(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20221201BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20221201BHJP
B60W 40/072 20120101ALI20221201BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W60/00
B60W40/072
(21)【出願番号】P 2020218529
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】細谷 知之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 泰治
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 弘文
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159828(JP,A)
【文献】特開2020-104802(JP,A)
【文献】特開2020-032873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置および周辺状況を認識する認識部と、
前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御する運転制御部と、
前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、少なくとも前記第2の運転モードを含む前記複数の運転モードの一部は前記運転制御部により制御されるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更するモード決定部と、
を備え、
前記モード決定部は、前記車両の位置認識の精度が低下した場合に、前記車両前方の道路の曲率に基づいて
第1の速度を推定するとともに、前記車両が前記
車両前方の前記道路を走行するときの速度
である第2の速度を推定し、
前記第2の速度が
前記第1の速度を超える場合に前記第2の運転モードから前記第1の運転モードに前記車両の運転モードを変更する
ものであり、
前記第1の速度は、前記車両が、前記曲率を有する道路において走行車線を維持しながら走行することができる速度の上限の速度である、
車両制御装置。
【請求項2】
前記第2の運転モードは、前記運転者に、操舵操作を受け付ける操作子を把持するタスクが課されない運転モードであり、
前記第1の運転モードは、前記車両の操舵および加減速の少なくとも一方に関して前記運転者による運転操作が必要な運転モードである、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第2の運転モードは、前記運転者に、操舵操作を受け付ける操作子を把持するタスクが課されない運転モードであり、
前記第1の運転モードは、前記運転者に、少なくとも、前記運転者による操舵操作を受け付ける前記操作子を把持するタスクが課される運転モードである、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
車両に搭載されたコンピュータが、
車両の周辺状況を認識し、
前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御し、
前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、少なくとも前記第2の運転モードを含む前記複数の運転モードの一部は前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、
前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更し、
前記車両の位置認識の精度が低下した場合に、前記車両前方の道路の曲率に基づいて
第1の速度を推定するとともに、前記車両が前記
車両前方の前記道路を走行するときの速度
である第2の速度を推定し、
前記第2の速度が
前記第1の速度を超える場合に前記第2の運転モードから前記第1の運転モードに前記車両の運転モードを変更する
ものであり、
前記第1の速度は、前記車両が、前記曲率を有する道路において走行車線を維持しながら走行することができる速度の上限の速度である、
車両制御方法。
【請求項5】
車両に搭載されたコンピュータに、
車両の周辺状況を認識させ、
前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御させ、
前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定させ、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、少なくとも前記第2の運転モードを含む前記複数の運転モードの一部は前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、
前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更させ、
前記車両の位置認識の精度が低下した場合に、前記車両前方の道路の曲率に基づいて
第1の速度を推定させるとともに、前記車両が前記
車両前方の前記道路を走行するときの速度
である第2の速度を推定させ、
前記第2の速度が
前記第1の速度を超える場合に前記第2の運転モードから前記第1の運転モードに前記車両の運転モードを変更させる
ものであり、
前記第1の速度は、前記車両が、前記曲率を有する道路において走行車線を維持しながら走行することができる速度の上限の速度である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車が通過した道路について高精度地図情報の有無を繰り返し判定する格納判定処理部と、繰り返し判定された結果を示す情報を取得する格納情報取得処理部と、格納情報取得処理部によって取得した情報を通知する自動運転可否通知部とを備える車載システムの発明が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、地図に格納された情報で機械的に自動運転可否を通知しているが、実際の交通局面はより複雑なものであり、道路構造に応じた適切な制御をすることができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、道路構造に応じた適切な制御をすることができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置は、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、車両の位置および周辺状況を認識する認識部と、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御する運転制御部と、前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、少なくとも前記第2の運転モードを含む前記複数の運転モードの一部は前記運転制御部により制御されるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更するモード決定部と、を備え、前記モード決定部は、前記車両の位置認識の精度が低下した場合に、前記車両前方の道路の曲率に基づいて前記車両が前記道路を走行するときの速度を推定し、推定した前記速度が予め定められた所定速度を超える場合に前記第2の運転モードから前記第1の運転モードに前記車両の運転モードを変更するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記第2の運転モードは、前記運転者に、操舵操作を受け付ける操作子を把持するタスクが課されない運転モードであり、前記第1の運転モードは、前記車両の操舵および加減速の少なくとも一方に関して前記運転者による運転操作が必要な運転モードである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記第2の運転モードは、前記運転者に、操舵操作を受け付ける操作子を把持するタスクが課されない運転モードであり、前記第1の運転モードは、前記運転者に、少なくとも、前記運転者による操舵操作を受け付ける前記操作子を把持するタスクが課される運転モードである。
【0009】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記所定速度は、前記車両が、前記曲率を有する道路において走行車線を維持しながら走行することができる速度の上限以下の速度である。
【0010】
(5):この発明の一態様に係る車両制御方法は、車両に搭載されたコンピュータが、車両の周辺状況を認識し、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御し、前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、少なくとも前記第2の運転モードを含む前記複数の運転モードの一部は前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更し、前記車両の位置認識の精度が低下した場合に、前記車両前方の道路の曲率に基づいて前記車両が前記道路を走行するときの速度を推定し、推定した前記速度が予め定められた所定速度を超える場合に前記第2の運転モードから前記第1の運転モードに前記車両の運転モードを変更するものである。
車両制御方法。
【0011】
(6):この発明の一態様に係るプログラムは、車両に搭載されたコンピュータに、車両の周辺状況を認識させ、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御させ、前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定させ、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、少なくとも前記第2の運転モードを含む前記複数の運転モードの一部は前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更させ、前記車両の位置認識の精度が低下した場合に、前記車両前方の道路の曲率に基づいて前記車両が前記道路を走行するときの速度を推定させ、推定した前記速度が予め定められた所定速度を超える場合に前記第2の運転モードから前記第1の運転モードに前記車両の運転モードを変更させるものである。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)~(6)の態様によれば、道路構造に応じた適切な制御をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システムの構成図である。
【
図2】第1制御部および第2制御部の機能構成図である。
【
図3】運転モードと自車両の制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。
【
図4】旋回半径とデッドレコニング限界速度との対応関係の一例を示す図である。
【
図5】自動運転制御装置のモード決定部による運転モード変更処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】運転モード変更処理の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0015】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0016】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、ドライバモニタカメラ70と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0017】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0018】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0019】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0020】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0021】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0022】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0023】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0024】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0025】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0026】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報、後述するモードAまたはモードBが禁止される禁止区間の情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0027】
ドライバモニタカメラ70は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ70は、自車両Mの運転席に着座した乗員(以下、運転者)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置および向きで、自車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。例えば、ドライバモニタカメラ70は、自車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置の上部に取り付けられる。
【0028】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。ステアリングホイール82は、「運転者による操舵操作を受け付ける操作子」の一例である。操作子は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアリングホイールやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持している(力を加えられる状態で接していることをいう)か否かを検知可能な信号を自動運転制御装置100に出力する。
【0029】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。自動運転制御装置100は「車両制御装置」の一例であり、行動計画生成部140と第2制御部160を合わせたものが「運転制御部」の一例である。
【0030】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140と、モード決定部150とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0031】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0032】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0033】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0034】
ここで、認識部130は、自車両Mの位置認識において、基本的にはナビゲーション装置50のGNSS受信機51によって取得される高精度な位置情報を用いることができる。認識部130は、この高精度の位置情報と、高精度地図情報(例えば第1地図情報54または第2地図情報62)とを用いることにより、自車両Mの周辺状況を高精度に認識することができる。しかしながら、地下やトンネル等の走行中においては、GNSS受信機51による位置情報の受信が途切れたり、不安定になったりする場合があり、このような状況では自車両Mの位置認識が難しくなる。また、何らかの要因により道路区画線の認識ができなくなった場合においても、自車両Mの位置認識が難しくなる。そこで、本実施形態の自動運転制御装置100では、このような異常時においても自車両Mの位置認識を継続することができるように、認識部130は、デッドレコニングにより自車両Mの位置を認識する機能を有する。デッドレコニングは、ジャイロセンサーや加速度センサなどの各種センサからの情報と合わせて演算処理することにより、GNSS単独での測位が難しい状況においても高い精度での測位を可能とする技術である。このような機能を有することにより、認識部130は、上記のような異常時においても自車両Mの位置認識を継続することができる。
【0035】
しかしながら、デッドレコニングによる位置認識の精度は、GNSS受信機51によって取得される高精度の位置情報による位置認識の精度より低いため、デッドレコニングによって位置認識を行っている状況では自車両Mの自動運転の制御精度が低下する可能性がある。以下、このように自車両Mがデッドレコニングを行いながら走行している状況をデッドレコニング状態という。具体的には、位置認識の精度が低下すると、自車両Mの実際の走行位置と自動運転制御装置100が認識している位置との間にズレが生じ、自車両Mの走行速度が、実際に走行している道路の状況に適していない状況が発生しうる。そこで、本実施形態の自動運転制御装置100では、後述のモード決定部150が自動運転レベル又は車速を低下させることにより、自車両Mがカーブ路を走行するときに車両の走行が不安定になることを抑制する。
【0036】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0037】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0038】
モード決定部150は、自車両Mの運転モードを、運転者に課されるタスクが異なる複数の運転モードのいずれかに決定する。モード決定部150は、例えば、速度判定部151と、運転者状態判定部152と、モード変更処理部154とを備える。これらの個別の機能については後述する。
【0039】
図3は、運転モードと自車両Mの制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。自車両Mの運転モードには、例えば、モードAからモードEの5つのモードがある。制御状態すなわち自車両Mの運転制御の自動化度合いは、モードAが最も高く、次いでモードB、モードC、モードDの順に低くなり、モードEが最も低い。この逆に、運転者に課されるタスクは、モードAが最も軽度であり、次いでモードB、モードC、モードDの順に重度となり、モードEが最も重度である。なお、モードDおよびEでは自動運転でない制御状態となるため、自動運転制御装置100としては自動運転に係る制御を終了し、運転支援または手動運転に移行させるまでが責務である。以下、それぞれの運転モードの内容について例示する。
【0040】
モードAでは、自動運転の状態となり、運転者には前方監視、ステアリングホイール82の把持(図ではステアリング把持)のいずれも課されない。但し、モードAであっても運転者は、自動運転制御装置100を中心としたシステムからの要求に応じて速やかに手動運転に移行できる体勢であることが要求される。なお、ここで言う自動運転とは、操舵、加減速のいずれも運転者の操作に依らずに制御されることをいう。前方とは、フロントウインドシールドを介して視認される自車両Mの進行方向の空間を意味する。モードAは、例えば、高速道路などの自動車専用道路において、所定速度(例えば50[km/h]程度)以下で自車両Mが走行しており、追従対象の前走車両が存在するなどの条件が満たされる場合に実行可能な運転モードであり、TJP(Traffic Jam Pilot)と称される場合もある。この条件が満たされなくなった場合、モード決定部150は、モードBに自車両Mの運転モードを変更する。
【0041】
モードBでは、運転支援の状態となり、運転者には自車両Mの前方を監視するタスク(以下、前方監視)が課されるが、ステアリングホイール82を把持するタスクは課されない。モードCでは、運転支援の状態となり、運転者には前方監視のタスクと、ステアリングホイール82を把持するタスクが課される。モードDは、自車両Mの操舵と加減速のうち少なくとも一方に関して、ある程度の運転者による運転操作が必要な運転モードである。例えば、モードDでは、ACC(Adaptive Cruise Control)やLKAS(Lane Keeping Assist System)といった運転支援が行われる。モードEでは、操舵、加減速ともに運転者による運転操作が必要な手動運転の状態となる。モードD、モードEともに、当然ながら運転者には自車両Mの前方を監視するタスクが課される。
【0042】
自動運転制御装置100(および運転支援装置(不図示))は、運転モードに応じた自動車線変更を実行する。自動車線変更には、システム要求による自動車線変更(1)と、運転者要求による自動車線変更(2)がある。自動車線変更(1)には、前走車両の速度が自車両の速度に比して基準以上に小さい場合に行われる、追い越しのための自動車線変更と、目的地に向けて進行するための自動車線変更(推奨車線が変更されたことによる自動車線変更)とがある。自動車線変更(2)は、速度や周辺車両との位置関係等に関する条件が満たされた場合において、運転者により方向指示器が操作された場合に、操作方向に向けて自車両Mを車線変更させるものである。
【0043】
自動運転制御装置100は、モードAにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行しない。自動運転制御装置100は、モードBおよびCにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行する。運転支援装置(不図示)は、モードDにおいて、自動車線変更(1)は実行せず自動車線変更(2)を実行する。モードEにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行されない。
【0044】
モード決定部150は、決定した運転モード(以下、現運転モード)に係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに自車両Mの運転モードを変更する。
【0045】
例えば、モードAにおいて運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢である場合(例えば許容エリア外の脇見を継続している場合や、運転困難となる予兆が検出された場合)、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に手動運転への移行を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。自動運転を停止した後は、自車両はモードDまたはEの状態になり、運転者の手動操作によって自車両Mを発進させることが可能となる。以下、「自動運転を停止」に関して同様である。モードBにおいて運転者が前方を監視していない場合、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に前方監視を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。モードCにおいて運転者が前方を監視していない場合、或いはステアリングホイール82を把持していない場合、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に前方監視を、および/またはステアリングホイール82を把持するように促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。
【0046】
また、例えば、モードA~Dにおいて自車両Mが走行中の車線を維持することができなくなることが予測された場合、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に手動運転への移行を要請する。ここで運転者が手動運転への移行の要請に応じた場合、モード決定部150は、運転モードをモードEに変更する、といった制御を行う。または、この場合、モード決定部150は、現在の運転モードを、より重度のタスクが運転者に課せられる運転モードに変更する、といった制御を行ってもよい。例えば、現在の運転モードがモードA又はBである場合、モード決定部150は、運転モードをモードC又はDに変更する、といった制御を行ってもよい。一方、運転者が手動運転への移行の要請に応じなければ、モード決定部150は、自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。
【0047】
また、例えば、モードA~Dにおいて自車両Mが走行中の車線を維持することができなくなることが予測された場合、モード決定部150は、現在の運転モードを維持しつつ、自車両Mが走行中の車線を維持できるように自車両Mを減速させる、といった制御を行ってもよい。
【0048】
速度判定部151は、上記のモード変更のために自車両Mの所定時間後における走行速度を予測し、予測された走行速度が、走行中の車線を維持するために許容される範囲内であるか否かを判定する。速度判定部151は、予測された走行速度が許容範囲内であれば現在の運転モードを維持することを決定し、予測された走行速度が許容範囲内でなければ現在の運転モードを変更することを決定する。速度判定部151は、この判定結果をモード変更処理部154に通知する。
【0049】
ここで、走行速度の許容範囲は、デッドレコニングによる位置認識の結果に基づく自動運転(運転支援を含む)によって走行する自車両Mが走行するカーブ路の旋回半径(曲率半径)と、そのカーブ路を走行する自車両Mが走行車線を維持するように自車両Mの自動運転を制御することができる速度の限界(以下「デッドレコニング限界速度」という。)との対応関係によって表される。
図4は、この旋回半径とデッドレコニング限界速度との対応関係の一例を示す図である。以下、この旋回半径とデッドレコニング限界速度との対応関係を示す情報を「対応情報」という。対応情報は、予め自動運転制御装置100の記憶部に記憶されているものとする。
【0050】
例えば、
図4の例では、自動運転により自車両Mに旋回半径が690mのカーブ路を走行させるとき、走行車線を維持しながら走行するように自車両Mを制御することができる走行速度の上限(すなわちデッドレコニング限界速度)が30.6kmであることを表している。なお、一般に、車両が走行車線を維持しながらカーブ路を走行することができる速度の理論値はカーブ路の旋回半径と車両の走行速度との関係により求まるが、本実施形態におけるデッドレコニング限界速度は、そのような理論値をベースとして、デッドレコニングによる位置認識の精度低下が自動運転の制御精度に及ぼす影響や、自車両Mの減速が周囲の車両の走行に与える影響等を考慮して定められるとよい。
【0051】
運転者状態判定部152は、上記のモード変更のために運転者の状態を監視し、運転者の状態がタスクに応じた状態であるか否かを判定する。例えば、運転者状態判定部152は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して姿勢推定処理を行い、運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢であるか否かを判定する。また、運転者状態判定部152は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して視線推定処理を行い、運転者が前方を監視しているか否かを判定する。
【0052】
モード変更処理部154は、速度判定部151により運転モードの変更が決定された場合に、モード変更のための各種処理を行う。例えば、モード変更処理部154は、行動計画生成部140に路肩停止のための目標軌道を生成するように指示したり、運転支援装置(不図示)に作動指示をしたり、運転者に行動を促すためにHMI30の制御をしたりする。
【0053】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0054】
図2に戻り、第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0055】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0056】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0057】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0058】
図5は、自動運転制御装置100のモード決定部150による運転モード変更処理の流れの一例を示すフローチャートである。また、
図6は、運転モード変更処理の概略を説明する図である。以下では、
図6を適宜参照しながら、
図5に示す運転モード変更処理の流れについて説明する。簡単のため、
図6においては、繰り返し処理の一周期における運転モード変更処理の流れを示しているが、実際には、
図6に示す一連の処理が所定のタイミングで繰り返し実行されることにより、運転モード変更処理の全体が実現される。
【0059】
まず、認識部130が、自車両Mの位置認識を正常に行えているか否かを判定する(ステップS101)。ここで、自車両Mの位置認識が正常に行えていないと判定した場合、認識部130は、デッドレコニングによる自車両Mの位置認識を開始する(ステップS102)。この場合、デッドレコニングが開始されたことに伴い、モード決定部150が、自車両Mの所定距離前方にカーブ路があるか否かを判定する(ステップS103)。ここで、自車両Mの所定距離前方にカーブ路有りと判定した場合、モード決定部150は、前方に控えているカーブ路の旋回半径を算出する(ステップS104)。
【0060】
例えば、
図6は、自車両Mが現在の走行地点P1に到達したタイミングで認識部130が道路区画線を見失い、これを契機にデッドレコニングよる位置認識が開始された場合の例を示している。この場合、例えば、認識部130は、所定時間後の自車両Mの走行位置を推定し、その推定位置と高精度地図情報とに基づいて、所定時間後の自車両Mが走行する道路がカーブ路であるか否かを判定する。なお、この場合、自車両Mの所定時間後の走行位置は、自車両Mが次の(1)により求められる所定速度Vで所定時間走行した際に到達する地点P2として表すことができる。
【0061】
【0062】
ここで、v
0は走行地点P1における自車両Mの現在速度を表し、Δvは車両システム1が許容する加速度による加速を所定時間(例えば
図6の例では4秒)継続した際に増加する速度を表す。
図6の例では、地点P2はカーブ路上の地点であるため、モード決定部150は、当該カーブ路の旋回半径を算出する。例えば、モード決定部150は、現在地点P1から地点P2までの道路の旋回半径を平均化した値をこの区間における旋回半径として算出する。
【0063】
続いて、モード決定部150は、算出したカーブ路の旋回半径と対応情報とに基づいて、自車両Mの前方に控えているカーブ路のデッドレコニング限界速度を推定する(ステップS105)。なお、自車両Mの自動運転に関して、自車両Mの走行速度が運転者によって設定される場合がある。このような場合、自車両Mの速度は運転者が設定した速度VDを超えることがない。そのため、このような指定速度VDが設定されている場合、モード決定部150は、(1)式によって算出された速度Vと指定速度VDとを比較し、低い方の速度を地点P2における自車両Mの速度と推定してもよい。
【0064】
続いて、モード決定部150は、自車両Mが地点P2に到達するときの推定速度が、ステップS105において推定されたデッドレコニング限界速度を超えるか否かを判定する(ステップS106)。ここで、自車両Mが地点P2に到達するときの推定速度がデッドレコニング限界速度を超えると判定した場合、モード決定部150は、自車両Mの運転モードを、より重度のタスクが運転者に課せられる運転モードに変更する(ステップS107)。
【0065】
なお、運転モードの変更においては、変更先の運転モードによって運転者の応諾が必要になる場合がある。このような場合、運転者が運転モードの変更要請に応じた場合(例えばステアリングの把持が検知された場合)に運転モードの変更が可能となり、運転者が運転モードの変更要請に応じない場合には、自車両Mを安全に停止させるといった制御が必要になる。例えば、
図6の例は、運転モードをモードB(ステアリング把持:不要)からモードC(ステアリング把持:必要)に変更する場合を示している。この場合、例えば、モード決定部150は、地点P1において運転モードの変更を決定すると、HMI30による情報表示や音声出力などにより、運転者に対して運転モードの変更のためにステアリングの把持を要請する(TD:運転操作引継要求)。モード決定部150は、運転者が運転モードの変更要請に応じた場合には運転モードをモードCに変更する。なお、この場合、モード決定部150は、自車両Mがカーブ路を通過するなどして車線逸脱の危険性がなくなったタイミングで運転モードを元のモードBに戻してもよい。一方、運転者が運転モードの変更要請に応じない場合、モード決定部150は、MRM(Minimal Risk Maneuver)の設定に応じて、自車両Mを安全に停車させる。
【0066】
一方、ステップS101において位置認識が正常に行えていると判定した場合、または、ステップS103において前方にカーブ路無し、と判定した場合、または、ステップS106において自車両Mの推定速度がデッドレコニング限界速度を超えていないと判定した場合、モード決定部150は、運転モードの変更を行わずに一連の処理を終了する。
【0067】
このように構成された実施形態の自動運転制御装置100によれば、道路構造に応じた適切な制御をすることができる。具体的には、実施形態の自動運転制御装置100は、前方にカーブ路が控えている状況においてデッドレコニングが発生した場合に、現在の運転モードを、より重度のタスクが運転者に課せられる運転モードに変更することにより、自車両Mの走行が不安定化することを抑制することができる。
【0068】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記プログラムを実行することにより、
車両の周辺状況を認識し、
前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御し、
前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、少なくとも前記第2の運転モードを含む前記複数の運転モードの一部は前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、
前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更し、
前記車両の位置認識の精度が低下した場合に、前記車両前方の道路の曲率に基づいて前記車両が前記道路を走行するときの速度を推定し、
推定した前記速度が予め定められた所定速度を超える場合に前記第2の運転モードから前記第1の運転モードに前記車両の運転モードを変更する、
ように構成されている、車両制御装置。
【0069】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…車両システム、10…カメラ、12…レーダ装置、14…LIDAR、16…物体認識装置、20…通信装置、30…HMI、40…車両センサ、50…ナビゲーション装置、51…GNSS受信機、52…ナビHMI、53…経路決定部、54…第1地図情報、61…推奨車線決定部、62…第2地図情報、70…ドライバモニタカメラ、80…運転操作子、82…ステアリングホイール、84…ステアリング把持センサ、100…自動運転制御装置、120…第1制御部、130…認識部、140…行動計画生成部、150…モード決定部、151…速度判定部、152…運転者状態判定部、154…モード変更処理部、160…第2制御部、162…取得部、164…速度制御部、166…操舵制御部、200…走行駆動力出力装置、210…ブレーキ装置、220…ステアリング装置