(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
F02M25/08 301H
(21)【出願番号】P 2019172390
(22)【出願日】2019-09-23
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一郎
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-262803(JP,A)
【文献】特開昭63-012872(JP,A)
【文献】特開2007-064154(JP,A)
【文献】特開2018-119453(JP,A)
【文献】特開2018-150901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0032307(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0045019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(61)、燃料タンク(62)及びバッテリ(7)を有する車両(6)に設けられ、前記燃料タンク内の燃料が蒸発した蒸発燃料(F1)を吸着するキャニスタ(2)と、前記燃料タンクから前記キャニスタに繋がるベーパ配管(41)と、前記ベーパ配管に設けられた密閉弁(3)とを有する蒸発燃料処理装置(1)であって、
前記密閉弁は、アクチュエータによって駆動されて、前記ベーパ配管を開閉する開度を定量的に調整可能であり、
前記蒸発燃料処理装置の制御装置(5)は、
前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が遮断された後、再び前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が復帰したことを検出する復帰検出部(55)と、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出したときに、前記密閉弁の開度が全閉又は全開になるよう、前記アクチュエータを駆動する復帰駆動部(56)と、を有する、蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
前記復帰駆動部は、前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出したときに、前記密閉弁の開度が全閉と全開との間で変化するための全量分の指令量を、前記密閉弁が閉じる方向に前記アクチュエータに送信するよう構成されている、請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
内燃機関(61)、燃料タンク(62)及びバッテリ(7)を有する車両(6)に設けられ、前記燃料タンク内の燃料が蒸発した蒸発燃料(F1)を吸着するキャニスタ(2)と、前記燃料タンクから前記キャニスタに繋がるベーパ配管(41)と、前記ベーパ配管に設けられた密閉弁(3)と、前記燃料タンクのフューエルリッド(620)の開閉状態を検出するリッドセンサ(46)とを有する蒸発燃料処理装置(1)であって、
前記密閉弁は、アクチュエータによって駆動されて、前記ベーパ配管を開閉する開度を定量的に調整可能であり、
前記蒸発燃料処理装置の制御装置(5)は、
前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が遮断された後、再び前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が復帰したことを検出する復帰検出部(55)と、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出したときに、前記密閉弁の開度を調整又は維持するよう、前記アクチュエータを駆動する復帰駆動部(56)と、を有し、
前記復帰駆動部は、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出し、かつ前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が開状態にあるときには、前記密閉弁の開度が全閉と全開との間で変化するための全量分の指令量を、前記密閉弁が開く方向に前記アクチュエータに送信する、又は前記密閉弁の開度を維持し、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出し、かつ前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が閉状態にあるときには、前記全量分の指令量を、前記密閉弁が閉じる方向に前記アクチュエータに送信するよう構成されている、蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
内燃機関(61)、燃料タンク(62)及びバッテリ(7)を有する車両(6)に設けられ、前記燃料タンク内の燃料が蒸発した蒸発燃料(F1)を吸着するキャニスタ(2)と、前記燃料タンクから前記キャニスタに繋がるベーパ配管(41)と、前記ベーパ配管に設けられた密閉弁(3)と、前記燃料タンクのフューエルリッド(620)の開閉状態を検出するリッドセンサ(46)とを有する蒸発燃料処理装置(1)であって、
前記密閉弁は、アクチュエータによって駆動されて、前記ベーパ配管を開閉する開度を定量的に調整可能であり、
前記蒸発燃料処理装置の制御装置(5)は、
前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が遮断された後、再び前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が復帰したことを検出する復帰検出部(55)と、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出したときに、前記密閉弁の開度を調整又は維持するよう、前記アクチュエータを駆動する復帰駆動部(56)と、を有し、
前記復帰駆動部は、
前記車両の車速が規定値以上であるか否かの情報を前記車両の電子制御ユニット(60)から受信するよう構成されており、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出するとともに、前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が開状態にあり、かつ前記車速が規定値未満であるときには、前記密閉弁の開度が全閉と全開との間で変化するための全量分の指令量を、前記密閉弁が開く方向に前記アクチュエータに送信する、又は前記密閉弁の開度を維持し、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出するとともに、前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が開状態にあり、かつ前記車速が規定値以上であるときには、前記全量分の指令量を、前記密閉弁が閉じる方向に前記アクチュエータに送信し、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出し、かつ前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が閉状態にあるときには、前記全量分の指令量を、前記密閉弁が閉じる方向に前記アクチュエータに送信するよう構成されている、蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を有する車両においては、内燃機関に用いられる液状の燃料が燃料タンクに貯留される。燃料タンク内の気相においては、温度に応じて、蒸発燃料の蒸気圧等によって圧力が発生している。そのため、燃料タンクに燃料を給油するときには、気相を構成する蒸発燃料を外部へ放出しないようにしたいことがある。この場合には、蒸発燃料を吸着可能なキャニスタを有する蒸発燃料処理装置を用いる。
【0003】
そして、燃料タンクへの給油を開始する前に、燃料タンクとキャニスタとを繋ぐベーパ配管に設けられた密閉弁を開けて、燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタの吸着材に吸着させる。その後、キャニスタの吸着材に吸着された燃料成分は、内燃機関の吸気管に供給して、内燃機関の燃焼を行う際に利用される。また、燃料タンク内の蒸発燃料を、キャニスタをバイパスさせて内燃機関の吸気管に供給することもある。
【0004】
蒸発燃料処理装置に用いられる密閉弁は、通常時は、燃料タンクとキャニスタとを繋ぐベーパ配管を閉じている。一方、蒸発燃料処理装置の制御装置からの密閉弁のアクチュエータへの信号があったときには、密閉弁によってベーパ配管が開けられる。密閉弁によるベーパ配管の開閉動作には、開度の調整をしない場合、開度の調整を2段階程度にする場合、開度を定量的に調整する場合等がある。
【0005】
ステッピングモータを用いて密閉弁の開度を定量的に調整する蒸発燃料処理装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。この蒸発燃料処理装置においては、燃料タンクの圧抜き時に、密閉弁としての封鎖弁のストローク量を変化させることによって、燃料タンクから、キャニスタに繋がるパージ配管へ流れる気体の流量を調整可能である。また、この蒸発燃料処理装置の制御手段は、電源から封鎖弁に供給可能な電圧が、封鎖弁を駆動可能な最低駆動電圧よりも高く設定された所定値未満となった場合、封鎖弁が、ベーパ配管を閉鎖する閉状態となるように制御する。これにより、電圧低下によって封鎖弁が開状態のままにならないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の蒸発燃料処理装置においては、電源の電圧が低下したときに、封鎖弁(密閉弁)を閉状態にする技術が開示されているに過ぎない。そして、特許文献1の蒸発燃料処理装置においては、電源、及び電源から制御手段への配線を含む電力系統に異常が生じ、電源から制御手段への電力の供給が断たれた後、再び電源から制御手段への電力の供給が復帰したときに、封鎖弁をどのように制御するかについては何ら記載されていない。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、バッテリから制御装置への電力の供給が遮断された後に、密閉弁を適切に動作させることができる蒸発燃料処理装置を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、
内燃機関(61)、燃料タンク(62)及びバッテリ(7)を有する車両(6)に設けられ、前記燃料タンク内の燃料が蒸発した蒸発燃料(F1)を吸着するキャニスタ(2)と、前記燃料タンクから前記キャニスタに繋がるベーパ配管(41)と、前記ベーパ配管に設けられた密閉弁(3)とを有する蒸発燃料処理装置(1)であって、
前記密閉弁は、アクチュエータによって駆動されて、前記ベーパ配管を開閉する開度を定量的に調整可能であり、
前記蒸発燃料処理装置の制御装置(5)は、
前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が遮断された後、再び前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が復帰したことを検出する復帰検出部(55)と、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出したときに、前記密閉弁の開度が全閉又は全開になるよう、前記アクチュエータを駆動する復帰駆動部(56)と、を有する、蒸発燃料処理装置にある。
【0010】
本発明の第2態様は、
内燃機関(61)、燃料タンク(62)及びバッテリ(7)を有する車両(6)に設けられ、前記燃料タンク内の燃料が蒸発した蒸発燃料(F1)を吸着するキャニスタ(2)と、前記燃料タンクから前記キャニスタに繋がるベーパ配管(41)と、前記ベーパ配管に設けられた密閉弁(3)と、前記燃料タンクのフューエルリッド(620)の開閉状態を検出するリッドセンサ(46)とを有する蒸発燃料処理装置(1)であって、
前記密閉弁は、アクチュエータによって駆動されて、前記ベーパ配管を開閉する開度を定量的に調整可能であり、
前記蒸発燃料処理装置の制御装置(5)は、
前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が遮断された後、再び前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が復帰したことを検出する復帰検出部(55)と、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出したときに、前記密閉弁の開度を調整又は維持するよう、前記アクチュエータを駆動する復帰駆動部(56)と、を有し、
前記復帰駆動部は、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出し、かつ前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が開状態にあるときには、前記密閉弁の開度が全閉と全開との間で変化するための全量分の指令量を、前記密閉弁が開く方向に前記アクチュエータに送信する、又は前記密閉弁の開度を維持し、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出し、かつ前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が閉状態にあるときには、前記全量分の指令量を、前記密閉弁が閉じる方向に前記アクチュエータに送信するよう構成されている、蒸発燃料処理装置にある。
【0011】
本発明の第3態様は、
内燃機関(61)、燃料タンク(62)及びバッテリ(7)を有する車両(6)に設けられ、前記燃料タンク内の燃料が蒸発した蒸発燃料(F1)を吸着するキャニスタ(2)と、前記燃料タンクから前記キャニスタに繋がるベーパ配管(41)と、前記ベーパ配管に設けられた密閉弁(3)と、前記燃料タンクのフューエルリッド(620)の開閉状態を検出するリッドセンサ(46)とを有する蒸発燃料処理装置(1)であって、
前記密閉弁は、アクチュエータによって駆動されて、前記ベーパ配管を開閉する開度を定量的に調整可能であり、
前記蒸発燃料処理装置の制御装置(5)は、
前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が遮断された後、再び前記バッテリから前記制御装置への電力の供給が復帰したことを検出する復帰検出部(55)と、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出したときに、前記密閉弁の開度を調整又は維持するよう、前記アクチュエータを駆動する復帰駆動部(56)と、を有し、
前記復帰駆動部は、
前記車両の車速が規定値以上であるか否かの情報を前記車両の電子制御ユニット(60)から受信するよう構成されており、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出するとともに、前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が開状態にあり、かつ前記車速が規定値未満であるときには、前記密閉弁の開度が全閉と全開との間で変化するための全量分の指令量を、前記密閉弁が開く方向に前記アクチュエータに送信する、又は前記密閉弁の開度を維持し、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出するとともに、前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が開状態にあり、かつ前記車速が規定値以上であるときには、前記全量分の指令量を、前記密閉弁が閉じる方向に前記アクチュエータに送信し、
前記復帰検出部が前記電力の供給が復帰したことを検出し、かつ前記リッドセンサによって検出される前記フューエルリッドの開閉状態が閉状態にあるときには、前記全量分の指令量を、前記密閉弁が閉じる方向に前記アクチュエータに送信するよう構成されている、蒸発燃料処理装置にある。
【発明の効果】
【0012】
(第1態様の蒸発燃料処理装置)
前記第1態様の蒸発燃料処理装置においては、アクチュエータによって駆動され、開度を検出する機能を有しない電動式の密閉弁を用いる際に、バッテリ、及びバッテリから制御装置への配線を含む電力系統に異常が生じたときの対応について工夫をしている。
【0013】
電動式の密閉弁は、アクチュエータへの指令量に応じて開度を調整する一方、開度がどれだけであるかをフィードバックする機能は有していない。そのため、バッテリの電力が制御装置に供給されなくなったときには、密閉弁の開度が不明になる。
【0014】
制御装置は、復帰検出部及び復帰駆動部を有しており、復帰検出部が、電力の供給の遮断後に電力の供給が復帰したことを検出したときに、復帰駆動部が、密閉弁の開度が全閉又は全開の状態になるよう、アクチュエータを駆動する。この構成により、バッテリ自体の故障、バッテリのヒューズの切断、バッテリから制御装置へのケーブルの断線、ケーブルのコネクタの外れ等の異常が生じて、バッテリから制御装置へ電力が供給されなくなった後、電力が復帰したときには、密閉弁が全閉又は全開の基準位置になる。そして、密閉弁が全閉又は全開の基準位置になった後には、密閉弁を適宜必要な開度に調整することができる。
【0015】
それ故、前記第1態様の蒸発燃料処理装置によれば、バッテリから制御装置への電力の供給が遮断された後に、密閉弁を適切に動作させることができる。
【0016】
(第2態様の蒸発燃料処理装置)
前記第2態様の蒸発燃料処理装置においては、電動式の密閉弁を用いるとともにリッドセンサを利用する場合に、電力系統に異常が生じたときの対応について工夫をしている。この場合には、復帰検出部が電力の供給が復帰したことを検出し、かつリッドセンサによって検出されるフューエルリッドの開閉状態が開状態にあるときには、電力の遮断時に燃料タンクへの給油中であったと判断することができる。そして、このときには、復帰駆動部は、密閉弁の開度を全開にするかそのまま維持する。これにより、燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに排出することができる。
【0017】
一方、復帰検出部が電力の供給が復帰したことを検出し、かつリッドセンサによって検出されるフューエルリッドの開閉状態が閉状態にあるときには、密閉弁を全閉の基準位置に戻し、燃料タンクを密閉状態にすることができる。また、密閉弁が全閉又は全開の基準位置になった後には、密閉弁を適宜必要な開度に調整することができる。
【0018】
それ故、前記第2態様の蒸発燃料処理装置によっても、バッテリから制御装置への電力の供給が遮断された後に、密閉弁を適切に動作させることができる。
【0019】
(第3態様の蒸発燃料処理装置)
前記第3態様の蒸発燃料処理装置においては、電動式の密閉弁を用いるとともにリッドセンサ及び車速を利用する場合に、電力系統に異常が生じたときの対応について工夫をしている。この場合には、復帰検出部が電力の供給が復帰したことを検出するとともに、リッドセンサによって検出されるフューエルリッドの開閉状態が開状態にあり、かつ車速が規定値未満であるときには、電力の遮断時に燃料タンクへの給油中であり、フューエルリッドの閉め忘れもなかったと判断することができる。そして、このときには、復帰駆動部は、密閉弁の開度を全開にするかそのまま維持する。これにより、燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに排出することができる。
【0020】
一方、リッドセンサによって検出されるフューエルリッドの開閉状態が開状態にあったとしても、車速が規定値以上であるときには、密閉弁を全閉の基準位置に戻し、燃料タンクを密閉状態にすることができる。また、復帰検出部が電力の供給が復帰したことを検出し、かつリッドセンサによって検出されるフューエルリッドの開閉状態が閉状態にあるときには、密閉弁を全閉の基準位置に戻し、燃料タンクを密閉状態にすることができる。また、密閉弁が全閉又は全開の基準位置になった後には、密閉弁を適宜必要な開度に調整することができる。
【0021】
それ故、前記第3態様の蒸発燃料処理装置によっても、バッテリから制御装置への電力の供給が遮断された後に、密閉弁を適切に動作させることができる。
【0022】
なお、本発明の一態様において示す各構成要素のカッコ書きの符号は、実施形態における図中の符号との対応関係を示すが、各構成要素を実施形態の内容のみに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる、蒸発燃料処理装置が配置された車両の一部を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態1にかかる、蒸発燃料処理装置の制御装置を概略的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態1にかかる、蒸発燃料処理装置における、閉口位置にある密閉弁を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態1にかかる、蒸発燃料処理装置における、開口位置にある密閉弁を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1にかかる、燃料タンク内の気相ガスの圧力と密閉弁の開弁開始量との関係マップを示すグラフ。
【
図6】
図6は、実施形態1にかかる、制御装置による開度指令量と密閉弁の開度との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施形態1にかかる、制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態2にかかる、制御方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態3にかかる、制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述した蒸発燃料処理装置の制御装置にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態の蒸発燃料処理装置1は、
図1に示すように、内燃機関61及び燃料タンク62を有する車両6に設けられており、燃料タンク62内の燃料Fが蒸発した蒸発燃料F1を吸着するキャニスタ2と、燃料タンク62からキャニスタ2に繋がるベーパ配管41と、ベーパ配管41に設けられた密閉弁3とを有する。蒸発燃料処理装置1の制御装置5は、密閉弁3の開閉動作等を制御するものである。
【0025】
図2に示すように、密閉弁3は、アクチュエータとしてのステッピングモータ35によって駆動されて、ベーパ配管41を開閉する開度を定量的に調整可能である。制御装置5は、復帰検出部55及び復帰駆動部56を有する。復帰検出部55は、バッテリ(電源)7から制御装置5への電力の供給が遮断された後、再びバッテリ7から制御装置5への電力の供給が復帰したことを検出するよう構成されている。復帰駆動部56は、復帰検出部55が電力の供給が復帰したことを検出したときに、密閉弁3の開度が全閉になるよう、ステッピングモータ35を駆動するよう構成されている。
【0026】
以下に、本形態の蒸発燃料処理装置1の制御装置5について詳説する。
(蒸発燃料処理装置1)
図1に示すように、蒸発燃料処理装置1は、車両6において、燃料タンク62内の気相ガスGを構成する蒸発燃料F1を、燃料タンク62への燃料Fの補給時に大気へ放出しないようにするために用いられる。燃料タンク62内の蒸発燃料F1は、キャニスタ2に蓄えられた後に内燃機関61の吸気管611に放出される、又はキャニスタ2をバイパスして内燃機関61の吸気管611に放出される。そして、蒸発燃料F1の燃料成分は、内燃機関61における燃焼に使用される。
【0027】
吸気管611から内燃機関61に供給される燃焼用空気Aの流量は、吸気管611内に配置されたスロットルバルブ612の操作を受けて調整される。内燃機関61には、燃料タンク62から供給される燃料Fを噴射する燃料噴射装置63が配置されている。
【0028】
(燃料タンク62)
図1に示すように、燃料タンク62は、内燃機関61の燃焼運転に使用される燃料Fを貯留するものである。燃料タンク62には、外部から燃料Fが給油されるときに使用される給油口621と、ベーパ配管41が繋がるパージ口622と、内燃機関61の燃料噴射装置63へ燃料Fを供給するときに使用される燃料ポンプ623とが設けられている。燃料ポンプ623は、燃料タンク62の液相を構成する燃料Fを燃料噴射装置63へ供給するものである。
【0029】
給油口621には、通常時に給油口621を閉口するとともに、給油時に取り外して、給油口621を開口するフューエルキャップ621Aが配置されている。また、車両6には、通常時にフューエルキャップ621Aを覆い、給油時に移動して、フューエルキャップ621Aの取り外し・取り付けの操作を可能にするフューエルリッド620が設けられている。燃料タンク62には、フューエルリッド620を移動させて、フューエルキャップ621Aの操作を可能にするためのリッドアクチュエータ47と、燃料タンク62内の圧力Pを検出する圧力センサ44とが設けられている。また、燃料タンク62内には、気相ガスGの圧力Pを感知して、給油ノズルによる給油を停止させるための満タンバルブ(図示略)も配置されている。
【0030】
(車両6)
図1に示すように、車両6のエンジンルーム等には、車両6における電気系統に用いられる直流電源としてのバッテリ7が配置されている。バッテリ7は、12V、24V等の直流電圧を有する。蒸発燃料処理装置1の制御装置5、内燃機関(エンジン)61の電子制御ユニット60等は、バッテリ7から電力の供給を受けて動作する。蒸発燃料処理装置1の制御装置5は、車両6の内燃機関61がオンになっているとき及びオフになっているときのいずれにおいても、バッテリ7からの電力の供給を受けて動作する。
【0031】
車両6の室内には、燃料タンク62に給油する際に、乗員によって押されるリッドスイッチ45が設けられている。燃料タンク62からキャニスタ2への蒸発燃料F1の排出は、リッドスイッチ45の操作を受けて行われる。
【0032】
(キャニスタ2)
図1に示すように、キャニスタ2は、ケース21と、ケース21内に配置されて、蒸発燃料(気化燃料)F1を吸着する活性炭等の吸着材22を有する。キャニスタ2のケース21には、ベーパ配管41に繋がれる、気相ガスGの入口211と、パージ配管42に繋がれる、燃料成分の出口212と、大気に開放可能な圧抜き口213とが設けられている。圧抜き口213には、圧抜き口213を開閉するための開閉弁23が配置されている。燃料タンク62の気相からキャニスタ2へ気相ガスGを排出(排気)するときには、開閉弁23によって圧抜き口213が大気に開放される。そして、キャニスタ2においては、吸着材22に気相ガスGにおける蒸発燃料F1中の燃料成分が吸着され、キャニスタ2内の圧力Pは大気圧と同等になる。
【0033】
また、キャニスタ2の吸着材22に吸着された燃料成分は、パージ配管42を通過して内燃機関61の吸気管611に放出される。このときには、キャニスタ2の圧抜き口213が大気に開放されるとともに、パージ弁43によってパージ配管42が開けられる。そして、圧抜き口213からキャニスタ2内に入る大気の圧力と、吸気管611に生じる負圧力との差圧を利用した空気の流れによって、吸着材22に吸着された燃料成分が内燃機関61の吸気管611に放出される。
【0034】
(密閉弁3)
図3及び
図4に示すように、本形態の密閉弁3は、制御弁として機能する電動式のものであり、バッテリ7からの電力の供給を受けてステッピングモータ35が動作することにより、ベーパ配管41を開閉する開度の調整が可能である。ステッピングモータ35は、バッテリ7からの電力の供給が遮断された無通電時に、回転位置が固定されるものである。なお、密閉弁3を駆動するアクチュエータには、ステッピングモータ35以外にも、例えば、定量的にスライド位置を制御することができるものを用いることができる。
【0035】
密閉弁3は、ハウジング31、バルブガイド32、バルブ33、バルブ側スプリング34、ステッピングモータ35及びガイド側スプリング36を備える。ハウジング31は、密閉弁3のケースを構成するものであり、ベーパ配管41に接続される密閉流路311を有する。バルブガイド32は、ステッピングモータ35の回転力を推進力に換えて、ハウジング31に対して進退可能である。バルブ33は、バルブガイド32に対してスライド可能に係合しており、ハウジング31の密閉流路311を開閉するものである。
【0036】
バルブ側スプリング34は、バルブガイド32とバルブ33との間に挟まれており、密閉流路311を閉じる方向にバルブ33を付勢している。ガイド側スプリング36は、バルブガイド32の外周に配置されており、ステッピングモータ35の出力軸351とバルブガイド32との間に生じるバックラッシを緩和するためのものである。
【0037】
(ハウジング31)
図3及び
図4に示すように、ハウジング31は、バルブガイド32を収容する収容穴310と、収容穴310に連通された密閉流路311とを有する。収容穴310は、ハウジング31における軸線方向Lの基端側L2から形成されている。密閉流路311は、燃料タンク62に接続されて気相ガスGが流入する流入部312と、キャニスタ2へ気相ガスGを流出させる流出部314とを有する。流入部312は、収容穴310の先端側L1において収容穴310と平行に形成されており、流出部314は、収容穴310に垂直に形成されている。
【0038】
(軸線方向L)
軸線方向Lは、バルブ33が密閉流路311を開閉する方向と平行な方向である。密閉弁3の軸線方向Lにおいて、ステッピングモータ35が配置された側を基端側L2といい、バルブ33によって密閉流路311が塞がれる側を先端側L1という。
【0039】
(バルブガイド32)
図3及び
図4に示すように、バルブガイド32は、ステッピングモータ35の出力軸351に螺合された中心軸部321と、中心軸部321の周りに形成されたガイド円板部322と、ガイド円板部322の周縁部から突出して円筒形状に形成されたガイド筒部323と、ガイド筒部323の内周面に形成されてバルブ33を係止する係止部323aとを有する。ステッピングモータ35の出力軸351の外周には、おねじ352が形成されている。バルブガイド32の中心軸部321の中心には、中空穴321aが形成されており、中空穴321aの内周には、ステッピングモータ35の出力軸351のおねじ352に螺合されるめねじ321bが形成されている。係止部323aは、ガイド筒部323の内周面から内周側に突出する突出部によって構成されている。ステッピングモータ35の本体は、ハウジング31に固定されている。
【0040】
(バルブ33)
図3及び
図4に示すように、バルブ33は、バルブガイド32のガイド筒部323の内周側に配置されて係止部323aに係止される被係止突起331aが設けられたバルブ筒部331と、バルブ筒部331の端部を閉塞するバルブ閉塞板部332と、バルブ閉塞板部332に設けられて密閉流路311の開口部313を封止する環形状の封止材333とを有する。バルブ筒部331は、バルブ側スプリング34の外周をガイドする円筒形状に形成されている。被係止突起331aは、バルブ筒部331の軸線方向Lの基端側L2の端部において、外周側に突出して形成されている。バルブ閉塞板部332及び被係止突起331aは、バルブガイド32のガイド筒部323の内周によって軸線方向Lにガイドされる。
【0041】
封止材333は、ハウジング31における、密閉流路311の流入部312の開口部313の周縁部に配置される。封止材333の軸線方向Lの先端側L1には、ハウジング31における、密閉流路311の流入部312の開口部313の周縁部に接触して弾性変形する封止部333aが形成されている。封止部333aの全周の軸線方向Lにおける先端側L1の位置は、バルブ閉塞板部332の軸線方向Lの基端側L2の表面と平行な仮想平面内にある。
【0042】
バルブ33は、バルブ側スプリング34によって軸線方向Lの先端側L1に付勢されており、バルブ33のバルブ筒部331の被係止突起331aがバルブガイド32のガイド筒部323の係止部323aによって係止されることによって、バルブガイド32内に維持されている。バルブ33は、
図3に示すように、バルブ側スプリング34の付勢力を受けて密閉流路311を閉口する閉口位置301と、
図4に示すように、バルブガイド32の軸線方向Lの基端側L2への移動量に応じて、密閉流路311の開口量が決定される開口位置302とに移動可能である。閉口位置301は、バルブ33の初期位置(通常位置)を構成し、バルブ33の通常状態においては、バルブ33の封止材333によって密閉流路311が閉口されている。開口位置302は、バルブ33によって密閉流路311が少しでも開いている位置のことを示し、密閉弁3が任意の開度でベーパ配管41を開けている状態のことを示す。
【0043】
図3に示すように、バルブ33の封止材333の封止部333aによって密閉流路311の流入部312の開口部313が閉塞されるときには、バルブ側スプリング34が弾性復帰しようとする付勢力によって、バルブ閉塞板部332に軸線方向Lの先端側L1へ作用する力が、流入部312における気相ガスGによる圧力によって、バルブ閉塞板部332に軸線方向Lの基端側L2へ作用する力よりも大きくなっている。これにより、バルブ33が閉口位置301に維持され、密閉流路311が閉口された状態が維持される。
【0044】
一方、
図4に示すように、密閉流路311の流入部312の開口部313を開口するために、ステッピングモータ35によってバルブガイド32が軸線方向Lの基端側L2に移動するときには、バルブガイド32とともにバルブ33及びバルブ側スプリング34も軸線方向Lの基端側L2に移動する。そして、バルブ33の封止材333における封止部333aが、ハウジング31における、密閉流路311の流入部312の開口部313の周縁部から離れ、バルブ33が開口位置302に移動し、密閉流路311が開口される。こうして、ステッピングモータ35に通電される駆動パルスの数に応じて、バルブガイド32、バルブ33及びバルブ側スプリング34が軸線方向Lの基端側L2に移動する量が決定される。これにより、密閉流路311の開口量が定量的に決定される。
【0045】
(バルブ側スプリング34,ガイド側スプリング36)
図3及び
図4に示すように、バルブ側スプリング34及びガイド側スプリング36は、素線としての丸線が螺旋状に捩じられた圧縮コイルばね(ねじりコイルばね)から構成されている。バルブ側スプリング34は、密閉流路311を閉じるバルブ33に所定の付勢力を付与して、この付勢力を利用してバルブ33を閉口位置301に維持するためものである。ガイド側スプリング36は、バルブガイド32のガイド筒部323の外周に配置されている。ガイド側スプリング36は、ガイド筒部323に形成された段差部323bと、ハウジング31における、密閉流路311の流入部312の開口部313の周縁部との間に挟まれている。
【0046】
バルブガイド32がガイド側スプリング36によって軸線方向Lの基端側L2に付勢されていることにより、ステッピングモータ35の出力軸351のおねじ352と、バルブガイド32の中心軸部321の中心穴のめねじ321bとの間の隙間が軸線方向Lの一方側に寄せられる。これにより、ステッピングモータ35の出力軸351が回転する際に、出力軸351とバルブガイド32との間の軸線方向Lのがたつき(バックラッシ)が抑えられる。
【0047】
(パージ弁43)
図1に示すように、パージ弁43は、キャニスタ2の吸着材22に吸着された燃料成分を内燃機関61の吸気管611へパージ(放出)するとき、及び燃料タンク62の気相ガスGを内燃機関61の吸気管611へパージ(放出)するときに、パージ配管42を開けるよう構成されている。本形態のパージ弁43は、パージ配管42をオン・オフ的に開閉する機能を有するものである。
【0048】
パージ弁43は、パルス状の通電指令によって開閉を繰り返すとともに、パルス幅におけるオンとオフの比率を変調して、パージ配管42を開ける開度を定量的に変化させるものとすることもできる。この場合には、キャニスタ2から内燃機関61の吸気管611へ燃料成分を含むパージガスをパージするときに、パージ弁43を流れるパージガスの流量を適宜調整することができる。また、パージ弁43は、パージ配管42を開ける開度を定量的に変化させることができる制御弁によって構成することもできる。
【0049】
(圧力センサ44)
図1に示すように、圧力センサ44は、燃料タンク62における気相ガスGの圧力Pを検出する圧力計によって構成されている。燃料タンク62内の気相ガスGの圧力Pのほとんどは、蒸発燃料F1の蒸気圧による。
【0050】
(制御装置5)
図1及び
図2に示すように、蒸発燃料処理装置1の制御装置5は、車両6の電子制御ユニット60内に構成されている。密閉弁3、パージ弁43、開閉弁23は、出力機器として制御装置5に接続されており、制御装置5からの指令を受けて開閉動作が可能である。制御装置5から、密閉弁3におけるステッピングモータ35へ所定の駆動パルス数の通電が行われたときには、バルブ33が密閉流路311の開口部313を開ける。圧力センサ44、リッドスイッチ45及びリッドセンサ46は、入力機器として制御装置5に接続されている。
【0051】
なお、蒸発燃料処理装置1の制御装置5は、車両6の電子制御ユニット60とは別に設け、車両6の電子制御ユニット60とデータの送受信ができるように接続されていてもよい。
【0052】
制御装置5は、燃料タンク62に給油する際に、リッドスイッチ45の入力を受けて、燃料タンク62内の蒸発燃料F1をキャニスタ2に排出する動作の制御を行う。制御装置5は、リッドスイッチ45が押されたときには、密閉弁3を開けるようステッピングモータ35を駆動する制御部位と、密閉弁3が開けられた後、圧力センサ44による圧力Pが規定圧力以下に低下したときに、密閉弁3を閉じるようステッピングモータ35を駆動するとともに、リッドアクチュエータ47を駆動してフューエルリッド620を開ける制御部位とを有する。
【0053】
(制御装置5による各動作501,502,503)
制御装置5は、密閉動作、ベーパ動作501、排出動作502、パージ動作503及び学習動作504のそれぞれを実行可能である。制御装置5による密閉動作は、密閉弁3によってベーパ配管41を閉じて燃料タンク62を密閉する動作である。換言すれば、密閉動作は、密閉弁3のバルブ33が密閉流路311の開口部313を閉口し、燃料タンク62の密閉状態を維持する動作のことをいう。密閉動作は、ステッピングモータ35の出力軸351の回動位置が保持されて、バルブ33が閉口位置(初期位置)301にある状態が維持されることを示す。蒸発燃料処理装置1の通常時においては、制御装置5の密閉動作が行われている。
【0054】
制御装置5によるベーパ動作501は、密閉弁3によってベーパ配管41を開けて、燃料タンク62内の気相ガスGをキャニスタ2へ排出する動作である。ベーパ動作501は、燃料タンク62に給油を行う前に、燃料タンク62内の気相ガスGをキャニスタ2に排出するときに行われる。ベーパ動作501が行われることにより、燃料タンク62内の気相ガスGの圧力Pが低下し、燃料タンク62の給油口621が開けられるときに、燃料タンク62の気相ガスGにおける蒸発燃料F1が大気に放出されることが防止される。制御装置5は、圧力センサ44によって検出される気相ガスGの圧力Pが所定値以下になったときに、ベーパ動作501を終了することができる。
【0055】
制御装置5による排出動作502は、パージ弁43によってパージ配管42を開けて、キャニスタ2内の燃料成分を吸気管611へパージする動作である。排出動作502は、キャニスタ2の吸着材22に吸着された燃料成分を、内燃機関61における、燃料と燃焼用空気との混合気の燃焼に利用するときに行われる。
【0056】
制御装置5によるパージ動作503は、密閉弁3によってベーパ配管41を開けるとともにパージ弁43によってパージ配管42を開けて、キャニスタ2をバイパスして燃料タンク62内の気相ガスGを吸気管611へパージする動作である。パージ動作503は、燃料タンク62に給油が行われた後、内燃機関61が燃焼運転を行う際に、燃料タンク62内の気相ガスGを内燃機関61の吸気管611にパージするときに行われる。パージ動作503においては、気相ガスG中の蒸発燃料F1がキャニスタ2の吸着材22に吸着されずに、キャニスタ2の一部を通過する。
【0057】
パージ動作503が行われることにより、内燃機関61の燃焼運転中において、燃料タンク62内の気相ガスGの圧力Pを低下させることができる。制御装置5は、圧力センサ44によって検出される気相ガスGの圧力Pが所定値以上になったときに、パージ動作503を開始し、圧力センサ44によって検出される気相ガスGの圧力Pが所定値以下になったときに、パージ動作503を終了することができる。
【0058】
制御装置5は、学習動作504も実行可能である。制御装置5による学習動作504は、制御装置5による密閉動作が行われている最中に、開度指令部51からステッピングモータ35への開度指令量K1をゼロから徐々に増加させることによって行う。また、学習動作504は、密閉動作が行われている最中に、燃料タンク62内の気相ガスGの圧力Pが変化する過程において行われる。
図5に示すように、学習動作504によって、気相ガスGの圧力Pが異なる複数の場合についての、開弁開始量K0と気相ガスGの圧力Pとの圧力関係マップM1が得られる。
【0059】
(制御装置5の具体的構成)
制御装置5は、密閉弁3に生じる不感帯を補正する機能を有する。この機能は、密閉弁3を駆動するステッピングモータ35への指令量が所定量になったときに初めて密閉弁3が開くことに着目し、この所定量分だけ指令量を増やす機能である。
【0060】
図2に示すように、制御装置5は、開度指令部51、開弁検出部52、関係学習部53及び開度補正部54を有する。開度指令部51は、密閉弁3の開度を決定するための開度指令量K1をステッピングモータ35に送信するよう構成されている。開弁検出部52は、開度指令量K1がゼロから徐々に増加されるときに、開度指令量K1が、気相ガスGの圧力Pが低下を開始するときの開弁開始量K0になったことを検出するよう構成されている。本形態においては、気相ガスGの圧力Pが低下を開始するときが、密閉弁3が閉じた状態から開いた状態に変化したと判断される。
【0061】
図5に示すように、関係学習部53は、開弁検出部52が複数の異なる開弁開始量K0を検出するとともに圧力センサ44が複数の異なる大きさの気相ガスGの圧力Pを検出するときの、開弁開始量K0と気相ガスGの圧力Pとの関係を学習して、開弁開始量K0と気相ガスGの圧力Pとの圧力関係マップM1を作成するよう構成されている。開弁開始量K0は、圧力センサ44によって検出される気相ガスGの圧力Pが高くなるほど小さくなる。換言すれば、圧力センサ44によって検出される気相ガスGの圧力Pが高くなるほど、密閉弁3の不感帯が大きくなって、密閉弁3が開きにくくなる。
【0062】
図5及び
図6に示すように、開度補正部54は、不感帯を補正する機能を有するものであり、ベーパ動作501又はパージ動作503を行うために密閉弁3を開けるときに圧力センサ44によって検出される気相ガスGの圧力Pである動作時圧力Paを圧力関係マップM1に照合して、このときの開弁開始量K0である動作時開弁開始量Kaを読み取り、開度指令部51による開度指令量K1を動作時開弁開始量Kaによって補正するよう構成されている。
【0063】
(開度指令部51)
図3及び
図4に示すように、制御装置5の開度指令部51は、ベーパ動作501、パージ動作503及び学習動作504において、開度指令量K1として、密閉弁3のステッピングモータ35を駆動するための所定数の駆動パルスをステッピングモータ35に送信する。開度指令部51による開度指令量K1は、ステッピングモータ35を駆動するための駆動パルスの数によって決定される。ステッピングモータ35に送信される駆動パルスによってステッピングモータ35の出力軸351が所定角度だけ回動し、これに伴ってバルブガイド32、バルブ33及びバルブ側スプリング34が所定量だけ軸線方向Lにストローク(移動)する。
【0064】
密閉弁3の開度は、ステッピングモータ35に送信するパルス数に応じて決定される。ただし、密閉弁3には、不感帯が存在し、不感帯は、密閉弁3のバルブ33が閉口位置301にある状態において、ステッピングモータ35へステップ状の通電を行っても、バルブ33が実際に閉口位置301から移動しないパルス数、換言すれば、バルブ33の封止材333が密閉流路311から離れず、気相ガスGの圧力Pが低下を開始しないパルス数として表される。また、不感帯となるパルス数は、密閉弁3の開弁開始量K0として表される。
【0065】
図6に示すように、開弁開始量K0は、密閉弁3の不感帯を補うものであり、開弁開始量K0が開度指令部51による開度指令量K1に加えられることにより、開度指令量K1によって密閉弁3の開度を、ゼロから比例的に変化させることを可能にする。また、開弁開始量K0は、開度指令部51による開度指令量K1を補正するための開度補正量として捉えることもできる。気相ガスGの圧力Pに応じて、開度補正量としての開弁開始量K0が変化する。
【0066】
(開弁検出部52)
制御装置5の開弁検出部52は、学習動作504において、バルブ33が閉口位置(初期位置)301にある状態において、開度指令部51からステッピングモータ35に送信される開度指令量K1と、圧力センサ44から受信する気相ガスGの圧力Pとを監視し、気相ガスGの圧力Pが低下を開始する時の開度指令量K1を開弁開始量K0として検出する。開弁開始量K0は、ステッピングモータ35に送信される駆動パルスの数の積算値によって表される。気相ガスGの圧力Pが低下を開始する時は、気相ガスGの圧力Pが所定量低下した時とすることができる。
【0067】
(関係学習部53)
図5に示すように、制御装置5の関係学習部53は、車両6及び蒸発燃料処理装置1の使用が開始された後に、開度指令部51による開度指令量K1を気相ガスGの圧力Pによって補正するために構築されている。関係学習部53は、バルブ33が閉口位置301にある状態において、気相ガスGの圧力Pが異なる複数の場合について、開度指令部51による開度指令量K1をゼロから徐々に増加させたときに、開弁検出部52によって検出される開弁開始量K0を読み取る。そして、開弁開始量K0と気相ガスGの圧力Pとの関係が学習された、開弁開始量K0と気相ガスGの圧力Pとの圧力関係マップM1が作成される。
【0068】
密閉流路311の流入部312に作用する気相ガスGの圧力Pは、密閉流路311の流出部314に作用するキャニスタ2内の圧力よりも高く、バルブ33には、バルブ33が軸線方向Lの基端側L2に移動しようとする圧力が作用する。そして、気相ガスGの圧力Pが高くなるほどバルブ33を軸線方向Lの基端側L2に移動させようとする圧力が高くなる。そのため、開弁検出部52による、開閉弁23の開弁開始量K0は、気相ガスGの圧力Pが高くなるほど小さく検出される。
【0069】
(開度補正部54)
図6に示すように、制御装置5の開度補正部54は、開度指令部51による開度指令量K1に、開弁開始量K0を加味して補正する。そして、密閉弁3の開度を直接検出していなくても、開度補正部54によって密閉弁3の不感帯による誤差要因を補正して、密閉弁3の開度を目標とする開度に近づけ、密閉弁3を通過する気相ガスGの流量を適切な流量に制御する。
【0070】
図5に示すように、開度補正部54は、ベーパ動作501及びパージ動作503のいずれを行うときにも、開弁開始量K0と気相ガスGの圧力Pとの圧力関係マップM1を用いて、開度指令部51による開度指令量K1を補正する。開度補正部54は、ベーパ動作501及びパージ動作503を行うときには、密閉弁3によってベーパ配管41が開けられるときの、気相ガスGの圧力Pである動作時圧力Paを圧力センサ44によって検出する。
【0071】
次いで、開度補正部54は、動作時圧力Paを圧力関係マップM1に照合して、動作時圧力Paに応じた開弁開始量K0である動作時開弁開始量Kaを読み取る。次いで、開度補正部54は、開度指令部51が密閉弁3のステッピングモータ35へ開度指令量K1を送信する際に、この開度指令量K1に動作時開弁開始量Kaを加える補正を行う。換言すれば、開度補正部54は、開度指令部51からステッピングモータ35に送信される開度指令量K1としてのパルス数を、開度指令量K1に相当するパルス数に動作時開弁開始量Kaに相当するパルス数を加えたパルス数とする補正を行う。
【0072】
こうして、
図6に示すように、開度補正部54によって、密閉弁3の開度の目標値としての目標開度に基づく開度指令量K1に、動作時開弁開始量Kaが加えられた補正後開度指令量K2が求められる。そして、ベーパ動作501及びパージ動作503において、密閉弁3によってベーパ配管41が開けられるときには、開度指令部51から密閉弁3のステッピングモータ35へ補正後開度指令量K2が送信され、密閉弁3の開度が決定される。
【0073】
(復帰検出部55)
図1及び
図2に示すように、制御装置5の復帰検出部55は、バッテリ7から制御装置5へ供給される電力の有無を検出するよう構成されている。復帰検出部55は、バッテリ7又は制御装置5に設けられた、バッテリ7から制御装置5への電圧又は電流を検出する検出器を用い、検出器からの信号によって電力の供給の有無を検知する。
【0074】
バッテリ7から制御装置5への電力の供給が遮断される場合としては、例えば、バッテリ7自体の故障、バッテリ7のヒューズの切断、バッテリ7から制御装置5へのケーブルの断線、ケーブルのコネクタの外れ等があった場合が想定される。これらの場合には、制御装置5に電力が供給されなくなり、電力を復旧するメンテナンスが必要になる。そして、メンテナンスによって制御装置5への電力の供給が復帰したときには、復帰検出部55が電圧又は電流の正常値への復帰を検出する。バッテリ7から制御装置5への電力の供給の復帰は、制御装置5にバッテリ7の電力が電気的に再接続されることによって検出される。また、復帰検出部55は、制御装置5に加わる電圧が所定値以上になったときに、電力の供給が復帰したことを検出することができる。
【0075】
(復帰駆動部56)
図1及び
図2に示すように、制御装置5は、ステッピングモータ35の回転位置を記憶する機能は有していない。そして、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が遮断された後、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が復帰したときには、制御装置5は、ステッピングモータ35の回転位置がどこにあるかを把握することができない。本形態の復帰駆動部56は、復帰検出部55がバッテリ7から制御装置5への電力の供給が復帰したことを検出したときに、密閉弁3の開度が全閉と全開との間で変化するための全量分の指令量を、密閉弁3が閉じる方向にステッピングモータ35に送信するよう構成されている。
【0076】
つまり、復帰駆動部56は、ステッピングモータ35の回転位置が把握できないため、電力復帰時に、ステッピングモータ35に全量分の指令量を送信して、密閉弁3の開度が確実に全閉の状態になるようにする。全量分の指令量とは、バルブ33が密閉流路311を、全閉の状態から全開の状態にすることができる、又は全開の状態から全閉の状態にすることができる、復帰駆動部56からステッピングモータ35への駆動量のことをいう。
【0077】
また、本形態においては、全量分の指令量は、密閉弁3に生じる不感帯が考慮され、開度補正部54によって補正された、開度指令部51からステッピングモータ35への補正後開度指令量K2として設定される。つまり、全量分の指令量は、開度補正部54によって補正されることにより、密閉弁3の開度が全閉と全開との間で変化するためのステッピングモータ35の回転量に、不感帯を補正する回転量が加えられた量となる。換言すれば、全量分の指令量は、密閉弁3の開度が全閉と全開との間で変化するためのステッピングモータ35の駆動パルス数に、不感帯を形成する範囲を考慮した余分の駆動パルス数が加えられた駆動パルス数として、補正後開度指令量K2として設定することができる。
【0078】
(制御方法)
次に、蒸発燃料処理装置1の制御装置5を用いた制御方法について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
バッテリ7から制御装置5への電力の供給が正常に行われる場合には、制御装置5による指令を受けて密閉弁3、パージ弁43、開閉弁23等が動作する。制御装置5の復帰検出部55は、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が遮断された後に機能する。復帰検出部55は、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が遮断された後に、バッテリ7から制御装置5への電力の有無を検出する(ステップS101)。次いで、復帰検出部55は、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が復帰したか否かを検出する(ステップS102)。
【0079】
そして、復帰検出部55が電力の供給の復帰を検出したときには、復帰駆動部56は、開度指令部51によって、全量分の指令量を、密閉弁3が閉じる方向にステッピングモータ35に送信する(ステップS103)。これにより、制御装置5への電力の供給が復帰したときには、密閉弁3が、ベーパ配管41を閉じる初期位置(閉口位置)301に一旦戻される。その後、密閉弁3は、制御装置5によるベーパ動作501又はパージ動作503が行われるタイミングに応じて開けられる。
【0080】
(作用効果)
本形態の蒸発燃料処理装置1の制御装置5においては、ステッピングモータ35によって駆動され、開度を検出する機能を有しない電動式の密閉弁3を用いる際に、バッテリ7、及びバッテリ7から制御装置5への配線を含む電力系統に異常が生じた場合について工夫をしている。
【0081】
電動式の密閉弁3は、ステッピングモータ35への指令量に応じて開度を調整する一方、開度がどれだけであるかを検出する機能、換言すればステッピングモータ35の回転位置をフィードバックする機能は有していない。そのため、バッテリ7の電力が制御装置5に供給されなくなったときには、密閉弁3の開度が不明になる。
【0082】
制御装置5は、復帰検出部55及び復帰駆動部56を有しており、復帰検出部55が、電力の供給の遮断後に電力の供給が復帰したことを検出したときに、復帰駆動部56が、密閉弁3の開度が全閉の状態になるようステッピングモータ35を駆動する。この構成により、バッテリ7を含む電力系統に生じた異常によってバッテリ7から制御装置5へ電力が供給されなくなった後に、電力が再び復帰したときには、密閉弁3の開度が全閉である基準位置としての初期位置301になる。そして、電力の供給の復帰後に、密閉弁3は、初期位置301に一旦動作した後、適宜必要な開度に調整することができる。
【0083】
それ故、本形態の蒸発燃料処理装置1の制御装置5によれば、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が遮断された後に、密閉弁3を適切に動作させることができる。
【0084】
なお、復帰駆動部56は、復帰検出部55が電力の供給が復帰したことを検出したときに、密閉弁3の開度が全開になるよう、ステッピングモータ35を駆動するよう構成することもできる。この場合には、密閉弁3の開度が全開になった後、密閉弁3の開度を適宜必要な開度に調整することができる。
【0085】
<実施形態2>
本形態の復帰駆動部56は、フューエルリッド620の開閉状態を検出するリッドセンサ46の信号に応じて、電力復帰後の密閉弁3の開度を全閉にするか全開にするかを決定するよう構成されている。具体的には、本形態の復帰駆動部56は、復帰検出部55が電力の供給が復帰したことを検出し、かつリッドセンサ46によって検出されるフューエルリッド620の開閉状態が開状態にあるときには、密閉弁3の開度の全量分の指令量を、密閉弁3が開く方向にステッピングモータ35に送信するよう構成されている。このときには、フューエルリッド620が開いており、電力の遮断時に燃料タンク62への給油中であったことが検知される。そのため、密閉弁3の開度を一旦全開にすることにより、燃料タンク62内の蒸発燃料F1をキャニスタ2の吸着材22に排出することができる。
【0086】
一方、本形態の復帰駆動部56は、復帰検出部55が電力の供給が復帰したことを検出し、かつリッドセンサ46によって検出されるフューエルリッド620の開閉状態が閉状態にあるときには、密閉弁3の開度の全量分の指令量を、密閉弁3が閉じる方向にステッピングモータ35に送信するよう構成されている。このときには、フューエルリッド620が閉じており、電力の遮断時にベーパ動作501は行われておらず、密閉弁3を開ける必要がないことが検知される。そのため、密閉弁3の開度を一旦全閉にすることにより、燃料タンク62を密閉状態にする。
【0087】
本形態の蒸発燃料処理装置1の制御装置5を用いた制御方法においては、
図8のフローチャートに示すように、まず、復帰検出部55が、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が遮断された後に、バッテリ7から制御装置5への電力の有無を検出する(ステップS201)。次いで、復帰検出部55は、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が復帰したか否かを検出する(ステップS202)。そして、復帰検出部55が電力の供給の復帰を検出したときには、復帰駆動部56は、リッドセンサ46によってフューエルリッド620が閉状態にあるか否かを検出する(ステップS203)。
【0088】
フューエルリッド620が閉状態にあるときには、復帰駆動部56は、開度指令部51によって、全量分の指令量を密閉弁3が閉じる方向にステッピングモータ35に送信する(ステップS204)。これにより、密閉弁3の開度が全閉になり、燃料タンク62が密閉される。一方、ステップS203において、フューエルリッド620が開状態にあるときには、復帰駆動部56は、開度指令部51によって、全量分の指令量を密閉弁3が開く方向にステッピングモータ35に送信する(ステップS205)。これにより、密閉弁3の開度が全開になり、燃料タンク62からキャニスタ2へ蒸発燃料F1を排出する状態が形成される。その後、密閉弁3の開度は、開度指令部51からステッピングモータ35への指令によって、適切な開度に変更される。
【0089】
なお、ステップS203において、フューエルリッド620が開状態にあるときには、復帰駆動部56は、密閉弁3の開度を全開にする代わりに、密閉弁3の開度を、電力の供給が遮断された時点のままの開度に維持することもできる。この場合には、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が復帰した後に、復帰駆動部56は、ステッピングモータ35を駆動しないことができる。
【0090】
本形態の蒸発燃料処理装置1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0091】
<実施形態3>
本形態の復帰駆動部56は、フューエルリッド620の開閉状態を検出するリッドセンサ46の信号、及び車両6の車速の情報に応じて、電力復帰後の密閉弁3の開度を全閉にするか全開にするかを決定するよう構成されている。具体的には、本形態の復帰駆動部56は、車両6の車速が規定値以上であるか否かの情報を車両6の電子制御ユニット60から受信するよう構成されている。なお、制御装置5が電子制御ユニット60に構築されている場合には、復帰駆動部56は、制御装置5における車速の情報を利用する。車速は、スピードメータ等によって検出されるものとし、車速の規定値は、例えば、1km/h以上である場合には、規定値以上であるとすることができる。
【0092】
本形態の復帰駆動部56は、復帰検出部55が電力の供給が復帰したことを検出するとともに、リッドセンサ46によって検出されるフューエルリッド620の開閉状態が開状態にあり、かつ車速が規定値未満であるときには、密閉弁3の開度の全量分の指令量を、密閉弁3が開く方向にステッピングモータ35に送信するよう構成されている。このときには、フューエルリッド620が開いた状態で車両6が停車しているため、電力の遮断時に燃料タンク62への給油中であったことが検知される。そのため、密閉弁3の開度を一旦全開にすることにより、燃料タンク62内の蒸発燃料F1をキャニスタ2の吸着材22に排出することができる。
【0093】
また、本形態の復帰駆動部56は、復帰検出部55が電力の供給が復帰したことを検出するとともに、リッドセンサ46によって検出されるフューエルリッド620の開閉状態が開状態にあり、かつ車速が規定値以上であるときには、密閉弁3の開度の全量分の指令量を、密閉弁3が閉じる方向にステッピングモータ35に送信するよう構成されている。このときには、フューエルリッド620が開いているものの、車両6が走行しているため、燃料タンク62に給油が行われた後、フューエルリッド620の閉め忘れがあったことが検知される。そのため、密閉弁3の開度を一旦全閉にすることができる。なお、フューエルリッド620が開いたまま車両6が走行し始めたときには、車両6の計器盤等において、警告ランプ等を点灯させることができる。
【0094】
また、本形態の復帰駆動部56は、復帰検出部55が電力の供給が復帰したことを検出し、かつリッドセンサ46によって検出されるフューエルリッド620の開閉状態が閉状態にあるときには、密閉弁3の開度の全量分の指令量を、密閉弁3が閉じる方向にステッピングモータ35に送信するよう構成されている。このときには、フューエルリッド620が閉じており、電力の遮断時にベーパ動作501は行われておらず、密閉弁3を開ける必要がないことが検知される。そのため、密閉弁3の開度を一旦全閉にすることにより、燃料タンク62を密閉状態にする。
【0095】
本形態の蒸発燃料処理装置1の制御装置5を用いた制御方法においては、
図9のフローチャートに示すように、まず、復帰検出部55が、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が遮断された後に、バッテリ7から制御装置5への電力の有無を検出する(ステップS301)。次いで、復帰検出部55は、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が復帰したか否かを検出する(ステップS302)。そして、復帰検出部55が電力の供給の復帰を検出したときには、復帰駆動部56は、リッドセンサ46によってフューエルリッド620が閉状態にあるか否かを検出する(ステップS303)。
【0096】
フューエルリッド620が閉状態にあるときには、復帰駆動部56は、開度指令部51によって、全量分の指令量を密閉弁3が閉じる方向にステッピングモータ35に送信する(ステップS304)。これにより、密閉弁3の開度が全閉になり、燃料タンク62が密閉される。一方、ステップS303において、フューエルリッド620が開状態にあるときには、復帰駆動部56は、車速が規定値以上であるか否かを検出する(ステップS305)。
【0097】
車速が規定値以上であるときには、復帰駆動部56は、フューエルリッド620の閉め忘れがあったと判断して、開度指令部51によって、全量分の指令量を密閉弁3が閉じる方向にステッピングモータ35に送信する(ステップS304)。これにより、密閉弁3の開度が全閉になり、燃料タンク62が密閉される。一方、ステップS305において、車速が規定値以上でないときには、復帰駆動部56は、開度指令部51によって、全量分の指令量を密閉弁3が開く方向にステッピングモータ35に送信する(ステップS306)。これにより、密閉弁3の開度が全開になり、燃料タンク62からキャニスタ2へ蒸発燃料F1を排出する状態が形成される。その後、密閉弁3の開度は、開度指令部51からステッピングモータ35への指令によって、適切な開度に変更される。
【0098】
なお、ステップS305において、車速が規定値以上でないときには、復帰駆動部56は、密閉弁3の開度を全開にする代わりに、密閉弁3の開度を、電力の供給が遮断された時点のままの開度に維持することもできる。この場合には、バッテリ7から制御装置5への電力の供給が復帰した後に、復帰駆動部56は、ステッピングモータ35を駆動しないことができる。
【0099】
本形態の蒸発燃料処理装置1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0100】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1 蒸発燃料処理装置
2 キャニスタ
3 密閉弁
5 制御装置
55 復帰検出部
56 復帰駆動部
61 内燃機関
62 燃料タンク
7 バッテリ