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特許7186148作業機械および作業機械に用いられる冷却水タンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械に用いられる冷却水タンク
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20221201BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20221201BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20221201BHJP
   F01P 11/04 20060101ALI20221201BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20221201BHJP
   F01P 11/10 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
F01P11/00 C
F01P3/18 X
F01P3/20 B
F01P11/00 A
F01P11/04 C
E02F9/00 Q
F01P11/10 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019147508
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028480
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 耕介
(72)【発明者】
【氏名】内海 秀近
(72)【発明者】
【氏名】日高 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 凌
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-227340(JP,A)
【文献】特開2006-029206(JP,A)
【文献】特開2017-115819(JP,A)
【文献】特開2005-291131(JP,A)
【文献】特開2014-114702(JP,A)
【文献】実開昭58-149518(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
F01P 3/18
F01P 3/20
F01P 11/04
E02F 9/00
F01P 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの冷却水を貯留する冷却水タンクと、前記冷却水タンクとホースを介して接続されて前記エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、を備え、前記冷却水タンクは、長辺が車体の左右方向に沿って配置されたタンク本体と、前記タンク本体の天井部の上側に突出する上側筒部および前記天井部の下側に突出する下側筒部を有する筒体と、前記上側筒部の上端部に取り付けられて前記タンク本体内を加圧する圧力キャップと、前記タンク本体内に冷却水を給水するための給水口と、前記上側筒部の側面に配置されて前記タンク本体内の空気を外部に導くエア抜き用ホースが接続される接続部と、を有する作業機械において、
前記筒体は、
前記天井部における長辺方向の中央部分に配置され、
前記下側筒部の側面に設けられて前記タンク本体内と前記下側筒部内とを連通することで、前記タンク本体内の空気を、前記下側筒部内に流入させて、前記上側筒部の前記接続部に接続された前記エア抜き用ホースを通って外部に導く通気口と、
前記下側筒部の下端部を覆う板状部材と、を備えた
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記板状部材は、前記下側筒部の前記下端部における外径よりも大きく形成された鍔部を有する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記通気口は、前記下側筒部の側面における前記天井部に隣接する位置に配置されている
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記給水口は、前記天井部において前記圧力キャップが取り付けられた前記筒体よりも長辺方向の一端側に配置されている
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
エンジンの冷却水を貯留し、横長のタンク本体と、前記タンク本体の天井部の上側に突出する上側筒部および前記天井部の下側に突出する下側筒部を有する筒体と、前記上側筒部の上端部に取り付けられて前記タンク本体内を加圧する圧力キャップと、前記タンク本体内に冷却水を給水するための給水口と、前記上側筒部の側面に配置されて前記タンク本体内の空気を外部に導くエア抜き用ホースが接続される接続部と、を備えた、作業機械に用いられる冷却水タンクにおいて、
前記筒体は、
前記天井部における長辺方向の中央部分に配置され、
前記下側筒部の側面に設けられて前記タンク本体内と前記下側筒部内とを連通することで、前記タンク本体内の空気を、前記下側筒部内に流入させて、前記上側筒部の前記接続部に接続された前記エア抜き用ホースを通って外部に導く通気口と、
前記下側筒部の下端部を覆う板状部材と、を有する
ことを特徴とする作業機械に用いられる冷却水タンク。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械に用いられる冷却水タンクにおいて、
前記板状部材は、前記下側筒部の前記下端部における外径よりも大きく形成された鍔部を有する
ことを特徴とする作業機械に用いられる冷却水タンク。
【請求項7】
請求項5に記載の作業機械に用いられる冷却水タンクにおいて、
前記通気口は、前記下側筒部の側面における前記天井部に隣接する位置に配置されている
ことを特徴とする作業機械に用いられる冷却水タンク。
【請求項8】
請求項5に記載の作業機械に用いられる冷却水タンクにおいて、
前記給水口は、前記天井部において前記圧力キャップが取り付けられた前記筒体よりも長辺方向の一端側に配置されている
ことを特徴とする作業機械に用いられる冷却水タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの冷却水を貯留する冷却水タンクを備えた作業機械、およびその冷却水タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水タンクは、リザーブタンクやウォータータンク、エキスパンションタンク等とも呼ばれ、ホースによりラジエータと接続されている。例えば、エンジンの熱で冷却水が熱膨張した場合、エンジンおよびラジエータからオーバーフローした分の冷却水がホースを通って冷却水タンクに導かれて貯留される。また、冷却水タンクには、車体の振動等によって冷却水中に発生した泡(空気)がホースを介して導かれる。冷却水タンク内は加圧されており、冷却水タンク内の圧力が設定圧力を超えると、冷却水タンクの上端部に接続されたエア抜き用ホースから空気が外部へ抜かれる。
【0003】
このような冷却水タンクでは、車体の振動が大きくなると、内部の冷却水が揺動して跳ね上がりエア抜き用ホースを通って外部へ漏れ出すおそれがあるため、冷却水漏れを防止するため種々の対策が講じられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、一般の乗用車に搭載され、横断面が方形で上下方向に縦長な筒状容器状に形成されたリザーブタンクであって、リザーブタンクの外側面が凹む形状を有し、冷却水の貯留可能最高規定水位と注水パイプ部の連通口との間でリザーブタンクの内側面が突出する形状を有する溝部が設けられたものが開示されている。このリザーブタンクでは、車体の振動により内部の冷却水が跳ね上がった場合であっても、跳ね上がった冷却水は溝部の突出部分に当たり下方に向かって跳ね返る。これにより、注水パイプ部の連通口とは反対側の先端部に形成されたエア抜き用ホースとしての大気開放通路から外部に冷却水が漏れ出すことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-114702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業機械の一態様であるホイールローダに冷却水タンクを搭載するに際し、車体後方の視界を確保しなければならず、高さを抑えた形状の冷却水タンクが求められる。冷却水タンクの高さを抑えた場合、特許文献1に記載された乗用車用のリザーブタンクと比べて、冷却水の水面がエア抜き用ホースの位置に近くなってしまう。このような構成の冷却水タンクを搭載したホイールローダの車体が左右に傾くと、冷却水タンク内の冷却水は、冷却水タンクにおける左右端の壁に沿って波が立ち上がり、エア抜き用ホースから漏れ出しやすくなる。そのため、特許文献1に記載された溝部の構成をホイールローダ用の冷却水タンクの側面に適用しても、エア抜き用ホースからの冷却水の漏れ出しを防止するには不十分である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、冷却水タンクが搭載された作業機械において、冷却水タンク内の冷却水が外部へ漏れ出すことを効果的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、エンジンと、前記エンジンの冷却水を貯留する冷却水タンクと、前記冷却水タンクとホースを介して接続されて前記エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、を備え、前記冷却水タンクは、長辺が車体の左右方向に沿って配置されたタンク本体と、前記タンク本体の天井部の上側に突出する上側筒部および前記天井部の下側に突出する下側筒部を有する筒体と、前記上側筒部の上端部に取り付けられて前記タンク本体内を加圧する圧力キャップと、前記タンク本体内に冷却水を給水するための給水口と、前記上側筒部の側面に配置されて前記タンク本体内の空気を外部に導くエア抜き用ホースが接続される接続部と、を有する作業機械において、前記筒体は、前記天井部における長辺方向の中央部分に配置され、前記下側筒部の側面に設けられて前記タンク本体内と前記下側筒部内とを連通することで、前記タンク本体内の空気を、前記下側筒部内に流入させて、前記上側筒部の前記接続部に接続された前記エア抜き用ホースを通って外部に導く通気口と、前記下側筒部の下端部を覆う板状部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却水タンクが搭載された作業機械において、冷却水タンク内の冷却水が外部へ漏れ出すことを効果的に抑制することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るホイールローダの外観を示す側面図である。
図2】機械室の内部構造を示す左側面図である。
図3図2における冷却水タンクおよびラジエータを拡大した図である。
図4】冷却水タンクの構成を示す斜視図である。
図5】タンク本体の背面部を取り除いた状態の冷却水タンクの構成を示す平面図である。
図6】筒体と給水口との間における断面図である。
図7図4における筒体を拡大した図である。
図8】車体が振動したときの冷却水タンクの状態を示し、(a)は車体が右方向に揺れた場合、(b)は車体が左方向に揺れた場合である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る作業機械の一態様として、土砂や鉱物、木材チップ等の作業対象物を掘削してダンプトラック等へ積み込む荷役作業を行うホイールローダについて説明する。
【0012】
(ホイールローダ1の全体構成)
まず、ホイールローダ1の全体構成について、図1を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の外観を示す側面図である。
【0014】
ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵されるアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、車体前部となる前フレーム1Aと車体後部となる後フレーム1Bとが、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。
【0015】
前フレーム1Aには左右一対の前輪11Aが、後フレーム1Bには左右一対の後輪11Bが、それぞれ設けられており、車体全体では4つの車輪を備えている。なお、図1では、4つの車輪のうち、左側の前輪11Aおよび左側の後輪11Bのみを示している。
【0016】
ホイールローダ1は、例えば露天掘り鉱山等において、前フレーム1Aに取り付けられたフロント作業装置2を用いて土砂や鉱物等を掘削してダンプトラック等へ積み込む荷役作業を行う。
【0017】
フロント作業装置2は、前フレーム1Aに取り付けられたリフトアーム21と、リフトアーム21を駆動する2つのリフトアームシリンダ(不図示)と、リフトアーム21の先端部に取り付けられたバケット22と、バケット22を駆動するバケットシリンダ23と、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット22とバケットシリンダ23とのリンク機構を構成するベルクランク24と、2つのリフトアームシリンダやバケットシリンダ23へ圧油を導く複数の配管(不図示)と、を有している。
【0018】
リフトアーム21は、2つのリフトアームシリンダそれぞれのロッドが伸縮することにより、前フレーム1Aに対して上下方向に回動する。バケット22は、バケットシリンダ23のロッド230が伸縮することにより、リフトアーム21に対して上下方向に回動(チルトまたはダンプ)する。なお、バケット22は、例えばブレード等の各種アタッチメントに交換することが可能であり、バケット22を用いた掘削作業の他に、押土作業や除雪作業等の各種作業を行うこともできる。
【0019】
後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室31と、ホイールローダ1を駆動するために必要な各機器を内部に収容する機械室32と、車体が傾斜しないようにフロント作業装置2とのバランスを保つためのカウンタウェイト33と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室31は前部に、カウンタウェイト33は後部に、機械室32は運転室31とカウンタウェイト33との間に、それぞれ配置されている。
【0020】
(機械室32の内部構造)
次に、機械室32の内部構造について、図2および図3を参照して説明する。
【0021】
図2は、機械室32の内部構造を示す左側面図である。図3は、図2における冷却水タンク6とラジエータ7とを拡大した図である。なお、図3において、エンジン4の冷却水を砂地で示す。
【0022】
図2に示すように、機械室32の内部には、エンジン4と、エンジン4から排出された排ガスを処理する排ガス処理装置5と、エンジン4の冷却水(以下、単に「冷却水」とする)を貯留する冷却水タンク6と、冷却水を冷却するラジエータ7と、冷却風を生成する冷却ファン8と、が搭載されている。
【0023】
冷却水タンク6、ラジエータ7、および冷却ファン8は、機械室32におけるエンジン4および排ガス処理装置5の後方側に配置されており、前方から後方に向かって冷却水タンク6、ラジエータ7、冷却ファン8の順に並んでいる。
【0024】
ラジエータ7は、内部に設けられたラジエータコアに冷却水を通水し、ラジエータコアを通過する冷却風により熱交換を行って冷却水を冷却する。配管90を通った冷却水は、ラジエータ7で冷却されて再びエンジン4に戻る。
【0025】
冷却水タンク6は、主に、冷却水が熱膨張した際の冷却水のオーバーフロー分を貯留する。図3に示すように、ラジエータ7内が満水状態で冷却水が熱膨張すると、冷却水はラジエータ7から溢れ出し第1接続ホース91に導かれて冷却水タンク6に流れ込む。そして、冷却水が冷えると、冷却水タンク6内の冷却水は第2接続ホース92に導かれてエンジン4に流れ込む。
【0026】
なお、図3に示すように、冷却水タンク6には、内部に貯留されている冷却水の水面の高さを測定するサイトゲージ60が設けられており、ホイールローダ1が定置状態にあって車体に振動が発生していない場合、冷却水タンク6内の冷却水の水面はサイトゲージ60の上端となる冷却水基準高さSH(図3において一点鎖線で示す)に位置しており、ラジエータ7内は満水状態となっている。
【0027】
図2に示すように、冷却水タンク6は、機械室32の上方を覆う上面カバー320に、例えばボルト等を用いて取り付けられている。したがって、冷却水タンク6は、エンジン4よりも上側に配置されており、エンジン4内において冷却水に発生した泡(空気)は第3接続ホース93を通って冷却水タンク6内に導かれる。また、冷却水タンク6は、上部がラジエータ7の上部キャップ70の上面よりも上側に位置しており、ラジエータ7内において冷却水に発生した泡は第1接続ホース91を通って冷却水タンク6内に導かれる。
【0028】
このように、冷却水タンク6は、エンジン4やラジエータ7内における冷却水に発生した空気を抜いてキャビテーションの発生やエンジンの空焚きを防止する役割も担っている。冷却水タンク6内は加圧されており、冷却水タンク6内の圧力Pが予め設定された設定圧力Pthを超えると(P>Pth)、オーバーフロー分の空気がエア抜き用ホース94に導かれて外部へ排出される。
【0029】
ホイールローダ1では、運転室31に搭乗したオペレータの後方視野を広げるため、後部車体は高さ(上下方向の寸法)をできる限り抑えた設計とすることが望ましく、特に、機械室32内の上方側に配置された冷却水タンク6は、車体の左右方向に沿って細長い形状となっている。
【0030】
(冷却水タンク6の構成)
次に、冷却水タンク6の構成について、図4~8を参照して説明する。
【0031】
図4は、冷却水タンク6の構成を示す斜視図である。図5は、タンク本体61の背面部613を取り除いた状態の冷却水タンク6の構成を示す平面図である。図6は、筒体63と給水口64との間における断面図である。図7は、図4における筒体63を拡大した図である。図8(a)および図8(b)は、車体が振動したときの冷却水タンク6の状態を示し、図8(a)は車体が右方向に揺れた場合、図8(b)は車体が左方向に揺れた場合である。
【0032】
冷却水タンク6は、図4および図5に示すように、冷却水および空気が貯留されるタンク本体61と、タンク本体61内を加圧する圧力キャップ62と、圧力キャップ62が取り付けられる筒体63と、タンク本体61内に冷却水を給水するための給水口64と、を有する。
【0033】
タンク本体61は、横方向に長辺を有する横長の直方体状に形成された容器であり、機械室32内では、長辺が車体の左右方向に沿って配置される。図4に示すように、タンク本体61は、車体の上側に配置される天井部611と、車体の前側に配置される前面部612と、車体の後側に配置される背面部613と、車体の右側に配置される右側面部614と、車体の左側に配置される左側面部615と、車体の下側に配置される底面部616と、を含む。
【0034】
本実施形態では、図5に示すように、天井部611、前面部612、および背面部613はいずれも、底面部616よりも長辺方向の長さが長く、両端側が右側面部614および左側面部615よりも外側にそれぞれ張り出している。なお、前面部612および背面部613はそれぞれ、長辺方向の両端部が下側に向かうにつれて内側に切り欠かれている。また、図6に示すように、前面部612および背面部613はいずれも、右側面部614および左側面部615よりも高さ方向の長さが長く、底面部616よりも下側に張り出している。
【0035】
図4および図6に示すように、背面部613には、第1接続ホース91が接続される第1接続部671と、第2接続ホース92が接続される第2接続部672と、が取り付けられている。なお、第1接続ホース91は冷却水をラジエータ7からタンク本体61内に導き、第2接続ホース92は冷却水をタンク本体61内からエンジン4に導くため、第1接続部671および第2接続部672におけるタンク本体61内側の端部はそれぞれ、貯留された冷却水に浸かる位置に配置されている。また、図6に示すように、前面部612には、第3接続ホース93が接続される第3接続部673が取り付けられている。
【0036】
図4および図5に示すように、右側面部614には、サイトゲージ60が取り付けられている。本実施形態では、オペレータや作業員等が機械室32にアクセスする際には車体の右側からであることから、車体の右側に配置された右側面部614にサイトゲージ60を取り付けることにより測定がしやすくなっている。
【0037】
筒体63は、タンク本体61の天井部611の上側に突出する上側筒部631と、天井部611の下側(タンク本体61の内部側)に突出する下側筒部632と、を有しており、天井部611における長辺方向の中央部分に配置されている。
【0038】
上側筒部631は、上端部に圧力キャップ62が、側面にエア抜き用ホース94が接続される接続部631Aが、それぞれ取り付けられている。本実施形態では、接続部631Aは、タンク本体61の背面部613側(車体の後側)に向かって延出している。
【0039】
下側筒部632は、タンク本体61内と筒体63とを連通する通気口633と、下端部を覆う板状部材634と、を備える。
【0040】
本実施形態では、通気口633は、下側に向かって湾曲する半円状に形成され、下側筒部632の側面における天井部611に隣接する位置であって接続部631Aの下方の位置に配置されている。タンク本体61内のオーバーフロー分の空気は、通気口633から下側筒部632内に流入し、エア抜き用ホース94を通って外部へ導かれる。
【0041】
板状部材634は、円板状に形成されており、本実施形態では、下側筒部632の下端部における外径よりも大きく形成された鍔部634Aを有している。なお、板状部材634には、下側筒部632に溜まった冷却水を排出すると共に、タンク本体61内のオーバーフロー分の空気をエア抜き用ホース94に導くための小穴を設けてもよい。
【0042】
図8(a)および図8(b)に示すように、ホイールローダ1が稼働して車体に大きな振動が発生すると、タンク本体61内の冷却水は冷却水タンク6の長辺方向(車体の左右方向)に揺れて波が立つ。このとき、タンク本体61は横長で高さが抑えられた形状であるため、冷却水の波は天井部611まで達しやすく、特に長辺方向の中央部分よりも両端側において跳ね返りが大きくなる。
【0043】
このような状況であっても、筒体63は、冷却水タンク6の長辺方向の中央部分に設けられているため、冷却水の波の跳ね返りを受けにくい。さらに、筒体63は、下側筒部632の下端部に板状部材634が設けられていることから、冷却水の波を除けることができる。これにより、タンク本体61内の冷却水が筒体63内に流入してエア抜き用ホース94から外部に漏れ出すといった事態を抑制することが可能である。
【0044】
本実施形態では、通気口633が下側筒部632の側面において天井部611に隣接する位置(下側筒部632における上方側)に配置されているため、板状部材634に隣接する位置(下側筒部632における下方側)に配置されている場合と比べて冷却水が通気口633を介して下側筒部632内に流入しにくい。
【0045】
また、本実施形態では、板状部材634が鍔部634Aを有しているため、冷却水の波を筒体63の外周側に除けることができ、冷却水を筒体63内により流入させにくくすることができる。
【0046】
図4および図5に示すように、給水口64は、上蓋65と、上蓋65が取り付けられる給水用筒体66と、を備えており、本実施形態では、タンク本体61の天井部611において、圧力キャップ62が取り付けられた筒体63よりも長辺方向の一端側(右端側)に配置されている。
【0047】
給水用筒体66は、筒体63と同様に、天井部611の上側に突出する給水用上側筒部661と、天井部611の下側に突出する給水用下側筒部662と、を有している。給水用下側筒部662は、筒体63の下側筒部632と同様に、半円状の通気口663が側面に設けられているが、一方、筒体63の下側筒部632と異なり、下端には開口662Aが形成されている。
【0048】
冷却水タンク6に冷却水を給水する際は、上蓋65を取り外し、給水用上側筒部661の上端に形成された開口から冷却水を給水用筒体66内に注ぎ入れる。給水用筒体66内に注がれた冷却水は、給水用下側筒部662の開口662Aを介してタンク本体61内に流入して貯留される。
【0049】
給水口64として圧力キャップ62が取り付けられた筒体63を用いることも可能であるが、その場合、筒体63内に注がれた冷却水は通気口633を介してタンク本体61内に流入することになるため、給水時間が長時間に及んでしまう。しかしながら、本実施形態のように給水口64を別途設けることにより、給水性を損なうことがなくなる。
【0050】
さらに、本実施形態では、給水口64は、天井部611における長辺方向の右端側に配置されているため、オペレータや作業員等は冷却水タンク6への給水がしやすい。なお、冷却水タンク6において、長辺方向の右端側は冷却水の波の跳ね返りが大きいが、給水口64の給水用上側筒部661にはエア抜き用ホース94等のホース類が接続されていないため、冷却水が外部へ漏れ出すことはない。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、板状部材634は鍔部634Aを有していたが、必ずしも鍔部634Aを有している必要はなく、少なくとも下側筒部632の下端部を覆う大きさに形成されていればよい。
【0053】
また、上記実施形態では、通気口633は下側筒部632の側面における天井部611に隣接する位置に配置されていたが、少なくともタンク本体61内と下側筒部632内とを連通すればよく、その位置については特に制限はない。
【0054】
また、上記実施形態では、給水口64は冷却水タンク6の長辺方向の右端側に配置されていたが、これに限らず、例えば、ホイールローダ1が車体の左側から機械室32にアクセスする仕様であれば、給水口64は冷却水タンク6の長辺方向の左端側に配置されていてもよい。なお、冷却水タンク6に冷却水が給水可能であれば、給水口64の位置については特に制限はなく、さらに、必ずしも圧力キャップ62が取り付けられる筒体63と給水口64とを別置きにする必要もない。
【0055】
また、上記実施形態では、作業機械の一態様としてホイールローダ1について説明したが、これに限らず、他の作業機械についても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1:ホイールローダ(作業機械)
4:エンジン
6:冷却水タンク
7:ラジエータ
61:タンク本体
62:圧力キャップ
63:筒体
64:給水口
91:第1接続ホース(ホース)
94:エア抜き用ホース
611:天井部
631:上側筒部
631A:接続部
632:下側筒部
633:通気口
634:板状部材
634A:鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8