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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】発泡体構成要素を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20221201BHJP
   B29C 44/02 20060101ALI20221201BHJP
   B29C 44/60 20060101ALI20221201BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
B29C44/00 F
B29C44/02
B29C44/60
B29K101:12
【請求項の数】 27
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021017926
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2021142747
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】10 2020 201 543.0
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510204998
【氏名又は名称】アディダス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ピーター ニュルンベルク
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ディエトマール ドラマー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ベッター
(72)【発明者】
【氏名】セバスチアン ハートル
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル ウォルフ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第01060908(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0334107(US,A1)
【文献】特表2007-532362(JP,A)
【文献】特開2012-214636(JP,A)
【文献】特開昭49-010266(JP,A)
【文献】特開2014-218066(JP,A)
【文献】特開昭59-045137(JP,A)
【文献】特開2017-029689(JP,A)
【文献】特開昭51-056875(JP,A)
【文献】VETTER LUKAS ET AL,Influence of Vacuum on the Prosity and Mechanical Properties in Rotational Molding,POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,米国,Society of Plastic Engineers,2019年06月12日,Vol 59, No.8,p.1544-p.1551,URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full-xml/10.1002/pen.25152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60;67/20
C08J 9/00- 9/42
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体構成要素を作製する方法であって、
a.粒子状出発原料を金型内に提供するステップと、
b.出発原料を10 ~10 Pa・sの粘度に軟化させるステップと、
c.発泡剤を使用することなく、金型内で圧力変化を誘発し、軟化した出発原料の少なくとも一部分で発泡を引き起こすステップと、
d.発泡した出発原料を凝固させるステップとを含む、方法。
【請求項2】
出発原料が、0.01~3mmサイズの粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
出発原料が、熱可塑性および/または架橋性の高分子材料を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
化した出発原料少なくとも1つのガス有物を含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
発泡が、軟化した出発原料内に閉じ込められた少なくとも1つのガスの膨張によって引き起こされる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
軟化させるステップが、出発原料の加熱を含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
出発原料の加熱が、出発原料に直接熱を入れることまたは金型を介して熱を入れることによる加熱を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
軟化した出発原料内ガス含有物の数が、加熱の温度プロファイルを介して調整可能である、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
出発原料のうち金型に接触している縁部層が、出発原料の他の領域より少ないガス含有物を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
縁部層が、0.1~2.0mm厚さを有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
出発原料の処理温度が、その溶融温度を上回る、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
金型内の温度が、金型の少なくとも2つの領域内で異なる、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
圧力変化が、圧力の低下を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
圧力変化が、0.05~5.0バールある、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
軟化前の金型内の初期圧力が、大気圧または超過圧力に対応する、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
超過圧力が、圧縮空気または窒素で提供される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
圧力変化の誘発が、出発原料の少なくとも一部分の溶融温度に到達したとき、または溶融温度を上回ったときに、圧力変化を誘発することを含む、請求項1116のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
金型内の圧力変化の絶対値が、金型の少なくとも2つの領域内で異なる、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
これらの領域のそれぞれにおける発泡が、金型内の少なくとも2つの領域の温度および/または圧力差によって個々に調整可能である、請求項1218のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
発泡が、金型の少なくとも1つの領域では誘発されない、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
凝固が、圧力変化を誘発した後の凝固を含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
凝固が、発泡した出発原料の冷却を含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
発泡体構成要素の密度が、圧力変化の量によって少なくとも部分的に調整可能である、請求項1~22の1つに記載の方法。
【請求項24】
発泡体構成要素の構造が、粒子の材料、粒子の形状、粒子サイズ、および粒子サイズの分布という出発原料の特性のうちの少なくとも1つによって、少なくとも部分的に影響を与えられる、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
金型に第2の原料を導入することをさらに含む、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
第2の原料が、充填剤または補強要素を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第2の原料では発泡が生じない、請求項25または26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体構成要素を作製する方法、その方法を実行するための金型、およびそのように作製された発泡体構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡剤を使用した発泡体構成要素の作製は、よく知られているプロセスである。発泡剤による高分子の発泡は、たとえば物理的または化学的に行うことができる。加えて、低粘度高分子を処理して、構造を機械的に、たとえば噴霧によって発泡させることもできる。知られている物理的発泡プロセスおよび方法では、高圧下で発泡剤が溶融物に投与され、したがって溶融物に溶解される。典型的な発泡剤としては、炭化水素、特にブタンおよびペンタン、ならびに不活性ガス、特に二酸化炭素、および窒素が挙げられる。知られている化学的プロセスでは、溶融物に化学物質が導入され、それにより熱の影響を受けて化学反応でガス生成物が形成される。典型的な化学発泡剤としては、イソシアン酸塩、アゾジカルボンアミド、ヒドラジン、炭酸亜鉛、または重炭酸ナトリウムが挙げられる。物理的または化学的発泡プロセスが使用される一般的なプロセスとしては、射出成形、押出成形、またはオートクレーブプロセスが挙げられる。ここで、溶解したガスの気泡形成または核形成は、たとえば発泡押出成形の場合に溶融物がノズルを出るときと同様に、圧力降下によって生じる。気泡成長およびその結果得られる発泡体の気泡は、ここで生じる圧力降下、発泡剤の含有率、および原料内の発泡剤の分布によって主に決定される。気泡の安定化は、プラスチックの冷却および凝固によって生じる。
【0003】
たとえば、国際公開第2015/182721号パンフレットは、発泡成形品の作製について言及している。
【0004】
中国特許第105451956号明細書は、低密度の発泡体を作製する方法について言及している。
【0005】
欧州特許第2139658号明細書は、固体の外層および発泡コアを有する発泡プラスチック部品を作製する方法について言及している。
【0006】
さらに、International Journal of Polymer Science に発表した、Vetter 他"Influence of vacuum on the morphology and mechanical properties in rotational molding"は、高度な設計の融通性を有する継ぎ目のない中空体の作製に回転成形が好適であることについて言及している。
【0007】
知られている発泡プロセスの欠点は、知られている発泡剤の大部分が環境に悪影響を与える可能性があることであると分かっている。加えて、作製された発泡体構成要素内に発泡剤の一部が残留するリスクがあり、これは上述した環境汚染に加えて、これらの発泡体構成要素、たとえばスポーツ用品の構成要素、車両内の絶縁材料などの近くにいる生物の健康にも悪影響を与える可能性がある。さらに、発泡体構成要素の作製における発泡剤の使用は追加のコストを招き、それによりこれらのプロセスの効率を低減させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/182721号パンフレット
【文献】中国特許第105451956号明細書
【文献】欧州特許第2139658号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Vetter 他"Influence of vacuum on the morphology and mechanical properties in rotational molding" International Journal of Polymer Science
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の問題は、現況技術の欠点を克服または少なくとも軽減した、発泡体構成要素を作製する方法を提供することである。特に、本発明による方法は、発泡剤の余分な追加を必要としない、発泡体構成要素の効率的な作製を可能にするものとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この問題は、請求項1に記載の方法によって解決される。従属請求項は、有利なさらなる実施形態を含む。
【0012】
本発明による発泡体構成要素を作製する方法は、(a.)粒子状出発原料を金型内に提供するステップと、(b.)出発原料を軟化させるステップと、(c.)発泡剤を使用することなく、金型内で圧力変化を誘発し、軟化した出発原料の少なくとも一部分で発泡を引き起こすステップと、(d.)発泡した出発原料を凝固させるステップとを含む。
【0013】
本発明者らは、金型内で圧力の変化を誘発することによって、軟化した出発原料の少なくとも一部分で発泡を引き起こすことが可能になることを認識した。それによって、出発原料を軟化させることで、最初に粒子の局所的な焼結を招くことができる。本発明による発泡は、プロセス雰囲気のほかに追加の発泡剤の使用を必要としない。本発明の文脈で、追加の発泡剤とは、たとえば現況技術の化学的または物理的発泡プロセスからすでに知られている従来の発泡剤を指す。したがって、本発明による発泡は、追加の発泡剤を用いない物理的発泡として分類することができる。したがって、本発明は、追加の発泡剤に基づく従来の方法と比較して、発泡体構成要素を作製するための効率的かつより費用効果の高い方法を表すだけではない。追加の発泡剤の必要をなくすことによって、環境バランスも改善され、それにより発泡体構成要素のより持続可能な作製が可能になる。
【0014】
いくつかの実施形態では、出発原料は、0.01~3mm、好ましくは0.02~1.5mm、特に好ましくは0.05~0.7mmのサイズの粒子を含むことができる。本発明者らは、粒子サイズの選択が、そこから作製される発泡体構成要素の品質に決定的な影響を与えることを見出し、指定の範囲の粒子サイズが、特に有利であることが判明した。特に、粒子サイズを使用して、作製された発泡体構成要素内の最終的な気泡サイズに明確に影響を与えることができる。さらに、粒子サイズは、気泡分布に影響を与えることができ、気泡分布は、発泡体構成要素の用途に応じて調整することができる。
【0015】
本発明で使用される出発原料は、熱可塑性および/または架橋性の高分子材料とすることができる。架橋性高分子材料は、熱硬化性材料を含むことができる。このようにして、本発明は、様々な異なる出発原料のための方法を表す。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、軟化した出発原料は、10~10Pa・s、好ましくは10~10Pa・sの範囲内の粘度を含むことができる。本発明者らは、指定の粘度の軟化した出発原料が、発泡を引き起こすのに特に有利であることを認識した。たとえば、出発原料の十分な流動性および/または変形性は、誘発圧力が降下したときの出発原料内の含有物の膨張のための前提条件である。軟化した出発原料の粘度が低すぎる場合、膨張プロセス前または膨張プロセス中に、軟化した出発原料内でガス含有物を安定させることができない。この場合、ガス含有物が表面へ拡散する可能性がある。他方では、粘度が高すぎる場合、少しでも膨張プロセスを引き起こすのに、相当な圧力差が必要になる可能性がある。軟化した出発原料の粘度の選択はまた、ガス含有物のタイプ、特に膨張したガス含有物の気泡壁の厚さにも影響を与えることができる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(b.)の軟化は、軟化した出発原料内に少なくとも1つのガス、特に空気または窒素の含有物を含むことができる。本発明者らは、出発原料の軟化中、高粘度の粒子縁部層が形成する可能性があることを見出した。これは概して、「焼結」と呼ばれる。これらの焼結プロセスの途中で、粒子状出発原料間に存在するプロセスガスまたは混合プロセスガス、特に空気または窒素が、軟化した出発原料内に密閉される。別法または追加として、そのようなガス含有物は、多孔性の粒子を有する出発原料によって引き起こすこともできる。この場合、少なくとも1つのガスは、個々の粒子間に存在しうるだけではなく、多孔性の粒子状出発原料内にもすでに存在する可能性がある。どちらの場合も、金型内の化学的発泡剤または追加のガスを不要にすることができ、したがって環境の保護に役立つことができる。加えて、空気などの金型内にすでに存在するガスまたは混合ガスを使用することで、方法のコストを低減させることができる。さらに、窒素などの保護ガスをプロセスガスとして使用して、軟化した出発原料における熱酸化による劣化プロセスを回避することが可能である。空気を混合プロセスガスとして使用するのと同様に、これはまた、環境に優しくかつ/または費用効果が高いはずである。さらに、保護ガスは、材料にとって空気より穏やかに使用することができる。
【0018】
加えて、発泡は、軟化した出発原料内に閉じ込められた少なくとも1つのガスの膨張によって引き起こすことができる。このようにして、本発明は、軟化した材料内にガス含有物を生成し、金型内の圧力を変化させることによってそれらのガス含有物を膨張させ、したがって発泡させる特に有利な方法を表す。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(b.)の軟化は、出発原料の加熱を含むことができる。加熱による出発原料の軟化は、現在の制御技術によって非常に精密に制御することができる方法ステップを表す。これは、本発明による高品質な発泡体構成要素の作製にとって重要な要因である。たとえば、加熱によって、軟化材料の粘度を非常に精密に調整することが可能であり、それにより発泡体の形成に影響を与えることができる。
【0020】
さらに、出発原料の加熱は、出発原料に直接熱を入れることまたは金型を介して熱を入れることによる加熱を含むことができる。追加または別法として、加熱は、熱伝導または対流によって行うことができる。
【0021】
出発原料に直接熱を入れる場合、これは、電磁放射、特に1~300GHzの範囲内の電磁放射によって実現することができる。加えて、熱放射、特に赤外範囲内の熱放射を使用することができる。どちらの場合も、金型へ放射を直接誘導すること、または金型内に放射エミッタを配置することが可能である。このようにして、本発明により、金型自体を加熱する必要なく、金型内の出発原料の加熱が可能になる。したがって、従来の現況技術のプロセスと比較して、本方法のエネルギーおよびコスト効率を改善することができる。
【0022】
金型を介して出発原料に熱を入れる場合、軟化した出発原料内に、金型の壁から金型の内部へ減少する温度勾配を生じさせることができる。このようにして、たとえば、金型の内壁に接触している粒子状出発原料が最初に軟化させられる。これにより、出発原料のうち最初に軟化させられた層を金型の壁に付着させることができる。したがって、さらに内側の粒子は、すでに可塑化された粒子に接触することによって焼結することができる。したがって、粒子状出発原料は、原料全体が溶融状態になるまで、層ごとに溶融させることができる。これにより、本発明による軟化した出発原料内に有利なガス含有物が得られる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、軟化した出発原料内の複数のガス含有物は、加熱の温度プロファイルを介して調整可能とすることができる。本発明者らは、大規模な熱供給によって、空気または窒素などの存在するガスまたは混合ガスの可溶性に応じて、軟化した出発原料内のガス分子の特に高分子溶融物への拡散を生じさせることができることを見出した。それによって、軟化した出発原料の領域の温度プロファイルに応じて、異なる層または領域内のガス含有物の数を選択的に調整することができる。たとえば、熱供給によって、ガス含有物の数を低減させることが可能である。
【0024】
特に、出発原料のうち金型に接触している縁部層は、出発原料の他の領域より少ないガス含有物を含むことができる。金型を介して熱を入れた場合、外側から内側への出発原料の加熱が生じる。このようにして、軟化材料のうち金型壁に接触している領域内のガス含有物を最初に低減または溶解させることができる。これによりたとえば、標的を定めた温度制御によって、調整可能な縁部層の厚さを有する一体的な発泡構造を作製することが可能になる。「一体的な発泡構造」という用語は、本発明に関しては、発泡体の気泡のコアと本質的に気泡のない縁部とを含む発泡構造として理解されるべきである。「本質的に気泡のない縁部」という用語は、作製に典型的な変動および不正確性を包含する。
【0025】
この場合、縁部層は、0.1~2.0mm、好ましくは0.3~1.7mm、特に好ましくは0.5~1.5mmの厚さを有することができる。このようにして、本発明は、数マイクロメートルの好ましい厚さの縁部層を含む一体的な発泡構造を作製する方法を表す。本発明によって、発泡体構成要素の特に高い曲げ強度を実現することができる。さらに、発泡体構成要素の低い密度を実現することができる。密度が低いということは、たとえば、発泡体構成要素の重量にプラスの作用がある。加えて、発泡体構成要素を作製するための原料コストを低減させることができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、出発原料の処理温度は、その溶融温度を上回ることができる。このようにして、たとえば、軟化材料内のガス含有物の密度を制御することができる。したがって、発泡体構成要素の構造、特に発泡体の密度または発泡の程度を、それぞれの用途に合わせて適合させることができることが有利である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、金型内の温度は、金型の少なくとも2つの領域内で異なることができる。さらに、圧力変化が生じる温度の選択は、密度、気泡サイズ、気泡分布などの発泡体構成要素の特性に影響を与えることができる。このようにして、たとえば、金型内の異なる領域の局所的な温度制御によって明確に調整することができる不均質な熱条件において、局所的な発泡または局所的に異なる発泡を引き起こすことができる。金型内の局所的に変動する温度プロファイルを介して、段階的な特性を生成することも可能である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、圧力変化は、圧力の低下を含むことができる。本発明者らは、金型内の圧力を低下させることによって、存在することができるまたは意図的に引き起こすことができる軟化した出発原料内のあらゆるガス含有物が、特に膨張によって、圧力低下に適合することを見出した。したがって、有利には、圧力低下を使用して、発泡を提供することができる。誘発圧力の低下によってガス含有物を膨張させるための前提条件は、膨張しているガス含有物を取り囲む軟化した出発原料の十分な流動性または変形性である。外部要因によってガス膨張が可能である場合、発泡は、少なくともガス含有物内に存在する圧力が金型内の圧力低下によって設定された圧力に対応するまで生じることができる。このようにして、圧力低下は、ガス含有物のサイズの増大、特にそれに起因する気泡サイズを調整するためのパラメータを含むことができる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、圧力変化は、0.05~5.0バール、好ましくは0.1~2.0バール、特に好ましくは0.2~1.0バールに相当することができる。本発明者らは、現況技術から証明されている方法とは対照的に、本発明による発泡体構成要素を作製する方法にとって、数百ミリバールでも十分となりうることを認識した。したがって、本発明による方法にとって、より安価に作製することができる金型が好適であり、そのような金型は、小さい圧力差に適合させるだけでよい。これにより、特許請求される方法の相当なコストの低減をもたらすことができる。特に、タンク、デバイスおよび機器向けのハウジングなど、通常は回転成形によって作製される大型の発泡体構成要素の作製では、必要とされる圧力差が低いため、金型の作製で相当なコストの節約を実現することができる。加えて、金型内のより低い圧力差は、証明されている方法と比較すると、より迅速に実現される。それによって、個々の発泡体構成要素の作製プロセスの継続時間を短くすることができ、証明されているより長く続く方法より、本発明による方法が効率的になる。加えて、本発明による方法は、使用される金型を高い圧力に適合させるためによりコスト集約的な成形技法が必要とされるため、物理的発泡がほとんど除外される方法にも、本発明による物理的発泡をアクセス可能にする可能性を提供することができる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、軟化前の金型内の初期圧力は、大気圧または超過圧力に対応することができる。本発明者らは、軟化した出発原料内に発泡を引き起こすパラメータのうちの1つが、出発原料の軟化後の圧力変化の絶対値であることを見出した。したがって、1大気圧の初期圧力は、金型内に負圧を生じさせることによって、発泡を引き起こすことができる。他方では、金型内で1大気圧を上回る初期圧力、すなわち超過圧力を使用して、超過圧力を特に大気圧まで低減させることによって、発泡を引き起こすことが可能である。このようにして、本発明による方法は、金型の内部圧力に関して融通性のある方法を表す。これはたとえば、使用される金型、特にそれぞれ超過圧力もしくは過小圧力に対するその適合性、圧力変化の誘発後、特に発泡した出発原料の凝固中もしくは凝固後のさらなる製造ステップ、および/または他のパラメータに関して、重要な役割を担うことができる。
【0031】
さらに、本発明者らは、出発原料の一部、特に最も外側の層または領域のみが軟化状態になった時点で超過圧力を生成することによって、この軟化部分内のガス含有物を低減させることができることを見出した。超過圧力が生成されて初めて軟化させられる部分、層、または領域では、ガス含有物は依然として生じることができる。後に圧力を低下させることによって、超過圧力が生成された後も軟化部分に残留しているこれらのガス含有物を膨張させることができる。金型内で超過圧力または過小圧力が印加される時点を制御することによって、発泡体構成要素、個々の層、または発泡体構成要素全体の層の厚さ、発泡の程度、材料密度、または他のパラメータを明確に調整することができる。
【0032】
さらに、超過圧力は、圧縮空気を含むことができる。このようにして、本発明による発泡体構成要素の作製では、コスト集約的でありかつ/または環境に有害な追加のガスの使用を回避することができる。別法として、超過圧力は、圧縮窒素を含むことができる。これは、空気と比較して、等しく費用効果が高くかつ/または環境に優しい発泡体構成要素を作製する方法を提供する。さらに、窒素を使用することによって、軟化した出発原料における熱酸化による劣化プロセスを回避することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、圧力変化の誘発は、出発原料の少なくとも一部分の溶融温度に到達したとき、または溶融温度を上回ったときに、圧力変化を誘発することを含むことができる。本発明者らは、出発原料の粘度が温度に応じて変化することを認識した。さらに、本発明者らは、本発明による発泡が、密度、気泡サイズ、気泡数などの発泡体の上述したパラメータに関して、軟化材料の粘度に応じて異なる形で発生することを見出した。したがって、出発原料の溶融温度に対して異なる温度で圧力変化を誘発することが可能であるということは、発泡体構成要素のパラメータを調整することが可能であることを表す。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、金型内の圧力変化の絶対値は、金型の少なくとも2つの領域内で異なることができる。圧力変化の絶対値は、発泡した出発原料内の個々の気泡のサイズにとって本質的なパラメータを表すため、少なくとも2つの異なる圧力変化範囲によって、発泡体構成要素内の変動する気泡サイズを調整することができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、これらの領域のそれぞれにおける発泡は、金型内の少なくとも2つの領域の温度および/または圧力差によって個々に調整可能とすることができる。したがって、本発明による方法は、発泡体構成要素の個々の領域を、意図される用途に個々に調整する可能性を提供する。たとえば、安定性がますます必要とされる領域では、発泡体構成要素内の気泡サイズを意図的に小さく抑えることができる。さらに、軽量であることが有利な別の部分では、気泡サイズを増大させることができ、かつ/または出発原料の密度を低減させることができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡は、金型の少なくとも1つの領域では引き起こされないことがある。このようにして、本発明は、作製プロセス中に、発泡体構成要素内に発泡領域および非発泡領域を提供する可能性を提供する。したがって、発泡領域および非発泡領域の追加の接合を不要にすることができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、凝固は、圧力変化を誘発した後の凝固を含むことができる。本発明者らは、選択された圧力変化による流動性または変形性がガス含有物のさらなる膨張を可能にしなくなるとすぐに、その結果生じる発泡構造の安定化または凝固が生じることを認識した。したがって、誘発圧力の変化後まで、特に発泡が開始される後まで、凝固前に待機することが有利である。架橋性出発原料、たとえば熱硬化性出発原料の場合、架橋反応が、発泡構造の凝固または安定化をもたらすことができる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、凝固は、発泡した出発原料の冷却を含むことができる。たとえば、熱可塑性出発原料の場合、凝固は、軟化した出発原料を冷却プロセス中に凝固させることによって実現することができる。したがって、発泡した出発原料の冷却、特に金型の冷却による冷却が、有利でありかつよく制御可能な凝固プロセスとなりうる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡体構成要素の密度は、圧力変化の量によって少なくとも部分的に調整可能とすることができる。本発明者らは、圧力変化の量によって、軟化した出発原料内の個々のガス含有物のサイズの増大を調整することができることを認識した。発泡原料構成要素のガス含有物のサイズの増大は、その密度の低減を意味するため、したがって発泡体構成要素の密度は、圧力変化の量によって効率的に調整することができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、粒子の材料、粒子の形状、粒子サイズ、および粒子サイズの分布という出発原料の特性のうちの少なくとも1つによって、発泡体構成要素の構造に少なくとも部分的に影響を与えることができる。
【0041】
本発明者らは、発泡体構成要素を作製する本発明による方法が、圧力による密度の制御に加えて、その結果得られる発泡体構成要素の特性に影響を与えるプロセス側のさらなる可能性を提供することを見出した。たとえば、出発原料の選択は、中央制御変数を表す。さらに、存在するガス含有物の膨張前の軟化状態における出発原料の最初の直径は、発泡した出発原料内の最終的な気泡のサイズおよび分布にとって決定的である。したがって、粒子形状、粒子サイズ、および粒子サイズ分布は、その結果得られる発泡構造にプラスの影響を与えることができる。同様に、発泡構造は、互いに別個に、たとえば並べて金型内に配置することができる異なる粒子サイズを使用することによって、異なる形で局所的にまたは発泡体構成要素の部分ごとに設定または調整することができる。したがって、金型内の均一の圧力降下による発泡後、その結果得られるガス含有物の気泡直径が変動することで、対応する領域または部分内に異なる発泡の程度をもたらすことができる。本発明によれば、複数材料の適用または高分子混合物の使用も可能であり、これは、発泡体構成要素に影響を与えまたは発泡体構成要素を適合させるためのさらなるパラメータを表す。たとえば、出発原料の粒子は、いわゆる「コアシース構造」を含むことができ、それによって粒子コアおよび粒子シースが、軟化または凝固挙動などの異なる特性を含むことができる。このようにして、とりわけ本発明による発泡体構成要素の処理および/または適用特性を意図的に最適化することができる。また、熱可塑性粒子コアを熱硬化的または弾性的に被覆することも可能である。このようにして、たとえば、軟化した出発原料の改善された圧縮変形挙動を実現することができる。同様に、本発明による発泡体構成要素を作製するために、弾性の粒子コア、たとえば古い車のタイヤまたは使い古したスポーツ用品からのたとえばリサイクル材料を、熱可塑性粒子被覆で被覆することができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、この方法は、金型に第2の原料を導入することをさらに含むことができる。このようにして、この方法は、様々な用途に適合させることができる発泡体構成要素の作製を提供する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、第2の原料は、充填剤または補強要素を含むことができる。したがって、たとえば、発泡体構成要素の有利な低密度のほかに、発泡体構成要素の特に高い安定性を実現することができる。同様に、本発明による方法によって、他の材料、特に充填剤または補強要素の様々な特性を発泡体構成要素に一体化することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、第2の原料では発泡が生じない。このようにして、出発原料の少なくとも一部における発泡にかかわらず、第2の原料の基本特性を保持することができる。さらに、両方の原料の特性を組み合わせることも可能である。
【0045】
別の態様では、本発明は、上述した実施形態の1つによる方法によって作製された発泡体構成要素に関する。
【0046】
発泡体構成要素を作製する方法の例に関連して上記ですでに説明した本発明の多数の利点は、発泡体構成要素および発泡体構成要素を作製するための金型の例にも等しく当てはまる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡体構成要素は、中空体を構成することができる。このようにして、本発明による方法は、特に回転成形によって、化学発泡剤を使用することなく発泡材料から高品質の中空体を作製するための効率的な可能性を表す。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡体構成要素は、発泡していない縁部層を含むことができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態では、縁部層は、0.1~2.0mm、好ましくは0.3~1.7mm、特に好ましくは0.5~1.5mmの厚さを有することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡体構成要素は、発泡剤を含まないものとすることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡体構成要素は、連続気泡、混合気泡、または独立気泡のガス含有物を含むことができる。このようにして、作製された発泡体構成要素において、連続気泡ガス含有物の場合の液体の吸収、または対照的に、独立気泡ガス含有物の場合の液体の反発などの異なる特性を設定することができる。独立気泡ガス含有物の場合、本発明による発泡体構成要素は、その調整可能な密度のため、有利には、浮体、特にボートの浮力補助、水泳補助、またはサーフボードとして適している。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡体構成要素は、一体的な発泡構造を構成することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡体構成要素は、絶縁材料として形成することができる。本発明による発泡体構成要素内でガス含有物の膨張が調整可能であり、空気および複数の高分子材料が低い熱伝導特性を提供するため、本発明による発泡体構成要素は、絶縁材料として特によく適することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡体構成要素は、制振材料、特にスポーツ用品向けの制振材料を含むことができる。すでに上述したように、本発明による方法を使用して、発泡体構成要素内のガス含有物の数およびサイズを調整することができる。さらに、この方法を使用して、熱可塑性エラストマなどのゴム弾性特性を有する出発原料から発泡体構成要素を作製することができる。このようにして、靴底に有利なものなどの優れた機械制振特性および快適性特徴を有する制振材料を特に効率的に作製することができる。特に、本発明による1つのプロセスステップにおいて、熱絶縁、制振、緩衝などの異なる特性を有することが有利なアウトソール、ミッドソールなどを含む靴底の異なる要素を作製することができる。これにより、時間およびコスト集約的な個々の要素の接合または接着の必要をなくすことができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、発泡体構成要素は、スポーツ用品、特にボールまたはプロテクタの一部を構成することができる。ボールの部分は、たとえば、1つの層のパネルまたは複数の異なる層のパネルを含むことができる。異なる層は、とりわけ、外側の上層、中間の発泡層、および底層を含むことができ、各層は異なる特性を含む。複数の異なる層は、別個に作製し、後にともに接合することができる。別法として、有利には、複数の異なる層、特にボールの内側の空気袋を含む層を、1つのプロセスで作製することができる。このようにして、本発明は、ボールを作製するための特に持続可能な方法を提供し、個々のパネル層の接着を不要にすることができる。加えて、1つのプロセスステップで個々の層を作製することで、現況技術からすでに知られている従来の方法と比較すると、残留材料の量が大幅に低減される。本発明による方法における複数の異なる層の作製は、ボールの作製に限定されるものではなく、複数の発泡体構成要素にも好適であることに留意されたい。スポーツ用品の部分がプロテクタに関する場合、これらは、ヘルメット、すね当て、胸当て、ジョイントプロテクタなどを含むことができる。そのようなプロテクタは、スポーツウェアに取り付けられるように適合させることができる。さらに、スポーツ用品の構成要素部分は、バックパック、バッグ、スティック、特にフィールドホッケー用スティックなどの少なくとも一部を含むことができる。
【0056】
別の態様では、本発明は、本発明による発泡体構成要素を作製する方法を実行するように適合された金型に関し、この金型は、制御デバイス、特に金型内の圧力を低減させるための制御デバイスを備える。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、金型は、最高50バール、好ましくは25バール、特に好ましくは10バール、最も好ましくは大気圧の最大圧力に適合させることができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、金型は、最高0.8バール、好ましくは0.5バール、より好ましくは0.2バール、特に好ましくは0.1バールの最小圧力に適合させることができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態では、圧力および/または温度は、金型内の少なくとも2つの領域で個々に調整可能とすることができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、金型は、可動になるように適合させることができる。このようにして、本発明による金型は、様々な成形プロセス、特に回転成形または運動成形に好適である。
【0061】
本発明は、次の実施形態を含む。
【0062】
[1]発泡体構成要素を作製する方法であって、
a.粒子状出発原料(110、111、112)を金型(230)内に提供するステップと、
b.出発原料(110、111、112)を軟化させるステップと、
c.発泡剤を使用することなく、金型内で圧力変化を誘発し、軟化した出発原料(113)の少なくとも一部分で発泡を引き起こすステップと、
d.発泡した出発原料(116)を凝固させるステップとを含む、方法。
【0063】
[2]出発原料(110、111、112)が、0.01~3mm、好ましくは0.02~1.5mm、特に好ましくは0.05~0.7mmのサイズの粒子を含む、[1]に記載の方法。
【0064】
[3]出発原料(110、111、112)が、熱可塑性および/または架橋性の高分子材料を含む、[1]または[2]に記載の方法。
【0065】
[4]軟化した出発原料(113)が、10~10Pa・s、好ましくは10~10Pa・sの範囲内の粘度を含む、[1]~[3]の1つに記載の方法。
【0066】
[5]軟化させるステップが、軟化した出発原料(113)内に少なくとも1つのガス(114)、特に空気または窒素の含有物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
【0067】
[6]発泡が、軟化した出発原料(113)内に閉じ込められた少なくとも1つのガス(114)の膨張によって引き起こされる、[5]に記載の方法。
【0068】
[7]軟化させるステップが、出発原料(110、111、112)の加熱(120)を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
【0069】
[8]出発原料(110、111、112)の加熱(120)が、出発原料(110、111、112)に直接熱を入れることまたは金型(230)を介して熱を入れることによる加熱(120)を含む、[7]に記載の方法。
【0070】
[9]軟化した出発原料(113)内の複数のガス含有物(114)が、加熱の温度プロファイルを介して調整可能である、[7]または[8]に記載の方法。
【0071】
[10]出発原料のうち金型(230)に接触している縁部層(517、617)が、出発原料(113)の他の領域より少ないガス含有物(114)を含む、[9]に記載の方法。
【0072】
[11]縁部層(517、617)が、0.1~2.0mm、好ましくは0.3~1.7mm、特に好ましくは0.5~1.5mmの厚さを有する、[10]に記載の方法。
【0073】
[12]出発原料(110、111、112)の処理温度が、その溶融温度を上回る、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
【0074】
[13]金型(230)内の温度が、金型(230)の少なくとも2つの領域内で異なる、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
【0075】
[14]圧力変化が、圧力(326)の低下を含む、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
【0076】
[15]圧力変化が、0.05~5.0バール、好ましくは0.1~2.0バール、特に好ましくは0.2~1.0バールである、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
【0077】
[16]軟化前の金型(230)内の初期圧力(325)が、大気圧または超過圧力に対応する、[1]~[15]のいずれかに記載の方法。
【0078】
[17]超過圧力が、圧縮空気または窒素を含む、[16]に記載の方法。
【0079】
[18]圧力変化の誘発が、出発原料(113)の少なくとも一部分の溶融温度に到達したとき、または溶融温度を上回ったときに、圧力変化を誘発することを含む、[12]~[17]のいずれかに記載の方法。
【0080】
[19]金型(230)内の圧力変化の絶対値が、金型(230)の少なくとも2つの領域内で異なる、[1]~[18]のいずれかに記載の方法。
【0081】
[20]これらの領域のそれぞれにおける発泡が、金型(230)内の少なくとも2つの領域の温度および/または圧力差によって個々に調整可能である、[13]~[19]のいずれかに記載の方法。
【0082】
[21]発泡が、金型(230)の少なくとも1つの領域では誘発されない、[1]~[20]のいずれかに記載の方法。
【0083】
[22]凝固が、圧力変化を誘発した後の凝固を含む、[1]~[21]のいずれかに記載の方法。
【0084】
[23]凝固が、発泡した出発原料(116)の冷却(123、323)を含む、[1]~[22]のいずれかに記載の方法。
【0085】
[24]発泡体構成要素の密度が、圧力変化の量によって少なくとも部分的に調整可能である、[1]~[23]の1つに記載の方法。
【0086】
[25]発泡体構成要素の構造が、粒子の材料、粒子の形状、粒子サイズ、および粒子サイズの分布という出発原料(110、111、112)の特性のうちの少なくとも1つによって、少なくとも部分的に影響を与えられる、[1]~[24]のいずれかに記載の方法。
【0087】
[26]金型(230)に第2の原料を導入することをさらに含む、[1]~[25]のいずれかに記載の方法。
【0088】
[27]第2の原料が、充填剤または補強要素を含む、[26]に記載の方法。
【0089】
[28]第2の原料では発泡が生じない、[26]または[27]に記載の方法。
【0090】
[29][1]~[28]のいずれかに記載の方法によって作製された発泡体構成要素。
【0091】
[30]発泡体構成要素が、中空体を構成する、[29]に記載の発泡体構成要素。
【0092】
[31]発泡体構成要素が、発泡していない縁部層(517、617)を含む、[29]または[30]に記載の発泡体構成要素。
【0093】
[32]縁部層(517、617)が、0.1~2.0mm、好ましくは0.3~1.7mm、特に好ましくは0.5~1.5mmの厚さを有する、[31]に記載の発泡体構成要素。
【0094】
[33]発泡体構成要素が、発泡剤を含まない、[29]~[32]のいずれかに記載の発泡体構成要素。
【0095】
[34]発泡体構成要素が、連続気泡、混合気泡、または独立気泡のガス含有物(515、615)を含む、[29]~[33]のいずれかに記載の発泡体構成要素。
【0096】
[35]発泡体構成要素が、一体的な発泡構造を構成する、[29]~[34]のいずれかに記載の発泡体構成要素。
【0097】
[36]発泡体構成要素が、絶縁材料として形成される、[29]~[35]のいずれかに記載の発泡体構成要素。
【0098】
[37]発泡体構成要素が、制振材料、特にスポーツ用品向けの制振材料を含む、[29]~[35]のいずれかに記載の発泡体構成要素。
【0099】
[38]発泡体構成要素が、スポーツ用品、特にボールまたはプロテクタの一部を構成する、[29]~[35]のいずれかに記載の発泡体構成要素。
【0100】
[39][1]~[28]のいずれかに記載の方法を実行するように適合された金型(230)であって、制御デバイス、特に金型(230)内の圧力を低減させるための制御デバイスを備える金型(230)。
【0101】
[40]金型(230)が、最高50バール、好ましくは25バール、特に好ましくは10バール、最も好ましくは大気圧の最大圧力に適合される、[39]に記載の金型(230)。
【0102】
[41]金型(230)が、最高0.8バール、好ましくは0.5バール、より好ましくは0.2バール、特に好ましくは0.1バールの最小圧力に適合される、[39]または[40]に記載の金型(230)。
【0103】
[42]圧力および/または温度が、金型(230)内の少なくとも2つの領域で個々に調整可能である、[39]~[41]のいずれかに記載の金型(230)。
【0104】
[43]金型(230)が、可動になるように適合される、[39]~[42]のいずれかに記載の金型(230)。
【0105】
以下、本発明の態様について、添付の図を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1A】本発明による方法の概略図である。
図1B】本発明による方法の概略図である。
図1C】本発明による方法の概略図である。
図1D】本発明による方法の概略図である。
図1E】本発明による方法の概略図である。
図1F】本発明による方法の概略図である。
図2】本発明による発泡体構成要素を作製するための金型の概略図である。
図3】本発明による方法を実行する時間に応じたそれぞれ圧力または温度の例示的なプロファイルの図である。
図4】誘発圧力低下に応じた本発明による発泡体構成要素の密度のプロファイルの図である。
図5A】異なる圧力低下を誘発した後の本発明による発泡体構成要素の概略図である。
図5B】異なる圧力低下を誘発した後の本発明による発泡体構成要素の概略図である。
図6A】本発明による異なる発泡体構成要素の概略図である。
図6B】本発明による異なる発泡体構成要素の概略図である。
図6C】本発明による異なる発泡体構成要素の概略図である。
図6D】本発明による異なる発泡体構成要素の概略図である。
図6E】本発明による異なる発泡体構成要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
以下、発泡体構成要素に対する本発明の例示的な実施形態について、より詳細に説明する。特徴の特有の組合せについて、本発明の例示的な実施形態に関連して説明するが、本開示はそのような実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。特に、本発明を実現するためにすべての特徴が存在する必要があるわけではなく、これらの実施形態は、1つの実施形態の特定の特徴と別の実施形態の1つまたは複数の特徴とを組み合わせることによって修正することができる。
【0108】
発泡体構成要素を作製する本発明による方法100の一例について、図1A図1Fを参照して以下に説明する。
【0109】
方法100は、第1のステップとして、粒子状出発原料、たとえば粉末、ペレット、微粒剤などを金型内に提供することを含む。粒子の最長膨張方向として理解される粒子のサイズは、0.01~3mmの範囲に及ぶことができる。図1A図1Fは、分かりやすくする理由で、閉じた金型を示していないことに留意されたい。代わりに、粒子の支持面が、本発明による金型の側壁131を表しており、図1Aでは、側壁131上に粒子状出発原料110の第1の層が設けられている。
【0110】
方法100は、出発原料を軟化させるステップをさらに含む。図1A図1Eで、軟化は、粒子状出発原料110の加熱120によって表されている。このプロセスは、一定の初期圧力pによって実行することができ、pは、大気圧または超過圧力とすることができる。加熱120は、金型を介して熱を入れることによって実現され、これは、金型壁131を照射することによって、特に赤外放射(IR放射)によって、または様々な熱によって温度制御される金型壁131によって実現することができる。別法として、加熱はまた、出発原料に直接熱を入れることによって、たとえば電磁放射またはIR放射によって実現することができる。この場合、金型内に放射エミッタを配置することができる。好ましい電磁放射範囲は、1~300GHzである。
【0111】
金型壁131の加熱120によって、粒子状出発原料110の第1の層が時間とともに軟化し始め、金型壁131に付着する。これは、第1の層110に関して図1Bに概略的に示されている。第2の層111、第3の層112、およびさらなる層内のさらなる粒子が、すでに軟化および可塑化された粒子とともに焼結し始める。したがって、粒子状出発原料は、層ごとに溶融し、出発原料全体が軟化された、特に溶融された液体の状態113になる。このプロセスが、図1C図1Eに示されている。分かりやすくする理由で、図1A図1Dの個々の層は、ステップごとに追加されていることに留意されたい。しかし、図示のように、1つのステップで粒子状出発原料の少なくとも一部を提供し、次いで層ごとに軟化させることが好ましい。
【0112】
溶融中、個々の粒子間のガス含有物114は、形成している溶融相で生じる焼結プロセスによって閉じ込められる。閉じ込められたガスまたは混合ガス114は、空気または窒素とすることができる。さらなるガス含有物114はまた、たとえば、多孔性の粒子を有する出発原料を使用することによって生じさせることもできる。粒子のサイズ、形状、および粒子サイズの分布は、溶融物113内のガス含有物114の寸法、数、および分布、したがって発泡の開始条件を大きく画定することができる。使用される高分子材料は、熱可塑性材料および/または架橋性材料とすることができる。発泡のためのさらなる前提条件は、軟化材料が粘性相でなければならないということであり、10~10Pa・s、好ましくは10~10Pa・sの領域の粘度が発泡にとって有利である。この範囲内で、粘性溶融物は、その流動性により、ガス含有物を膨張させるための空間を提供することができ、これにより最初に膨張が可能になる。他方では、溶融物は、この粘度範囲内で、溶融物内で膨張するガス含有物115を結合させるのに十分なほど強靭である。この結合により、軟化した出発原料113と比較すると密度がより低いために、膨張したガス含有物115が溶融物内で上昇することを少なくとも部分的に防止することができる。他方では、結合により、溶融物内の膨張したガス含有物115の気泡の崩壊または気泡壁の突破を防止することができる。このようにして、軟化した出発原料の粘度は、誘発圧力変化の量に加えて、異なる気泡構造、たとえば連続気泡、混合気泡、独立気泡などの形成のためのパラメータとすることができる。
【0113】
さらなるステップで、方法100は、プロセス雰囲気のほかに追加の発泡剤を使用することなく、金型内で圧力変化を誘発し、軟化した出発原料113の少なくとも一部分で発泡を引き起こすステップを含む。発泡は、溶融物113内の閉じ込められたガス114の膨張に基づく。膨張は、金型内の誘発圧力降下によって引き起こすことができ、プロセスの始めに印加された金型圧力および発泡を誘発するために印加された圧力は、pおよびpによって表される。好ましい圧力変化は、0.05~5.0バールの範囲内とすることができ、0.2~1.0バールの範囲内の圧力変化でも膨張にとって十分とすることができる。初期圧力の低下は、外部ポンプによって行うことができる。他方では、金型の気密封止された体積を増大させることによって、たとえば金型壁131の少なくとも一部分を動かすことによって、圧力低下を誘発することも可能である。発泡は、膨張に基づいて、ガス含有物115内の圧力が金型内の低下した圧力pに適合したとき、完了したと見なすことができる。
【0114】
方法100の最終ステップで、膨張したガス含有物115とともに、発泡した出発原料116を凝固または安定させなければならない。後に発泡体構成要素の発泡体気泡を形成する膨張したガス含有物115の安定化は、冷却プロセス123によって発泡した出発原料116を凝固させることによってもたらすことができる。別法として、架橋性高分子材料を出発原料として用いた場合、架橋反応を引き起こすことで、発泡体の気泡115の安定化をもたらすことができる。
【0115】
発泡体構成要素を作製するための本発明による金型230の一実施形態について、図2を参照して次に説明する。
【0116】
アセンブリ200は、シャフト234上に回転可能に取り付けられた金型230を含む。たとえば、均一の回転によって、実質上一定の厚さの発泡体構成要素を作製することができ、1~5%程度の作製に関連する厚さのわずかな差は、「実質上」という表現によって包含される。金型230は、円筒形の外壁231を備えており、外壁231は、下部フランジ232および上部フランジ233によって気密封止することができる。金型230は、たとえば、中空体を作製するのに好適とすることができる。さらに、金型230は、1ミリバールから最高50バールの範囲内の過小ならびに過大圧力の両方に好適であり、出発原料の軟化後のわずか数百ミリバールの圧力差で、発泡形成には十分とすることができる。外壁231は、IR放射器235によって加熱することができ、それによって、外壁231を介して、金型230内の出発原料(図2には図示せず)を加熱することができる。プロセス制御のため、金型230内に高温計236が配置されており、高温計236は、軟化した出発原料および/または溶融物の温度を判定することができる。高温計236の代わりに、または高温計236とともに、熱電素子または水晶振動子などの他の温度センサを使用することもできる。金型230の内部圧力を変動させることが可能になるように、回転ユニオン238を介して下部フランジ232にコネクタ237が取り付けられる。このコネクタ237は、圧力低下のために真空ポンプに接続することができ、ならびに過大圧力を生成するために圧縮器または圧縮ガスを使用するデバイスに接続することができる。金型230は、内部圧力を個々に調整することができる個々のセグメント(図2には図示せず)に分割することができる。金型の個々の領域はまた、別個に加熱または冷却することができる。金型の細分によって、段階的または部分的に異なる発泡体構成要素を作製することができる。
【0117】
図3は、本発明による方法の一例を実行するプロセスの継続時間に応じて、内部圧力の例示的なプロファイル300を実線340として示し、出発原料の温度を点線341として示す。初めに、出発原料は、前の製造プロセスからの金型の残留熱またはアセンブリ全体の廃熱により、室温320またはそれよりわずかに高い温度、すなわち10~15℃である。この方法を開始するとき、充填および封止された金型の内部圧力325は大気圧である。一定の温度傾斜321によって、出発原料は、溶融温度以上に加熱され、特定の、好ましくは等温の保持時間322にわたって、この温度で放置される。溶融温度を上回る保持時間322により、出発原料全体が軟化もしくは溶融状態で存在すること、または少なくとも粒子の表面を軟化させることによって焼結が可能であることを確実にすることができる。他方では、溶融温度を上回るように溶融物を維持することによって、溶融物内の複数の溶解したガス含有物を低減させることができる。金型を介して材料に熱が導入されるとき、これはまず金型壁に接触している層内で発生し、次いで溶融物の内部へさらに広がる。したがって、たとえば、特有の保持時間322にわたって、作製された発泡体構成要素内に、発泡のない外層および/または一体的な発泡構造を実現することができる。等温の保持時間322の終了後、冷却プロセス323が始まる。次に冷却プロセス323中、圧力低下326が生じる。圧力低下326、したがって真空印加の時点で、冷却プロセス323中の温度は、冷却プロセス323中に増大する溶融物の粘度に依存することができる。圧力低下326により、軟化した出発原料、すなわち溶融物内の溶解していないガス含有物が膨張し、発泡を引き起こす。ガス含有物の内部圧力が金型の低下した内部圧力に適合した後、発泡が完了する。過小圧力が維持される保持時間327は、粘度、圧力低下の絶対値、および発泡の他のパラメータに依存することができる。発泡原料が冷却プロセス323によって最終的に再び凝固し、発泡が安定したとき、再び内部圧力の増大328をもたらすことができ、その後大気圧329に到達し、金型を開くことができ、少なくとも部分的に完成した発泡体構成要素を取り出すことができる。例示的なプロファイル300に加えて、本発明の範囲内では、特に少なくとも1つの温度変化および少なくとも1つの圧力変化の異なる時点および絶対値によって、さらなるプロファイルも可能である。
【0118】
図4は、誘発圧力変化に応じて、製造された発泡体構成要素の密度の実験的に判定されたプロファイル400を示す。プロファイル400を確立するために、異なる誘発圧力変化下で少なくとも8つの発泡体構成要素が作製され、DIN EN ISO 845規格に従って、これらの発泡体構成要素の密度が判定され、その結果得られた測定点401間で補間402を行った。この場合、密度の低下は膨張したガス含有物に基づくため、これを発泡の測度または発泡の程度と見なすことができる。したがって、曲線402は、発泡体構成要素を作製する本発明で使用される方法にとって、発泡を引き起こすには数百ミリバールで十分となりうることをはっきりと示している。たとえば、わずか1バールの圧力差で、追加の発泡剤を使用することなく、本発明による発泡体構成要素の密度を3分の1未満に低下させることができる。したがって、本発明による方法は、軽量構造、ボートなどのための浮力補助、水泳補助、もしくはサーフボードの作製、または他の適用分野にとって特に好適である。
【0119】
異なる発泡の程度または密度を有する本発明による発泡体構成要素の写真画像500が図5Aに、コンピュータ断層撮影画像501が図5Bに、概略的に表されている。発泡体構成要素を作製するとき、高密度ポリエチレン、PE-HDが使用されたが、本発明の範囲内で、他の出発原料、特に熱可塑性または架橋性の高分子材料を使用することもできる。本発明による製造プロセスで圧力差が誘発されない場合、すなわちΔp=0の場合も、粒子状出発原料によって、凝固した出発原料516内にガス含有物514が生じうるが、これらは膨張した形では存在しない。金型壁に接触していた縁部層517にも、膨張したガス含有物は存在しない。したがって、この場合、縁部層517は、作製中に金型のうち発泡が引き起こされなかった部分に存在した発泡体構成要素の領域である。この挙動は、Δp=400ミリバールの誘発圧力低下とともにすでに変化し、したがって凝固した出発原料516内のガス含有物515はすでに、膨張した形で存在する。図5Bで、膨張したガス含有物515の大部分が独立気泡であることを容易に見ることができる。
【0120】
図5Aおよび図5Bにまた示すように、誘発圧力差がΔp=950ミリバールまたはΔp=999ミリバールに増大した場合、凝固した出発原料516内の膨張したガス含有物515のサイズもさらに増大する。Δp=950ミリバールの圧力変化の場合、ガス含有物は本質的に、すなわちわずかな例外を除き、混合気泡である。これは、Δp=999ミリバールへの圧力差のさらなる増大とともに変化し、この場合、ガス含有物515は、本質的に連続気泡である。縁部層517は常に、凝固した出発原料516の残り部分より少ないガス含有物を含むことに留意されたい。この縁部層517の厚さは、0.1mm~2.0mm、好ましくは0.5mm~1.5mmとすることができる。
【0121】
全体として、図5Aおよび図5Bによって、本発明による発泡体構成要素の密度が、圧力変化の量によって少なくとも部分的に調整可能であることを示すことができる。
【0122】
図6Aは、本発明による発泡体構成要素600および本発明による発泡体構成要素のうち発泡が発生しなかった部分601を、直接比較するために並べて示す。発泡体構成要素600、601はどちらも、凝固した出発原料616からなり、発泡体構成要素600内でのみ、膨張したガス含有物615がはっきりと見える。ガス含有物は、発泡体構成要素600の体積、特に厚さの大幅な増大を引き起こす。したがって、本発明は、追加の発泡剤を使用することなく、発泡していない出発原料と比較するとより低い密度を有する発泡体構成要素600の作製を可能にする。
【0123】
図6Bは、たとえば熱可塑性ポリウレタン、TPUから作られた別の発泡体構成要素610の概略拡大断面図を示す。発泡体構成要素610は、凝固した出発原料616内に膨張したガス含有物615を含む。加えて、たとえば、作製中に金型壁に接触していた縁部層617は、ガス含有物を含まない。このようにして、本発明による方法は、発泡剤を使用することなく、一体的な発泡構造を作製するために特に効率的に使用することができる。
【0124】
図6Cは、本発明による別の発泡体構成要素620を概略的に示す。発泡体構成要素610と同様に、発泡体構成要素620もまた、凝固した出発原料616内に、ガス含有物のない縁部層617と、膨張したガス含有物615とを含む。しかし、この場合、同じくガス含有物を含まないさらなる縁部層618が、発泡体構成要素620に加えられた。第2の縁部層618もまた、凝固した出発原料616または異なる原料からなることができる。出発原料から作製された場合、発泡体構成要素620のための可能な作製方法は、粒子状出発原料を金型内に提供するステップと、金型を閉じ、金型内に真空を誘発するステップと、出発原料の第1の部分、特に縁部層617に対応する部分を軟化させるステップと、金型内に大気圧を提供するステップと、出発原料の第2の部分、特にガス含有物が意図される部分を軟化させるステップであり、第2の部分の軟化させるステップが大気圧で実行される、軟化させるステップと、過小圧力を誘発して、第2の部分内で発泡を引き起こすステップと、過小圧力にある第3の部分、特に縁部層618に対応する部分を軟化させるステップと、発泡および非発泡出発原料を凝固させるステップと、凝固後に大気圧を提供するステップと、次に金型を開くステップとを含むことができる。このようにして、金型内の少なくとも2つの領域の温度および圧力プロファイルによって、これらの領域のそれぞれで発泡を個々に調整することができる。したがって、本発明は、1つの作製プロセスで異なる発泡の程度、したがって発泡体構成要素の特性を有する個々の層を提供するのに特に好適であり、個々の層の後の接着を不要にすることができる。本発明による方法は、3つの層に限定されるものではないことに留意されたい。本発明の方法によって、4つ以上の層および/または個々の層における異なる材料の使用を提供することもできる。
【0125】
図6Dは、本発明による別の発泡体構成要素630を概略的に示す。発泡体構成要素610、620と同様に、発泡体構成要素630もまた、凝固した出発原料616内に、ガス含有物のない縁部層617と、膨張したガス含有物615とを含む。しかし、この場合、同じくガス含有物を含むさらなる縁部層619が、発泡体構成要素630に加えられた。縁部層619は、凝固した出発原料616とは異なる出発原料からなるが、同じ原料からなることもできる。同様に、第2の原料は、ファイバなどの充填剤、または発泡が引き起こされない補強要素を含むことができる。第2の原料は、凝固した材料によって少なくとも部分的に取り囲みまたは密閉することができる。
【0126】
図6Eは、本発明による別の発泡体構成要素630を概略的に示す。発泡体構成要素610、620、630と同様に、発泡体構成要素640もまた、凝固した出発原料616内に膨張したガス含有物615を含む。この場合、縁部層617は、発泡体構成要素600と同様に、前述の実施形態610、620、630の場合よりはるかに薄い。さらなる違いは、最小の厚さ652から最大の厚さ651への発泡体構成要素640の厚さの段階的な増大である。発泡体構成要素640の本質的に台形の構造は、たとえば、重力に直交しない金型壁によって意図的に調整することができ、この金型壁で、粒子状出発原料が提供され、軟化され、圧力の低下後に再び凝固される。同様に、発泡体構成要素640の本質的に台形の構造は、金型に沿った段階的な温度プロファイルにおける誘発圧力変化によって引き起こすことができる。金型に沿った段階的な温度プロファイルは、軟化した出発原料の段階的な粘度をもたらすことができ、これは、たとえば発泡の程度または膨張したガス含有物のサイズに影響を与えることができる。金型の向きおよび形状によって、他の形状の発泡体構成要素を同じ程度で調整することもできる。他方では、発泡体構成要素640に類似した発泡体構成要素の台形の形状はまた、段階的な発泡によって実現することもできる。これは、たとえば、金型内の段階的な温度の保持時間によって実現することができ、これによりガス含有物の数または密度を調整することが可能になる。別法として、軟化した出発原料に沿って、段階的な圧力差を誘発することができる。しかし、これらの場合、作製された発泡体の発泡の程度、密度、気泡サイズ、または他のパラメータもまた、凝固した出発原料(図6Eには図示せず)に沿って段階的になるはずである。
【0127】
本発明による方法によって得ることができる、追加の発泡剤を含まない可能な発泡体構成要素は、たとえば絶縁材料である。膨張したガス含有物、およびこれらのガスの一般に低い伝導率、特に低い熱伝導率により、そのような発泡体構成要素は、有利には、絶縁、特に熱絶縁に使用することができる。
【0128】
本発明による方法によって作製することができる、追加の発泡剤を含まない他の発泡体構成要素は、たとえば、制振材料、特にスポーツ用品向けの制振材料である。記載の方法によって靴を作製する利点は、たとえば、靴型をまったく用いない作製が可能になることである。本発明による方法による靴型を用いない靴の作製は、より融通性があり、時間およびコストを節約する。さらに、本発明による方法は、次の異なる層または要素の結合を不要にすることができるため、靴底またはプロテクタに必要とされるものなどの多層要素を、単一の作製プロセスで作製するのに有利である。加えて、作製されたスポーツ用品、特にスポーツウェアは、追加の発泡剤がないため、同等の現況技術スポーツ用品より皮膚に直接接触するのに適している。
【0129】
加えて、ボール、プロテクタ、ヘルメット、すね当て、バッグ、バックパック、ラケットなどのスポーツ用品も、本発明による方法によって部分的または完全に製造することができる。プロテクタの場合、保護するべき体の部分に応じて、たとえば保護するべき体の部分に適合された金型の実質上円筒形の形状によって得ることができる。任意選択の後処理ステップでは、たとえば、その結果得られた発泡体構成要素を半分に切断して、胸当ての着用を可能にすることができる。プロテクタはまた、スポーツウェアに取り付けられるように適合させることができる。
【0130】
最後に、浮き袋などの浮力補助、ボート、水泳補助、サーフボードなども、本発明による方法を使用して作製することができる。調整可能な発泡により、作製中に密度、したがって浮力を直接調整することができる。これにより、いくつかの異なる浮体を組み合わせて接続するための複雑な方法の必要をなくすことができる。
【符号の説明】
【0131】
100 方法
110 粒子状出発原料
111 粒子状出発原料
112 粒子状出発原料
113 溶融物
114 ガス含有物
115 膨張したガス含有物
116 発泡した出発原料
120 加熱
123 冷却
131 側壁
200 アセンブリ
230 金型
231 外壁
232 下部フランジ
233 上部フランジ
234 シャフト
235 IR放射器
236 高温計
237 コネクタ
238 回転ユニオン
300 プロファイル
320 室温
321 温度傾斜
322 保持時間
323 冷却プロセス
325 内部圧力
326 圧力低下
327 保持時間
328 内部圧力の増大
329 大気圧
340 実線
341 点線
400 プロファイル
401 測定点
402 補間
500 写真画像
514 ガス含有物
515 膨張したガス含有物
516 凝固した出発原料
517 縁部層
600 発泡体構成要素
601 発泡体構成要素
610 発泡体構成要素
615 膨張したガス含有物
616 凝固した出発原料
617 縁部層
618 第2の縁部層
620 発泡体構成要素
630 発泡体構成要素
640 発泡体構成要素
651 最大の厚さ
652 最小の厚さ
初期圧力
低下した圧力
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E