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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】超伝導テープの品質管理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/20 20060101AFI20221201BHJP
   G01R 31/01 20200101ALI20221201BHJP
【FI】
G01N27/20 Z
G01R31/01
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020560246
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019059893
(87)【国際公開番号】W WO2019206758
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】18169282.3
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521537818
【氏名又は名称】コモンウェルス・フュージョン・システムズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Commonwealth Fusion Systems LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,トマス
(72)【発明者】
【氏名】カラバレフ,ルスラン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルデンヴェーバー,ロガー
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504748(JP,A)
【文献】特開平10-239260(JP,A)
【文献】特開2007-178340(JP,A)
【文献】特開2011-123046(JP,A)
【文献】米国特許第7554317(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/00-G01N27/24
G01R31/00-G01R31/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導テープの品質管理装置であって、
(a)前記超伝導テープに接触し、前記超伝導テープに電流を注入するのに適している少なくとも2つのローラー、
(b)前記超伝導テープに接触し、前記超伝導テープに沿った電圧を測定するのに適している少なくとも2つの測定接点、及び
(c)前記超伝導テープをその臨界温度より低く冷却するのに適している冷却部、を有し、
前記少なくとも2つのローラーと前記少なくとも2つの測定接点が、前記冷却部の内部に配置されており、
前記冷却部は、前記ローラーを第1の温度に保ち、前記測定接点を第2の温度に保つのに適しており、前記第1の温度は前記第2の温度より低い、超伝導テープの品質管理装置。
【請求項2】
前記第1の温度が前記第2の温度より少なくとも2K低い、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つのローラーのそれぞれが、前記冷却部の外側に部分的にあり、スライド接点によって前記冷却部の外側で電気的に接触されている軸を有している、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
駆動モータが前記冷却部の外側で前記軸に取り付けられている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が少なくとも4つのローラーを含み、2つのローラーが同じ第1の電位にあり、反対側から前記超伝導テープに接触し、他の2つのローラーが同じ第2の電位にあり、反対側から前記超伝導テープに接触している、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記ローラーが水平に配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記各ローラーの周りの前記超伝導テープの巻き角は、独立して、120°と240°の間にある、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置が少なくとも4つの測定接点含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記測定接点間の距離が可変である、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、前記測定接点間で測定される電圧に基づいて前記超伝導テープに注入される電流を制御するのに適したコントローラを有している、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記超伝導テープが前記冷却部に入る直前に、前記超伝導テープのための予冷却部を有している、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記超伝導テープが両方向に同じように移動できるように、対称的である、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、時間の経過とともに周期的に変化する電流を注入するのに適している、請求項1~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
超伝導テープの品質管理方法であって、前記超伝導テープの臨界温度より低い第1の温度で電流を注入することと、前記超伝導テープの前記臨界温度より低い第2の温度で前記超伝導テープに沿った電圧を測定することを含み、前記第2の温度は前記第1の温度より高い、超伝導テープの品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導テープの品質管理のための装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導テープは、様々な用途、例えばケーブルや偽電流リミッターに使用することができる。ほとんどの用途で、数百メートル、あるいは数キロメートルのオーダーで、非常に長いテープが必要とされる。テープの如何なる欠陥もテープ全体の誤動作につながる可能性がある。欠陥とは、典型的には、特定の位置における臨界電流Iが仕様で要求されているよりも低いことを意味する。したがって、長いテープの任意の欠陥を、例えば切って端部を半田付けすることによって、またはそれをブリッジすることによって欠陥が修正されることが可能なように、非常に効率よく位置決めすることができる品質管理のための装置を有することは重要である。一般に、そのような装置は先行技術で知られている。
【0003】
WO2011/029 669 A1は、低温でテープに電流を注入し、テープに沿った電圧降下を測定することにより、テープの品質管理をする装置を開示している。しかし、この構成は、測定速度及び接点の発熱によりテープに注入できる電流(それは実際の用途におけるテープの使用をシミュレーションする必要がある)に関して制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、被測定テープに大電流を注入しながら高速測定が可能な超伝導テープの品質管理装置を提供することであった。本装置はまた、テープに低い機械的力を与え、高い柔軟性と測定アーティファクトの発生の可能性を低くすることを目標とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は、超伝導テープの品質管理装置であって、
(a)超伝導テープに接触し、超伝導テープに電流を注入するのに適している少なくとも2つのローラー、
(b)超伝導テープに接触し、超伝導テープに沿った電圧を測定するのに適している少なくとも2つの測定接点、及び
(c)超伝導テープをその臨界温度より低く冷却するのに適している冷却部、を有し、
前記少なくとも2つのローラーと前記少なくとも2つの測定接点が、前記冷却部の内部に配置されており、
前記冷却部は、前記ローラーを第1の温度に保ち、前記測定接点を第2の温度に保つのに適しており、前記第1の温度は前記第2の温度より低い、超伝導テープの品質管理装置によって達成された。
【0006】
本発明はさらに、超伝導テープの品質管理方法であって、超伝導テープの臨界温度より低い第1の温度で電流を注入することと、超伝導テープの臨界温度より低い第2の温度で超伝導テープに沿った電圧を測定することを含み、前記第2の温度は前記第1の温度より高い、超伝導テープの品質管理方法に関する。
【0007】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書及び特許請求の範囲に記載されている。異なる実施形態の組み合わせは、本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による装置の好ましい例を図1及び図2に示す。図1は正面図である。
図2】本発明による装置の好ましい例を図1及び図2に示す。図2はこの装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に従う超伝導テープは、典型的には、基板、緩衝層、超伝導体層、貴金属層、及び安定化層を有している。しかしながら、他の構成を有する超伝導テープも、ほとんどの場合、本発明による装置を用いて測定され得る。
【0010】
基板は、緩衝層及び/または超伝導体層を支持することができる任意の材料で形成され得る。例えば、好適な基板は、EP830218、EP1208244、EP1198846、及びEP2137330に開示されている。多くの場合、基板は、金属及び/または合金のストリップ/テープであり、金属は、ニッケル、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、タングステンを含んでいてよい。好ましくは、基板はニッケルベースであり、これは基板の少なくとも50原子%がニッケルであり、より好ましくは少なくとも70原子%、特に好ましくは少なくとも85原子%であることを意味する。これらの合金の幾つかは、ハステロイ(登録商標)という商品名で呼ばれることがある。より好ましくは、基板はニッケルベースであり、1~10原子%、特に3~9原子%のタングステンを含む。積層金属テープ、ガルバニックコーティングのような第2の金属でコーティングされたテープ、または適切な表面を有する他の任意のマルチマテリアルテープもまた、基板として使用することができる。
【0011】
基板は、非テクスチャー加工、部分的にテクスチャー加工、またはテクスチャー加工されたものであってよく、好ましくはテクスチャー加工されたものである。基板が部分的にテクスチャー加工されている場合、好ましくはその表面がテクスチャー加工されている。基板は、典型的には20~200μmの厚さ、好ましくは30~100μmの厚さである。長さは、典型的には1~1000m、例えば100mであり、幅は、典型的には0.4cm~1mである。長さと幅の比は、典型的には少なくとも100、好ましくは少なくとも200、特に好ましくは少なくとも500である。
【0012】
好ましくは、基板の表面は、DIN EN ISO 4287及び4288に準拠したrmsで15nm未満の粗さを有する。粗さは、金属基板の粒界が特定の粗さ測定に影響を及ぼさないように、基板表面の結晶粒の境界内の10×10μmの領域を参照する。
【0013】
緩衝層は、超伝導体層を支持することができる任意の材料を含むことができる。緩衝層材料の例としては、銀、ニッケル、TbO、GaO、CeO、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、Y、LaAlO、SrTiO、Gd、LaNiO、LaCuO、SrRuO、NdGaO、NdAlO、及び/または当業者に知られているいくつかの窒化物などの、金属及び金属酸化物が挙げられる。好ましい緩衝層材料は、イットリウム安定化ジルコニウム酸化物(YSZ);ガドリニウムジルコート、ランタンジルコートなどの各種ジルコネート;チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸塩;及び酸化セリウムまたは酸化マグネシウムなどの単純酸化物である。より好ましくは、緩衝層は、ジルコン酸ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、チタン酸ストロンチウム、及び/またはガドリニウムドープ酸化セリウムなどの希土類金属ドープ酸化セリウムを含む。さらに好ましくは、緩衝層は、ジルコン酸ランタン及び/または酸化セリウムを含む。好ましくは、超伝導テープは、基板とフィルムの間にそれぞれが異なる緩衝材料を含む複数の緩衝層を有している。好ましくは、超伝導テープは、2層または3層の緩衝層、例えば、ジルコン酸ランタンを有する第1の緩衝層と、酸化セリウムを含む第2の緩衝層を含む。緩衝層は、好ましくはテクスチャーを有し、より好ましくは、緩衝層は立方体のテクスチャーを有する。
【0014】
テクスチャー転写の程度及び/または拡散バリアとしての効率を高めるために、超伝導テープは、好ましくは、2つ以上の緩衝層を互いに重ねて含んでいる。好ましくは、超伝導テープは、2層または3層の緩衝層、例えば、ジルコン酸ランタンを含む第1の緩衝層と、酸化セリウムを含む第2の緩衝層を有する。
【0015】
緩衝層は、好ましくは、基板の一方の面の全面を覆っており、これは、表面の少なくとも95%、より好ましくは表面の少なくとも99%を覆っていることを意味する。緩衝層は、典型的には5~500nm、例えば10~30nm、または150~300nmの厚さを有する。
【0016】
好ましくは、超伝導体層は、式REBaCu7-δの化合物を含む。REは希土類金属、好ましくはイットリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ガドリニウム、ユーロピウム、サマリウム、ネオジム、プラセオジム、またはランタン、特にイットリウムを表す。指数xは0.9~1.8、好ましくは1.2~1.5の値を想定している。指標yは1.4~2.2、好ましくは1.5~1.9の値を想定している。指数δは0.1~1.0、好ましくは0.3~0.7の値を想定している。超伝導体層は、好ましくは、200nm~2μm、より好ましくは400nm~1.5μmの厚さを有している。好ましくは、超伝導体層は、互いに配向性の高い結晶粒を有している。
【0017】
超伝導体層は、好ましくは低い表面粗さ、例えばDIN EN ISO 4287及び4288に準拠した100nm未満、さらには50nm未満のrmsを有する。超伝導体層は、通常、低温では、好ましくは少なくとも77Kの温度までは、ゼロに近い抵抗を有している。好ましくは、超伝導体層は、外部印加される磁場がない状態で、77Kで少なくとも1×10A/cm、より好ましくは77Kで少なくとも1.5×10A/cmの臨界電流密度を有する。好ましくは、臨界電流密度は、0.1Tの磁場が超伝導体層の表面に垂直に印加された場合、30%未満で減少し、より好ましくは20%未満で減少する。好ましくは、臨界電流密度は、0.1Tの磁場が超伝導体層の表面に平行に印加された場合、15%未満で減少し、より好ましくは10%未満で減少する。
【0018】
貴金属層は、安定化層が堆積されるときの超伝導体層の劣化を防止することができる。それはまた、安定化層を堆積させるためのテープの導電性を向上させることができ、これは特に電着が使用される場合に関係がある。典型的には、貴金属層は銀を含む。超伝導体層上に貴金属を含む層を形成する方法は、例えばWO2008/000485 A1に開示されている。
【0019】
安定化層は、典型的には低い電気抵抗を有し、好ましくは室温で1μΩm未満、より好ましくは室温で0.2μΩm未満、特に好ましくは室温で0.05μΩm未満である。しばしば、安定化層は、金属、好ましくは銅、銀、スズ、亜鉛、またはこれらのうちの1つを含む合金、特に銅を含む。好ましくは、安定化層は、少なくとも50原子%、より好ましくは少なくとも70原子%、特に好ましくは少なくとも85原子%の銅、スズまたは亜鉛を含む。
【0020】
安定化層は、テープの全周を覆うことが多く、すなわち、超伝導体層、基板、及び少なくとも2つの側面を覆っている。好ましくは、超伝導テープは2つの安定化層を有し、第1の安定化層はテープの全周を覆い、第2の安定化層は第1の安定化層に半田付けされた1つまたは2つの金属テープによって形成される。2つの金属テープを使用する場合、好ましくは、2つの金属テープは、超伝導テープの反対側の面に半田付けされる。
【0021】
本発明の関連における金属とは、少なくとも1つの金属元素を含み、金属電気伝導率、すなわち室温で少なくとも10S/mを有する任意の材料を指す。金属テープは、様々な金属、好ましくは銅、ニッケル、クロム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、スズ、またはそれらの合金、例えば黄銅、青銅、またはステンレス鋼を含むことができる。金属テープは、均一な組成を有していてもよいし、異なる金属組成の層状構造を有していてもよい。組成の勾配も考えられる。金属テープは、好ましくは10~1000μm、より好ましくは20~500μm、特に好ましくは50~300μmの厚さを有する。
【0022】
完全な安定化層は、好ましくは5~1000μm、より好ましくは10~500μm、特に好ましくは20~300μm、例えば50または100μmの厚さを有する。安定化層は、テープの異なる面で異なる厚さを有していてもよいし、同じ厚さを有していてもよい。厚みが異なる場合、上記の厚さの範囲は、最も高い厚さを有する側を指す。特に、安定化層が亜鉛メッキ層である場合、いわゆる「ドッグボーン」効果により、平坦領域と比較してエッジ部でより厚い厚さになることが多い。
【0023】
超伝導テープは、好ましくは、10m~10km、より好ましくは100m~1kmの長さを有する。好ましくは、超伝導テープは、1mm~10cm、より好ましくは2mm~20mm、特に好ましくは4mm~12mmの幅を有する。好ましくは、超伝導テープは、60~800μm、より好ましくは100~500μm、特に好ましくは150~400μmの厚さを有する。
【0024】
超伝導テープは、本発明による装置を通って移動する。これは、例えば、供給スプールと受けスプールによって達成することができる。超伝導テープは、供給スプールから巻き出され、装置を通って移動し、その後、受けスプールに巻き取られる。さらに、装置は、典型的には、供給スプール及び/または受けスプールを回転させて、超伝導テープの巻き出し及び巻き取りをすることができる。供給及び/または受けスプールの回転速度は、典型的には、超伝導テープが装置内へ移動する速度を調整する。典型的な速度は、0.1~1000m/h、好ましくは1~500m/h、より好ましくは10~300m/h、特に50~200m/hである。好ましくは、スプールの回転は逆にすることができ、それによって超伝導テープは装置を通って逆方向に移動する。
【0025】
本発明による装置は、超伝導テープに接触し、該超伝導テープに電流を注入するのに適している少なくとも2つのローラーを有する。効率的な電流注入のために、ローラーと超伝導テープの間の接触面積が大きいことが好ましい。これは、各ローラーの周りの超伝導テープの大きい巻き角、及び/または大きいローラー直径によって達成され得る。好ましくは、各ローラー周りの超伝導テープの巻き角は、独立して、120°~240°、より好ましくは140°~220°、特に好ましくは160°~200°、例えば180°である。ローラーの直径は、好ましくは少なくとも20cm、より好ましくは少なくとも25cm、例えば少なくとも30cmである。実用上の理由から、直径は通常100cm以下である。ローラーは、同じ直径を有していてもよいし、異なる直径を有していてもよく、好ましくは同じ直径を有する。好ましくは、装置は、超伝導テープに接触する少なくとも4つのローラーを含む。4つのローラーが使用される場合、好ましくは、2つのローラーが同じ第1の電位にあり、反対側から超伝導テープに接触し、他の2つのローラーが同じ第2の電位にあり、反対側から超伝導テープに接触する。これは、典型的には、テープへの電流注入効率を高め、すなわち、接点抵抗に起因する損失を減少させ、超伝導テープ上の電流の均等な分布を保証する。
【0026】
ローラーは、少なくとも超伝導テープと接触するその表面において、電気的に導電性でなければならない。好ましくは、ローラーは、20℃で少なくとも1S/mの比導電率を有する金属、より好ましくは、20℃で少なくとも2S/mの比導電率を有する金属、特に20℃で少なくとも4S/mの比導電率を有する金属で作られている。好ましくは、ローラーは銅製である。
【0027】
原則として、超伝導テープはローラー上を滑ることができる。しかし、これはしばしば、超伝導テープにあまりにも高い剪断力を及ぼす。したがって、接触するところで超伝導テープとローラーの表面との間に相対的な動きが生じないように、ローラーは、超伝導テープが装置を通って移動するのに従って回転するのが好ましい。
【0028】
機械的にデリケートな超伝導テープのために、回転ローラーとの剪断力は、電流を注入するために典型的に使用される回転するローラーとのスライド接点によって引き起こされる摩擦のため、依然として高すぎる。したがって、少なくとも2つのローラーのそれぞれが、部分的に冷却部の外側にあって冷却部の外側でスライド接点によって電気的に接触している軸を有することが好ましい。この場合、軸は、金属製とするか、または、ローラーと、スライド接点に接触している軸の部分とを電気的に接続するケーブルをその内部に配置するかにより、電気的に導電性を持たせる必要がある。このような構成は、冷却部の外側で駆動モータを軸に取り付けることを可能にし、スライド接点の摩擦損失を補償し、従って、超伝導テープへの剪断力を低減させることができる。さらに、スライド接点が室温にある部分に配置されれば、電流が効率的に注入され、接点抵抗によって冷却部が加熱されることがない。好ましくは、軸は、冷却部の外側に設けられ、これは冷却部内での摩擦とそれによる発熱をさらに低減する。
【0029】
好ましくは、ローラーは、軸が垂直に配置されるように、水平に配置される。このようにして、軸は、上部で冷却部の外側に延びることができる。これは、極低温剤の損失を防止する複雑なシールの必要性を回避することができる。
【0030】
本発明によれば、ローラーが超伝導テープに電流を注入する。好ましくは、電流は100A~1000Aである。好ましくは、電流は、例えば正弦波電流またはノコギリ歯電流として、経時的に変化する。電流の最小値から最大値までの差は、典型的には、超伝導テープの形状及び品質に依存し、好ましくは臨界電流の0.01倍から1.5倍、より好ましくは0.05倍から1倍、特に好ましくは0.1倍から0.5倍である。例えば、電流の最小値から最大値までの差は、1Aから1000A、より好ましくは10Aから300A、特に50Aから150Aである。好ましくは、電流の変動周波数は、0.01Hzから1Hz、より好ましくは0.05Hzから0.5Hz、特に0.1Hzから0.3Hzである。
【0031】
本発明による装置は、超伝導テープに接触し、超伝導テープに沿った電気電圧を測定するのに適している少なくとも2つの測定接点を有している。測定接点は、スライド接点であってもローラー接点であってもよく、好ましくはローラー接点である。より好ましくは、測定接点は一対のローラー接点を有し、それによって超伝導テープは両側から接触されることができる。好ましくは、装置は少なくとも3つの測定接点を含み、より好ましくは、装置は少なくとも4つの測定接点を含み、特に、装置は少なくとも6つの測定接点を含む。好ましくは、測定接点の数は変化させられることができ、すなわち、測定接点は個別に追加または取り除くことができる。装置が2つを超える測定接点を有している場合、隣接する各2つの測定接点間の距離は、互いに同じであっても異なっていてもよく、好ましくは、測定接点の位置は変更されることができ、こうして、隣接する各2つの測定接点間の距離は変化されることができる。隣接する各2つの測定接点間の距離は、好ましくは1cm~100cm、より好ましくは5cm~50cm、特に10cm~35cmである。装置が少なくとも4つの測定接点を有する場合、そのうちの2つの測定接点は、好ましくは、電流注入用ローラーが保持される温度である冷却部に配置される。このような構成の利点は、より高い温度の冷却部における超伝導テープの完全な電圧降下を、超伝導テープだけでなく装置にも損傷を与える可能性のある急冷のリスクを低減するように、監視することができることである。
【0032】
臨界電流を決定する簡単な方法は、2つの測定接点間の電界が所定の値をとるように、注入電流を調整することである。本発明の関連では、臨界電流は超伝導テープに沿って1μV/cmの電界を発生させる。
【0033】
好ましくは、装置は、測定接点間で測定される電圧に基づいて超伝導テープに注入される電流を制御するのに適したコントローラを有している。コントローラは、典型的には、測定接点対間で測定された電圧を受信し、これらの値を位置情報、すなわちテープ上の電圧が測定された場所とともに記憶する。位置情報は、例えば、任意の所与の時間におけるテープの速度に基づいて得られ得る。したがって、コントローラは、好ましくは、供給及び/または受けスプールから、または速度ゲージから速度情報を受信するように適合されている。好ましくは、コントローラは、テープ上で特定の電圧が測定された場所の情報を得るように適合されている。超伝導テープを流れる電流が時間の経過とともに変化し、装置が2つより多くの測定接点を有している場合、異なる測定接点対は、超伝導テープの全ての位置について異なる電流で電圧を測定することができる。これは、2つの測定接点間で測定された超伝導テープの一部が次の測定接点対に移動し、その間に超伝導テープを通る電流がその変動によって増加または減少するためである。
【0034】
コントローラは、測定されたすべての電圧とそれに関連する電流を収集し、例えば既知の関係U/U~(I/Iを当てはめることによって、I-V曲線を計算することができ、ここでUは電圧、Uは臨界電流における電圧、Iは電流、Iは臨界電流、nは材料定数である。この曲線から、コントローラは、臨界電流I、すなわち上述の特性電圧での電流を、材料定数nと同様に、決定することができる。測定接点間で測定された電圧がこの値から遠く離れている場合には、コントローラは、超伝導テープに注入される電流を増減させることができる。これにより、例えば欠陥により臨界電流が予想よりも低い位置での超伝導テープの損傷を回避することができる。また、この調整により、測定された臨界電流の精度が向上する。
【0035】
好ましくは、コントローラは、例えば、供給スプールと受けスプールを制御することにより、超伝導テープの移動方向の反転を引き起こすように適合されている。このようにして、ある位置で臨界電流が設定値を下回っている場合、測定を繰り返すことができる。測定を繰り返すことで、測定アーティファクトが発生する可能性を減らすことができる。
【0036】
好ましくは、装置はさらに、2つの測定接点の間で、好ましくは超伝導テープに垂直な方向に、超伝導テープに磁場を印加するための手段を有している。磁場の強さは、0.01Tから10T、好ましくは0.05Tから1Tの間にある。磁場の強さは、時間とともに一定または変化することができる。それが時間とともに変化する場合、臨界電流の磁場に対する依存性を決定することができる。好ましくは、磁場はコントローラによって制御される。好ましくは、磁場を印加するための手段は、2つの測定接点の間に配置される。
【0037】
本発明による装置は、超伝導テープを臨界温度より低く冷却するのに適した冷却部をさらに有している。冷却部は、典型的には、液体ヘリウムや液体窒素、好ましくは液体窒素などの極低温剤を充填した例えば真空フラスコやデュワーなどの絶縁容器を有するクライオスタットを含む。超伝導テープの臨界温度は、一般的に使用されているように、超伝導テープの電気抵抗が低下する温度、すなわち超伝導テープが超伝導になる温度である。
【0038】
本発明によれば、少なくとも2つのローラーと少なくとも2つの測定接点は冷却部内に配置され、冷却部は、ローラーを第1の温度に、測定接点を第2の温度に保つのに適しており、第1の温度は第2の温度より低い。冷却部で2つの異なる温度を実現する1つの方法は、ローラーの近くにクーラーを配置し、測定接点の近くにヒーターを配置することである。一般に、超伝導体の臨界電流は温度が下がるにつれて増加する。電流注入を測定接点より低い温度に保つことは、従って、臨界電流より十分低い温度で電流を注入しながら、臨界電流に近い測定を可能にする。これにより、超伝導破壊を生じる臨界温度を超える局所的加熱の結果として、超伝導テープが損傷するリスクを低減することができる。同時に、異なる温度は、超伝導テープの高速移動時に大電流を注入することを可能にする。好ましくは、第1の温度は第2の温度より少なくとも1K低く、より好ましくは、第1の温度は第2の温度より少なくとも2K低く、さらに好ましくは、第1の温度は第2の温度より少なくとも3K低く、特に好ましくは、第1の温度は第2の温度より少なくとも4K低い。例えば、第1の温度は73Kであり、第2の温度は77K、すなわち、高温超伝導体が通常作動する大気圧での液体窒素の沸点77.15Kに近い温度である。
【0039】
好ましくは、装置は、超伝導テープが冷却部に入る直前に、超伝導テープのための予冷却部を有している。このような予冷却部は、例えば、超伝導テープの周囲に配置され、一端で極低温剤と接触して立つ矩形断面の導管であってもよい。このような導管は、熱伝導率の高い材料、好ましくは銅でできている。予冷却部は、超伝導テープが装置内を移動する速度をさらに上げることを可能にする。
【0040】
好ましくは、装置は、超伝導テープを両方向に同じように移動できるように、対称的である。典型的には、これは、装置が装置の中心の垂直平面に関して対称であることを意味する。この平面は、供給スプールから受けスプールへの超伝導テープの概略の移動方向に対しても垂直である。このようにして、装置を通る超伝導テープの移動方向は、温度プロファイルや装置を通る途中で超伝導テープが受ける剪断力のプロファイルを変えることなく、逆にされることができる。
【0041】
本発明による装置の好ましい例を図1及び図2に示す。図1は正面図であり、図2はこの装置の上面図である。超伝導テープ(1)は、供給スプール(11)から巻き出され、受けスプール(12)に巻き取られる。偏向ローラー(21,22)は、超伝導テープ(1)を上部から極低温剤(3)で満たされた冷却部(2)に出入りさせる。予冷却部(31,32)は、冷却部(2)に入る途中の超伝導テープ(1)を予冷却する。電流注入用ローラー(41、42、43、44)は、極低温剤の温度が低いところの冷却部(3a)に配置されている。該ローラーは、駆動モータ(61、62、63、64)に機械的に接続され、スライド接点(71、72、73、74)に電気的に接続された軸(51、52、53、54)に連結されている。測定接点(81、82、83、84、85、86)はローラー接点対である。そのうちの2つの測定接点(81、86)は、極低温剤がより低い温度(3a)である所の冷却部に配置され、従って、極低温剤がより高い温度(3b)を有する部分にある超伝導テープの全部分に沿った電圧降下を監視することができる。残りの測定接点(82、83、84、85)は、極低温剤がより高い温度(3b)にある所の冷却部に配置されている。
【0042】
本発明による方法は、好ましくは、本発明による装置を採用する。したがって、装置について説明されたすべての詳細及び好ましい実施形態は、必要な変更を加えて本方法に適用される。
図1
図2