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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】輸送機器のスイッチ
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/10 20120101AFI20221201BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20221201BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221201BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20221201BHJP
   G05G 25/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B60W50/10
B60W30/14
B60R16/02 630Q
B60R16/027 T
G05G25/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019164600
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021041796
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】池谷 学
(72)【発明者】
【氏名】井島 伸治
(72)【発明者】
【氏名】下村 義弘
(72)【発明者】
【氏名】波多野 優
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075873(JP,A)
【文献】特開2009-073335(JP,A)
【文献】特開2006-327306(JP,A)
【文献】特開2013-184672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
B60R 16/00 ~ 16/027
G05G 25/00 ~ 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機器の操舵手段の把持部の近傍に配置され、制御装置による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、
前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面を有する操作子と、
前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構と、
外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構と、
前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部と、
を備え
前記操作子を、当該操作子の傾動方向を含む面と略直交する方向に変位可能に構成された交差変位機構と、
前記操作子が前記傾斜姿勢の状態で、前記傾動方向を含む面と略直交する方向に操作されたときに、当該操作に応じて前記自動制御の設定を変更可能な設定操作部と、
をさらに備えていることを特徴とする輸送機器のスイッチ。
【請求項2】
前記自動制御の設定は、定速走行制御の速度設定であることを特徴する請求項に記載の輸送機器のスイッチ。
【請求項3】
前記操作子が前記起立姿勢の状態で前記傾動方向を含む面と略直交する方向に操作されたときに、当該操作に応じて運転者による輸送機器のマニュアル操作を実行可能にするマニュアル操作部をさらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の輸送機器のスイッチ。
【請求項4】
前記マニュアル操作は、輸送機器の加速及び減速の操作であり、
前記マニュアル操作部は、前記操作子の前記傾動方向を含む面と略直交する方向の操作量に応じて輸送機器の加速度と減速度を操作することを特徴とする請求項に記載の輸送機器のスイッチ。
【請求項5】
前記交差変位機構は、前記傾動方向を含む面と略直交する方向に関して、中立位置に前記操作子を付勢する付勢部材を有し、
前記マニュアル操作部は、前記操作子が前記中立位置から一方向に操作されたときに輸送機器を加速するとともに、前記操作子が前記中立位置から他方向に操作されたときに輸送機器を減速することを特徴とする請求項に記載の輸送機器のスイッチ。
【請求項6】
前記マニュアル操作部は、前記中立位置からの前記操作子の操作量の増大に応じて輸送機器の加速度または減速度を増大させることを特徴とする請求項に記載の輸送機器のスイッチ。
【請求項7】
前記姿勢可変機構は、前記操作面が前記把持部に近接する側に向く第1の傾斜姿勢と、前記操作面が前記把持部から離反する側に向く第2の傾斜姿勢と、に前記操作子を傾動操作可能とされ、
前記操作子は、前記第1の傾斜姿勢のときに、前記自動制御切換部による前記自動制御をオンにするとともに、前記起立姿勢のときに、前記中立位置から前記他方向に最大に操作された状態において、前記第2の傾斜姿勢に操作可能とされていることを特徴とする請求項5または6に記載の輸送機器のスイッチ。
【請求項8】
前記操作子の操作面は、運転者の指を載せ置き可能な指載せ面からなり、
前記操作子は、指載せ傾斜機構によって支持され、
前記指載せ傾斜機構は、前記傾動方向を含む面と略直交する方向の中立位置からの操作量に応じて、操作方向の端部が迫り上がるように前記操作面の傾斜角度を変化させることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の輸送機器のスイッチ。
【請求項9】
輸送機器の操舵手段の把持部の近傍に配置され、制御装置による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、
前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面を有する操作子と、
前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構と、
外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構と、
前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部と、
を備え、
前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除する保持解除装置をさらに備え、
前記保持解除装置は、前記自動制御がオンの状態で輸送機器の制動装置が踏み込み操作されたときに、前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除することを特徴とする輸送機器のスイッチ。
【請求項10】
輸送機器の操舵手段の把持部の近傍に配置され、制御装置による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、
前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面を有する操作子と、
前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構と、
外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構と、
前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部と、
を備え、
前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除する保持解除装置をさらに備え、
前記保持解除装置は、前記自動制御がオンの状態での輸送機器の制動装置の踏み込み操作により前記自動制御が解除されて輸送機器が一定速度以下に減速したときに、前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除することを特徴とする輸送機器のスイッチ。
【請求項11】
輸送機器の操舵手段の把持部の近傍に配置され、制御装置による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、
前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面を有する操作子と、
前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構と、
外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構と、
前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部と、
を備え、
前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除する保持解除装置をさらに備え、
前記保持解除装置は、前記自動制御がオンの状態で前記操舵手段の操舵角が一定角度以上であるときに、前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除することを特徴とする輸送機器のスイッチ。
【請求項12】
輸送機器の操舵手段の把持部の近傍に配置され、制御装置による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、
前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面を有する操作子と、
前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構と、
外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構と、
前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部と、
を備え、
前記操作子の操作位置に応じて当該操作子に振動を付与する振動付与装置をさらに備えていることを特徴とする輸送機器のスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の輸送機器のステアリングホイール等の操舵手段に配置される輸送機器のスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両では、ステアリングホイールに各種のスイッチ類が取り付けられている。ステアリングホイールに取り付けられるステアリング用スイッチとしては、車両の加速と減速を補助的に行うスイッチや、定速走行制御等の車両の自動制御のオン・オフスイッチ等が知られている。
【0003】
この種のステアリング用スイッチは、運転者がステアリングホイールから大きく手を放すことなく操作できることが望ましい。この要望からステアリングホイールの把持部の近傍に、ステアリング用スイッチを配置したものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1,2に記載のステアリング用スイッチは、運転者がステアリングホイールのリム部を把持したまま、拇指にて操作子を操作できる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-80935号公報
【文献】特表平6-504014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車両の自動制御のオン・オフを操作する機能を有するステアリング用スイッチの場合、現在車両が自動制御の状態にあるか否かを判断するのに、表示盤やランプ等の視覚的表示部を目視確認しなければならなかった。このため、従来のステアリング用スイッチの場合、車両の運転中に視線を前方から一時的に外すことになり、車両の安定操作の観点からは望ましくない。
【0006】
そこで本発明は、運転者が視線を前方から外すことなく、輸送機器が自動制御状態にあるか否かを容易に把握することができる輸送機器のスイッチを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る輸送機器のスイッチは、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本出願の一の発明に係る輸送機器のスイッチは、輸送機器の操舵手段(例えば、実施形態のステアリングホイール3)の把持部(例えば、実施形態のリム部5)の近傍に配置され、制御装置(例えば、実施形態の定速走行制御装置11)による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面(例えば、実施形態の指載せ面31)を有する操作子(例えば、実施形態の操作子28)と、前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構(例えば、実施形態の支持軸26、ホルダー33,40、保持片32、リンク部材37)と、外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構(例えば、実施形態のラッチ機構30)と、前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部(例えば、実施形態のラッチ位置検出センサ50)と、を備え、前記操作子を、当該操作子の傾動方向を含む面と略直交する方向に変位可能に構成された交差変位機構(例えば、実施形態の支持軸26、ホルダー33,40、第1スプリング41、第2スプリング42、第3スプリング43)と、前記操作子が前記傾斜姿勢の状態で、前記傾動方向を含む面と略直交する方向に操作されたときに、当該操作に応じて前記自動制御の設定を変更可能な設定操作部(例えば、実施形態の増速設定スイッチ52、減速設定スイッチ53)と、をさらに備えていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成により、輸送機器が自動制御のときには、操作子が傾斜保持機構によって傾斜姿勢に保持される。このため、運転者は、操作子の操作面に指を載せることにより、輸送機器が自動制御状態にあるか否かを、操作面に載せた指の角度と感触によって容易に把握することができる。
【0012】
この場合、運転者が操作子を傾斜姿勢に傾動操作した状態で、指によって、操作子を、傾動方向を含む面と略直交する方向に操作することにより、自動制御の設定を容易に行うことができる。
【0013】
前記自動制御の設定は、定速走行制御の速度設定であっても良い。
【0014】
この場合、運転者は操舵手段の把持部を把持した状態のまま、指によって定速走行制御の速度設定を容易に行うことができる。
【0015】
輸送機器のスイッチは、前記操作子が前記起立姿勢の状態で前記傾動方向を含む面と略直交する方向に操作されたときに、当該操作に応じて運転者による輸送機器のマニュアル操作を実行可能なマニュアル操作部(例えば、実施形態の位置検出センサ51)をさらに備えるようにしても良い。
【0016】
この場合、操作子が起立姿勢のときに、運転者は、指で操作子を傾動方向を含む面と略直交する方向に操作することにより、操舵手段の把持部を把持したまま輸送機器を容易にマニュアル操作することができる。これにより、輸送機器の操作性が良好になる。この場合も、運転者は、指を載せた操作面の角度と感触によって輸送機器がマニュアル操作状態であることを容易に把握することができる。
【0017】
前記マニュアル操作は、輸送機器の加速及び減速の操作であり、前記マニュアル操作部は、前記操作子の前記傾動方向を含む面と略直交する方向の操作量に応じて輸送機器の加速度と減速度を操作するものであっても良い。
【0018】
この場合、運転者は、操作子が起立姿勢のときに、操作子を傾動方向を含む面と略直交する方向に操作することにより、操舵手段を把持したまま輸送機器の加速操作と減速操作を容易に行うことができる。
【0019】
前記交差変位機構は、前記傾動方向を含む面と略直交する方向に関して、中立位置に前記操作子を付勢する付勢部材(例えば、実施形態の第1スプリング41,第2スプリング42,第3スプリング43)を有し、前記マニュアル操作部は、前記操作子が前記中立位置から一方向に操作されたときに輸送機器を加速するとともに、前記操作子が前記中立位置から他方向に操作されたときに輸送機器を減速するものであっても良い。
【0020】
この場合、運転者が起立姿勢の操作子を、傾動方向を含む面と略直交する方向に操作し、その状態で操作面から指を離すと、操作子は、付勢部材の付勢力によって中立位置に戻される。この状態では輸送機器に対する加速や減速が行われなくなる。したがって、本構成を採用した場合には、操作子の操作性が良好になる。
【0021】
前記マニュアル操作部は、前記中立位置からの前記操作子の操作量の増大に応じて輸送機器の加速度または減速度を増大させるようにしても良い。
【0022】
この場合、操作子の中立位置からの操作量に応じて加速度や減速度を調整することができる。したがって、本構成を採用した場合には、輸送機器の加速調整や減速調整を容易に行うことができる。
【0023】
前記姿勢可変機構は、前記操作面が前記把持部に近接する側に向く第1の傾斜姿勢と、前記操作面が前記把持部から離反する側に向く第2の傾斜姿勢と、に前記操作子を傾動操作可能とされ、前記操作子は、前記第1の傾斜姿勢のときに、前記自動制御切換部による前記自動制御をオンにするとともに、前記起立姿勢のときに、前記中立位置から前記他方向に最大に操作された状態において、前記第2の傾斜姿勢に操作可能とされるようにしても良い。
【0024】
この場合、操作子が中立位置から他方向に最大に操作された状態で、操作子が第2の傾斜姿勢に操作されると、操作子の第2の傾斜姿勢が傾斜保持機構によって保持される。したがって、本構成を採用した場合には、操作子の操作によって輸送機器を制動状態に維持することができる。
【0025】
前記操作子の操作面は、運転者の指を載せ置き可能な指載せ面からなり、前記操作子は、指載せ傾斜機構(例えば、実施形態の保持片32,支持ピン36,リンク部材37,支持ピン38,39,第1,第2,第3スプリング41,42,43)によって支持され、前記指載せ傾斜機構は、前記傾動方向を含む面と略直交する方向の中立位置からの操作量に応じて、操作方向の端部が迫り上がるように前記操作面の傾斜角度を変化させるようにしても良い。
【0026】
この場合、運転者が指によって操作子を中立位置から一方向に操作すると、その操作量に応じて一方向の端部が迫り上がるように操作面の傾斜角度が変化する。また、運転者が指によって操作子を中立位置から他方向に操作すると、その操作量に応じて他方向の端部が迫り上がるように操作面の傾斜角度が変化する。したがって、運転者は、指の先端を伸ばす押し上げ操作と、指を指関節で押し縮める押し下げ操作によって操作子を容易に操作することができる。この指による操作の際には、指から操作方向に効率良く力を伝達することができるため、指の指紋が過度な力で押し潰されにくくなる。この結果、指の皮膚感度が良好に保たれ、運転者の指による操作子の操作フィーリングが良好になる。
【0027】
本出願の他の発明に係る輸送機器のスイッチは、輸送機器の操舵手段(例えば、実施形態のステアリングホイール3)の把持部(例えば、実施形態のリム部5)の近傍に配置され、制御装置(例えば、実施形態の定速走行制御装置11)による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面(例えば、実施形態の指載せ面31)を有する操作子(例えば、実施形態の操作子28)と、前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構(例えば、実施形態の支持軸26、ホルダー33,40、保持片32、リンク部材37)と、外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構(例えば、実施形態のラッチ機構30)と、前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部(例えば、実施形態のラッチ位置検出センサ50)と、を備え、前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除する保持解除装置(例えば、実施形態の回動アクチュエータ27)をさらに備え、前記保持解除装置は、前記自動制御がオンの状態で輸送機器の制動装置が踏み込み操作されたときに、前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除することを特徴とする。
【0028】
この場合、操作子が傾斜保持機構によって第1の傾斜姿勢に保持され、輸送機器が自動制御されているときに、運転者によって制動装置が踏み込み操作されると、保持解除装置が操作子の傾斜姿勢の保持を解除する。これにより、操作子が起立姿勢に戻り、輸送機器の自動制御が解除される。この結果、運転者による輸送機器のマニュアル操作を迅速に行うことが可能になる。
【0029】
本出願のさらに他の発明に係る輸送機器のスイッチは、輸送機器の操舵手段(例えば、実施形態のステアリングホイール3)の把持部(例えば、実施形態のリム部5)の近傍に配置され、制御装置(例えば、実施形態の定速走行制御装置11)による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面(例えば、実施形態の指載せ面31)を有する操作子(例えば、実施形態の操作子28)と、前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構(例えば、実施形態の支持軸26、ホルダー33,40、保持片32、リンク部材37)と、外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構(例えば、実施形態のラッチ機構30)と、前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部(例えば、実施形態のラッチ位置検出センサ50)と、を備え、前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除する保持解除装置をさらに備え、前記保持解除装置は、前記自動制御がオンの状態での輸送機器の制動装置の踏み込み操作により前記自動制御が解除されて輸送機器が一定速度以下に減速したときに、前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除することを特徴とする。
【0030】
この場合、操作子が傾斜保持機構によって第1の傾斜姿勢に保持され、輸送機器が自動制御されているときに、運転者による制動装置の踏み込み操作によって自動制御が解除され、その後に輸送機器が一定速度以下に減速すると、保持解除装置が操作子の傾斜姿勢の保持を解除する。これにより、操作子が起立姿勢に戻り、輸送機器の自動制御が解除される。この結果、運転者による輸送機器のマニュアル操作を迅速に行うことが可能になる。
【0031】
本出願のさらに他の発明に係る輸送機器のスイッチは、輸送機器の操舵手段(例えば、実施形態のステアリングホイール3)の把持部(例えば、実施形態のリム部5)の近傍に配置され、制御装置(例えば、実施形態の定速走行制御装置11)による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面(例えば、実施形態の指載せ面31)を有する操作子(例えば、実施形態の操作子28)と、前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構(例えば、実施形態の支持軸26、ホルダー33,40、保持片32、リンク部材37)と、外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構(例えば、実施形態のラッチ機構30)と、前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部(例えば、実施形態のラッチ位置検出センサ50)と、を備え、前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除する保持解除装置をさらに備え、前記保持解除装置は、前記自動制御がオンの状態で前記操舵手段の操舵角が一定角度以上であるときに、前記操作子の傾斜姿勢の保持を解除することを特徴とする。
【0032】
この場合、操作子が傾斜保持機構によって第1の傾斜姿勢に保持され、輸送機器が自動制御されているときに、運転者によって操舵手段が一定角度以上に操舵されると、保持解除装置が操作子の傾斜姿勢の保持を解除する。これにより、操作子が起立姿勢に戻り、輸送機器の自動制御が解除される。この結果、運転者による輸送機器のマニュアル操作を迅速に行うことが可能になる。

【0033】
本出願のさらに他の発明に係る輸送機器のスイッチは、輸送機器の操舵手段(例えば、実施形態のステアリングホイール3)の把持部(例えば、実施形態のリム部5)の近傍に配置され、制御装置(例えば、実施形態の定速走行制御装置11)による輸送機器の自動制御のオン・オフを切り換え可能な輸送機器のスイッチであって、前記操舵手段を把持した運転者が操作可能な操作面(例えば、実施形態の指載せ面31)を有する操作子(例えば、実施形態の操作子28)と、前記操作子を、前記操作面が運転席に対向するように起立する起立姿勢と、前記操作面が前記操舵手段の把持部に近接する側、若しくは、前記把持部から離反する側に向く傾斜姿勢との間で傾動操作可能に構成された姿勢可変機構(例えば、実施形態の支持軸26、ホルダー33,40、保持片32、リンク部材37)と、外力による解除操作が行われるまで前記操作子を前記傾斜姿勢に保持する傾斜保持機構(例えば、実施形態のラッチ機構30)と、前記操作子が前記傾斜姿勢のときに前記自動制御をオンにし、前記操作子が前記起立姿勢のときに前記自動制御をオフにする自動制御切換部(例えば、実施形態のラッチ位置検出センサ50)と、を備え、前記操作子の操作位置に応じて当該操作子に振動を付与する振動付与装置をさらに備えることを特徴とする。
【0034】
この場合、操作子の操作位置に応じて振動付与装置が操作子に振動を付与することにより、運転者は、拇指に伝わる振動によって操作子の操作位置や操作状態をより良好に把握することができる。この結果、運転者の指による操作子の操作フィーリングが良好になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明では、操作子が起立姿勢と傾斜姿勢の間で傾動操作可能とされるとともに、操作子が傾斜姿勢に操作されて自動制御に切り換えられたときに、操作子が傾斜保持機構によって姿勢を保持される。このため、輸送機器が自動制御状態にあるか否かを、操作子の操作面に載せた指の角度と感触によって容易に把握することができる。したがって、本発明を採用した場合には、運転者が視線を前方から外すことなく、輸送機器が自動制御状態にあるか否かを容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施形態のステアリング装置の正面図である。
図2】第1実施形態のステアリング用スイッチを含む車両の制御システムの概略構成図である。
図3】第1実施形態のステアリング用スイッチの一部の部品を取り去った模式的な側面図である。
図4】第1実施形態のステアリング用スイッチの一部の部品を取り去った模式的な上面図である。
図5図3のV-V線に沿う断面図である。
図6図5の一部を拡大した詳細断面図である。
図7】第1実施形態のステアリング用スイッチの操作を説明するための模式的な側面図である。
図8】第1実施形態のステアリング用スイッチの操作を説明するための模式的な側面図である。
図9】第1実施形態のステアリング用スイッチの操作を説明するための概略構成図である。
図10】第1実施形態のステアリング用スイッチの操作を説明するための模式的な上面図である。
図11図10のXI-XI線に沿う断面図である。
図12】第1実施形態のステアリング用スイッチの操作を説明するための模式的な上面図である。
図13図12のXIII-XIII線に沿う断面図である。
図14】第1実施形態のステアリング用スイッチの操作を説明するための模式的な上面図である。
図15図14のXV-XV線に沿う断面図である。
図16】第2実施形態のステアリング用スイッチの一部の部品を取り去った模式的な側面図である。
図17】第2実施形態のステアリング用スイッチの一部の部品を取り去った模式的な上面図である。
図18図17のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
図19】第2実施形態のステアリング用スイッチの操作を説明するための模式的な上面図である。
図20図19のXX-XX線に沿う断面図である。
図21】第2実施形態のステアリング用スイッチの操作を説明するための模式的な上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する各実施形態は、輸送機器の一形態である車両の操舵手段(ステアリングホイール3)にスイッチが配置されている。各実施形態では、ステアリング用スイッチ10,110が輸送機器のスイッチを構成している。
【0038】
図1は、実施形態のステアリング用スイッチ10(110)を採用した車両のステアリング装置1の一例を示す図である。
ステアリング装置1は、ステアリングシャフト2に連結された操舵手段であるステアリングホイール3を備えている。本実施形態では、ステアリングホイール3が操舵手段を構成している。ステアリングホイール3は、ステアリングシャフト2に連結されるボス部4と、運転者が把持するリム部5と、ボス部4とリム部5を連結するスポーク部6と、を備えている。本実施形態では、ステアリングの操舵が中立位置にあるときに、運転席から向かって右側に位置されるスポーク部6に実施形態に係るステアリング用スイッチ10(110)が設置されている。ステアリング用スイッチ10(110)は、スポーク部6の運転席と対向する側の面に配置され、運転者がリム部5を把持したまま右手の拇指による操作が可能とされている。
なお、ステアリング用スイッチ10(110)は、ステアリングの操舵が中立位置にあるときに、運転席から向かって左側に位置されるスポーク部6に配置しても良い。
【0039】
<第1実施形態>
図2は、ステアリング用スイッチ10を含む車両の走行系の制御システムの概略構成を示す図である。
本実施形態の車両は、車両を設定速度で自動走行させる定速走行制御装置11(制御装置)を備えている。また、車両は、運転者によるアクセルペダル12とブレーキペダル13の操作に応じて、エンジンやモータ、変速装置等の駆動系装置14と、油圧ブレーキ等の制動装置15と、を制御するマニュアル操作制御装置16を備えている。アクセルペダル12とブレーキペダル13には、各ペダルの操作量を検出する変位検出センサ17,18が設けられている。各変位検出センサ17,18の検出信号は、マニュアル操作制御装置16に入力される。マニュアル操作制御装置16は、変位検出センサ17,18の検出信号に基づいて駆動系装置14と制動装置15とを制御する。
【0040】
本実施形態のステアリング用スイッチ10は、定速走行制御装置11による定速走行制御のオン・オフの切り換えと、定速走行速度の設定操作と、マニュアル操作制御装置16を通した駆動系装置14と制動装置15のマニュアル操作と、を行うことができる。
【0041】
定速走行制御装置11の入力側には、ブレーキペダル13が操作されたことを検出するペダルスイッチ19と、車両の走行速度を検出する車速センサ20と、ステアリングの操舵角度を検出する操舵角センサ21と、が接続されている。
定速走行制御装置11は、定速走行制御が行われているときに、以下の条件が満たされた場合にその時点で定速走行制御を解除する。
(1)ペダルスイッチ19からブレーキペダル13の踏み込み信号が入力されたとき。
(2)操舵角センサ21から検出される操舵角度が設定角度以上になったとき。
なお、定速走行制御装置11は、車速センサ20から入力される車両の速度信号が設定速度以下であるときに、ステアリング用スイッチ10の操作が行われた場合には、定速走行制御のオン作動を禁止する。
【0042】
定速走行制御装置11の出力側には、ステアリングホイール3に設けられた定速走行ランプ22(図1参照)と、インストルメントパネルに設けられた設定速度表示部23と、アクセルペダル12の反力スプリング12aの反力を無効にする反力解除装置24と、が接続されている。
【0043】
定速走行制御装置11は、定速走行制御がオンになると、ステアリングホイール3上の定速走行ランプ22を点灯させ、定速走行制御がオフになると、定速走行ランプ22を消灯する。なお、定速走行ランプ22は、前車に追従して自動走行を行う際の車間距離インジケータを兼ねる構成であっても良い。
定速走行制御装置11は、定速走行制御が行われているときに、現在設定されている設定速度をインストルメントパネル上の設定速度表示部23に表示する。
定速走行制御装置11は、定速走行制御が行われているときに、反力解除装置24によってアクセルペダル12の反力スプリング12aの反力を無効にし、それによってアクセルペダル12をベタ踏み状態にする。運転者は、それにより、車両が定速走行制御の状態であることをアクセルペダル12の状態からも認識することができる。
【0044】
図3は、ステアリング用スイッチ10の一部の部品を取り去った模式的な側面図であり、図4は、ステアリング用スイッチ10の一部の部品を取り去った模式的な上面図である。また、図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。
ステアリング用スイッチ10は、一方向に長尺な長方体状のケーシング25と、ケーシング25の内部にケーシング25の長手方向に略沿って配置された支持軸26と、支持軸26を設定角度範囲で回動操作可能な回動アクチュエータ27と、支持軸26に相対回転を規制された状態で軸方向変位可能に支持された操作子28と、を備えている。
【0045】
ケーシング25は、図1図2に示すように、長手方向に沿う一面に開口29が形成され、その開口29を通して操作子28の一部が外側に突出している。ケーシング25は、図1に示すように、ステアリングホイール3のスポーク部6のうちの、リム部5(把持部)に近接した位置に、開口29を有する一面の長手方向が、スポーク部6の延出方向と斜めに交差するように配置されている。
なお、図3では、内部の機構が理解できるように、ケーシング25の側壁を取り除いて描かれている。また、図4では、同様に内部の機構が理解できるように、ケーシング25の開口29を有する正面の壁と、操作子28等の一部を取り除いて描かれている。
【0046】
回動アクチュエータ27は、ケーシング25の長手方向の一端部に取り付けられている。回動アクチュエータ27は、例えば、ロータリーソレノイドやモータ等によって構成されている。また、ケーシング25の長手方向の他端部には、支持軸26の回動角度(操作子28の傾動位置)を設定角度で保持するラッチ機構30(傾斜保持機構)が取り付けられている。ラッチ機構30は、外力による解除操作が行われるまで支持軸26の回動角度を設定角度に保持することができる。なお、外力による解除操作は、操作子28を通した人による回動操作と、回動アクチュエータ27による回動操作とを含む。
【0047】
支持軸26は、軸方向の両端部を回動アクチュエータ27とラッチ機構30とに支持され、それによってケーシング25に回動可能に保持されている。本実施形態では、回動アクチュエータ27は、後述する操作子28の傾斜姿勢の保持を解除するための保持解除装置を構成している。
【0048】
なお、本実施形態では、回動アクチュエータ27と別にラッチ機構30を受け、そのラッチ機構によって傾斜保持機構を構成しているが、傾斜保持機構は、回動アクチュエータ27によって構成することも可能である。この場合は、回動アクチュエータ27の回動軸の回転角度を検出する回転角センサを設け、その回転角センサの検出信号を定速走行制御装置11に出力する。定速走行制御装置11は、操作子28が所定の傾斜姿勢であることを示す信号が回転センサから入力されると、支持軸26の回動角度を設定角度に保持するように(操作子28の傾斜姿勢を保持するように)回動アクチュエータ27を制御する。
【0049】
以下では、説明の便宜上、支持軸26の延びる方向を前後方向と呼び、前後方向のうちのラッチ機構30の配置される側を「前」、回動アクチュエータ27の配置される側を「後」と呼ぶ。また、前後方向と直交する方向のうちの、運転席側に向く側を「上」、それと逆側を「下」と呼び、前後方向と上下方向に対し直交する方向を左右方向と呼ぶ。さらに、左右方向のうちの、運転席から向かって左側に向く側を「左」、それと逆側を「右」と呼ぶ。
操作子28は、上面視が略矩形状のベースブロック28aを有し、そのベースブロック28aの上面側に凹状に湾曲した指載せ面31(操作面)が形成されている。指載せ面31は、運転者の拇指Tの腹面を受容する部分であり、載せ置いた運転者の拇指Tの腹面を三次元的に包み込む形状に形成されている。また、指載せ面31の凹形状は、後側からの拇指Tの挿入が容易なように後側に開口している。
【0050】
ベースブロック28aは、前端部側が、一対の保持片32の上端部に支持ピン36を介して回動可能に支持されている。支持ピン36は左右方向に延びている。一対の保持片32は、支持軸26を挟んで左右に離間して配置されている。一対の保持片32の下端には、角筒状のホルダー33が固定されている。ホルダー33は、支持軸26に、相対回転を規制された状態で軸方向移動可能に保持されている。
【0051】
図6は、図5のホルダー33と支持軸26の係合部を拡大した詳細断面図である。
同図に示すように、支持軸26の外面には軸方向に沿う複数の保持溝34が形成されている。これに対し、ホルダー33の内周面には、保持溝34に転動可能に係合される複数のボール35が保持されている。ホルダー33は、内部に保持したボール35が保持溝34によって拘束されることにより、支持軸26に対して相対回転を規制され、ボール35が保持溝34に沿って転動することにより、支持軸26上を軸方向に移動することができる。
【0052】
また、ベースブロック28aの後端部側には、リンク部材37の上端部が支持ピン38を介して回動可能に連結されている。リンク部材37の下端部には、支持ピン39を介してホルダー40が回動可能に連結されている。ホルダー40は、上記のホルダー33と同様の構成とされ、支持軸26に、相対回転を規制された状態で軸方向移動可能に保持されている。リンク部材37の上下の支持ピン38,39は左右方向に延びている。操作子28(ベースブロック28a)は、保持片32及びリンク部材37と、前後のホルダー33,40を介して、支持軸26に、相対回転を規制された状態で軸方向移動可能に保持されている。
【0053】
本実施形態では、ケーシング25に回動可能に保持された支持軸26と、ホルダー33,40と、保持片32及びリンク部材37が、操作子28の傾動姿勢を操作可能にする姿勢可変機構を構成している。操作子28は、この姿勢可変機構により、指載せ面31が運転席側に向く起立姿勢(図5参照)と、指載せ面31がステアリングホイール3の把持部(リム部5)に近接する側に傾斜する第1の傾斜姿勢(図11図13参照)と、指載せ面31がステアリングホイール3の把持部(リム部5)から離反する側に向く第2の傾斜姿勢(図15参照)との間で傾動操作可能とされている。
【0054】
支持軸26の回動角度を設定角度で保持するラッチ機構30は、操作子28が第1の傾斜姿勢のときと、第2の傾斜姿勢のときに、支持軸26の回動角度を保持する(操作子28の傾斜状態を保持する)。
以下では、説明の便宜上、操作子28が第1の傾斜姿勢でラッチ機構30によって角度保持された状態のことを右ラッチ状態と呼び、操作子28が第2の傾斜姿勢でラッチ機構30によって角度保持された状態のことを左ラッチ状態と呼ぶ。
【0055】
ケーシング25の前壁25fと前側のホルダー33の間には第1スプリング41が介装され、ケーシング25の後壁25rと後側のホルダー40の間には第2スプリング42が介装されている。また、前側のホルダー33と後側のホルダー40は、第3スプリング43によって連結されている。第1,第2,第3スプリング41,42,43は、いずれもコイルスプリングによって構成されている。本実施形態の場合、第1,第2,第3スプリング41,42,43は、操作子28を前後方向(操作子28の傾動方向を含む面と略直交する方向)に関して、中立位置に付勢する付勢部材を構成している。
なお、操作子28の後端部を支持するリンク部材37は、図3に示すように、操作子28が前後方向に関して中立位置にあるときに、上部側が前方に所定角度で傾斜している。
【0056】
図7は、起立姿勢の操作子28を中立位置から前方に変位させたときのステアリング用スイッチ10の内部の挙動を示す図である。
図7に示すように、起立姿勢の操作子28を運転者が拇指Tによって中立位置(図3参照)から前方に変位させると、操作子28の変位に応じて前側の第1スプリング41が圧縮されるとともに、後側の第2スプリング42が伸び変形する。このとき、操作子28を前方に操作する運転者の拇指Tには、操作子28の変位に応じた反力が第1スプリング41から作用する。また、このとき運転者の拇指Tによる操作子28の前方押し出し操作により、リンク部材37の前方傾斜角度が次第に増大し(リンク部材37が次第に水平方向に角度変位し)、それに伴って操作子28の指載せ面31の後部が下方傾斜するようになる。この結果、運転者は、拇指Tの腹面を指載せ面31に載せたまま、拇指Tの関節や筋の自然な動きに則すように、指先を反り上げる動作によって操作子28を動かすことができる。
なお、拇指Tによる操作子28の操作によってリンク部材37の前方傾斜角度が増大すると、前後のホルダー33,40に連結された第3スプリング43は伸び方向に変形し、それに伴って縮み方向の反力が増大する。このため、拇指Tから操作子28に加えられていた操作荷重が解除されると、操作子28は、第1スプリング41の反力を受けて中立位置に戻されるとともに、第3スプリング43の反力を受けて後傾姿勢が初期姿勢に戻される。
【0057】
図8は、起立姿勢の操作子28を中立位置から後方に変位させたときのステアリング用スイッチ10の内部の挙動を示す図である。
図8に示すように、起立姿勢の操作子28を中立位置から後方に変位させると、操作子28の変位に応じて後側の第2スプリング42が圧縮されるとともに、前側の第1スプリング41が伸び変形する。このとき、操作子28を後方に操作する運転者の拇指Tには、操作子28の変位に応じた反力が第2スプリング42から作用する。また、このとき運転者の拇指Tによる操作子28の後方引き上げ操作により、リンク部材37の前方傾斜角度が次第に減少し(リンク部材37が次第に垂立方向に角度変位し)、それに伴って操作子28の指載せ面31の後部が上方傾斜するようになる。この結果、運転者は、拇指Tの腹面を指載せ面31に載せたまま、拇指Tの関節や筋の自然な動きに則すように、指先を手前に引き込む動作によって操作子28を動かすことができる。
なお、拇指Tによる操作子28の操作によってリンク部材37の前方傾斜角度が減少すると、第3スプリング43は縮み方向に変形し、それに伴って伸び方向の反力が増大する。このため、拇指Tから操作子28に加えられていた操作荷重が解除されると、操作子28は、第2スプリング42の反力を受けて中立位置に戻されるとともに、第3スプリング43の反力を受けて前傾姿勢が初期姿勢に戻される。
【0058】
本実施形態では、保持片32、支持ピン36、リンク部材37、支持ピン38,39、第1,第2,第3スプリング41,42,43等が指載せ傾斜機構を構成している。指載せ傾斜機構は、中立位置からの操作子28の前後の操作量に応じて、操作方向の端部が迫り上がるように指載せ面31の傾斜角度を変化させる。
【0059】
本実施形態では、支持軸26、ホルダー33,40、第1,第2,第3スプリング41,42,43等が、操作子28の前後方向の変位(操作子28の傾動方向を含む面と略直交する方向の変位)を可能にする交差変位機構を構成している。操作子28は、図9に示すように、支持軸26を中心とした左右の傾動変位が可能とされるとともに、前後方向にも変位可能とされている。
【0060】
図9は、操作子28を様々な方向に操作したときのステアリング用スイッチ10の状態を(a)~(i)で示した図である。
図9(b)は、操作子28が起立姿勢で中立位置にあるときの状態を示している。図9(a)は、起立姿勢の操作子28を前方に操作したときの状態を示し、図9(c)は、起立姿勢の操作子28を後方に操作したときの状態を示している。
図9(f)は、中立位置で操作子28を第1の傾斜姿勢となるように操作したときの状態を示している。図9(g)は、図9(f)の状態から操作子28を前方に微小量操作した状態を示し、図9(h)は、図9(f)の状態から操作子28を下方に微小量操作した状態を示している。
また、図9(d)は、図9(c)の状態から操作子28を第2の傾斜姿勢となるように操作した状態を示し、図9(e)は、図9(a)の状態から操作子28を第1の傾斜姿勢になるように操作したときの状態を示している。また、図9(i)は、図9(c)の状態から操作子28を第1の傾斜姿勢になるように操作したときの状態を示している。
各状態のときに得られる機能については後に詳述する。
【0061】
また、図3図5に示すように、左右の保持片32の左右方向外側の各下端には、保持片32よりも前後方向の長さの長い長方体状の側壁ブロック44L,44Rが取り付けられている。ケーシング25の右側の側壁には、前後一対のスイッチ保持ブロック46,47が取り付けられている。前側のスイッチ保持ブロック46と後側のスイッチ保持ブロック47の間には、側壁ブロック44Rの前後方向の長さよりも前後幅の広い傾動許容空間55が確保されている。この傾動許容空間55には、操作子28が前後方向の中立位置にあり、かつ、操作子28が第1の傾斜姿勢であるときに、右側の側壁ブロック44Rが挿入状態で配置される(図10図11参照)。
なお、図10は、操作子28が中立位置にあり、かつ、第1の傾斜姿勢であるときにおける図4と同様の上面図であり、図11は、図10と同じ状態における図5と同様の断面図である。
【0062】
前側のスイッチ保持ブロック46の後面には、増速設定スイッチ52が取り付けられ、後側のスイッチ保持ブロック47の前面には、減速設定スイッチ53が取り付けられている。増速設定スイッチ52と減速設定スイッチ53は、図2に示す定速走行制御装置11の入力部に接続されている。増速設定スイッチ52と減速設定スイッチ53は、いずれもタクトスイッチによって構成されている。増速設定スイッチ52と減速設定スイッチ53は、操作子28が右ラッチ状態で、かつ、右側の側壁ブロック44が傾動許容空間55の内側にあるときに、操作子28が前方または後方に操作されることによってオン作動する。
【0063】
増速設定スイッチ52は、側壁ブロック44Rによって短時間接触操作されると、例えば、定速走行速度を1km/h刻みで増速させるべき信号を定速走行制御装置11に出力し、側壁ブロック44Rによって設定時間以上継続して接触操作されると、例えば、定速走行速度を10km/h刻みで増速させるべき信号を定速走行制御装置11に出力する。同様に、減速設定スイッチ53は、側壁ブロック44Rによって短時間接触操作されると、例えば、定速走行速度を1km/h刻みで減速させるべき信号を定速走行制御装置11に出力し、側壁ブロック44Rによって設定時間以上継続して接触操作されると、例えば、定速走行速度を10km/h刻みで減速させるべき信号を定速走行制御装置11に出力する。増速設定スイッチ52や減速設定スイッチ53によって設定された定速走行速度は、現在の目標走行速度として定速走行制御装置11で用いられるとともに、定速走行制御装置11の次回起動時の初期値としてメモリ54(図2参照)に記憶される。
【0064】
前側のスイッチ保持ブロック46の下端部は、前後方向に沿って延びる枢軸48により、ケーシング25に回動可能に支持されている。枢軸48を中心としたスイッチ保持ブロック46の回動範囲は、支持軸26側に対向する内側面が起立する基準位置(図5参照)と、内側面が右外側に所定角度傾斜するリリース位置(図13参照)との間の範囲とされている。また、前側のスイッチ保持ブロック46は、図示しないスプリングによって基準位置に向けて付勢されている。
【0065】
また、後側のスイッチ保持ブロック47の下端部も、前側のスイッチ保持ブロック46と同様に、前後方向に沿って延びる枢軸によってケーシング25に回動可能に支持されている。後側のスイッチ保持ブロック47の回動範囲も、支持軸26側に対向する内側面が起立する基準位置と、内側面が右外側に所定角度傾斜するリリース位置との間の範囲とされている。後側のスイッチ保持ブロック47も、図示しないスプリングによって基準位置に向けて付勢されている。
【0066】
図2に示すように、ケーシング25に取り付けられたラッチ機構30には、支持軸26のラッチ位置を検出するラッチ位置検出センサ50(自動制御切換部)が設けられている。本実施形態の場合、ラッチ機構30は、操作子28が第1の傾斜姿勢のときと第2の傾斜姿勢のときに、支持軸26をラッチし得る構成とされている。ラッチ位置検出センサ50は、ラッチ機構30が右ラッチ状態で支持軸26をラッチしているときに、検出信号を定速走行制御装置11の入力部に出力する。定速走行制御装置11は、ラッチ位置検出センサ50から右ラッチ状態であることを示す信号が入力されると、車両の定速走行制御をオンにし、右ラッチ状態であることを示す信号の入力が無くなると(右ラッチ状態が解除されると)、車両の定速走行制御をオフにする。
なお、ラッチ機構が回動アクチュエータ27によって構成される場合には、回動アクチュエータ27に設けられた回転角センサから右ラッチ状態であることを示す信号が定速走行制御装置11に入力される。この場合、定速走行制御装置11は、回転角センサから右ラッチ状態であることを示す信号が入力されると、車両の定速走行制御をオンにし、右ラッチ状態であることを示す信号の入力が無くなると、車両の定速走行制御をオフにする。
【0067】
また、図2に示すように、ケーシング25には、操作子28の中立位置からの前後方向の操作位置を検出する位置検出センサ51が設けられている。位置検出センサ51は、操作子28の中立位置からの操作位置を示す信号を、マニュアル操作制御装置16の入力部に出力する。ただし、位置検出センサ51からマニュアル操作制御装置16への信号出力は、操作子28が起立姿勢のとき(定速走行制御がオフのとき)にのみ行われる。マニュアル操作制御装置16は、位置検出センサ51から操作子28の操作位置に応じた信号が入力されると、その信号に応じて駆動系装置14や制動装置15に制御指令を出力する。具体的には、マニュアル操作制御装置16は、操作子28が中立位置から前方側に操作されると、その操作量に応じた制御信号を駆動系装置14に出力して車両を加速させる。また、マニュアル操作制御装置16は、操作子28が中立位置から後方側に操作されると、その操作量に応じた制御信号を制動装置15に出力して車両を減速させる。
ただし、運転者によってアクセルペダル12やブレーキペダル13が踏み込まれた場合には、これらのペダル操作が操作子28による加速や減速の操作よりも優先される。
【0068】
図12は、起立姿勢の操作子28が運転者によって増速操作され(前方に押し上げ操作され)、その状態から操作子28が第1の傾斜姿勢方向に傾動操作されたときにおける図4と同様の上面図であり、図13は、図12と同じ状態における図5と同様の断面図である。
図12図13に示すように、起立姿勢の操作子28が運転者によって増速操作され、その状態から操作子28が第1の傾斜姿勢方向(右方向)に傾動操作されると、右側の側壁ブロック44Rが前側のスイッチ保持ブロック46の内側面に当接して、スイッチ保持ブロック46とともに右外側方向に傾動する。このとき、スイッチ保持ブロック46は、図示しないスプリングの付勢力に抗してリリース位置に向けて回動する。また、このとき操作子28が第1の傾斜姿勢方向(右方向)に所定角度傾動操作されると、ラッチ機構30が操作子28を第1の傾斜姿勢に維持するようにラッチする。この状態から増速方向に押圧操作されていた操作子28の操作力が解除されると、操作子28は、第1,第2,第3スプリング41,42,43の付勢力を受けて中立位置方向に戻され、前側のスイッチ保持ブロック46は、図示しないスプリングの付勢力を受けて基準位置に戻される。このとき、操作子28は、ラッチ機構30によって右ラッチ状態に保持されているため、操作子28とともに中立位置に戻された右側の側壁ブロック44Rは、前後のスイッチ保持ブロック46,47の間の傾動許容空間55に位置される。したがって、この状態から操作子28が前方または後方に操作されると、右側の側壁ブロック44Rによって増速設定スイッチ52や減速設定スイッチ53を作動させることが可能になる。
【0069】
また、起立姿勢の操作子28が運転者によって減速操作され、その状態から操作子28が第1の傾斜姿勢方向(右方向)に傾動操作されると、右側の側壁ブロック44Rが後側のスイッチ保持ブロック47の内側面に当接して、スイッチ保持ブロック47とともに右外側方向に傾動する。このとき、スイッチ保持ブロック46は、図示しないスプリングの付勢力に抗してリリース位置に向けて回動し、操作子28は、第1の傾斜姿勢でラッチされる。この状態から操作子28の減速方向の操作力が解除されると、操作子28は、第1,第2,第3スプリング41,42,43の付勢力を受けて中立位置方向に戻され、後側のスイッチ保持ブロック47は、図示しないスプリングの付勢力を受けて基準位置に戻される。このとき、操作子28は、操作子28とともに中立位置に戻され、右側の側壁ブロック44Rは、前後のスイッチ保持ブロック46,47の間の傾動許容空間55に位置される。この状態から操作子28が前方または後方に操作されると、右側の側壁ブロック44Rによって増速設定スイッチ52や減速設定スイッチ53を作動させることが可能になる。
【0070】
また、図4図5に示すように、ケーシング25の左側の側壁には、操作子28の第2の傾動姿勢方向(左ラッチ方向)の操作を規制する傾動規制ブロック49が固定されている。傾動規制ブロック49は、操作子28が最後端位置以外の位置にあるときに、第2の傾斜姿勢方向に傾斜操作されると、操作子28側の側壁ブロック44Lが傾動規制ブロック49の内側面に当接し、それによって操作子28の第2の傾斜姿勢方向への傾動を規制する。
【0071】
図14は、起立姿勢の操作子28が運転者によって最大に減速操作され(後端位置まで押し下げ操作され)、その状態から操作子28が第2の傾斜姿勢方向に傾動操作されたときにおける図4と同様の上面図であり、図15は、図14と同じ状態における図5と同様の断面図である。
起立姿勢の操作子28が最後端位置に操作された状態では、傾動規制ブロック49による操作子28の傾動規制が行われないため、運転者は、操作子28を最後端位置で第2の傾斜姿勢方向に回動操作することができる。このとき、操作子28が最後端位置で第2の傾斜姿勢方向に回動操作されると、操作子28の傾動がその状態でラッチ機構30によってラッチされる(回動規制される)。また、この状態から操作子28が運転者の拇指Tによって起立姿勢方向に回動操作されると、操作子28は、第1,第2,第3スプリング41,42,43の付勢力を受けて初期位置(中立位置)に戻される。
なお、操作子28が最後端位置まで操作されたときには、マニュアル操作制御装置16を通して制動装置15による大きな車両制動が実行される。このため、車両が停止した状態で操作子28が左ラッチ状態に維持されると、車両を停止状態に維持することができる。
【0072】
つづいて、図2図9を参照して、本実施形態のステアリング用スイッチ10と、その作動に伴う車両の走行系の制御システムの働きについて説明する。
ステアリング用スイッチ10は、初期状態では、図9(b)の状態とされている。このとき、操作子28は、起立姿勢とされ、前後方向については中立位置とされている。
【0073】
この初期状態から、運転者の拇指Tによって図9(a)に示すように前方に押し上げ操作されると、マニュアル操作制御装置16を介して駆動系装置14が操作され、その結果、車両が増速される。
また、上記の初期状態から、運転者の拇指Tによって図9(c)に示すように後方に押し下げ操作されると、マニュアル操作制御装置16を介して制動装置15が操作され、その結果、車両が減速される。
【0074】
また、上記の初期状態から運転者の拇指Tによって図9(f)に示すように右ラッチ状態に操作されると、ラッチ位置検出センサ50が、そのことを定速走行制御装置11に出力する。この結果、定速走行制御装置11はオン状態とされる。
【0075】
定速走行制御装置11がオン状態になると、定速走行制御装置11では、メモリ54に記録されている前回作動時の定速走行速度を読み込み、その設定走行速度を、インストルメントパネル上の設定速度表示部23に表示するとともに、ステアリングホイール3上の定速走行ランプ22を点灯させ、さらに、反力解除装置24によってアクセルペダル12の反力スプリング12aの反力を無効にする。
なお、前回作動時と同じ定速走行速度で車両を走行させる場合には、操作子28による定速走行速度の変更操作を行わずに定速走行制御装置11による車両走行を継続する。
【0076】
図9(f)の状態から、運転者の拇指Tによって図9(g)に示すように前方に押し上げ操作されると、その操作に応じて、増速設定スイッチ52から定速走行制御装置11に定速走行速度を上げるべく信号が出力される。同様に、図9(f)の状態から、運転者の拇指Tによって図9(h)に示すように後方に押し下げ操作されると、その操作に応じて、減速設定スイッチ53から定速走行制御装置11に定速走行速度を下げるべく信号が出力される。このとき、増速設定スイッチ52や減速設定スイッチ53から定速走行制御装置11に出力される信号の増減幅は、前述のように操作子28を短時間操作するか、長時間長押し操作するかに応じて変化する。
【0077】
また、図9(a)に示すように、操作子28によって車両を増速している状態から、運転者の拇指Tによって図9(e)に示すように右ラッチ状態に操作されると、ラッチ位置検出センサ50が、そのことを定速走行制御装置11に出力する。この結果、定速走行制御装置11は上記と同様にオン状態とされる。この後、運転者が拇指Tの操作力を解除することにより、操作子28は、図9(f)の状態に遷移する。この状態では、上記と同様にして定速走行速度を変更することができる。
【0078】
図9(c)に示すように、操作子28によって車両を減速している状態から、運転者の拇指Tによって図9(i)に示すように右ラッチ状態に操作されると、ラッチ位置検出センサ50が、そのことを定速走行制御装置11に出力する。この結果、定速走行制御装置11はオン状態とされる。この後、運転者の拇指Tによる操作力が解除されると、操作子28が図9(f)の状態に遷移し、定速走行速度の変更が可能になる。
【0079】
また、図9(c)に示すように、操作子28によって最大に減速操作されている状態から、運転者が拇指Tによって図9(d)に示すように第2の傾斜姿勢方向に操作すると、車両が停車状態であれば、操作子28がラッチ機構30によってラッチされる。また、このときラッチ位置検出センサ50が、そのことを定速走行制御装置11に出力する。この状態から運転者によってアクセルペダル12が踏み込まれると、図示しない警報装置が作動する。
なお、図9(d)に示す左ラッチ状態から操作子28を初期状態に戻す場合には、運転者が拇指Tを指載せ面31に載せ置き、操作子28を起立姿勢に戻す。
【0080】
以上のように、本実施形態のステアリング用スイッチ10は、操作子28が起立姿勢と傾斜姿勢の間で傾動操作可能とされ、操作子28が第1の傾斜姿勢に操作されて自動制御(定速走行制御)に切り換えられたときに、操作子28が傾斜保持機構であるラッチ機構30によって姿勢を保持される。このため、ステアリング用スイッチ10の操作子28の指載せ面31に拇指Tを載せ置いた運転者は、指載せ面31に載せた拇指Tの角度と感触によって、車両が定速走行制御装置11による制御状態にあるか否かを容易に把握することができる。したがって、本実施形態のステアリング用スイッチ10を採用した場合には、運転者が視線を前方から外すことなく、車両が定速走行制御装置11による制御状態にあるか否かを容易に把握することができる。
【0081】
また、本実施形態のステアリング用スイッチ10は、支持軸26、ホルダー33,40、第1,第2,第3スプリング41,42,43等によって操作子28を前後方向に変位させる交差変位機構が構成され、操作子28が第1の傾斜姿勢で前後に操作されたときに、その操作に応じて定速走行速度を設定操作可能な増速設定スイッチ52と減速設定スイッチ53が設けられている。このため、本実施形態のステアリング用スイッチ10では、操作子28を第1の傾斜姿勢に傾動操作した状態で、運転者が拇指Tによって、操作子28を前後方向に操作することにより、定速走行制御の速度設定を容易に行うことができる。
【0082】
さらに、本実施形態のステアリング用スイッチ10は、操作子28が起立姿勢の状態で中立位置から前後方向に操作されたときに、その操作位置に応じた信号を定速走行制御装置11に出力する位置検出センサ51(マニュアル操作部)が設けられている。このため、本実施形態のステアリング用スイッチ10を採用した場合には、運転者がステアリングホイール3のリム部5を把持したまま車両の加減速を容易に操作することができる。この場合も、運転者は、拇指Tを載せた指載せ面31の角度と感触によって車両の加減速がマニュアル操作状態であることを容易に把握することができる。
【0083】
特に、本実施形態のステアリング用スイッチ10は、位置検出センサ51(マニュアル操作部)を通して、車両の加速度と減速度が操作子28の操作量に応じて操作される。このため、運転者は、操作子28が起立姿勢のときに、操作子28を前後方向に操作することにより、ステアリングホイール3を把持したまま車両の加速操作と減速操作を容易に行うことができる。
【0084】
また、本実施形態のステアリング用スイッチ10では、中立位置に操作子28を付勢する第1,第2,第3スプリング41,42,43を有する。そして、マニュアル操作部である位置検出センサ51は、操作子28が中立位置から前方に操作されたときに車両を加速する信号をマニュアル操作制御装置16に出力し、操作子28が中立位置から後方に操作されたときに車両を減速する信号をマニュアル操作制御装置16に出力する。このため、運転者が起立姿勢の操作子28を、前後方向に操作し、その状態で指載せ面31から拇指Tを離すと、操作子28が第1,第2,第3スプリング41,42,43の付勢力によって中立位置に戻され、車両に対する加速や減速が行われなくなる。したがって、本構成を採用した場合には、操作子28の操作性が良好になる。
【0085】
また、本実施形態のステアリング用スイッチ10の場合、操作子28は、起立姿勢から第1の傾斜姿勢と第2の傾斜姿勢とに傾動操作可能とされている。そして、ステアリング用スイッチ10は、操作子28が中立位置から最大減速位置まで操作されたときに、第2の傾斜姿勢に操作可能とされている。このため、操作子28が中立位置から最大減速位置まで操作された状態で、操作子28が第2の傾斜姿勢に操作されたときに、操作子28を第2の傾斜姿勢のままラッチ機構30によって保持することができる。したがって、本構成を採用した場合には、操作子28の操作によって車両を制動状態に維持することができる。
【0086】
さらに、本実施形態のステアリング用スイッチ10は、ラッチ機構30による操作子28のラッチを解除する回動アクチュエータ27を備え、定速走行制御がオンの状態でブレーキペダル13が踏み込まれたときに、回動アクチュエータ27が操作子28のラッチを解除する構成とされている。このため、定速走行制御がオンの状態でブレーキペダル13が踏み込まれたときに、操作子28を起立姿勢に戻し、定速走行制御をオフにすることができる。したがって、本構成を採用した場合には、緊急時に運転者による車両の加減速の操作を迅速に行うことができる。
なお、本実施形態では、定速走行制御がオンの状態で、ブレーキペダル13が踏み込まれたときに、回動アクチュエータ27が操作子28のラッチを解除する構成とされているが、定速走行制御がオンの状態で、ブレーキペダル13の踏み込みによって車両が一定速度以下に減速したときに、回動アクチュエータ27が操作子28のラッチを解除する構成としても良い。この場合、同様に、緊急時に運転者による車両の加減速の操作を迅速に行うことができる。
【0087】
さらに、本実施形態のステアリング用スイッチ10は、定速走行制御がオンの状態で、ステアリングホイール3の操舵角が一定角度以上であるときに、回動アクチュエータ27が操作子28のラッチを解除する構成とされている。このため、定速走行制御がオンの状態でステアリングホイール3が一定角度以上に操舵されたときに、操作子28を起立姿勢に戻し、定速走行制御をオフにすることができる。したがって、本構成を採用した場合には、緊急時に運転者による車両の加減速の操作を迅速に行うことができる。
【0088】
また、本実施形態のステアリング用スイッチ10では、保持片32,支持ピン36,リンク部材37,支持ピン38,39,第1,第2,第3スプリング41,42,43等によって指載せ傾斜機構が構成されている。そして、指載せ傾斜機構は、操作子28の中立位置からの操作量に応じて、操作子28の操作方向の端部が迫り上がるように指載せ面31の傾斜角度を変化させるように構成されている。このため、運転者が拇指Tによって操作子28を中立位置から前方に操作すると、その操作量に応じて前端部が迫り上がる(後端部が下方傾斜する)ように指載せ面31の傾斜角度が変化し、逆に拇指Tによって操作子28を中立位置から後方に操作すると、その操作量に応じて後端部が迫り上がる(前端部が下方傾斜する)ように指載せ面31の傾斜角度が変化する。このため、このステアリング用スイッチ10を採用した場合には、運転者は、拇指Tの先端を伸ばす押し上げ操作と、拇指Tを指関節で押し縮める押し下げ操作によって操作子28を容易に操作することができる。
また、本実施形態では、拇指Tを指載せ面31に載せて操作子28の操作を行う際に、拇指Tから操作方向に効率良く力を伝達することができる。このため、操作時に拇指Tの指紋が過度な力で押し潰されにくくなり、拇指Tの皮膚感度が良好に保たれる。したがって、本構成を採用した場合には、運転者の拇指Tによる操作フィーリングが良好になる。
【0089】
なお、本実施形態のステアリング用スイッチ10に、操作子28の操作位置に応じて操作子28に振動を付与する振動付与装置をさらに設けるようにしても良い。例えば、起立姿勢の操作子28を前方や後方に変位させる場合に、操作子28の位置が前端部や後端部の近傍に達した際に振動付与装置によって操作子28に振動を付与する。この場合、運転者は、拇指Tに伝わる振動によって操作子28の操作位置や操作状態をより良好に把握することができる。また、操作子28が第1の傾斜姿勢に操作された状態で、速度設定のために操作子28を前方や後方に操作する際に振動付与装置によって操作子28に振動を付与するようにしても良い。この場合、拇指Tに伝わる振動によって速度の設定操作が行われたことを良好に把握することができるとともに、運転者による操作子28の操作フィーリングを高めることができる。
【0090】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のステアリング用スイッチ110を、図16図21を参照して説明する。なお、上述した第1実施形態と同一部分には共通符号を付し、重複する部分の説明を一部省略する。また、ステアリング用スイッチ110の前後や上下、左右の呼称については、第1実施形態と同様とする。
【0091】
図16は、ステアリング用スイッチ110の一部の部品を取り去った模式的な側面図であり、図17は、ステアリング用スイッチ110の一部の部品を取り去った模式的な上面図である。また、図18は、図17のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
本実施形態のステアリング用スイッチ110は、定速走行制御装置による定速走行制御のオン・オフの切り換えと、定速走行速度の設定操作を行うことができる。本実施形態のステアリング用スイッチ110は、第1実施形態のように駆動系装置と制動装置のマニュアル操作を行う機能は備えていない。
【0092】
操作子28は、ベースブロック28aの上面に、凹状に湾曲した指載せ面31(操作面)が形成されている。ベースブロック28aは、左右方向に離間して配置された一対の保持片132A,132Bの上部に一体に固定されている。保持片132A,132Bの下端部には、ホルダー33が一体に取り付けられている。ホルダー33は、ケーシング25に回動可能に保持された支持軸に26に、相対回転を規制された状態で軸方向変位可能に支持されている。支持軸26の後端側は、保持解除装置である回動アクチュエータ27に連結され、支持軸26の前端側は、傾斜保持機構であるラッチ機構30に保持されている。操作子28は、起立姿勢と第1の傾斜姿勢の間で傾動操作可能とされている。また、ケーシング25の前壁25fとホルダー33の間には、第1スプリング41が介装され、ホルダー33とケーシング25の後壁25rの間には、第2スプリング42が介装されている。ホルダー33及び保持片132A,132Bと、操作子28とは、第1スプリング41と第2スプリング42によって前後方向に関して中立位置に付勢されている。
なお、本実施形態の場合も、傾斜保持機構は回動アクチュエータ27によって構成しても良い。
【0093】
ケーシング25の左側の側壁には、左右方向に沿って延びるロックピン60が突設されている。ロックピン60は、ケーシング25の前後方向の略中央位置に突設されている。これに対し、左側の保持片132Aの左側面には、ロックピン60の先端部が嵌入可能な係合穴61が形成されている。ロックピン60は、保持片132A,132Bが操作子28とともに中立位置に位置され、かつ、起立姿勢とされているときに係合穴61に嵌入される。ロックピン60は、保持片132Aの係合穴61に嵌入されることにより、保持片132A,132Bと操作子28の前後方向の移動を規制する。
【0094】
また、右側の保持片132Bの下部側の右側面には、側壁ブロック44が一体に取り付けられている。側壁ブロック44は、保持片132A,132Bよりも前後方向の長さの長い長方体状に形成されている。ケーシング25の右側の側壁には、前後一対のスイッチ保持ブロック46,47が取り付けられている。前側のスイッチ保持ブロック46と後側のスイッチ保持ブロック47の間には、傾動許容空間55が確保されている。傾動許容空間55には、操作子28が中立位置で右ラッチ状態とされたときに、側壁ブロック44が挿入状態で配置される。前側のスイッチ保持ブロック46の後面には、増速設定スイッチ52が取り付けられ、後側のスイッチ保持ブロック47の前面には、減速設定スイッチ53が取り付けられている。
【0095】
図19は、中立位置にある操作子28が右ラッチ状態とされたときにおける図17と同様の上面図であり、図20は、図19と同じ状態における図18と同様の断面図である。また、図21は、操作子28が右ラッチ状態から前方に操作されたときにおける図19と同様の上面図である。
操作子28は、図16図18に示す起立姿勢から、運転者の拇指Tによって、図19図20に示す第1の傾斜姿勢方向に傾動操作されると、ロックピン60と係合穴61の係合が外れ、ラッチ機構30が操作子28を傾斜姿勢のままラッチ状態にする。このとき、定速走行制御装置は、第1実施形態と同様にオン状態となる。また、この状態から運転者の拇指Tによって、起立姿勢方向に回動操作されると、定速走行制御装置は第1実施形態と同様にオフとなる。
【0096】
また、図19図20に示す右ラッチ状態から、運転者の拇指Tによって操作子28が前方に操作されると、図21に示すように、側壁ブロック44が前側のスイッチ保持ブロック46の増速設定スイッチ52をオンにする。増速設定スイッチ52は、第1実施形態と同様に、定速走行制御装置の設定走行速度(目標走行速度)を増加させる。また、図19図20に示す右ラッチ状態から、運転者の拇指Tによって操作子28が後方に操作されると、側壁ブロック44が後側のスイッチ保持ブロック47の減速設定スイッチ53をオンにする。減速設定スイッチ53は、第1実施形態と同様に、定速走行制御装置の設定走行速度(目標走行速度)を減少させる。
【0097】
本実施形態のステアリング用スイッチ110の場合、車両の加減速の操作機能や、操作子28の指載せ傾斜機構は備えていないものの、第1実施形態と同様に、操作子28を傾斜姿勢に保持するラッチ機構30や、傾斜姿勢での操作子28の前後操作によって設定走行速度を操作する設定操作部(増速設定スイッチ52、及び、減速設定スイッチ53)を備えている。このため、第1実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
【0098】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、ステアリング用スイッチ10によって車両の定速走行制御のオン・オフを切り換える構成とされているが、ステアリング用スイッチ10は、定速走行制御の切り換え操作に限らず、車両の追従走行制御等のその他の自動制御のオン・オフの切り換えを行うものであっても良い。
また、上記の実施形態では、四輪車両のステアリングホイール3にスイッチを設置しているが、本実施形態のスイッチは、二輪車や航空機、船舶等の他の輸送機器の操舵手段にも適用することができる。また、スイッチが取り付けられる操舵手段は、上記の実施形態のステアリングホイール3のような環状形態に限らず、非環状形態のものであっても良い。さらに、操舵手段は、レバー形態のものであっても良い。
【符号の説明】
【0099】
3…ステアリングホイール(操舵手段)
5…リム部(把持部)
10,110…ステアリング用スイッチ(輸送機器のスイッチ)
26…支持軸(姿勢可変機構)
27…回動アクチュエータ(保持解除装置)
28…操作子
30…ラッチ機構(傾斜保持機構)
31…指載せ面(操作面)
32,132A,132B…保持片(姿勢可変機構、指載せ傾斜機構)
33,40…ホルダー(姿勢可変機構)
36…支持ピン(指載せ傾斜機構)
37…リンク部材(姿勢可変機構、指載せ傾斜機構)
38,39…支持ピン(指載せ傾斜機構)
41…第1スプリング(付勢部材、指載せ傾斜機構)
42…第2スプリング(付勢部材、指載せ傾斜機構)
43…第3スプリング(付勢部材、指載せ傾斜機構)
50…ラッチ位置検出センサ(自動制御切換部)
51…位置検出センサ(マニュアル操作部)
52…増速設定スイッチ(設定操作部)
53…減速設定スイッチ(設定操作部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21