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特許7186227原子炉内で使用可能な検出装置および関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】原子炉内で使用可能な検出装置および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/10 20060101AFI20221201BHJP
   G21C 17/112 20060101ALI20221201BHJP
   G21C 3/02 20060101ALI20221201BHJP
   G21C 17/06 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G21C17/10 600
G21C17/10 300
G21C17/112
G21C3/02 200
G21C17/06 040
G21C17/06 050
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020531520
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018064684
(87)【国際公開番号】W WO2019156735
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】62/596,311
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/691,178
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】カルバハル、ジョージ、ブイ
(72)【発明者】
【氏名】アーント、ジェフリー、エル
(72)【発明者】
【氏名】スタフォード、ショーン、シー
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03296864(US,A)
【文献】米国特許第03087886(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00
G21C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の内部の燃料集合体の複数の燃料棒の中の、被覆と内部領域を有する1本の燃料棒とともに使用可能であり、原子炉の外部に設置された電子処理装置と協働することができる検出装置であって、
原子炉内の当該燃料棒の近くであるが被覆の外に位置し、励起パルスを発生させ、当該励起パルスを被覆を通して内部領域へ送り込むように構成された送信器と、
共振電気回路を有し、内部領域に支持され、励起パルスに応じて特性が燃料棒の状態を示す応答パルスを発生させ、当該応答パルスを内部領域から磁場信号として被覆を通して送り出すように構成された電気回路装置と、
原子炉の内部であるが当該燃料棒の近くで被覆の外側に支持され、応答パルスを受信し、当該応答パルスに応答して出力を電子処理装置に送信するように構成された受信器とを具備する検出装置。
【請求項2】
前記共振電気回路が核燃料棒のプレナム内に支持される、請求項1の検出装置。
【請求項3】
前記応答パルスの特性が燃料ペレットの中心温度を示す、請求項2の検出装置。
【請求項4】
前記応答パルスの特性が燃料ペレットの伸びを示す、請求項2の検出装置。
【請求項5】
前記応答パルスの特性が前記内部領域の圧力を示す、請求項2の検出装置。
【請求項6】
前記応答パルスの特性が前記燃料棒の複数の状態を示す、請求項2の検出装置。
【請求項7】
前記共振電気回路を構成する複数の回路部品の値が、前記応答パルスを発出させる燃料棒の同定に使用可能な唯一無二の周波数を当該応答パルスが持つように選定される、請求項1の検出装置。
【請求項8】
前記電気回路装置がさらに、前記内部領域に支持され、前記励起パルスに応じて較正信号を発生させ、当該較正信号を内部領域から別の磁場信号として被覆を通して送り出すように構成された較正回路を含み、当該別の磁場信号が受信器によって受信され、受信器が受信した応答パルスを部品の劣化や温度ドリフトに伴うすべての信号変化に対して補正するために使用できる、請求項1の検出装置。
【請求項9】
前記共振電気回路を構成する複数の回路部品がコンデンサを含み、当該コンデンサが前記燃料棒の状態に応じて変化する静電容量を有し、応答パルスの周波数を当該状態の変化に応じて変化させるように構成されている、請求項1の検出装置。
【請求項10】
前記コンデンサが可動プレートと静置プレートから成り、当該可動プレートが前記内部領域の雰囲気圧力の変化に応じて静置プレートに対して移動すると、静電容量が変化して、応答パルスの周波数が雰囲気圧力とともに変化する、請求項9の検出装置。
【請求項11】
前記共振電気回路を構成する複数の回路部品がコイルを有するインダクタを含み、当該インダクタが前記燃料棒の状態に応じて変化するインダクタンスを有し、応答パルスの周波数を当該状態の変化に応じて変化させるように構成されている、請求項1の検出装置。
【請求項12】
前記燃料棒は内部領域に多数の燃料ペレットを有し、前記状態は当該燃料棒の燃料ペレット中心温度であり、前記電気回路装置はさらに、少なくとも一部が強磁性体で形成された細長い要素より成る温度伝達装置を含み、前記要素の少なくとも一部は前記コイル内に挿入可能であり、コイル内に挿入される当該要素の少なくとも一部は当該状態に伴って変化して、インダクタンスを当該状態の変化に応じて変化させる、請求項11の検出装置。
【請求項13】
前記温度伝達装置がさらに、ある量の金属を含み、前記要素が当該ある量の金属と接触し、当該ある量の金属が燃料ペレットの中心温度の上昇および低下に伴ってそれぞれ熱膨張および熱収縮するよう構成され、当該要素が熱膨張および熱収縮する当該ある量の金属によって前記コイルに対して移動して、インダクタンスを当該状態の変化に応じて変化させるよう構成されている、請求項12の検出装置。
【請求項14】
前記ある量の金属が当該原子炉の運転中は液状であり、前記要素が当該ある量の金属の上に浮かんでおり、当該ある量の金属が熱膨脹および熱収縮すると前記コイルに対して浮いた状態で移動するよう構成されている、請求項13の検出装置。
【請求項15】
前記状態が前記内部領域の雰囲気圧力であり、前記電気回路装置はさらに、少なくとも一部が強磁性体で形成された細長い要素より成る圧力指示装置を含み、当該要素の少なくとも一部は前記コイル内に挿入可能であり、当該コイル内に挿入された当該要素の少なくとも一部は当該状態の変化に伴って変化してインダクタンスを当該状態の変化に応じて変える、請求項11の検出装置。
【請求項16】
前記圧力指示装置はさらに、前記内部領域との流体連通を阻止するように密封された空洞を有する容器を含み、当該容器が当該内部領域に支持され、当該内部領域の雰囲気圧力の上昇および低下に応じてそれぞれ収縮および膨張するように構成され、前記要素が、当該容器の上に位置して、前記の状態変化に応じて当該容器が収縮または膨張すると前記コイルに対して移動して、インダクタンスを変化させるように構成されている、請求項15の検出装置。
【請求項17】
前記容器が多数の波形表面のある蛇腹である、請求項16の検出装置。
【請求項18】
原子炉の内部の燃料集合体の複数の燃料棒の中の、被覆と内部領域を有する1本の燃料棒の状態を検出する方法であって、当該方法は、
原子炉の外部に設置された電子処理装置と協働可能である検出装置であって、原子炉内の当該燃料棒の近くであるが被覆の外に位置する送信器と、共振電気回路を有し内部領域に支持された電気回路装置と、原子炉の内部であるが当該燃料棒の近くで被覆の外側に支持された受信器とを有する検出装置を使用するものであり、
送信器により励起パルスを発生させ、当該励起パルスを当該被覆を通して当該内部領域へ送り込むことと、
当該共振電気回路により当該励起パルスに応じて応答パルスを発生させ、当該応答パルスを内部領域から磁場信号として被覆を通して送り出すことと、
当該燃料棒の状態を示す特性を持つように当該応答パルスを発生させることと、
当該受信器において当該応答パルスを受信し、当該応答パルスに応じた出力を電子処理装置に送信すること
を含む方法。
【請求項19】
前記電気回路装置はさらに、前記内部領域に支持された較正回路を有し、さらに、
較正回路により前記励起パルスに応じて較正信号を発生させ、当該較正信号を別の磁場信号として当該内部領域から前記被覆を通して送り出すことと、
前記受信器において当該別の磁場信号を受信することと、
当該別の磁場信号を使用して、当該受信器において受信された当該応答パルスを部品の劣化や温度ドリフトに伴うすべての信号変化に対して補正すること、
を含む請求項18の方法。
【請求項20】
前記受信器において受信された当該別の磁場信号の使用が、
前記応答パルスの特性と前記較正信号の別の特性から比率を求めることと、
当該比率を用いて記憶領域から当該状態に対応する値を検索すること、
を含む請求項19の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年6月28日に出願された米国仮特許出願第62/691,178号および2017年12月8日に出願された第62/596,311号の優先権を主張し、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は一般的に原子力発電設備に関し、より詳細には、原子炉の燃料集合体の燃料棒および計装管とともに使用可能な検出装置に関する。
【背景技術】
【0003】
最新式の原子炉システムの多くは、炉心内の軸方向のさまざまな高さ位置で放射能を直接測定する炉内センサを使用する。また、炉心の周囲には、冷却材出口の高さのさまざま位置に熱電対センサが設置されており、冷却材出口温度をさまざまな半径方向位置で直接測定することができる。これらのセンサは、炉心内の半径方向および軸方向の出力分布を直接測定するために使用される。この出力分布測定情報は、原子炉がその出力分布の限界内で運転されているかの判断に使用される。こうした機能の実行に用いられる典型的な炉内センサは、周辺で起きている核分裂の量に比例する電流を発生させる自己給電型検出器である。この種のセンサは概して、炉心内のさまざまな燃料集合体内部の計装シンブルの中に配置され、上記電流を発生させるための外部電源を必要としない、一般的に自己給電型検出器と称されるものであり、その詳細は、1998年4月28日に発効され、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,745,538号に記載されている。
【0004】
炉心のさまざまなパラメータが測定可能なセンサとして、一般的に炉心内のさまざまな燃料集合体の計装シンブル内に配置される別の種類のものがあるが、これは、2017年1月27日に出願された米国特許出願第15/417,504号に記載されている。この種のセンサは、中性子束を検出するように構成された自己給電型中性子検出器と、当該中性子検出器に並列に接続されたコンデンサと、入力端および出力端を有するガス放電管と、共振回路と直列に当該出力端に接続されたアンテナとから成る送信器装置を使用する。ガス放電管の入力端は当該コンデンサに接続されている。当該アンテナは、当該自己給電型検出器によって監視される中性子束の強度を表す一連のパルスから成る信号を発信するよう構成されている。当該共振回路のインダクタンスおよび静電容量の値の変化に影響を及ぼす他の炉心パラメータも監視することができる。
【0005】
原子炉の出力をその外部へ伝えるために信号線を必要としないさらにもう一つの種類の炉内センサとして、米国特許第4,943,683号に開示されたものがある。この米国特許は、原子炉の炉心の燃料集合体に組み込まれる異常検出装置と原子炉容器の外に配置される送受信器とから成る原子炉の炉心異常診断システムを記載している。送受信器は、異常検出装置に向けて信号を無線で送信し、当該異常検出装置が発生するエコー信号を無線で受信する。異常検出装置が燃料集合体内の異常な温度上昇のような炉心内の異常を検出すると、エコー信号のモードが基準信号から偏移する。すると送受信器はエコー信号の基準信号からのこの偏移を検知し、発電所の保護系統に異常検出信号を送信する。当該センサは、設置された燃料集合体周辺の冷却材温度を実際に監視している。
【0006】
上述のセンサはそれぞれ、原子炉の炉心内の状態を直接監視するが、その種のセンサに問題がないわけではない。したがって、改善が望まれる。
【発明の概要】
【0007】
上記のセンサはいずれも、原子炉運転中の炉心内の核燃料棒の内部の状態を直接監視するものではない。先進的な燃料被覆管材料を商業利用できるようにするには、規制当局の承認を受けるための厳格な試験を受けなければならない。先進的な燃料被覆管材料を試験する従来の方法では、数回の燃料サイクルにわたって燃料棒を試験し、照射試験の終了時に検査を行う必要がある。これは、数年間かかる長いプロセスであり、その期間中燃料被覆管のデータを利用できない。従来の方法では、最も重要なデータは照射後試験を行っている時にのみ得られる。望ましいセンサは、燃料棒の内部に設置可能で、数回の燃料サイクルにわたって危険な状態に耐えることができ、かつ燃料棒の被覆管に貫通部を必要としない炉内センサである。
【0008】
本発明は、遠隔式電磁誘導または磁気誘導型(パルス誘導としても知られている)送受信器を有する、核燃料棒と一体的なリアルタイム受動的検出装置を提供することにより、上記の目的を達成する。当該検出装置は、核燃料棒の内部に支持され、入射励磁パルスに応答してほぼ正弦波形の応答パルスを発生させ、その応答パルスを磁気波として、核燃料棒の被覆を通して核燃料棒を収容する容器内の別の場所へ送信するように構成された共振電気回路を含む。発生するパルスの特性は、当該燃料棒の状態を示すものである。当該検出装置は、原子炉内の当該燃料棒の近くであるが被覆の外側に位置し、励起パルスを発生させ、当該励起パルスを被覆を通して共振電気回路に伝える送信器と、当該被覆の外側の原子炉内で、当該核燃料棒の近くに支持され、前記応答パルスを受信し、前記応答パルスに応じて信号を原子炉の外側にある電子処理装置に送信するよう構成された受信器も含む。
【0009】
共振回路は核燃料棒のプレナム内に支持させるのが好ましい。この種の実施態様においては、応答パルスの特性は燃料ペレットの中心温度を示す。別のこの種の実施態様においては、応答パルスの特性は燃料ペレットの伸びを示す。さらに別のこの種の実施態様においては、応答パルスの特性は燃料棒内圧を示す。また、応答パルスの特性が燃料棒の複数の状態を同時に示すように構成することもできる。
【0010】
軸方向の2箇所で測定を行うために、別の共振電気回路を燃料棒の底部に設けることもできる。当該共振回路は、同定することによりパルスを発出した特定の核燃料棒を突き止めることができる特有の周波数を有する応答パルスを発生させるように、例えば静電容量やインダクタンスなどの特性を選定した複数の回路部品により構成することが好ましい。
【0011】
また、検出装置には、核燃料棒の内部に支持され、送信器からの励起パルスによる問い合わせを受けると静的な較正信号を発生させるように構成された較正回路を含めることができる。較正信号は、受信器が受信して、部品の劣化や温度ドリフトに伴う信号変化に対して受信応答パルスを補正するために用いることができる。
【0012】
したがって、本発明の一局面は、原子炉の内部の燃料集合体の複数の燃料棒の中の、被覆と内部領域を有する1本の燃料棒とともに使用可能であり、原子炉の外部に設置された電子処理装置と協働することができる改良型検出装置を提供する。当該検出装置は一般的に、 原子炉内の当該燃料棒の近くであるが被覆の外に位置し、励起パルスを発生させ、当該励起パルスを被覆を通して内部領域へ送り込むように構成された送信器と、共振電気回路を有し、内部領域に支持され、励起パルスに応じて応答パルスを発生させ、当該応答パルスを内部領域から磁気波として被覆を通して送り出すように構成された電気回路装置とを具備し、当該応答パルスの特性は燃料棒の状態を示すものであり、さらに、原子炉の内部であるが当該燃料棒の近くで被覆の外側に支持され、応答パルスを受信し、当該応答パルスに応答して出力を電子処理装置に送信するように構成された受信器を含むと言える。
【0013】
本発明の別の1つの局面は、原子炉の内部の燃料集合体の複数の燃料棒の中の、被覆と内部領域を有する1本の燃料棒の状態を検出する方法を提供する。当該方法は一般的に、当該状態を検出するための検出装置であって、原子炉の外部に設置された電子処理装置と協働可能な検出装置の使用を含むものと言うことができ、当該検出装置は、原子炉内の当該燃料棒の近くであるが被覆の外に位置する送信器と、共振電気回路を有し、内部領域に支持された電気回路装置と、原子炉の内部であるが当該燃料棒の近くで被覆の外側に支持された受信器を含むと言える。これを使用することは一般的に、送信器により励起パルスを発生させて当該励起パルスを当該被覆を通して当該内部領域へ送り込むことと、当該共振電気回路により当該励起パルスに応じて応答パルスを発生させ、当該応答パルスを内部領域から磁気波として被覆を通して送り出すことと、当該燃料棒の状態を示す特性を有する応答パルスを発生させることと、受信器によって当該応答パルスを受信し、当該応答パルスに応じた出力を電子処理装置に送信することを含むと言うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の詳細を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0015】
図1】原子力施設の燃料棒および計装シンブルとともに使用できる、本発明の第1の実施態様による改良型検出装置の機能を示す概略図である。
【0016】
図2図1の検出装置とともに使用できる燃料棒と計装シンブルを含む燃料集合体をそれを収容する原子炉を有する原子力施設とともに示す概略図である。
【0017】
図3図1の検出装置の別の概略図である。
【0018】
図4図1の検出装置の電気回路装置を内蔵する燃料棒を一部破断して示す図である。
【0019】
図5A図4の電気回路装置が出力する応答信号の一例の軌跡を示す図である。
【0020】
図5B図4の電気回路装置が出力する別の応答信号の軌跡を示す図である。
【0021】
図6】本発明の第2の実施態様による電気回路装置を内蔵する別の燃料棒の一部を破断して示す図である。
【0022】
図7図6の電気回路装置のフェライト棒の透磁率の温度変化を表す図である。
【0023】
図8図2に略示するような燃料棒が内臓することができる、本発明の第3の実施態様による電気回路装置を示す概略図である。
【0024】
図9】本発明の第4の実施態様による電気回路装置を内蔵する燃料棒の概略図である。
【0025】
図10】本発明の第5の実施態様による別の電気回路装置を内蔵する別の燃料棒の概略図である。
【0026】
図11】本発明の第6の実施態様による別の電気回路装置を内蔵する別の燃料棒の概略図である。
【0027】
図12図2に略示するような燃料棒が内蔵することができる、本発明の第7の実施態様による別の電気回路装置の概略図である。
【0028】
図13】本発明の第8の実施態様による別の電気回路装置を内蔵する別の燃料棒の概略図である。
【0029】
同様の数字は明細書全体にわたって同様の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明による改良型検出装置4を図1に略示する。検出装置4は、図2に数字12で示す原子炉の燃料集合体10(図2)に含まれるような燃料棒6および計装シンブル8とともに使用できる。原子炉12はその格納容器12を表すものとして模式的に描かれている。
【0031】
検出装置4は原子炉の格納容器12の内側にあり、その外側にある電子処理装置16と協働することができる。よって、検出装置4は原子炉の格納容器12内の過酷な環境に、また、電子処理装置16は原子炉の格納容器12の外側の穏やかな環境に設置するように設計される。
【0032】
図1からわかるように、電子処理装置16はトランシーバー18と信号処理部22を含むと見なすことができる。トランシーバー18は、計装シンブル8の中に位置する呼びかけ装置48に有線接続される。信号処理部22は処理部と保存部24を含み、保存部24には多数の手順28と多数のデータテーブル30とが保存される。手順28は、トランシーバー18から信号を受信したり、燃料棒6の内部の状態を表すトランシーバー18からの信号の特徴に符合する値を検索するためにデータテーブル30にアクセスしたりする検出装置4のさまざまな動作を実行させるように処理部で実行可能である。
【0033】
図1からさらにわかるように、燃料棒6は、被覆32と、被覆32の内部領域36にある多数の燃料ペレット38とを有すると言える。本明細書に用いる「多数の」という表現とその変化形は、広義には、1を含むゼロ以外の任意の量を表すものとする。燃料棒は、一般的にその垂直方向の上端にプレナム42を有する。
【0034】
検出装置4は、燃料棒6の内部領域36のプレナム42内に支持される電気回路装置44を含むと言える。検出装置4はさらに、計装シンブル8内に位置すると言える呼びかけ装置48を含む。図1に略示するように、電気回路装置44は内部領域36にあって、被覆32に貫通部や他の開口を形成することなく呼びかけ装置48と通信し合えるため、被覆32が無傷のままで燃料ペレット38を内部領域36に完全な格納状態に保つことができるという利点がある。
【0035】
図1からさらにわかるように、また以下により詳しく説明するように、電気回路装置44と呼びかけ装置48とは互いに無線で通信する。燃料棒6の内部領域36の状態には、例えば、燃料ペレット38の温度、燃料ペレット38の物理的伸びの程度、および燃料棒6の内部雰囲気の圧力が含まれると言える。これら3つの状態は、電気回路装置44によって直接検出することが可能であり、呼びかけ装置48を通じて電子処理装置16に伝えられる。また、以下に詳細に述べるように、燃料ペレット38の温度および伸びをさまざまな方法で検出し、燃料棒6の内部領域36の雰囲気圧力をさまざまな方法で検出するさまざまな実施態様が開示されている。これらの特性は限定的である意図はなく、本発明の精神から逸脱することなく他の特性も検出可能であることがわかる。
【0036】
図3からわかるように、電気回路装置44は、センサとして働き、コンデンサ54とインダクタ56を含む複数の回路部品によって構成される共振電気回路50を含むと言える。これらの回路部品は、例えばコンデンサ54の静電容量やインダクタ56のインダクタンスなどの値や特性を持つが、それらの値や特性は、共振電気回路50に唯一無二の公称周波数を付与して、呼びかけ装置48によって或る特定の周波数が検出された場合、その特定の周波数が公称周波数である共振電気回路50を含む電気回路装置44を内蔵する特定の燃料棒6をその特定の周波数から突き止めることができるように選定される。
【0037】
この点において、複数の電気回路装置44の各々を、燃料集合体10の複数の燃料棒6のそれぞれ対応する燃料棒内に設置すればよいことがわかる。検出装置4の動作中、呼びかけ装置48は、燃料棒6の内部領域36にある燃料ペレット38の例えば温度および/または伸び、その内部領域36の雰囲気圧力などの特性または状態のうち1つ以上を表すと解釈できる信号を電気回路装置44から受信するために、電気回路装置44に応答指令信号を送る。燃料集合体10は多数の燃料棒6を含んでおり、その一部の燃料棒6が対応する電気回路装置44を内蔵すると想定される。呼びかけ装置48が応答指令信号を送ると、それに応答してさまざまな電気回路装置44が出力する信号が被覆32または対応する燃料棒6を通して伝わり、この信号が呼びかけ装置48によって受信される。さまざまな電気回路装置44からのさまざまな信号はそれぞれ、電気回路装置44の例えばコンデンサ54とインダクタ56のさまざまな特性を選ぶことによって選定される、同定用の唯一無二の周波数としての公称周波数を有する。したがって、電子処理装置16は、検出されたさまざまな信号の周波数から、どの信号が燃料集合体10のどの燃料棒6と一致するかを判定することができる。
【0038】
図3からさらにわかるように、電気回路装置44はさらに、較正回路として使用できる共振電気回路60を含む。つまり、共振電気回路50は燃料棒6の内部領域36の特性または状態を感知するセンサ回路として使用でき、共振電気回路60は共振電気回路50からの信号を部品の劣化、温度ドリフトなどに対して補償するための較正回路として使用できる。この点に関し、共振電気回路60は、共振電気回路50のコンデンサ54およびインダクタ56と同じ物性を持つように選択されるコンデンサ62とインダクタ66を含む。ただし、以下に詳細に述べるように、共振電気回路50は、例示すると、燃料ペレット38の温度および/または伸び、および/または内部領域36の雰囲気圧力などの内部領域36で測定中の状態に曝される。較正回路として使用できる共振電気回路60は一般的に、測定中のその状態にそれほど曝されるわけではない。この種の較正は、本明細書の他の箇所で詳細に説明するようなレシオメトリック分析を使用して実施される。
【0039】
図3からさらにわかるように、呼びかけ装置48は送信器68と受信器72を含むと言える。送信器68は、内部に呼びかけ装置48がある計装シンブル8の被覆だけでなく燃料棒6の被覆32も通過できる磁場信号としての励起パルス74を出力するように構成されている。このようにすると、励起パルス74は、共振電気回路50および60のそれぞれのインダクタ56およびインダクタ66によって受信され、共振電気回路50および60にそれぞれ既知の態様の誘導共振電流が発生する。共振電気回路50および60に電流が誘起されると、共振電気回路50から応答パルス78が、また、共振電気回路60から応答パルス80が出力される。応答パルス78および80は磁場信号であり、単に無線周波数信号であるだけでなく、電気回路装置44から被覆32と計装シンブル8の被覆を通して伝わり、受信器72により受信される。
【0040】
励起パルス74はほぼ正弦波形である。応答パルス78および80も同様に正弦波パルスであるが、減衰していく正弦波パルスであり、図5Aと5Bは代表的な2つの異なる応答パルス78の一対の軌跡を示している。この点において、応答パルス78の周波数は、燃料棒6内の例えば温度のようなパラメータの一つと相関関係があり、応答パルス78のピーク振幅は、燃料棒6内の例えば燃料ペレット38の伸びのような別のパラメータに相応し、応答パルス78の減衰速度は、燃料棒6の例えば内部領域36の雰囲気圧力のような別のパラメータと相関関係がある。このように、応答パルス78は、電気回路装置44を内蔵する燃料棒6の内部領域36の複数のパラメータまたは状態と相関関係がある。
【0041】
前記の応答パルス78および80のレシオメトリック分析は普通、応答パルス80に対する応答パルス78の比率、あるいはその逆の比率を取ることにより、部品の劣化や温度ドリフトの影響を排除する。例えば、共振電気回路50および60は、経時的に劣化するため出力信号に影響が出る可能性がある。同様に、共振電気回路50および60の出力信号は、原子炉12の温度と共に変化する可能性がある。これらの要因を補償するために、共振電気回路50と共振電気回路60は、経時的に実質的に同じ速度で劣化すると想定する。また、共振電気回路50と60は、原子炉12の内部で巨視的、つまり全体的には同じ温度に曝される。応答パルス78と80の比率(例えば、周波数の比率)を取り、その比率を基に対応する温度値、伸び値、および/または圧力値をデータテーブル30で検索すると、共振回路50における部品の劣化や温度ドリフトの個別の影響が排除される。その理由は、共振電気回路50と60はいずれも同様の部品劣化や温度ドリフトを経験すると想定されるため、レシオメトリック信号は部品の劣化や温度ドリフトとは無関係であるからである。
【0042】
図4に最もよく示されているように、電気回路装置44はさらに、燃料棒6の内部領域36に位置する伸び伝達装置84を含む。伸び伝達装置84は、図示の典型的実施態様ではセラミック材料で形成され、燃料ペレット38の積層体に当接する支持体86を含む。支持体86は内部に挿入穴87を有し、伸び伝達装置84はさらに、挿入穴87に挿入されるフェライト棒88より成る伸び要素を含む。インダクタ56は、セラミック材料で形成された管体92の外側表面上にあって管体を取り囲むコイル90を含む。管体92は、支持体86とは反対側のフェライト棒88の端部を挿入できる内部領域94を有する。
【0043】
燃料ペレット38は、温度が上がると熱膨張して、支持体86を図4の右方向へ押し進めるため、同様に右方向へ移動するフェライト棒88の内部領域94へ挿入される部分が相対的に長くなり、インダクタ56のインダクタンスが変化する。こうしてインダクタ56のインダクタンスが変化すると、励起パルス74による共振電気回路50の電気的共振時に検出可能な共振電気回路50の周波数が調整を受ける。したがって、共振電気回路50からの応答パルス78は、燃料ペレット38の伸びの程度を示す周波数を有する。応答パルス78と80は受信器72によって受信され、それに応答して受信器72が複数の信号を電子処理装置16に送信する。電子処理装置16は、応答パルス78と80の比率、またはその逆の比率を用い、応答パルス78と80の唯一無二の公称周波数を基に、データテーブル30から電気回路装置44を内蔵する燃料棒6の識別情報を検索し、さらに、データテーブル30から応答パルス78によって例示される燃料ペレット38の伸びの程度に対応する値を検索する。そのあと、これらのデータは、例えば原子炉12の主データ監視システムや別の場所へ送信することができる。
【0044】
この点において、共振電気回路60に代表される較正回路は、燃料の伸び、燃料中心温度および雰囲気圧力のようなさまざまな燃料棒6内の特性または状態の検出には、厳密にいうと絶対必要とされるものではないことに留意すること。このように、較正回路60は本質的にオプションであり、データ収集作業を単純化し、部品の劣化や温度ドリフトに伴う制約を克服するために用いることができるが、較正回路60は検出装置4の動作に必要であるとは思われない。そのため、本明細書の他のところに記載される他のさまざまな実施態様の他のさまざまな種類の電気回路装置は、本発明の精神から逸脱しない範囲で、較正回路を含む場合と含まない場合があることがわかる。この点において、較正回路60は電気回路装置44の関連でのみ記載されることに留意すること。ただし、本明細書に記載したそれ以外の電気回路装置の他の実施態様はいずれもこのような較正回路を組み入れる場合があることに留意されたい。
【0045】
上記のように、応答パルス78はピーク振幅、周波数および減衰速度などの特性を持つ減衰正弦波である。図5Aはこの種の応答パルス78の軌跡96Aを示し、図5Bはこの種の応答パルス78の別の軌跡96Bを示す。図5Aと5Bから、図5Aの軌跡の方が図5Bの軌跡96Bより、ピーク振幅が大きく、周波数が高く(周期98Aは図5Bの周期98Bより短い)、さらに減衰速度が大きいことがわかる。このように、温度、圧力、および伸びのいずれであれ、軌跡96Aおよび96Bのどちらかの周波数から直接測定できる一方、例えば手順28およびデータテーブル30の構成によってはこの種の軌跡96Aと96Bそれぞれから複数のこの種のパラメータを同時に得られることがわかる。
【0046】
このように、燃料ペレット38が伸びると、フェライト棒88をコイル90に対して相対的に移動させるため、インダクタ56のインダクタンス値に影響を及ぼすと言える。これは、共振電気回路50によって出力される応答パルス78の周波数に影響を及ぼすので、電子処理装置16は手順28とデータテーブル30によってこの周波数の変化を検出することができる。
【0047】
図6は、本発明の第2の実施態様による改良型電気回路装置144を示す。電気回路装置144は、コンデンサ154とインダクタ156を有する共振電気回路150を含み、その点で電気回路装置44と同様である。ただし、電気回路装置144は、燃料棒6内の燃料ペレットの中心温度の測定を可能にする温度伝達装置184を含む。具体的に、温度伝達装置184は、内部に挿入穴187を形成した変形燃料ペレット186を含む。温度伝達装置184はさらに、挿入穴187に挿入される細長いタングステン棒189を含む。この細長い要素189はこの実施態様ではタングステン製として示されているが、例えばモリブデンなどの融点の高い他のさまざまな金属や合金はどれでも、タングステンの代わりに使用できることがわかる。温度伝達装置184はさらに、タングステン棒189に当接するフェライト棒188を含み、タングステン棒189は変形燃料ペレット186に当接することがわかる。インダクタ156は、フェライト棒188上に直に設けたコイル190を含む。
【0048】
運転中、燃料ペレット38および変形燃料ペレット186が発生する熱はタングステン棒189とフェライト棒188を伝わるので、フェライト棒188の温度は燃料ペレット38および変形燃料ペレット186の温度と一致するようになる。フェライト棒188の透磁率は温度によって変化するが、この温度による透磁率の変化を図7に略示するグラフで表す。図7のグラフの丸で囲った部分は、熱が変形燃料ペレット186からタングステン棒189を通してフェライト棒188に伝わった後フェライト棒188に普通見られる温度と、曲線の図7に示す位置における勾配が表すフェライト棒188の温度と透磁率の相関関係とを示す。
【0049】
上述したように、温度によって変化するフェライト棒188の透磁率がインダクタ156のインダクタンスに影響を及ぼす結果、共振回路150が出力する応答パルス78の周波数は、フェライト棒188の透磁率、ひいては燃料ペレット38と変形燃料ペレット186の温度によって直接変化することになる。このように、燃料ペレット38と変形燃料ペレット186の温度の測定は、手順28により、共振電気回路150が出力する応答パルス78を検出したあと、データテーブル30から、検出した応答パルス78の周波数に対応する温度を検索することによって行うことができる。
【0050】
本発明の第3の実施態様による改良型電気回路装置244を図8に示す。これは、燃料棒の中で電気回路装置44と同様の態様で使用できる。電気回路装置244は、燃料棒6の内部領域36に挿入可能であり、共振電気回路250と、一組の変形燃料ペレット286の温度を検出する温度伝達装置284とを含む。変形燃料ペレット286はそれぞれ、内部に挿入孔287が形成されている。温度伝達装置284は、原子炉12の運転中は液体である液体金属291をある量含む。温度伝達装置284はさらに、液体金属291に接触してその上に浮力で浮かんでおり、共振電気回路250のインダクタ256のコイル290の内部領域へ貫入する、フェライト棒288を含む。液体金属291は、変形燃料ペレット286の温度の上昇および低下に伴って膨脹および収縮する。したがって、コイル290に対するフェライト棒288の位置は、変形燃料ペレット286の中心温度に直接依存する。フェライト棒288がこのようにコイル290に対して移動すると、インダクタ256のインダクタンスに影響が及ぶため、共振電気回路250の周波数もそれに応じた影響を受ける。このように、共振電気回路250が発生する応答パルス78は、受信器72が受信して、電子処理装置16に伝え、電子処理装置16が手順28とデータテーブル30を用いて、これに対応する変形燃料ペレット286、したがって対応する燃料棒6の温度を突き止める。
【0051】
図9は、本発明の第4の実施態様による改良型電気回路装置344を示す。電気回路装置344は、燃料棒6の内部で使用され、共振電気回路350と圧力伝達装置385を含む。圧力伝達装置385は、燃料棒6内の雰囲気圧力を測定できるように構成され、燃料ペレット338の積層体に当接する支持体386を含む。圧力伝達装置385はさらに、フェライト棒388と、蛇腹393の形をした容器とを含み、蛇腹393は空洞395と複数の波形表面396とを有する。空洞395は開いているため、燃料棒6の内部領域と流体連通関係にある。また、フェライト棒388の反対側にある蛇腹393の端部は支持体386に固着されている。
【0052】
共振電気回路350はコンデンサ354を含むが、さらに、内部394にフェライト棒388を挿入できる中空管392の外面にコイル390を巻回したインダクタ356を含む。蛇腹393とフェライト棒388は、ばねによって一般的に燃料ペレット338の方へ付勢されるが、支持体386がこれらを可動的に受け止める。
【0053】
関連の技術で理解されているように、原子炉12の運転中は、1種以上の希ガスを含む核分裂ガスが生成される。この種の核分裂生成ガスは、燃料棒6の内部領域の雰囲気圧力を増加させる。中空の空洞395は燃料棒6の内部領域と流体連通関係にあるので、内部領域36の増加した圧力が空洞395を囲む蛇腹393にかかり、蛇腹393を軸方向に引き伸ばして、フェライト棒388をコイル390に対して移動させ、インダクタ356のインダクタンスを変化させる。燃料棒6の内部領域36の雰囲気圧力の増加により蛇腹393が引き伸ばされるため、コイル390内に位置するフェライト棒388の部分の長さが漸増する結果、インダクタ356のインダクタンスがそれに応じて変化する。
【0054】
インダクタ356のインダクタンスの相応の変化は共振電気回路350の周波数に予測可能な形で影響を及ぼし、また同様に共振電気回路350が出力する応答パルス78の周波数に影響を与える。その結果、共振電気回路350からの応答パルス78を受信器72が受信して、電子処理装置16に伝え、手順28とデータテーブル30により、燃料棒6の内部領域36の雰囲気圧力に関する対応値が得られる。雰囲気圧力に関するこの種の値はその後、原子炉12の社内データシステムに送信することが可能である。
【0055】
本発明の第5の実施態様による改良型電気回路装置444を図10に略示する。電気回路装置444は、燃料棒6の内部領域436に位置し、コンデンサとインダクタ456がある共振電気回路450を含む。
【0056】
電気回路装置444はさらに、図示された実施態様の一例ではらせん形の中空管であるブルドン管493の形をした容器より成る圧力伝達装置485を含む。ブルドン管493の中空管は空洞495を形成している。ただし、ブルドン管493の端部に入口497があるため、この入口497がブルドン管493の内部へ流体を連通させる。さらに詳しく言うと、電気回路装置444はさらに、入口497の近くにあるブルドン管493の端縁部と燃料棒6の内部領域436の内面との間に拡がるシールより成る支持体486を含む。したがって、支持体486により、内部領域436が、多数の燃料ペレット438を内蔵する主要部481と、ブルドン管493およびインダクタ456を内蔵する小領域483とに分割される。ブルドン管493はまた、支持体486の上に支持される。支持体486は、ブルドン管493の入口497がその内部と主要部481の間を流体連通関係にする点を除き、主要部481と小領域483の間の流体連通を阻止する。
【0057】
圧力伝達装置485はさらに、ブルドン管493の入口497とは反対の端部の上に位置するフェライト棒488を含む。インダクタ456はコイル490を含み、フェライト棒488がコイル490に対して移動すると、インダクタ456のインダクタンスが変化して、電気回路装置444が発生する応答パルス78の周波数を内部領域436の主要部481の雰囲気圧力に応じて変化させる。さらに詳しく言うと、核分裂生成ガスが内部領域436の主要部481に蓄積するにつれて、主要部481の雰囲気圧力が上昇し、ブルドン管493の空洞495の雰囲気圧力も同様に上昇する。小領域483は主要部481が経験するような雰囲気圧力の上昇を経験しないので、ブルドン管493の空洞495の雰囲気圧力が上昇すると、ブルドン管493が膨脹し、フェライト棒488がコイル490に対して矢印499の方向へ移動する。これにより、電気回路装置444が発生する応答パルス78の周波数が相応に変化する。
【0058】
かくして、内部領域436の主要部481の雰囲気圧力が変化すると、インダクタ456のインダクタンスが変化し、それに応じて共振電気回路450の公称周波数が変化し、その結果電気回路装置444が発生する応答パルス78の周波数が変化することがわかる。このような応答パルス78を受信器72が受信して、対応する信号を電子処理装置16に伝達すると、電子処理装置16が手順28とデータテーブル30とにより、内部領域436の雰囲気圧力の対応する値を突き止め、必要に応じて出力する。
【0059】
本発明の第6の実施態様による改良型電気回路装置544を図11に略示する。電気回路装置544は、ブルドン管593を空洞595を有する容器として用いる点で電気回路装置444と同様である。ただし、電気回路装置544は、ブルドン管593のフェライト棒588とは反対側の端部にプラグ597を設けたため、ブルドン管の中空の空洞595と燃料棒6の内部領域536とは流体連通関係になく、内部領域536の雰囲気圧力が上昇するとブルドン管593が収縮する。ブルドン管493はプラグ597の周辺で支持体586に支持されており、内部領域536の雰囲気圧力が上昇してブルドン管493が収縮すると、フェライト棒588はコイル590に対して矢印599の方向へ移動する。
【0060】
電気回路装置544は、コンデンサとインダクタ556を有する共振電気回路550を含んでおり、フェライト棒588がインダクタ556のコイル590に対して移動すると、インダクタ556のインダクタンスが変わるため、共振電気回路550の公称周波数が変わる。したがって、電気回路装置544は、ブルドン管の空洞595が内部領域536と流体連通関係にはなく内部領域536の雰囲気圧力が上昇するとブルドン管が収縮する点を除いて圧力伝達装置485と類似する圧力伝達装置585を含む。
【0061】
本発明の第7の実施態様による改良型電気回路装置644は、コンデンサ654とインダクタを有する共振電気回路650を含む。コンデンサ654は、一対のプレート652Aと652Bを誘電体653によって離隔したものである。電気回路装置644は、燃料棒6の内部領域36に収容して、燃料棒6の内部領域36の雰囲気圧力の変化に応答して周波数が調整される応答パルス78を出力させることができる。
【0062】
さらに詳しく言うと、誘電体653は本来、吸湿性であり、原子炉12の運転中に発生する核分裂生成ガスのうち少なくとも一部を吸収するように構成される。誘電体653が核分裂生成ガスを吸収すると、誘電体653の誘電率が変化して、コンデンサ654の静電容量が変わるため、共振電気回路650が発生する応答パルス78の周波数にこれに応じた影響が生じる。このように、燃料棒6の内部領域36の雰囲気圧力の変化に応じてコンデンサ654の静電容量が変化し、共振電気回路650が発生する応答パルス78の周波数が同様な影響を受ける。応答パルス78が受信器72によって受信されると、受信器72はそれに応答して電子処理装置16に信号を伝え、電子処理装置16はこの信号から、手順28とそれに関連するデータテーブル30を用いて、電気回路装置644を内蔵する燃料棒6の内部領域36の雰囲気圧力に関する値を求め、出力する。
【0063】
燃料棒6の内部領域736に位置する本発明の第8の実施態様による電気回路装置744を、図13に略示する。電気回路装置は、コンデンサ754とインダクタ756を含む共振電気回路750を含む。
【0064】
電気回路装置744に含まれる圧力伝達装置785は、コンデンサ756をその上に静置させた支持体786と、フレキシブルシール782を含む。さらに詳しく言うと、コンデンサ754の、誘電体753を間にはさむ一対のプレート752Aと752Bのうちのプレート752Aは支持体786上に位置し、フレキシブルシールはプレート752Bと燃料棒6の内面との間に拡がって、内部領域736を、多数の燃料ペレット738を内蔵する主要部781とインダクタ756、プレート752A、支持体786および誘電体753を内蔵する小領域783とに分割する。支持体786は剛体であるが、主要部781の雰囲気圧力が上昇または低下すると、フレキシブルシール782が支持体786に対して移動するように、多数の開口部が設けられている。このように、フレキシブルシール782は、核分裂生成ガスが生成される主要部781と小領域783との間の流体連通を阻止する。
【0065】
主要部781の雰囲気圧力が変化すると、フレキシブルシール782とプレート752Bが、支持体786上にあって静止状態のプレート752Aに対して移動する。誘電体753は、プレート752Bがプレート752Aに対して移動するのに応答して少なくともある程度伸び縮みする構成である。一方、プレート752Bがこのようにプレート752Aに対して移動すると、コンデンサ754の静電容量が変化するため、主要部781の雰囲気圧力が変化すると、共振電気回路750が発生する応答パルス78の周波数にそれに対応する変化が生じることになる。したがって、内部領域736の主要部781の雰囲気圧力の変化に応じて受信器72が受信する応答パルス78の周波数が変化し、その結果電子処理装置16に信号が伝えられることがわかる。電子処理装置16は、手順28とデータテーブル30を用いて、応答パルス78の周波数に対応する、内部領域736の主要部781の雰囲気圧力を示す圧力値を突き止める。
【0066】
かくして、燃料集合体10のさまざまな燃料棒6内の雰囲気圧力、燃料ペレットの中心温度および伸びなどのパラメータを直接測定することができるさまざまな電気回路装置が提供されることがわかる。既に指摘したように、いずれの電気回路装置も、部品の劣化や温度ドリフトを補償するための較正回路を含むことができる。燃料ペレットの中心温度と伸びや燃料棒6の雰囲気圧力などのパラメータを直接測定するとともに、或る特定の状況における応答パルス78をピーク振幅、周波数および減衰速度について解析すると、燃料棒6の複数の同じパラメータを間接的かつ同時に提供できることに再度触れたい。他の方法も明らかになることだろう。
【0067】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13