまり、砂材料Sの重量は、それぞれの作業現場あるいは日時などによって変化する。そのため、砂材料Sの重量を検出する際は、この重量の変化を補正するためのキャリブレーション(調整)を行う必要がある。
【0037】
例えば、作業開始前に、作業現場の地表面に野積みされた砂材料Sを材料運搬車両1のバケット10で所定量すくい上げて、砂材料Sの重量を検出する。砂材料Sをすくう際は、バケット10の決められた位置まで、例えばバケット10の上端まで砂材料Sを入れることで、所定量の砂材料Sをすくうことができる。このすくい上げて検出した砂材料Sの重量と、予め設定した重量の標準値とを対比して、その差に基づいて検出した砂材料Sの重量を補正し、つまりキャリブレーションを行う。なお、キャリブレーションのタイミングは、上記の作業開始前に限らず、その他のタイミングで行うようにしてもよい。
【0038】
砂材料Sの重量を検出する際に、キャリブレーションを行うことで、作業現場あるいは日時などにより砂材料Sの重量が変化しても、この重量の変化に応じて検出する砂材料Sの重量を補正することができる。これにより、砂材料Sの重量を常に正確に検出して、地盤改良施工機2に的確な量の砂材料Sを供給できるようにする。
【0039】
また、地盤改良施工機2では、砂材料検出部31でケーシングパイプ23内の砂材料Sの量を検出し、検出した砂材料Sの量が所定量以下になったときに、砂材料Sを地盤改良施工機2に供給する指示を材料運搬車両1に無線で送信するようにしている。
即ち、砂材料検出部31は、演算処理部30に接続し、砂材料検出部31で検出した砂材料Sの量の情報を演算処理部30に伝達する。演算処理部30では、この検出した砂材料Sの量が所定量以下になったら、砂材料Sの不足と判断し、材料運搬車両1に砂材料Sを地盤改良施工機2に供給する指示を自動で送信する。これにより、材料運搬車両1では、演算処理部30からの指示により、表示装置15のスタートランプ16が点灯し、つまり、表示装置15において、地盤改良施工機2への砂材料Sの供給の開始の合図が表示される。材料運搬車両1を操作する作業者は、この合図を見て、地盤改良施工機2への砂材料Sの供給を開始する。
【0040】
以上のように、ケーシングパイプ23内の砂材料Sの量が所定量以下になったら、材料運搬車両1の表示装置15において、地盤改良施工機2への砂材料Sの供給の開始の合図が表示されることで、材料運搬車両1を操作する作業者に対し、地盤改良施工機2を操作する作業者がいちいち指示を出す必要がなくなる。これにより、地盤改良施工機2の作業者において、わずらわしい作業をなくすことができ、作業者への負担を低減することができる。また、材料運搬車両1における地盤改良施工機2への砂材料Sの供給も最適なタイミングで行うことができ、砂材料Sの供給作業を、無駄なく効率的に行うことができる。
ただし、材料運搬車両1に指示を出すのは、自動ではなく、地盤改良施工機2の作業者による操作(手動)で行うようにしてもよい。
【0041】
また、地盤改良施工機2に備えた通信機40と材料運搬車両1に備えた通信機41は、送受信可能であることから、材料運搬車両1の重量検出部11で検出したバケット10ですくい上げた砂材料Sの重量の情報を、材料運搬車両1から地盤改良施工機2に無線で送信して、地盤改良施工機2の演算処理部30にバケット10ですくい上げた砂材料Sの重量の情報を伝達することができる。つまり、地盤改良施工機2の演算処理部30では、材料運搬車両1のバケット10ですくい上げた砂材料Sの重量を把握できるようにしている。
【0042】
これにより、材料運搬車両1のバケット10ですくい上げた砂材料Sが所定の量よりも多くなったり、又は少なくなったりした場合、このずれた量を把握することで、ずれた量に基づいて、次の砂材料Sの供給、例えば、2回目、3回目の砂材料Sの供給のときに、砂材料Sの供給量を調整(供給量を減らしたり、増やしたり)することができる。このように砂材料Sの供給量を調整することで、複数回に分けて行う地盤改良施工機2に供給する砂材料Sの量を、1本の砂杭を造成するのに必要な量と同じにすることができ、地盤改良施工機2において、最終的にケーシングパイプ23内に砂材料Sが残ったり、又は砂材料Sが不足したりするのを防止することができる。
【0043】
以上説明したように、本砂杭造成工法の砂材料供給方法によれば、材料運搬車両1において、バケット10で砂材料Sをすくい上げて積み込む際に、表示装置15で表示された地盤改良施工機2に供給する1回当たりの砂材料Sの供給量になるように重量検出部11を用いて砂材料Sを積み込むことで、地盤改良施工機2に正確な量の砂材料Sを供給することができ、また、地盤改良施工機2への砂材料Sの供給も、必要最小限の回数で行うことができる。これにより、地盤改良施工機2への砂材料Sの供給回数が必要以上に増えるのをなくし、砂材料Sの供給の待ち時間を減らして、作業ロスを低減することで、作業効率の向上を図ることができる。また、地盤改良施工機2に供給する砂材料Sの量が、1本の砂杭を造成するのに必要な量よりも少なくなったり又は多くなったりすることをなくして、造成した砂杭の品質不良という問題をなくすとともに、作業終了後にケーシングパイプ23内に砂材料Sが残るのを防止して、材料ロスの問題をなくすことができる。
【0044】
また、本砂杭造成工法の砂材料供給方法において、その砂杭造成工法は、砂材料Sを圧縮して地盤中に拡径した砂杭を造成する方法(締固め砂杭工法)であるが、これに限らない。例えば、前述したようにサンドドレーン工法でもよいし、あるいは、地盤中に複合型砂杭を造成する方法でもよい。
【0045】
図7は、地盤中に造成する複合型砂杭を示す図である。
複合型砂杭は、図示のように、砂材料Sを圧縮(締固め)して地盤中に拡径して造成する砂杭部分Aと、砂材料Sを圧縮することなく造成する砂杭部分Bをそれぞれ設けるもので、例えば、異なる層が組み合わさっている複合地盤などに造成する砂杭である。
【0046】
この複合型砂杭を造成する場合、圧縮して造成する砂杭部分Aに使用する砂材料Sと、圧縮することなく造成する砂杭部分Bに使用する砂材料Sとでは、砂材料Sの体積変化が異なる。即ち、圧縮して造成する砂杭部分Aに使用する砂材料Sは、締固めによる圧縮が行われることで、その体積変化が、圧縮することなく造成する砂杭部分Bに使用する砂材料Sよりも大きくなる(体積の減少が大きくなる)。そのため、圧縮して造成する砂杭部分Aにおける砂材料Sの体積変化と、圧縮することなく造成する砂杭部分Bにおける砂材料Sの体積変化をそれぞれ考慮して、地盤中に1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量を求めるようにする。これにより、地盤中に複合型砂杭を造成する場合でも、地盤中に1本の砂杭を造成するのに必要な砂材料Sの量を正確に求めることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…材料運搬車両、2…地盤改良施工機、10…バケット、11…重量検出部、12…アーム、13…運転室、14…通知部、15…表示装置、16…スタートランプ、20…車体、21…運転室、22…マスト、23…ケーシングパイプ、24…排出口、25…昇降装置、26…回転装置、27…ホッパー、28…昇降バケット、30…演算処理部、31…砂材料検出部、32…ワイヤー、33…錘、34…深度検出部、35…ワイヤー、40…通信機、41…通信機。