(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】呼吸ガス試料を用いた呼吸測定のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20221201BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20221201BHJP
A61M 16/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/1455
A61M16/00 305A
(21)【出願番号】P 2019550543
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(86)【国際出願番号】 US2017061978
(87)【国際公開番号】W WO2018106424
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-02
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519201503
【氏名又は名称】メディパインズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】MEDIPINES CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】リー、スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト、ジョン ビー.
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0206352(US,A1)
【文献】特開2015-136568(JP,A)
【文献】米国特許第06241681(US,B1)
【文献】特表2003-521272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08
A61B 5/1455
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポートと、第2のポートと、制御ユニットとを有する医療デバイスによって使用される方法であって、
前記第1のポートを介して、第1の期間中の患者の末梢動脈血酸素飽和度のパルスオキシメトリ測定値(SpO
2)を受信すること、
前記第2のポートを介して、前記患者の呼吸試料を受け取ること、
前記制御ユニットによって、前記患者の呼吸試料を使用して、前記第1の期間中の患者の定常状態呼吸中の患者の呼気から酸素分圧測定値(P
AO
2)および二酸化炭素分圧測定値(P
ACO
2)を決定すること、
前記制御ユニットによって、前記パルスオキシメトリ測定値(SpO
2)、前記酸素分圧測定値(P
AO
2)、および前記二酸化炭素分圧測定値(P
ACO
2)を使用して、前記患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)および酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)のうちの少なくとも1つを決定すること、
前記患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)および前記酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)のうちの少なくとも1つの決定に基づいて、前記制御ユニットによって、1つまたは複数の信号を生成すること
を含む方法。
【請求項2】
前記酸素分圧測定値(P
AO
2)および前記二酸化炭素分圧測定値(P
ACO
2)は、呼気終末値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
吸入酸素分圧測定値(P
IO
2)、吸入酸素割合測定値(F
iO
2)、前記酸素分圧測定値(P
AO
2)、および前記二酸化炭素分圧測定値(P
ACO
2)を使用して、前記患者の呼吸交換率(RQ)を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の信号は、前記患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)、酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)、二酸化炭素分圧(P
ACO
2)、および呼吸交換率(RQ)の決定に基づいて、前記患者または前記患者の介護者に通知するアラーム状態を引き起こす起動信号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アラーム状態は、前記酸素欠乏が所定のベースライン値を少なくとも第1の閾値量だけ超えているという判定に基づいて引き起こされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の閾値量は、前記患者のベースライン酸素欠乏を90%から150%の間だけ超えるものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
複数の肺機能検査の
ために、複数の肺機能検査パラメータを取得することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記アラーム状態は、少なくとも第2の閾値数の肺機能検査パラメータが、それぞれの所定のベースライン値を少なくとも第3の閾値量だけ下回ったという決定に基づいて引き起こされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
パラメータの前記第2の閾値数は、少なくとも2つであり、前記第3の閾値量は、60%から100%の間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
複数の患者症状調査質問に対する応答を取得することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記アラーム状態は、少なくとも第4の閾値数の症状が、少なくとも第5の閾値時間の間、悪化していると示されたことを決定することに基づいて引き起こされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数の信号に応答して、前記医療デバイスが酸素の供給を起動することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つまたは複数の信号に応答して、前記医療デバイスが電気刺激の供給を起動することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
医療デバイスであって、
第1の期間中の患者の末梢動脈血酸素飽和度のパルスオキシメトリ測定値(SpO
2)を受信するように構成された第1のポートと、
前記患者の呼吸試料を受け取るように構成された第2のポートと、
制御ユニットであって、
前記患者の呼吸試料を使用して、前記第1の期間中の患者の定常状態呼吸中の患者の呼気から酸素分圧測定値(P
AO
2)および二酸化炭素分圧測定値(P
ACO
2)を決定し、
前記パルスオキシメトリ測定値(SpO
2)、前記酸素分圧測定値(P
AO
2)、および前記二酸化炭素分圧測定値(P
ACO
2)を使用して、前記患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)および酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)のうちの少なくとも1つを決定し、
前記患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)および前記酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)のうちの少なくとも1つの決定に基づいて、1つまたは複数の信号を生成する
ように構成された前記制御ユニットと
を備える医療デバイス。
【請求項15】
前記医療デバイスは、(a)前記1つまたは複数の信号に応答して前記患者に酸素を供給するか、または(b)前記1つまたは複数の信号に応答して前記患者に電気刺激を供給する、請求項14に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記制御ユニットは、吸入酸素分圧測定値(P
IO
2)、吸入酸素割合測定値(F
iO
2)、前記酸素分圧測定値(P
AO
2)、および前記二酸化炭素分圧測定値(P
ACO
2)を使用して、前記患者の呼吸交換率(RQ)を決定するようにさらに構成されており、前記1つまたは複数の信号は、前記患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)、酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)、二酸化炭素分圧(P
ACO
2)、および呼吸交換率(RQ)の決定に基づいて、前記患者または前記患者の介護者に通知するアラーム状態を引き起こす起動信号を含む、請求項14に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記酸素分圧測定値(P
AO
2)および前記二酸化炭素分圧測定値(P
ACO
2)は、呼気終末値である、請求項14に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記1つまたは複数の信号は、前記患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)、酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)、二酸化炭素分圧(P
ACO
2)、および呼吸交換率(RQ)の決定に基づいて、前記患者または前記患者の介護者に通知するアラーム状態を引き起こす起動信号を含み、前記アラーム状態は、前記酸素欠乏が所定のベースライン値を少なくとも第1の閾値量だけ超えているという判定に基づいて引き起こされ、前記第1の閾値量は、前記患者のベースライン酸素欠乏を90%から150%の間だけ超えるものである、請求項14に記載の医療デバイス。
【請求項19】
システムであって、
ディスプレイと、
制御ユニットと
を備え、前記制御ユニットは、
患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)を非侵襲的に決定し、
前記患者の二酸化炭素分圧(P
ACO
2)を非侵襲的に決定し、
前記患者の酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)を非侵襲的に決定し、
前記ディスプレイ上に、前記患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)、二酸化炭素分圧(P
ACO
2)、および酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)をグラフィカルに表示する
ように構成されている、システム。
【請求項20】
前記制御ユニットは、前記ディスプレイ上に、酸素分圧(PO
2)によって定義されるX軸と、二酸化炭素分圧(PCO
2)によって定義されるY軸と、呼吸交換率(RQ)を定義する勾配を有する、前記X軸および前記Y軸の間のラインとを表示するようにさらに構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記制御ユニットは、前記ディスプレイ上に、前記X軸および前記Y軸に沿って前記患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)および前記患者の二酸化炭素分圧(P
ACO
2)を表示するようにさらに構成されており、前記制御ユニットは、前記患者の呼吸不全をタイプIまたはタイプIIとして強調表示するようにさらに構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記ラインの勾配は、血液の進行中の酸-塩基の不均衡(pH)、および/または生理学的代償機構の存在を示す、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記制御ユニットは、前記ディスプレイ上に、酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)の呼吸に基づく測定値と動脈血ガス検査から測定された肺胞-動脈勾配との比較を、換気-血流ラインに沿って両方のポイントを表示することにより表示し、換気と血流との不均衡がない理想的なポイントと比較して低いVA/Q(換気血流の不均衡)を高いVA/Qに対して強調するようにさらに構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記制御ユニットは、前記ディスプレイ上に、換気-血流不均衡ラインに沿ってO
2欠乏およびA-a勾配ポイントの両方を表示することによって、酸素欠乏の呼吸に基づく測定値(P
AO
2-P
aO
2)と肺胞-動脈勾配との比較を表示するようにさらに構成されており、2つのポイント間の差および前記差の大きさは、換気および/または血流に基づく障害からの寄与を示している、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記制御ユニットは、前記ディスプレイ上に、酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)と肺胞-動脈勾配(推定されたP
AO
2-P
aO
2)との比較、および前記ラインを表示し、換気および/または血流に基づく障害によってもたらされるガス交換を行うための肺の非効率性の方向を表示するようにさらに構成されている、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
肺のガス交換の効率を測定することが高い頻度で必要であり、それは肺疾患を有する多くの患者、または高所で生活している正常な被験者または肺疾患を有する患者にとってもしばしば不可欠である。そのような場合、診断時に測定を行い、そして疾患の進行を追跡するためにその後の測定を行うことが一般的である。ガス交換を測定する従来の方法は、動脈血ガスを使用することによる。これは典型的には動脈のPO2(酸素分圧)、PCO2(二酸化炭素分圧)、およびpH(血液の酸塩基平衡)を与える。しかしながら、そのような測定は、侵襲的であること、患者にとって不快であること、技術的熟練者を必要とすること、時折複雑になること、および高価であることなどのいくつかの欠点を有する。従って、患者によって十分に許容されそして容易に繰り返すことができるガス交換効率または非効率を測定する非侵襲的方法を得ることは価値があるだろう。
【発明の概要】
【0002】
実質的に少なくとも1つの図に示されるように、および/またはそれに関連して説明されるように、そしてより完全に特許請求の範囲に記載されるように、呼吸ガス試料を使用する呼吸測定のためのシステムおよび方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1A】本開示の一実装形態による、例示的なオキシモニターシステムを示す概略図である。
【
図1B】本開示の一実装形態による、例示的なオキシモニターシステムを示す概略図である。
【
図2】本開示の一実装形態による、オキシモニターシステムの例示的な構成要素を示す概略ブロック図である。
【
図3A】本開示の一実装形態による、ガス交換検査を実施するための例示的なプロセスを示す高レベルプロセスフロー図である。
【
図3B】本開示の一実装形態による、ガス交換検査を実施するための例示的なプロセスを示す詳細なプロセスフロー図である。
【
図3C】本開示の一実装形態による、ガス交換パラメータを計算するための例示的なプロセスを示す詳細な計算フロー図である。
【
図4A】本開示の一実装形態による、1回の呼吸中に測定された二酸化炭素を表す例示的な波形を示すグラフ図である。
【
図4B】本開示の一実装形態による、経時的にプロットされた、測定された肺胞二酸化炭素分圧および測定された肺胞酸素分圧の例示的なグラフを示す図である。
【
図4C】本開示の一実装形態による、酸素解離曲線の例示的なグラフを示し、かつ様々な生理学的変数の変化に応じた曲線のシフトを示す図である。
【
図4D】本開示の一実装形態による、異なる酸素飽和度値で測定された酸素飽和度および計算された動脈分圧を示す表である。
【
図4E】本開示の一実装形態による、換気-血流比ラインを示す酸素-二酸化炭素ダイアグラムである。
【
図5A】本開示の一実装形態による、オキシモニターデバイスを用いたガス交換検査の結果に基づいて表示された出力データの一例を示す図である。
【
図5B】本開示の一実装形態による、一呼吸毎のO
2波形およびCO
2波形ならびに様々な測定および計算された生理学的パラメータの値を示すグラフを含む例示的な出力表示を示す図である。
【
図5C】本開示の一実装形態による、異なる時間に行われたガス交換検査から得られた呼気終末動脈血二酸化炭素分圧および呼気終末動脈血酸素分圧の傾向を示す例示的グラフを示す図である。
【
図5D】本開示の一実装形態による、様々な異なる時間に行われたガス交換検査から得られた酸素欠乏傾向の例示的グラフを示す図である。
【
図6A】本開示の一実装形態による、単一の日付に行われた肺機能検査の例示的グラフを示す図である。
【
図6B】本開示の一実装形態による、ベースラインに対して異なる日付に行われた検査に基づく肺機能検査の傾向の例示的なグラフを示す図である。
【
図7】本開示の一実装形態による、例示的な患者症状ロガーインタフェースを示す図である。
【
図8】本開示の一実装形態による、アラームを作動させるための例示的な条件を示すプロセス論理フロー図である。
【
図9A】本開示の一実装形態による、一呼吸毎の酸素分圧およびフォトプレチスモグラムにより測定された対応する血流量を示す波形のグラフ表示を示す図である。
【
図9B】オキシモニターシステムを用いて得られたデータおよび測定値の異なるグラフィカル表現を示す図である。
【
図10】本開示の一実装形態による、例示的なコンピューティングデバイスを示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の説明は、本開示における実装形態に関する特定の情報を含む。当業者は、本開示が本明細書で具体的に説明されたものとは異なる方法で実施されてもよいことを認識するであろう。本出願の図面およびそれらに付随する詳細な説明は、単に例示的な実装形態を対象としている。特記しない限り、図面中の類似または対応する要素は、類似または対応する参照番号によって示されることがある。さらに、本出願における図面およびイラストは、概して一定の縮尺ではなく、実際の相対寸法に対応することを意図していない。
【0005】
体内の酸素(O2)と二酸化炭素(CO2)のレベルの測定は、身体が酸素を適切に受け取って処理し、血液から二酸化炭素を除去しているかどうかの有益な指標を提供し得る。そのような測定値は、呼吸機能障害、疾患、外傷、または他の呼吸器合併症を示している可能性もある。
【0006】
医療分野では、一般に、患者の呼吸および酸素交換プロセスの有効性および効率を測定するために様々なメトリックが使用されている。生理学的には、患者が呼吸すると、空気が患者の肺および肺の肺胞、または肺の奥深くにある空気嚢に入り、そこで酸素が血液に吸収され、二酸化炭素が血液から除去される。肺から出る酸素化された血液は、患者の体全体に運ばれ、そこで酸素は細胞内のミトコンドリアによって使用される。
【0007】
本明細書で使用されるとき、用語「患者」は、システムを使用している間、そのような人が医療ケアを受けているか否かにかかわらず、オキシモニターシステムの任意の人間のユーザを指すことができる。さらに、オキシモニターが獣医学的使用のために構成されている場合、用語「患者」は、システムを使用している非ヒト哺乳動物を含み得る。
【0008】
肺胞で利用可能な酸素量と動脈血中で検出される量の差は、酸素を効果的に抽出、輸送、そして使用するための身体の能力を示し得る。従来、これは動脈血を採取し、典型的には動脈血ガス検査(ABG)と呼ばれる動脈血ガス検査を用いて血液試料を検査することによって測定される。
【0009】
血液試料を採取して検査する必要性は、そのような検査を実施することができる頻度を実質的に制限する。しかしながら、呼吸状態のより頻繁な監視は、喘息、気管支炎、気腫などを含み得る慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性呼吸器疾患を有する人々に著しく有益である。このような疾患は、風邪やインフルエンザなど、その他の点では比較的小規模な変化によって急速に悪化する可能性がある。このような場合、悪化している症状が明らかになるまでに、状態が危険に損なわれている可能性がある。
【0010】
非侵襲的に(すなわち、皮膚を貫通せずに)動脈酸素を定量化する能力は、呼吸に関連する状態を診断および監視するための実質的な機会を切り開くであろう。さらに、広範囲の呼吸メトリックを監視し、収集されたメトリックを報告するデータを定期的にリモートサーバーに送信する機能により、医師は長期的傾向の小さな変化を識別でき、これにより、危険なレベルに達する前に呼吸障害を診断したり、呼吸状態の悪化を検出する実質的に新たな機会を可能とする。
【0011】
本開示のいくつかの実装形態は、動脈酸素含有量を非侵襲的に定量化するためのシステムおよび方法を提供する。いくつかの実装形態では、2つ以上の呼吸関連メトリックを同時に測定し、測定値を使用して特定の単純化された仮定によって修正された既知の関係に基づいて動脈酸素量を推定するためのシステムおよび方法が提供される。
【0012】
本開示は、測定量および計算量を指すために様々な略語を使用する。例えば、略語PAO2は、患者の肺の肺胞酸素分圧を指すために使用され、略語PACO2は、患者の肺の肺胞の二酸化炭素分圧を指すために使用され、略語PaO2は、患者の血中の動脈血酸素分圧を指すのに使用され、略語PaCO2は、患者の血中の動脈血二酸化炭素分圧を指すために使用される。場合によっては、略語PO2は、酸素分圧値を指すために使用されてもよく、ここで、値の性質についてのさらなる区別は、明確であり、または重要ではないと想定される。従って、略語PO2は、PaO2値、PAO2値、または異なる酸素分圧値(例えば、動脈血ガス測定、周囲空気中の酸素分圧の測定、またはその他に基づく値)を指すことがある。
【0013】
場合によっては、本明細書で使用される略語PCO2は、動脈および肺胞の二酸化炭素分圧値がしばしば互いに十分に近いので、どちらか一方の単一の測定値が両方を表し得るという仮定に基づいて、PACO2またはPaCO2のいずれかを指す。略語SpO2は、典型的にはパルスオキシメータによってパーセントで測定される末梢酸素飽和度を指すために使用される。これらおよび他の一般的な略語は、より完全な説明または同じ値の名称と交換可能に使用され得る。
【0014】
動脈血中の酸素分圧PaO2(または「酸素圧」と呼ばれることもある)は、動脈血中の酸素含有量の測定値である(mmHgで表示)。血液中の酸素のような液体に溶け込んでいるガスを扱うとき、分圧は、血液が容器内のガス体積と平衡することが許される場合に溶存ガスが持つだろう圧力である。PaO2は、赤血球(RBC)中のヘモグロビンに結合した酸素の比率を測定するSpO2(%で表される「O2sat」または「酸素飽和度」)とは非常に異なる。条件にもよるが、赤血球が毛細血管を通過すると、ヘモグロビンはある割合の酸素分子を組織に放出する。これらの結合部位のいくつが酸素で飽和しているかを測定することが可能である。正常な患者は95~100%の酸素飽和度を有し、そして酸素飽和度が90%未満であるとき、患者は「低酸素」であるとみなされる。過去において、酸素飽和度は血液検査によって測定されていたが、今日では臨床医は、その便利で非侵襲的な性質のために高い頻度でパルスオキシメータを使用して酸素飽和度を監視する。酸素飽和度は依然として人の酸素化状態の代用であり、動脈血ガス検査(ABG)からのPaO2によって提供される血液中の実際の酸素含有量の測定値に代わることはできない。ABG検査は、細い針と注射器で動脈を穿刺し、患者から少量の血液を採取することを含む。最も一般的な穿刺部位は手首の橈骨動脈である。血液は動脈カテーテルから採取することも可能である。ABG検査は、動脈血酸素圧(PaO2、mmHg)、動脈血二酸化炭素圧(PaCO2、mmHg)の血中ガス圧値を測定し、動脈血酸素飽和度(SaO2、%)を決定することもできる。ABG検査は、呼吸-血液ガス状態(例えば、PaO2、PaCO2)を決定するために集中治療室(ICU)の患者に対して行われる最も一般的な検査の1つである。
【0015】
用語「A-a勾配」は、患者の肺胞(肺)中の酸素濃度と患者の動脈血中の酸素濃度との間の差の尺度を指す。A-a勾配は、低酸素血症の程度または強度(低酸素レベル)および低酸素血症の原因を決定するために臨床医によって使用される。通常の患者では、A-a勾配は15mmHg以下でなければならない(患者の年齢による)。これより高いA-a勾配値は、臨床的状況において高いと考えられる。重症疾患または呼吸器疾患の患者をケアする場合、PaO2についてのABG由来の結果とA-a勾配を別々に比較することが不可欠である。両方の測定値は、臨床評価において異なる役割を果たす。例えば、高地の設定では、動脈酸素PaO2は低いと予想できるが、それは、周囲空気中の酸素分圧が低いために肺胞酸素(PAO2)も低いからであり、結果として得られるA-a勾配は通常であり、PaO2は低い。しかし、COPD患者、肺塞栓症、または右左シャントでよく見られる換気-血流ミスマッチの状態では、酸素は肺胞から血液へ効果的に送られない。結果として、患者は正常なPAO2を有するが、高いA-a勾配を有する可能性がある。
【0016】
本明細書で使用される際、略語「RQ」は、呼吸商(RQ)と時折呼ばれる呼吸交換率を指すことがある。呼吸商は、体内のCO2生成量とそのO2消費量の比を測定し、呼吸状態、特に換気効率を評価するために使用される。方程式の形では、RQ=生成されたCO2/消費されたO2、である。呼吸商は、定常状態における組織の代謝によって決定される。現在の慣例では、ABG検査結果からPAO2などの値を計算するために、0.8または0.85の仮定された「通常の」RQ値を使用する。典型的な成人の場合、RQは、安静時の約0.8から運動時の約1.0の範囲であり得る。この増加は、必要なエネルギーを生み出すために脂肪ではなく糖質に大きく依存していることを反映している。実際に、乳酸が嫌気的解糖によって生成される場合、RQはしばしば激しい運動の非定常状態の間にさらにより高いレベルに達し、従って追加のCO2が重炭酸塩から排除される。RQは、患者の比率に異常がある(1.0を超えるか0.85を下回る)かどうかを臨床医が迅速に評価するために使用する尺度である。COPDなどの呼吸器疾患のある患者は、安静時の健常成人よりも高いまたは低いRQ値を有することがある。これは、肺でのガス交換の非効率性を評価するための代用として使用されるもう1つの間接的な評価基準である。
【0017】
現在の医療業務では、動脈血ガス検査(ABG)から直接PaO2を測定し、肺胞ガス式を使用してPAO2を計算し、次いでPaO2の測定値と、以下に示す肺胞ガス方程式からのPAO2の計算値とからA-a勾配を計算する。この式は、ABGまたはカプノグラフィからの値を使用して(PCO2値を取得するため)PAO2を計算するために使用できる。
【0018】
【数1】
ここで、P
IO
2は吸気酸素レベル、RQは呼吸交換率、F
IO
2は吸気中の酸素の割合、P
ACO
2はカプノグラフィ呼気試料またはABG検査の結果(P
aCO
2)からの肺胞二酸化炭素の分圧である。
【0019】
肺胞ガス式を使用してPAO2を計算する際に、ほとんどの臨床医はRQの期待値0.85を使用し、これは通常では良い近似であるが、個々の生理機能を反映しないため正確ではないPAO2の値に導く可能性がある。オキシモニターシステムのいくつかの実装形態では、RQ値は、呼吸試料から直接測定されることが可能であり、(以下でさらに説明するように)呼気CO2値および吸気O2値を考慮に入れることができる。
【0020】
酸素飽和度(%)と酸素分圧(mmHg)との間の関係は、
図4Cに示すように、動脈および静脈ガスレベルで予想される正常なアンカーポイントを有する酸素-ヘモグロビン解離曲線として知られる周知の医学的概念に従う。若年成人におけるP
aO
2の正常値は、平均で約95mmHg(85から100mmHgの範囲)である。この予想される正常値は、年齢とともに着実に減少する。例えば、予想される平均値は、60歳で約85mmHgである。1つの重要な違いは、この酸素-ヘモグロビン解離曲線が患者間で標準化されているのではなく、個々の生理的変化に応じて個人毎に個別化されていることである。例えば、赤血球内のDPG(2,3-ジホスホグリセレート)などの生化学化合物、血液温度、PCO
2、および血液pHの増加によって、曲線は右にシフトする。
【0021】
本明細書に記載の様々な方法およびデバイスは、呼気終末O2(PETO2)、呼気終末CO2(PETCO2)、血中酸素飽和度SpO2、心拍数、および呼吸数を含む呼吸メトリックの非侵襲的測定を提供することができる。様々な測定値を用いて、動脈血中の酸素分圧(PaO2)、本明細書で「酸素欠乏」と称される肺胞-動脈(Alveolar-arterial)勾配(mmHgでのA-a勾配)と実質的に同等の尺度、患者の変化する呼吸状態を監視するための呼吸商(RQ)を含む様々な計算されたメトリックを決定することができる。方法およびデバイスは、流量ループを用いた肺機能検査(FEV1、FVC、FEV1%)も可能にし得る。
【0022】
測定され計算されたメトリックは、臨床医がリアルタイムで患者の呼吸状態を監視および評価するためのグラフおよび/または数値データとして表示され得る。出力は、レポート、記録データ、またはアラーム生成を含み得る。アラーム管理は、検出された不安定な呼吸変動および呼吸困難に関連した潜在的に危険な生理学的状態を患者、看護師、医師などに知らせるための音声アラーム、視覚アラート、またはプリントアウトを含む様々な出力をも含み得る。
【0023】
特に、様々な実装形態は、低酸素血症、高カルシウム血症、ガス交換障害、急性呼吸器疾患、喘息、肺炎、呼吸不全、COPD進行、上部呼吸器感染症、O2-CO2不均衡、および類似または関連する症状の検出を可能にする呼吸モニタリングシステムおよびソフトウェアアルゴリズムを提供する。様々な実装形態は、不必要な緊急治療室への訪問回数、または長期のクリティカルケアと入院の減少をもたらす、投薬、治療、または他の形態の管理を調整するために介入が必要とされるときに臨床医が患者の変化する呼吸状態を迅速に検出することを可能にする包括的な非侵襲的呼吸モニタリングを提供し得る。
【0024】
図1Aは、本開示の一実装形態による、例示的なオキシモニターシステム100を示す。
図1Aのオキシモニターシステム100は、医療デバイスとして利用することができるものであり、表示画面104と、様々な周辺デバイスを受け入れるための接続ポート106、108、110とを含むことができる制御ユニット102を含む。周辺デバイスは、輸送管114によって制御ユニット102のポート106に接続可能な定常状態呼吸管112、輸送管および/またはケーブル118によって制御ユニット102のポート108に接続可能な肺機能流管(PFT)116、およびケーブル122によって制御ユニット102のポート110に接続可能な(または制御ユニット102に無線で接続された)パルスオキシメータクリップデバイス120を含むことができる。いくつかの実装形態では、患者は、検査中にノーズクリップ124を着用することがある。
【0025】
いくつかの実装形態では、呼吸管112は、呼気の試料を収集するために、呼吸管を、患者に固定可能なデバイスに接合することによって、患者の呼吸を継続的または無人で監視するように構成することができる。例えば、呼吸管112は、
図1Bに示されるようにフェイスマスク130と一体化されてもよく、またはフェイスマスク130によって置き換えられてもよい。いくつかの実装形態では、オキシモニターシステムとともに使用するように適合されたフェイスマスク130は、酸素マスク、CPAP(持続的気道陽圧)またはBiPAP(バイレベル気道陽圧)デバイス、または他の関連するフェイスマスク装置と共に使用するように設計されたフェイスマスクを含み得る。
【0026】
フェイスマスク130は、マスクの内側をマスクの外側に接合する実質的に抵抗のない導管113を含むことによってオキシモニターシステムと共に使用するために適合されることができ、導管113を通して患者が、マスクなしの呼吸に対し実質的に最小限の空気の流れ抵抗で空気を吸い込んだり吐き出したりすることができる。輸送管114は、実質的に抵抗のない導管113をオキシモニターシステムの空気試料吸入部に接合することができる。いくつかの実装形態では、輸送管114をマスクに直接接合することができる。
【0027】
同様に、いくつかの実装形態では、呼吸管112または他の抵抗のない導管113を、患者の鼻孔の一方または両方から呼吸空気の試料を引き出すことができる鼻腔カニューレと一体化することができる。他の実装形態では、抵抗のない導管113および輸送管114は、気管切開チューブ、気管内チューブ、または患者が呼吸することができる他の導管を介して呼吸空気の試料を得るように構成され得る。導管が適用されるPSIが1つ以下の場合、その導管は「抵抗がない」と見なすことができる。
【0028】
図2は、本開示の一実装形態による、オキシモニターシステム100の例示的な構成要素を示す概略ブロック図である。オキシモニターシステム100は、バッテリ204および/または電源206に接続されたコンピューティングデバイス202を備えることができる。コンピューティングデバイス202は、表示画面104、およびマイクロプロセッサまたはコントローラ210と双方向に通信するように構成され得る。測定サブシステムは、それぞれの接続を介してアナログおよび/またはデジタル信号をコントローラ210に通信するように構成され得る。
【0029】
ガス交換測定サブシステムは、二酸化炭素(CO2)分析器222および酸素(O2)分析器224に接続された定常状態呼吸管112を含み得る。ポンプ232は、呼吸管112から、分析器222および224を通り、出口導管を通り、そして排出口236を通ってシステムの外へガス試料を取り出すために含まれ得る。分析器222および224からマイクロコントローラ210へ信号を送信するために、信号キャリア(例えば、ワイヤ、光ファイバケーブルなど)を提供することができる。
【0030】
様々な異なる酸素検知デバイスをO2分析器224に採用することができるが、一実装形態では、酸素分析器224は、カリフォルニア州シティオブインダストリーのTeledyneAnalytical Instrumentsによって製造された超高速酸素(UFO-30-2)センサを含むことができる。CO2分析器222は、TreymedInc.によって製造されたCO2WFA二酸化炭素センサ、またはドイツ、HoechbergのVIASYSHealthcare GmbHによって製造されたJaeger HCS CO2センサ、またはマサチューセッツ州ニーダムのOridion Medical Inc.によって製造されたMicrostream(登録商標)CO2センサを含み得る。あるいは、他の任意のガスセンサを使用してもよい。
【0031】
さらに、呼気および/または吸入空気または周囲空気中の追加のガスの量を測定するために他のガス分析器も含まれ得る。O2分析器224およびCO2分析器222は、一般に、デジタルまたはアナログ信号をコントローラ210に通信するように構成されることができる。様々な実装形態において、分析器は、信号をコントローラ210に通信する前に何らかの信号処理または他の分析を実行するための集積された電子機器を含み得る。
【0032】
図1Aを参照すると、本開示のいくつかの実装形態では、ガス交換検査サブシステムは、呼吸管112から制御ユニット102上のポートにガス試料を輸送するように構成された1つまたは複数のガス輸送管114によって制御ユニット102に接続された呼吸管112を含み得る。いくつかの実装形態では、ガス試料輸送管114は、乾燥管を含み得る。適切な乾燥管は、ニュージャージー州トムズリバーのPermaPure LLCから市販されているものを含み得る。乾燥管は、ガス分析器によって報告される分圧測定値の品質を向上させるために、ガス分析器に供給される周囲および/または呼気試料中に存在する水蒸気の一部または全部を除去するために含まれ得る。
【0033】
図1A、
図1B、および
図2に関連して、様々な実装形態において、空気導管113は、管、パイプ、またはバルク材料を通る通路などの任意の適切な構造を含み得る。ポンプ232は、ガス分析器222および224を通して空気試料を輸送するのに適した任意の種類のポンプを含み得る。適切なポンプタイプの例は、ダイヤフラムポンプ、ペリスタルティックポンプ、ベーンポンプ、遠心ポンプ、シリンジポンプ、コンプレッサポンプ、およびピストンポンプを含み得る。導管を通る空気流を駆動するための他のポンプも使用することができる。いくつかの実装形態では、複数のポンプを使用することができる。
【0034】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,545,415号(「’415特許」)は、肺胞ガスレベルを測定するためのシステムおよび方法を記載している。’415特許に記載されている構成要素、デバイス、および技術は、本明細書に記載されているようなガス交換検査サブシステムの様々な実装形態での使用に適合させることができる。
【0035】
ガス交換測定サブシステムは、呼気中の1つまたは複数のガスの分圧を測定するように構成することができる。混合ガス試料中の特定のガスの分圧は、それが単独で同じ温度で混合ガス試料と同じ体積を占めている場合のその特定のガスの仮想圧力を表す。分圧は、典型的には水銀柱ミリメートル(mmHg)の単位で測定されるが、大気圧、バール、平方インチあたりのポンド数(PSI)、パスカル(平方メートルあたりのニュートン数)のような他の任意の圧力単位で提示または使用することもできる。
【0036】
様々な実装形態において、パルスオキシメータサブシステムは、酸素飽和度を測定するための任意の利用可能なパルスオキシメトリ法を使用する任意のパルスオキシメータデバイスを含み得る。「酸素飽和度」という用語は、血液中の総ヘモグロビン(不飽和+飽和)に対する酸素飽和ヘモグロビンの割合を指す。酸素飽和度値は、典型的にはパーセント値として報告されるが、十進値(すなわちパーセント値を100で割ったもの)として提示または使用することもできる。
【0037】
図1、
図1B、および
図2に示す例では、パルスオキシメータサブシステムは、システムコントローラ210に接続することができるパルスオキシメトリ回路218に接続されるフィンガクリップ120を含むことができる。パルスオキシメトリは、人の酸素飽和度をモニタするための非侵襲的な方法である。SpO
2(末梢酸素飽和度)のパルスオキシメトリ読み取り値は、動脈血ガス分析から得られるS
aO
2(動脈血酸素飽和度)の読み取り値と必ずしも同一ではないかもしれないが、これら2つは十分に類似しており、パルスオキシメトリは、本明細書に記載の種々のシステムおよび方法において酸素飽和度を測定するために使用されることができる。
【0038】
パルスオキシメトリは、透過モードまたは反射モードで実行することができる。透過モードでは、センサデバイスは、指先、手、つま先、耳たぶ、鼻などの人の体の薄い部分、または乳児の場合は足と交差するように配置されてもよい。透過型パルスオキシメータは、送信機から、身体部分を通して2つの異なる波長の光を身体部分の反対側に位置する光検出器へ通過させるように構成され得る1つまたは複数の光送信機(例えば、レーザ、LED、または他の光源)を含み得る。光検出器に接続されたデジタルおよび/またはアナログ電子機器は、波長の各々で変化する吸光度を測定することができる。電子機器は、静脈血、皮膚、骨、筋肉、脂肪、爪、または透過光の一部を吸収し得る他の構造を除く、脈動する動脈血のみに起因する波長の各々での吸光度を決定するようにも構成され得る。
【0039】
反射型パルスオキシメトリは、透過型パルスオキシメトリの代替として使用することができる。反射パルスオキシメトリは、人の体の薄い部分を必要とせず、従って、足、腕、脚、額、胴体、胸部など、より普遍的な用途に適している。組織を通過する光の波長を評価する代わりに、反射率パルスオキシメータは、所望の波長の反射光を受光して評価することができる。
【0040】
図1Aおよび
図2に示す例では、肺機能測定サブシステムは、一般に流管116を含み、肺機能測定サブシステムは、システムコントローラ210に接続されることができる。いくつかの実装形態では、(例えば、肺機能測定コントローラが圧力センサまたは肺機能を評価するための他のデバイスを含む場合)流管116は、ガス輸送管によって制御ユニット102に接合され得る。他の実装形態では、肺機能を評価するためのセンサまたは他のデバイスは、流管116に一体化または取り付けられることができ、その場合、流管116は、電気信号または光信号を伝えるように構成されたケーブル118によって制御ユニット102に接続されることができる。いくつかの実装形態では、流管116は、ガス輸送管およびケーブルの両方によって制御ユニット102に接合されてもよい。肺機能測定サブシステムは、一般に、肺活量測定検査を実施するように構成された装置および電子機器を含み得る。
【0041】
肺活量測定は、吐き出されることができる、および/または吸入されることができる空気の量および/または速度(流速)を測定する肺機能検査(PFT)である。測定にいくつかの異なる方法(例えば、圧力変換器、超音波流量測定、水量計、機械的タービン、または他のデバイス)のうちの1つまたは複数を使用することができる様々な利用可能なタイプの肺活量計のうちの任意のものが使用され得る。いくつかの実装形態では、肺活量計の構成要素は、デバイス全体をより携帯可能とするものを優先して選択され得る。
【0042】
いくつかの実装形態では、肺機能流管は、定常状態呼吸管と一体化することができ、それによって単一の呼吸管を使用して両方の機能を実行することが可能になる。いくつかの実装形態では、肺機能測定サブシステムは、オキシモニターシステム100から省略され得る。
【0043】
様々な実装形態では、表示画面104は、患者または他のユーザがシステム100を制御し、画面に表示されたシステムからの出力を読み取ることを可能にするように構成されたタッチスクリーンとすることができる。システム100は、必要に応じて他の任意のユーザインタフェースデバイスをも含み得る。例えば、システム100は、任意の数のボタン、スイッチ、ノブ、スライダ、ダイヤル、レバー、または他のユーザインタフェース構造を含み得る。いくつかの実装形態では、システム100は、音声出力デバイス226(例えば、スピーカ)、音声入力デバイス228(例えば、スピーカ)、および/または光学入力デバイス(例えば、カメラまたは他の光学センサ)も含み得る。
【0044】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、心拍数モニタ、1つまたは複数の加速度計、または他の測定デバイスをも含み得る。
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、患者の呼吸の状態、ガス交換、または心肺健康の他の態様に関するデータおよび/または情報を収集するために様々な検査を実行するように構成され得る。いくつかの実装形態では、これらの検査は、ガス交換検査、努力性呼気検査、症状調査、および/または他の検査を含み得る。
【0045】
様々な実装形態では、実行されるべき検査は、ユーザインタフェースを使用して選択され得る。いくつかの実装形態では、いったん検査が選択されると、オキシモニターシステム100は、患者がどのように検査を進めるべきかについての指示を表示し得る。代替的にまたは追加的に、オキシモニターシステム100は、どの検査が行われているかを予測するために患者によって取られたアクションを検出するように構成されてもよい。例えば、加速度計または他の運動検出器が、定常状態の呼吸管および流管の一方または両方に配置されている場合、オキシモニターシステム100のコンピューティングデバイスは、呼吸管の一方の運動を検出し、その呼吸管に関連する検査のデータを受信する準備をし得る。あるいは、オキシモニターシステム100は、様々な測定サブシステムのうちの任意のものからの入力を受け入れる準備が整っているスタンバイモードで設定されてもよい。オキシモニターシステムは、1つまたは複数のセンサによって受信された信号の変化(例えば、呼吸管のうちの1つを通る流量の変化など)を検出し、そのセンサに関連する任意の検査に関するデータの格納および収集を開始し得る。
【0046】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、定常状態呼吸検査とも呼ばれることがあるガス交換検査を実行するように構成され得る。
図3Aは、デバイスによって実行され得るガス交換検査プロセス300の一例を示すプロセスフローチャートを提供する。
【0047】
いくつかの実装形態では、プロセス300は、一定期間にわたって通常の呼吸をするように患者に指示することによってブロック302で開始することができる。いくつかの実装形態では、ガス交換検査は、患者が定常状態で呼吸している間に、すなわち、定期的な間隔で吸い込んで吐き出す間に実行されることができる。いくつかの実装形態では、メトロノーム(登録商標)を使用して、患者が定期的な間隔で呼吸するのを補助することができる。他の実装形態では、メトロノーム機能が、オキシモニターシステム100に組み込まれてもよい。
【0048】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、患者が吸入し始めるべきであることを示す第1のトーンを発し、次に所定の期間の後に、患者が息を吐き始めるべきであることを示す第2のトーン(これは「吸入」音と同じまたは異なる音であり得る)を送信することによって患者に呼吸するように指示し得る。第1のトーンと第2のトーンとの間で繰り返し交替することによって、オキシモニターシステム100は、所望の期間にわたって患者に定常的に呼吸するように指示することができる。いくつかの実装形態では、患者に通常呼吸するように指示するステップは省略されてもよい(例えば、マスクまたは鼻腔カニューレが使用されている場合)。そのような実装形態では、オキシモニターシステムは、定常状態の呼吸の期間を識別するように構成され得る。
【0049】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、複数の呼吸サイクル(吸気/呼気サイクル)にわたってO2およびCO2分圧値の一貫性を監視してもよい。例えば、オキシモニターシステム100は、所定数の連続した呼吸サイクルにわたって、O2分圧値および/またはCO2分圧値の変化の程度を決定することによって、定常状態呼吸が行われていると決定することができる。評価されたサイクルについての最大および最小O2分圧値および/またはCO2分圧値の間の差が所定量未満である場合、オキシモニターシステム100は、これらの呼吸サイクル中に呼吸が定常状態にあると結論づけることができる。
【0050】
単一の呼吸サイクル(または呼吸周期)は、呼吸医学において一般に理解されているように、吸気とそれに続く一定量のガスの呼気(「一回換気量」と呼ばれることがある)からなる換気サイクルとして定義されることができる。呼吸サイクルの持続時間または全サイクル時間は、呼吸または換気期間として定義されてもよい。場合によっては、呼吸(breathing)サイクルはrespiratoryサイクルと呼ばれることがある。
【0051】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、非定常状態呼吸期間を含み得るはるかに大きいデータセットから定常状態呼吸期間を(すなわち、呼吸サイクルの期間または数に基づいて)識別し得る。次いで、オキシモニターシステム100は、定常状態呼吸期間中の呼吸サイクルのみから呼気終末値を(本明細書の他の箇所に記載されるように)取得する。
【0052】
いくつかの実装形態では、定常状態呼吸の期間は、酸素分析器によって検出された酸素レベルとCO2分析器によって検出された二酸化炭素レベルとの間の関係に基づいて計算され得る呼吸交換率(RER)に基づいて決定され得る。そのような実装形態では、患者が定常状態で呼吸していると決定する前であっても、オキシモニターシステム100は、ガス交換検査を開始するとすぐにO2およびCO2分圧値を収集し始めることができる。
【0053】
いくつかの実装形態では、呼吸数と組み合わせた心拍数は、定常状態の呼吸の期間を識別するために使用され得る。例えば、患者の心拍数は、パルスオキシメトリ信号に基づいて、または心電図(ECG)などの別個の心拍数監視デバイスを用いて監視することができる。所定の範囲内の心拍数(これは患者に基づいて選択することができ、または普遍的に適用することができる)は、定常状態の呼吸を示すことができる。
【0054】
いくつかの実装形態では、定常状態の呼吸状態を検出するために、上述の方法(または他の方法)のうちの2つ以上を組み合わせて使用することができる。
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、ガス交換検査中に十分な期間の定常状態呼吸が達成されたかどうかを患者または他のユーザに示すように構成され得る。例えば、いくつかの実装形態では、システムが定常状態の呼吸を検出している間に緑色の光が点灯され、システムによって検出された呼吸が定常状態にないときに赤色の光が点灯され得る。
【0055】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100が、
図3Aに示すプロセスのブロック320およびブロック316の検査に進む前に、患者が、一定期間(例えば、30秒、1分、1.5分、2分など)、定常状態で呼吸することが望ましい場合がある。様々な実装形態では、患者の呼吸がある期間にわたって定常状態に達する前であっても、ガス分圧データおよび酸素飽和度データが収集され得る。そのような実装形態では、所望の定常状態呼吸期間に続く期間を表すデータが識別され、ブロック322および326における計算に使用され得る。
【0056】
ブロック320において、オキシモニターシステム100は、上述の酸素および二酸化炭素ガス分析器を使用して呼気終末分圧の計算を開始することができる。いくつかの実装形態では、ガス分圧測定と同時に、ブロック316において、呼気終末ガス測定値320と同じ期間にわたって血中酸素飽和度(SpO
2)測定値を、パルスオキシメータを用いて取得することができる。いくつかの実装形態では、P
ACO
2およびP
AO
2のうちの1つのみの測定は、SpO
2の測定と同時であり得る。動脈P
aO
2の計算および使用されるその後の反復プロセスへの環境ガス測定およびガスサンプリングが
図3Bに示される。ガス交換測定サブシステムが開始し(302)、気圧が記録され(304)、システムが周囲空気に対して較正される(306)。P
IO
2が計算され(308)、信号分離が、PO
2(312)、PCO
2(314)、SpO
2(316)および脈拍数(HR)318を記録するために使用される。呼気終末値が計算されると(320)、変数がP
aO
2の式にロードされ(322)、RQ値が計算される(324)。システムがP
aO
2を計算するとき(326)、期待値に対する初期計算値を使用する変動性チェックがチェックされ(328)、値が標準偏差目標内の許容範囲内にない場合、追加変数Viが逐次的に加算され(330)、P
aO
2が再計算される(326)。変動性チェックが確認され、許容されたベースライン目標内に入った(328)後、システムは、O
2欠乏を計算し(332)、システムが定常状態呼吸パターンを記録したかどうかを決定する(334)。システムが定常状態呼吸パターンに到達した場合(334)、視覚的ディスプレイは、定常状態パターンに到達したことをテキスト通知とともに緑色でユーザに通知し、セッションは終了されることができる(336)。その後、ユーザは、スクリーン上の終了ボタンを押すことによってセッションを終了することができる(340)。
【0057】
本明細書で使用されるように、2つ以上の測定を実行するという文脈での用語「同時」は、ほぼ同時に、または重複する期間中に起こる事象または検査を指す。本開示において同時に発生すると見なされるためには、イベントは同時であってもよいが、同時である必要はない。例えば、検査Aの瞬間測定と検査Bの瞬間測定が共通の期間中に交互に行われる場合、検査Aと検査Bは同時に発生すると説明されてもよい。言い換えれば、重複期間中にインターレース方式で収集された検査Aおよび検査Bの瞬間データサンプルは、同時に発生していると説明することができる。さらに、相互に同時に収集された検査Aおよび検査Bの瞬間データサンプルは、同時に発生していると説明されてもよい。
【0058】
所与の呼吸と所与の呼吸時の肺内の血液を表す末梢パルスオキシメトリ測定との間には生理学的時間遅延が存在する。そのような時間遅延の期間は、患者の生理機能に基づいて変化する傾向があるかもしれないが、一般的には数秒程度である。様々な実装形態において、PACO2および/またはPAO2の測定は、測定が互いに少なくとも同時に行われる(すなわち、生理学的時間遅延を無視する)場合、少なくとも予想される生理学的時間遅延と同じくらい長い期間にわたって、またはおおよその生理学的時間遅延によってシフトされた異なる時間でSpO2の測定と同時に行われ得る(例えば、時間「t」に取得されたPACO2および/またはPAO2の測定値は、時間「t+d」に行われたSpO2測定値と相関させることができ、ここで「d」は生理学的時間遅延である)。
【0059】
本明細書で使用されるとき、測定に関して使用される「瞬時」という用語は、単一のデジタルデータサンプル、または連続的または断続的なアナログ信号から取られたデジタルデータサンプルのグループの集約または正規化を指すことがある。本明細書で使用されるとき、測定値を「収集する」とは、デジタルデータサンプル値を非一時的揮発性または不揮発性メモリデバイスに格納することを指すことがある。規則的なサンプリング間隔での複数の瞬時データサンプルの収集は、アナログ信号の連続性または間欠性にかかわらず「連続的」測定として説明され得る。いくつかの実装形態では、(例えば)「連続的な」ガス交換測定は、複数の呼吸サイクル(吸息/吐息)にわたって持続し得る。
【0060】
本明細書に記載の様々な例および実装形態は、1つまたは複数の測定値の「ベースライン」値に言及することがある。そのようなベースライン値は、オキシモニターシステムまたは他の適切なデバイスもしくは方法を使用して多数の方法のうちのいずれかで確立することができる。例えば、いくつかの実装形態において、ベースライン血液ガス量(例えば、PCO2、PaO2、またはA-a勾配)は、ABG検査の結果に基づいて確立され得る。いくつかの実装形態では、ベースライン量(例えば、PaCO2、PaO2、SpO2、PAO2、PACO2、酸素欠乏、A-a勾配、肺機能量、または他の量のうちの1つまたは複数)は、母集団試験、臨床試験、または医師の判断に基づく平均値または「正常な」値または値の範囲であり得る。
【0061】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、オキシモニターシステム自体によって行われる1つまたは複数の測定値および/または計算に基づいて、患者固有のベースライン量(例えば、PaCO2、PaO2、SpO2、PAO2、PACO2、酸素欠乏、A-a勾配、肺機能量、または他の量)を確立するように構成され得る。
【0062】
本明細書の他の箇所で説明されているように、オキシモニターシステムのいくつかの実装形態は、各吸息/吐息呼吸サイクル中にPACO2および/またはPAO2の「呼気終末値」を決定することができる。そのような測定値に基づいて、オキシモニターは、各呼吸サイクルについてPaO2およびO2欠乏の値を計算することができる。従って、オキシモニターシステムは、所定の数の呼吸サイクルにわたって、または、所定の期間内に起こり得る任意の数の呼吸サイクルにわたって、任意の測定値または計算値(例えば、PAO2、PCO2、PaO2、またはO2欠乏量)の平均値、中央値、最大値、または最小値を計算することによってベースライン値を確立し得る。いくつかの実装形態では、オキシモニターシステムは、ベースライン値が決定されるべき測定期間(または呼吸サイクル数)をオペレータが指定することを可能にするように構成され得る。いくつかの実装形態では、平均値、中央値、最大値、または最小値は、後縁の期間または呼吸サイクルに基づいて連続的に更新され得る。
【0063】
本明細書で使用されるとき、用語「後縁期間」は、循環バッファと同様に先入れ先出し方式で連続的に更新される定義された期間または定義された整数個の呼吸サイクルを指すことができる。例えば、3呼吸サイクルの後縁期間は、直近に完了した3呼吸サイクルとして定義することができる。新しい呼吸サイクルが完了するたびに、最初の呼吸サイクルに関連する情報は削除され、新しい呼吸サイクルに関連する情報に置き換えら得る。
【0064】
PIO2、PAO2、PACO2およびSpO2の測定値は、患者の最近の身体活動の量、酸素補給の存在、患者の最近の食事、患者の心拍数および/または呼吸数、患者の体位、または他の要因など、さまざまな複雑かつ相互に関連する要因によって異なり得る。いくつかの実装形態では、同時の期間(またはほぼ同じ期間)中に測定値を取得することは、測定値が同じ条件下で取得されることを保証し得る。従って、いくつかの実装形態では、同様の条件下での測定の必要性が緩和または排除され得る場合、PIO2、PAO2、PACO2およびSpO2測定値は、同時ではない時間に取得され得る(例えば、測定値の1つまたは3つ全てが、測定間の時間、連続した時間など異なる時間に取得され得る)。
【0065】
様々な実装形態では、ブロック304におけるガス分圧測定は、呼気CO2のみ、呼気O2のみ、または呼気O2および呼気CO2の両方の分圧を検出することを含み得る。いくつかの実装形態では、他のガス(例えば、N2または他のもの)が、CO2およびO2に加えてまたは代わりに測定されてもよい。
【0066】
いくつかの実装形態では、ガス分圧測定値は、アナログガス分析器信号を所望のデジタルサンプリングレートでデジタルサンプリングし、そのデジタル試料を揮発性または不揮発性のメモリデバイスに格納することによって連続的に収集され得る。分析器がデジタルデータを出力する場合、デジタルサンプリングステップは省略され得る。いくつかの実装形態では、連続ガス分圧測定データは、ガス交換検査が始まるとき、定常状態の呼吸が検出されたとき、またはガス交換検査中の他のときに開始され得る期間中に収集することができる。連続ガス分圧測定データ収集のための期間は、患者が定常状態呼吸管112を通る呼吸を停止したことをオキシモニターシステム100が検出したとき、またはガス交換検査が始まった後の別の時点で終了し得る。
【0067】
他の実装形態では、ガス分圧測定は特定の間隔で行われる瞬時測定であり得る。あるいは、1つまたは複数の瞬時ガス分圧測定値は、定常状態呼吸が達成されたと判定した後の所定の時間、またはガス交換検査が始まった後の他の特定の時間に取得され得る。
【0068】
同様に、酸素飽和度測定は、ある期間(例えば、ガス分圧の連続測定と同じ期間)にわたって連続的に、または1つまたは複数の所望の時点で瞬間的に行われ得る。いくつかの実装形態では、酸素飽和度測定値は、ガス交換検査が始まった後の開始時間からパルスオキシメトリ検査の終了時間まで実質的に連続的に取得され得る。
【0069】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、収集された酸素飽和度サンプルデータの分析に基づいて、パルスオキシメトリ検査終了時間を自動的に決定するように構成され得る。いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、特定の色の光(例えば、緑色の光)を点灯することによって、または数字、テキスト、もしくは記号メッセージを表示画面に表示することによって、パルスオキシメトリ検査終了時間に達したことを示すように構成され得る。
【0070】
プロセス300のブロック306において、オキシモニターシステム100は、連続的および/または瞬時デジタルデータサンプルに基づいて、呼気中の二酸化炭素の分圧の終末値を得ることができる。いくつかの実装形態では、システムは、呼気中の酸素分圧の終末値を決定してもよい。
【0071】
図4Aは、正常な呼吸と異常な(例えば閉塞した)呼吸についてのCO
2分圧を示す呼吸の様々なフェーズを示す。点線の曲線は、臨床データに基づく(例えば母集団研究からの)「平均的な」人についての正常な閉塞されていない呼吸を表すPCO
2波形を表し、それは患者測定値を比較することが可能なベースラインとして扱うことができる。異なる臨床ベースラインが、患者の年齢、状態、または他の要因に基づいて使用され得る。実線の曲線は、喘息、気腫、または他の形態のCOPDなどによって閉塞されている呼吸を示すPCO
2波形を表す。
【0072】
呼気終末値の決定は、
図4A及び
図4Bを参照することによって理解することができ、
図4Bは、ある期間にわたって収集された例示的なO
2およびCO
2の分圧データのグラフを示す。
図4Bの点線曲線は、呼気CO
2の分圧を表す。実線の曲線は、呼気酸素の分圧を表す。両方の曲線は、複数の吸気/呼気呼吸サイクルの間、示されている。各呼気サイクルの間に、PCO
2およびPO
2は上昇し、プラトー(上昇勾配を有し得る)に達し、次いで呼気サイクルが終了するにつれて降下する。
【0073】
本明細書で使用されるとき、「呼気終末値」という用語は、呼気サイクルの終わり(すなわち、一回換気量の呼気の完了時)における測定変数の値を指す。従って、いくつかの実装形態では、CO
2またはO
2の呼気終末値は、各サイクルのサイクル終点を識別することによって、一連のデータ点から決定され得る。例えば、
図4Bにおいて、各呼気サイクルの終わりのピーク410は、円で示され、これは呼気終末CO
2に対応する。いくつかの実装形態では、各呼気サイクルの終わりのピーク410は、各サイクル中に極大分圧値を識別することによって識別され得る。あるいは、各呼気サイクルの終わりのピーク410は、勾配の突然の変化を検出し、勾配変化の直前のピークを識別することによって識別されてもよい。いくつかの実装形態では、ピーク検出および勾配変化検出の両方の組み合わせを使用して、各サイクルの局所的な呼気終末値を識別することができる。同一または類似の技術が、例えば各O
2サイクルの底部の円412によって示されるような、各呼気サイクルについてO
2の局所的な呼気終末値を決定するために使用され得る。
【0074】
いくつかの実装形態では、局所的な呼気終末値は、複数のサイクルについて取得されてもよく、局所的な結果は平均化されて、正規化された呼気終末値を取得してもよい。あるいは、正規化された呼気終末値は、複数サイクルの最大値、複数サイクルの最小値、複数のサイクルの中央値、複数のサイクルの平均値(代表値)、または他の正規化方法に基づいて取得され得る。いくつかの実装形態では、正規化された呼気終末値は、所定の数の呼吸サイクル(例えば、2、3、4、5、6、またはそれ以上のサイクル)に基づいて取得され得る。他の実装形態では、正規化された呼気終末値は、所定の期間420内に発生する任意の数のサイクルに基づいて取得され得る。いくつかの実装形態では、正規化された呼気終末値は、計算で使用される呼気終末値、表示画面上で直接報告するために使用される呼気終末値、および/またはメモリデバイスに格納される呼気終末値であり得る。同一または類似の技術が、PAO2およびPACO2の正規化された値を決定するために使用され得る。
【0075】
プロセス300のブロック326において、オキシモニターシステム100は、ブロック320で決定された呼気終末CO2分圧(PETCO2)およびブロック316で測定された酸素飽和度(SpO2)に基づいて、動脈血酸素分圧を計算することができる。様々な実装形態では、ブロック316での計算に使用されるSpO2の値は、所定の期間にわたって取得された複数のデータ点から取得された正規化された値(例えば、平均値、最大値、最小値、中央値、または他の正規化)であってよく、またはブロック316での計算に使用されるSpO2の値は、瞬時値である。ブロック326で実行される計算のさらなる詳細は以下に説明される。
【0076】
いくつかの実装形態では、ガス分析器は、患者が定常状態の呼吸管を通して呼吸していないときに周囲の空気試料を収集するために使用され得る。そのような周囲空気試料を分析して、周囲空気中に存在するO2、CO2、および/または他のガスの分圧を決定することができる。いくつかのガスセンサは、(例えば、高度または他の変動による)周囲気圧の変化を自動的に調整することができ得る。例えば、いくつかのガスセンサは、周囲空気中のターゲットガスの濃度(または量)と比較して、呼気試料中のターゲットガスの濃度(または量)の差を検出することができる。いくつかの実装形態では(例えば、周囲の気圧が海抜での気圧よりも低くなると予想される高地での用途で使用するように構成されたシステムでは)、オキシモニターシステム100は、搭載された気圧計を使用してトータルの周囲気圧を測定するように構成され得る。測定された周囲気圧は、様々な高度での大気の組成を表す一般的に認められている値に基づいて、ガス交換検査中に取得されたガス分圧測定値を調整するために用いられ得る。いくつかの実装形態では、周囲空気分圧測定値は、それらがガス交換検査値を調整するために使用されるかどうかにかかわらず、出力デバイス上に表示され得る。
【0077】
様々な実装形態において、努力性呼気検査は、肺活量測定として一般に知られている様々な検査手順のうちの任意のものを含み得る。努力性呼気検査を実施するためのプロセスは、使用される機器に応じてわずかに異なり得る。一般に、患者は、可能な限り最も深く息を吸い込んでから、できるだけ長く(いくつかの実装形態では、好ましくは少なくとも6秒間)肺機能流管116に吐き出すように依頼され得る。患者が息を吐き出すと、肺機能測定コントローラは、吐き出された(および/または吸い込まれた)空気の体積流量および経過時間を監視し記録することができる。
【0078】
このプロセスの直後に、患者に急速に吸い込むように指示することができる。これは、例えば、上気道閉塞の可能性を評価するときに役立ち得る。いくつかの実装形態では、努力性呼気検査は、本明細書に記載のガス交換検査の直後に有益に実施され得る。
【0079】
努力性呼気検査中に、鼻を通って空気が逃げるのを防ぐために、柔らかいノーズクリップ124を使用することができる。フィルターマウスピースは、微生物の拡散を防ぐために使用され得る。
【0080】
様々なパラメータのうちの任意のものが収集され、決定され、格納され、および/または出力ディスプレイ上に提示され得る。そのようなパラメータは、努力性肺活量測定値(FVC、努力性呼気検査中に吐き出された空気の総量)、1秒間の努力性呼気量(FEV1)、FEV1/FVCの比率(FEV1%)、離散時間で、連続的に、または所定の間隔で取得された努力性呼気流量(FEF)、最大呼気流量(MEF、流量曲線から得られた呼気流量のピーク)、ピーク呼気流量(PEFR)、または他のもののような既知の肺活量測定パラメータを含み得る。これらまたは他の尺度の数値および/またはグラフィカル表現は、後で見るために表示および/または格納され得る。
【0081】
様々な実装形態において、オキシモニターシステム100は、患者の症状に関する一連の質問に応答してユーザ入力を収集するように構成された調査ソフトウェアを含み得る。長期的な患者の症状は、さまざまな呼吸関連障害の進行を追跡するのに非常に役立つ。オキシモニターシステム100は、いくつかの簡単な質問に答えることによって、数週間にわたって毎日の症状を記録することを患者に促すように構成され得る。例えば、質問は、咳は昨日よりひどいですか?喀痰または痰は昨日よりひどいですか?毎日の痰の量はどれくらいですか?昨日から呼吸は悪化しましたか?(他の質問やこれらの質問のバリエーションの中で)という質問を含み得る。いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、患者の運動耐性に関する質問をすることもあり得る。例えば、オキシモニターシステム100は、ノンストップウォーキング能力が前日よりも優れているか悪くなっているかを示すように患者に促してもよく、これは典型的には臨床的状況における運動負荷検査として知られている。これらまたは同様の「はい」または「いいえ」の質問に対する収集された答えは、状態が時間の経過とともに改善しているのか悪化しているのかを正確に示し得る。
【0082】
いくつかの実装形態では、「はい」または「いいえ」の応答を要求する質問の代わりに、またはそれらに加えて、オキシモニターシステム100は、スケール上の変数の値などの可変の応答で回答され得る1つまたは複数の質問(例えば、「あなたの咳は1から5のスケールでどれくらい悪いですか?」)を提示するように構成され得る。他の実装形態では、患者が1つまたは複数の以前の質問に対する特定の回答を提供したことに応答して、いくつかの質問が提示され得る。例えば、痰が昨日より悪いかどうかを尋ねられたときに患者が「はい」と答えると、オキシモニターシステム100は、痰の量を数値または他の尺度で評価するように患者に要求する質問を引き続き行うように構成され得る。
【0083】
様々な実装形態において、オキシモニターシステム100は、症状追跡質問に対する回答を患者に定期的な時間間隔で促すように構成されてもよい。
様々な実装形態において、オキシモニターシステム100は、オキシモニターシステム100によって実行される別の検査(例えば、ガス交換検査または肺機能検査)の後の所定の時間内に症状追跡質問に対する回答を患者に促すように構成され得る。代替的に、オキシモニターシステム100は、オキシモニターシステム100によって実行される別の検査の後の所定の時間ですぐに症状追跡質問に対する回答を患者に促すように構成されてもよい。例えば、オキシモニターシステム100は、患者(または患者の介護者)が症状の質問に対する回答を入力すべきであることを示す可聴または可視プロンプトを生成してもよい。
【0084】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、1日1回(例えば、24時間ごとに同じ時間に)、1日2回、またはその他の任意の頻度または時間間隔で、症状追跡質問に対する回答を患者に促すように構成され得る。いくつかの実装形態では、患者または他のユーザは、リマインダ間隔を所望の頻度または時間間隔に設定し得る。
【0085】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、答えが初期プロンプトの所定の時間内に提供されない場合、症状追跡質問に対する答えについてより短い間隔で患者に促すように構成され得る。例えば、オキシモニターシステム100は、答えが提供されるまで患者または他のユーザに「しつこく知らせる」ように構成されてもよい。
【0086】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、ガス交換検査、肺機能検査、または他の検査の結果に基づいて、質問を追加する、質問を削除する、または質問を修正するように構成され得る。
【0087】
本開示の様々な実施形態において、動脈血酸素含有量(分圧)は、本明細書に記載されるように非侵襲的検査の結果に基づいて合理的に正確に推定され得る。
血中酸素飽和度(SpO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)との間の関係は、酸素-ヘモグロビン解離曲線によってよく表される。この関係の数学的表現は、ヘモグロビンの酸素結合親和性が酸性度および血中の二酸化炭素濃度に反比例することを提示するボーア効果によって説明することができる。例えば、CO2の増加はpHを低下させ、その結果、ヘモグロビンタンパク質がそれらの酸素量を放出することになる。酸素結合曲線がS字形であることがデンマークの科学者ボーアによって実験的に発見された。ボーア効果は、ヘモグロビンへの酸素の結合を数学的に表す生化学で使用されるヒルの式によってさらに進歩する。数学的表現は「部分占有(Fractionaloccupancy)」という用語を使用することができ、Yは所与の分子(例えば酸素)を有するタンパク質受容体(例えばヘモグロビン)であり、これは分子が結合した結合部位の量を分子結合部位の総量で割ったものとして定義される。Y=0の場合は飽和しておらず、Y=1の場合は次のように完全に飽和している。
【0088】
Y=結合部位/(結合部位+非結合部位)
ヘモグロビンのような多部位タンパク質へのこの協同的結合は、酸素分子に対する親和性を増加させ、そして以下の形を有するヒルの式として知られている。
【0089】
【数2】
ここで、「n」は「ヒル係数」であり、[X]は分子濃度を表し、Kは実験的解離定数を表す。n>1の場合、協調的結合は正である。この酸素-ヘモグロビンの関係は非線形の関係であるが、固定されているのではなく個別化されており、血中のCO
2分圧、血液のpH、温度、赤血球で産生されるDPG(2,3-DPGは無機リン酸塩である)の存在によって変化する。
【0090】
本開示の様々な実装形態において、動脈血酸素分圧(PaO2、mmHgの単位で表される)は、酸素-ヘモグロビン解離曲線から導き出された関係および上記の仮定を使用して、大気圧、吸気酸素、呼気二酸化炭素、他の生理学的変数、および末梢動脈血酸素飽和度(SpO2、10進数で表される)の測定値に基づいて概算することができる。
【0091】
酸素-ヘモグロビン解離曲線の個々の調整は、異なる生理学的変数に基づいて適切な動脈血分圧(PaO2)に到達するようになされ得る。本開示の様々な実装形態において、動脈血酸素分圧(PaO2、mmHgの単位で表される)は、以下の式2に示される関係を使用していくつかの測定パラメータの直接測定に基づいて概算できる。
【0092】
【数3】
ここで、nは、約2.3~3.0の範囲であり得るヒル係数であり、2.7が好ましい場合があり、Aは、式3の関係から得られる。セバリングハウス(Severinghaus)(1979)らは、上で与えられたこの方程式が酸素解離曲線によく合うことを示した。例えば、94および30%の飽和の間で、計算されたPO
2における誤差は5mmHg未満である。
【0093】
【数4】
ここで、C
0は実験的に導出された定数であり、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、およびC
7は、実験的に導出および/または公表されている研究結果から参照される係数である。V
1~V
7は、各セッションで直接測定された、または直接測定から導出された入力変数である。変数V
1~V
7は、以下の表1に示される測定可能なメトリックに対応する。
【0094】
【表1】
例えば、PCO
2のみによるヘモグロビンの酸素親和性の変化の影響を説明するために、Aは、P50として表すことができ、PCO
2とのその関係は、A=B1+B2*PCO
2としてケルマンサブルーチンに従って表すことができ、ここで、B1およびB2は、ケルマンサブルーチンから導出された定数であり、塩基過剰がゼロであると仮定して実験データから調整することができる。様々な実装形態において、定数B1は、約16.5から約19.0の間の値をとり得る。例えば、定数B1は、16.5、16.6、16.7、16.8、16.9、17.0、17.1、17.2、17.3、17.4、17.5、17.6、17.7、17.8、17.9、18.0、18.1、18.2、18.3、18.4、または18.5の値を有することができる。いくつかの実装形態では、定数B1は、約16.5未満または約18.5を超える値をとり得る。
【0095】
様々な実装形態において、定数B2は、約0.210から約0.230の間の値をとり得る。例えば、定数B2は、0.210、0.211、0.212、0.213、0.214、0.215、0.216、0.217、0.218、0.219、0.220、0.221、0.222、0.223、0.224、0.225、0.226、0.227、0.228、0.229、または0.230の値を有することができる。いくつかの実装形態では、定数B2は、約0.210未満または約0.230を超える値をとり得る。
【0096】
動脈の値には、呼気終末PCO2が使用される。P50に対するPCO2の変化の影響は比較的小さい。例えば、40から50mmHgへのPCO2の増加は、わずか約2mmHgのP50の変化をもたらす。重症COPD患者では、肺胞死腔の寄与のために、呼気終末PCO2は動脈の値よりかなり低くなる。しかし、このヘモグロビンの親和性は、直接測定値を用いて計算的に導出することができる他の要因によって影響を受ける可能性がある。
【0097】
導出された値を計算するために、ソフトウェアは
図3Cの計算アルゴリズム350を実行することができる。デバイスのハードウェアコンポーネントは、SpO
2、P
AO
2、P
ACO
2、および温度を測定することができる。これらの値がいったん測定されると、それらは最終的なPO
2計算に影響を与える中間パラメータであると考えられる他の変数を計算するために使用される。A(P50)360の計算は、SpO
2352の測定およびP
AO
2354の測定に依存する。HCO
3
-362の計算は、P
ACO
2356の測定に依存する。pH 364の計算は、HCO
3
-の計算およびP
ACO
2の測定に依存する。DPG366の計算は、P50の計算、pHの計算、およびP
ACO
2の測定に依存する。最後に、P
aO
2368の計算は、DPGの計算、pHの計算、SpO
2の測定、および温度358の測定に依存する。
【0098】
上記の計算は以下のように説明され、重炭酸塩の計算では次のようになる。
【0099】
【数5】
これらの関係に加えて、ΔP
ACO2とΔHCO
3
-が以下の比例関係を持つことが確立され、ここでβは疾患の種類によって異なる。
【0100】
【数6】
上記の3つの関係を代数的に操作すると、式3.1が得られる。
【0101】
【数7】
以下の表に、式3.1の変数の既知の値と範囲を示す。
【0102】
【表2】
pH計算のいくつかの実装形態では、式3.1のHCO
3
-の式がHenderson-Hasselbalch式に挿入され、pH値が得られる(pK
Aは酸解離定数の負の対数であり、標準値は6.1である)。
【0103】
【数8】
様々な実装形態において、P50計算は2.7のヒル係数を使用し、P50はP
AO
2およびSpO
2の関数として表すことができる。
【0104】
【数9】
いくつかの実装形態では、ヘモグロビンの値が正常として定義され、これが測定されたパラメータからは達成不可能であるので、DPG計算は以下のように表すことができる。
【0105】
【数10】
ここで、pHとP50は式3.2と3.3から用いることができる。測定されていない定数の代表的な値の表を以下に示す。
【0106】
【表3】
いくつかの実装形態では、パラメータは、分数として表現されてもよく、またはゼロパーセントから百パーセントの間のパーセントパラメータに変換されてもよい。しかしながら、他の実装形態では、パラメータは対数の変数入力(Vi)であってもよい。いくつかの実装形態では、ソフトウェアは出力を処理し、理論的ベースラインに対するデータの誤り率または変動性を低減するために任意の単一または複数の変数を使用する。
【0107】
いくつかの実装形態では、パラメータ入力は、ソフトウェアに既に含まれているかまたはABG検査を使用して決定されたデフォルト値を使用することができ、値はABG検査の結果または利用可能であれば他の検査情報に基づいて手動でまたは自動的にオキシモニターシステムに入力され得る。いくつかの実装形態では、非生理学的パラメータは、オキシモニターシステムとは独立した機器を使用して測定することもでき、そのような独立して測定されたパラメータは、手動でまたは自動的にオキシモニターシステムに入力され得る。
【0108】
S字形の酸素-ヘモグロビン解離曲線では、大部分のO
2が移動したときに肺胞ガスと血液との間に大きな分圧差が存在し続ける。酸素-ヘモグロビン解離曲線のS字形の性質によって説明されるように、これは次に拡散プロセスを遅くする。海面レベルにおいて、大気圧が760mmHgで室内の空気の設定で、若い成人のPO
2の標準値は平均約95mmHgであり、P
aO
2で約85から約100mmHgの範囲にある(または飽和で95%以上、SpO
2)。動脈P
aO
2のこの予想される正常値は、年齢と共に着実に減少するので、予想される平均値は、60歳で約85mmHgである。酸素-ヘモグロビン解離曲線は、生理学的変化を考慮することによって一人一人に個別化することができる。例えば、解離曲線は、
図4Cに示すように、赤血球内のDPG(2,3-ジホスホグリセレート)、温度、PCO
2の増加、およびH
+濃度の増加(pHを下げる)によって右にシフトされる。いくつかの実装形態では、各追加の変数は、
図3Bのアルゴリズム330に別々に追加されて、データの変動性が、予想される理論値328に対する計算されたデータセットの2つの標準偏差によって測定されるような許容範囲内にあると、ソフトウェアプロセスによって観察されるまで、P
aO
2計算326を強化することができる。一実装形態では、P
aO
2計算ステップ326は、入力値としてV
4から開始して計算し、最初に計算された値が1シグマ内で2シグマ未満であれば、ソフトウェアは、計算された値が2シグマ値内に収まるまで、V
1、V
2、V
5、V
6、そしてV
7の順序で追加の変数を追加することによって改善し、ルーチンを停止する。
【0109】
測定値が利用可能でない場合、ソフトウェアは、ソフトウェア326によって提供されるような、または内蔵のルックアップテーブルを使用して、デフォルト値を取得する。
各1回の呼吸は、対応する呼吸測定値を生成し得る。多くの呼吸サイクルの期間にわたってそのような測定および計算を継続することは、「連続的な」時間変化するPaO2の推定値を生成し得る。「連続的」という用語は、各PaO2値が基づいている各呼気終末値の間の経過時間にかかわらず、そのような連続的に計算されたPaO2値を説明するために使用される。各呼気終末値の時間は、コントローラ210または他のプロセッサのクロック時間に基づいて知られているので、PaO2値は、連続波形グラフ上にプロットされ得る。いくつかの実装形態では、そのような連続波形グラフ上の各PaO2値の間に線が表示され得る。このような接続線は、経時的な傾向を示すために、必要に応じて直線状または曲線状とすることができる。
【0110】
いくつかの実装形態では、式2は、貧血患者の症例を反映するように修正する必要がある場合がある。貧血は、赤血球または血液中のヘモグロビンの欠乏によって特徴付けられる状態であり、これは解離曲線の左へのシフトをもたらし得る。曲線の左への移動は、酸素に対する結合親和性に影響を与える。
【0111】
異常型のヘモグロビンを有する貧血患者は、正常な肺および100mmHgの動脈PaO2を有し得るが、患者の総酸素結合能は、20.8ml*100ml-1から13.8ml*100ml-1に低減され、それにより血液のトータルの酸素含有量が低下する。この場合、この患者のO2飽和度は、(通常のpH、PCO2、および温度において)97.5%で正常に見えるかもしれないが、ヘモグロビンと結合したO2は、通常よりも低くなり、おそらく13.5ml*100ml-1である。血液の酸素濃度(mlO2*100ml-1血液のCaO2として表される)は、以下の関係式によって与えられる。
【0112】
【数11】
ここで、Hbは血液100mlあたりのグラム単位のヘモグロビン濃度である。
【0113】
Hb濃度が低下すると紫色に見え、チアノーゼの臨床症状を呈するであろう。その認識は、皮膚の色素沈着や部屋の照明などの複数の変数に依存するため、必ずしも信頼できる指標とは限らない。貧血患者の場合、Hb濃度が利用可能であり提供されると仮定して、上記の関係を使用して値を修正するように式2は修正され得る。
【0114】
さらに、オキシモニターシステム100は、特定の期間内に発生する呼吸サイクルの数を数えることによって呼吸数を決定することができる。呼吸数は、典型的には毎分呼吸数の単位で報告されるので、いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、60秒の期間内に起こる完全な呼吸サイクルの数を数えることができる。あるいは、呼吸サイクルは、60秒より短いまたは長い既知の期間中に数えられてもよく、合計数は数学的に調整されて、1分当たりの呼吸の呼吸数値が得られてもよい。
【0115】
本明細書で使用されるとき、用語「酸素欠乏」は、患者の肺胞内の酸素分圧(本明細書では「肺胞酸素」と呼ぶ)と患者の末梢動脈の酸素分圧(本明細書では「動脈酸素」と呼ぶ)との差に基づく、患者の肺のガス交換効率を表す定量的メトリックを指す。本明細書で使用されているように、酸素欠乏は、吸入空気からの酸素を血液中に吸収し、酸素を組織に輸送する際の患者の肺および体の非効率性の単一の数値尺度を提供する。酸素欠乏の値が大きいほど、酸素交換効率が低い(すなわち、酸素交換の非効率性が高い)ことを示す。方程式の形では、酸素欠乏(D)は肺胞酸素の測定量(PAO2)と動脈酸素の測定量(PaO2)の差である。
【0116】
D=PAO2-PaO2 (式4)
医療専門家の間では、肺胞酸素(PAO2)と動脈酸素(PaO2)の違いは、「肺胞-動脈勾配」または「A-a」勾配として知られている。A-a勾配は、ABG検査および肺胞酸素レベルとABG検査で測定可能な種々の量との間の固定関係を仮定する「肺胞ガス式」を使用して決定され得る。酸素欠乏(または「O2欠乏」)という用語は、本明細書では、血液検査に基づくA-a勾配とオキシモニターシステム100を用いて得られる呼気に基づく推定値とを区別するために使用される。
【0117】
図4Eの酸素-二酸化炭素ダイアグラムは、混合静脈血の値であるゼロから吸気ガスの値である無限大までのすべての換気-血流比に対する肺単位のガス組成を示す(RahnおよびFenn、1955)。簡略化のために、このダイアグラムは、吸い込まれたPO
2およびPCO
2が海抜での空気のものであることを示し、混合静脈の点は、PO
2が40およびPCO
2が45mmHgである正常な肺のそれである。VA/Qラインは、肺全体のPO
2とPCO
2および肺単位のすべての可能な値を示している。
【0118】
図4Eにおいて番号1が付された導出(「A-a勾配」)には、動脈血ガス試料(「a」とラベル付けされている)からの測定された動脈PO
2およびPCO
2を使用する。しかしながら、肺胞の値は、ABG測定からは分からない。代わりに、いわゆる理想肺胞PO
2が計算される。理想的な肺胞ガス組成は、換気-血流不均衡がなく、呼吸交換率が実際の肺と同じである場合に肺が有するであろうものである(「i」とラベル付けされている)。この計算は、動脈試料のPCO
2を取得し、理想的な肺胞ガスのPCO
2が同じであると仮定することによって行われる。図に示すように、肺胞理想点と動脈点とを結ぶ線はほぼ水平であるため、これは合理的な仮定である。次に、肺胞ガス式を使用して、吸入されたPO
2と、測定または仮定された呼吸交換率とを使用して、理想的な肺胞PO
2を計算する。
【0119】
今度は
図4Eにおいて番号2が付された導出に目を向け(「O
2欠乏」)、左側に動脈PO
2があるが、これはSpO
2から上述したように計算される。右側には肺胞PO
2があり、これは呼気終末値(「A」とラベル付けされている)により与えられる。新しいデバイスによって測定された肺胞と動脈のPO
2の間の差は、以前「A-a勾配」として定義されていた、動脈血と理想的な肺胞ガスとの間の従来のPO
2の差よりも大きい。
【0120】
図4Eにおいて番号2が付された導出で示されたこの新しい値は、番号1が付された従来のABG由来の値よりも有益であり得る。「A-a勾配」は、低い換気-血流比を有する肺単位の寄与に大きく依存する。対照的に、
図4Eにおいて番号2が付された導出で示された「O
2欠乏」は、低い換気-血流比を有する肺単位の寄与と、異常に高い比を有する肺単位の寄与の両方を含む。従って、それは肺における換気-血流比の分布についてのより包括的なメトリックである。
【0121】
いくつかの実装形態は、呼吸に基づく酸素欠乏の測定値(PAO2-PaO2)を、肺胞-動脈勾配(動脈血ガス検査からの推定されたPAO2-PaO2)とさらに比較し、換気-血流ラインに沿って両方の点を表示し、肺の換気および血流の不均衡がない理想的な点(i)と比較して、低いVA/Q(換気血流不均衡)を高いVA/Qに対して強調する。2つの値の差と、差の大きさは、混合心肺状態に見られるような、肺の高いVA/Q単位からの、換気(空気流)から灌流(血流)ベースの障害のいずれかからの寄与を示す。
【0122】
いくつかの実装形態において、システムは、酸素欠乏(PAO2-PaO2)を、肺胞-動脈勾配(動脈血ガス検査からの推定されたPAO2-PaO2)およびRQ勾配とさらに比較し、換気(気流)または灌流(血流)または混合症例のいずれかが寄与するガス交換を行うための肺の非効率の方向を視覚的に示す。
【0123】
PACO2値と同様に、式4の関係は、各呼吸サイクルについてO2欠乏の1つの値を生成することができる。O2欠乏は、直線であっても曲線であってもよい接続ラインの有無にかかわらず、経時的に連続波形として表示され得る。
【0124】
様々な実装形態では、オキシモニターシステム100は、上記の検査の各々から経時的に得られたデータを収集するように構成され得る。オキシモニターシステム100は、検査結果データおよび調査応答をデバイスに格納するための内部記憶デバイスを含み得る。追加的に又は代替的に、オキシモニターシステム100は、遠隔での保存又は使用のために通信ネットワークを介して検査データ及び調査応答を送信するように構成されてもよい。例えば、オキシモニターシステム100は、WiFi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)、イーサネット(登録商標)、SMS、WAP、HTML、セルラネットワーク、または任意の他の有線もしくは無線ネットワーク通信プロトコルを介して通信するための電子機器およびソフトウェアを含み得る。遠隔サーバに格納されたデータは、患者を診断するため、または患者の状態をモニタするために医師によってアクセスされ、閲覧され、そして使用され得る。
【0125】
様々な実装形態では、検査データおよび調査応答は、オキシモニターシステム100の表示画面上または遠隔ディスプレイ上に表示することができる。データは、英数字、グラフィック、またはグラフィックと英数字テキストの組み合わせとして表示され得る。いくつかの実装形態では、検査データおよび/または調査応答データは、検査が完了した直後に、または履歴データが要求されているときはいつでも、グラフィックおよび/または英数字で表示され得る。データは、短期間の傾向、長期間の傾向、母集団の平均との比較、または他のさまざまなメトリックを示すことができる、経時的なメトリックの時系列を示すために表示されることがある。
【0126】
例えば、いくつかの実装形態では、ガス交換検査が行われている間に、測定されたCO
2およびO
2分圧値をリアルタイムで(またはできるだけリアルタイムに近いところで)表示することができる。いくつかの実装形態では、
図4BのCO
2およびO
2分圧曲線のいずれかまたは両方が、ガス交換検査中またはその後に表示されてもよい。いくつかの実装形態では、規格化された値、または呼気終末値などの分析結果が、テキストまたは水平線として表示され得る。
【0127】
図5Aは、ガス交換検査の後に表示され得る出力の例を示す。ディスプレイの左側のグラフィックは、肺(「吸気」値により示される)から始まり、肺胞を通って進み、末梢動脈血管系で終わる、ガス交換システムを概略的に表している。「吸気」値によって示される周囲空気の分圧は、検出された高度または大気圧に基づく仮定された値であってもよく、または周囲空気の試料に基づいて直接測定された値であってもよい。「肺胞」値は、肺胞酸素の測定された分圧であり得る。「動脈」値は、「呼吸P
aO
2関係」と呼ぶことができる式2の関係を使用して計算された値であり得る。「酸素欠乏」は、上述した式4を用いて計算された値であり得る。いくつかの実装形態では、酸素欠乏の値の表示は、その値が患者に対して確立されたベースライン値を超えると点滅するようにすることができる。
【0128】
いくつかの実装形態では、システムは、P
AO
2、P
ACO
2、およびSpO
2を測定し、P
aO
2およびRQを計算することができる。それは、呼吸に基づく酸素欠乏の測定値(P
AO
2-P
aO
2)を、肺胞-動脈勾配(動脈血ガス検査からの推定されたP
AO
2-P
aO
2)と比較もし得る。これらのパラメータを使用して、患者が換気または血流に基づくガス交換の非効率性を有するかどうかを決定することができる。その結果は、
図5Aの左側の画像において、明滅または強調表示などの視覚的合図によって示されてもよい。ガス交換の非効率性の生理学的原因として換気障害が決定された場合、
図5Aの左側の画像の上部(肺を表す)は、様々な色のうちの1つで強調表示されてもよく、または欠陥の主な原因を医師に知らせるために点滅してもよい。一方、血流が非効率の主な原因であるとシステムが判断した場合、システムは、
図5Aの左側の画像の下部(血液および動脈を象徴する部分)を様々な色のうちの1つを用いて強調表示するか、または画像のその部分を点滅させ得る。これにより、換気-血流不均衡が存在する場合、その起源の判定をシステムが視覚的に容易にするので、医師および施術者が、患者が経験している可能性のある呼吸器系の問題の種類をより容易に検出することが可能になり得る。
【0129】
様々な実装形態において、表示または記録されたPAO2、PACO2、PaO2、PaCO2、または酸素欠乏の値は、単一呼吸サイクルからの呼気終末値、または数回の呼吸サイクルからの呼気終末値に基づく平均値であり得る。一例では、PACO2およびSpO2の値は、所定の回数の呼吸サイクル(例えば、2~10回またはそれ以上)によって定義される期間中に、または所定の期間(例えば、30秒~1分、またはそれ以上)に得られ、次に、PaO2の値は、呼吸PaO2の関係を使用して各呼吸サイクルについて計算することができ、複数のPaO2値が平均化されてその期間の平均PaO2値を得ることができる。別の例では、PACO2およびSpO2の値は、ある期間(例えば、2~10回以上の呼吸サイクル、または30秒~1分以上)にわたり得られてもよく、その期間の平均PACO2値は、その期間の呼吸サイクルからの呼気終末値を平均化することによって得ることができる。次いで、平均PACO2値を用いて、その期間のPaO2の平均値を得ることができる。どちらの方法を使用しても、平均値は後縁の固定長期間について定期的に更新することができる。同様に、酸素欠乏の値は、後縁の期間または呼吸サイクルにわたる平均として計算および更新され得る。
【0130】
図5Bは、検出された肺胞酸素レベルおよび二酸化炭素レベルの経時的傾向を示す、想定され得るオキシモニター出力の例を示す。示されるように、検出された肺胞酸素および肺胞二酸化炭素分圧は、データ点を有する別々の曲線で表示されることができる。データ点、曲線、または傾向線は、特定の患者について確立された肺胞酸素および肺胞二酸化炭素分圧のベースライン値と比較して示すことができる。
【0131】
図5Cは、動脈酸素分圧および二酸化炭素分圧の傾向を示す、想定され得るオキシモニター出力の一例を示す。
図5Bに示す肺胞値と同様に、動脈酸素値は、データ点、曲線、および/または傾向線として示されてもよく、患者に対して確立されたベースライン値に対して示されてもよい。図示の例では、経時的な動脈血酸素分圧の減少は、患者にとってのガス交換能力の悪化を示している可能性がある。
【0132】
図5Dは、肺胞および動脈の酸素の傾向とともに酸素欠乏の傾向を示す、想定されるオキシモニター出力の一例を示す。上記のように、傾向は、患者に対して確立されたベースラインに対して示され得る。いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100が、ベースラインに対する望ましい範囲外で酸素欠乏、肺胞酸素、または動脈酸素の値を検出した場合に、オキシモニターシステム100は、(例えば、ネットワークを介してメッセージを送信することによって)患者および/または患者の医師に警告するように構成され得る。例えば、酸素欠乏がベースラインを少なくとも所定の量だけ超えている場合、および/または動脈酸素がベースラインを所定の量だけ下回っている場合、オキシモニターシステムは、悪化している状態を医師に警告するメッセージを、患者の医師に送信することができる。医師または他の介護者は、警告が送信されるべきベースライン値および/または偏差の値を設定することができる。いくつかの実装形態では、急性事象(COPD患者が肺炎に罹患するなど)によって引き起こされる変化は、酸素欠乏の急激な上昇をもたらし得る。酸素欠乏の頻繁な測定は、それらが危険に進行する前にそのような問題の発生を強調し得る。
【0133】
図6Aは、肺機能検査(PFT)からの結果を示す、想定され得るオキシモニター出力の一例を示す。PFTは、肺の機械的有効性を定量化する重要な指標を作成し得る。オキシモニターシステム100は、努力性肺活量(FVC、努力性呼気中に吐き出される空気または呼吸の総量)、1秒間の努力性呼気量(FEV
1、努力性呼気中1秒間に吐き出される空気または呼吸の量)、およびピーク呼気流量(PEFR、努力性呼気中の最大流量)を含む複数のパラメータを測定および表示し得る。いくつかの実装形態では、オキシモニターデバイスは、いくつかの閉塞欠陥の存在を示すことができる、FVCに対するFEV
1の比を計算して表示することもできる。
【0134】
図6Aの左側は、両方とも同じグラフに表示された「流量-容積ループ」552および「容積-時間曲線」550を示す。
図6Aの右側は、PFTから得られた測定値、計算値、予測値、および%予測値を示す列を有する表を含む。グラフおよび表の両方における「予測」値(他の方法によって決定された「ベースライン」値の代わりにまたはそれに加えて使用され得る)は、AmericanThoracic Societyによって推奨されているNHANES IIIスパイロメトリック参照標準の母集団ベースの標準などの適切な標準(またはその他の適切な標準)に基づいて確立され得る。他の実装形態では、オキシモニターシステム100は、医師が肺機能ベースラインまたは予測値を設定することを可能にして、特定の患者の状況および治療ルーチンを反映するように構成され得る。%予測値は、確立された「予測」値またはベースライン値に対する測定値のパーセント変動を表す。
【0135】
図6Bは、点線で示されたベースライン値に対する数日間の期間にわたるPFT結果を示す肺機能の傾向を示す、想定され得るオキシモニター出力の一例を示す。
図6Bは、PFTからの4つの重要な測定値を表示し、各測定値を経時的にプロットし、経時的な傾向を示す。
【0136】
図7は、4つのはい、またはいいえの質問が行われる、オキシモニター症状追跡装置のための例示的なユーザインタフェースを示す。示されているように、質問は、「昨日から呼吸は悪化しましたか?」、「咳は昨日よりひどいですか?」、「昨日から歩行耐久性は悪化しましたか?」、「喀痰や痰は昨日よりひどいですか?」を含む。質問は、患者または患者に代わる介護者による簡単な回答を容易にする、タッチセンシティブ表示画面上に提供され得る。
【0137】
様々な実装形態では、オキシモニターシステム100によって行われる検査中に収集されたデータ、メトリック、および情報を使用して、様々な呼吸関連状態の治療を診断および/または処方することができる。
【0138】
上述したように、血液ガス量を決定するための既存の検査は侵襲的であり(すなわち、血液を採取するために皮膚穿刺を必要とする)そして時間がかかる。現在利用可能なABG検査装置でさえ、単一の採取された血液試料に基づいて1つの測定値を得るために試料を処理するのに1/2時間程度を必要とする。ABG検査はまた、血液が採取された時点での血液ガス量の単一のスナップショットのみを表す。ABG検査法では血液ガス量の連続測定は不可能である。
【0139】
これらの制限にもかかわらず、ABG検査は血液ガス測定のための業界で認められた標準として認識されている。一部のABG検査システムは、血液pH測定、定量的ヘモグロビン測定などの追加情報も提供する。いくつかの実装形態では、ABG検査からの1つまたは複数の結果を、オキシモニターシステムからの情報と組み合わせて使用することができる。例えば、いくつかの実装形態では、ABG検査結果は、オキシモニターシステムからのより頻繁なまたは連続的な測定値と比較され得るベースラインとして使用され得る。
【0140】
多くの肺や呼吸器の状態は急速に悪化する傾向があるが、従来の検査方法ではすぐには認識できない可能性がある。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者は、環境条件または患者の健康の他の態様への変化の結果として彼らの呼吸状態を突然悪化させることがある。そのような「悪化した」状態が診断も治療もされないままになると、患者の呼吸器系に恒久的な損傷が生じる可能性がある。そのような「悪化」は、従来の検査では検出が困難な場合がある。例えば、動脈酸素飽和度の低下は、呼吸状態の悪化を示している可能性があるが、そのような変化は、SpO2を測定するためにパルスオキシメータを使用して確実に検出するには小さすぎる可能性がある。SpO2のわずか2%から3%の低下は、悪化する状態を示している可能性があるが、そのような小さな変化は、より一般的にはパルスオキシメトリ測定の精度の通常の変動に起因し得る。
【0141】
従って、臨床医および患者は、状態が臨床的に危険なレベルに進行する前に、悪化する状態のより正確な診断を可能にし得る血液ガス量のより瞬間的かつ連続的な測定から大いに利益を得るであろう。SpO2のわずか2%から3%の変化は、PaO2、PaCO2、および/または酸素欠乏のはるかに大きい(従ってより検出可能な)変化に対応し得る。オキシモニターシステムは、血液ガス量を実質的に瞬間的かつ継続的に報告する能力を提供し、それによって呼吸検査の技術に実質的な改善を提供する。臨床医および患者は、呼吸、換気、およびガス交換に関連する広範囲の障害を診断する際の速度および正確さの向上から利益を得る可能性がある。
【0142】
オキシモニターシステム100を使用することにより、医療従事者は投薬の変更または他の介入に関して早期の決定を下すことができ、その結果、呼吸器状態のための必要な入院が大幅に減少する。患者および臨床医は、迅速かつ非侵襲的に患者の酸素欠乏の近似値をA-a勾配測定の形で得る能力から利益を得ることもできる。継続的または頻繁に更新される酸素欠乏の尺度は、ABG検査だけでは実際には得られない貴重な臨床情報を提供し得る。多くの場合、患者の状態は、ABG検査を使用して実際に検出できるよりも早く変化する可能性がある。酸素欠乏の迅速な呼吸に基づく測定は、患者の呼吸状態が低下していることを臨床医に迅速に警告することができ、患者の状態が危険なレベルまで低下する前に臨床医が是正措置を講じることを可能にする。さらに、オキシモニターシステムは携帯可能に構成され得るので、ガス交換検査値は、ABG検査が実用的ではないかまたは不可能である状況(例えば、血液検査室へ最低限のアクセスしかない交通または遠隔地)でも得ることが可能である。
【0143】
図8は、起動信号を生成するためのプロセス800を示し、起動信号は、(1)808において患者および/または介護者への通知またはアラームをトリガすること、(2)809において酸素供給デバイスによる患者への酸素の供給を起動し、810において患者に電気刺激を供給すること、または(3)1つまたは複数の測定または計算された量を示す数値またはグラフィカル出力を表示デバイスに表示すること、のうちの1つまたは複数を引き起こす。通知またはアラームは、音、テキストまたはライトなどの視覚的表示、および/または患者または介護者が着用するリストバンドなどのデバイスの振動であってよい。いくつかの実装形態では、アラームトリガ条件は、オキシモニターシステム100内の各検査サブシステムに対して確立され得る。例えば、オキシモニターシステム100は、ガス交換検査アラームトリガ条件802、肺機能検査アラームトリガ条件804、および症状調査アラームトリガ条件806を含むことができる。介護者は、患者の動脈血酸素分圧(P
aO
2)、酸素欠乏(P
AO
2-P
aO
2)、および呼吸交換率(RQ)の決定に基づいて、死亡リスクなどの患者に対する健康上のリスクを軽減するために患者を治療し得る。
【0144】
いくつかの実装形態では、1つ、2つ、または3つすべてのサブシステムトリガ条件(例えば、802、804、および/または806)が満たされると、807で(例えば、808、809、および/または810における)起動信号をアクティブ化することができる。他の実装形態では、アラームトリガ条件が、1つのみのサブシステムまたは2つのみのサブシステムについて満たされる場合に、アラームがトリガされてもよい。
【0145】
いくつかの実装形態では、トリガ条件が1つまたは複数のサブシステムによって満たされる場合、電気的性質の起動信号が生成され、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,417,351号(「’351特許」)に記載されているもののような末梢酸素刺激装置(oxistimulator)を起動することができる。’351特許は、患者の血中酸素含有量を測定し、血中酸素含有量が選択されたレベルを下回った場合に、患者を刺激するためにミリアンペア電流の形態で末梢神経刺激を患者の手首に供給するシステムおよび方法を提供する。そのようなシステムは、
図8のプロセスのステップ810において患者に電気刺激を提供するために使用され得る。
【0146】
他の実装形態では、トリガ条件がシステムによって満たされる場合、例えば、電磁弁を操作することによって、または鼻プロング/カニューレ、フェイスマスク、ベンチュリマスク、ネブライザー、CPAPマスク、IPPV/NIPPVマスク、または経気管カテーテルなどのデバイスを介して、酸素を制御するソフトウェアインタフェースを使用することによって、809において、1つまたは複数の酸素供給デバイスを起動させるために、電気的性質の動作信号が生成され得る。
【0147】
様々な実装形態では、特定の病状の存在の可能性を示すために、1つまたは複数のアラームトリガ条件802、804、および/または806が定義され得る。医学的状態のいくつかの例および例示的なアラームトリガ条件802、804、および/または806を以下に説明する。
【0148】
様々な実装形態では、問題のある状態に達する前にアラームまたは警告をトリガするために、アラームトリガ条件の閾値を安全マージンに基づいて設定することができる。いくつかの実装形態では、複数レベルのアラームトリガ条件が使用され得る。例えば、第1のアラームトリガ条件(または閾値)は、「軽度」の状態を示し、第2のアラームトリガ条件(または閾値)は、「中等度」の状態を示し、第3のアラームトリガ条件(または閾値)は、「重度」の状態を示し、これらの各々は、条件が満たされたときに生成されるべき異なる起動信号に関連付けられ得る。
【0149】
いくつかの実装形態では、ガス交換検査アラームトリガ条件802は、単一のガス交換測定値、単一の呼吸サイクルに対する呼気終末測定値、2つ以上のガス交換測定値のブール値もしくは数学的組み合わせ、または2つ以上の個々の測定値から計算された1つまたは複数の値に基づき得る。上述のように、ガス交換測定システムのいくつかの実装形態は、PAO2、PCO2、およびSpO2を直接測定し、それらの測定からの値を使用してPaO2およびO2欠乏を含む値を計算するように構成され得る。
【0150】
いくつかの実装形態では、PAO2の単一の測定値が閾値を下回る場合に、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。PAO2の単一の測定値は、単一の呼吸サイクルからの呼気終末値または呼吸サイクル中の他の任意の測定値であり得る。例えば、1回の呼吸サイクルからのPAO2の単一の呼気終末値が、約90または80mmHgを下回る場合に、ガス交換検査アラーム条件が満たされてもよい。
【0151】
いくつかの実装形態では、PAO2の複数の測定値(例えば、複数の呼吸サイクルからの呼気終末値)が特定の期間内に閾値を下回る場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。例えば、互いに約30秒以内に得られた2つ以上のPAO2の測定値が閾値を下回る場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。別の例では、患者のPAO2は、後縁の期間(例えば、10秒から2分以上)または後縁の複数の呼吸(例えば、2から10呼吸以上)にわたって測定されてもよく、平均PAO2値は、後縁の期間について計算されてもよい。後縁の期間の平均PAO2値が閾値を下回る場合に、ガス交換検査のアラーム条件が満たされてもよい。
【0152】
いくつかの実装形態では、PCO2の単一の測定値が閾値よりも大きい場合に、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。場合によっては、PCO2の比較的小さな増加は不吉な徴候である可能性があり、多くの場合、医師またはその他の医療提供者に行動を起こすよう警告する。これは、投薬量を調整すること、あるいはさらなる調査のために患者を診療所または入院部門に来させることを意味し得る。PCO2の単一の測定値は、単一の呼吸サイクルからの呼気終末値または呼吸サイクル中の他の任意の測定値であり得る。例えば、1回の呼吸サイクルからのPCO2の単一の呼気終末値が、約45mmHgより大きい場合に、ガス交換検査アラーム条件が満たされてもよい。
【0153】
高炭酸ガス血症(別名、高炭酸症)は、血中のCO2レベルが異常に上昇した状態である。高炭酸ガス血症は、一般的に45mmHgを超える血液ガス二酸化炭素レベル(PaCO2)として定義される。重度の高炭酸ガス血症は、75mmHgを超えるPaCO2レベルで発生する。呼気終末CO2の正常値は約35~37mmHgである。正常な肺では、呼気終末CO2は、呼気終末値よりほんの数mmHg高い傾向がある動脈のCO2濃度を近似し得る。従って、いくつかの実装態様では、オキシモニターシステムを使用して測定された呼気終末PACO2は、PaCO2の近似値として扱われ得る。
【0154】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステムで得られたPACO2値は、PaCO2の近似値を得るために、呼気終末PACO2値に調整量、例えば、2、3、4、または5mmHgを加えることによって調整され得る。いくつかの実装形態では、閾値は、呼気終末PACO2とPaCO2との間のおおよその差に基づいて定義され得る。例えば、PACO2(PCO2)の閾値は、約40mmHg以上であり得る。他の例では、PACO2(PCO2)の閾値は、約50mmHg、60mmHg、70mmHg、またはそれ以上であり得る。
【0155】
いくつかの実装形態では、PCO2の複数の測定値(例えば、複数の呼吸サイクルからの呼気終末値)が特定の期間内に閾値より大きい場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。例えば、互いに約30秒以内に得られた2つ以上のPCO2の測定値が閾値よりも大きい場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。別の例では、患者のPCO2は、後縁の期間(例えば、10秒から2分以上)または後縁の複数の呼吸(例えば、2から10呼吸以上)にわたって測定されてもよく、平均PCO2値は、後縁の期間について計算されてもよい。後縁の期間の平均PCO2値が閾値を超える場合に、ガス交換検査のアラーム条件が満たされてもよい。
【0156】
いくつかの実装形態では、PaO2の単一の測定値が閾値を下回る場合に、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。上述のように、いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、呼吸サイクルごとに1つのPaO2値を計算することができる。一例では、1回の呼吸サイクルからのPaO2の単一の呼気終末値が、約80mmHgを下回る場合に、ガス交換検査アラーム条件が満たされてもよい。他の例では、約60mmHg未満、または約40mmHg未満のPaO2値は、ガス交換検査アラーム条件を満たし得る。
【0157】
いくつかの実装形態では、ガス交換検査アラーム条件は、複数のPaO2値が特定の期間内に閾値を下回った場合に満たされ得る。例えば、互いに約30秒以内に得られた2つ以上のPaO2値が閾値を下回る場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。別の例では、患者のPaO2は、後縁の期間(例えば、10秒から2分以上)または後縁の複数の呼吸(例えば、2から10呼吸以上)にわたって測定されてもよく、平均PaO2値は、後縁の期間について計算されてもよい。後縁の期間の平均PaO2値が閾値を下回る場合に、ガス交換検査アラーム条件が満たされてもよい。
【0158】
いくつかの実装形態では、O2欠乏の単一の測定値が閾値よりも大きい場合に、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。上述のように、いくつかの実装形態では、オキシモニターシステムは、呼吸サイクルごとにO2欠乏の1つの値を計算することができる。
【0159】
いくつかの実装形態では、O2欠乏の複数の測定値(例えば、複数の呼吸サイクルに基づく)が特定の期間内に閾値よりも大きい場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。例えば、互いに約30秒以内に得られたO2欠乏の2つ以上の測定値が閾値より大きい場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。別の例では、患者のO2欠乏は、後縁の期間(例えば、10秒から2分以上)または後縁の複数の呼吸(例えば、2から10呼吸以上)にわたって測定されてもよく、平均O2欠乏値は、後縁の期間について計算されてもよい。後縁の期間の平均O2欠乏値が閾値を超える場合に、ガス交換検査のアラーム条件が満たされてもよい。いくつかの例では、ガス交換検査アラーム条件は、1つまたは複数の呼吸サイクルからのO2欠乏値が、以下に説明される年齢調整計算によって示されるように、約9(若い患者の場合)~約35(高齢患者の場合)より大きい場合に満たされ得る。
【0160】
一般的に認められている経験則は、「正常な」A-a勾配は患者の年齢を4で割って4を加えることによって近似できることである。そのような計算された(または推定された)「正常な」値をベースラインO2欠乏として使用すると、ガス交換検査アラームトリガ条件802は、ベースライン値を閾値量だけ超える酸素欠乏を含むことができる。例えば、いくつかの実装形態では、酸素欠乏が、確立されたベースラインを約90%~約150%(ベースラインO2欠乏からのパーセント変化として)超える場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。いくつかの実装形態では、酸素欠乏が、確立されたベースラインを約110%から約130%の間で超え、そして特定の一実装形態では約125%超える場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、入力として患者の年齢を取得し、入力された年齢に基づいて推定されたベースラインO2欠乏を計算するように構成され得る。
【0161】
いくつかの実装形態では、時間に対するガス交換量の変化率(例えば、PAO2、PCO2、SpO2、PaO2、またはO2欠乏)が閾値を超えるかまたは下回る場合、ガス交換検査アラーム条件が満たされ得る。いくつかのガス交換量については、変化率が正であればアラーム条件が満たされ得るが、他では負の変化率がアラーム条件を満たし得る。さらに他の場合では、閾値よりも大きい変化(正または負)がアラーム条件を満たし得る。
【0162】
様々な実装形態では、所定の期間または所定の数の呼吸サイクル中の変化率がモニタおよび/または計算されて、アラーム条件が満たされているかどうかを判定することができる。いくつかの実装形態では、所定の期間または所定の数の呼吸サイクルにわたるトータルの変化が計算および/またはモニタされて、アラーム条件が満たされているかどうかを判定することができる。
【0163】
様々な実装形態では、測定されたガス交換量の時間に対する変化率を決定するためのプロセスは、(所定のまたは測定された)既知の期間内の(所定のまたは測定された)既知の数の呼吸サイクルの間、ガス交換量(例えば、PAO2、PCO2、SpO2、PaO2、またはO2欠乏)の測定および/または計算を行い、各呼吸サイクルについてPAO2の呼気終末値を得ることによって開始され得る。変化率は、期間にわたる平均変化、または期間にわたる総変化を計算することによって計算することができる。いくつかの実装形態では、曲線より下の総面積は、測定期間にわたって測定データを積分することによって計算することができる。呼吸サイクル当たりのガス交換量の変化率を決定するために同様のプロセスが使用され得る。
【0164】
低酸素血症は、血液中の異常に低い濃度の酸素として定義される。低酸素血症の原因は様々であり得るが(例えば、他の原因の中でもとりわけ、喘息またはCOPDによる低換気)、状態自体は、「正常な」値を下回る動脈血酸素濃度として識別され得る。体内の未治療の低酸素レベルが最終的に臓器機能を損なう場合、呼吸性アシドーシスが起こり(pHが7.4より異常に低い)、それが呼吸不全につながる可能性がある。
【0165】
さまざまな臨床試験に基づいて、臨床医は60~79mmHgのPaO2値で「軽度の」低酸素血症を特定する。「中等度の」低酸素血症は、60mmHg未満だが40mmHgを超えるPaO2値によって示され、一方、40mmHg未満のPaO2値は、典型的には重度の低酸素血症と見なされる。様々な実装形態において、これらの値またはこれらの範囲内の値は、それぞれ軽度、中等度、または重度の低酸素血症を示すために、オキシモニターシステムにおけるアラーム条件として使用され得る。いくつかの実装形態において、低酸素血症は、閾値未満のPaO2および閾値未満のSpO2値の組み合わせによって識別され得る。例えば、60mmHg未満のPaO2および90%未満のSpO2は、低酸素血症の指標となり得る。
【0166】
過換気は、異常に速い速度で呼吸することと定義され、その結果、二酸化炭素濃度の低下と酸素濃度の上昇が起こり、失神、指やつま先のチクチク感、そして継続するとアルカローシス(血中pHの上昇、>7.4)と意識喪失を引き起こす。従って、いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100は、過換気を示すために選択されたガス交換検査アラームトリガ条件802を含み得る。そのようなアラーム条件は、約35mmHg未満のPCO2の1つまたは複数の測定および約100mmHgを超えるPaO2の1つまたは複数の同時測定によって満たされ得る。
【0167】
いくつかの実装形態では、オキシモニターシステム100のアラームトリガ条件は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息などの一般的な肺疾患を有する患者の進行を追跡し、問題が検出された場合にアラーム、通知またはアクションをトリガするように構成され得る。これらの患者の大多数は彼らの家に住んでおり、数ヵ月または数年の間、彼らの状態をフォローすることが医学的にしばしば必要である。これらの患者が、増悪として知られるもの、すなわち、上気道感染症または大気汚染物質への暴露の結果として、彼らの慢性的な状態の急性の状態への悪化を発症する場合、変化はオキシモニターシステム100を用いて容易に認識され得る。疾患が進行するにつれて、動脈血酸素飽和度(SpO2)は低下するであろうが、多くの場合その変化は認識するには小さすぎる。しかしながら、(式4を参照して上述したように)酸素欠乏を測定する能力は、患者および彼らの介護者が疾患の進行をはるかに早く知ることを可能にする。典型的には、患者の状態が悪化している期間にわたって、患者の動脈血酸素飽和度はたった2%または3%低下する可能性があるが、それらの酸素欠乏は、はるかに大きいマージン(例えば10mmHg)だけ増加する傾向があり、それははるかに容易に認識される変化である。
【0168】
いくつかの実装形態では、肺機能検査アラームトリガ条件804は、閾値数のPFT検査パラメータ(例えば、PEFR、FEV1/FVC、FEV1、およびFVCを含む)がそれぞれのベースライン値から閾値レベル以下になるという判定を含み得る。例えば、様々な実装形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のPFTパラメータがそれぞれのベースライン値を下回る閾値量を超えて低下した場合、アラームトリガ条件が満たされ得る。様々な実装形態では、閾値数のPFTパラメータが、それらのそれぞれの閾値を約60%から約100%の間だけ下回る場合、アラームトリガ条件が満たされ得る。いくつかの実装形態では、閾値数のPFTパラメータが、それらのそれぞれの閾値を約70%から約90%の間だけ、1つの特定の実装形態では約75%だけ下回る場合、アラームトリガ条件が満たされ得る。
【0169】
いくつかの実装形態では、症状調査アラームトリガ条件806は、少なくとも閾値期間にわたって追跡された少なくとも閾値数の症状について症状の悪化を示す患者の応答の検出を含むことができる。いくつかの実装形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の追跡された症状が、約1日から約1週間(またはいくつかの実装形態ではそれ以上)の期間にわたって悪化する傾向を示す場合、アラームトリガ条件が満たされ得る。いくつかの実装形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の追跡された症状が、約2日から約5日の間、1つの特定の実装形態では約3日の間に悪化する傾向を示す場合、アラームトリガ条件が満たされ得る。他の様々な実装形態では、他のアラームトリガ値を使用することができ、または他のパラメータを使用することができる。
【0170】
一実装形態では、生成された起動信号は、可聴音、振動、ディスプレイ上の可視メッセージ、ライト、または任意の他の適切なアラームタイプのうちの1つまたは複数を含み得るアラームをトリガすることができる。いくつかの実装形態では、アラームメッセージは、電子メールシステム、患者管理システム、SMSメッセージングシステム、または任意の他のメッセージングシステムなどの通信ネットワークを介してメッセージを送信することによって、警告通知として医師に送信され得る。いくつかの実装形態では、医師に送信される警告メッセージは、関連する期間(例えば、アラームがトリガされる前の数日、数週間、または数ヶ月)の検査結果データを含み得る。他の例では、警告メッセージは、医師が患者および/またはアラーム状態に関連する検査データを検索することができるネットワークリソースを示すハイパーリンクまたは他のポインタを含むことができる。
【0171】
様々な実装形態では、オキシモニターシステムによって収集されたデータは、出力表示デバイス上に連続的または断続的に表示されてもよい。測定データおよび/または計算された測定データは、数値的またはグラフィック的に表示され得る。いくつかの実装形態では、いくつかの測定値は、例えば
図9Aに示されるように、時間に対して測定値の連続的に更新された波形として表示され得る。
【0172】
図9Aは、整列されたタイムライン(水平)軸上に複数の波形を示す表示構成の一例を示す。第1のプロット902は、経時的なO
2波形を示し、第2のプロット904は、経時的なフォトプレチスモグラム波形を示し、第3のプロット906は、経時的なフォトプレチスモグラムの二次微分の波形を示す。一実装形態では、波形は30秒または1分の期間にわたって表示される。様々な実装形態において、より少ないまたはより多い呼吸サイクルが表示されてもよい。
【0173】
いくつかの実装形態では、波形プロットは、ベースライン値(例えば、表示された期間よりも長い期間からの後縁の平均値、母集団に基づく期待値、または臨床医の判断に基づく値もしくは波形)を示す線または波形も表示し得る。
【0174】
図9Bは、オキシモニターシステム100を用いて測定および計算されたデータおよび測定値を表示するために使用され得る別の例示的なグラフィック出力を示す。
図9Bは、PCO
2対PO
2のグラフ950上の水平バー952、954を示す。バー952、954の位置は、(以下でさらに説明するように)オキシモニターシステム100から得られた測定値に基づき得る。対角線960は、肺胞ガス式から導出された患者特有の肺胞ガスラインを表すために表示され得る。この例では、肺胞ガス式から導出されたRQ値は式5で与えられる。
【0175】
【数12】
ここで、P
ACO
2は、オキシモニターシステムによって得られた肺胞CO
2の測定分圧であり、P
CO
2は、以下の式6によって与えられる吸入空気中の酸素の分圧である。
【0176】
PIO2=FiO2(PATM-pH2O) (式6)
ここで、FiO2は、酸素である吸入空気の割合であり、PATMは、大気圧であり、pH2Oは、吸入酸素の分圧に影響する飽和蒸気圧である。多くの実装形態において、FiO2およびpH2Oの値は、地球上の最も典型的な環境において一定であると仮定することができる。従って、多くの実装形態において、PIO2は、オキシモニターシステムによって直接測定されるかまたは仮定されることができる大気圧によってのみ変化し得る。
【0177】
呼吸商は、肺胞ガスラインの勾配を、患者によって消費されたO2に対する排出されたCO2の比、および通常の期待値R=0.85として定義する。いくつかの実装形態では、呼吸商は、オキシモニターシステムによって得られた測定値に基づいて計算することができる。他の実装形態では、呼吸商は、ABG検査を使用して決定されてもよく、呼吸商の値は手動でまたは自動的にオキシモニターシステムに入力されてもよい。
【0178】
上記の式1として提供される肺胞ガス式は、呼吸商RQに等しい勾配を有する一次方程式である。RQの値が与えられると、測定された肺胞ガス量PACO2およびPAO2は肺胞ガスライン960に沿うはずである。様々な実装形態において、肺胞ガスライン960は、グラフ950上に表示されてもされなくてもよい。いくつかの実装形態では、システムは、3つの直接患者ガス測定値を1つのグラフに表示することができ、単一のコンピュータディスプレイ上に、X軸上の酸素分圧(PO2)、Y軸上の二酸化炭素分圧(PCO2)、および勾配としての患者の呼吸交換率(RQ)に対して患者固有のデータがプロットされる。標準的なRQラインからの勾配の増加または減少は、血液の進行中の酸-塩基(pH)不均衡の存在および生理学的代償機構が存在することを示している可能性がある。例えば、標準参照からのRQラインの勾配の上昇は、代謝性アシドーシスの存在を示唆している可能性があり、その傾向は不均衡を修正するための代償の兆候を提供する可能性がある。
【0179】
図9Bに示すグラフでは、バー952および954などの水平バーが、4つの値を示すために使用されることができ、バー952または954の長手方向(水平)中心線は、(例えば、単一の呼吸サイクルからの、または複数の呼吸サイクルに基づく正規化された値からの)PCO
2の測定された呼気終末値に等しいPCO
2の値に配置されることができ、バー952の左側端962(またはバー954の左側端966)は、呼吸P
aO
2関係を用いて計算された動脈血酸素分圧(P
aO
2)に等しい点に配置されることができ、バー952の右側端964(またはバー954の右側端968)は、オキシモニターシステムにより測定された肺胞酸素分圧(P
AO
2)に等しい点に配置されることができ、バー952または954の長さは、酸素欠乏(すなわち、P
AO
2とP
aO
2との間の差)を表すことができる。
【0180】
いくつかの実装形態では、表示されたグラフ950は、「最近」の測定値を表す第1のバー952と、「履歴」またはベースライン値を表す第2のバー954とを含み得る。様々な実装形態において、第2のバー954によって示される履歴値は、過去の期間(例えば、「現在」の測定の前の数時間、数日、または数週間)、または本明細書に記載されるような後縁の期間中に得られる値であり得る。他の実装形態では、履歴値またはベースライン値の他の定義が使用され得る。様々な実装形態では、1つまたは複数の数値が、バー952または954の1つまたは両方と共に表示されて、PAO2、PaO2、O2欠乏などの1つまたは複数の値を示すことができる。
【0181】
様々な実装形態では、色を使用してバー952、954に関連する情報を示すこともできる。例えば、色を使用して、「履歴」バー954を「現在」バー952と区別することができる。別の例として、「現在」バー952が、「履歴」バー954よりも長く、酸素欠乏の増加を示す場合、「現在」バー952の過剰部分(すなわち、「履歴」バー954の長さを超える部分)、または「現在」バー952全体が、潜在的に危険な状態を示すために、異なる色(例えば、赤、黄色など)で表示され得る。
【0182】
いくつかの実装形態では、グラフ950は、さまざまな危険ゾーンを示す特徴を表示することができる。例えば、第1の垂直線972は、下限閾値レベルのPO2の位置を示し、第2の垂直線974は、上限閾値レベルのPO2の位置を示し、第1の水平線976は、PCO2の上限閾値レベルの位置を示し、第2の水平線978は、PCO2の下限閾値レベルの位置を示すことができる。ゾーンライン972、974、976、978の位置は、母集団の「通常」のベースラインまたは他のベースラインに基づいていてもよく、臨床医またはオキシモニターシステムの任意の他のオペレータによって事前に決定されるかまたは調整可能であってもよい。
【0183】
第1の危険ゾーン982は、その範囲内の測定値が、低酸素血症(すなわち、下限O2閾値ライン972より下のO2レベル)および正常または低レベルのCO2によって特徴付けられるI型呼吸不全を示し得るゾーンを示すことができ、ここで、CO2の「低」レベルは、下限CO2閾値ライン978を下回るレベルである。第2の危険ゾーン984は、その範囲内の測定値が、上限閾値ライン976より上のCO2レベルにより示されるような高炭酸ガス症に加えて、下限O2閾値ライン972より下のO2レベルにより示されるような低酸素症によって特徴付けられるII型呼吸不全を示し得るゾーンを示すことができる。第3の危険ゾーン986は、その範囲内の測定値が、上限O2閾値ライン974より上の酸素レベルおよび下限CO2閾値ライン978より下のCO2レベルによって特徴付けられる過換気を示し得るゾーンを示すことができる。
【0184】
本明細書に記載の様々なコントローラ、コンピュータ、分析器、および同様のデバイスは、フィールドプログラマブルアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、アナログ-デジタル変換器、電力管理回路またはコントローラ、フィルタ、増幅器、タイマ、カウンタ、または必要に応じて他のデバイスなどの任意の適切なアナログおよび/またはデジタル信号処理コンポーネントを含み得る。
【0185】
図10は、例示的なコンピューティングマシン600を示すブロックダイアグラムであり、マシン600内において命令の1つまたは複数のセットまたはシーケンスが実行されて、マシン600に様々な例示的な実装形態に従う本明細書に記載のプロセス、方法、または計算のうちの任意の1つを実行させる。いくつかの実装形態では、
図10に示すようなマシン600は、独立型デバイスとして動作してもよく、または他のマシンに接続(例えばネットワーク化)されてもよい。ネットワーク化されたデプロイメントでは、マシン600は、サーバ-クライアントネットワーク環境ではサーバまたはクライアントマシンのキャパシティで動作することができ、あるいはピアツーピア(または分散)ネットワーク環境ではピアマシンとして動作することができる。
【0186】
マシン600は、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバコンピュータ、タブレットPC、ハイブリッドタブレット、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、Webアプライアンス、ネットワークルータ、スイッチまたはブリッジ、またはそのマシンで実行されるアクションを指定する命令(順次またはその他)を実行できる任意のマシンであってよい。さらに、単一のマシンのみが示されているが、「マシン」という用語は、本明細書で論じられる方法のうちの任意の1つまたは複数を実行するための命令のセット(または複数のセット)を個別にまたは共同で実行するマシンの任意の集合も含むものと解釈されるべきである。例えば、場合によっては、物理マシンのリソースを複数の別々のプロセスに別個に割り当てることによって、単一の物理マシンが、複数の仮想マシンとして動作するように構成され得る。
【0187】
マシン600は、少なくとも1つのプロセッサ602(例えば、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)またはその両方、プロセッサコア、計算ノード、1つまたは複数のクロックなど)、メインメモリ606、およびスタティックメモリ606を含むことができ、これらはリンク608(例えばバス)を介して相互に通信することができる。マシン600は、ビデオ表示ユニット610、英数字入力デバイス612(例えば、キーボード、タッチスクリーンなど)、およびユーザインタフェース(UI)ナビゲーションデバイス614(例えば、マウス、タッチパッド、タッチスクリーンなど)をさらに含み得る。一実装形態では、ビデオ表示ユニット610、入力デバイス612、およびUIナビゲーションデバイス614は、タッチスクリーンディスプレイに組み込まれてもよい。
【0188】
マシン600は、追加的に、1つまたは複数の記憶デバイス616(例えば、ドライブユニット)、信号生成デバイス618(例えば、スピーカ)、ネットワークインタフェースデバイス620、およびグローバルポジショニングシステム(GPS)センサ、コンパス、加速度計、または他のセンサなどの1つまたは複数のセンサ(図示せず)を含むことができる。
【0189】
記憶デバイス616(または複数のデバイス)は、本明細書に記載のプロセス、モジュール、方法、または機能のうちの任意の1つまたは複数を具現化する、またはそれらによって利用される1つまたは複数の組のデータ構造および命令624(例えば、ソフトウェア)を格納できるマシン可読媒体622を含み得る。命令624は、完全にまたは少なくとも部分的に、メインメモリ604、スタティックメモリ606、および/またはマシン600による実行中のプロセッサ602内に存在することもでき、メインメモリ604、スタティックメモリ606、およびプロセッサ602もまたマシン可読媒体を構成する。様々な実装形態では、別々のモジュールまたはプロセスのための命令は、1つまたは複数の記憶デバイス上の記憶領域に格納され得る。さらに、データベースまたは他のデータの集合の形態のデータストアは、1つまたは複数の記憶デバイス上の記憶領域に格納され得る。記憶領域は、1つまたは複数の記憶デバイス上で物理的に隣接していても隣接していなくてもよく、必要に応じて任意のサイズにすることができ、必要に応じて任意のファイル管理システム、データベース管理システム、またはデータ管理システムを使用できる。
【0190】
マシン可読媒体622は、単一の媒体であるように例示的な実装形態で示されているが、用語「マシン可読媒体」は、1つまたは複数の命令624を格納する単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型または分散型データベース、および/または関連するキャッシュおよびサーバ)を含み得る。「マシン可読媒体」という用語は、マシンによる実行のための命令を格納、符号化、または搬送することができ、本開示の方法のうちの任意の1つまたは複数をマシンに実行させるか、またはそのような命令によって利用される、または関連するデータ構造を格納、符号化、または搬送することができる任意の有形媒体を含むと解釈されるべきである。
【0191】
従って、「マシン可読媒体」という用語は、それだけに限らないが、固体メモリ、ならびに光および磁気媒体を含むと解釈されるべきである。マシン可読媒体の具体例は、限定ではないが例として、半導体メモリデバイス(例えば、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM)、およびフラッシュメモリデバイス)、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、およびCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む不揮発性メモリを含む。
【0192】
命令624は、さらに、複数の周知の転送プロトコル(例えば、HTTP、WAPなど)のうちの任意の1つを利用するネットワークインタフェースデバイス620を介して伝送媒体を使用して通信ネットワーク626を介して送信または受信され得る。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、携帯電話ネットワーク、旧来の基本電話(POTS)ネットワーク、および無線データネットワーク(例えば、Wi-Fi(登録商標)、3G、および4GLTE/LTE-AまたはWiMAXネットワーク)を含む。「伝送媒体」という用語は、マシンによる実行のための命令を格納、符号化、または搬送することができる有形または無形の媒体を含み、デジタルまたはアナログ通信信号またはそのようなソフトウェアの通信を容易にする他の媒体を含むと解釈されるべきである。
【0193】
本明細書の様々な実装形態で説明されているデバイス(例えば、ユーザデバイス)、モジュール、データストア、サーバ、または他のコンピューティングシステムのうちの任意のものは、
図10に示され、本明細書で説明されているマシン600のいくつかまたはすべての要素を含み得る。例えば、コンピューティングデバイス202、コントローラ210、O
2分析器224、CO
2分析器222、コンピュータ202などのオキシモニターシステムの様々なコンポーネント、または他のコンポーネントは、
図10を参照して説明されたマシン600のいくつかまたはすべての構成要素で実装されることができる。
【0194】
一実装形態では、医療デバイスは、酸素分析器および二酸化炭素分析器と流体連通するとともにコンピューティングデバイスと電子通信する呼吸管と、コンピューティングデバイスと電子通信するパルスオキシメータと、コンピューティングデバイスと電子通信する肺機能流管および肺機能コントローラとを含む。コンピューティングデバイスは、患者の症状調査の質問に対する応答を収集し、二酸化炭素分析器およびパルスオキシメータで得られた同時測定値に基づいて動脈血酸素分圧を計算するためのソフトウェアを含むことができる。
【0195】
さらなる実装形態では、コンピューティングデバイスは、少なくとも3つの悪化条件が満たされた場合に、患者および/または患者の責任を負う医師に通知するためのアラーム起動機構を含み得る。追加の実装形態では、計算された酸素欠乏が、所定のベースライン値を少なくとも第1の閾値量だけ超えたときにアラームが起動される。一実装形態では、第1の閾値量は、約90%から約150%の間である。また、少なくとも第2の閾値数の肺機能検査パラメータが、それぞれの所定のベースライン値を少なくとも第3の閾値量だけ下回った場合にアラームを起動させることができる。一実装形態では、パラメータの第2の閾値数は、少なくとも2つであり、第3の閾値量は、約60%から約100%の間であり、少なくとも第4の閾値数の症状が、少なくとも第5の閾値時間の間、悪化すると示され他場合にアラームが起動され、症状の第4の閾値数は、少なくとも2つであり、第5の閾値時間は、約2日から約5日の間である。
【0196】
さらに別の実装形態では、呼吸関連メトリックを測定する方法が提供され、方法は、第1の期間中に患者の末梢動脈血酸素飽和度の時系列のパルスオキシメトリ測定値を生成すること、第1の期間中の患者の定常状態呼吸中の呼気からの酸素分圧および二酸化炭素分圧の時系列の測定値を生成することを含む。
【0197】
さらなる実装形態では、方法は、測定値を使用して追加のメトリックを計算することを含む。別の実装形態では、方法は、パルスオキシメトリ測定値の第1の選択されたセットと、二酸化炭素分圧測定値の第2の選択されたセットとから動脈血酸素分圧を計算することを含み、酸素分圧の測定値を表す値と動脈血酸素分圧との間の差として酸素欠乏を計算することも含み得る。
【0198】
さらなる実装形態において、動脈血中の酸素分圧を非侵襲的に決定する方法が提供される。方法は、パルスオキシメータを用いて患者の末梢動脈血酸素飽和度を同時に測定すること、患者の呼気中の二酸化炭素の分圧を測定すること、および血中酸素飽和度測定および二酸化炭素分圧測定の結果を用いて、患者から採血せずに動脈血酸素分圧を測定することを含む。
【0199】
他の実装形態では、患者の呼吸効率を非侵襲的に定量化する方法が提供される。方法は、パルスオキシメータを用いて患者の末梢動脈血酸素飽和度を同時に測定すること、患者の呼気中の二酸化炭素の分圧を測定すること、患者の呼気中の肺胞酸素分圧を測定すること、血中酸素飽和度測定および二酸化炭素分圧測定の結果を用いて、患者から採血せずに動脈血酸素分圧を測定すること、および動脈血酸素分圧と肺胞酸素分圧との間の差に基づいて患者の呼吸効率を定量化することを含む。
【0200】
別の実装形態では、複数の患者の呼吸サイクル中に患者の末梢動脈血酸素飽和度のパルスオキシメトリ測定を実行すること、末梢動脈血酸素飽和度測定値を集約または正規化して、複数の呼吸サイクルについて平均末梢動脈血酸素飽和度を得ること、同じ複数の呼吸サイクル中に呼気から酸素分圧測定および二酸化炭素分圧測定を実行すること、各呼吸サイクルについて酸素分圧の呼気終末値および二酸化炭素分圧の呼気終末値を取得すること、酸素呼気終末値を集約または正規化して、複数の呼吸サイクルについての平均呼気終末酸素分圧を取得すること、二酸化炭素呼気終末値を集約または正規化して、複数の呼吸サイクルについての平均呼気終末二酸化炭素分圧を取得することを含む方法が提供される。
【0201】
方法は、平均末梢動脈血酸素飽和度および平均呼気終末二酸化炭素分圧を使用して、複数の呼吸サイクルについての平均動脈血酸素分圧を計算することをさらに含み得る。方法は、複数の呼吸サイクルについての平均動脈血酸素分圧と複数の呼吸サイクルについての平均肺胞酸素分圧との間の差として、複数の呼吸サイクルについての平均酸素欠乏を計算することをさらに含み得る。
【0202】
方法は、複数の呼吸サイクル後の追加の呼吸サイクル中に患者の末梢動脈血酸素飽和度のパルスオキシメトリ測定を実行すること、同じ追加の呼吸サイクル中に呼気から酸素分圧測定および二酸化炭素分圧測定を実行すること、複数の呼吸サイクルの最初サイクルからのデータを削除し、追加の呼吸サイクルからのデータを含めることによって、平均末梢動脈血酸素飽和度、平均呼気終末二酸化炭素分圧、平均呼気終末酸素分圧、平均動脈血酸素分圧、および平均酸素欠乏を更新することをさらに含み得る。
【0203】
方法は、追加の複数の呼吸サイクルの各々の後に先入れ先出し方式で、平均末梢動脈血酸素飽和度、平均呼気終末二酸化炭素分圧、平均呼気終末酸素分圧、平均動脈血酸素分圧、および平均酸素欠乏を連続的に更新することをさらに含み得る。方法は、測定された酸素分圧および測定された二酸化炭素分圧の連続波形画像を表示デバイスに表示することをさらに含み得る。方法は、動脈血酸素分圧もしくは酸素欠乏、またはその両方の連続波形を表示することをさらに含み得る。
【0204】
方法は、二酸化炭素分圧軸と酸素分圧軸とを有するグラフを表示することをさらに含むことができ、グラフは、平均呼気終末二酸化炭素分圧を示す二酸化炭素分圧軸に対する位置に第1のバーを含み、第1のバーの第1の端部は、平均動脈血酸素分圧を示す位置に配置され、第1のバーの第2の端部は、平均肺胞酸素分圧を示す位置に配置され、バーの長さは、平均酸素欠乏を示す。方法は、過去の呼気終末二酸化炭素分圧を示す二酸化炭素分圧軸に対する位置に第2のバーを表示することをさらに含むことができ、第1のバーの第1の端部は、過去の動脈血酸素分圧を示す位置に配置され、第1のバーの第2の端部は、過去の肺胞酸素分圧を示す位置に配置され、バーの長さは、過去の酸素欠乏を示し、過去の値(履歴値)は、複数の呼吸サイクルの前に実行された測定から得られたものである。
【0205】
方法は、グラフ上に肺胞ガスラインを表示することをさらに含み得る。方法は、I型呼吸不全を示すグラフの領域の標示を表示することをさらに含み得る。方法は、II型呼吸不全を示すグラフの領域の標示を表示することをさらに含み得る。方法は、過換気を示すグラフの領域の標示を表示することをさらに含み得る。方法は、低酸素症、低酸素血症、高炭酸症、および低炭酸症のうちの1つまたは複数を示すグラフの領域を示すラインを表示することをさらに含み得る。
【0206】
別の実装形態では、マスクの内部をマスクの外部に結合する抵抗のない空気導管と、導管をガス分析器回路に結合する輸送管とを有する呼吸マスクが提供される。
上記の説明から、これらの概念の範囲から逸脱することなく、本出願に記載されている概念を実施するために様々な技術を使用できることは明らかである。さらに、特定の実装形態を特に参照して概念を説明してきたが、当業者であれば、それらの概念の範囲から逸脱することなく形式および詳細に変更を加えることができることを認識するであろう。このように、記載された実装形態は、あらゆる点で例示的であり限定的ではないと見なされるべきである。本出願は上述の特定の実装形態に限定されず、本開示の範囲から逸脱することなく多くの再構成、修正、および置換が可能であることも理解されるべきである。