(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】非細胞毒性プロテアーゼの注入を案内するための超音波の使用
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20221201BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20221201BHJP
A61M 5/178 20060101ALI20221201BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61M37/00
A61B8/14
A61M5/178
A61L31/14
(21)【出願番号】P 2020535127
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 GB2019050506
(87)【国際公開番号】W WO2019162696
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-09-08
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ,スティーブ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-523651(JP,A)
【文献】国際公開第2017/162870(WO,A1)
【文献】特表2008-537686(JP,A)
【文献】特表2015-528342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0096549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61B 8/14
A61M 5/178
A61L 31/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼの
患者への注入を案内するための医療用又は外科用装置:
超音波撮像手持式スキャナ;及び
コンピュータプログラムであって、コンピュータで実行された時に、そのコンピュータに超音波撮像処理アプリケーションを実行させる命令を含んだ、コンピュータプログラム;
ここで、前記超音波撮像手持式スキャナは、以下を含み:
超音波エネルギーを送受信するための少なくとも一つの超音波トランスデューサ;
前記少なくとも一つの超音波トランスデューサに結びつけられたプロセッサであって、前記少なくとも一つの超音波トランスデューサから超音波エネルギー信号を受信するように構成されたプロセッサ;及び
前記プロセッサに結びつけられたインターフェースであって、前記超音波撮像処理アプリケーションを実行している前記コンピュータにデータを送信するように構成され、前記データが、前記少なくとも一つの超音波トランスデューサから受信した前記超音波エネルギー信号に基づいている、インターフェース;かつ
ここで、前記超音波撮像処理アプリケーションは、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照するように構成され、且つ、前記超音波撮像手持式スキャナから受信した前記データと、前記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての前記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを、前記医療用又は外科用装置の使用者に提供するように構成される。
【請求項2】
前記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイスをさらに含んだ、請求項1に記載の医療用又は外科用装置であって、前記制御式送達デバイスが、制御された投与量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを、前記超音波撮像手持式スキャナで撮像されている患者に、前記受信した超音波エネルギー信号に基づいて決定された前記患者を基準にした位置に基づいて、送達するように構成される、医療用又は外科用装置。
【請求項3】
注入デバイスの少なくとも一部分を受けるためのガイドを含んだ、請求項1に記載の医療用又は外科用装置であって、前記ガイドが、前記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられ、前記使用者が前記非細胞毒性プロテアーゼを、その注入されている選択した非細胞毒性プロテアーゼにとって適正な前記患者の処置部位に注入できるように、前記超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータが、前記ガイドを、前記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての前記データベースに基づいて決定された前記患者を基準にした位置に、前記使用者が配置できるようにするための情報を、前記使用者に表示するように構成される、医療用又は外科用装置。
【請求項4】
以下を含む、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼの注入を案内するための医療用又は外科用装置:
超音波撮像手持式スキャナ;及び
前記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイス;
ここで、前記超音波撮像手持式スキャナは、以下を含み:
超音波エネルギーを送受信するための少なくとも一つの超音波トランスデューサ;
前記少なくとも一つの超音波トランスデューサに結びつけられたプロセッサであって、前記少なくとも一つの超音波トランスデューサから超音波エネルギー信号を受信するように構成されたプロセッサ;かつ
ここで、前記制御式送達デバイスは、制御された投与量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを、前記超音波撮像手持式スキャナで撮像されている患者に、前記受信した超音波エネルギー信号に基づいて決定された前記患者を基準にした位置に基づいて、送達するように構成される。
【請求項5】
前記プロセッサに結びつけられ、かつ、超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータにデータを送信するように構成されるインターフェースをさらに含み、前記データが、前記少なくとも一つの超音波トランスデューサから受信した前記超音波エネルギー信号に基づいている、請求項4に記載の医療用又は外科用装置;
ここで、前記超音波撮像処理アプリケーションは、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを含み、且つ、前記超音波撮像手持式スキャナから受信した前記データと、前記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての前記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを、前記医療用又は外科用装置の使用者に提供するように構成される。
【請求項6】
前記処置ガイダンスが以下のうちの少なくとも一つの指標を含む、請求項1~3又は5のいずれかに記載の医療用又は外科用装置:
(i)スキャンされている前記患者を基準にした、前記非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置;及び
(ii)注入する非細胞毒性プロテアーゼの
量。
【請求項7】
請求項2
又は4に記載の医療用又は外科用装置であって、前記超音波撮像処理アプリケーションが、前記超音波撮像手持式
スキャナから受信した前記データに基づいて、前記制御式送達デバイ
スの、前記患者を基準にした位置を決定するように構成され、前記処置ガイダンスが、前記制御式送達デバイ
スから前記非細胞毒性プロテアーゼを適正な処置部位に注入できるような、前記患者を基準にした前記超音波撮像手持式スキャナの配置の仕方についての、前記使用者への指標を含む、医療用又は外科用装置。
【請求項8】
前記超音波撮像処理アプリケーションが、スキャンされている前記患者のグラフィック表現を前記使用者に提供するように、前記超音波撮像手持式
スキャナから受信した前記データを処理するよう構成される、請求項1~3又は5~7のいずれかに記載の医療用又は外科用装置。
【請求項9】
前記超音波撮像手持式スキャナの前記プロセッサが、スキャンされている前記患者のグラフィック表現を示す情報を含んだデータ信号を提供するように、前記少なくとも一つの超音波トランスデューサから受信した前記超音波エネルギー信号を処理するよう構成される、請求項1~7のいずれかに記載の医療用又は外科用装置。
【請求項10】
以下を含む医療用又は外科用キット:
超音波撮像手持式スキャナ;
選択された一定量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを含んだ注入可能なデバイス;及び
コンピュータプログラムであって、コンピュータで実行された時に、そのコンピュータに、超音波撮像処理アプリケーションを実行させる命令を含んだ、コンピュータプログラム;
ここで、前記超音波撮像処理アプリケーションは、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照するように構成され、且つ、前記超音波撮像手持式スキャナから受信し
たデータと、前記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての前記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを、適正な処置部位に適正な量の非細胞毒性プロテアーゼを前記医療用又は外科用装置の使用者が注入できるようにするために、前記使用者に提供するように構成され
る。
【請求項11】
前記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイスをさらに含み、
前記制御式送達デバイスが、制御された投与量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを、前記超音波撮像手持式スキャナで撮像されている患者に、前記受信した超音波エネルギー信号に基づいて決定された前記患者を基準にした位置に基づいて、送達するように構成される、請求項10に記載の医療用又は外科用キット。
【請求項12】
注入デバイスの少なくとも一部分を受けるためのガイドをさらに含み、
前記ガイドが、前記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられ、前記使用者が前記非細胞毒性プロテアーゼを、その注入されている選択した非細胞毒性プロテアーゼにとって適正な前記患者の処置部位に注入できるように、前記超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータが、前記ガイドを、前記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての前記データベースに基づいて決定された前記患者を基準にした位置に、前記使用者が配置できるようにするための情報を、前記使用者に表示するように構成される、請求項10に記載の医療用又は外科用キット。
【請求項13】
コンピュータで実行された時に、そのコンピュータに、以下を行うように構成された超音波撮像処理アプリケーションを実行させる命令を含んだ、コンピュータプログラム:
超音波撮像手持式スキャナから取得したデータを受信及び処理する;
少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照する;及び
前記超音波
撮像手持式スキャナから受信した前記データと、前記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての前記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを、
患者の適正な処置部位に適正な量の非細胞毒性プロテアーゼ
を医療用又は外科用装置の使用者が注入できるようにするために、前記使用者に提供する。
【請求項14】
前記超音波撮像処理アプリケーションが、スキャンされている前記患者のグラフィック表現を前記使用者に提供するように、前記超音波撮像手持式
スキャナから受信した前記データを処理するよう構成される、請求項
13に記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記処置ガイダンスが、スキャンされている前記患者を基準にした、前記非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置の指標を含み、前記指標が、前記超音波撮像手持式スキャナから受信した前記データに基づいた、スキャンされている前記患者のグラフィック表現に重ねられる、請求項
13又は
14に記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記超音波撮像処理アプリケーションが、以下のうちの少なくとも一つの位置を決定するように構成される、請求項
13~15のいずれかに記載のコンピュータプログラム:
(i)前記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイス;及び
(ii)ガイド内に配置され、前記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた注入デバイス;
前記位置は、前記超音波撮像手持式
スキャナから受信した前記データに基づいて、前記患者を基準にした位置であり;かつ
ここで、前記処置ガイダンスは、前記制御式送達デバイス又は前記ガイド内に配置された注入デバイスから、適正な処置部位に、前記非細胞毒性プロテアーゼを注入できるような、前記患者を基準にした前記超音波撮像手持式スキャナの配置の仕方についての、前記使用者への指標を含む。
【請求項17】
以下を含む、制御された投与量の非細胞毒性プロテアーゼを患者に投与する
ための医療用又は外科用装置の作動方法:
超音波撮像手持式スキャナが、スキャンされている患者の解剖学的部位のグラフィック表現を得るために、前記患者の解剖学的部位
をスキャンすること;
前記医療用又は外科用装置のプロセッサが、投与されている前記非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照すること;
前記プロセッサが、以下のうちの少なくとも一つを決定すること;
(i)前記患者の解剖学的部位の前記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての前記データベースへの前記参照とに基づいた、投与されている前記非細胞毒性プロテアーゼを注入するための適正な位置;及び
(ii)前記患者の解剖学的部位の前記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての前記データベースへの前記参照とに基づいた、投与する前記非細胞毒性プロテアーゼの適正な投与量;
前記プロセッサが、前記決定に基づいて、
前記非細胞毒性プロテアーゼを注入するための適正な位置および適正な投与量を示すデータを制御式送達デバイスへ与えること。
【請求項18】
前記処置ガイダンスは、スキャンされている前記患者を基準にした、前記非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置の指標を含み、その指標は、前記超音波撮像手持式スキャナから受信した前記データに基づいた、スキャンされている前記患者のグラフィック表現に重ねられる、請求項6に記載の医療用又は外科用装置。
【請求項19】
前記超音波撮像処理アプリケーションが、前記超音波撮像手持式スキャナから受信した前記データに基づいて、前記ガイド内に配置された注入デバイスの、前記患者を基準にした位置を決定するように構成され、前記処置ガイダンスが、前記ガイド内に配置された注入デバイスから前記非細胞毒性プロテアーゼを適正な処置部位に注入できるような、前記患者を基準にした前記超音波撮像手持式スキャナの配置の仕方についての、前記使用者への指標を含む、請求項3に記載の医療用又は外科用装置。
【請求項20】
前記患者の解剖学的部位の前記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての前記データベースへの前記参照とに基づいた、投与する前記非細胞毒性プロテアーゼの適正な投与量を決定することが、以下のうちの少なくとも一つの、前記患者を基準にした位置を決定することを含む、請求項17に記載の医療用又は外科用装置の作動方法:
(i)前記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイス;及び、
(ii)ガイド内に配置され、前記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた注入デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非細胞毒性プロテアーゼの処置を案内するための方法及び装置に関し、詳細には、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼの注入を案内するための医療用又は外科用装置、コンピュータプログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞毒性タンパク質は、その固有の標的細胞を死なせることによって作用する。この毒素群としては特に、リシンやアブリン等の植物毒素と、ジフテリア毒素やシュードモナス外毒素A等の細菌毒素が、例として挙げられる。細胞毒性の毒素は、典型的にはタンパク質合成の細胞過程を阻害することにより標的細胞を死なせる。この種のタンパク質には、再標的化された細胞毒性タンパク質が含まれる。再標的化された細胞毒性タンパク質では、結合リガンド(標的化部分とも呼ばれる)が導入されることにより、タンパク質の固有の結合能力が改変され、それによってその改変されたタンパク質に、新たな標的細胞結合特性が与えられている。
【0003】
それに対して、非細胞毒性タンパク質は、標的細胞に対して、細胞機能を不能にさせることによって作用する。重要なことは、非細胞毒性毒素は、作用を受ける標的細胞を死なせないということである。非細胞毒性プロテアーゼの最もよく知られている例のいくつかには、クロストリジウム神経毒(例えばボツリヌス神経毒等。販売名はDysport(商標)、Neurobloc(商標)、Botox(商標)等)、IgAプロテアーゼ(例えばWO99/032272を参照)、及びアンタレアーゼ・プロテアーゼ(例えばWO2011/022357を参照)が含まれる。非細胞毒性プロテアーゼは、タンパク質を分解して切断すること、したがってSNAREタンパク質と呼ばれる細胞内輸送タンパク質(例えばSNAP-25、VAMP、又はシンタキシン(Gerald K (2002) "Cell and Molecular Biology” (4th edition) John Wiley & Sons, Inc.を参照))を不活性化することによって作用する。頭字語SNAREは、Soluble NSF Attachment REceptor(可溶性NSF付加タンパク質受容体)という用語に由来し、NSFは、N-ethylmaleimide-Sensitive Factor(N-エチルマレイミド感受性因子)を意味する。SNAREタンパク質は、真核細胞における小胞分泌過程の必須成分である。したがって、非細胞毒性プロテアーゼは、細胞分泌を抑制することによって作用する。この種のタンパク質には、再標的化された非細胞毒性タンパク質が含まれる。再標的化された非細胞毒性タンパク質では、結合リガンド(標的化部分とも呼ばれる)が導入されることにより、タンパク質の固有の結合能力が改変され、それによってその改変されたタンパク質に、新たな標的細胞結合特性が与えられている。本出願人は、1990年代以来、非細胞毒性プロテアーゼの再標的化に関する技術を開拓してきた(例えばWO 94/21300、WO 96/33273及びWO 98/07864を参照)。上記再標的化タンパク質は(文献および科学コミュニティ全体を通じて)標的化分泌阻害剤(TSI、Targeted Secretion Inhibitor)と呼ばれる。TSIについて言及する場合は、WO 2011/018665に記載されているもの等の構造的均等物も含むものとする。
【0004】
非細胞毒性プロテアーゼは、それらの天然又はほぼ天然の形態で(すなわちBOTOX(商標)等のホロトキシンとして)使用され得る。この場合、これらのプロテアーゼを特定の細胞タイプに標的化することは、(i)プロテアーゼの限局的投与、及び/又は(ii)天然プロテアーゼの固有の結合能力、に依存する。或いは、非細胞毒性プロテアーゼは、再標的化された形態で使用され得る。この場合、天然プロテアーゼが、標的化部分(TM、Targeting Moiety)と呼ばれる外来のリガンドを含むように改変される。このTMは、所望の標的細胞に対する結合特異性を提供するように選択される。そして再標的化過程の一部分として、非細胞毒性プロテアーゼの固有の結合部分が削除され得る。再標的化技術には、1990年代初頭まで遡る特許出願があり、EP-B-0689459、EP-B-0939818、US 6,461,617、US 7,192,596、EP-B-0826051、US 5,989,545、US 6,395,513、US 6,962,703、EP-B-0996468、US 7,052,702、EP-B-1107794、及びUS 6,632,440が含まれる。これらは全て、参照により本明細書に援用される。
【0005】
SNAREタンパク質が遍在性を有することから、非細胞毒性プロテアーゼには、多数の治療での使用実績がある。
【0006】
例として、William J. Lipham、Cosmetic and Clinical Applications of Botulinum Toxin (Slack, Inc.、2004)について述べる。この文献には、多種多様な治療/美容用途における、クロストリジウム毒素、例えばボツリヌス神経毒(BoNT)、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F及びBoNT/Gや、破傷風神経毒(TeNT)等の、神経伝達を抑制するための利用が記載されている。一例としてBOTOX(商標)は現在、以下の適応症の治療薬として承認されている。すなわち、アカラシア、成人痙縮、肛門裂傷、背痛、眼瞼痙攣、歯ぎしり、頸部ジストニア、本態性振戦、眉間線又は運動過多による顔面のしわ、頭痛、片側顔面痙攣、膀胱の活動亢進、多汗症、若年性脳性麻痺、多発性硬化症、ミオクローヌス障害、鼻唇溝、痙攣性発声障害、斜視及びVII神経障害、である。さらに、クロストリジウム毒素療法についても記載されており、その療法の対象は以下の通りである。神経筋障害の治療(US 6,872,397を参照)、子宮障害の治療(US2004/0175399を参照)、潰瘍及び胃食道逆流症の治療(US2004/0086531を参照)、ジストニアの治療(US 6,319,505を参照)、眼障害の治療(US2004/0234532を参照)、眼瞼痙攣の治療(US2004/0151740を参照)、斜視の治療(US2004/0126396を参照)、疼痛の治療(US 6,869,610、US 6,641,820、US 6,464,986、US 6,113,915を参照)、線維筋痛症の治療(US 6,623,742、US2004/0062776を参照)、腰痛の治療(US2004/0037852を参照)、筋肉の損傷の治療(US 6,423,319を参照)、副鼻腔頭痛の治療(US 6,838,434を参照)、緊張性頭痛の治療(US 6,776,992を参照)、頭痛の治療(US 6,458,365を参照)、片頭痛の軽減(US 5,714,469を参照)、心血管疾患の治療(US 6,767,544を参照)、パーキンソン病等の神経疾患の治療(US 6,620,415、US 6,306,403を参照)、精神神経障害の治療(US2004/0180061、US2003/0211121を参照)、内分泌障害の治療(US 6,827,931を参照)、甲状腺疾患の治療(US 6,740,321を参照)、コリン作動性汗腺の治療(US 6,683,049を参照)、糖尿病の治療(US 6,337,075, US 6,416,765を参照)、膵臓障害の治療(US 6,261,572、US 6,143,306を参照)、骨腫瘍等の癌の治療(US 6,565,870、US 6,368,605、US 6,139,845、US2005/0031648を参照)、耳の障害の治療(US 6,358,926、US 6,265,379を参照)、消化管筋障害及びその他の平滑筋機能障害等の自律神経障害の治療(US 5,437,291を参照)、皮膚細胞増殖性障害に関連する皮膚病変の治療(US 5,670,484を参照)、神経性炎症性疾患の管理(US 6,063,768を参照)、脱毛の低減及び発毛の刺激(US 6,299,893を参照)、下向きの口の治療(US 6,358,917を参照)、食欲の低減(US2004/40253274を参照)、歯科治療および処置(US2004/0115139を参照)、神経筋障害/疾患の治療(US2002/0010138を参照)、様々な障害/疾患及びそれに関連する疼痛の治療(US2004/0013692を参照)、疼痛の治療(WO96/33274を参照)、喘息やCOPD等の粘液分泌過多に起因する疾患の治療(WO00/10598を参照)、炎症等の非神経疾患、内分泌疾患、外分泌疾患、免疫学的疾患、心血管疾患、骨疾患の治療(WO01/21213を参照)。上記の刊行物は全て、参照により本明細書に援用される。
【0007】
クロストリジウム神経毒等(例えばBoNTやTeNT)の非細胞毒性プロテアーゼの特性を生かせる疾患及び病気の領域は絶えず広がっており、ヒトおよび他の哺乳動物の治療的/美容的処置におけるそれらの毒素の利用は、そういった領域にまで拡大すると予想される。
【0008】
一般に、天然ボツリヌス神経毒の臨床製品を含む非細胞毒性プロテアーゼの治療的投与は、忍容性が良好である。しかしながら、いくつかの用途においては、有益な効果を得るために必要な投与量が忍容できる量を超えることから、投与が困難な場合がある。そういった高投与量では、プロテアーゼが、例えば間質液や身体の循環系(心臓血管系及びリンパ系等)を通って移動してしまう可能性が高くなることがあり、その結果、望ましくないことに、プロテアーゼが治療対象外の部位へと分散してしまう。この分散は、治療対象外の細胞における細胞分泌の抑制等、望ましくない副作用を招く可能性がある(例えば、治療対象外のニューロンにおける神経伝達物質放出の抑制や、治療対象外の筋肉の麻痺)。具体例として、斜頸のために治療的に有効な量のBoNTを首の筋肉に投与された患者が、プロテアーゼが中咽頭に分散したために、嚥下障害を発症する可能性がある。同様に、神経筋障害を治療するために非細胞毒性プロテアーゼを投与された患者が、プロテアーゼが筋肉に分散したために、望ましくない筋組織の不活性化を引き起こす可能性がある。
【0009】
他の原薬(drug substances)と同様に、治療薬投与量範囲が存在しており、それによって安全で効果的な治療の下限と上限が特定される。多くの場合、上限は、薬物治療の望ましくない(例えば潜在的に有害な)副作用を招くオフターゲット効果の、次第に無視できなくなっていく程度によって決まる。非細胞毒性プロテアーゼ(特にBoNT)の場合、この効果が標的外細胞における細胞分泌の麻痺を招く可能性があり、その麻痺は致死的なものとなり得る。
【0010】
非細胞毒性プロテアーゼは、高投与量を必要とする治療で臨床的、治療的及び美容的に使用されることが多くなっており、オフターゲット効果を最小限にする手段の開発が、製薬産業界側にますます求められている。このオフターゲット効果を最小限にする手段によって、治療薬投与量範囲が広がり、したがって患者に提供する投与量を増やすことができ、その結果治療効果が向上する。
【0011】
以上より、対象部位以外を標的にしてしまう望ましくない効果に対処する必要が当技術分野にはある。本開示の実施形態は、上述の問題に対処することができる。
【発明の概要】
【0012】
本発明の態様は、独立請求項に記載されているとおりであり、任意選択の特徴は、従属請求項に記載されている。本発明の態様は互いに併用して提供されてもよく、一態様の特徴が他の態様に適用されてもよい。
【0013】
第一の態様では、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼの注入を案内するための医療用又は外科用装置が提供され、上記医療用又は外科用装置は、
超音波撮像手持式スキャナと、
コンピュータプログラムであって、コンピュータで実行された時に、そのコンピュータに超音波撮像処理アプリケーションを実行させる命令を含んだ、コンピュータプログラムと、を含み、
上記超音波撮像手持式スキャナが、
超音波エネルギーを送受信するための少なくとも一つの超音波トランスデューサと、
上記少なくとも一つの超音波トランスデューサに結びつけられたプロセッサであって、上記少なくとも一つの超音波トランスデューサから超音波エネルギー信号を受信するように構成されたプロセッサと、
上記プロセッサに結びつけられたインターフェースであって、上記超音波撮像処理アプリケーションを実行している上記コンピュータにデータを送信するように構成され、上記データが、上記少なくとも一つの超音波トランスデューサから受信した上記超音波エネルギー信号に基づいている、インターフェースと、を含み、
上記超音波撮像処理アプリケーションが、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照するように構成され、且つ、上記超音波撮像手持式スキャナから受信した上記データと、上記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを、上記医療用又は外科用装置の使用者に提供するように構成される。
【0014】
上記処置部位は、任意の解剖学的部位及び/又は任意の組織タイプに相当し得る。例えば、上記処置部位は、筋肉、臓器(膀胱等)、神経(神経ブロックの目的)のうちの少なくとも一つにおける処置部位であってよく、或いは、処置が経皮的であってもよい(例えば美容用途)。
【0015】
上記医療用又は外科用装置は、上記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイスを含むことができ、上記制御式送達デバイスは、少なくとも一回分の制御された投与量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを、上記超音波撮像手持式スキャナで撮像中の(撮像されている)患者に、上記受信した超音波エネルギー信号に基づいて決定された上記患者を基準にした位置に基づいて、送達するように構成される。
【0016】
追加または代替として、上記医療用又は外科用装置は、針等の注入デバイスの少なくとも一部分を受けるためのガイドを含むことができ、上記ガイドは、上記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられ、上記使用者が上記非細胞毒性プロテアーゼを、その注入されている選択した非細胞毒性プロテアーゼにとって適正な上記患者の処置部位に注入できるように、上記超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータが、上記ガイドを、上記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースに基づいて決定された上記患者を基準にした位置に、上記使用者が配置できるようにするための情報を、上記使用者に表示するように構成される。
【0017】
実施例によっては、超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータや、別個のコンピュータ(例えば、スマートフォン等の手持式デバイス)等のコンピュータが、患者の投与計画を計算し、決定するように構成され得る。上記別個のコンピュータは、それとは別のコンピュータで動作している超音波撮像処理アプリケーションと通信してもよく、しなくてもよい。例えば、上記コンピュータは、投与アプリケーションを含むことができ、上記投与アプリケーションは、使用者からの一連の入力を受け取り、それに応答して、患者への治療薬の送達を支援するために、処置部位及び投与計画に関する情報を使用者に表示するように構成される。
【0018】
例えば、上記投与アプリケーションは、患者に関する情報(例えば年齢、体重、解剖学的部位及び/又は部分(筋肉の種別等))を受け取り、患者に推奨の処置計画及び/又は投与量範囲を決定するように構成され得る。上記推奨投与量範囲は、例えば、上記患者に関する情報に基づいて決定され得る。上記推奨投与量範囲は、患者の決定された総投与量に基づいて、解剖学的部位及び/又は部分(筋肉の種別等)ごとに計算され得る。上記投与アプリケーションは、推奨投与量範囲外の投与量が選択された場合、警告指標を使用者に提供し得る。
【0019】
上記投与アプリケーションはまた、注入用サンプルの調製を支援するように構成され得る。例えば、上記投与アプリケーションは、治療薬のタイプ及び濃度に関する入力を受け取り、特定の処置部位に対して決定又は選択された投与量に基づいて、注入に必要な治療薬の容量を計算するように構成でき、この容量はその後、使用者に表示される。注入に必要な治療薬の容量の計算は、処置部位で求められている治療薬を送達するために必要な、特定の治療薬のバイアル数を計算することを含み得る。
【0020】
他の態様では、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼの注入を案内するための医療用又は外科用装置が提供され、上記医療用又は外科用装置は、
超音波撮像手持式スキャナと、
上記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイスと、を含み、
上記超音波撮像手持式スキャナが、
超音波エネルギーを送受信するための少なくとも一つの超音波トランスデューサと、
上記少なくとも一つの超音波トランスデューサに結びつけられたプロセッサであって、上記少なくとも一つの超音波トランスデューサから超音波エネルギー信号を受信するように構成されたプロセッサと、を含み、
上記制御式送達デバイスが、制御された投与量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを、上記超音波撮像手持式スキャナで撮像中の患者に、上記受信した超音波エネルギー信号に基づいて決定された上記患者を基準にした位置に基づいて、送達するように構成される。
【0021】
上記医療用又は外科用装置はさらに、上記プロセッサに結びつけられたインターフェースを含むことができ、上記インターフェースは、超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータにデータを送信するように構成され、上記データは、上記少なくとも一つの超音波トランスデューサから受信した上記超音波エネルギー信号に基づいている。上記超音波撮像処理アプリケーションは、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを含むことができ、且つ、上記超音波撮像手持式スキャナから受信した上記データと、上記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを、上記医療用又は外科用装置の使用者に提供するように構成され得る。
【0022】
上記処置ガイダンスは、以下の少なくとも一つの指標を含み得る:
(i)スキャン中の(スキャンされている)上記患者を基準にした、上記非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置;及び
(ii)注入する非細胞毒性プロテアーゼの量。
【0023】
上記処置ガイダンスは、追加または代替として、選択した解剖学的部位(例えば、筋肉の種別等の組織タイプ)に対する推奨投与量範囲と、患者の推奨総投与量と、必要な治療薬の濃度及び容量等の、注入のための治療薬の調製の仕方に関するガイダンスと、治療薬の送達に必要なバイアル又はシリンジの本数、のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0024】
上記処置ガイダンスは、スキャン中の上記患者を基準にした、上記非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置の指標を含むことができ、その指標が、上記超音波撮像手持式スキャナから受信した上記データに基づいた、スキャン中の上記患者のグラフィック表現に重ねられ得る。
【0025】
上記超音波撮像処理アプリケーションは、上記超音波撮像手持式デバイスから受信した上記データに基づいて、上記超音波撮像手持式デバイスに結びつけられた制御式送達デバイス、又は上記超音波撮像手持式デバイスに結びつけられたガイド内に配置された注入デバイスの、上記患者を基準にした位置を決定するように構成され得る。上記処置ガイダンスは、上記制御式送達デバイス又は上記ガイド内に配置された注入デバイスから上記非細胞毒性プロテアーゼを適正な処置部位に注入できるような、上記患者を基準にした上記超音波撮像手持式スキャナの配置の仕方についての、上記使用者への指標を含み得る。
【0026】
上記超音波撮像処理アプリケーションは、スキャン中の上記患者のグラフィック表現を上記使用者に提供するように、上記超音波撮像手持式デバイスから受信した上記データを処理するよう構成され得る。
【0027】
上記超音波撮像手持式スキャナの上記プロセッサは、スキャン中の上記患者のグラフィック表現を示す情報を含んだデータ信号を提供するように、上記少なくとも一つの超音波トランスデューサから受信した上記超音波エネルギー信号を処理するよう構成され得る。
【0028】
他の態様では、医療用又は外科用キットが提供され、上記医療用又は外科用キットは、
超音波撮像手持式スキャナと、
選択された一定量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを含んだ注入可能なデバイスと、
コンピュータプログラムであって、コンピュータで実行された時に、そのコンピュータに、超音波撮像処理アプリケーションを実行させる命令を含んだ、コンピュータプログラムと、を含み、
上記超音波撮像処理アプリケーションが、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照するように構成され、且つ、上記超音波撮像手持式スキャナから受信した上記データと、上記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを、適正な処置部位に適正な量の非細胞毒性プロテアーゼを上記医療用又は外科用装置の使用者が注入できるようにするために、上記使用者に提供するように構成される。
【0029】
上記キットはさらに、上記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイスを含むことができ、上記制御式送達デバイスは、制御された投与量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを、上記超音波撮像手持式スキャナで撮像中の患者に、上記受信した超音波エネルギー信号に基づいて決定された上記患者を基準にした位置に基づいて、送達するように構成される。
【0030】
追加または代替として、上記キットはさらに、針等の注入デバイスの少なくとも一部分を受けるためのガイドを含むことができ、上記ガイドは、上記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられる。上記使用者が上記非細胞毒性プロテアーゼを、その注入されている選択した非細胞毒性プロテアーゼにとって適正な上記患者の処置部位に注入できるように、上記超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータが、上記ガイドを、上記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースに基づいて決定された上記患者を基準にした位置に、上記使用者が配置できるようにするための情報を、上記使用者に表示するように構成され得る。
【0031】
他の態様では、コンピュータで実行された時に、そのコンピュータに超音波撮像処理アプリケーションを実行させる命令を含んだ、コンピュータプログラムが提供され、上記超音波撮像処理アプリケーションは、以下を行うように構成される:
超音波撮像手持式スキャナから取得したデータを受信及び処理し;
少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照し;かつ
上記超音波トランスデューサから受信した上記データと、上記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを、適正な処置部位に適正な量の非細胞毒性プロテアーゼを上記医療用又は外科用装置の使用者が注入できるようにするために、上記使用者に提供する。
【0032】
上記超音波撮像処理アプリケーションは、スキャン中の上記患者のグラフィック表現を上記使用者に提供するように、上記超音波撮像手持式デバイスから受信した上記データを処理するよう構成され得る。
【0033】
上記処置ガイダンスは、スキャン中の上記患者を基準にした、上記非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置の指標を含み得る。上記指標は、上記超音波撮像手持式スキャナから受信した上記データに基づいた、スキャン中の上記患者のグラフィック表現に重ねられ得る。
【0034】
上記超音波撮像処理アプリケーションは、(i)上記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイス、及び、(ii)ガイド内に配置され、上記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた注入デバイス、のうちの少なくとも一つの、上記患者を基準にした位置を、上記超音波撮像手持式デバイスから受信した上記データに基づいて決定するように構成され得る。上記処置ガイダンスは、上記制御式送達デバイス又は上記ガイド内に配置された注入デバイスから非細胞毒性プロテアーゼを適正な処置部位に注入できるような、上記患者を基準にした上記超音波撮像手持式スキャナの配置の仕方についての、上記使用者への指標を含み得る。
【0035】
他の態様では、制御された投与量の非細胞毒性プロテアーゼを患者に投与する方法が提供され、上記方法は以下を含む:
スキャン中の患者の解剖学的部位のグラフィック表現を得るために、上記患者の解剖学的部位を超音波撮像手持式スキャナでスキャンすること;
投与されている上記非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照すること;
以下のうち、少なくとも一つを決定すること;
(i)上記患者の解剖学的部位の上記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての上記データベースへの上記参照とに基づいた、投与されている上記非細胞毒性プロテアーゼを注入するための適正な位置、及び;
(ii)上記患者の解剖学的部位の上記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての上記データベースへの上記参照とに基づいた、投与する上記非細胞毒性プロテアーゼの適正な投与量;
上記決定に基づいて、制御された投与量の上記非細胞毒性プロテアーゼを適正な位置に投与すること。
【0036】
上記患者の解剖学的部位の上記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての上記データベースへの上記参照とに基づいた、投与する上記非細胞毒性プロテアーゼの適正な投与量を決定することは、(i)上記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイス、及び、(ii)ガイド内に配置され、上記超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた注入デバイス、のうちの少なくとも一つの、上記患者を基準にした位置を決定することを含み得る。
【0037】
次に、本開示の実施形態について添付の図面を参照して説明するが、これは単なる例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】非細胞毒性プロテアーゼの注入を案内するための医療用又は外科用装置の例である。
【
図2】非細胞毒性プロテアーゼの注入を案内するための医療用又は外科用装置の他の例である。
【
図3】非細胞毒性プロテアーゼの注入を案内するための医療用又は外科用装置の他の例である。
【
図4】一回分の投与量の非細胞毒性プロテアーゼを患者に投与する際に使用するフローチャートの例である。
【
図5】非細胞毒性プロテアーゼの注入を案内するための医療用又は外科用装置の他の例である。
【
図6】
図1~3及び
図5のいずれかの医療用又は外科用装置と共に使用するためのコンピュータプログラムの例の二つのスクリーンショットである。
【
図7】
図1~3及び
図5のいずれかの医療用又は外科用装置と共に使用するための、
図6のコンピュータプログラムの例の他の二つのスクリーンショットである。
【
図8】
図1~3及び
図5のいずれかの医療用又は外科用装置と共に使用するための、
図6及び7のコンピュータプログラムの例の他のスクリーンショットである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼの、注射等の処置を案内するための医療用又は外科用装置の例を示している。上記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼは、医療組成物の一部分として、例えば少なくとも一つのポリペプチドの一部分として供給され得る。実施例によっては、この医療組成物(ポリペプチド等)は以下を含む:
(i)細胞内のSNAREタンパク質を切断する能力を有する少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ(非細胞毒性プロテアーゼには例えば、BoNTやTeNT等のクロストリジウム神経毒があり得る);
(ii)細胞上の結合部位に結合する能力を有する少なくとも一つの標的化部分(TM)、ここで、この結合部位はエンドサイトーシスを受けてSNAREタンパク質を発現する細胞の内部のエンドソームに取り込まれることが可能である;及び
(iii)プロテアーゼを、エンドソーム内部からエンドソーム膜を通過させて細胞のサイトゾル内に移行させる能力を有する少なくとも一つの移行ドメイン。
【0040】
図1に、超音波撮像手持式スキャナ100が示されている。超音波撮像手持式スキャナ100は、超音波トランスデューサ106、プロセッサ108及びインターフェース110を含む。インターフェース110は、例えば有線インターフェース、又はBluetooth(登録商標)インターフェース等の無線インターフェースである。超音波撮像手持式スキャナ100は、超音波ワンドとも呼ばれ得る。プロセッサ108は、超音波トランスデューサ106とインターフェース106とに結びつけられる。超音波トランスデューサ106は
図1には一つのみ示されているが、他の実施例では、複数の超音波トランスデューサ106、例えば超音波トランスデューサ106のアレイが存在し得ることが理解されよう。
【0041】
図1にはまた、超音波撮像処理アプリケーションを動作させるコンピュータ200も示されている。上記医療用又は外科用装置はコンピュータプログラムを含むことができ、そのコンピュータプログラムは、コンピュータで実行された時に、そのコンピュータに上記超音波撮像処理アプリケーションを実行させる命令を含むことが理解されよう。コンピュータ200は、例えば有線インターフェース、又はBluetooth(登録商標)インターフェース等の無線インターフェースである、インターフェース210を含む。実施例によっては、コンピュータ200はデスクトップコンピュータでもラップトップコンピュータでもよく、或いは他の実施例では、携帯型電子デバイス、例えば、タブレットや携帯電話等の手持式デバイスでもよいことが理解されよう。
【0042】
使用時には、超音波トランスデューサ106は、例えば、患者の一部位のソノグラム等のグラフィック表現を作成するために、超音波スキャンの目的で超音波エネルギーを送受信するように動作可能である。プロセッサ108は、超音波トランスデューサ106から信号を受信するように構成される。
【0043】
実施例によっては、プロセッサ108は、スキャン中の患者のグラフィック表現を示す情報を含んだデータ信号を提供するように、少なくとも一つの超音波トランスデューサから受信した超音波エネルギー信号を処理するよう構成される。ただし、他の実施例では、最小限の処理(有れば)をプロセッサ108は実行する。インターフェース110は、少なくとも一つの超音波トランスデューサ106から受信した超音波エネルギー信号に基づいたデータを、プロセッサ108から受信し、コンピュータに送信するように構成される。
【0044】
コンピュータ200のインターフェース210は、超音波撮像手持式スキャナ100からのデータを含んだ信号を受信するように構成される。コンピュータ200上で動作している超音波撮像処理アプリケーションは、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照するように構成され、且つ、超音波撮像手持式スキャナから受信した上記データと、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを、医療用又は外科用装置の使用者に提供するように構成される。上記データベースは、ローカルデータベースであってもよく(例えば、コンピュータ200に格納されているデータベース)、リモートデータベースであってもよい(例えば、インターネット等を介してアクセスするクラウドベースのデータベース)。
【0045】
上記処置ガイダンスは、以下の少なくとも一つの指標を含み得る:
(i)スキャン中の患者を基準にした、各非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置;及び
(ii)注入する各非細胞毒性プロテアーゼの量。
【0046】
実施例によっては、超音波撮像処理アプリケーションは、スキャン中の患者のグラフィック表現を、例えばソノグラムの形で使用者に提供するように、超音波撮像手持式デバイス100から受信したデータを処理するよう構成される。かかる実施例では、上記処置ガイダンスは、スキャン中の患者を基準にした、非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置の指標を含むことができ、この指標が、超音波撮像手持式スキャナから受信したデータに基づいたスキャン中の患者の上記グラフィック表現に重ねられ得る。例えば、上記処置ガイダンスは、効力を高め且つオフターゲット効果を最小限にするために非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置を、ソノグラム上に示し得る。
【0047】
実施例によっては、スキャン中の患者のグラフィック表現を使用者に提供するように、超音波撮像手持式デバイス100から受信したデータを処理することは、スキャン中の患者のグラフィック表現に対して画像認識を実行することを含み得る。例えば、超音波撮像処理アプリケーションは、画像認識を実行するためのアルゴリズムを含み得る。例えば、超音波撮像処理アプリケーションは、どの解剖学的部位及び/又は部分がスキャンされているかを検出し、この情報を、処置ガイダンスを決定するためにデータベースを参照する際に使用するように構成され得る。
【0048】
実施例によっては、上記撮像処理アプリケーションは、追加または代替として、例えば患者の体重、年齢、症状、撮像中の解剖学的部位及び/又は部分等に関する、患者固有の詳細を使用者が入力できるようにするためのインターフェースを含み得る。この入力は、例えば画像認識処理を支援するため、且つ/又は、例えば
図6~8を参照して以下で説明するように、処置ガイダンスを決定するためのデータベースへの参照の実行に使用するために行う。
【0049】
実施例によっては、上記撮像処理アプリケーションは、患者固有のデータを患者から受け取り、その受け取った患者固有のデータに基づいて(例えば、処置部位及び投与計画についてのデータベースに加えて)処置部位及び/又は処置投与量を決定するように構成され得る。この処置投与量とは、特定の処置部位に対する投与量、及び/又は一人の患者に対する総投与量のことであり得る。処置投与量はまた、好ましい又は推奨の投与量範囲を含み得る。処置投与量は、特定の非細胞毒性プロテアーゼに特化されていてもよく、或いは、非細胞毒性プロテアーゼのタイプに関係なく決定された投与量であってもよい(すなわち、全ての非細胞毒性プロテアーゼの投与量)。かかる実施例は、特定の患者ごとに治療を調整できる「個別化医療」を提供し得る。上記患者固有のデータは、患者の年齢、患者の体重、患者の症状、治療対象の組織タイプ、使用中の非細胞毒性プロテアーゼ、障害の程度、及び外傷/障害発生からの時間、のうちの少なくとも一つを含み得る。例えば、痙縮の程度等の患者の障害の程度が、処置投与量及び/又は処置部位の決定に使用され得る。例えば、障害の程度を決定するために、その症状の重症度に基づいたスコアを患者に付与してもよく、そのスコアが、処置投与量及び/又は処置部位の決定に使用され得る。追加または代替として、脳卒中等の障害発生からの時間が、処置投与量及び/又は処置部位の決定に使用され得る。例えば、処置投与量は、障害発生から増加していく時間に応じて減少し得ることが想定され得る。
【0050】
実施例によっては、上記医療用又は外科用装置は、選択された一定量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを含んだ注入可能なデバイスを含み得る。例えば、上記医療用又は外科用装置は、超音波撮像手持式スキャナと、コンピュータプログラムであって、コンピュータで実行された時に、そのコンピュータに上記超音波撮像処理アプリケーションを実行させる命令を含んだ、コンピュータプログラムと、選択された一定量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを含んだ注入可能なデバイスと、を含んだキットの一部分として提供され得る。上記注入可能なデバイスは、シリンジであってもよく、或いは、選択された一定量の非細胞毒性プロテアーゼを保持するためのバイアル又は他の保管媒体であってもよい。選択された一定量は、選択された容量及び選択された濃度のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0051】
図2に示されている例等、実施例によっては、超音波撮像手持式スキャナ100は、その超音波撮像手持式スキャナ100に結びつけられた制御式送達デバイス150を含み得る。制御式送達デバイス150は、制御された投与量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを、超音波撮像手持式スキャナ100で撮像中の患者に、例えばその患者を基準にした位置に基づいて、送達するように構成され得る。上記患者を基準にした位置は、超音波撮像手持式スキャナ100から受信した超音波エネルギー信号に基づいて決定され得る。超音波撮像処理アプリケーションは、選択された一定量の非細胞毒性プロテアーゼを患者に投与(例えば注射)するように、制御式送達デバイス150を動作させるように構成され得る。超音波撮像処理アプリケーションは、適正な処置投与量及び処置部位の決定に基づいて、制御式送達デバイス150を動作させるように構成され得る。この決定は、制御式送達デバイス150に入っている選択した非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースへの参照に基づいて行われる。
【0052】
実施例によっては、超音波撮像処理アプリケーションは、超音波撮像手持式デバイス100から受信したデータに基づいて、患者を基準にした制御式送達デバイス150の位置を決定するように構成される。上記処置ガイダンスは、制御式送達デバイス150から非細胞毒性プロテアーゼを適正な処置部位に注入できるような、患者を基準にした超音波撮像手持式スキャナ100の配置の仕方についての、使用者への指標を含み得る。
【0053】
例えば、制御式送達デバイス150は、超音波撮像手持式スキャナ100のハウジング/ケーシングの外側表面に取り付けられ得る。超音波トランスデューサ106及び/又は超音波撮像手持式スキャナ100を基準にした制御式送達デバイス150の位置は分かっていてもよい。例えば、超音波撮像処理アプリケーションは、制御式送達デバイス150の位置が分かるような、超音波トランスデューサを基準にした制御式送達デバイス150の位置情報を用いてプログラムされ得る。例えば、超音波撮像手持式スキャナ100で撮像中の患者の解剖学的構造のグラフィック表現上に、制御式送達デバイス150の位置が示され得る。
【0054】
図3及び
図5に示されている例等、実施例によっては、超音波撮像手持式スキャナ100は、シリンジ等の注入デバイス170の少なくとも一部分を受けるためのガイド160を含み得る。ガイド160は、超音波撮像手持式スキャナ100に結びつけられ得る。上記使用者が上記非細胞毒性プロテアーゼを、上記注入デバイス170から注入されているその選択した非細胞毒性プロテアーゼにとって適正な上記患者の処置部位に注入できるように、上記超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータが、上記ガイドを、上記少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースに基づいて決定された上記患者を基準にした位置に、上記使用者が配置できるようにするための情報を、上記使用者に表示するように構成され得る。
【0055】
例えば、ガイド160は、超音波撮像手持式スキャナ100のハウジング/ケーシングの外側表面に取り付けられ得る。ガイド160は、針等の注入デバイスの少なくとも一部分を受けるためのスロット又は他の手段を含み得る。超音波トランスデューサ106及び/又は超音波撮像手持式スキャナ100を基準にしたガイド160の位置は分かっていてもよい。例えば、超音波撮像処理アプリケーションは、ガイド160に挿入された針等の注入可能なデバイスの位置が分かるような、超音波トランスデューサを基準にしたガイド160の位置情報を用いてプログラムされ得る。例えば、ガイド160に配置された針の位置は、超音波撮像手持式スキャナ100で撮像中の患者の解剖学的構造のグラフィック表現上に示され得る。
【0056】
実施例によっては、超音波撮像処理アプリケーションは、超音波撮像手持式スキャナ100から受信したデータに基づいて、ガイド160内に配置された注入デバイス170の患者を基準にした位置を決定するように構成される。かかる実施例では、上記処置ガイダンスは、ガイド160内に配置された注入デバイス170から非細胞毒性プロテアーゼを適正な処置部位に注入できるような、患者を基準にした超音波撮像手持式スキャナ100の配置の仕方についての、使用者への指標を含み得る。
【0057】
図5に示されている例等、実施例によっては、ガイド160は、注入デバイス170を少なくとも部分的に超音波トランスデューサ106の視野内に方向付けるように構成される。例えば、ガイド160は、シリンジ等の注入デバイス170がガイド160内に挿入されたときに、少なくとも部分的に超音波トランスデューサ106の視野内に入るように構成される。例えば、
図5に示されているが、シリンジ170の針510が超音波トランスデューサ106の視野520内に入っていることを確認することができる。この例では、コンピュータ200上で動作している超音波撮像処理アプリケーションは、超音波トランスデューサ106から取得したソノグラムを表示する。針510は、少なくとも部分的に超音波トランスデューサ106の視野内に延びているので、その針510をソノグラムで確認することができる。このようにして、超音波撮像手持式スキャナ100の使用者は、処置部位をスキャンして識別し、シリンジ170/針510をガイド160内に差し込み、上記部位を再度確認し、針510を先に進め、その針510を視野520内に視認できることを確認し、非細胞毒性プロテアーゼを適正な処置部位に注入し、シリンジ170を引き抜き、上記部位を再度確認することができる。
【0058】
図4は、例えば
図1~3を参照して上記で説明した装置及び/又は超音波撮像処理アプリケーションを使用して、制御された投与量の非細胞毒性プロテアーゼを患者に投与する方法のフローチャートを示している。
【0059】
この方法は、以下のステップを含む:
スキャンステップ410であって、スキャン中の患者の解剖学的部位のグラフィック表現を取得するために、その患者の解剖学的部位を超音波撮像手持式スキャナでスキャンするステップ;
参照ステップ420であって、投与されている非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照するステップ;
以下のうちの少なくとも一つを決定するステップ430;
(i)上記患者の解剖学的部位の上記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての上記データベースへの上記参照とに基づいた、投与されている非細胞毒性プロテアーゼを注入するための適正な位置;及び、
(ii)上記患者の解剖学的部位の上記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての上記データベースへの上記参照とに基づいた、投与する非細胞毒性プロテアーゼの適正な投与量;
投与ステップ440であって、上記決定に基づいて、制御された投与量の非細胞毒性プロテアーゼを適正な位置に投与するステップ。
【0060】
図1に関して上記で説明したように、上記データベースは、ローカルデータベースであってもよく(例えば、コンピュータ200に格納されているデータベース)、リモートデータベースであってもよい(例えば、インターネット等を介してアクセスするクラウドベースのデータベース)。
【0061】
実施例によっては、上記患者の解剖学的部位の上記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての上記データベースへの上記参照とに基づいた、投与する非細胞毒性プロテアーゼの適正な投与量を決定するステップ430は、(i)超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた制御式送達デバイス(
図2に関して上記で説明した制御式送達デバイス150等)、及び、(ii)ガイド内に配置され、超音波撮像手持式スキャナに結びつけられた注入デバイス(
図3に関して上記で説明した注入デバイス170及びガイド160等)、のうちの少なくとも一つの、患者を基準にした位置を決定することを含む。
【0062】
制御された投与量の非細胞毒性プロテアーゼを投与するステップ440は、制御された投与量の非細胞毒性プロテアーゼを患者に注入することを含み得る。これは、例えば、
図3に示されているようにガイド160を設けることによって支援されてもよく、或いは、
図2に示されているように、制御式送達デバイス150を使用することによって、例えば超音波撮像処理アプリケーションによって自動的/電子的に実行されてもよい。
【0063】
実施例によっては、超音波撮像手持式スキャナ100のインターフェース110は、任意選択であることが理解されよう。例えば、超音波撮像手持式スキャナ100のプロセッサ108が、超音波撮像処理アプリケーションを実行するように構成され得る。さらに、プロセッサ108は、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての参照データベースを含んだメモリに結びつけられ得る。
【0064】
実施例によっては、超音波撮像手持式スキャナ100のプロセッサ108は、
図2及び3に関して上記で説明した例と同様に超音波撮像処理アプリケーションを実行するように構成されてもよく、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのリモートデータベースにアクセスして参照するために、インターフェース110を使用するように構成されてもよい。
【0065】
実施例によっては、超音波撮像手持式スキャナ100は、使用者に処置ガイダンスを表示するためのディスプレイ又は他の表示手段を含み得る。例えば、超音波撮像手持式スキャナ100は、非細胞毒性プロテアーゼの、注射等の処置を案内するための、スキャナ100を保持する方向及び/又はスキャナ100を動かす方向の指標等の情報を表示するように動作可能な、LED等の一つ又は複数のライトを含み得る。
【0066】
実施例によっては、超音波撮像手持式スキャナ100は、例えば撮像中の解剖学的部位及び/又は部分のグラフィック表現を提供するように動作可能な、LEDディスプレイ等のディスプレイを含み得る。例えば、超音波撮像手持式スキャナ100のプロセッサ108が、スキャン中の患者のグラフィック表現を内蔵ディスプレイ上に例えばソノグラムの形で使用者に提供するように、超音波撮像手持式デバイス100から受信したデータを処理するよう構成され得る。かかる実施例では、使用者は有利なことに、追加の計算装置を必要とせずに、一回分の投与量非細胞毒性プロテアーゼで患者をより効果的に治療でき得ることが理解されよう。かかる実施例では、上記処置ガイダンスは、スキャン中の患者を基準にした、非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置の指標を含むことができ、この指標は、超音波撮像手持式スキャナから受信したデータに基づいたスキャン中の患者のグラフィック表現に重ねられ得る。例えば、上記処置ガイダンスは、効力を高め且つオフターゲット効果を最小限にするために非細胞毒性プロテアーゼを注入すべき位置を、ソノグラム上に示し得る。
【0067】
かかる実施例により、超音波撮像手持式スキャナ100の非熟練の使用者が正確且つ安全に自己投与治療することが可能になり、したがって熟練を要する臨床的介入の必要性がなくなり得る(例えば、熟練の放射線技師の必要性がなくなる)。
【0068】
上記医療用又は外科用装置が、選択された一定量の少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを含んだ注入可能なデバイス(
図2及び
図3を参照して上記で説明した制御式送達デバイス150又は注入デバイス170等)を含み、且つ、超音波撮像手持式スキャナ100のプロセッサ108が、超音波撮像処理アプリケーションを実行するように構成される実施例では、上記医療用又は外科用装置は、超音波撮像手持式スキャナ100と非細胞毒性プロテアーゼを収容した注入可能なデバイスとを含んだ、密封された滅菌容器等に入ったキットとして供給され得る。このことは、衛生上の理由だけでなく、非細胞毒性プロテアーゼの投与の制御がより優れたものになり得ることを意味できることから、有利になり得る。というのは、上記アプリケーションが投与量を慎重に制御できるようにプログラム済みのデバイスによって、制御された投与量/分量の非細胞毒性プロテアーゼを供給できるからであり得る(例えばプロセッサ108がプログラムされてもよく、或いは、プロセッサ108に結びつけられたメモリがプログラムされてもよい)。上記デバイスのプログラムは、そのデバイスによって供給される非細胞毒性プロテアーゼの(i)濃度及び(ii)容量のうちの少なくとも一つに関する情報を用いて、投与量を慎重に制御できるように行われており、その制御は例えば、
図2に関して上記で説明した制御式送達デバイス150等の制御式送達デバイスの動作を制御することによって行われる。
【0069】
実施例によっては、上記医療用又は外科用装置は、各種血清型の非細胞毒性プロテアーゼ等の複数の非細胞毒性プロテアーゼ、例えばBoNT及び/又はTeNT等の各種血清型のクロストリジウム神経毒を送達するように構成され得る。これは、例えば、宿主の免疫原性を抑制するために有益であり得る。
【0070】
実施例によっては、上記医療用又は外科用装置は、各種医療組成物を送達するように構成でき、各医療組成物は、各種ポリペプチドを含み得る。各医療組成物(例えばポリペプチド)は、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼを含み得る(実施例によっては、組成物間で非細胞毒性プロテアーゼは同じものであってもよく、諸組成物が一つまたは複数の異なる非細胞毒性プロテアーゼを含んでいてもよい)。各組成物、例えば各ポリペプチドは、各種標的化部分及び/又は各種移行ドメインを含み得る。実施例によっては、様々に異なる医療組成物、例えば様々に異なるポリペプチドが、同一の標的細胞上の異なる受容体に結合する異なるTSIを含み得る。
【0071】
実施例によっては、上記医療用又は外科用装置は、複数の投与量を送達するように構成され得る。例えば、超音波撮像処理アプリケーションが、
図2の制御式送達デバイス150を制御する等によって、複数の投与量を送達するように構成され得る。この複数の投与量は、同一タイプの非細胞毒性プロテアーゼのものであってよく、或いは、例えば宿主の免疫原性を抑制するために、異なる血清型のものであってもよい。
【0072】
例えば、超音波撮像処理アプリケーションは、使用者が所望の治療の詳細(非細胞毒性プロテアーゼの血清型等)及び/又は患者に関する詳細(年齢、体重、臨床症状等)を入力するのを可能にするユーザーインターフェースを含むことができ、上記アプリケーションは、その患者の処置計画を決定するために、処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照するように構成され得る。
【0073】
実施例によっては、超音波撮像処理アプリケーションはまた、患者に投与する血清型(随意によりこれらの血清型それぞれの分量、並びに場合によっては、これらの血清型を注入すべき位置)を決定するように構成され得る。血清型に関する情報と、各血清型に対する処置の計画、投与量及び部位のうちの少なくとも一つとが、処置ガイダンスの一部分として提供され得る。
【0074】
したがって、実施例によっては、超音波撮像処理アプリケーションは、以下のうちの少なくとも一つの指標を含む処置ガイダンスを提供するように構成され得る:
(i)スキャン中の患者を基準にした、複数の非細胞毒性プロテアーゼのそれぞれを注入すべき位置;
(ii)選択した処置部位に注入する非細胞毒性プロテアーゼの特定の血清型;及び
(iii)選択した処置部位に注入する各非細胞毒性プロテアーゼの量。
【0075】
実施例によっては、注入可能なデバイスの位置を決定するために、超音波撮像手持式スキャナ100及び/又は超音波撮像アプリケーションが較正され得る。この注入可能なデバイスは例えば、制御式送達デバイス150(
図2に関して上記で説明したもの)、又はガイド160内に挿入された注入可能なデバイス170(
図3に関して上記で説明したもの)である。較正は、第1の位置で参照スキャンを行うことと、その第1の位置で、患者の皮膚上の注入可能なデバイス/制御式送達デバイスの位置に目印を付けることを含み得る。次に、超音波トランスデューサ106を、患者の皮膚上の第1の位置に配置して、第2のスキャンを行い得る。その結果、第1の位置及び第2の位置で取得した超音波データを比較することによって、超音波トランスデューサ106と注入可能なデバイスの間の距離を決定することができる。
【0076】
図6~8は、投与アプリケーションを提供するように動作するコンピュータプログラムのスクリーンショットの例を示している。この示した例では、このコンピュータプログラムは、手持式デバイス(この場合はスマートフォン)上で動作しているが、他のタイプのデバイス、例えば、上記で説明した超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータ上、及び/又はその超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータと通信するデバイス上で動作していてもよいことが理解されよう。
【0077】
図6は、投与アプリケーションを提供するように動作するコンピュータプログラムの二つの同様のスクリーンショットを示している。投与アプリケーションは、使用者に、筋肉の種別とその筋肉の種別の投与量を選択させる。投与アプリケーションは、筋肉の種別ごとに、患者の推奨投与量範囲を示す。推奨範囲外の投与量を選択した場合、使用者に警告が提示され得る。この推奨投与量範囲は、患者の年齢や体重等、患者に関する情報に基づいて計算され得る。投与アプリケーションはまた、筋肉の種別ごとに選択した投与量、及びその患者に対して承認された総投与量に基づいて、患者に投与され得る総投与量を決定する。総投与量が承認総投与量を超えている場合、使用者に警告が提示され得る。承認総投与量もやはり、患者の年齢や体重等、患者に関する情報に基づいて計算され得る。
【0078】
図7は、投与アプリケーションを提供するように動作するコンピュータプログラムの、もう二つの同様のスクリーンショットを示している。
図7のスクリーンショットでは、投与アプリケーションがどのようにして、投与すべき注入量を、使用する治療溶液の所望の投与量と濃度に基づいて決定し得るかを確認することができる。したがって、投与アプリケーションは、処置部位ごとに、患者に投与すべき注入量の指標を使用者に表示し得る。
【0079】
図8は、投与アプリケーションを提供するように動作するコンピュータプログラムの別のスクリーンショットを示している。
図8で確認できるように、投与アプリケーションは、処置部位ごとに、注入すべき処置溶液の投与量及び容量の指標を表示し得る。
【実施例】
【0080】
スキャン中の患者の解剖学的部位のグラフィック表現を取得するために、患者の解剖学的部位が、超音波撮像手持式スキャナ(
図1~3に関して上記で説明したスキャナ100等)でスキャンされる。例えば投与されている非細胞毒性プロテアーゼ用等の、処置部位及び投与計画についてのデータベースが参照される。以下のうち、すなわち、(i)上記患者の解剖学的部位の上記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての上記データベースへの上記参照とに基づいた、投与されている非細胞毒性プロテアーゼを注入するための適正な位置、及び、(ii)上記患者の解剖学的部位の上記グラフィック表現と、処置部位及び投与計画についての上記データベースへの上記参照とに基づいた、投与する非細胞毒性プロテアーゼの適正な投与量、のうちの少なくとも一つが決定される。上記決定に基づいて、制御された投与量の非細胞毒性プロテアーゼが適正な位置に投与される。
【0081】
実施例1
【0082】
45歳の女性患者が、片側顔面痙攣を示している。この患者の顔が、超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータに接続された超音波撮像手持式スキャナ100を使用してスキャンされる。超音波撮像処理アプリケーションが、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照し、超音波撮像手持式スキャナから受信したデータと、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースとに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを提供する。
【0083】
実施例2
【0084】
55歳の男性患者が、脳卒中後に生じた右腕の痙縮を示している。痙縮による患者の障害の程度に、患者の症状に基づいてスコアが付与される。この患者の腕が、超音波撮像処理アプリケーションを実行しているコンピュータに接続された超音波撮像手持式スキャナ100を使用してスキャンされる。超音波撮像処理アプリケーションが、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についてのデータベースを参照し、超音波撮像手持式スキャナから受信したデータと、少なくとも一つの非細胞毒性プロテアーゼ用の処置部位及び投与計画についての上記データベースと、患者の痙縮の程度及び障害発生(この場合は脳卒中)からの時間とに基づいた、処置を案内するための処置ガイダンスを提供する。
【0085】
各図に示されている実施形態は、単なる例示であり、本明細書で説明した特許請求の範囲に記載の特徴を含んでいるが、それらの特徴は一般化、削除又は差し替えられ得ることが、上記の説明から理解されよう。本明細書に記載の装置及び方法の他の実施例及び変形形態が、本開示の文脈の中で当業者に明らかになるであろう。
【符号の説明】
【0086】
[
図1~5]
Ultrasound imaging handheld scanner 100: 超音波撮像手持式スキャナ 100
Ultrasound transducer 106: 超音波トランスデューサ 106
Processer 108: プロセッサ 108
Interface 110: インターフェース 110
Computer 200: コンピュータ 200
Guide 160: ガイド 160
Injection device: 注入デバイス 170
Scanning 410: スキャン 410
Referencing 420: 参照 420
Determining 430: 決定 430
Administering 440: 投与 440
[
図6]
STEP: ステップ
Dose selection by muscle: 筋肉別の投与量選択
PATIENT TOTAL SELECTED DOSES: 患者の選択総投与量
Patient total approved dose: 患者の承認総投与量
RIGHT- Adductor Brevis: 右側-短内転筋
Min: 最小
Recommended dose range: 推奨投与量範囲
RIGHT- Adductor Longus: 右側-長内転筋
Max: 最大
RIGHT- Rectus Femoris: 右側-大腿直筋
NEXT: 次へ
[
図7]
STEP: ステップ
Concentration & Dilution: 濃度と希釈
Dilution selection: 希釈選択
TOTAL SELECTED DOSES: 選択された総投与量
Preservative-free 0,9% Sodium Chloride.: 防腐剤フリー0.9%塩化ナトリウム。
CONCENTRATION: 濃度
TOTAL VOLUME OF INJECTION: 総注入量
NEXT: 次へ
Syringe Preparation: シリンジの準備
RIGHT ADDUCTOR BREVIS: 短内転筋
EXPORT TO PDF: PDFへエクスポート
NEW SIMULATION: 新しいシミュレーション
[
図8]
Syringe Preparation: シリンジの準備
PATIENT NAME: 患者の名前
PATIENT AGE: 患者の年齢
42 years old: 42歳
abobotulinumtoxinA: アボボツリヌトキシンA
Date: 日付
Agreed goals: 合意された目標
Patient summary: 患者の概要
Dysport total approved dose: Dysportの承認総投与量
Injection Upper/Lower/Unllateral: 注入 上部/下部/片側
Dysport selected dose: Dysportの選択投与量
Required number of 1 ml syringes: 1 mlシリンジの必要数
Summary for vials: バイアルの概要
Dysport 300 U vial: Dysport 300 U バイアル
Volume of diluent: 希釈剤の量
Dysport Units: Dysport単位
Preservative-free 0,9% Sodium Chloride.: 防腐剤フリー0.9%塩化ナトリウム。
Dysport 500 U vial: Dysport 500 U バイアル
Treatment plan: 処置計画
Muscle: 筋肉
Upper: 上部
Brachialis: 上腕筋
Lower: 下部
Adductor Brevis: 短内転筋
Adductor Longus: 長内転筋
Rectus Femoris: 大腿直筋
TOTAL: 合計
LEFT: 左側
chosen dose: 選択投与量
volume of injection: 注入量
RIGHT: 右側
Comments: コメント
No more than 0.5 ml of Dysport should be administered in any sigle injection site: 単一の注入部位には、0.5 ml以下のDysportを投与してください。
This application is a guiding tool based on approved recommended dose range by muscle, however It is the treating physicians’s responsability to ensure that the selected muscles and respective dose are appropriate and tailored to the patients specific needs (agreed goal and severity of spasticity): 本アプリケーションは、筋肉別に承認された推奨投与量範囲に基づいた案内ツールです。ただし、選択した筋肉とそれに対応する投与量が適切であるかの確認と、それらの、患者に特有のニーズ(合意された目標及び痙縮の重症度)に合わせた調整については、治療する医師が責任をもって行って下さい。