(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】光学フィルタの相補的角度遮断領域
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20221201BHJP
G01J 3/26 20060101ALI20221201BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20221201BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20221201BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20221201BHJP
G02B 5/04 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
G02B5/22
G01J3/26
G02B5/00 Z
G02B5/26
G02B5/28
G02B5/04 A
(21)【出願番号】P 2019542354
(86)(22)【出願日】2017-10-18
(86)【国際出願番号】 US2017057191
(87)【国際公開番号】W WO2018075640
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウィートリー,ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,グワーンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ,ジル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ビアナス,ロルフ ダブリュ.
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】清水 康司
【審判官】井口 猶二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0135750(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0009563(US,A1)
【文献】特表2015-507758(JP,A)
【文献】特開2011-220770(JP,A)
【文献】特表2008-537793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/00,5/04,5/22,5/26,5/28
G01J3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタが、主面の法線軸に対して0°から最大光透過角θ
Tmaxまでの角度を含む所定の光透過ゾーンを有し、前記光学フィルタは、
θ
Tmax
から90°までの角度を含む所定角度の遮光ゾーンθ
Bを有する、主面と、
前記法線軸に対して第1の角度の遮光範囲θ
ALを有する角度遮断層と、
前記角度遮断層に隣接する干渉フィルタであって、前記法線軸に対して第2の角度の遮光範囲θ
IFを有し、θ
Bはθ
IF又はθ
ALのいずれかに属する全ての角度を含み、θ
IFとθ
ALは少なくとも部分的に重なり合う、干渉フィルタと、を備え、
第1の角度の遮光範囲θ
ALが90°未満の上限を有し、前記角度遮断層は所定の光漏れ角度透過ゾーンを有し、前記所定の光漏れ角度透過ゾーンが前記第1の角度の遮光範囲θ
ALの上限から90°までに亘り、
前記角度遮断層の、前記所定の光漏れ角度透過ゾーンが、前記干渉フィルタの第2の角度の遮光範囲θ
IFにより覆われる、光学フィルタ。
【請求項2】
θ
ALにおける少なくとも1つの角度は、θ
IFにおける1つの角度より大きい、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
θ
IFにおける少なくとも1つの角度は、θ
ALにおける1つの角度より大きい、請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
θ
IF及びθ
ALの一方又は双方は波長依存性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記干渉フィルタは、複屈折性多層光学フィルム又は等方性フィルムの一方又は双方を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記角度遮断層は、複数の角度制限機構を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記角度遮断層は、ターンフィルム又は輝度向上フィルムの一方又は双方を含む、請求項
6に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記干渉フィルタは、反射帯域を含む特有な透過スペクトルを有し、前記反射帯域は、入射角が増加するとより短い波長にシフトする帯域端を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
波長選択的吸収材を更に含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記干渉フィルタが入射角依存反射帯域を有し、
前記入射角依存反射帯域と前記第1の角度の遮光範囲θ
ALとが少なくとも1つの入射角の少なくとも1つの波長で重なり合う、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
前記干渉フィルタは、複屈折性多層光学フィルム又は等方性フィルムの一方又は双方を含む、請求項
10に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
前記干渉フィルタは、前記入射角依存反射帯域を含む特有な透過スペクトルを有し、前記入射角依存反射帯域は、入射角が増加するとより短い波長にシフトする帯域端を有する、請求項
10又は
11に記載の光学フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学フィルタ及び光学フィルタを含むセンサに関する。本開示はまた、相補的角度遮断領域を有する光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルタは、光通信システム、光センサ、撮像、科学及び産業用光学機器、及びディスプレイシステムなどの広範な用途に使用されている。光学フィルタは、光を含む入射電磁放射の透過を管理する光学層を備えてもよい。光学フィルタは、入射光の一部を反射又は吸収し、入射光の別の部分を透過させることができる。光学フィルタ内の光学層は、波長選択性、光透過率、光学的透明性、光学ヘイズ、及び屈折率が異なってもよい。
【0003】
シリコン光センサ及びCMOSイメージセンサを含む、上記の用途に使用することができるさまざまな種類の光センサがある。これらのセンサは、可視及び近赤外にまたがるスペクトル感度機能を有し、これは上記の範囲にわたって均一ではない。光センサは広いスペクトル感度機能を有するので、周囲の光源は光ノイズを発生させ、センサの機能を妨害する恐れがある。望ましくない光は、太陽、白熱灯、LED、OLEDなどを含む多数の周囲光源から到来する可能性がある。問題を引き起こす周囲光源に加えて、センサを含む光学システム内の光源が問題を引き起こす恐れがある。例えば、パルス酸素濃度計は、血液の酸素化又は脱酸素化を感知するデバイスである。これらのデバイスは、2つの異なる波長で発光する2つのLED、及び各LEDと対になった2つの異なるセンサを有することができる。この場合、第1のLEDからの光が第2のセンサと干渉する恐れがあるため、センサが誤ったLEDからの光を受光しないようにする光学フィルタによって、この干渉を低減することができる。
【発明の概要】
【0004】
一実施例では、本開示は、主面を含む光学フィルタの実施例を説明する。光学フィルタの実施例は、主面の法線軸に対して0°から最大光透過角θTmaxまでの角度を含む所定の光透過ゾーンを有する。光学フィルタの実施例は、θ
Tmax
から90°までの角度を含む所定角度の遮光ゾーンθBを有する。光学フィルタの実施例は、法線軸に対して第1の角度の遮光範囲θALを有する角度遮断層を含んでいる。光学フィルタの実施例は、角度遮断層に隣接する干渉フィルタを含む。干渉フィルタは、法線軸に対して第2の角度の遮光範囲θIFを有する。θBはθIFとθALの和である。θIFとθALは少なくとも部分的に重なり合う。
【0005】
一実施例において、本開示は、入射角依存反射帯域を有する干渉フィルタを含む光学フィルタの実施例を説明する。光学フィルタの実施例は、吸収帯域を有する吸収層を含む。入射角依存反射帯域と吸収帯域は、少なくとも1つの入射角の少なくとも1つの波長で重なり合う。
【0006】
本発明の1つ以上の態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の上記及び他の態様は、以下の「発明を実施するための形態」において、添付の図面を併せて読むことによって、より明らかとなる。
【0008】
【
図1A】角度遮断層の実施例の角度透過率を示すチャートである。
【
図1B】角度遮断層の実施例の角度透過率を示すチャートである。
【0009】
【
図1C】入射角の変化に伴う、干渉フィルタの実施例の帯域シフトの概念図である。
【0010】
【
図2A】凹状構造を含む物品の実施例の概念的かつ概略的な横断面図である。
【
図2B】凹状構造を含む物品の実施例の概念的かつ概略的な横断面図である。
【0011】
【
図2C】凹状構造及び干渉フィルタを含む物品の実施例の概念的かつ概略的な横断面図である。
【0012】
【
図2D】凹状構造のみを含む物品と比較した、凹状構造と干渉フィルタを含む物品の薄型化の概念的かつ概略的な側面断面図である。
【0013】
【
図3A】吸収層の実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
【
図3B】吸収層の実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
【
図3C】吸収層の実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
【0014】
【
図4A】角度遮断層、干渉フィルタ、及び吸収層を含む光学フィルタの実施例の概略的及び概念的な分解断面図である。
【
図4B】角度遮断層、干渉フィルタ、及び吸収層を含む光学フィルタの実施例の概略的及び概念的な分解断面図である。
【0015】
【
図4C】角度遮断層を含む光学フィルタの実施例の概略的かつ概念的な分解断面図であり、傾斜した通過ゾーンを有する。
【0016】
【
図4D】角度遮断層及び干渉フィルタを含む光学フィルタの実施例の概略的かつ概念的な分解断面図であり、拡張された遮断ゾーンによって画定される傾斜した通過ゾーンを有する。
【0017】
【
図5A】4Aの光学フィルタの実施例による角度透過及び角度遮断の概略的かつ概念的な図である。
【0018】
【
図5B】
図5Aの光学フィルタの実施例による角度透過及び角度遮断の概略的かつ概念的な図である。
【0019】
【
図5C】光学フィルタの実施例による角度透過及び角度遮断の概略的かつ概念的な図である。
【0020】
【
図6A】干渉フィルタと吸収層とを含む光学フィルタの実施例の入射角の変化に伴う帯域シフトの概念図である。
【0021】
【
図6B】多層光学フィルム干渉フィルタ、染料フィルタ、及び多層光学フィルム干渉フィルタと染料フィルタとの組み合わせを含む物品による光の透過及び遮断を比較する写真である。
【0022】
【
図7A】
図6Bの多層光学フィルム干渉フィルタの実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
【0023】
【
図7B】
図6Bの吸収層の透過スペクトルを示すチャートである。
【0024】
【
図7C】
図7Aの干渉フィルタと
図7Bの吸収層とを含む光学フィルタの実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
【0025】
【
図8A】多層光学フィルム干渉フィルタの実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
【0026】
【
図8B】吸収層の実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
【0027】
【
図8C】
図8Aの干渉フィルタ及び
図8Bの吸収層を含む光学フィルタの実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
【0028】
【
図9】光学フィルタ、光源、センサ、及び反射器を含むシステムの実施例を示す概略的かつ概念的な図である。
【0029】
本開示の特定の図の特徴は必ずしも原寸に比例して描かれているわけではなく、図は、本明細書に開示されている技法の非排他的な実施例を示していることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
光学フィルタを使用して、反射光又は透過光のスペクトルを変更することができる。例えば、多層光学フィルム(MOF、multilayer optical films)を光学フィルタに使用することができる。MOFは、多層薄膜技術を用いて作製することができ、MOFの波長範囲及び他の光学特性は、層の厚さ及び屈折率の範囲の関数とすることができる。光学フィルタはまた、所定の波長の光が透過又は反射される角度を制御するために使用してもよい。
【0031】
例えばMOF干渉フィルタのMOF反射帯域の帯域端の位置の波長が変動すると、入射角又は視野角が変化するにつれて、視覚的に検出され得る光学的アーチファクトをもたらす可能性がある。例えば、特に干渉フィルタを含む光学フィルタの通過ゾーンと消光ゾーンとの間の遷移角において厚さがわずかに変動すると、これが感知される場合があり、これによって遮断角と透過角との間の視覚的に均一な遷移が損なわれる恐れがある。
【0032】
かかる変動は、角度制限要素、例えば構造化表面フィルムを組み合わせることによって軽減することができる。構造化表面、例えばプリズムフィルムは、通過から遮断への急激な遷移を達成することができるが、遮断ゾーンの反対側にあり得る他の角度で光を漏出することがある。大きな入射角で最小量の漏れを有するプリズムフィルムでさえ、可視光漏れを呈することがある。更に、最小の高角度光放射を有するプリズムフィルムは、通過から遮断への移行角度が特定の用途に望まれるよりも垂直入射から更に遠くに設計されることを必要とする場合がある。加えて、プリズムフィルムは、プリズムの軸を横切る角度に沿って最もよく機能することができ、直交平面に沿ってはあまりよく機能しない。単独で使用した場合、プリズムフィルムは特定の条件下で金属的外観を呈することがある。したがって、プリズムフィルムは、通過から遮断への角度の比較的鋭い遷移を示すことができるが、高角を包含する単一の連続ゾーンを遮断することはできない。
【0033】
光学フィルタにおいて干渉フィルタを角度制限要素と組み合わせると、それらの各制約を克服することができる。例えば、角度制限要素が干渉フィルタによって示される帯域端の変動を緩和する一方で、干渉フィルタは角度制限要素がブロックし得ない高角度で光透過を効果的に遮断することができる。
【0034】
本開示に係る光学フィルタの実施例は、狭い波長の光源から検出器への光の角度範囲を制限することができる。いくつかの実施例では、光学フィルタの実施例は、所定の波長帯域内の光の角強度分布を制御することができる。いくつかの実施例では、光学フィルタの実施例は、干渉フィルタ、例えばMOF干渉フィルタ、及び角度制限要素、例えば角度遮断層を含んでもよい。角度遮断層は、屈折性であってもよく、又は光学現象、例えば吸収によって所定の角度で光を物理的に遮断してもよい。干渉フィルタ及び角度遮断層は、相補的な角度遮断領域を有することができる。例えば、干渉フィルタは、法線に対して第1の範囲の入射角で光の透過を遮断し、角度遮断層は、法線に対して第2の範囲の入射角で光の透過を遮断してもよい。干渉フィルタ及び角度遮断層のうちの一方によって遮断されない少なくともいくつかの角度は、干渉フィルタ及び角度遮断層のうちの他方によって遮断することができる。いくつかの実施例では、干渉フィルタによって遮断された少なくとも1つの角度はまた、角度遮断層によって遮断されてもよい。いくつかの実施例では、干渉フィルタによって遮断される第1の角度範囲及び角度遮断要素によって遮断される第2の角度範囲のうちの一方又は双方は、光の波長に依存してもよい。
【0035】
本開示に係る光学フィルタの実施例において使用するための角度遮蔽層及び干渉フィルタの光学的特性は、
図1A~
図1Cを参照して以下に説明する。
【0036】
図1A及び
図1Bは、角度遮断層の実施例の角度透過率を示すチャートである。
図1Aは、一方の側に所定のプリズム構造と反対側に平滑面とを備えた3M Optical Lighting Film(3M,Saint Paul,MN)を含む角度遮断層の実施例に関する透過光分布パターンを示すチャートである。
図1Aの角度遮断層の実施例は、法線から約30°まで延びる法線の周りの光の放射又は透過のゾーンABNを有し、約30°を超える光をカットオフし、約35°を超える光の透過を遮断する。カットオフ角は線ABで示される。しかし、約60度を超える角度では、光は再び透過する。消光又は遮断の角度の範囲は、領域ABCに含まれる、即ち約35°~60°である。したがって、
図1Aの角度遮断層の実施例は、ゾーンCBDにおいて光漏れを示す。
【0037】
図1Bは、3M Transmissive Right Angle Film(TRAF)(3M,Saint Paul,MN)を備えた角度遮断層の実施例に関する透過光分布パターンを示すチャートである。
図1Bの角度遮断層の実施例は、A1B1Nゾーンにおける光透過、それに続くC1B1A1ゾーンにおける遮断、それに続くD1B1C1ゾーンにおける高角度光漏れを伴う、
図1Aのものと同様の遮断ゾーンを示す。
【0038】
光学物品の実施例を参照して説明するように、干渉フィルタは、角度遮断層によって示される光漏れ、例えば、高角度での光漏れを遮断するために使用することができる。
【0039】
図1Cは、入射角の変化に伴って、干渉フィルタの実施例によって示される帯域シフトの概念図である。干渉フィルタは、スペクトル的に選択的であってもよく、透過波長範囲及び反射(又は遮断)波長範囲を有する。これら2つの範囲の間の遷移点は「帯域端」である。反射帯域は、光の入射角が法線から斜めに変化するにつれて、より短い波長にシフトする。干渉フィルタのこの特性は、光源から発光されるか又はセンサによって受信される所定の波長の光の角度範囲を制限するために、使用することができる。法線入射では、干渉フィルタの透過スペクトルにおける反射帯域の帯域端は、所定の通信波長よりも長い波長であるが、目的とされる斜めの入射角で通信波長をさえぎるのに十分近い。例えば、干渉フィルタは、法線入射ではLED通信波長よりも10~100nm高い位置に配置された帯域端を有することができる。斜めの入射角では、反射帯域はより短い波長にシフトし、通信波長を遮断する。その結果、円錐形の受信角度となる。
【0040】
本開示に係る光学物品の実施例は、各々が相補的な角度ゾーンを遮断するように、角度選択的要素の角度遮断ゾーンと組み合わせて、干渉フィルタのかかる角度シフトを利用することができる。
【0041】
本開示に係る光学物品の実施例は、通常はより厚いシステムを必要とするであろう角度範囲を遮断するより薄いシステムに到達するために使用され得る。例えば、
図2A及び
図2Bを参照して説明するように、物理的な壁が透過角を幾何学的に制限する凹部に基づく角度制限要素を使用することができる。
【0042】
図2A及び
図2Bは、凹状構造壁を含む物品の実施例の概念的かつ概略的な横断面図である。
図2Aに示す物品の実施例1aは、特性寸法L
1を有する凹状構造壁13aを持つ角度遮断層12aを備えている。凹状構造壁13aは、多角形、円形、楕円形、又は他の断面、を有する凹状構造壁、例えば、凹状円筒壁構造とすることができる。凹状構造壁13aにより、光源16からの入射光14aは透過角α
1以内で透過することができ、透過角α
1を超える光は物理的又は光学的に遮断される。光源16としては、誘導光又は周囲光、太陽光、LED、レーザ、白熱光、蛍光灯、コンパクト蛍光灯、又は他の直接又は間接の光源などの光源を挙げることができる。透過角α
1の大きさは、特性寸法L
1に関連している。L
1が低下すると、α
1は増加する。例えば、
図2Bに示す物品の実施例1bは、L
1よりも小さい特性寸法L
2を有する凹状壁13bを持つ角度遮断層12bを備えている。その結果、物品の実施例1bが示す透過角α
2は、α
1よりも大きい。したがって、比較的小さい透過角、例えばα
1を達成するためには、凹状構造壁の比較的大きい特性寸法、例えば凹状構造壁13aのL
1が必要とされるであろう。しかし、凹状構造の特性寸法を増大すると、物品1aの厚さが増大することになり、これは望ましくないであろう。
【0043】
図2Cは、凹状構造壁13bを有する角度遮断層12b及び干渉フィルタ18を含む物品の実施例10の概念的かつ概略的な横断面図である。(凹状構造壁13aのL
1と比較して)より短い特性寸法L
2を有する凹状構造壁13bは、(α
2を超える)より大きい光角度を遮断し、一方、干渉フィルタ18は、より小さい透過角(例えばα
1とα
2の間)を遮断して、透過角を効果的に小さくしてα
1にする。したがって、物品の実施例10は、物品1bに関連したより大きい透過角α
2の代わりに、より厚い物品1aに関連したより小さい透過角α
1を提供しながら、物品1bと同じくらい薄くすることができる。
【0044】
図2Dは、より小さい特性寸法L
2を有する凹状構造壁13b及び干渉フィルタ18を含む物品の厚さの減少の概念的かつ概略的な横断面図である。対照的に、凹状構造壁13aのみを含む物品は、基板19上のセンサ20に対して同様の光の透過角を達成するためにより大きい特性寸法L
1を有する。
【0045】
いくつかの実施例では、光学フィルタの実施例は、干渉フィルタに対して相補的な波長遮断範囲を有するスペクトル選択的吸収材を含んでもよい。例えば、スペクトル選択的吸収材及び干渉フィルタのうちの一方によって遮断されない波長は、干渉フィルタ及びスペクトル選択的吸収材のうちの他方によって遮断されてもよい。スペクトル選択的吸収材は、染色されたPETフィルム、又は鋭い吸収スペクトルを有し得る「ゲルフィルタ」を含むことができる。
【0046】
図3A、
図3B、及び
図3Cは、吸収層の実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
図3Aは、赤色染色PETフィルムを含む吸収層の実施例の透過スペクトルを示すチャートである。このフィルムは、500~600nmの間で、スペクトル的に鋭いカットオフを示す。
図3Bは、濃い黄緑色の染色PETフィルムを含む吸収層の実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
図3Cは、青色染色PETフィルムを含む吸収層の実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
図3B及び
図3Cのフィルムは、透過強度が20~60%の範囲で変動する可能性があり、かつ、可視スペクトルの異なる波長に配置することができる、スペクトル漏れを示す。
【0047】
本開示に係る光学フィルタの実施例は、
図4A及び4Bの光学フィルタの実施例に関して説明するように、干渉フィルタ及び角度遮断層に加えて、吸収層を任意選択で含んでもよい。
図4A及び
図4Bは、角度遮断層、干渉フィルタ、及び吸収層を含む光学フィルタの実施例の概略的及び概念的な分解断面図である。
【0048】
図4Aの光学フィルタの実施例10aは、角度遮断層12と、光源16からの光を選択的に透過させるための干渉フィルタ18aとを含む。角度遮断層12は、角度制限又は、角度選択的要素又は、他の角度制限機構、例えば、凹状壁、プリズム、フレネル構造、フレネルリング、凹部、ルーバ、チャネル、又は微細複製機構、のうちの一つ以上を含んでもよい。いくつかの実施例では、ルーバは、角度遮断層12の主面に対して垂直な、又は実質的に垂直な面を含むことができる。複数の角度制限機構21は、実質的に一様な機構、対称的な機構、非対称的な機構、機構の線もしくは溝、又は機構の配列、のうちの1つ以上を含んでもよい。いくつかの実施例では、角度遮断層12は、屈折基板上に配置された複数の角度制限機構21を含むことができる。例えば、屈折基板は、ターンフィルム、輝度向上フィルム、又は微細構造光学フィルムを含んでもよい。いくつかの実施例では、複数の角度制限機構21は、第1の平面内で光角度を制限する第1の下位の複数の角度制限機構、及び第2の平面内で光角度を制限する第2の下位の複数の角度制限機構を含むことができる。例えば、第2の平面は第1の平面と直交してもよい。いくつかの実施例では、第1及び第2の下位の複数の角度制限機構は、非対称な光分布、例えば楕円形の光パターンの範囲内に光を制限するように効果的に作用することができる。いくつかの実施例では、角度遮断層12は、
図4Aに示すようにプリズムフィルムを含んでもよい。角度遮断層12は、例えば、
図1A及び
図1Bを参照して説明したように、法線入射を中心とした透過ゾーンと、軸外遮断ゾーンと、それに続く高角度透過ゾーンとを示すことができる。透過ゾーンでは、全ての可視波長を透過することができる。
【0049】
いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは、MOF、例えば複屈折MOFを含んでもよい。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは、等方性フィルム、例えば3M Condor Film(3M,Saint Paul,MN)、又は蒸着もしくはスパッタリングによって形成されたフィルムを含むことができる。いくつかの実施例では、MOFは、選択された波長を反射し、選択された波長を透過させる色付きミラーとして機能することができる。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは、垂直入射で600~900nmの帯域の光を反射することができ、これは、例えば、
図1Cを参照して説明したように、軸外又は斜めの角度でより短い波長にシフトする。例えば、帯域端の位置は、約60度の角度でそれらの法線入射値の約80%までシフトすることがある。
【0050】
いくつかの実施例では、光学フィルタ10aは、吸収層20aを任意選択で含んでもよい。いくつかの実施例では、吸収層20aはスペクトル選択的吸収材を含むことができる。いくつかの実施例では、
図4Aに示すように、干渉フィルタ18aは、吸収層20aと角度遮断層12との間に配置してもよい。いくつかの実施例では、吸収層20aは、所定の波長帯域の透過、例えば525~575nmの透過のみを可能にし、他の波長を吸収又は遮断することができる。いくつかの実施例では、吸収層20の透過帯域は、角度的にシフトしないか、そうでなければ、角度に依存しなくてもよい。例えば、吸収層20aに到達する透過帯域内の唯一の光は、法線入射を中心とする制限された円錐角内にあり得、吸収層20aから放射される唯一の光は緑色(又は所定の波長帯域に関連する別の所定の色)であり、かつ限定された角度範囲である。この波長範囲外の光は吸収される。
【0051】
いくつかの実施例では、光学フィルタ10aは、例えば、可視波長(例えば、約400~約700nmの間)、紫外線波長(例えば、約400nm未満)、及び赤外線及び近赤外波長(例えば、約700~約2000nm)を含む所定の波長帯域にわたって作用することができる。
【0052】
光学フィルタ10aの光学的特性は、角度遮断層12を変更する必要なしに、干渉フィルタ18a及び吸収層20aの一方又は双方の特性を変更することによって、調整することができる。例えば、
図4Bの光学フィルタ10bは角度遮断層12と干渉フィルタ18bを含む。干渉フィルタ18bは、垂直入射で400~700nm帯域の光を通過させ、斜め角度で400~630nmの光を通過させ、そして斜め角度で630~700nm帯域の光を反射することができる。吸収層20bは、630~700nmの角度非依存帯域の光を通過させることができる。したがって、
図4Aの光学フィルタの実施例10aは、緑色透過スタックとなるであろう一方、
図4Bの光学フィルタの実施例10bは赤色透過スタックとなるであろう。したがって、本開示に係る光学フィルタの実施例の光学的特性は、高価であり得る角度遮断層12の新しいバッチを再製造又は調達する必要なしに、その代わりに比較的安価に干渉フィルタ又は吸収層を変更することによって、変更することができる。
【0053】
いくつかの実施例では、通過ゾーンは、例えば
図4A及び
図4Bに示すように、光学物品の主面に対して垂直又は実質的に垂直な軸の周りに画定することができる。しかし、他の実施例では、通過ゾーンは、非垂直軸、例えば約1度と約90度未満との間の傾斜軸の周りに画定してもよい。
図4Cは、角度遮断層12aを含み、かつ、傾斜した通過ゾーンを有する光学フィルタの実施例10cの概略的かつ概念的な分解断面図である。例えば、通過ゾーンは、
図4Cに示されるように、傾斜軸23aの周りに画定してもよい。角度遮断層12aは、傾斜通過ゾーン、例えば傾斜通過又は傾斜透過の円錐、を画定するように構成された複数の角度制限機構21aを含むことができる。いくつかの実施例では、複数の角度制限機構21aは、
図4Aの複数の角度制限機構21に関して説明した機構を含んでもよい。いくつかの実施例では、複数の角度制限機構21aは、
図4Cに示すように、透過ゾーン又は通過ゾーンが傾斜軸23aの周りに画定されるように、非垂直、傾斜、又は傾いたルーバを含むことができる。
【0054】
図4Dは、角度遮断層12cと干渉フィルタ18aとを含み、かつ、傾斜軸23bの周りに、拡張遮断ゾーンによって画定される傾斜通過ゾーンを有する、光学フィルタの実施例10dの概略的かつ概念的な分解断面図である。拡張遮断ゾーンは、例えば
図4cと同様の傾斜ルーバを含む、複数の角度制限機構21から生じる遮断ゾーンに加えて、干渉フィルタ18aから生じる遮断ゾーンを含む。
【0055】
図4Aの光学フィルタ10aの光透過及び遮断特性は、
図5Aを参照して理解することができる。
図5Aは、4Aの光学フィルタの実施例10aによる光源16からの光の角度透過及び角度遮断の概略的及び概念的な図である。配光パターンは図の上部に示されている。緑色光が透過する中央ゾーン、即ち通過ゾーン22がある。線ABは、角度遮断層12によって提供される通過から遮断への遷移角度を示す。線ACは、干渉フィルタ18aの反射帯域が(吸収層20aと組み合わさって)光を遮断するのに十分にシフトした角度を示す。線ADは、角度遮断層12が再び光を透過し始める角度を示し、続いて、干渉フィルタ18aと吸収層20aとの組み合わせによって遮断される。DABで示される角度ゾーンによって、干渉フィルタ18aが視覚的に検出できない可能性がある位置にシフトするための(製造厚さの変動を有するエリアを含む)緩衝ゾーンを得ることができる。したがって、この緩衝ゾーンは、帯域端が透過ゾーンに侵入するときに干渉フィルタ18aから生じる不均一性の知覚を防ぐことができる。
図5Bは、
図5Aの光学フィルタ10aによる角度透過及び角度遮断の概略的かつ概念的な図である。θ
IFは、干渉フィルタ18aによって遮断される角度範囲である。θ
ALは、角度遮断層12によって遮断される角度範囲である。θ
Transは、光学フィルタ10aの主面の法線軸に対する半角角度透過範囲である。したがって、通過ゾーン22は、半角θ
Transによって画定される円錐内で、法線軸の周りに延びる。半角θ
Transは、光学フィルタ10aの主面17の法線軸に対して最大透過角θ
Tmaxまで延びることができる。
【0056】
光学フィルタ10aは干渉フィルタ18aと光源16との間に角度遮断層12を含むが、いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは光源16に面してもよく、角度遮断層12は光源16から離して配置してもよい。
図5Cは、干渉フィルタ18aが光源16に面する光学フィルタの実施例10dによる角度透過及び角度遮断の概略的かつ概念的な図である。
【0057】
いくつかの実施例では、光学フィルタ10aは主面17を備えている。光学フィルタ10aは、主面17の法線軸に対して0°から最大光透過角θTmaxまでの角度を含む所定の光透過ゾーンを有することができる。光学フィルタ10aは、θ
Tmax
から90°までの角度を含む所定角度の遮光ゾーンθBを有してもよい。いくつかの実施例では、光学フィルタ10aは、法線軸に対して第1の角度の遮光範囲θALを有する角度遮断層12を備えている。いくつかの実施例では、光学フィルタ10aは、角度遮断層12に隣接して干渉フィルタ18aを備える。干渉フィルタは、法線軸に対して第2の角度の遮光範囲θIFを有することができる。θBは、θIFとθALとの和である。例えば、θBはθIF又はθALのいずれかに属する全ての角度を含む。いくつかの実施例では、θIF及びθALは少なくとも部分的に重なり合う。例えば、少なくとも1つの角度又は角度の範囲は、θIF及びθALの双方に属する場合がある。いくつかの実施例では、θALにおける少なくとも1つの角度は、θIFにおける1つの角度より大きい。いくつかの実施例では、θIF内の少なくとも1つの角度は、θAL内の1つの角度より大きい。いくつかの実施例では、θIF及びθALの一方又は双方は波長依存性である。例えば、入射光の波長が増減すると、θIF及びθALの一方又は双方における少なくとも1つの角度が増減する可能性がある。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは、複屈折性多層光学フィルム又は等方性フィルムの一方又は双方を含んでもよい。いくつかの実施例では、角度遮断層12は、複数の角度制限機構21を含むことができる。いくつかの実施例では、複数の角度制限機構21は、プリズム、フレネル構造、フレネルリング、凹部、ルーバ、溝、又は微細複製機構、のうちの1つ以上を含んでいる。
【0058】
いくつかの実施例では、複数の角度制限機構21は特性寸法を有してもよく、θALは特性寸法と所定の関係を有することができる。例えば、θALは、特性寸法が大きくなると小さくなり、特性寸法が小さくなると大きくなる。例えば、特性寸法が小さいほどθALは小さくなってもよい。いくつかの実施例では、角度遮断層12は、ターンフィルム又は輝度向上フィルムの一方又は双方を含むことができる。いくつかの実施例では、角度遮蔽層12は、所定の光漏れ角度透過ゾーンを有することがある。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは、反射帯域を含む特有な透過スペクトルを有することができ、反射帯域は、入射角が減少すると低い方へシフトする帯域端を有する。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aの反射帯域は、角度遮断層12の所定の光漏れ角度透過ゾーンを透過した波長を含むことができる。
【0059】
いくつかの実施例では、光学フィルタ18aは波長選択的又はスペクトル選択的吸収材を含んでもよい。いくつかの実施例では、スペクトル選択的吸収材は、所定の波長を吸収する染料又は顔料を含むことができる。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは波長選択的吸収材を含んでもよい。いくつかの実施例では、角度遮断層12は波長選択的吸収材を含む。
【0060】
いくつかの実施例では、光学フィルタ18aは、波長選択的吸収材を含む吸収層20aを含んでもよい。いくつかの実施例では、吸収層20aは、干渉フィルタ18aと角度遮断層12との間にあってもよい。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは、吸収層20aと角度遮断層12との間にあってもよい。いくつかの実施例では、角度遮断層12は、吸収層と干渉フィルタとの間にあってもよい。
【0061】
いくつかの実施例では、光学フィルタ10aは、別個の角度遮断層12を含まなくてもよく、代わりに干渉フィルタ18a及び吸収層20aを含むことができる。
図6Aは、干渉フィルタと吸収層とを含む光学フィルタの実施例の入射角の変化に伴う帯域シフトの概念図である。
図6Aに示されるように、吸収層20aの吸収帯域と干渉フィルタ18aの反射帯域との間の透過帯域通過は、法線入射で幅Δλを有することができる。入射角が増大するにつれて、各々の帯域の一方又は双方が、例えば、干渉フィルタ18aの反射帯域がシフトダウンして、最終的に帯域の間隙を塞ぐことがある。
図6Bは、MOFを含む干渉フィルタと、染料を含む吸収層と、干渉フィルタと吸収層の組み合わせを含む物品とによる光の透過及び遮断を比較した写真である。
図6Bに示されるように、たとえ吸収層及び干渉フィルタが個々に少なくともいくらかの光を透過するとしても、その組み合わせは実質的に光の透過を遮断する。
【0062】
図6Bの物品の実施例のスペクトル特性は、
図7A~
図7Cを参照して理解することができる。
図7Aは、
図6Bの多層光学フィルム干渉フィルタの実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
図7Bは、
図6Bの吸収層の透過スペクトルを示すチャートである。
図7Cは、
図7Aの干渉フィルタと
図7Bの吸収層とを含む光学フィルタの実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
図7Cに示すように、干渉フィルタと吸収層を組み合わせると、約640nmの法線入射でノッチフィルタが得られる。別の実施例として、
図8A~
図8Cは、緑色角度選択的光学フィルタの実施例のスペクトル特性を示す。
図8Aは、角度シフトを示す、異なる角度での多層光学フィルム干渉フィルタの実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
図8Bは、吸収層の実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
図8Cは、
図8Aの干渉フィルタ及び
図8Bの吸収層を含む光学フィルタの実施例の透過スペクトルを示すチャートである。
図8Cに示すように、
図8Aの干渉フィルタと
図8Bの吸収層とを組み合わせると、法線入射では緑色の透過が起こり、斜めの角度では緑色の消光が生じる。
【0063】
いくつかの実施例では、角度遮断層12は、複数の角度遮断機構とスペクトル選択的吸収材の双方を含んでもよい。いくつかの実施例では、角度遮断層12は、複数の角度制限機構のうちの1つのみ又はスペクトル選択的吸収材を含むことができる。例えば、吸収層20aは角度遮断層12を置き換えてもよい。
【0064】
いくつかの実施例では、光学フィルタ18aは、入射角依存反射帯域を有する干渉フィルタ12と、吸収帯域を有する吸収層20aとを含むことができ、入射角依存反射帯域と吸収帯域とは、少なくとも1つの波長の少なくとも一つの入射角で重なり合う。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは、入射角依存反射帯域を含む特有な透過スペクトルを有してもよい。例えば、角度依存反射帯域は、入射角が減少すると、より低い方へシフトする帯域端を有することができる。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aの角度依存反射帯域は、吸収層20aによって透過される波長を含む。いくつかの実施例では、干渉フィルタ18aは波長選択的吸収材を含んでもよい。いくつかの実施例では、吸収層18aは波長選択的吸収材を含んでもよい。
【0065】
本開示に係る光学フィルタの実施例は、光の角度を制限することが望ましいシステムで使用することができる。
図9は、光学フィルタ10a、光源16、センサ20、及び反射器31を含むシステムの実施例30を示す概略的かつ概念的な図である。いくつかの実施例では、システム30は、
図9に示すように、光源16、センサ20、及び反射器31の全てを含むことができるが、他の実施例では、システム30は、光源16、センサ20、又は反射器31のうちの1つ又は2つのみを含んでもよい。
【0066】
システム30は、光学フィルタ10a、光源16、又はセンサ20のうちの1つ以上を含んでもよいが、いくつかの実施例では、システム30は、本開示に係る任意の光学フィルタ、光源、又はセンサを含むことができる。例えば、システム30は、1つ以上の狭波長光源、可視光源、紫外線光源、又は近赤外線もしくは赤外線光源、LED、レーザ、又は他の好適な波長光源を含んでもよい。いくつかの実施例では、光源は、40nm未満の半値全幅(FWHM)のスペクトルスパイクを示してもよい。検出及び通信のための特定のシステムは、特定の通信波長を含むことができる。例えば、光源としては、約20nmの半値全幅の発光を有し得る緑色、赤色、又は近赤外LEDなどの単波長LEDを挙げることができる。いくつかの実施例では、システム30は、複数の波長で発光する複数のタイプのLEDを含んでもよい。
【0067】
システム30は、可視光センサ、紫外線センサ、近赤外線又は赤外線センサ、広帯域センサ、狭帯域センサ、ライダ(LIDAR)センサ、CMOSセンサ、近接センサ、ジェスチャセンサ、カメラセンサ、画像センサ、CCDセンサ、飛行時間センサ、虹彩スキャナ、又はその他のセンサ、のうちの1つ以上を備えることができる。
【0068】
いくつかの実施例では、システム30はセンサ20及び光学フィルタ10aを含んでもよい。光学フィルタ10aは、センサ20によって受信する光の角度を制限することができる。例えば、光学フィルタ10aは、通過ゾーン又は透過ゾーンを超えた角度で光を伝送させ得るノイズ源からの光を遮断することができる。いくつかの実施例では、システム30は、センサ20、光学フィルタ10a、及び光源16を含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施例では、システム30は反射器31を含むことができる。反射器31は、鏡面反射面、拡散反射面、又は再帰反射面のうちの1つ以上を画定することができる。例えば、反射器31としては、反射層、又は、反射体もしくは反射物体を挙げることができる。
図9に示すシステム30の構成の実施例では、反射器31はセンサ20に隣接して光源16の反対側に配置されているが、他の実施例では、反射器31は任意の好適な位置に配置することができる。例えば、センサ20及び光源は双方とも、光学フィルタ10aを挟んで反射器31の反対側に配置することができ、その結果、反射器31は光源16からの光をセンサ20へ反射する。いくつかの実施例では、システム30はセンサ20を含まなくてもよく、反射器31は光源16からの光を光学フィルタ10aを横切って反射してもよい。いくつかの実施例では、システム30は反射器31も光学フィルタ10aも含まなくてもよく、反射器31は周囲光を光学フィルタ10aを横切って反射してもよい。
【0070】
いくつかの実施例では、システム30は光源16及び光学フィルタ10aを含むことができる。いくつかの実施例では、システム30は、プライバシーのために、又は人間工学的な理由のために、光源16によって放射される放射角度を制限することができる。例えば、システム30は、ストップライト又はブレーキライトから自動車の運転者に向けられるグレアを低減することができる。光学物品の実施例、例えば光学フィルタ10aは、例えば室内のグレア制御が必要とされる車両表示システムを含むシステム30の実施例において、現金自動預払機などのディスプレイのプライバシー機能として、交通信号の交通制御フィルムとして、又はセンターハイマウントストップランプ(CHIMSL)において、使用することができる。
【0071】
したがって、本開示に係る光学フィルタの実施例は、角度の関数として色(赤又は緑など)から黒への鋭い遷移を有し、かつ、入射角が高角度及び全ての方位角でも、光の消光を維持することができる、配光パターンを達成するために、使用することができる。かかる配光パターンは、構造化表面又は他の物品を使用するだけでは不可能であろう。本開示に係る光学フィルタの実施例は、以下の特性のうちの1つ以上を提示することができる。1)所定の波長の光に関する単一の連続通過ゾーン及び単一の連続遮断ゾーン。2)所定の円錐角の円錐形透過パターン。3)高入射角での消光又は遮光。4)通過ゾーンから遮断ゾーンへの急激な遷移。5)遷移角においても広い面積にわたる外観の一様性。6)通過ゾーンから遮断ゾーンへの遷移時に知覚される色相のシフトがないか又は小さいこと。7)プリズム軸を横切る平面内での良好な性能。既存の市販の製品を組み合わせて光学特性を調整することによって、本開示に係る光学フィルタの実施例を調製することができ、これが製造コストの低減につながる。
【0072】
本発明のさまざまな実施例を説明してきた。これら及び他の実施例は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。以下、例示的実施形態について述べる。
[1]
光学フィルタが、主面の法線軸に対して0°から最大光透過角θ
Tmax
までの角度を含む所定の光透過ゾーンを有し、前記光学フィルタは、90-θ
Tmax
から90°までの角度を含む所定角度の遮光ゾーンθ
B
を有する、主面と、
前記法線軸に対して第1の角度の遮光範囲θ
AL
を有する角度遮断層と、
前記角度遮断層に隣接する干渉フィルタであって、前記法線軸に対して第2の角度の遮光範囲θ
IF
を有し、θ
B
はθ
IF
とθ
AL
の和であり、θ
IF
とθ
AL
は少なくとも部分的に重なり合う、干渉フィルタと、を備える、光学フィルタ。
[2]
θ
AL
における少なくとも1つの角度は、θ
IF
における1つの角度より大きい、[1]に記載の光学フィルタ。
[3]
θ
IF
における少なくとも1つの角度は、θ
AL
における1つの角度より大きい、[1]又は2に記載の光学フィルタ。
[4]
θ
IF
及びθ
AL
の一方又は双方は波長依存性である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[5]
前記干渉フィルタは、複屈折性多層光学フィルム又は等方性フィルムの一方又は双方を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[6]
前記角度遮断層は、複数の角度制限機構を含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[7]
前記複数の角度制限機構は、プリズム、フレネル構造、フレネルリング、凹部、ルーバ、チャネル、又は微細複製機構、のうちの1つ以上を含む、[6]に記載の光学フィルタ。
[8]
前記複数の角度制限機構は特性寸法を有し、θ
AL
は前記特性寸法と所定の関係を有する、[6]又は[7]に記載の光学フィルタ。
[9]
前記特性寸法が小さいほどθ
AL
は小さい、[8]に記載の光学フィルタ。
[10]
前記角度遮断層は、ターンフィルム又は輝度向上フィルムの一方又は双方を含む、[6]~[9]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[11]
前記角度遮断層は、所定の光漏れ角度透過ゾーンを有する、[1]~[10]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[12]
前記干渉フィルタは、反射帯域を含む特有な透過スペクトルを有し、前記反射帯域は、入射角が減少すると低波長にシフトする帯域端を有する、[1]~[10]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[13]
前記干渉フィルタの前記反射帯域は、前記角度遮断層の所定の光漏れ角度透過ゾーンを透過した波長を含む、[12]に記載の光学フィルタ。
[14]
波長選択的吸収材を更に含む、[1]~[13]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[15]
前記干渉フィルタは前記波長選択的吸収材を含む、[14]に記載の光学フィルタ。
[16]
前記角度遮蔽層は前記波長選択的吸収材を含む、[14]に記載の光学フィルタ。
[17]
前記波長選択的吸収材を含む吸収層を更に備える、[14]に記載の光学フィルタ。
[18]
前記吸収層は、前記干渉フィルタと前記角度遮断層との間にある、[17]に記載の光学フィルタ。
[19]
前記干渉フィルタは、前記吸収層と前記角度遮断層との間にある、[17]に記載の光学フィルタ。
[20]
前記角度遮断層は、前記吸収層と前記干渉フィルタとの間にある、[17]に記載の光学フィルタ。
[21]
入射角依存反射帯域を有する干渉フィルタと、
吸収帯域を有する吸収層であって、前記入射角依存反射帯域と前記吸収帯域が少なくとも1つの入射角の少なくとも1つの波長で重なり合う、吸収層と、を備える、光学フィルタ。
[22]
前記干渉フィルタは、複屈折性多層光学フィルム又は等方性フィルムの一方又は双方を含む、[21]に記載の光学フィルタ。
[23]
前記干渉フィルタは、前記入射角依存反射帯域を含む特有な透過スペクトルを有し、前記角度依存反射帯域は、入射角が減少すると低い方へシフトする帯域端を有する、[21]又は[22]に記載の光学フィルタ。
[24]
前記干渉フィルタの前記角度依存反射帯域は、前記吸収層によって透過される波長を含む、[23]に記載の光学フィルタ。
[25]
前記干渉フィルタは波長選択的吸収材を含む、[21]~[24]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[26]
前記吸収層は波長選択的吸収材を含む、[21]~[25]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[27]
角度遮断層を更に含む、[21]~[26]のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
[28]
センサと、
[1]~[27]のいずれか一項に記載の光学フィルタと、を備えるシステム。
[29]
光源を更に含む、[28]に記載のシステム。
[30]
反射器を更に含み、前記反射器は、鏡面反射面、拡散反射面、又は再帰反射面、のうちの1つ以上を画定する、[28]又は[29]に記載のシステム。
[31]
光源と、
[1]~[27]のいずれか一項に記載の光学フィルタと、を備えるシステム。
[32]
反射器を更に含み、前記反射器は、鏡面反射面、拡散反射面、又は再帰反射面、のうちの1つ以上を画定する、[31]に記載のシステム。
[33]
鏡面反射面、拡散反射面、又は再帰反射面、のうちの1つ以上を画定する反射器と、
[1]~[27]のいずれか一項に記載の光学フィルタと、を備えるシステム。