(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】周囲光検出器、検出器アレイ、および方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20221201BHJP
G01J 1/44 20060101ALI20221201BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01J1/02 S
G01J1/44 D
H01L31/10 A
(21)【出願番号】P 2020572447
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2019067389
(87)【国際公開番号】W WO2020002629
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-02-10
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴー ホア
(72)【発明者】
【氏名】リソフ アンドレイ
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-506141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0353471(US,A1)
【文献】特開2008-076344(JP,A)
【文献】特開2017-188522(JP,A)
【文献】特開2011-128628(JP,A)
【文献】特表2003-524545(JP,A)
【文献】特開2011-203226(JP,A)
【文献】特開2006-173634(JP,A)
【文献】特表2006-501436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0041564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲光センサであって、
第1の複数のセンサ素子であって、各センサ素子が、照明のレベルに応えて信号を提供するように構成されている、前記第1の複数のセンサ素子、および、
第2の複数の基準素子であって、各基準素子が、基準信号を提供するように構成されており、各々が、それぞれの基準素子が照らされるのを遮るように構成されている遮蔽要素を備えている、前記第2の複数の基準素子、
を備えており、
前記第1の複数のセンサ素子の各センサ素子の信号から、前記第2の複数の基準素子の各基準素子の基準信号が差し引かれ、
前記第1の複数が前記第2の複数より大きく、前記第1の複数のセンサ素子および前記第2の複数の基準素子がアレイ状に配置されており、
センサ素子および基準素子が、共通層基板に、横方向に配置されており、少なくとも1つの共通の第1のコンタクトを共有しており、
前記周囲光センサの上面視において、前記遮蔽要素が、前記それぞれの基準素子より大きい、
周囲光センサ。
【請求項2】
前記基準素子のための第2のコンタクトが、前記遮蔽要素の側の前記基準素子の表面に配置されている、請求項1に記載の周囲光センサ。
【請求項3】
前記センサ素子のための第2のコンタクトが、前記遮蔽要素の側の前記センサ素子の表面に配置されている、請求項1または請求項2に記載の周囲光センサ。
【請求項4】
前記共通のコンタクトが、前記遮蔽要素とは反対側の前記共通層基板の表面に配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の周囲光センサ。
【請求項5】
前記センサ素子のための前記第2のコンタクトおよび/または前記基準素子のための前記第2のコンタクトが、前記遮蔽要素とは反対側の共通層基板の表面に配置されている、請求項2に記載の周囲光センサ。
【請求項6】
前記遮蔽要素が、前記第1の複数のセンサ素子のうち前記基準素子に隣接するセンサ素子の一部の上方に延びている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の周囲光センサ。
【請求項7】
前記遮蔽要素によって覆われている前記センサ素子の部分が、前記センサ素子の総センサ領域の5%と50%の間である、請求項6に記載の周囲光センサ。
【請求項8】
前記第1の複数が前記第2の複数の4倍である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の周囲光センサ。
【請求項9】
前記センサ素子および前記基準素子が、それぞれ、p型ドープ層と、n型ドープ層と、照らされているときに前記信号を生成するように構成されている、前記p型ドープ層と前記n型ドープ層との間の活性領域と、を備えている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の周囲光センサ。
【請求項10】
前記センサ素子および/または前記基準素子が、それぞれ、井戸であって、前記井戸と
前記共通
層基板との間に活性層を形成するように前記共通
層基板内に配置されている、前記井戸、を備えている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の周囲光センサ。
【請求項11】
前記遮蔽要素が、前記基準素子の主面から距離をおいて配置されている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の周囲光センサ。
【請求項12】
アレイの縁部に沿ったセンサ素子と基準素子の比が、前記第1の複数と前記第2の複数の比に一致するように、前記センサ素子および前記基準素子がアレイ状に配置されている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の周囲光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許出願第16/024,437号の優先権を主張し、この文書の開示内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本出願は、周囲光検出器に関する。さらに本出願は、周囲光検出器と、検出器アレイと、周囲光センサを形成する方法とについて言及する。
【背景技術】
【0003】
周囲光センサ(ALS:Ambient Light Sensor)は、周囲の照明の強さを測定し、照明のレベルに比例する電気信号を出力する電子デバイスである。この出力を使用して、照明装置の強度や色温度を制御することができる。周囲光センサ(ALS)は、フォトダイオードアレイおよび電流増幅器を含みうる。
【0004】
暗電流は、デバイスに光子が入射していないときにも感光デバイス(フォトダイオードなど)を流れる比較的小さい電流である。暗電流は、入ってくる光によって検出器が照らされていないときに検出器で生成される電荷キャリアからなる。暗電流は、半導体の温度依存特性である。暗電流は、フォトダイオードを加熱することによって増大することがあり、ダイオードが冷えると相応して減少する。
【0005】
周囲光センサによって、より良好な測定結果を提供するためには、このようなセンサにおける暗電流の影響を小さくすることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態は、暗電流の補正が改善された周囲光センサを提供する。一態様においては、本周囲光センサは、第1の複数のセンサ素子を備えており、各センサ素子は、光によって照らされているときに信号を提供するように構成されている。言い換えれば、各センサ素子は、光の照射に応えて信号を提供するように構成されている。センサ信号は、照明レベルに比例させることができる。本周囲光センサは、第2の複数の基準素子を備えており、各基準素子は、基準信号を提供するように構成されており、基準素子が照らされるのを遮るための遮蔽要素を備えている。第1の複数は第2の複数より大きく、第1の複数のセンサ素子および第2の複数の基準素子は、アレイ状に配置されている。さらに、センサ素子および基準素子は、共通基板に、横方向に配置されており、少なくとも1つの共通コンタクトを共有している。
【0007】
別の態様においては、周囲光センサは、第1のセンサ素子であって、各センサ素子が、照明のレベルに応えて信号を提供するように構成されている、第1のセンサ素子と、基準素子であって、各基準素子が、基準信号を提供するように構成されており、各基準素子が、それぞれの基準素子が照らされるのを遮るように構成されている遮蔽要素を備えている、基準素子と、を備えている。センサ素子の数は、基準素子の数より大きい。センサ素子および基準素子はアレイ状に配置されている。センサ素子および基準素子は、共通層基板に横方向に配置されており、少なくとも1つの共通の第1のコンタクトを共有している。
【0008】
一態様においては、基準素子のための第2のコンタクトが、遮蔽要素の側の基準素子の表面に配置されている。さらに、センサ素子のための第2のコンタクトを、遮蔽要素の側のセンサ素子の表面に配置することができる。これに代えて、これらのコンタクトを、遮蔽要素とは反対側の表面に配置することができる。いくつかの実施形態においては、共通コンタクトは、遮蔽要素とは反対側の共通層基板の表面に配置されている。これは例えば、共通基板を貫くコンタクトビア(contact via)によって達成することができる。
【0009】
いくつかの実施形態においては、上から見た遮蔽要素は、それぞれの基準素子によって占有されている領域より大きい。例えば遮蔽要素は、それぞれの基準素子を完全に覆っており、かつ、基準素子と、第1の複数のセンサ素子のうち隣接するセンサ素子との間の空間内まで横方向にさらに延びている。
【0010】
遮蔽要素は、いくつかの例においては、第1の複数のセンサ素子のうち基準素子に隣接するセンサ素子の一部分の上方に延びている。遮蔽要素によって覆われているセンサ素子の部分は、センサ素子の総センサ領域の5%~50%の範囲内、特に5%~10%の範囲内とすることができる。
【0011】
センサ素子および基準素子は、それぞれ、p型ドープ層と、n型ドープ層と、照らされているときに信号を生成するように構成されている、p型ドープ層とn型ドープ層との間の活性領域と、を備えていることができる。いくつかの別の態様においては、センサ素子および/または基準素子は、それぞれ、井戸であって、共通基板との間に活性層を形成するように共通基板内に配置されている、井戸、を備えている。
【0012】
センサ素子の数と基準素子の数は、異なっていることができる。いくつかの実施形態においては、アレイの縁部に沿ったセンサ素子と基準素子の比が、第1の複数と第2の複数の比に一致するように、センサ素子および基準素子がアレイ状に配置されている。
【0013】
別の態様においては、周囲光検出器は、カレントミラー(current mirror)を備えており、カレントミラーは、第1の電流経路および第2の電流経路を含む。第1の電流経路は、第1の複数のフォトダイオードを備えており、第2の電流経路は、第2の複数の暗電流ダイオードを備えている。第1の複数のフォトダイオードおよび第2の複数の暗電流ダイオードは、共通基板に、横方向に配置されており、第1の複数と第2の複数は異なる。
【0014】
第1の電流経路にはミラートランジスタが関連付けられており、第2の電流経路には基準トランジスタが関連付けられている。ミラートランジスタと基準トランジスタは、第1の複数と第2の複数の比に一致するパラメータ比を備えている。
【0015】
一実施形態においては、デジタルの不一致補正信号に応えて第1の電流経路および第2の電流経路の少なくとも一方において補正電流を提供する補正デバイス、が設けられている。補正デバイスは、いくつかの態様においては、第1の複数のフォトダイオードとミラートランジスタとの間で第1の電流経路に接続することができる、および/または、補正デバイスは、第2の複数の暗電流ダイオードと基準トランジスタとの間で第2の電流経路に接続される。
【0016】
いくつかの態様においては、追加の電流制限器が、第1の電流経路における電流を制限するように構成されている。電流制限器は、クランプ用素子に結合された電流検出抵抗器を備えていることができ、この電流検出抵抗器は、第1の電流経路におけるミラートランジスタに並列に配置されている電流制限素子を制御するように構成されている。
【0017】
さらには、いくつかの態様は、第1の信号入力または第2の信号入力に結合される利得設定要素に関し、第2の信号入力は供給入力である。利得設定要素は、第1の信号入力に結合されているときには高利得を設定し、第2の信号入力に結合されているときには低利得を設定するように構成されている。利得設定要素の結合は、いくつかの態様においては実質的に永久的である。
【0018】
いくつかの態様においては、利得設定要素は、ミラートランジスタに並列に配置されておりかつ自身の制御入力が第1の複数のフォトダイオードとミラートランジスタとの間である状態で接続されている利得設定トランジスタ、を備えていることができる。
【0019】
別の態様は、第1の複数のフォトダイオードに関する。フォトダイオードは、共通基板に配置されている第1の導電型の層を備えていることができる。第2の複数の暗電流ダイオードは、共通基板に配置されている第1の導電型の層を備えていることができ、この共通基板は第2の導電型を有する。本周囲光検出器は、いくつかの態様においては、第1の複数のフォトダイオードおよび第2の複数の暗電流ダイオードのための少なくとも1つの共通コンタクトと、フォトダイオードの層に接触しているコンタクトと、暗電流ダイオードの層に接触しているコンタクトと、を備えている。
【0020】
第2の複数の暗電流ダイオードの各々は、それぞれの暗電流ダイオードが照らされるのを遮るように構成されている遮蔽要素を備えていることができる。遮蔽要素は、上面視において、それぞれの暗電流ダイオードの領域より大きくしたがってこの領域を完全に覆っており、かつ、暗電流ダイオードと、隣接する第1の複数のフォトダイオードとの間の空間内まで横方向にさらに延びている。したがって遮蔽要素は、暗電流ダイオードに隣接する第1の複数のフォトダイオードの一部分の上方に延びていることができる。
【0021】
いくつかの態様においては、第1の複数は、第2の複数の4倍である。フォトダイオードおよび暗電流ダイオードは、アレイの縁部に沿ったセンサ素子と基準素子の比が、第1の複数と第2の複数の比に一致するように、共通基板にアレイ状に配置することができる。
【0022】
別の態様においては、光検出器アレイは、アレイの縁部に沿ったフォトダイオードと基準ダイオードの比が、第1の複数と第2の複数の比に一致するように、互いに横方向に配置された第1の複数のフォトダイオードおよび第2の複数の基準ダイオードを備えている。
【0023】
いくつかの態様においては、アレイの各角部は、第1の複数のフォトダイオードのフォトダイオードを備えていることができる。一例として、第1の複数のフォトダイオードは、第2の複数のフォトダイオードより4倍多い。
【0024】
さらなる態様は、周囲光センサの形成に関する。いくつかの実施形態においては、周囲光センサは、主面および第1の導電型を有する層を設けることによって形成される。この層に、第2の導電型の少なくとも2つの領域を形成する。少なくとも2つの領域は、互いに横方向に隣接して第1の距離だけ隔てて形成する。層および少なくとも2つの領域の各々に電気的に接触するコンタクトを設ける。さらに、少なくとも2つの領域の一方の上方に、主面に実質的に平行な光遮蔽要素を、光遮蔽要素が少なくとも2つの領域の一方を覆いかつ少なくとも上記距離に沿って延びているように、設ける。
【0025】
以下では、さらなる態様および複数の異なる例を、添付の図を参照しながら詳しくさらに開示する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】暗電流補正回路の例示的な実施形態を図解している。
【
図2】提案する原理のいくつかの態様による、周囲光センサの一実施形態を示している。
【
図3】遮蔽要素の重なりに対するクロストークを描いた図を示している。
【
図4】提案する原理のいくつかの態様を図解した周囲光検出器の一実施形態を示している。
【
図5】
図4の実施形態において使用されるDAC回路の例示的な実施形態を図解している。
【
図6】いくつかの態様による、周囲光検出器アレイの例示的な実施形態を示している。
【
図7】別の例示的な周囲光検出器アレイを示している。
【
図8】さらに別の例示的な周囲光検出器アレイを示している。
【
図9】周囲光センサを形成する方法の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
周囲光センサは、周囲の照明の強さを測定する電子デバイスである。周囲光センサは、照明との何らかの関係における(例えば照明に正比例する)電気信号を出力する。しかしながら周囲光の測定に使用されるフォトダイオードは、熱運動およびさまざまな周囲温度に起因して、たとえセンサ自体のフォトダイオードが照らされていないときにも、小さい電流を流す。これは暗電流と呼ばれる。暗電流の打ち消しを達成するため、しばしば第2のフォトダイオードが使用される。
図1はこの原理を図解している。打ち消し部1は、センサフォトダイオード11および暗電流フォトダイオード12を備えている。暗電流フォトダイオードは、このダイオード12の開口部に測定光が達することができないように遮蔽されている。結合器(combiner)15において、ダイオード12の暗電流がフォトダイオード11から差し引かれる。その結果が増幅器14において増幅され、出力16において提供される。
【0028】
露出したフォトダイオード11の総応答は、入射した周囲光によって誘発されて生成される光電流と、(大部分が熱的に)生成される暗電流とを含む。暗電流ダイオード12は、暗電流のみを提供する。打ち消しの結果として、特に低い照明レベルにおいてセンサの感度が改善される。
【0029】
良好な結果を達成するためには、フォトダイオードおよび暗電流ダイオードの両方が類似しており、互いに近くに配置されているべきである。しかしながら、浅い入射角でフォトダイオード構造に入射する光や散乱光が暗電流ダイオードに達して、隣接する構造との間でクロストークが生じうる。
【0030】
感度を改善する目的で、複数のフォトダイオード構造と、フォトダイオード構造の第1の部分を覆う一方で周囲光がフォトダイオード構造の第2の部分に達することが可能であるように配置されている光遮蔽体と、を備えたフォトダイオードアレイであって、第1の部分が、基準フォトダイオードのグループを定義しており、第2の部分が、露出したフォトダイオードのグループを定義している、フォトダイオードアレイ、を提案する。光遮蔽体は、遮蔽体の光遮蔽材料が周囲光から基準フォトダイオードを覆う一方で、周囲光が残りのフォトダイオード構造に達することが可能でありしたがってこれらのフォトダイオード構造が周囲光にさらされるように、フォトダイオード構造に対して配置されている。遮蔽体は、遮蔽体構造に入射する光の少なくとも90%、または遮蔽体構造に入射する光の少なくとも99%を光遮蔽体が遮蔽するように、光遮蔽材料を含む。
【0031】
本開示の文脈においては、語句「基準ダイオード」または「暗電流ダイオード」は、(フォトダイオードの法線に沿った視点からフォトダイオードを見たときに)遮蔽体によって完全に覆われているフォトダイオード構造のグループのフォトダイオードに関連して使用することができる。
【0032】
本開示の文脈においては、語句「露出したダイオード」または「フォトダイオード」は、(フォトダイオードの法線に沿った視点からフォトダイオードを見たときに)遮蔽体によって最大でも部分的に覆われているフォトダイオード構造のグループのフォトダイオードに関連して使用することができる。
【0033】
図2は、いくつかの態様を説明するための例示的な一実施形態を示している。両方のダイオードが、互いに隣接して共通のp型基板125に配置されている。各ダイオードは、p型ドープ基板にそれぞれ配置されているn型ドープ井戸112,122を備えている。基板125に電気的に接触するための共通のアノードコンタクト124が、表面に配置されている。露出したフォトダイオード11aに電気的に接触するためのコンタクト113が、n型井戸112の上に配置されている。同様に、コンタクト123が基準ダイオード12aの井戸122の上に配置されている。
【0034】
基準フォトダイオードおよび露出したフォトダイオードは、好ましくは物理的に同一であり、距離dにおいて互いに隣接している。しかしながら製造時の変動に起因して、n型ドープ井戸112,122の横方向の拡散は良好に制御されない。フォトダイオードおよび基準フォトダイオードの両方において、横方向の拡散はダイオードごとに変化しうる。結果として、光電流の分布および暗電流の分布が大きいことがある。
【0035】
このような分布の結果を低減する目的で、提案する原理によれば、基準ダイオード12aの上方に遮蔽要素(すなわち光遮蔽体121a)が配置されている。遮蔽体121aによって覆われている領域は、基準ダイオード12aによって覆われている基板内の領域よりも大きい。言い換えれば、
図2において理解できるように、光遮蔽体121aの横寸法は、この側面図においては、n型井戸122を含む基準ダイオードの横寸法と、フォトダイオードと基準ダイオードの間の距離dとにわたって延びている。結果として光遮蔽体は、横方向にフォトダイオード112のn型井戸の上に重なっている。フォトダイオードの横方向領域が距離dの半分まで「延在して」おり、同様に基準ダイオードが距離dの半分まで延在していると想定すると、光遮蔽体121aは、基準ダイオード12aの領域を完全に覆い、かつフォトダイオードの領域、特にp型基板の表面における領域を部分的に覆っている。フォトダイオード11aの領域にわたる光遮蔽体の重なりは、数マイクロメートルとすることができる。距離aは、例えば1μm~20μmの範囲内とすることができる。同様に、合計の重なりは、5μm~50μm以上の範囲内とすることができる。
【0036】
したがって光遮蔽体の開口部は、フォトダイオードの対応する領域よりも小さい。光遮蔽体121aは、アルミニウム、または任意の別の光遮蔽材料を含むことができる。このような光遮蔽材料は、浸透性ではないことが多く、遮蔽体の光遮蔽領域の中をガスが浸透することを阻止する。フォトダイオードアレイの製造は、しばしばアニーリングステップを含み、このステップは、光センサの上に光遮蔽体が取り付けられた後に実行されうる。フォトダイオード構造の同程度の効果的なアニーリングを得る目的で、遮蔽体は、遮蔽体とフォトダイオードアレイとの間に水素が拡散して流れるための空間が存在するように配置されていることが好ましい。したがって光遮蔽体121aは、光遮蔽体と基準ダイオードとの間にこのような空間を設けるため、基準ダイオード12aに対して距離hに配置されている。間の空間は、アニールされたフォトレジスト、シリコン酸化物、または任意の別の適切な材料によって満たされる。基準ダイオード12aの表面と光遮蔽体との間の距離hは、数マイクロメートルとすることができる。距離hは、光遮蔽体のサイズに応じたものとすることができる。
【0037】
いくつかの実施形態においては、1つの露出したフォトダイオードの横方向領域と、光遮蔽体によって覆われていない対応する透過域の領域の比は、0.9未満(例えば0.75未満、例えば0.5未満)である。
【0038】
図3は、光遮蔽体と基準ダイオードとの間の所与の距離hの場合における、重なり量に対する、結果としての入射光のクロストークを描いた図を示している。この点において「クロストーク」とは、基準ダイオードに達して偽信号を発生させる入射光である。図から理解できるように、重なりが大きくなるとクロストークが著しく減少する。重なりによる恩恵は、フォトダイオードの照射領域が小さくなることによる信号の損失よりも依然として高い。
【0039】
図4は、本出願のいくつかの態様を図解した周囲光検出器回路の一実施形態を示している。この回路は、第1の信号または電流経路151と、第2の信号または電流経路152とを備えた差動増幅器150、を備えている。第1の信号経路は、出力ノードIOUTと供給ノードVDDとの間に配置されている少なくとも1つのフォトダイオード11bおよびミラートランジスタ158を含む。第2の信号経路は、少なくとも1つの基準ダイオード12bおよび基準トランジスタ153を備えており、これらの両方は、出力ノードIOUTと供給ノードVDDとの間に直列に配置されている。並列に接続された5つの基準ダイオードが存在し(M=5)、
図4に描いたように、そのうちの1つのみの記号を図に示してある。同様に、第1の電流経路には20個のフォトダイオードが存在しており(M=20)、これらの比は1:4である。
【0040】
図4に示した周囲光検出器の動作時、各基準ダイオードおよびフォトダイオードにおいて等しい大きさの暗電流が生成される。結果として、第1の電流経路151を流れる暗電流は、第2の電流経路152を流れるそれぞれの暗電流よりも4倍大きい。暗電流を補正する目的で、トランジスタ153,154を使用して暗電流を補正する差動増幅器は、それぞれの経路において異なる暗電流を処理しなければならない。
【0041】
この目的のため、トランジスタ154およびトランジスタ153がカレントミラーを形成している。基準トランジスタ153およびミラートランジスタ154は、図示したように電界効果トランジスタとして実施することができるが、必要に応じてMOS-FETS、BJT、MES-FETなど異なる種類の素子を使用することができる。両方のトランジスタ153,154のゲートは、基準ダイオードと基準トランジスタ153の間のノード156に接続されており、したがってカレントミラーを形成している。このようなカレントミラーは、基準トランジスタを流れる電流を、事前定義される比によってミラートランジスタに複製(コピー)する(mirror)。この比は、パラメータMによって与えられる、両方のトランジスタの物理的寸法によって与えられる。このようなパラメータとしては、トランジスタのチャネル幅、またはその長さ、またはこれらの組合せが挙げられる。
図4の例においては、トランジスタ154に複製される電流は、基準トランジスタを流れる電流の4倍であり、したがって基準ダイオードの数とフォトダイオードの数の比に一致する。言い換えれば、第2の電流経路において基準ダイオード12bを流れる暗電流が、4倍されて第1の電流経路に複製される。したがって前者の暗電流が4倍に増幅され、第1の電流経路における暗電流を補正する。
【0042】
出力信号は、ノード155に印加される。ノード155は、供給ノードVDDとノード158との間に配置されている出力トランジスタ158のゲートにも接続されている。したがってトランジスタ158も、増幅器の出力段170の一部を形成している。出力段170は、経路トランジスタ172、抵抗器178、およびカレントミラー174を含むカレントミラー段をさらに備えている。トランジスタ172の経路は、供給ノードVDDと出力ノードIOUTとの間でカレントミラー174のトランジスタ175に直列に接続されている。抵抗器178は、供給ノードVDDと出力ノードIOUTとの間でカレントミラー174のトランジスタ176に直列に接続されている。トランジスタ175,176のゲートは、トランジスタ172とトランジスタ175の間のノード171に接続されており、したがってトランジスタ175を流れる電流がトランジスタ176に複製される。
【0043】
トランジスタ172とトランジスタ158も、幾何学的パラメータmおよびこのパラメータのそれぞれの値m=1およびm=Mによって与えられる事前定義される電流比を備えている。言い換えれば、トランジスタ172の電流は、トランジスタ158よりM倍大きい。トランジスタ158およびトランジスタ172も、ミラー比1:Mのカレントミラーを形成している。トランジスタ158を流れる電流がM倍されてトランジスタ172に複製される。同様に、トランジスタ172を流れる電流が、そのような比だけ増大されてトランジスタ176に複製される(トランジスタ175,176も
図4に示したように1:Nの比を備えている)。結果として、動作時、ノードIOUTにおける出力電流は、フォトダイオードの電流と、トランジスタ172,158の比(M/1)と、トランジスタ176,175の比(N/1)とを乗じた値に等しい(I
OUT=I
photo*M*N)。
【0044】
いくつかの例においては、
図2に示した構造の上の光遮蔽体によって、構造内にいくらかの張力が生じることがあり、またアニーリング工程からの残余水素によって、基準ダイオードの特性が変化しうる。これにより、第2の電流経路における基準ダイオードと、第1の電流経路におけるフォトダイオードの不一致が生じうる。この不一致を補正するために、補正回路160が設けられている。補正回路は、ノード162において補正信号を提供するDACを備えている。何らかの補正信号を加える、または差し引かなければならないかどうかに応じて、出力ノードが第1の信号経路または第2の信号経路に選択的に結合される。
【0045】
図5を参照し、DACは、基準ノードVSSおよび供給ノードVDD、ならびに2つの出力ノードOUT1およびOUT2を備えていることができる。出力ノードOUT1,OUT2は、それぞれ第1の電流経路および第2の電流経路に接続されている。DACは、複数の補正ダイオードD1~D14およびスイッチS1~S14をさらに備えている。各ダイオードは、直列に接続されたスイッチを有する。ダイオードD1~D7は、それぞれに関連付けられる直列のスイッチと一緒に、基準ノードVSSと出力ノードOUT1/OUT2との間に並列に配置されている。ダイオードD8~D14は、それぞれに関連付けられる直列のスイッチと一緒に、供給ノードVDDと出力ノードOUT1/OUT2との間に配置されている。2つのさらなるスイッチS15およびS16は、補正ダイオードからそれぞれの出力ノードに選択的に信号が提供されるように切り替えられる。
【0046】
したがって各補正ダイオードは、選択的に切り替えて経路に接続する、または経路から接続解除することができ、出力ノードの一方において信号を提供する。ダイオードD1~D7(およびD14~D8)の領域は、1つのダイオードの領域が次のダイオードの領域の半分であるように選択される。したがって8ビットの論理信号は、ダイオードの接続を切り替えて、256個の異なる補正値を提供することができる。ダイオードの代わりに、通常のトランジスタを使用することができる。
【0047】
図4に戻り、別の問題が生じることがあり、なぜなら電流増幅器の利得が大きく、M*Nの係数によっては数万の範囲となりうるためである。非常に明るい(例えばレーザなどによる)照明の場合、ノードIOUTにおける出力電流が極めて大きくなることがあり、それによって周囲光検出器の過熱や損傷が生じうる。これらの発生を防止する目的で、回路は電流制限器を備えている。電流制限器は、出力段の抵抗器178を使用し、クランプ用トランジスタ180をさらに備えている。クランプ用トランジスタ180は、供給ノードVDDとノード155との間に配置されている。トランジスタ180のゲートは、出力段の抵抗器178およびトランジスタ176に接続されている。動作時、合計出力電流が抵抗器178によって感知される。抵抗器178両端の電圧降下が事前定義されるしきい値に達すると、クランプ用トランジスタのゲートがオンになり、トランジスタ158およびトランジスタ172のカレントミラーにクランプ信号が提供される。クランプ信号は、トランジスタ158のゲート電圧を設定して、合計出力を定義済みの最大出力電流値に制限する。このような最大出力電流値は、抵抗器178の値で除したクランプ用トランジスタ180のしきい値電圧(このトランジスタの物理パラメータによって調整可能)によって設定することができる。
【0048】
さらなる態様においては、本周囲光検出器は、利得設定トランジスタ190を使用する選択可能な利得を備えている。本周囲光検出器は、数桁の動的なLUX範囲(例えば1m LUX~100k LUXの範囲)を備えていることができる。したがって、検出器が急激に最大出力電流値に達するのを防止するため、出力電流の異なる範囲が必要である。例えば用途によっては、低利得が必要である高いLUX範囲に光センサがさらされることがある。これは例えば、自動車のダッシュボード上の用途である。これに対して、携帯電話のガラス越しのセンサでは、しばしば光強度が低く、したがって同じ感度を達成するためには高い利得が必要でありうる。
図4は、2つの異なる選択可能な、ただし永久的な利得設定の例を描いている。選択可能な利得の利点として、用意しておくべき金型の数を減らすことができ、また検出器の製造が簡略化され、なぜなら実際の設定を後の段階で修正できるためである。図示した例においては、利得設定トランジスタは、ノード155と設定ノードIDIVとの間に配置されている。利得設定トランジスタ190のゲートがノード155に接続されている。高利得の設定においては、ノードIDIVが供給ノードVDDに結合されない。低利得の設定においては、ノードIDIVが供給ノードVDDに結合され、利得が1/Gに減少する。全体として、高利得モードにおける出力電流は、I
out=I
photo*M*Nによって与えられる。低利得モードにおける利得は、I
out=I
photo*(M/G)*Nによって与えられる。
【0049】
別の態様は、周囲光検出器の表面における基準ダイオードおよびフォトダイオードの配置について言及する。
図6は、第1の複数のフォトダイオード401および第2の複数の基準ダイオードを有する周囲光検出器アレイの上面図の例を示している。提示した例においては、第1の複数は第2の複数より4倍大きく、したがって
図4における増幅器の配置構造に一致する。フォトダイオードおよび基準ダイオードは、全長Dを有するパターンに配置されている。各ダイオードは寸法dを有し、照射領域wを有する。フォトダイオードおよび基準ダイオードの全体のレイアウトは、中心における基準ダイオード400aおよび各縁部の中央に沿ったさらなる基準ダイオードを有する共通の重心である。これによって製造時における工程勾配(process gradient)および変動が減少し、これにより整合性(matching)が改善される。
【0050】
さらに、図示した例に係る周囲光検出器アレイは、2つの「バランス縁部(balanced edges)」を備えている。検出器の縁部に沿ったフォトダイオード401の数は、そのような縁部に沿った基準ダイオードの数の4倍である。例えば、検出器の左縁部に沿った4つのフォトダイオード401a~401dおよび中央の1つの基準ダイオード400aが存在し、したがって軸線xを中心とする鏡面対称が形成されている。言い換えれば、フォトダイオードの総数と基準ダイオードの総数の比は、検出器の縁部に沿ったフォトダイオードと基準ダイオードの比に一致する。これにより、検出器アレイの合計チップ領域が減少し、ただしたとえ縁部における漏れ電流の場合にも比が維持される。上面は、透明材料(すなわちエポキシ樹脂、SOG、SiOなど)によって覆われている。光遮蔽体は、この図で暗い色によって描いたように基準ダイオードの各々を覆っている。クロストークを低減するため、光遮蔽体は、その横寸法が、隣接するフォトダイオードの一部の上方にも延びている(この図には示していない)。暗電流は照明のレベルとは実質的に独立しているため、すべてのフォトダイオードを部分的に覆う必要はない。結果として、ダイオード401dにおいて照明によって引き起こされる光電流は、フォトダイオード401cよりわずかに大きく、なぜならフォトダイオード401cは部分的に覆われているためである。照明に起因する光電流が差動増幅器において足し合わされるため、フォトダイオード間の小さい変動が補正される。
【0051】
図7は、3×3のチェッカー盤としての周囲光検出器アレイの別の例を示している。この実施形態においては、フォトダイオードと基準ダイオードとの比は、6:3=2:1である。基準ダイオードは、検出器アレイのチェッカー盤構造内の対角線に沿って配置されている。検出器アレイの縁部に沿った基準ダイオードに対するフォトダイオードの比も、依然として2:1である。類似する例を
図8に示してあり、
図8は、4×4の構造を有する周囲光検出器アレイを示している。この場合にも基準ダイオード400は、盤の対角線に沿って配置されており、フォトダイオード401が残りの空間を占有している。アレイの縁部に沿ったフォトダイオードと基準ダイオードの比は、3:1に等しい。
【0052】
したがって、縁部に沿ったダイオードの比と同じ全体の比を維持するためには、すべての基準ダイオードを周囲光検出器アレイの対角線の1つにわたって配置しなければならない。
【0053】
図9は、周囲光センサを形成する方法のいくつかの態様を示している。ステップS1においては、第1の導電型の基板層を設け、この層は主面を有する。この層は、例えばp型にドープすることができ、GaAs、GaN、または任意の別の適切な材料から形成することができる。ステップS2においては、互いに横方向に隣接しており第1の距離だけ隔てられた、第2の導電型のいくつかの領域を、基板層に堆積させる。形成される領域は、上面視においてチェッカー盤(例えばN×Nのチェッカー盤(Nは3以上の整数))を形成していることができる。各領域には、基板層の境界によって囲まれている第2の導電型の領域が含まれる。
【0054】
第2の導電型の領域と基板層との間にpn接合部が形成される。これらの領域は、基板層内にn型ドーパントを堆積させることによって形成することができる。これに代えて、p型ドープ層に、エッチングによって1つまたは複数の凹部を形成することができる。これらの凹部にn型ドープ材料を満たすことができる。pn接合部を形成するための別の代替方法としては、フォトダイオードまたはLEDの製造技術を使用することができる。
【0055】
基板層にn型井戸を形成した後、ステップS2において、基板層とn型井戸の両方に電気的に接触する。この目的のため、表面にコンタクトを堆積させる。2つの隣接するn型井戸の間の基板層の領域に、1つまたは複数の共通コンタクトを配置することができる。コンタクトは、金属、またはITOなどの透明導電性材料から形成する。コンタクトを、読み出し・増幅器回路に結合し、この回路は個別に設ける、または基板層に一体に形成する。
【0056】
最後にステップS3においては、1つまたは複数の領域の上方に光遮蔽要素を形成する。この光遮蔽体は次のように配置し、すなわち、その横寸法が、定義された領域の1つより大きく、したがって光遮蔽体が領域を完全に覆い、さらに、隣接する領域の一部にも延びている。光遮蔽体は、任意の不透明材料(暗色樹脂など)から形成することができる。好ましくは限られた反射率を有する金属も使用することができる。光遮蔽体を形成する前に、形成されたダイオードを含むアレイを、透明材料(SOG、SiOなど)によって完全に覆うことができる。光遮蔽要素は、覆われない領域の量が、覆われる量より大きいように、領域の一部のみを覆う。光遮蔽体は、特定の専用の領域の上方のみに堆積させることもでき、したがって上面視においてアレイの対角線を覆う。