(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0612 20160101AFI20221201BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20221201BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221201BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20221201BHJP
【FI】
H01M8/0612
H01M8/04014
H01M8/04 N
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2019145926
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】本間 弘樹
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001524(JP,A)
【文献】特開2017-183228(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057151(WO,A1)
【文献】特開2013-191318(JP,A)
【文献】特開2013-157214(JP,A)
【文献】特開2021-026964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電し、燃料排ガス及び酸化剤排ガスを排出する燃料電池と、
炭化水素を主体とする原燃料を、水蒸気を用いて改質し、前記燃料電池に供給する前記燃料ガスを生成する改質器と、
水を蒸発させて、前記改質器に供給する前記水蒸気を生成する蒸発器と、
前記燃料排ガスと前記酸化剤排ガスとを排ガス燃焼室の内部で燃焼させて、燃焼排ガスとする燃焼器と、
前記排ガス燃焼室の少なくとも一部、前記改質器及び前記蒸発器を収容する補機ケースと、
を備える燃料電池モジュールであって、
互いに隣接して設けられる前記改質器及び前記蒸発器のそれぞれは、その並列方向視で前記排ガス燃焼室の外周の少なくとも一部を囲む方向に延在し、
前記補機ケースは、前記改質器及び前記蒸発器の外周を、間隔を置いて囲み、
前記蒸発器の延在方向の両端部同士は離間し、
前記蒸発器と前記補機ケースとは、1箇所の第1接続部のみにより接続され、
前記蒸発器と前記改質器とは、1箇所の第2接続部のみにより接続され、
前記改質器の延在方向の両端部同士は離間し、
前記改質器と前記補機ケースとは、1箇所の第3接続部のみにより接続される、燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池モジュールにおいて、
前記補機ケース及び前記排ガス燃焼室を形成する壁部の少なくとも一部に、熱変形を吸収する凹凸部が設けられている、燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池モジュールにおいて、
前記排ガス燃焼室は、互いに連通する第1室及び第2室と、該排ガス燃焼室内の前記燃焼排ガスを排出する燃焼室出口と、を有し、
前記第1室の外壁面の少なくとも一部は、前記蒸発器と間隔をおいて対向し、
前記第1室の外壁面と前記蒸発器との間には、前記燃焼室出口から排出された前記燃焼排ガスが流通可能であり、
前記第2室を形成する壁部の少なくとも一部は、前記改質器と共有の共有壁である、燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池モジュールにおいて、
前記補機ケースは、前記第1室及び前記蒸発器を収容する蒸発器収容室と、前記第2室及び前記改質器を収容する改質器収容室と、前記蒸発器収容室と前記改質器収容室とを区画する区画壁と、を有し、
前記第2室に前記燃焼室出口が設けられ、該燃焼室出口は、前記排ガス燃焼室内の前記燃焼排ガスを、前記改質器の外壁面と前記改質器収容室の内壁面との間に流出可能とし、
前記区画壁には、前記改質器収容室で前記改質器と熱交換した前記燃焼排ガスを前記蒸発器収容室に流通可能とする収容室連通口が設けられ、
前記蒸発器収容室には、前記第1室及び前記蒸発器と熱交換した前記燃焼排ガスを前記蒸発器収容室から排出する燃焼排ガス出口が設けられる、燃料電池モジュール。
【請求項5】
請求項3又は4記載の燃料電池モジュールにおいて、
前記改質器の前記両端部同士の間に前記燃焼室出口が設けられ、
前記第2室を形成する周壁の全体と、前記改質器の内周壁の全体とが前記共有壁である、燃料電池モジュール。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の燃料電池モジュールにおいて、
前記排ガス燃焼室の外底面と、前記補機ケースの内底面との間には、空間が形成される、燃料電池モジュール。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池モジュールにおいて、
前記排ガス燃焼室の外底面と、前記補機ケースの内底面との間に形成される前記空間には、前記燃焼排ガスが流通可能である、燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電し、燃料排ガス及び酸化剤排ガスを排出する燃料電池を備える燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、安定化ジルコニア等の固体酸化物を電解質として用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC)を備える燃料電池モジュールでは、燃料電池に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給することで電気化学反応を生じさせて発電を行う。燃料ガスとしては、都市ガスやプロパンガス等の炭化水素を主体とする原燃料と水蒸気とを改質器で水蒸気改質反応させて得られる水素含有ガスが挙げられる。また、酸化剤ガスとしては、空気等の酸素含有ガスが挙げられる。
【0003】
電気化学反応で消費されなかった燃料ガスや酸化剤ガスの未消費分は、燃料排ガス及び酸化剤排ガスとして燃料電池から排出される。例えば、特許文献1に示されるように、燃料排ガス及び酸化剤排ガスを排ガス燃焼室の内部で燃焼させて燃焼排ガスとする燃焼器を備える燃料電池モジュールが知られている。このように燃焼器で酸化剤排ガスを用いて燃料排ガスを燃焼させることで、熱エネルギーを得ることができ、しかも、未消費の燃料ガスが排気されることを容易に抑制できる。
【0004】
特許文献1の燃料電池モジュールは、燃料電池と、該燃料電池に供給する前の酸化剤ガスを予熱する熱交換器との間に挟まれた筐体を備え、該筐体の内部に、排ガス燃焼室と、排ガス燃焼室の外周壁と間隔を置いて対向する枠形状の改質器とが設けられている。排ガス燃焼室の外周壁には、該排ガス燃焼室から燃焼排ガスを排出するための燃焼室出口が設けられている。燃焼室出口から排出された燃焼排ガスは、改質器と熱交換しながら筐体内を流通する。すなわち、燃焼器で得られる燃焼排ガスの熱エネルギーを、高温域で動作する改質器等の加熱に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の燃料電池モジュールでは、上記の燃焼反応により排ガス燃焼室の温度が過剰に上昇してしまうと、該排ガス燃焼室を形成する壁部等の耐久性を低下させるような変形や酸化等が生じる懸念があり、ひいては、燃料電池モジュールの耐久性が低下する懸念がある。
【0007】
また、排ガス燃焼室、改質器、該改質器に供給する水蒸気を生成する蒸発器等の燃料電池用補機は、互いにユニット化された状態で補機ケースに収容されることが考えられる。この場合、補機ケース内の改質器や蒸発器等は、互いの接続部や、補機ケースとの接続部等が設けられることにより、補機ケース内で拘束されている。また、燃料電池用補機が起動すると、排ガス燃焼室や改質器の温度は、蒸発器の温度よりも高くなる。すなわち、補機ケース内の各構成要素は互いに異なる温度で動作する。
【0008】
このため、各構成要素や補機ケースのそれぞれに、温度変化による熱ひずみ(熱膨張等)が生じると、補機ケース内の各構成要素自体や、各構成要素同士の接続部、及び各構成要素と補機ケースとの接続部等に熱応力が生じてしまい、これによっても、燃料電池モジュールの耐久性が低下する懸念がある。
【0009】
そこで本発明は、温度変化による耐久性の低下を抑制できる燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電し、燃料排ガス及び酸化剤排ガスを排出する燃料電池と、炭化水素を主体とする原燃料を、水蒸気を用いて改質し、前記燃料電池に供給する前記燃料ガスを生成する改質器と、水を蒸発させて、前記改質器に供給する前記水蒸気を生成する蒸発器と、前記燃料排ガスと前記酸化剤排ガスとを排ガス燃焼室の内部で燃焼させて、燃焼排ガスとする燃焼器と、前記排ガス燃焼室の少なくとも一部、前記改質器及び前記蒸発器を収容する補機ケースと、を備える燃料電池モジュールであって、互いに隣接して設けられる前記改質器及び前記蒸発器のそれぞれは、その並列方向視で前記排ガス燃焼室の外周の少なくとも一部を囲む方向に延在し、前記補機ケースは、前記改質器及び前記蒸発器の外周を、間隔を置いて囲み、前記蒸発器の延在方向の両端部同士は離間し、前記蒸発器と前記補機ケースとは、1箇所の第1接続部のみにより接続され、前記蒸発器と前記改質器とは、1箇所の第2接続部のみにより接続され、前記改質器の延在方向の両端部同士は離間し、前記改質器と前記補機ケースとは、1箇所の第3接続部のみにより接続される。
【発明の効果】
【0011】
通常、改質器及び蒸発器は、排ガス燃焼室の温度よりも低い温度で動作する。このため、改質器及び蒸発器のそれぞれを、排ガス燃焼室の外周の少なくとも一部を囲むように配設することで、排ガス燃焼室の熱を改質器及び蒸発器に伝えることができる。これによって、排ガス燃焼室の壁部等が過度に昇温することを抑制できるため、燃料電池モジュールの動作時に、排ガス燃焼室の壁部等がその耐久性が低下するような温度まで昇温することを抑制できる。
【0012】
改質器及び蒸発器のそれぞれの外周と、補機ケースとの間には間隔が設けられている。また、蒸発器及び改質器のそれぞれは、延在方向の一端と他端とが互いに離間する形状である。さらに、蒸発器と補機ケースとは1箇所の第1接続部のみにより接続され、蒸発器と改質器とは1箇所の第2接続部のみにより接続され、改質器と補機ケースとは1箇所の第3接続部のみによって接続されている。つまり、改質器と、蒸発器と、補機ケースとのそれぞれの拘束が必要最低限となっている。
【0013】
これらから、補機ケース内において、蒸発器及び改質器のそれぞれは、拘束の少ない自由な変形(応力の発生が抑制された変形)をし易くなっている。このため、改質器、蒸発器、補機ケース、第1接続部、第2接続部、第3接続部等のそれぞれに、温度変化による熱ひずみが生じても熱応力が生じることを抑制できる。
【0014】
以上から、この燃料電池モジュールによれば、温度変化による耐久性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池モジュールの全体構成図である。
【
図2】
図1の燃料電池モジュールにおける流体の流れを説明するためのブロック図である。
【
図3】補機ケースの内部及び排ガス燃焼室の内部を説明する要部断面図である。
【
図4】補機ケース及び排ガス燃焼室の全体を説明する斜視図である。
【
図5】蒸発器収容室の内部を説明する斜視図である。
【
図7】改質器収容室の内部を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る燃料電池モジュールについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図において、同一又は同様の機能及び効果を奏する構成要素に対しては同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0017】
図1に示すように、本実施形態では、燃料電池モジュール10が定置用である場合を例に挙げて説明するが、特にこれに限定されるものではなく、車載用等の種々の用途に用いることができる。燃料電池モジュール10は、全体として、例えば、略直方体形状に構成された燃料電池ユニット12と、該燃料電池ユニット12を収容するケーシング14とを備える。また、燃料電池ユニット12とケーシング14との間には断熱層(不図示)が設けられている。
【0018】
図1に示すように、燃料電池ユニット12では、熱交換器16と、蒸発器18と、改質器20と、燃焼器22と、燃料電池24とが、鉛直方向(矢印X方向)の下側(矢印X1側)から上側(矢印X2側)に向かって概ねこの順に配設されている。また、燃料電池ユニット12は、燃焼器22を収容する排ガス燃焼室26と、蒸発器18及び改質器20を収容する補機ケース28とをさらに備える。
【0019】
図4に示すように、排ガス燃焼室26は、鉛直方向視の燃料電池ユニット12の略中央に配設される。また、
図1に示すように、排ガス燃焼室26は、燃料電池ユニット12の鉛直方向において燃料電池24と熱交換器16との間に配設される。具体的には、排ガス燃焼室26は、互いに連通する第1室30と、第2室32と、第3室33とを有する。第1室30と、第2室32と、第3室33とは、鉛直方向の下側(矢印X1側)から上側(矢印X2側)に向かってこの順に並ぶ。換言すると、第1室30と、第2室32と、第3室33とが並ぶ並列方向は鉛直方向(矢印X方向)に沿う。
【0020】
本実施形態では、
図3及び
図5に示すように、第1室30を形成する第1壁30aは、上面が開口し下面が閉塞された筐体状である。つまり、第1壁30aは、第1外周壁30bと、第1底壁30cとを有する。
図5に示すように、第1外周壁30bを形成する4個の外壁面のうちの3個は、蒸発器18と間隔を置いて対向している。
【0021】
このため、鉛直方向視において、蒸発器18は、第1外周壁30bの3個の外壁面を囲うコの字形状(C字形状、U字形状)である。また、蒸発器18の上壁には、該蒸発器18の延在方向に間隔を置いて複数(本実施形態では3個)の凹形状の第1位置決め部18aが設けられている。この第1位置決め部18aの詳細については後述する。
【0022】
図3に示すように、第1底壁30cの外周縁部には、該第1底壁30cの熱変形を吸収する凹凸部31aが設けられている。本実施形態では、凹凸部31aは、第1室30(排ガス燃焼室26)の内部側に陥没するように、第1底壁30cの外周縁部に沿って設けられた溝形状であることとする。しかしながら、特にこれらに限定されるものではなく、凹凸部31aは、第1底壁30c等が温度変化しても、熱応力が生じることを抑制可能となるような形状及び配置であればよい。これは、以下に説明する全ての凹凸部31b~31iにおいて同様であり、凹凸部31b~31iは、それぞれが設けられた壁部に関し、温度変化による熱応力の発生を抑制可能となる形状及び配置であればよい。なお、
図3を除く図面では、凹凸部31a~31iの図示を省略している。
【0023】
第1室30(第1壁30a)及び蒸発器18は、補機ケース28の底部に設けられた蒸発器収容室34に収容されている。
図1及び
図3に示すように、第1室30の第1外周壁30bの下端には、第1底壁30cよりも下側に突出する突部30dが、部分的(例えば、鉛直方向視の四隅等)に設けられている。
【0024】
突部30dが補機ケース28の底壁28aに当接することで、第1室30の第1底壁30cと、補機ケース28の底壁28aとの間には、空間36が形成されている。第1底壁30cと補機ケース28とは、突部30dを介して互いに相対移動可能に当接するのみであり接続(接合)はされていない。補機ケース28の底壁28aには、突部30dが当接する部分の内周縁部と、該底壁28aの外周縁部とのそれぞれに、補機ケース28等の熱変形を吸収する凹凸部31b、31cが設けられている。
【0025】
図5に示すように、補機ケース28(蒸発器収容室34の周壁)は、蒸発器18の外周を、間隔を置いて囲む。また、補機ケース28の底壁28aに対しては、蒸発器18の底部の一部のみが当接している。補機ケース28の底壁28aと、蒸発器18の底部の一部とは、互いに相対移動可能に当接するのみであり、接続(接合)はされていない。後述するように蒸発器18に接続される原燃料導入配管100と、補機ケース28(蒸発器収容室34)の側壁(周壁)との接続箇所である第1接続部37aのみによって、蒸発器18と補機ケース28とは接続されている。
【0026】
本実施形態では、
図3及び
図7に示すように、第2室32を形成する第2壁32a(壁部)は、上面及び下面が開口した略角筒形状である。また、
図7に示すように、第2壁32aの周方向の一部には、鉛直方向(矢印X方向)に沿ったスリット状の燃焼室出口38が設けられている。第2壁32aの全体は、改質器20と共有の共有壁40である。つまり、第2壁32a(共有壁40)は、排ガス燃焼室26の第2室32を形成するとともに改質器20の内周壁を形成する。
【0027】
このため、本実施形態の改質器20は、鉛直方向視で、燃焼室出口38を除く第2室32の外周を囲む方向に延在する枠形状(コの字形状、C字形状、U字形状)である。また、改質器20の延在方向(周方向)の両端部は互いに離間し、該両端部同士の間に燃焼室出口38が設けられている。
図3に示すように、改質器20の底壁の周縁部及び上壁の周縁部のそれぞれには、改質器20の壁部の熱変形を吸収する凹凸部31d、31eが設けられている。
【0028】
図3及び
図7に示すように、第2室32及び改質器20は、補機ケース28の内部に設けられた改質器収容室42に収容されている。補機ケース28の内部を区画壁44によって鉛直方向の上下に区画した下側に蒸発器収容室34が形成され、上側に改質器収容室42が形成されている。
【0029】
図6に示すように、区画壁44は、鉛直方向視の略中央に第2室32及び第1室30を連通させる開口44aが設けられた枠形状である。つまり、
図3に示すように、改質器収容室42には、第1室30よりも外周側の底部に区画壁44が設けられている。区画壁44には、改質器収容室42(
図3、
図7)と蒸発器収容室34とを連通する収容室連通口44bが設けられている。
図3に示すように、区画壁44の外周縁部には、該区画壁44の熱変形を吸収する凹凸部31fが設けられている。
【0030】
図6及び
図9に示すように、区画壁44には、蒸発器18の上壁に設けられた第1位置決め部18aと当接することで、蒸発器18と区画壁44との位置決めを行う第2位置決め部44cが設けられている。これらの第1位置決め部18a及び第2位置決め部44cは、相対移動可能に当接するのみであり、接続(接合)はされていない。また、第1位置決め部18a及び第2位置決め部44cの個数や形状は特に限定されるものではない。例えば、蒸発器18と区画壁44との間には、1組のみ、又は3組以外の複数組の第1位置決め部18a及び第2位置決め部44cが設けられていてもよい。さらに、第1位置決め部18aは凹形状に代えて凸形状等であってもよい。
【0031】
図3及び
図4に示すように、改質器収容室42の上部は、上壁46で閉塞されている。このため、改質器収容室42は、鉛直方向視で、第2室32を除く部分が、枠形状の上壁46によって覆われる。
図3に示すように、補機ケース28の上壁46の内周縁部及び外周縁部のそれぞれには、該上壁46の熱変形を吸収する凹凸部31g、31hが設けられている。
【0032】
改質器収容室42の内部において、改質器20の共有壁40を除く外壁面(外底面20a、外周面20b、外上面20c)と、改質器収容室42の内壁面(内底面42a、内周面42b、内上面42c)とが離間して配設されることで、互いの間に空間が形成されている。つまり、補機ケース28(改質器収容室42の周壁)は、改質器20の外周を、間隔を置いて囲む。
【0033】
補機ケース28の上端側(矢印X2側)には、第3室33を形成する第3壁33aの下端側(矢印X1側)が連結されている。第3壁33aは、下面が開口し上面が閉塞された筐体状である。第3壁33aの下端部(矢印X1側端部)が、枠形状の上壁46の内周縁部(開口周縁部)に接続される。これによって、第3壁33a内の第3室33と第2壁32a内の第2室32とが連通する。
【0034】
第3室33の内部には、燃焼器22と、燃焼器22に後述する酸化剤排ガスを供給する酸化剤排ガス流路50の一部と、燃焼器22に後述する燃料排ガスを供給する燃料排ガス流路52の一部とが配設される。なお、第3室33の内部の詳細は後述する。
図3に示すように、第3壁33aの上壁33bの外周縁部には、該上壁33bの熱変形を吸収する凹凸部31iが設けられている。
【0035】
排ガス燃焼室26内には、第3室33側から第2室32を経て第1室30側まで、鉛直方向に延在するガイド壁54が設けられている。なお、
図5~
図7では、ガイド壁54の図示を省略している。本実施形態では、排ガス燃焼室26の内部であって、燃焼室出口38(
図4及び
図7)の近傍に1個のガイド壁54が設けられることとするが、ガイド壁54が設けられる場所や個数は特に限定されるものではなく、ガイド壁54は複数設けられていてもよい。また、ガイド壁54は全体として鉛直方向に延在していればよく、不図示の湾曲部や傾斜部が設けられていてもよい。
【0036】
図3に示すように、補機ケース28の内部において、第1壁30aの上端及び第2壁32aの下端の間と、第2壁32aの上端及び第3壁33aの下端の間とのそれぞれには遮断部材56a、56bが設けられている。これらの遮断部材56a、56bによって、排ガス燃焼室26の内部と補機ケース28の内部との連通が遮断されている。また、第1壁30aの上端及び第2壁32aの下端の間に設けられた遮断部材56aは、改質器20の外底面20aと、改質器収容室42の内底面42a(区画壁44の上面)との間にも介在する。これによって、改質器20の外底面20aと、改質器収容室42の内底面42aとが離間した状態で維持される。
【0037】
図1に示すように、第3室33よりも上側(矢印X2側)には、燃料電池24が配設されている。燃料電池24は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)であり、本実施形態では、平板状の発電セル60を鉛直方向(矢印X方向)に複数積層することで形成されたスタックの形態からなる。なお、燃料電池24は、複数の円筒状の発電セル(不図示)を電気的に接続して形成されてもよい。
【0038】
発電セル60は、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質62の両面に、カソード電極64及びアノード電極66が設けられた電解質・電極接合体68(MEA)を備える。電解質・電極接合体68の両側には、カソードセパレータ70とアノードセパレータ72とが配設される。カソードセパレータ70には、カソード電極64に空気等の酸素(O2)含有ガスである酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス系流路74の一部が形成される。アノードセパレータ72には、アノード電極66に水素(H2)含有ガスである燃料ガスを供給する燃料ガス系流路76の一部が形成される。
【0039】
燃料電池24では、燃料ガス系流路76を介してアノード電極66に供給された燃料ガスと、酸化剤ガス系流路74を介してカソード電極64に供給された酸化剤ガスとが電気化学反応により消費され、発電が行われる。電気化学反応で消費されなかった残余の燃料ガスである燃料排ガスは、燃料排ガス流路52の一部を形成する燃料排ガス配管78に排出される。電気化学反応で消費されなかった残余の酸化剤ガスである酸化剤排ガスは、酸化剤排ガス流路50の一部を形成する酸化剤排ガス配管80に排出される。
【0040】
図3に示すように、酸化剤排ガス配管80の下流側は、第3室33の第3壁33aを略水平方向に貫通し、第3室33内の流路空間82に開口する。流路空間82は、第3室33の内部で酸化剤排ガス流路50の一部を形成する空間である。つまり、燃料電池24(
図1)から排出された酸化剤排ガスは、酸化剤排ガス配管80を介して第3室33の流路空間82に流入する。
【0041】
一方、燃料排ガス配管78の下流側は、第3室33の第3壁33aを水平方向に貫通し、該第3室33内の上方(流路空間82)において、燃焼器22の燃料排ガスノズル22aに接続されている。つまり、燃料電池24から排出された燃料排ガスは、燃料排ガス配管78を介して燃料排ガスノズル22aに供給される。このように燃料排ガス流路52の一部は、第3室33の内部に配設されている。
【0042】
第3室33の内部は、仕切板84によって上下方向に仕切られ、仕切板84よりも上側に流路空間82が形成され、仕切板84よりも下側に第2室32と連通する燃焼空間86が形成されている。
図3及び
図8に示すように、燃焼器22の燃料排ガスノズル22aは、仕切板84に貫通形成された挿通孔84aに挿通されることで、流路空間82と燃焼空間86とに亘って鉛直方向に延在している。このため、燃料排ガスノズル22aの下流側は、燃焼空間86に配設されている。燃料排ガスノズル22aの外径と、仕切板84の挿通孔84aの径とが略同じに設定されること等によって、燃料排ガスノズル22aの外周面と、仕切板84の挿通孔84aの内周面との間は気密となっている。
【0043】
燃料排ガスノズル22aは、下端部が閉塞された筒状である。また、燃料排ガスノズル22aの燃焼空間86に配設された部分には、その周壁を貫通する複数の燃料排ガス噴射孔88が形成されている。このため、
図3に実線の矢印で示すように、燃料排ガス配管78内の燃料排ガス流路52から燃料排ガスノズル22aに供給された燃料排ガスは、燃料排ガス噴射孔88から燃焼空間86の内部に略水平方向に噴射される。
【0044】
燃焼器22は、排ガス燃焼室26(第1室30、第2室32、第3室33の燃焼空間86)の内部で、酸化剤排ガス及び燃料排ガスを燃焼させて燃焼排ガスを生成するものであり、上記の燃料排ガスノズル22aの他に、酸化剤排ガス整流部22bと、不図示の着火器とを有する。酸化剤排ガス整流部22bは、仕切板84に貫通形成された酸化剤排ガス噴射孔90と、流路空間82で酸化剤排ガス噴射孔90を覆う整流カバー92とを有する。
【0045】
酸化剤排ガス噴射孔90は、仕切板84の挿通孔84aよりも外周側の周縁部に、周方向に互いに間隔を置いて複数設けられ、整流カバー92の内部と燃焼空間86とを連通させる。なお、
図4及び
図8に示すように、酸化剤排ガス噴射孔90は、鉛直方向視で、挿通孔84a(
図8)の径方向の外側の曲率半径よりも中心側の曲率半径が小さいオーバル形状となっていることが好ましい。
【0046】
これらの酸化剤排ガス噴射孔90は、仕切板84に対し、挿通孔84aの径方向の外側に、該挿通孔84aと間隔を置いて配設されている。このため、仕切板84の挿通孔84aと酸化剤排ガス噴射孔90との間には板状部84bが設けられている。
【0047】
図8に示すように、整流カバー92は、下端に設けられるフランジ部92aと、フランジ部92aの内周縁部から上側に向かうに連れて縮径するテーパ状部92bと、テーパ状部92bの上端から径方向の中心側に延在するドーナツ状(リング状)の上壁部92cとが一体に設けられている。なお、フランジ部92a、テーパ状部92b、上壁部92cは同一材料から一体に形成されてもよいし、別部材から形成された後に一体化されてもよい。
【0048】
整流カバー92のフランジ部92aの下面は、仕切板84の酸化剤排ガス噴射孔90よりも外周側に当接する。上壁部92cの径方向の中心に設けられた開口には、燃料排ガスノズル22aが挿通される。上壁部92cの開口の径は、燃料排ガスノズル22aの外径よりも大きく設定されている。このため、燃料排ガスノズル22aの外周面と、上壁部92cの開口の内周面との間には、酸化剤排ガス入口92dが形成されている。酸化剤排ガス入口92dは、流路空間82内の酸化剤排ガスを整流カバー92と仕切板84との間に流入可能とする。
【0049】
鉛直方向視で、酸化剤排ガス入口92dの大部分は、仕切板84の板状部84bに臨む。また、酸化剤排ガス入口92dから流入した酸化剤排ガスは、テーパ状部92bに沿って径方向の外側に向かいながら下側に流通する。これらによって、
図3に一点鎖線の矢印で示すように、酸化剤排ガス噴射孔90から燃焼空間86に噴射される酸化剤排ガスは、燃料排ガスノズル22aの径方向の外側に向かいながら下側へと末広がりに流通する。
【0050】
着火器は、燃焼空間86の燃料排ガス噴射孔88及び酸化剤排ガス噴射孔90の近傍に配設される。また、着火器は、燃料排ガス噴射孔88から噴射された燃料排ガス及び酸化剤排ガス噴射孔90から噴射された酸化剤排ガスに、例えば、燃料電池モジュール10の起動時等に着火させて燃焼反応を開始させる。なお、着火器としては、点火装置や、点火ヒータ等を用いることができる。
【0051】
上記のようにして、燃焼器22では、排ガス燃焼室26内の火炎に向かって酸化剤排ガス及び燃料排ガスを噴射することで、酸化剤排ガス及び燃料排ガスを燃焼させる。その結果、排ガス燃焼室26の温度が、例えば、約700℃に上昇するとともに、約700℃の燃焼排ガスが生成される。この燃焼排ガスは、
図3に破線の矢印で示すように、ガイド壁54によって、排ガス燃焼室26内を第3室33側から第2室32を経て第1室30の内部に流通した後に、第2室32の第2壁32aに設けられた燃焼室出口38(
図4及び
図7)へと導かれる。燃焼室出口38を介して排ガス燃焼室26から排出された燃焼排ガスは、上記の通り、改質器20の外壁面と改質器収容室42の内壁面との間に形成された空間を流通することで、改質器20と熱交換し、改質器20を加熱する。
【0052】
改質器収容室42で改質器20と熱交換した燃焼排ガスは、補機ケース28の区画壁44に設けられた収容室連通口44b(
図6)を介して蒸発器収容室34に流入する。蒸発器収容室34の内部では、第1室30及び蒸発器18と、燃焼排ガスとが熱交換することで、排ガス燃焼室26が保温されるとともに蒸発器18が加熱される。
【0053】
蒸発器収容室34の内部で第1室30及び蒸発器18と熱交換した燃焼排ガスは、
図4~
図7に示すように、補機ケース28の底壁28aに設けられた燃焼排ガス出口94を介して蒸発器収容室34から排出される。
図1、
図4~
図7に示すように、燃焼排ガス出口94には、燃焼排ガス配管96が接続されている。
図1に示すように、燃焼排ガス配管96は、補機ケース28と熱交換器16とを接続する。つまり、蒸発器収容室34から排出された燃焼排ガスは、燃焼排ガス配管96を介して熱交換器16に供給される。
【0054】
熱交換器16は、酸化剤ガス供給源(不図示)から供給された酸化剤ガスと、上記のように燃焼排ガス配管96を介して供給された燃焼排ガスとを熱交換させる。これによって、燃料電池24に供給する前の酸化剤ガスを予熱(加熱)する。つまり、熱交換器16で予熱された酸化剤ガスが、酸化剤ガス系流路74の一部を形成する酸化剤ガス供給配管98を介して燃料電池24に供給される。
【0055】
一方、蒸発器18は、燃料ガス供給源(不図示)から、例えば、都市ガスやプロパンガス等の炭化水素を主体とする原燃料が供給されるとともに、水供給源(不図示)から水が供給される。なお、原燃料及び水は共通の原燃料導入配管100(
図1、
図4~
図7)を介して蒸発器18の内部に供給される。蒸発器18は、上記のように蒸発器収容室34内において燃焼排ガスと熱交換することにより、原燃料を予熱するとともに水を蒸発させて水蒸気とする。蒸発器18の動作温度は、例えば、100℃~200℃である。
【0056】
なお、
図4~
図7に示すように、原燃料導入配管100は、補機ケース28(蒸発器収容室34)の側壁(周壁)を貫通して延在する。この貫通部分において原燃料導入配管100と補機ケース28とが接続されて上記の第1接続部37aが形成されている。
【0057】
図1、
図4及び
図7に示すように、蒸発器18で得られた水蒸気及び予熱された原燃料は、蒸発器18と改質器20とを接続する接続管102を介して改質器20の内部に供給される。蒸発器18と改質器20とは、接続管102を介した第2接続部37bのみによって接続されている。また、接続管102は、区画壁44に設けられた貫通孔44d(
図4、
図6及び
図7)に挿通されることで、蒸発器収容室34と改質器収容室42とに亘って延在するが、接続管102と区画壁44とは接続(接合)されていない。
【0058】
改質器20では、水蒸気及び原燃料から水素を生成する水蒸気改質反応を生じさせて、燃料ガスを生成する。改質器20及び該改質器20の内部に設けられた改質触媒(不図示)が、例えば、約600℃~700℃である場合に安定して水蒸気改質反応を生じさせることができる。また、水蒸気改質反応は、吸熱反応であること等から、改質器20で良好に燃料ガスを生成するためには、該改質器20の外部から継続的に熱を加えることが好ましい。
【0059】
本実施形態では、上記の通り、改質器収容室42の内部における燃焼排ガスとの熱交換により改質器20に外部から継続的に熱を加えることができる。また、改質器20と排ガス燃焼室26とが共有の共有壁40とを有することにより、排ガス燃焼室26の熱を改質器20に継続的に加えることができる。これらによって、水蒸気改質反応を良好に生じさせて、燃料ガスを得ることができる。改質器20で得られた燃料ガスは、改質器20と燃料電池24とを接続して燃料ガス系流路76の一部を形成する燃料ガス供給配管104を介して燃料電池24に供給される。
【0060】
図1に示すように、燃料ガス供給配管104の上流側は、改質器収容室42の内部で改質器20に接続される。また、燃料ガス供給配管104の下流側は、補機ケース28の外側且つケーシング14の内側で燃料電池24に接続される。
図1、
図3、
図4、
図7に示すように、燃料ガス供給配管104の上流側と下流側の間は、補機ケース28(改質器収容室42)の側壁(周壁)を貫通し、この貫通部分において燃料ガス供給配管104と補機ケース28とが接続されている。燃料ガス供給配管104と、補機ケース28の側壁との接続箇所である第3接続部37cのみによって、改質器20と補機ケース28とが接続されている。
【0061】
基本的には上記のように構成される燃料電池モジュール10の動作について、燃料電池ユニット12を流通する流体の流れに沿って説明する。
【0062】
図2に示すように、燃料電池モジュール10の運転時には、酸化剤ガス供給源から不図示の酸化剤ガス導入配管を介して熱交換器16に酸化剤ガスが供給される。また、燃料ガス供給源からの原燃料と、水供給源からの水とが原燃料導入配管100を介して蒸発器18の内部に供給される。
【0063】
熱交換器16に供給された酸化剤ガスは、燃焼排ガスとの熱交換により加熱された後、
図1に示すように、酸化剤ガス供給配管98を通って燃料電池24の各発電セル60に設けられた酸化剤ガス系流路74にそれぞれ供給される。
【0064】
一方、蒸発器18の内部に供給された原燃料及び水は、蒸発器収容室34における蒸発器18の壁部を介して燃焼排ガスと熱交換することにより加熱される。これによって昇温した原燃料と、水が蒸発して生成された水蒸気とは、接続管102を通って改質器20の内部に供給される。
【0065】
改質器20では、原燃料及び水蒸気を水蒸気改質反応させることにより燃料ガスを生成する。この際、改質器20は、改質器収容室42において燃焼排ガスと熱交換することや、共有壁40を介して排ガス燃焼室26の熱が伝えられることにより、好適な動作温度に維持されている。また、上記の通り蒸発器18で加熱された原燃料が水蒸気とともに改質器20に供給されるため、未加熱の原燃料が供給される場合に比して、改質器20の温度を良好に高温に維持することができる。改質器20で得られた燃料ガスは、燃料ガス供給配管104を通って燃料電池24の各発電セル60に設けられた燃料ガス系流路76にそれぞれ供給される。
【0066】
燃料電池24の各発電セル60では、熱交換器16を介して酸化剤ガス供給配管98から供給された酸化剤ガスと、蒸発器18及び改質器20を介して燃料ガス供給配管104から供給された燃料ガスとを電気化学反応させて発電する。また、電気化学反応で消費されなかった酸化剤ガスを酸化剤排ガスとして酸化剤排ガス配管80に排出し、電気化学反応で消費されなかった燃料ガスを燃料排ガスとして燃料排ガス配管78に排出する。
【0067】
燃料排ガス配管78に排出された燃料排ガスは、
図3に示すように、排ガス燃焼室26の第3室33(流路空間82)の内部に設けられた燃料排ガス配管78の下流側を通って燃料排ガスノズル22aに供給される。燃料排ガスノズル22aは、燃料排ガス噴射孔88から燃焼空間86の内部に略水平方向に燃料排ガスを噴射する。
【0068】
一方、酸化剤排ガス配管80に排出された酸化剤排ガスは、第3室33内の上部において酸化剤排ガス流路50の一部を形成する流路空間82に流入する。流路空間82では、整流カバー92に設けられた酸化剤排ガス入口92dを介して整流カバー92と仕切板84との間に酸化剤排ガスが流入する。そして、仕切板84に設けられた酸化剤排ガス噴射孔90を介して、第3室33の下部に設けられた燃焼空間86に酸化剤排ガスが噴射される。
【0069】
このように噴射される酸化剤排ガスは、上記の通り、燃料排ガスノズル22aの径方向の外側に向かいながら下側に流通するため、酸化剤排ガスが燃料排ガス噴射孔88に向かって吹き付けられることを回避できる。つまり、排ガス燃焼室26の内部において、燃料排ガスの燃焼により生じる火炎が、酸化剤排ガスによって吹き消されることを抑制でき、酸化剤排ガス及び燃料排ガスの燃焼反応を良好に生じさせることが可能になる。
【0070】
また、上記のようにして、燃料排ガス噴射孔88から噴射された燃料排ガスと、酸化剤排ガス噴射孔90から噴射された酸化剤排ガスとは、排ガス燃焼室26内を流通しながら燃焼することによって燃焼排ガスとなる。排ガス燃焼室26の内部には、上記の通り、第3室33側から第1室30側まで鉛直方向に延在するガイド壁54が設けられている。
【0071】
このガイド壁54によって、燃料排ガス及び酸化剤排ガスは、排ガス燃焼室26の上側(第3室33の燃焼空間86及び第2室32側)から下側の第1室30に向かって流通するように導かれながら燃焼する。つまり、ガイド壁54は、例えば、燃料排ガス噴射孔88から噴射された燃料排ガスと、酸化剤排ガス噴射孔90から噴射された酸化剤排ガスが、第2室32の燃焼室出口38(
図4及び
図7)に直接向かうことを抑制できる。
【0072】
排ガス燃焼室26で生じた燃焼排ガスは、
図4及び
図7に示す第2室32の燃焼室出口38から、改質器20の外壁面と改質器収容室42の内壁面との間に排出される。改質器収容室42の内部において、燃焼排ガスは、改質器20の外壁面と改質器収容室42の内壁面との間に形成された空間を流通する。これによって、
図3の改質器20の共有壁40を除く外壁面(外底面20a、外周面20b、外上面20c)を介して改質器20と燃焼排ガスとが熱交換されるため、改質器20が効率的に加熱される。
【0073】
改質器収容室42を流通した燃焼排ガスは、区画壁44の収容室連通口44bを介して蒸発器収容室34に流入する。
図3に示すように、蒸発器収容室34の内部では、第1室30の第1外周壁30bと蒸発器18との間や、第1室30の第1底壁30cと補機ケース28の内底面との間の空間36を燃焼排ガスが流通する。これによって、蒸発器18が燃焼排ガスとの熱交換により加熱されるため、上記の通り、蒸発器18の内部で原燃料が加熱されるとともに水蒸気が生成される。また、燃焼排ガスと第1壁30aとが熱交換して、排ガス燃焼室26が保温される。
【0074】
蒸発器収容室34を流通した燃焼排ガスは、補機ケース28の底壁28aに設けられた燃焼排ガス出口94から燃焼排ガス配管96を通って、
図1の熱交換器16に供給される。熱交換器16において酸化剤ガスと熱交換し、該酸化剤ガスを加熱した後の燃焼排ガスは、例えば、不図示の凝縮器に供給され、該燃焼排ガスに含まれる水分が回収された後、燃料電池モジュール10の外部に排気される。
【0075】
この際、上記の通り、燃焼排ガスは、酸化剤排ガスと燃料排ガスとを燃焼反応させて生成されたものであり、未消費の燃料ガス(燃料排ガス)の含有量が十分に低くなっている。このため、燃焼排ガスとともに未消費の燃料ガスが排気されることを容易に抑制できる。
【0076】
以上から、本実施形態に係る燃料電池モジュール10では、改質器20及び蒸発器18が、排ガス燃焼室26の温度よりも低い温度で動作する。このため、改質器20及び蒸発器18のそれぞれを、排ガス燃焼室26の外周の少なくとも一部を囲むように配設することで、排ガス燃焼室26の熱を改質器20及び蒸発器18に伝えることができる。これによって、排ガス燃焼室26の壁部(第1壁30a、第2壁32a、第3壁33a)等が過度に昇温することを抑制できるため、燃料電池モジュール10の動作時に、排ガス燃焼室26の壁部等がその耐久性が低下するような温度(以下、回避温度ともいう)まで昇温することを抑制できる。
【0077】
改質器20及び蒸発器18のそれぞれの外周と、補機ケース28との間には間隔が設けられている。また、蒸発器18及び改質器20のそれぞれは、延在方向の一端と他端とが互いに離間する形状である。さらに、蒸発器18と補機ケース28とは1箇所の第1接続部37aのみにより接続され、蒸発器18と改質器20とは1箇所の第2接続部37bのみにより接続され、改質器20と補機ケース28とは1箇所の第3接続部37cのみによって接続されている。つまり、改質器20と、蒸発器18と、補機ケース28とのそれぞれの拘束が必要最低限となっている。
【0078】
これらから、補機ケース28内において、蒸発器18及び改質器20のそれぞれは、拘束の少ない自由な変形(応力の発生が抑制された変形)をし易くなっている。このため、改質器20、蒸発器18、補機ケース28、第1接続部37a、第2接続部37b、第3接続部37c等のそれぞれに、温度変化による熱ひずみが生じても熱応力が生じることを抑制できる。従って、この燃料電池モジュール10によれば、温度変化による耐久性の低下を抑制することができる。
【0079】
上記の実施形態に係る燃料電池モジュール10では、補機ケース28及び排ガス燃焼室26を形成する壁部の少なくとも一部(例えば、底壁28a、第1底壁30c、上壁33b、区画壁44、上壁46、改質器20の上壁及び底壁等)に、熱変形を吸収する凹凸部31a~31iが設けられていることとした。この場合、補機ケース28や排ガス燃焼室26を形成する壁部の温度が変化しても、該補機ケース28や壁部に熱応力が生じることを抑制できるため、一層効果的に燃料電池モジュール10の耐久性を高めることができる。
【0080】
上記の実施形態に係る燃料電池モジュール10では、排ガス燃焼室26は、互いに連通する第1室30及び第2室32と、排ガス燃焼室26内の燃焼排ガスを排出する燃焼室出口38と、を有し、第1室30の外壁面の少なくとも一部は、蒸発器18と間隔をおいて対向し、第1室30の外壁面と蒸発器18との間には、燃焼室出口38から排出された燃焼排ガスが流通可能であり、第2室32を形成する第2壁32a(壁部)の少なくとも一部は、改質器20と共有の共有壁40であることとした。
【0081】
この場合、排ガス燃焼室26の熱が共有壁40から改質器20に直接伝えられるため、排ガス燃焼室26の温度が、改質器20の温度を超えて上昇すること、すなわち、回避温度となることを効果的に抑制できる。この際、改質器20は、回避温度より低い所定の高温域で動作するため、排ガス燃焼室26の温度が過度に低下することも抑制できる。さらに、排ガス燃焼室26の熱を利用して改質器20を加熱することもできる。なお、上記の実施形態では、排ガス燃焼室26が第3室33を備えることとしたが、排ガス燃焼室26は、第3室33を備えず、第2室32に燃焼器22が設けられることとしてもよい。
【0082】
また、蒸発器18と、排ガス燃焼室26の第1室30の外壁面との間に燃焼排ガスが流通するため、改質器20等に比して低い動作温度の蒸発器18との熱交換により降温した燃焼排ガスと第1室30とをさらに熱交換させることができる。これによっても、排ガス燃焼室26が回避温度となることを効果的に抑制できる。この際、第1室30の外壁面と蒸発器18とが離間して配置されることで、排ガス燃焼室26の壁部が蒸発器18によって過度に冷やされることも抑制できる。
【0083】
上記の実施形態に係る燃料電池モジュール10では、補機ケース28は、第1室30及び蒸発器18を収容する蒸発器収容室34と、第2室32及び改質器20を収容する改質器収容室42と、蒸発器収容室34と改質器収容室42とを区画する区画壁44と、を有し、第2室32に燃焼室出口38が設けられ、燃焼室出口38は、排ガス燃焼室26内の燃焼排ガスを、改質器20の外壁面と改質器収容室42の内壁面との間に流出可能とし、区画壁44には、改質器収容室42で改質器20と熱交換した燃焼排ガスを蒸発器収容室34に流通可能とする収容室連通口44bが設けられ、蒸発器収容室34には、第1室30及び蒸発器18と熱交換した燃焼排ガスを蒸発器収容室34から排出する燃焼排ガス出口94が設けられることとした。
【0084】
この場合、燃焼室出口38から流出した高温の燃焼排ガスを、改質器収容室42での改質器20との熱交換により降温させた後に、収容室連通口44bを介して蒸発器収容室34へと流入させることができる。このため、蒸発器収容室34では、上記の通り降温させた燃焼排ガスと第1室30とを熱交換させることができ、排ガス燃焼室26が回避温度となることを一層効果的に抑制できる。また、排ガス燃焼室26の熱を利用して改質器20や蒸発器18を良好に加熱することができる。
【0085】
上記の実施形態に係る燃料電池モジュール10では、改質器20の両端部同士の間に燃焼室出口38が設けられ、第2室32を形成する周壁の全体と、改質器20の内周壁の全体とが共有壁40であることとした。この場合、排ガス燃焼室26の熱を改質器20に一層良好に伝えることができるため、排ガス燃焼室26の壁部が回避温度となることを効果的に抑制できる。また、排ガス燃焼室26の熱を効果的に利用して改質器20を加熱することができる。
【0086】
上記の実施形態に係る燃料電池モジュール10では、排ガス燃焼室26の外底面と、補機ケース28の内底面との間に、空間36が形成されることとした。この場合、空間36の断熱効果によって排ガス燃焼室26の熱が補機ケース28に伝わることを抑制できるため、補機ケース28の温度上昇を抑制できる。その結果、補機ケース28、第1接続部37a、第3接続部37c等に、熱応力が生じることや、耐久性を低下させるような変形が生じることを効果的に抑制できる。
【0087】
上記の実施形態に係る燃料電池モジュール10では、排ガス燃焼室26の外底面と、補機ケース28の内底面との間に形成される空間36には、燃焼排ガスが流通可能であることとした。この場合、排ガス燃焼室26の第1底壁30cと燃焼排ガスとの熱交換によっても、排ガス燃焼室26の温度上昇を抑制することができる。これによって、排ガス燃焼室26が回避温度となることをさらに効果的に抑制できる。
【0088】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10…燃料電池モジュール 18…蒸発器
20…改質器 22…燃焼器
24…燃料電池 26…排ガス燃焼室
28…補機ケース 30…第1室
31a~31i…凹凸部 32…第2室
32a…第2壁 33…第3室
34…蒸発器収容室 36…空間
37a…第1接続部 37b…第2接続部
37c…第3接続部 38…燃焼室出口
40…共有壁 42…改質器収容室
44…区画壁 44b…収容室連通口
94…燃焼排ガス出口