(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】エッセンシャルオイルからの金属イオンの除去
(51)【国際特許分類】
B01D 15/36 20060101AFI20221201BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20221201BHJP
C11B 9/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B01D15/36
B01J20/26 L
C11B9/02
(21)【出願番号】P 2019557585
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2018059881
(87)【国際公開番号】W WO2018197294
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-01-27
(32)【優先日】2017-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502307209
【氏名又は名称】バイオタージ・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】BIOTAGE AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨンソン,スティグ
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193763(JP,A)
【文献】国際公開第2007/080963(WO,A1)
【文献】特表2004-513215(JP,A)
【文献】特開2010-116434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0186050(US,A1)
【文献】米国特許第06132750(US,A)
【文献】国際公開第2007/122720(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/002696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 15/00-15/42
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00-5/02
B01J 20/281-20/292
G01N 30/00-30/96
B01D 24/00-35/05,35/10-37/04
B01D 39/00-41/04
C02F 1/28
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッセンシャルオイルから金属イオンを分離する方法であって、方法は、金属イオンを含む
エッセンシャルオイルを非官能化セルロースと接触させることと、金属イオンを前記セルロースに吸着させることと、前記セルロースから前記
エッセンシャルオイルを分離することと、を含み
、前記金属イオンがAg
+である、方法。
【請求項2】
クロマトグラフィ法であって、前記非官能化セルロースは、固相として用いられる、または固相に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非官能化セルロースは、フィルタのすべてまたは一部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エッセンシャルオイルは、柑橘油および香油からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記柑橘油は、レモン、オレンジまたはグレープフルーツオイルであり、前記香油はスペアミントである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エッセンシャルオイルは
、IMACまたは銀クロマトグラフィステップに由来する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記クロマトグラフィステップは、金属イオンが充満した合成ポリマーを利用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エッセンシャルオイルからの金属イオンの除去のための捕捉剤クロマトグラフィカラムの使用であって、前記カラムは、非官能化セルロースである、または非官能化セルロースを含む充填剤を含み、前記金属イオンがAg
+である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、液体からの金属イオンの分離、より特定的には少量の金属イオンの分離に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
クロマトグラフィは、薬剤の生物学的調整の間における液体からの所望の薬理活性化合物の除去または望ましくない汚染の除去などのための、液体から所望のまたは望ましくない成分を分離するために生物学の領域において一般的に用いられる方法である。
【0003】
クロマトグラフィの原理は、数十年以来よく知られており、一般的に液相に存在する分離対象となる化合物と固相との間における様々な化学的相互作用を利用することを含み、しばしば連続したクロマトグラフィのためのクロマトグラフィカラムまたはバッチクロマトグラフィのための容器において提供される。このような固相は、クロマトグラフィ媒体もしくは樹脂、または最も頻繁に用いられる連続した液体カラムクロマトグラフィの目的のための充填剤として知られている。
【0004】
ターゲットを意味することもある分離対象となる化合物と効率的に相互作用するために、クロマトグラフィ充填剤は、実際の充填剤の一部としてのある基を含むか、ターゲットと相互作用可能な基との化学修飾によって提供されるかのいずれかであり得る。後者は、一般に、クロマトグラフィリガンド、または単にリガンドとして知られている。
【0005】
リガンドは、イオン交換クロマトグラフィにおける帯電したターゲットと逆に帯電したリガンドとの間のイオン相互作用に例示されるように、ターゲットと直接相互作用し得る。固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC:immobilized metal affinity chromatography)としても知られる金属キレートアフィニティクロマトグラフィ(MCAC:metal chelate affinity chromatography)において、特定の種の相互作用がもたらされる。固相上に存在する基は、ターゲットとの十分な相互作用を可能にする金属キレートを形成してある状況に好適な効率的分離を提供するために、ある金属で帯電している。似たような原理が、薄層クロマトグラフィ(TLC:thin layer chromatography)の銀コーティングされたシリカ、またはカラムクロマトグラフィに好適な銀添着カチオン交換体のいずれかを用い得る、銀化クロマトグラフィ(argentation chromatography)で用いられる。市販のこのような製品の例は、たとえば食品からの農薬の分離のために売られているRensa(登録商標)樹脂である(www.biotage.com)。
【0006】
銀添着カチオン交換体は、一般に、脂肪酸、フェロモンおよび多環芳香族硫黄含有ヘテロ環といった不飽和低分子の精製および分離、分析、ならびに食品領域および他の領域における調整目的のために用いられる。金属添着クロマトグラフィ剤によって生じ得る問題は、溶離液、すなわち生成物流中へのいくらかの金属の漏出である。食品産業におけるように、食品原材料、成分または製品が加工の間に金属で汚染されないという要求が一般的であり、漏出した金属イオンの除去が、IMAC、MCACまたは銀化クロマトグラフィに続くステップとして導入され得る。
【0007】
様々なこのような金属捕捉剤が提案されており、多数の製品が市販されている。Silicycleは、スクリーニング目的のための金属捕捉剤の例を提供する。
【0008】
クロマトグラフィ領域において最終ステップとして用いられる官能化シリカまたは樹脂をベースとする捕捉剤のさらに別の例は、Sigma Aldrichから入手可能なQuadraPure(登録商標) TU macroporous,resin beadsである。
【0009】
US6,132,750(Eric Perrier)は、小径粒子に関し、小径粒子は、好ましくは、少なくともアミドとエステルとの結合、任意にはタンパク質および多糖のアミン、ヒドロキシまたはカルボキシ官能基との無水物結合を形成する多官能基アシル化剤との界面架橋によって架橋された、少なくとも1つのタンパク質と少なくとも1つの多糖との混合物からなる壁を少なくともその表面上に備えるとともに、キレート金属イオンのためにヒドロキサム基をその表面上に含む。これらの粒子は、化粧品または特に金属イオンのキレート化または放出のための薬に用いられ得る。
【0010】
WO2007/122720(Niisawa Kazuhiro)は、(1)塩酸で金属含有原材料を処理して金属のイオンの塩酸溶液を得るステップと、(2)少なくとも1つの有機溶媒からなる吸着補助剤に分散したセルロースでステップ(1)において得られた塩酸溶液を処理して、含まれる金属イオンをセルロースに吸着させるステップと、(3)水または塩酸の使用によってセルロースからの金属イオンの脱着および回収を行うステップとを含む方法について説明する。
【0011】
しかしながら、先行技術で提案および提示された金属捕捉剤は、生物学的処理における発光液などの液体の処理、および金属汚染された液体が水性液体にある他の目的のために提案されたものであるため、非水性液体からさらに少量の銀イオンなどの金属イオンを効率的に除去可能である新規の製品がこの分野において必要とされている。
【0012】
WO2010/002696(Coca cola Co)は、エッセンシャルオイル組成物を吸着剤と接触させるステップと、処理されたエッセンシャルオイルから吸着剤を分離するステップとを含む、エッセンシャルオイル組成物を処理する方法について説明する。提案された吸着剤は、活性炭、非晶質シリコン、漂白土、フラー土、および珪藻土を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、改良の分野において、非水性液体からさらに少量の金属を除去可能である方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明は、有機液体から極めて少量の金属イオンを除去するための新規の方法を提供する。本発明によれば、水性液体の処理のためにクロマトグラフィで一般的に用いられる高度親和性材料である非官能化セルロースが、エッセンシャルオイルなどの有機液体から金属イオンを効率的に分離するために用いられ得ることは意外なことであった。
【0015】
これは、液体から金属イオンを分離するための方法であって、方法は、金属イオンを含む液体を非官能化セルロースと接触させることと、金属イオンをセルロースに吸着させることと、セルロースから液体を分離することとを含み、液体はエッセンシャルオイルを含む方法によって達成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のさらなる実施形態、利点および他の詳細は、以下の実験パートおよび出願全体から明らかである。
【0017】
定義
「捕捉剤(scavenger)」または「捕捉する(scavenge)」という用語は、本願において、非常に少量の分子または化合物の検出および/または除去の文脈で用いられる。
【0018】
「セルロース」という用語は、本願において、化学式(C6H5O5)nによって定義される多糖について用いられる。
【0019】
「ヘテロセルロース」という用語は、本願において、化学的に修飾されていない化学式(C6H5O5)nによって定義される多糖を含むセルロースのヘテロポリマーについて用いられる。
【0020】
「非官能化セルロース」という用語は、本願において、そのOH基において化学的にまたはそうでなければ誘導体化によって修飾されていないセルロースについて用いられる。
【0021】
「オイル」という用語は、本願において、周囲温度において粘性のある液体であるとともに、疎水性かつ親油性である、中性の無極性の化学物質について用いられる。
【0022】
「エッセンシャルオイル」という用語は、本願において、植物からの揮発性の芳香族化合物を含む濃縮された疎水性液体について用いられる。
【0023】
発明の詳細な説明
第1の局面において、本発明は、液体から金属イオンを分離するための方法に関し、方法は、金属イオンを含む液体を非官能化セルロースと接触させることと、金属イオンをセルロースに吸着させることと、セルロースから液体を分離することとを含み、液体はエッセンシャルオイルを含む。
【0024】
本発明にしたがって用いられる非官能化セルロースは、周知の方法にしたがって、木または綿などの繊維性植物材料からのパルプとして得られ得る。本願で用いられる非官能化セルロースは、いずれもSigma Aldrichまたは食品添加物製造者などの商業的供給源から利用可能である、高品質木材パルプに由来するセルロースである、微結晶セルロースおよび/またはアルファ-セルロースを含み得る。
【0025】
代替的には、セルロースと他のヘテロポリマーとの混合物が、本方法において用いられ、このような混合物の機械的および他の特性は、本願に記載されるようなエッセンシャルオイルから金属を除去するための純粋な非官能化セルロースに十分に類似している。
【0026】
本方法は、クロマトグラフィの方法であり得る。非官能化セルロースは、固相として用いられる、または固相に含まれる。したがって、クロマトグラフィが連続した液体クロマトグラフィとして操作される場合、カラムは、充填されたカラムまたは流体化されたベッドとして非官能化セルロースを含む。代替的には、上記方法がバッチモードで操作されるクロマトグラフィ法である場合、用いられる容器または入れ物は固相としての非官能化セルロースを含む。
【0027】
代替的には、本方法は、濾過の方法であり得る。非官能化セルロースは、フィルタのすべてまたは一部を構成する。周知であるように、捕捉剤フィルタの効率はセルロース繊維の密度および平均粒径に直接関連する。濾過における粗いグレード、すなわち長い繊維、低密度の粉末の使用は、低程度の吸着効率をもたらし得る。細かいグレード、短い繊維、濃い粉末の使用は、より速い吸着およびより多くの高カラム流での溶離液から捕捉されるイオンをもたらし得る。
【0028】
当業者が理解するように、本発明に係る非官能化セルロースは、ある用途に好適なフォーマットにおいて提供され得、本願において説明された量の金属イオンの吸着を可能にするための適切な条件が与えられる。例示の条件が以下、実験パートに例示される。
【0029】
金属イオンが分離されることとなるエッセンシャルオイルは、柑橘油(citrus oil)もしくは香油(scented oil)、またはより特定的には、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ペパーミントオイル、スペアミントオイル(spearmint oil)、シダーウッドオイル(cedar wood oil)、バラオイル、クローブ(clove)の油などの任意のエッセンシャルオイルであり得る。周知であるように、エッセンシャルオイルは、揮発性の、一般的に濃縮された植物のエッセンスであり、限定ではないが、根(ベチバー(vetiver)など)、葉(スペアミント葉など)、花(バラなど)、柑橘類の果実(ベルガモットなど)および種(クミンなど)などの様々な植物部において発見され得る。ミカン(citrus)、スイートオレンジ、レモン、ベルガモット、マンダリン、ライム、タンジェリン(tangerine)およびグレープフルーツ、またはその組み合わせを含む柑橘油が、エッセンシャルオイルの例である。
【0030】
当業者が理解するように、このようなエッセンシャルオイルには少量の希釈液が含まれ得る。本発明にしたがって用いられ得る希釈液は、以下の群から選択され得る:炭化水素、ケトン、エーテル、エステル、より好適なものは、炭化水素であるシクロヘキサン、ヘプタンリモネンである。
【0031】
本発明は、食品または製薬産業のために意図され得るエッセンシャルオイルからの金属イオンの分離を包含する。したがって、本発明に従って精製されることとなるエッセンシャルオイルは、先行するクロマトグラフィのステップなどの処理の早いステップから生じる金属イオン、または柑橘油を作製するために用いられる果実と接触した農薬などのオイルの成分の1つに由来する金属イオンで汚染され得る。
【0032】
上述されたように、金属添着カチオン交換体は、食品産業において、しかし製薬産業などの他の領域においても広く用いられている。ほとんどのこのような使用においては、固相からの金属イオンの漏出のリスクが存在し、最終製品が人への適用を意図する場合、その除去は重要である。
【0033】
したがって、本発明に係る方法は、金属添着カチオン交換体または銀化クロマトグラフィなどの、異なるクロマトグラフィ原理を用いた先行するクロマトグラフィステップに由来するエッセンシャルオイルを含み得る。それ故に、本発明は、エッセンシャルオイルからのターゲットの分離のための多段階プロセスのより遅いステップの1つにおいて、非官能化セルロースを捕捉として用い得る。本発明に係る方法に先行するステップにおいて用いられるカラム充填剤は、金属イオンが充満した合成ポリマーを含み得る。このようなカラム充填剤を準備する1つの例が、以下の実施例1に示される。代替的に、本方法に先行するステップにおいて用いられるカラム充填剤は、Purolite(登録商標)C100EAGなどの、ある環境下である金属の漏出をもたらすことが知られる市販の製品であり得る。当業者が理解するように、このような先行するステップの特定的な詳細は、エッセンシャルオイルが溶離液として用いられ、このような溶離液が除去対象となる金属イオンのあるレベルまたは漏出を含む限り、続く本発明の使用に不可欠ではない。
【0034】
本発明に係る方法で液体から分離される金属イオンは、遷移金属イオンなどの、正に帯電した一価または多価の金属イオンであり得る。したがって、金属イオンは、Au+またはAu2+;Ag+、Cu+、Pt2+、Pd2+、Ni+およびCo+からなる群から選択され得る。有利な実施形態において、金属イオンは、銀、すなわちAg+である。
【0035】
当業者が本明細書から理解するように、エッセンシャルオイルは、除去対象となる金属のすべてまたは実質的にすべてがイオンの形態で存在する条件下で保たれるべきである。したがって、たとえば、還元状態は回避されるべきである。
【0036】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、非官能化セルロースの繊維は多孔質構造を有するため、その表面は、金属イオンの侵入を可能にし得る。本発明の有益な技術的効果は、セルロースと金属イオンとの間の塩形成に起因し得るが、それは、代替的には、金属クラスタおよび/またはコロイド金属も含み得る。
【0037】
本発明の効果の説明として、実施例2は、オレンジオイル中へ移動する銀の濃度の典型的な溶離液プロファイルを示す。溶離液のフラクションが、異なる体積で測定され、0.6~2ppmの範囲で見られた。オイルが複雑な構成である場合、非官能化セルロースの捕捉性能は影響を受け得る。本発明の1つの実施形態において、望ましくないオイル効果は、有機溶媒またはリモネンによるオイルマトリックスの希釈によって最小化される。たとえば、シクロヘキサンおよび/またはリモネンによって希釈されたミカン/レモンオイルは、希釈されていないミカン/レモンオイルと比較して、銀イオンの捕捉剤としての非官能化セルロースの効率を向上させる。これは、本発明にしたがって用いられる非官能化セルロースによって、向上された銀イオンの分離を可能にする。
【0038】
異なるオイル間で、化学組成は異なる。たとえば、スペアミントオイルの主な化学組成は、α-ピネン、β-ピネン、カルボン、1,8-シネオール、リナロール、リモネン、ミルセン、カリオフィレンおよびメントールである。オレンジオイルでは:α-ピネン、サビネン、ミルセン、リモネン、リナロール、シトロネラル、ネラールおよびゲラニアール。レモンオイルでは、α-ピネン、カンフェン、β-ピネン、サビネン、ミルセン、α-テルピネン、リナロール、β-ビサボレン、リモネン、トランス-α-ベルガモテン、ネロールおよびネラール。バラオイルは、最も複雑なものの1つであり、主な化学成分は、シトロネロール、フェニルエタノール、ゲラニオール、ネロール、ファルネソールおよびステアロプテンである。
【0039】
上述されるように、金属イオンの除去は、非常に少量のみがエッセンシャルオイルに存在する場合であっても、極めて重要であり得る。したがって、本発明は、オレンジオイル中の銀など、0.05ppm以下の精製後のエッセンシャルオイルの金属含有量をもたらし得る。
【0040】
比較として、EPAは、味、色およびドアなど、審美性考慮のためにそれらの飲料水を管理することにおいて公共水道システムを助けるためのガイドラインとして制定された、国の二次的飲料水規制(National Secondary Drinking Water Regulation)を制定した。銀は、汚染としてこの項目に含まれる。この項目によれば、Ag+は、飲料水中で0.10mg/L(0.10ppm)以下でヒトへの健康に対するリスクがないと考えられる。
【0041】
実施例3では、樹脂量と捕捉剤量との間の比率が評価された。銀の移動レベルおよびセルロースの捕捉効果が測定された。結果は、銀イオンを溜められた収集されたオイル(オレンジオイル)中で<0.05ppmになるまで除去するために、本発明に係る非官能化セルロース当たり約(app)0.5~0.7mgの銀の捕捉剤容量を提案する。
【0042】
比較例4では、銀捕捉のための市販の樹脂が、同じ捕捉条件下で、本発明に係る方法と比較された。3~3.5mmole/g(チオ尿素官能性)の容量が報告されている125mgの樹脂が用いられた。630gのオレンジオイルが処理された。オイルの分析は、捕捉剤の前1.13ppm、捕捉剤の後最終溶離液0.315ppm、および溜められた溶離液0.248ppmを示した。結果は、高い能力の代わりに、樹脂は、銀をオイルにおいて低濃度範囲まで捕捉するのには低い効率を有することを示唆している。
【0043】
金属添着樹脂の機能は、あるクラスの農薬などのオイル中の不純物と相互作用して不純物を固定することである。実施例5では、オイルには、オルガノチオリン酸農薬である40ppmのマラチオン(marathion)が混ぜられた。結果は、オイルに応じて、銀が0.3~0.7ppmの様々な範囲まで移動することを示す。セルロース材料は、0.1ppm以下の銀まで銀レベルを除去した。
【0044】
オレンジオイルを用いた対応する実験が、バッチモードで行われた。オレンジオイルには、農薬のマラチオンおよびクロルピリホス(chlorpyrifos)が混ぜられた。精製(農薬の除去)は、オイル中の銀樹脂ビーズの懸濁液によって達成された。樹脂を高品質紙またはコットンの「ティーバッグ」に包むことが、移動する銀を実質的に低下させるとともに、性能を維持することが発見された。
【0045】
第2の局面において、本発明は、液体クロマトグラフィのためのシステムに関する。システムは、少なくとも1つのおよび第2クロマトグラフィカラムを備える。第1カラム充填剤は金属イオンを添着された合成ポリマーを含み、第2カラム充填剤は非官能化セルロースを含む。第2のカラムは、本発明の第1の局面に関連して上述されたようなものであり得る。
【0046】
たとえば非官能化セルロースカラムとその先行するステップのとの間の距離、非官能化セルロースの利用可能な表面領域、流速などのシステムのパラメータは、このようなシステムで精製されるエッセンシャルオイルに存在する金属イオンがイオンの形態のままであり得ることを確保するように調整されなければならない。
【0047】
本発明は、液体クロマトグラフィのためのシステムにも関する。システムは、少なくとも第1および第2クロマトグラフィステップのための設備を備える。第1ステップのために、IMACまたは銀化クロマトグラフィのいずれかのための設備が設けられ、第2のステップのために、非官能化セルロースを含むカラムが設けられる。例は、非官能化セルロースを含む捕捉剤カラムが下流に接続される、銀化クロマトグラフィのためのクロマトグラフィカラムであり得る。捕捉剤カラムは、ポストカラムとしてまたは銀化クロマトグラフィカラムの下部として配置され得る。代替的には、銀添着カチオン交換またはIMACのためのクロマトグラフィカラムが、非官能化セルロースを含む捕捉剤カラムに接続され、本発明にしたがって、金属漏出、好ましくは先行するステップからの銀イオン(Ag+)漏出の含有量の少なくとも一部をなくす。
【0048】
さらに、本発明は、金属イオン捕捉のためのクロマトグラフィ充填剤を調整するための非官能化セルロースの使用に関する。
【0049】
最後に、本発明は、非官能化セルロースである、または非官能化セルロースを含む充填剤を含む、捕捉剤クロマトグラフィカラムに関する。上記から明らかであるように、このような捕捉剤カラムは、有利には、エッセンシャルオイルからの金属オイルの除去において用いられる。したがって、エッセンシャルオイルから金属イオンを分離するための方法に関して上記に与えられたすべての詳細は、本発明のこのおよび他の局面にも同様に当てはまる。
【実施例】
【0050】
実験
本実施例は、例示の目的のためにのみ提供され、添付された請求項によって規定されるように本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本出願の以下および他の箇所に与えられるすべての言及は、参照によってここに含まれる。
【0051】
実施例1:銀添着カチオン交換体の準備
水(100mL)およびトリブチルアミン(7.4g、0.04mole)、次いで硫酸(2.0g、0.02mole)、およびその後4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(8.4g、0.04mole)が、攪拌下、ボトルに添加された。トルエン(55mL)が添加され、2相システムが0.5時間の間活発に攪拌した、pH=2.5。相は容易に分離し、トルエン相は次のステップにおいて精製することなく用いられた。
【0052】
ポリビニルアルコール(PVA)(セルボール(Celvol)523)が、90℃で水(400mL)に溶解されて重量で2%の溶液を形成し、室温まで冷却され、その後懸濁液反応器に添加された。
【0053】
ジビニルベンゼン80%技術グレード(26g、0.2mole)が調整済みの4-ビニルベンゼンスルホン酸トリブチルアミン塩のトルエン溶液(上述)に添加された。開始剤であるABDV(V65、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))(0.6g)がトルエン溶液に添加され、窒素が溶液に吹き付けられた。PVA溶液は、反応器、その後モノマー溶液に充填された。
【0054】
2相混合物は数分間攪拌され、温度は50℃まで上昇し、4~6時間後に65℃まで上げられた。プロセスは、終夜維持された。ポリマーは、20ミクロンふるいを用いて濾過され、水で注意深く洗われた。ポリマーは、0.5時間の間、1M H2SO4で洗われ、その後約400mLの水で洗われた。ポリマーは、その後、終夜エタノールを用いてソックスレー(soxhlet)で洗われ、乾燥されて28.4gのポリマー(83%収率)を与えた。粒径は、100~300ミクロンであると決定された。
【0055】
多孔質ポリマー分離剤の銀装着は、以下のように行われた。16.1gの乾燥ポリマーが水中で膨張し、ガラスカラムに移送された。材料の安定後、含水AgNO3(0.5M、44mL)がゆっくりとカラムを通された。カラムは終夜立つことを可能にされ、その後300mLの脱イオン水で洗われ、最終的に40℃で真空下において乾燥された。材料は、白からベージュの色を有しており、材料の元素分析は2.64%のSおよび6.49%のAgを示した。
【0056】
実施例2:エッセンシャルオイルを精製するための銀添着カチオン交換体の使用
500mgの銀添着分離剤が、カラム(ID=7mm)に充填され、オレンジオイル(Sigma-Aldrichから入手された、天然の冷間圧縮されたカリフォルニア起源のもの)中で3時間、膨張された。カラムは、アルミニウム箔で光から保護された。オイルは、ボトルから希釈されずに用いられ、農薬を混ぜられていない。カラムクロマトグラフィは、室温で行われた。一定流のオレンジオイルが、2.3Lのオイル(1.95kg)とともに、13日間、ca0.15mL/分で、カラムにポンプ注入された。
【0057】
試料(1mL)が、異なる体積で溶離液から収集された。オイルは、硝酸に分解され、移動銀レベルがICP-MS技術で決定された。
【0058】
【0059】
実施例3:オレンジオイル中の銀を除去するための非官能化セルロースの使用
実施例2の実験の設定およびパラメータが用いられた。銀添着分離カラムの後に、捕捉剤を有するポストカラム(ID=22mm)が取り付けられた。
【0060】
樹脂カラムおよび捕捉剤カラムの両方が、アルミホイル箔で光から保護された。これらの一連の実験は、銀移動および調査されたセルロースの捕捉効果を調査するために行われた。実験は、銀樹脂の量およびセルロースの量に関して変えられた。
【0061】
用いられたセルロースは、微結晶セルロースであった(粉末20μm、pH5~7Sigma-Aldrich)。試料(1mL)は、示された体積で、銀樹脂カラムからの溶離液オイルおよび捕捉剤の後の溶離液から収集された。
【0062】
【0063】
実施例4:オレンジオイル中の銀を除去するための市販の樹脂の使用(比較例)
実施例2の実験の設定およびパラメータが用いられた。銀添着分離カラム(500mg)の後に、125mgのAldrich QuadraPure TU macroporous(粒径400~600μm、チオ尿素容量3.0~3.5mmole/g 樹脂)を有するポストカラムが取り付けられた。
【0064】
630gのオイルが処理された。オイルの分析は、捕捉剤の前1.13ppm、捕捉剤の後最終溶離液0.315ppm、および溜められた溶離液0.248ppmの銀を示した。
【0065】
【0066】
実施例5:様々なエッセンシャルオイルから銀を除去するための非官能化セルロースの使用
シリンジポンプが25mLの混ぜられたオイルで満たされ、オイルは24時間ゆっくりと100mgの銀添着樹脂を有するプラスチックカラムを通過した。銀添着分離カラムの後に、ポストカラムが取り付けられた(300mg microcrystalline cellulose)。オイルには、各々、1mgのマラチオン(40ppm)を含む1mLのリモネンが混ぜられた。農薬の濃度は、GC-MS技術で銀添着分離カラムの通過の前後に測定された。
【0067】
【0068】
実施例6:農薬混合されたオレンジオイルの精製のためのバッチ技術の使用
オレンジオイルに、20ppmのマラチオンおよび20ppmのクロルピリホスが混ぜられた。25gのオイルが、プラスチック管中、100mgの銀添着樹脂で、24時間振盪された。
【0069】
A 捕捉剤なし
B 0.21gのコットン織布で作製された「ティーバッグ」に充填された樹脂
C 0.22gのセルロースフィルタ紙ムンクテル(Munktell)120Hで作製された包装に充填された樹脂。
【0070】
試料は、24時間後にオイルから収集され、銀/農薬濃度が決定された。
【0071】