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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】法面補強構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20221201BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
E02D17/20 106
E02D17/20 103A
E02D17/20 103Z
E02D5/80 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020004094
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021110194
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501232528
【氏名又は名称】株式会社複合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592105620
【氏名又は名称】ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小島 謙一
(72)【発明者】
【氏名】石垣 竜一
(72)【発明者】
【氏名】原田 道幸
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 澄雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正広
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】坂本 寛章
(72)【発明者】
【氏名】近藤 政弘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 公博
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-015835(JP,U)
【文献】特開2009-209630(JP,A)
【文献】特開2019-173521(JP,A)
【文献】実開平02-058030(JP,U)
【文献】特許第5451919(JP,B1)
【文献】特開2016-108828(JP,A)
【文献】特開2000-226855(JP,A)
【文献】特開2003-301464(JP,A)
【文献】特開2014-020079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面上に配置され、前記法面を区画する区画部と、
少なくとも排水層及び前記排水層に重ねられている遮水層の2層を有し、前記2層のうち前記排水層を前記区画部側に向けた状態で、前記法面と前記区画部との間に配置している積層シートと、
前記法面上に配置され前記区画部を固定する固定部と、
一端側の部分が前記法面から突出しつつ残りの部分が前記法面下に埋め込まれている棒体と、
前記棒体を埋め込むことができる、所定深さの孔となっている棒体配置領域と、
を備え、
前記固定部は前記棒体に固定されており、
前記固定部は、固定部本体と、プレートと、複数本の棒材と、複数個のナットとを備え、
前記固定部本体は、その一部が法面下に形成されている前記棒体配置領域に入り込んだ状態で、法面上に配置されており、前記固定部本体における前記棒体配置領域に入り込んだ部分以外の部分は、前記区画部で区画された複数のセルの一部のセル内に充填されており、
前記プレートは、前記棒体が前記棒体配置領域にねじ込まれることによって、前記棒体の頭部と前記固定部本体に挟まれつつ前記頭部により前記固定部本体に押し付けられている、法面補強構造。
【請求項2】
前記排水層は、不織布製のシートで構成されている、
請求項1に記載の法面補強構造。
【請求項3】
前記積層シートは、前記遮水層を挟んで前記排水層の反対側に設けられ、前記遮水層に重ねられている他の排水層を有する、
請求項1又は2に記載の法面補強構造。
【請求項4】
複数の前記積層シートが連結構造で同じ積層構造を連続させて連結しており、
前記連結構造において、前記遮水層同士の連結部分と前記排水層同士の連結部分とが、重ならない位置に設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の法面補強構造。
【請求項5】
前記他の排水層は、不織布製のシートで構成されている、
請求項3又は4に記載の法面補強構造。
【請求項6】
前記遮水層は、樹脂製のシートで構成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の法面補強構造。
【請求項7】
前記積層シートには貫通孔が形成されており、
前記棒体は前記貫通孔を貫通している、
請求項1~6のいずれか1項に記載の法面補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面補強構造および積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
法面を補強するための様々な構造が提案されている。例えば、特許文献1~4には、法面下に複数の孔を形成してこれらの複数の孔にそれぞれ棒状の補強材を配置し、法面上にハニカム状の立体補強材を配置した、法面を補強する構造(法面補強構造)が開示されている。
また、特許文献4には、法面とハニカム状の立体補強材との間にジオテキスタイル(例えばスパンポンド不織布)などからなる吸出防止材を配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-20079号公報
【文献】特開2014-057950号公報
【文献】特開2015-145037号公報
【文献】特開2010-168888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1~4の法面補強構造では、法面上での排水及び遮水が十分に行われているとは言い難い。すなわち、特許文献1~4の法面補強構造は、法面上での排水及び遮水の不十分性により法面を安定して維持し難いという問題がある。
【0005】
本発明は、排水層により雨水を法面に沿って排水させつつ、遮水層により雨水の法面下への浸透を抑制することができる法面補強構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の法面補強構造は、
法面上に配置され、前記法面を区画する区画部と、
少なくとも排水層及び前記排水層に重ねられている遮水層の2層を有し、前記2層のうち前記排水層を前記区画部側に向けた状態で、前記法面と前記区画部との間に配置している積層シートと、を備える。
本発明の積層シートは、
法面上に配置され、前記法面を区画する区画部と、
少なくとも排水層及び前記排水層に重ねられている遮水層の2層を有し、前記2層のうち前記排水層を前記区画部側に向けた状態で、前記法面と前記区画部との間に配置している積層シートとを備える法面補強構造に用いる積層シートであって、
当該積層シートが、排水層を構成する2層の不織布製シートと、当該2枚の不織布製シートに挟まれるように配置してなる遮水層を構成する1層の樹脂シートからなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の法面補強構造によれば、排水層により雨水を法面に沿って排水させつつ、遮水層により雨水の法面下への浸透を抑制することができる。これに伴い、本発明の法面補強構造によれば、法面を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の法面補強構造を法面に設置した状態を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の法面補強構造を法面に設置した状態を示す断面図である。
図3図2の破線で囲まれた部分の部分拡大図である。
図4図2の破線で囲まれた部分を法面に直交する方向から見た部分拡大図である。
図5】第1実施形態の法面補強構造が備える積層シートの部分断面図である。
図6】第2実施形態の法面補強構造が備える積層シートの部分断面図である。
図7】第3実施形態の法面補強構造が備える積層シートの第1積層シートを示した図である。
図8】第3実施形態の法面補強構造が備える積層シートの第2積層シートを示した図である。
図9】第3実施形態の法面補強構造が備える連結状態の積層シートを示した図である。
図10】第3実施形態の別の形態1であって複数の積層シートを連結した状態を示す図である。
図11】第3実施形態の別の形態2であって複数の積層シートを連結した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪概要≫
以下、本発明の一例である第1~第3実施形態について、これらの記載順で説明する。次いで、第1~第3実施形態の変形例について説明する。
【0010】
≪第1実施形態≫
まず、本実施形態の法面補強構造10の機能及び構成について図1図4を参照しながら説明する。次いで、本実施形態の効果について図1図4を参照しながら説明する。
【0011】
<第1実施形態の機能及び構成>
本実施形態の法面補強構造10は、法面100Aを補強する機能を有する。本実施形態の法面補強構造10は、図1図3に示されるように、複数個の棒状部20と、複数個の固定部30と、ジオセル40(区画部の一例)と、積層シート50とを備えている。
【0012】
〔複数個の棒状部〕
複数個の棒状部20は、図1に示されるように、それぞれ、法面100Aの幅方向W及び法面100Aの傾斜方向Tに沿って並べられている。そして、各棒状部20は、図3に示されるように、それぞれ、棒体22と、囲み部24とを有している。
法面100A及び法面下100Bにおける複数個の棒状部20が配置されている部分には、それぞれ棒体配置領域102が形成されている(図3参照)。棒体配置領域102は、棒状部20が配置されていない状態では、棒状部20の棒体22を埋め込むことができる所定深さの孔となっている。ここで、「法面下100B」とは、「法面100A」を形成するための盛土であって法面100Aの下側の部分を意味する(図1及び図2参照)。各棒状部20の棒体22は、一端側の部分が法面100Aから突出しつつ残りの部分が法面下100Bに入り込んだ状態で、各囲み部24を介して各棒体配置領域102に埋め込まれている。
本明細書では、各棒体22における法面100Aから突出している部分側の端部を頭部22Aと呼ぶ(図3参照)。また、各棒体22における頭部22A以外の部分の外周面には雄ネジが形成されている(図3参照)。本明細書では、各棒体22における頭部22A以外の部分を雄ネジ部22Bと呼ぶ。そして、図3に示されるように、雄ネジ部22Bの一部は、その外周を各囲み部24に囲まれた状態で、固定されている。ここで、各囲み部24は、一例として、モルタル、コンクリート、樹脂その他の材料であって、施工時には流動性を有しつつ施工後に固化する材料で構成された部材である。
【0013】
〔複数個の固定部〕
複数個の固定部30は、図1図3に示されるように、法面100A上に配置され、それぞれ各棒体22に固定されている。そのため、各固定部30は、複数個の棒状部20と同様に、法面100Aの幅方向W及び法面100Aの傾斜方向Tに沿って並べられている(図1参照)。
各固定部30は、図3に示されるように、それぞれ、固定部本体32と、プレート34と、複数本の棒材36と、複数個のナット38とを有している。
固定部本体32は、図3に示されるように、その一部が法面下100Bに形成されている棒体配置領域102に入り込んだ状態で、法面100A上に配置されている。ここで、固定部本体32は、一例として、モルタル、コンクリート、樹脂その他の材料であって、施工時には流動性を有しつつ施工後に固化する材料で構成された部材である。固定部本体32には、貫通孔32Aが形成されている。貫通孔32Aに、棒体22の一部が嵌め込まれて貫通している。なお、固定部本体32における棒体配置領域102に入り込んだ部分以外の部分は、ジオセル40で区画された複数のセル(区画)の一部のセル内に充填されている。
プレート34は、貫通孔34Aが形成された金属製の板である。プレート34は、貫通孔34Aに棒体22の雄ネジ部22Bが貫通された状態で、各棒体22の頭部22Aと固定部本体32に挟まれつつ頭部22Aにより固定部本体32に押し付けられている。
複数本の棒材36は、一例として4本の棒材36であり、そのうちの2本は法面100Aの幅方向Wに沿って配置され、残りの2本は法面100Aの傾斜方向Tに沿って配置されている。そして、4本の棒材36は、図4に示されるように、棒体22を囲んでいる。また、4本の棒材36は、一例として、その一端から他端に亘る全範囲に螺旋模様が形成された雄ネジとなっている。
なお、4本の棒材36は、それぞれ両端部分を除いて固定部本体32に埋め込まれた状態で固定部本体32に固定されている。すなわち、固定部本体32からは4本の棒材36の8つの両端部分が突出している。そして、固定部本体32と当該8つの両端部分に嵌め込まれた複数個のナット38(本実施形態では8個)とが、ジオセル40の一部を挟んでジオセル40を固定している(図3及び図4参照)。
【0014】
〔ジオセル〕
ジオセル40は、図1及び図4に示されるように、一例として、ハニカム構造を有する部材である。ジオセル40は、法面100A上に配置され、複数個の固定部30に取り付けられて、法面100Aを複数のセル(区画)に区画している。そして、ジオセル40は、各セルの中に敷き詰められる中詰材(図示省略、一例として複数個の砕石等の集合体)を拘束する機能を有する。
【0015】
〔積層シート〕
積層シート50は、図5に示されるように、2層のシートである。2層のシートのうちの一方のシートは一例として不織布製のシートで構成されている排水層52であり、もう一方のシートは一例としてEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル樹脂)製のシートで構成されている遮水層54である。すなわち、積層シート50は、排水層52及び排水層52に重ねられている遮水層54の2層を有する。排水層52のシートは、一例で示した不織布製シートの他に織布シートでもよい。また材質は天然繊維または合成樹脂製のものがよく、合成樹脂製ではポリオレフィン樹脂もしくはポリエステル樹脂製のものが好適である。遮水層は、一例で示したEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル樹脂)製のシートのほか、ポリ塩化ビニル製またはポリオレフィン製のシートでもよい。
ここで、排水層52は、雨水を法面100Aの傾斜方向Tに沿って排水させる機能と、ジオセル40の各セルの中に敷き詰められた中詰材が遮水層54に直接的に接触して遮水層54を損傷しないようにする、すなわち、遮水層54を中詰材から保護する機能とを有する。そのため、排水層52は、中詰材から遮水層54を保護する「保護層」と呼んでもよい。これに対して、遮水層54は、雨水の法面下100Bへの浸透を抑制する機能を有する。
積層シート50は、図1図3に示されるように、法面100Aとジオセル40との間に配置されている。この場合、積層シート50は、2層のうちの排水層52をジオセル40側に向けている。
また、積層シート50には、固定部本体32(及び各棒体22)を貫通させるための複数個の貫通孔51が形成されている(図3参照)。そして、積層シート50は、各棒体22を各貫通孔51で貫通させることにより法面100Aに対して位置決めされている(図3参照)。
【0016】
以上が、第1実施形態の法面補強構造10の機能及び構成についての説明である。
【0017】
<第1実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果について図面を参照しながら説明する。
【0018】
〔第1の効果〕
例えば、積層シート50を備えていない法面補強構造(以下、比較構造という。)の場合、降雨時に、法面100A上のジオセル40の各セルの中に敷き詰められた中詰材同士の隙間から法面100Aに到達した雨水が法面下100Bに浸透し、適切に排水され難い。すなわち、比較構造の場合、法面上での排水及び遮水が十分に行われているとは言い難い。
これに対して、本実施形態の法面補強構造10は、比較構造にはない積層シート50を備えている(図1図2図3及び図5参照)。そして、積層シート50は、排水層52側をジオセル40に向けた状態で法面100Aとジオセル40との間に配置されている(図3参照)。
したがって、本実施形態の法面補強構造10は、比較構造とは異なり、排水層52により雨水を法面100Aの傾斜方向Tに沿って排水させつつ、遮水層54により雨水の法面下100Bへの浸透を抑制することができる。これに伴い、本実施形態の法面補強構造10は、比較構造に比べて、法面100Aを安定して維持することができる。
【0019】
〔第2の効果〕
また、本実施形態の排水層52は、不織布製のシートで構成されている。そのため、本実施形態の法面補強構造10によれば、簡単な構成で排水層52を形成することができる。
【0020】
〔第3の効果〕
本実施形態の積層シート50には、複数個の貫通孔51が形成されている(図3参照)。また、複数本の棒体22は、それぞれ複数個の貫通孔51を貫通している(図3参照)。
したがって、本実施形態の法面補強構造10は、簡単な構成で積層シート50を法面100A上に位置決めすることができる。
【0021】
〔第4の効果〕
本実施形態の積層シート50は、少なくとも2層のシートで構成されている。よって一般的な不織布や遮水シートよりも防草効果が期待できる。防草効果が発揮できると、法面100Aの草刈りなどの管理が不要となり、法面100Aの維持管理費の節約となる。
【0022】
以上が、本実施形態の効果についての説明である。また、以上が、第1実施形態についての説明である。
【0023】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態の法面補強構造10Aの機能及び構成並びに効果について図6を参照しながら説明する。以下、第2実施形態の法面補強構造10Aの機能及び構成については第1実施形態の法面補強構造10と異なる部分についてのみ説明する。
なお、本実施形態の法面補強構造10Aにおける、第1実施形態と同じ構成要素については、第1実施形態の場合と同じ名称、符号等を用いて説明する。
【0024】
<第2実施形態の機能及び構成>
本実施形態の法面補強構造10Aは、第1実施形態の法面補強構造10が備える積層シート50(図5参照)が積層シート50Aとなっている点で、第1実施形態の法面補強構造10と異なる。
具体的には、本実施形態の積層シート50Aは、図6に示されるように、3層構造であり、排水層52及び遮水層54で構成される2層のシートに加え、さらに遮水層54を挟んで排水層52の反対側に設けられ、遮水層54に重ねられている排水層56(他の排水層の一例)を有している。ここで、排水層56は、一例として、不織布製のシートで構成されている。なお、本実施形態では、積層シート50Aは、排水層56が法面100Aに向いた状態で法面100Aとジオセル40との間に配置されている(図示省略)。
以上が、本実施形態における第1実施形態と異なる点である。
【0025】
<第2実施形態の効果>
本実施形態の法面補強構造10Aは、積層シート50Aを備えている。そして、積層シート50Aは、法面100Aとジオセル40との間に配置され、ジオセル40側から法面100A側に亘って排水層52、遮水層54、排水層56の順で積層されている。
したがって、本実施形態の法面補強構造10Aは、積層シート50Aが有する排水層52及び遮水層54により第1実施形態の第1の効果を奏する。これに加えて、本実施形態の場合、積層シート50Aが法面100A側に排水層56を有することで、法面下100Bの水分(地下水等)を、遮水層54を挟んで反対側(ジオセル40側)に浸透させることがない。また、排水層56により遮水層54の下側(遮水層54の排水層56側)の排水を容易に行うことができる。
以上が、本実施形態の効果についての説明である。
【0026】
以上が、第2実施形態についての説明である。
【0027】
≪第3実施形態≫
<第3実施形態の機能及び構成>
次に、図7図9を参照して第3実施形態を説明する。第2実施形態と異なる点は、積層シートを法面幅方向(図中で左右方向)に連結した連結体となっている点にある。なお、連結方向は、法面100Aに沿った方向(図中で上下方向)でもよく、また両方向であってもよい。
図7は第1積層シート150Aを示し、図7(1)は幅方向の断面図、図7(2)は平面図を示す。図8は第2積層シート150Bを示し、図8(1)は幅方向の断面図、図8(2)は平面図を示す。図9は、第2積層シート150Bの左右に第1積層シート150Aを連結させた状態を示し、図9(1)は幅方向の断面図、図9(2)は平面図を示す。
【0028】
図7に示すように第1積層シート150Aは、第2実施形態と同様の3層の積層構造を有する。具体的には、積層方向の下側から、下部排水層156A、遮水層154Aおよび上部排水層152Aがこの順で積層されている。
上部排水層152A及び下部排水層156Aとして、第1実施形態の排水層52で例示した不織布製シート等が用いられる。遮水層154Aとして、EVA樹脂製のシート等が用いられる。
遮水層154Aは、上部排水層152Aおよび下部排水層156Aと比較して、幅広に形成されている。具体的には、遮水層154Aは、上部排水層152Aおよび下部排水層156Aの左右方向それぞれの端部から所定長d1だけ突出している。
【0029】
図8に示すように第2積層シート150Bは、第1積層シート150Aと同様に3層の積層構造を有する。具体的には、積層方向の下側から、下部排水層156B、遮水層154Bおよび上部排水層152Bがこの順で積層されている。
上部排水層152B及び下部排水層156Bとして、第1積層シート150Aの上部排水層152A及び下部排水層156Aと同様に不織布製シート等が用いられる。遮水層154として、EVA樹脂製のシート等が用いられる。
遮水層154Bは、上部排水層152Bおよび下部排水層156Bと比較して、幅狭に、すなわち断面視で窪んで形成されている。具体的には、遮水層154Bの左右の端部は、上部排水層152Bおよび下部排水層156Bの左右方向それぞれの端部から所定長d1だけ内側に位置している。
【0030】
図9に示すように、第2積層シート150Bの左右のそれぞれに第1積層シート150Aを連結させる。具体的には、第1積層シート150Aの幅広部分(断面視で凸部分)と第2積層シート150Bの幅狭部分(断面視で凹部分)とがほぞ組みのように、すなわち断面視で凹凸嵌合するように連結部190を構成している。このとき、第1積層シート150Aと第2積層シート150Bとの積層構造は連続している。
すなわち、第1積層シート150Aの上部排水層152Aの端部と第2積層シート150Bの上部排水層152Bの端部とは当接(または実質的に当接)している。
第1積層シート150Aの遮水層154Aの端部と第2積層シート150Bの遮水層154Bの端部とは当接(または実質的に当接)している。
第1積層シート150Aの下部排水層156Aの端部と第2積層シート150Bの下部排水層156Bの端部とは当接(または実質的に当接)している。
そして、連結部190が凹凸嵌合するように構成されていることから、遮水層154A、154Bの連結部分と、上部排水層152A、152Bの連結部分とは、上記の所定長d1だけオフセットした位置、すなわち重ならない位置にある。同様に、遮水層154A、154Bの連結部分と、下部排水層156A、156Bの連結部分とは、所定長d1だけオフセットした位置、すなわち重ならない位置にある。
【0031】
<第3実施形態の効果>
本実施形態の法面補強構造10Aは、複数の積層シート(ここでは第2積層シート150Bおよびその左右の第1積層シート150A)が連結構造で同じ積層構造を連続させて連結しており、
連結構造において、遮水層154A、154B同士の連結部分と排水層同士(上部排水層152A、152B同士、下部排水層156A、156B同士)の連結部分とが、重ならない位置に設けられている。
すなわち、同じ機能の層(遮水層154A、154B、上部排水層152A、152B、下部排水層156A、156B)が連続して連結する。したがって、各層の機能が法面100Aの途中で途切れることがない。
また、連結部分間で十分に距離を取れるので、連結部分で不適切に水が湧き出てしまったり、逆に法面100Aの内部に浸水してしまうことがない。
また、施工後に法面100Aの形状が変化した場合に、連結部分が離れてしまう(すなわち端部同士の距離が離れてしまう)ことも想定される。そのような場合でも、嵌合構造(ほぞ組構造)により形状変化を一定程度吸収できる。すなわち、連結部分における積層構造の機能低下を最小に抑えることができる。また、連結部分の押さえが容易であり、仮に溶着する場合であっても溶着性(作業性)がよい。
【0032】
<第3実施形態の別の形態1の機能及び構成>
図10に別の形態の積層シートの連結体を示す。図10は、第1積層シート250Aと第2積層シート250Bとを水平方向に連結させた連結体を示し、図10(1)は幅方向の断面図、図10(2)は平面図を示す。なお、この連結体は、図7で示した第1積層シート150Aを2つの構成としたものとも言える。
【0033】
第1積層シート250Aにおいて、積層方向の下側から、下部排水層256A、遮水層254Aおよび上部排水層252Aがこの順で積層されている。
遮水層254Aの左右の一方側(ここでは左側)が、厚さを一定のままに、上部排水層252Aや下部排水層256Aの左側から突出している。
また、遮水層254Aの左右の他方側(図視で右側)については、断面視で下側半分が上部排水層252A、252B又は下部排水層256A、256Bの連結部分を中心として右側へ所定長d2突出した長さの凸部となり、同様に上側半分が左側へ所定長d2内側(図示で左側)に窪んだ長さの凹部となっている。
【0034】
第2積層シート250Bにおいて、積層方向の下側から、下部排水層256B、遮水層254Bおよび上部排水層252Bがこの順で積層されている。
遮水層254Bの左右の一方側(ここでは右側)が、厚さを一定のままに、上部排水層252Aや下部排水層256Aの左側から突出している。
また、遮水層254Bの左右の他方側(図視で左側)については、断面視で上側半分が上部排水層252A、252B又は下部排水層256A、256Bの連結部分を中心として左側へ所定長d2突出した長さの凸部となり、同様に下側半分が右側へ所定長d2内側(図示で右側)に窪んだ長さの凹部となっている。
【0035】
第1積層シート250Aの右側端部と第2積層シート250Bの左側端部とが嵌合する。嵌合部分となる連結部290では、断面視で、第1積層シート250Aの遮水層254Aの下側の凸部分が、第2積層シート250Bの遮水層254Bの下側の凹部分に嵌まり、逆に、第2積層シート250Bの遮水層254Bの上側の凸部分が、第1積層シート250Aの遮水層254Aの上側の凹部分に嵌まっている。また、上部排水層252A、252B同士が連結部290の左右中央で当接している。同様に、下部排水層256A、256B同士が連結部290の左右中央で当接している。
【0036】
<第3実施形態の別の形態1の効果>
第1積層シート250Aと第2積層シート250Bとの連結体によると、上記第1積層シート150Aと第2積層シート150Bとの連結体と同様の効果が得られる。さらに、遮水層254A、254Bの端部を段状に形成し、それらを組み合わせた構造としているため、遮水層254A、254Bの連結部分の連続性を維持できる。換言すると、遮水層254A、254Bの連結部分での遮水性が低下することを防止できる。
【0037】
<第3実施形態の別の形態2の機能及び構成>
図11に別の形態2の積層シートの連結体を示す。図11は、第1積層シート350Aと第2積層シート350Bとを水平方向中央の連結部390で連結させた連結体を示し、図11(1)は幅方向の断面図、図11(2)は平面図を示す。なお、この連結体は、図8で示した第2積層シート150Bを2つの構成としたものとも言える。
【0038】
第1積層シート350Aにおいて、積層方向の下側から、下部排水層356A、遮水層354Aおよび上部排水層352Aがこの順で積層されている。
遮水層354Aは、上部排水層352Aおよび下部排水層356Aと比較して、幅狭に、すなわち断面視で窪んで形成されている。具体的には、遮水層354Aの左右の端部は、上部排水層352Aおよび下部排水層356Aの左右方向それぞれの端部から所定長d3だけ内側に位置している。
【0039】
ここで上部排水層352Aの右側の連結部390の領域において、断面視で上半分が取り除かれた形状を呈する。より具体的には、上部排水層352Aの右側において、断面視で下側半分が、遮水層354A、354Bの連結部分を中心として右側へ所定長d3だけ突出した長さの凸部となり、同様に、上側半分が左側へ所定長d3内側(図示で左側)に窪んだ(すなわち取り除かれた)長さの凹部となっている。
同様に、下部排水層356Aの右側の連結部390の領域において、断面視で上半分が取り除かれた形状を呈する。より具体的には、下部排水層356Aの右側において、断面視で下側半分が、遮水層354A、354Bの連結部分を中心として右側へ所定長d3だけ突出した長さの凸部となり、同様に、上側半分が左側へ所定長d3内側(図示で左側)に窪んだ(すなわち取り除かれた)長さの凹部となっている。
【0040】
第2積層シート350Bにおいて、積層方向の下側から、下部排水層356B、遮水層354Bおよび上部排水層352Bがこの順で積層されている。
遮水層354Bは、上部排水層352Bおよび下部排水層356Bと比較して、幅狭に、すなわち断面視で窪んで形成されている。具体的には、遮水層354Bの左右の端部は、上部排水層352Bおよび下部排水層356Bの左右方向それぞれの端部から所定長d3だけ内側に位置している。
【0041】
ここで上部排水層352Bの左側の連結部390の領域において、断面視で下半分が取り除かれた形状を呈する。より具体的には、上部排水層352Bの左側において、断面視で上側半分が、遮水層354A、354Bの連結部分を中心として左側へ所定長d3だけ突出した長さの凸部となり、同様に、下側半分が右側へ所定長d3内側(図示で右側)に窪んだ(すなわち取り除かれた)長さの凹部となっている。
同様に、下部排水層356Bの左側の連結部390の領域において、断面視で下半分が取り除かれた形状を呈する。より具体的には、下部排水層356Bの左側において、断面視で上側半分が、遮水層354A、354Bの連結部分を中心として右側へ所定長d3だけ突出した長さの凸部となり、同様に、下側半分が右側へ所定長d3内側(図示で右側)に窪んだ(すなわち取り除かれた)長さの凹部となっている。
【0042】
そして、図視のように第1積層シート350Aと第2積層シート350Bとは、連結部390において断面視で嵌合構造により連結している。具体的には、左右の遮水層354A、354Bが水平方向中央で当接している。
また、連結部390において、左右の上部排水層352A、352Bの段形状が連結している。このとき、上部排水層352A、352Bの上半分の連結位置は、中央(遮水層354A、354Bの連結位置)から左側に所定長d3だけオフセットし、下半分の連結位置は中央から右側に所定長d3だけオフセットしている。
同様に、連結部390において、左右の下部排水層356A、356Aの段形状が連結している。このとき、下部排水層356A、356Bの上半分の連結位置は、中央(遮水層354A、354Bの連結位置)から左側に所定長d3だけオフセットし、下半分の連結位置は中央から右側に所定長d3だけオフセットしている。
【0043】
<第3実施形態の別の形態2の効果>
第1積層シート350Aと第2積層シート350Bとの連結体によると、上記第1積層シート150Aと第2積層シート150Bとの連結体と同様の効果が得られる。さらに、連結部390において、上部排水層352A、352B、下部排水層356A、356Bの端部を段状に形成し、それらを組み合わせた構造としている。このため、連結部390における上部排水層352A、352B、下部排水層356A、356Bの排水機能が低下することを防止できる。
【0044】
以上のとおり、本発明について第1~第3実施形態を例として説明したが、本発明は各実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、下記のような形態(変形例)も含まれる。
【0045】
例えば、第1実施形態の説明では、排水層52、56が不織布製のシートであるとした。しかしながら、法面100Aに沿って液体を排水することができれば、排水層52、56は不織布製のシートでなくてもよい。
【0046】
また、第1実施形態の説明では、遮水層54がEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル樹脂)製のシートであるとした。しかしながら、積層シート50、50Aを挟んで一面側及び他面側の一方から他方への遮水が可能であれば、遮水層54はEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル樹脂)製のシートでなくてもよい。例えば、酢酸ビニル製のシートその他の樹脂製のシートであればよい。
【0047】
また、各実施形態では、複数本の棒体22や固定部が各実施形態の法面補強構造10、10A、10Bにおける必須の構成要素であるかの如く説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲に含まれる法面補強構造は、法面上に配置され、法面を複数のセルに区画する区画部と、各実施形態の積層シートとを備えていればよい。すなわち、複数本の棒体22は、本発明の技術的範囲に含まれる法面補強構造における必須の構成要素ではない。
【符号の説明】
【0048】
10、10A、10B 法面補強構造
20 棒状部
22 棒体
22A 頭部
22B 雄ネジ部
24 囲み部
30 固定部
32 固定部本体
32A 貫通孔
34 プレート
34A 貫通孔
36 棒材
38 ナット
40 ジオセル
50 積層シート
50A 積層シート
51 貫通孔
52 排水層
54 遮水層
56 排水層
100A 法面
100B 法面下
102 棒体配置領域
150A 第1積層シート
150B 第2積層シート
152A、152B 上部排水層
154A 遮水層
154B 遮水層
156A、156B 下部排水層
190 連結部
250A 第1積層シート
250B 第2積層シート
252A、252B 上部排水層
254A、254B 遮水層
256A、256B 下部排水層
290 連結部
350A 第1積層シート
350B 第2積層シート
352A、352B 上部排水層
354A、354B 遮水層
356A、356B 下部排水層
390 連結部
T 傾斜方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11