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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】バリアフィルム構成体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20221201BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221201BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221201BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221201BHJP
   C09J 123/22 20060101ALI20221201BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20221201BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221201BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/00 D
B32B27/18 Z
C09J7/38
C09J123/22
C09J11/04
H05B33/14 A
H05B33/04
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021123808
(22)【出願日】2021-07-29
(62)【分割の表示】P 2018508199の分割
【原出願日】2016-08-15
(65)【公開番号】P2021176709
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】62/206,070
(32)【優先日】2015-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ジェイコブ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マコーミック,フレッド ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,アダム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ポコーニー,リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ダニエル ジェイ.
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-508062(JP,A)
【文献】特表2015-515513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J1/00-5/10
9/00-201/10
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)23℃及び90%RHで約0.005cc/m/日未満の酸素透過率、並びに、23℃及び90%RHで約0.005g/m/日未満の水蒸気透過率を有する、超バリアフィルムと、(ii)前記超バリアフィルム上に配設されたバリア接着剤層と、を備え、前記接着剤層が、樹脂系及び有機修飾ナノ粘土を有する、バリア接着剤組成物を含み、前記樹脂系が、第1のポリイソブチレン樹脂、粘着付与剤、及び第2のポリイソブチレン樹脂を含前記第2のポリイソブチレン樹脂が、約700,000~約900,000g/molの粘度平均分子量を有する、
バリアフィルム構成体。
【請求項2】
前記第1のポリイソブチレン樹脂が、約100,000~約1,200,000g/molの粘度平均分子量を有する、請求項1に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項3】
前記第1のポリイソブチレン樹脂が、約300,000~約500,000g/molの粘度平均分子量を有する、請求項1に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項4】
前記樹脂系が、前記樹脂系の総重量に対して、約15~約35重量%の前記第1のポリイソブチレン樹脂を含む、請求項1ないしのいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項5】
前記樹脂系が、前記樹脂系の総重量に対して、約40~約60重量%の前記第2のポリイソブチレン樹脂を含む、請求項1ないしのいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項6】
前記樹脂系が、前記樹脂系の総重量に対して、約15~約35重量%の前記粘着付与剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項7】
前記バリア接着剤組成物が、前記樹脂系及び前記ナノ粘土の総重量に対して、約2~約15重量%の前記ナノ粘土を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項8】
前記粘着付与剤が、水素化石油樹脂である、請求項1~のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項9】
前記ナノ粘土が、ベントナイト粘土又はモンモリロナイトナノ粘土である、請求項1~のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項10】
前記ナノ粘土が、四級アンモニウムイオンで修飾されている、請求項1~のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項11】
前記超バリアフィルムが、2つのポリマー層の間に配設されている無機可視光透過層を備える、多層フィルムである、請求項1~10のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項12】
約20~約250μmの厚さを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
【請求項13】
封入された有機電子デバイスであって、
(a)デバイス基材と、
(b)前記デバイス基材上に配設されている、有機電子デバイスと、
(c)前記有機電子デバイス、及び前記デバイス基材の少なくとも一部分上に配設されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体と、を備え、
前記バリア接着剤層及び前記デバイス基材が、前記有機電子デバイスを封入している、封入された有機電子デバイス。
【請求項14】
前記有機電子デバイスが、有機発光ダイオードである、請求項13に記載の封入された有機電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアフィルム構成体、及びそのバリアフィルム構成体で封入された有機電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子デバイスには、商業的用途に関して十分に長い耐用期間を提供するために、水分及び酸素からの保護が必要とされる。それゆえ、水分及び酸素との接触からデバイスを保護するために、封入材が利用される。ガラスは、一般的に使用されている封入材の1つであるが、デバイスの可撓性は、ガラスにより著しく損なわれる。それゆえ、ガラスを可撓性バリアフィルムに置き換えることが、望ましい場合がある。可撓性バリアフィルムは、可撓性デバイス、並びに、より軽く、より薄い、より頑丈な剛性デバイスを可能にし得る。
【0003】
可撓性バリアフィルムは、有機電子デバイスにおける一般的使用のために、商品化されてきた。可撓性バリアフィルムは、典型的には、その可撓性バリアフィルムが保護することになるデバイスに、接着剤を使用して積層される。それゆえ、その接着剤もまた、結合ライン縁部での水分及び酸素の浸入を最小限に抑えるために、良好なバリア特性を有することが重要である。例えば、米国特許出願公開第2014/0377554号(Choら)で説明されるものなどの、一部のバリア接着剤は、「水分遮断材」としてのナノ粘土を含む。
【発明の概要】
【0004】
上述の観点から、本発明者らは、例えば長寿命の有機発光ダイオード(OLED)などの、特に要求水準の高い有機電子デバイスに関して、改善されたバリア接着剤が必要とされることを認識するものである。
【0005】
簡潔には、一態様では、本発明のバリアフィルム構成体は、(i)23℃及び90%RHで約0.005cc/m/日未満の酸素透過率、並びに、23℃及び90%RHで約0.005g/m/日未満の水蒸気透過率を有する、超バリアフィルムと、(ii)その超バリアフィルム上に配設されたバリア接着剤層とを備える。この接着剤層は、樹脂系及び有機修飾ナノ粘土を有する、バリア接着剤組成物を含む。この樹脂系は、約100,000~約1,200,000g/molの粘度平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂、及び粘着付与剤を含む。
【0006】
別の態様では、本発明は、本発明のバリアフィルム構成体を使用して封入された、有機電子デバイスを提供する。
【0007】
本発明のバリア接着剤組成物が、超バリアフィルムに適用される場合、そのコーティングされた超バリアフィルム構成体は、実質的に向上したバリア性能を有する。本明細書で使用するとき、用語「超バリアフィルム」とは、23℃及び90%RHで約0.005cc/m/日未満の酸素透過率、並びに、23℃及び90%RHで約0.005g/m/日未満の水蒸気透過率を有する、フィルムを意味する。
【0008】
しかしながら、驚くべきことに、ナノ粘土充填バリア接着剤(nanoclay-filled barrier adhesive)は、それ自体では、非充填(unfilled)の対照接着剤よりも、有意に良好な性能を発揮するものではない。同様に、本発明のナノ粘土充填接着剤でコーティングされた場合の、より低いグレードのバリアフィルム(例えば、食品グレードのバリアフィルム)は、非充填の対照接着剤でコーティングされた場合よりも、バリア性能が有意に向上するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】バリアフィルム構成体の概略図である。
図2】封入された有機デバイスの概略図である。
図3】粘土充填バリア接着剤でコーティングされた、超バリアフィルムの概略図である。
図4】剥離試験サンプル用に使用された構成体の概略図である。
図5】カルシウム試験用に使用された積層構成体の概略図である。
図6】時間に対する光学濃度損失百分率のプロットである。
図7】食品グレードのバリアフィルム構成体が上に積層された、カルシウム試験片の写真である。
図8】時間に対する光学濃度損失百分率のプロットである。
図9】超バリアフィルム構成体が上に積層された、カルシウム試験片の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のバリア接着剤組成物は、ポリイソブチレン樹脂を有する樹脂系を含む。このポリイソブチレン樹脂は、約100,000~約1,200,000g/mol、約200,000~約1,100,000g/mol、又は約300,000~約900,000g/molの粘度平均分子量を有する。
【0011】
一部の実施形態では、この樹脂系は、約300,000~約500,000g/mol、約350,000~約450,000g/mol、又は約400,000g/molの粘度平均分子量を有する、第1のポリイソブチレン樹脂と、(b)約700,000~約900,000g/mol、約650,000g/mol~約850,000g/mol、又は約800,000g/molの粘度平均分子量を有する、第2のポリイソブチレン樹脂とのブレンドを含む。
【0012】
一部の実施形態では、この樹脂系は、その樹脂系の総重量に対して、約65~約85重量%のポリイソブチレン樹脂を含む。一部の実施形態では、この樹脂系は、その樹脂系の総重量に対して、約15~約35重量%、約20~約30重量%、又は約25重量%の第1のポリイソブチレン樹脂を含む。一部の実施形態では、この樹脂系は、その樹脂系の総重量に対して、約40~約60重量%、約45~約55重量%、又は約50重量%の第2のポリイソブチレン樹脂を含む。
【0013】
これらのポリイソブチレン樹脂は、一般に、主鎖又は側鎖にポリイソブチレン樹脂骨格を有する樹脂である。一部の実施形態では、これらのポリイソブチレン樹脂は、実質的に、例えばOPPANOL(BASF AG)及びGLISSO-PAL(BASF AG)の商品名で入手可能なポリイソブチレン樹脂などの、イソブチレンのホモポリマーである。好適な市販のポリイソブチレン樹脂の例としては、OPPANOL B30(Mv=200,000)、OPPANOL B50(Mv=400,000)、OPPANOL
B80(Mv=800,000)、及びOPPANOL B100(Mv=1,110,000)が挙げられる。
【0014】
一部の実施形態では、これらのポリイソブチレン樹脂は、例えば、イソブチレンが別のモノマーと共重合している合成ゴムなどの、イソブチレンのコポリマーを含む。合成ゴムとしては、例えば、商品名VISTANEX(Exxon Chemical Co.)及びJSR BUTYL(Japan Butyl Co.,Ltd.)で入手可能なブチルゴムなどの、大部分のイソブチレンと少量のイソプレンとのコポリマーである、ブチルゴムが挙げられる。合成ゴムとしてはまた、大部分のイソブチレンとスチレン、n-ブテン、又はブタジエンとのコポリマーが挙げられる。一部の実施形態では、イソブチレンホモポリマーとブチルゴムとの混合物を使用することができる。例えば、第1のポリイソブチレン樹脂は、イソブチレンのホモポリマーを含み得るものであり、第2のポリイソブチレンは、ブチルゴムを含み得るものであり、又は、第1のポリイソブチレンは、ブチルゴムを含み得るものであり、第2のポリイソブチレンは、イソブチレンのホモポリマーを含み得る。第1のポリイソブチレン樹脂及び第2のポリイソブチレン樹脂はそれぞれ、2種以上の樹脂を含み得る。
【0015】
このポリイソブチレン樹脂は、一般に、水素化脂環式炭化水素樹脂と同様の、化合物の極性を特徴付けるための指標である溶解度パラメータ(SP値)を有し、使用される場合には、水素化脂環式炭化水素樹脂との良好な適合性(すなわち、混和性)を呈するために、透明フィルムを形成することができる。更には、このポリイソブチレン樹脂は、低い表面エネルギーを有するため、被着材上での接着剤の展延性を可能にし得るものであり、界面での空隙の発生が最小限に抑えられる。更には、ガラス転移温度及び水分透過性が低いため、このポリイソブチレン樹脂は、接着性封入用組成物のベースレジンとして好適である。
【0016】
このポリイソブチレン樹脂は、一般に、接着性封入用組成物に所望の流動度を付与するために使用することが可能な、望ましい粘弾性特性を有し得る。歪みレオメータを使用して、様々な温度での弾性率(貯蔵弾性率)G’及び粘性率(粘性損失率)G’’を測定することができる。次いで、G’及びG’’を使用して、比tan(δ)=G’’/Gを決定することができる。一般に、tan(δ)値が高いほど、その材料は、より粘稠材料様となり、tan(δ)値が低いほど、その材料は、より弾性固体様となる。一部の実施形態では、このポリイソブチレン樹脂は、接着性封入用組成物が、約70℃~約110℃の温度である場合に、少なくとも約0.5の比較的低い度数のtan(δ)値を有するように、選択することができる。この方式で、その組成物は、凹凸のある表面の上で、殆ど又は全く空気を閉じ込めることなく、十分に流動することが可能となる。
【0017】
本発明の樹脂系はまた、粘着付与剤も含む。一般に、粘着付与剤は、接着性封入用組成物の粘着性を増大させる、任意の化合物、又は化合物の混合物とすることができる。望ましくは、この粘着付与剤は、水分透過性を増大させるものではない。この粘着付与剤は、水素化炭化水素樹脂、部分水素化炭化水素樹脂、非水素化炭化水素樹脂、又はこれらの組み合わせを含み得る。好ましくは、この粘着付与剤は、水素化石油樹脂を含む。一部の実施形態では、この樹脂系は、その樹脂系の総重量に対して、約15~約35重量%、約20~約30重量%、又は約25重量%の粘着付与剤を含む。
【0018】
粘着付与剤の例としては、水素添加テルペン系樹脂(例えば、商品名CLEARON P、M、及びK(Yasuhara Chemical)で市販の樹脂)、水素化樹脂又は水素化エステル系樹脂(例えば、商品名FORAL AX(Hercules Inc.)、FORAL 105(Hercules Inc.)、PENCEL A(Arakawa Chemical Industries.Co.,Ltd.)、ESTERGUM H(Arakawa Chemical Industries Co.,Ltd.)、及びSUPER ESTER A(Arakawa Chemical Industries.Co.,Ltd.)で市販の樹脂)、不均化樹脂又は不均化エステル系樹脂(例えば、商品名PINECRYSTAL(Arakawa Chemical Industries Co.)で市販の樹脂、石油ナフサの熱分解により生成されたペンテン、イソプレン、ピペリン、及び1,3-ペンタジエンなどのC5留分を共重合することによって得られたC5系石油樹脂の水素化樹脂である水素化ジシクロペンタジエン系樹脂(例えば、商品名ESCOREZ 5300及び5400シリーズ(Exxon Chemical Co.)、EASTOTAC H(Eastman Chemical Co.)で市販の樹脂)、部分水素化芳香族修飾ジシクロペンタジエン系樹脂(例えば、商品名ESCOREZ 5600(Exxon Chemical Co.)で市販の樹脂)、石油ナフサの熱分解により生成されたインデン、ビニルトルエン、及びα-又はβ-メチルスチレンなどのC9留分を共重合することによって得られたC9系石油樹脂の水素化から生じた樹脂(例えば、商品名ARCON P又はARCON M(Arakawa Chemical Industries Co.)で市販の樹脂)、上述のC5留分及びC9留分の共重合石油樹脂の水素化から生じた樹脂(例えば、商品名IMARV(Idemitsu Petrochemical Co.)で市販の樹脂)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
非水素化炭化水素樹脂としては、C5、C9、C5/C9炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂、芳香族修飾ポリテルペン樹脂、又はロジン誘導体が挙げられる。非水素化炭化水素樹脂が使用される場合には、典型的には、別の水素化粘着付与剤又は部的水素化粘着付与剤と組み合わせて使用される。
【0020】
一部の実施形態では、この粘着付与剤は、水素化炭化水素樹脂、特に、水素化脂環式炭化水素樹脂を含む。水素化脂環式炭化水素樹脂の具体例としては、ESCOREZ 5340(Exxon Chemical)が挙げられる。一部の実施形態では、水素化脂環式炭化水素樹脂は、水素化ジシクロペンタジエン系樹脂であるが、これは、その低い水分透過性及び透明性が理由である。接着性封入用組成物中で利用することが可能な水素化脂環式炭化水素樹脂は、典型的には、約200~5,000g/molの重量平均分子量を有する。別の実施形態では、水素化脂環式炭化水素樹脂の重量平均分子量は、約500~3,000g/molである。重量平均分子量が5,000g/molを超える場合には、粘着性が乏しくなる恐れがあり、又は、ポリイソブチレン樹脂との適合性が低下する恐れがある。
【0021】
この粘着付与剤は、組成物の接着性、利用される温度、製造の容易性などに少なくとも部分的に応じて異なり得る、軟化温度又は軟化点(環球法軟化温度)を有し得る。この環球法軟化温度は、一般に、約50~200℃とすることができる。一部の実施形態では、この環球法軟化温度は、約80~150℃である。環球法軟化温度が80℃未満である場合には、その粘着付与剤は、電子デバイスによって光が放出される際に発生する熱により、分離及び液化を起こす恐れがある。このことは、有機電気発光デバイスが、接着性封入用組成物で直接封入されている場合に、発光層などの有機層の劣化を引き起こす恐れがある。その一方で、環球法軟化点が150℃を超える場合には、添加される粘着付与剤の量が少なくなるため、関連特性の十分な向上が得られない恐れがある。
【0022】
一部の実施形態では、この粘着付与剤は、水素化炭化水素樹脂、特に、水素化脂環式炭化水素樹脂を含む。水素化脂環式炭化水素樹脂の具体例としては、ESCOREZ 5340(Exxon Chemical)が挙げられる。一部の実施形態では、水素化脂環式炭化水素樹脂は、水素化ジシクロペンタジエン系樹脂であるが、これは、その低い水分透過性及び透明性が理由である。接着性封入用組成物中で利用することが可能な水素化脂環式炭化水素樹脂は、典型的には、約200~5,000g/molの重量平均分子量を有する。別の実施形態では、水素化脂環式炭化水素樹脂の重量平均分子量は、約500~3,000g/molである。重量平均分子量が5,000g/molを超える場合には、粘着性が乏しくなる恐れがあり、又は、ポリイソブチレン樹脂との適合性が低下する恐れがある。
【0023】
本発明のバリア接着剤組成物はまた、有機修飾ナノ粘土も含む。このナノ粘土は、典型的には、樹脂系との適合性のために有機修飾剤で処理されている、カチオン置換可能鉱物である。一部の実施形態では、このナノ粘土は、その最長寸法において約100~約1000nmである。
【0024】
好適なナノ粘土材料としては、例えば、スメクタイト類、カオリン類、イライト類、緑泥石類、蛇絞石類、アタパルジャイト類、パリゴルスカイト類、バーミキュライト類、海緑石類、海泡石類、及び混合層粘土類といった、地質学的クラス(geological classes)が挙げられる。スメクタイト類としては、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、葉蝋石、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ノントロナイト、タルク、バイデライト、及びボルコンスコイト(volchonskoite)を挙げることができる。カオリン類として
は、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、アンチゴライト、アナウキサイト、ハロイサイト、インデライト、及び温石綿を挙げることができる。イライト類としては、例えば、ブラバイサイト(bravaisite)、白雲母、ソーダ雲母、金雲母、及び黒雲母が挙げられる。緑泥石類としては、例えば、コレンス石、苦土緑泥石(penninite)、ド
ンバサイト、須藤石、苦土緑泥石(pennine)、及び斜緑泥石を挙げることができる。混
合層粘土類としては、例えば、アレバダイト及びバーミキュライト黒雲母を挙げることができる。これらの層状の粘土鉱物の変異形及び同形置換物は、独特の用途を提供する。好ましくは、モンモリロナイト、ベントナイト、又はこれらの組み合わせが使用される。
【0025】
好適な有機修飾剤としては、例えば、ジメチルベンジル水素化牛脂四級アンモニウムイオン、ビス(水素化牛脂)ジメチル四級アンモニウムイオン、メチル牛脂ビス-2-ヒドロキシエチル四級アンモニウムイオン、ジメチル水素化牛脂2-エチルヘキシル四級アンモニウムイオン、又はジメチル脱水素化牛脂四級アンモニウムイオンを有するものが挙げられる。
【0026】
一部の実施形態では、本発明のバリア接着剤組成物は、溶剤系接着剤である。これらの樹脂を溶解する、任意の有用な溶剤を利用することができる。好適な溶剤の例としては、ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、及びヘキサン(好ましくは、ヘプタン、トルエン、又はこれらの組み合わせ、より好ましくは、ヘプタン)が挙げられる。一部の実施形態では、溶剤は、約200℃未満の沸点を有することが好ましい場合がある。
【0027】
一部の実施形態では、溶剤は、バリア接着剤組成物全体の、約65~約95重量%、約70~約90重量%、約75~約85重量%、又は約80重量%を構成する。
【0028】
本発明のバリア接着剤組成物は、当業者には既知の、様々な方法によって調製することができる。例えば、このバリア接着剤組成物は、上述の構成成分を完全に混合することによって調製することができる。組成物を混合するために、混錬機又は押出機などの、任意の混合機を使用することができる。一部の実施形態では、これらの組成物は、例えば、樹脂系と溶剤との混合物を調製し、有機修飾ナノ粘土を溶剤中に分散させ、次いで、それら樹脂混合物とナノ粘土分散体とを組み合わせることによって、調製することができる。
【0029】
本発明のバリア接着剤組成物は、良好な可視光透過率及び低いヘイズを呈するものである。一部の実施形態では、このバリア接着剤組成物は、約90%以上の可視光透過率を有する。一部の実施形態では、このバリア接着剤組成物は、約3%以下、又は約2%以下のヘイズを有する。
【0030】
本発明のバリア接着剤組成物は、典型的には、非硬化性又は非反応性の組成物である。非硬化性組成物は、開始剤などの移行性種(migratory species)の使用を必要とするも
のではないため、有利である。それらの組成物はまた、下に存在するデバイスに損傷を与える恐れがある、高温での硬化も不要とするものである。それらの組成物は、例えば、溶剤系乾燥型接着剤、感圧性接着剤、コンタクト接着剤、又はホットメルト接着剤とすることができる。好ましくは、それらの組成物は、乾燥する際に硬化する、溶剤系乾燥型接着剤である。溶剤が蒸発するにつれて、粘度が増大し、その接着剤組成物が硬化する。
【0031】
本発明のバリア接着剤組成物は、任意の有用なコーティングプロセスによって、基材、デバイス、又は任意のデバイス構成要素に適用することができる。溶剤系乾燥型接着剤は、典型的には、ブラシ、ローラ、ビード若しくはリボン、又はスプレーによって適用される。このバリア接着剤組成物を、適切な基材上にコーティングすることにより、バリア接着性物品を形成することができる。
【0032】
このバリア接着剤組成物を、例えば、ガスバリアフィルム上にコーティングして、乾燥させることにより、接着性バリアフィルムを形成することができる。ガスバリアフィルムは、酸素に対する低い透過性を有するものであり、食品、電子機器、及び医薬製品などの物品が、酸素との接触によって劣化することを防ぐ助けとなるように、使用することができる。典型的には、食品グレードのガスバリアフィルムは、20℃及び相対湿度65%で
、約1cm/m/日未満の酸素透過率を有する。好ましくは、このガスバリアフィルムはまた、水分に対するバリア特性も有する。
【0033】
ポリマーガスバリアフィルムの例としては、ポリエチレンEVOHフィルム及びポリプロピレンEVOHフィルムなどのエチルビニルアルコールコポリマー(EVOH)フィルム、共押出ポリアミド/ポリエチレンフィルム、共押出ポリプロピレン/ポリアミド/ポリプロピレンフィルムなどのポリアミドフィルム、並びに、低密度、中密度、若しくは高密度ポリエチレンフィルム及び共押出ポリエチレン/エチルビニルアセテートフィルムなどのポリエチレンフィルムが挙げられる。ポリマーガスバリアフィルムはまた、例えば、そのポリマーフィルム上にアルミニウムなどの薄い金属層をコーティングして、金属化することもできる。
【0034】
無機ガスバリアフィルムの例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムを含むフィルム、ダイヤモンド様フィルム、ダイヤモンド様ガラス、及びアルミニウム箔などの箔が挙げられる。
【0035】
好ましくは、このガスバリアフィルムは、可撓性である。一部の用途に関しては、このガスバリアフィルムはまた、可視光透過性であることも好ましい。本明細書で使用するとき、用語「可視光透過性」とは、少なくとも約80%、好ましくは、少なくとも約88%又は90%の、スペクトルの可視部分(例えば、400nm~700nm)にわたる平均透過率を有することを意味する。
【0036】
一部の用途に関しては、水分及び酸素からの保護が必要とされる。特に繊細な用途に関しては、「超バリアフィルム」が必須となり得る。超バリアフィルムは、典型的には、23℃及び90%RHで約0.005cc/m/日未満の酸素透過率、並びに、23℃及び90%RHで約0.005g/m/日未満の水蒸気透過率を有する。驚くべきことに、超バリアフィルムのバリア性能は、本発明のバリア接着剤組成物でコーティングされる場合に、実質的に向上することが見出された。
【0037】
一部の超バリアフィルムは、ポリマー層の間に配設された無機可視光透過層を備える、多層フィルムである。好適な超バリアフィルムの一実施例は、熱安定化ポリエチレンテレフタレート(HSPET)以上のガラス転位温度(Tg)を有するポリマーの間に配設された、可視光透過性無機バリア層を備えるものである。
【0038】
HSPET以上のTgを有する、様々なポリマーを採用することができる。好適に高いTgのポリマーを形成する、蒸着可能なモノマーが特に好ましい。好ましくは、第1のポリマー層は、PMMAを上回るTg、より好ましくは、少なくとも約110℃のTg、更により好ましくは、少なくとも約150℃のTg、最も好ましくは、少なくとも約200℃のTgを有する。第1の層を形成するために使用することが可能な特に好ましいモノマーとしては、ウレタンアクリレート(例えば、双方ともSartomer Co.より市販の、CN-968、Tg=約84℃、及びCN-983、Tg=約90℃)、イソボルニルアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-506、Tg=約88℃)、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-399、Tg=約90℃)、スチレンとブレンドされたエポキシアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のCN-120S80、Tg=約95℃)、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-355、Tg=約98℃)、ジエチレングリコールジアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-230、Tg=約100℃)、1,3-ブチレングリコールジアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-212、Tg=約101℃)、ペンタアクリレートエステル(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-9041、Tg=約102℃)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-295、Tg=約103℃)、ペンタエリトリトールトリアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-444、Tg=約103℃)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-454、Tg=約103℃)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-454HP、Tg=約103℃)、アルコキシル化三官能アクリレートエステル(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-9008、Tg=約103℃)、ジプロピレングリコールジアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-508、Tg=約104℃)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-247、Tg=約107℃)、エトキシル化(4)ビスフェノールaジメタクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のCD-450、Tg=約108℃)、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートエステル(例えば、Sartomer Co.より市販のCD-406、Tg=約110℃)、イソボルニルメタクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-423、Tg=約110℃)、環状ジアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-833、Tg=約186℃)、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(例えば、Sartomer Co.より市販のSR-368、Tg=約272℃)、上述のメタクリレートのアクリレート、並びに上述のアクリレートのメタクリレートが挙げられる。
【0039】
第1のポリマー層は、基材にモノマー又はオリゴマーの層を適用して、その層を架橋し、その場でポリマーを形成することによって形成することができ、例えば、放射線架橋性モノマーのフラッシュ蒸発及び蒸着の後に続けて、例えば電子ビーム装置、UV光源、放電装置、又は他の好適なデバイスを使用して架橋することによって、形成することができる。支持体を冷却することによって、コーティング効率を向上させることができる。このモノマー又はオリゴマーはまた、ロールコーティング(例えば、グラビアロールコーティング)又はスプレーコーティング(例えば、静電スプレーコーティング)などの、従来のコーティング方法を使用して基材に適用し、次いで、上記のように架橋することもできる。第1のポリマー層はまた、オリゴマー又はポリマーを溶媒中に含む層を適用し、そのように適用された層を乾燥させて、その溶媒を除去することによっても、形成することができる。プラズマ重合もまた、昇温でガラス状態を有するポリマー層を提供する場合には採用することができ、この場合、ガラス転移温度は、HSPETのガラス転移温度以上である。最も好ましくは、第1のポリマー層は、例えば、米国特許第4,696,719号(Bischoff)、同第4,722,515号(Ham)、同第4,842,893号(Yializisら)、同第4,954,371号(Yializis)、同第5,018,048号(Shawら)、同第5,032,461号(Shawら)、同第5,097,800号(Shawら)、同第5,125,138号(Shawら)、同第5,440,446号(Shawら)、同第5,547,908号(Furuzawaら)、同第6,045,864号(Lyonsら)、同第6,231,939号(Shawら)、及び同第6,214,422号(Yializis)で;PCT国際公開第00/26973号(Delta V Technologies,Inc.)で;D.G.Shaw及びM.G.Langloisの「A New Vapor Deposition Process for Coating Paper and Polymer Webs」(6th International Vacuum Coating Conference(1992))で;D.G.Shaw及びM.G.Langloisの「A
New High Speed Process for Vapor Depositing Acrylate Thin Films:An Update」(Society of Vacuum Coaters 36th Annual Technical Conference Proceedings(1993))で;D.G.Shaw及びM.G.Langloisの「Use of Vapor Deposited Acrylate Coatings to Improve the Barrier Properties of Metallized Film」(Society of Vacuum Coaters 37th Annual Technical Conference Proceedings(1994))で;D.G.Shaw、M.Roehrig、M.G.Langlois、及びC.Sheehanの「Use of Evaporated Acrylate Coatings to Smooth the Surface of Polyester and Polypropylene Film Substrates」(RadTech(1996))で;J.Affinito、P.Martin、M.Gross、C.Coronado、及びE.Greenwellの「Vacuum deposited polymer/metal multilayer films for optical application」(Thin Solid Films 270,43~48(1995))で;並びに、J.D.Affinito、M.E.Gross、C.A.Coronado、G.L.Graff、E.N.Greenwell、及びP.M.Martinの「Polymer-Oxide Transparent Barrier Layers」(Society of Vacuum Coaters 39th Annual Technical Conference Proceedings(1996))で説明されるように、フラッシュ蒸発及び蒸着の後に続けて、その場で架橋することによって形成される。
【0040】
各ポリマー層の平滑性及び連続性、並びに、下に存在する層に対する接着性は、好ましくは、適切な前処理によって向上される。好ましい前処理レジメン(regimen)は、好適な
反応性雰囲気又は非反応性雰囲気の存在下での放電(例えば、プラズマ、グロー放電、コロナ放電、誘電体バリア放電、又は大気圧放電)、化学的前処理、又は火炎前処理を採用するものである。これらの前処理は、下に存在する層の表面を、その後に続けて適用されるポリマー層の形成に対して、より受け入れやすいものにするために役立つ。プラズマ前処理が、特に好ましい。この高Tgのポリマー層とは異なる組成を有し得る、別個の接着促進層もまた、下に存在する層の上に利用することにより、層間接着性を向上させることができる。この接着促進層は、例えば、別個のポリマー層とすることができ、又は、金属、金属酸化物、金属窒化物、若しくは金属酸窒化物などの金属含有層とすることもできる。この接着促進層は、数nm(例えば、1又は2nm)~約50nmの厚さを有し得るものであり、必要に応じて、より厚くすることもできる。
【0041】
第1のポリマー層の所望の化学組成及び厚さは、支持体の性質及び表面トポグラフィーに応じて、部分的に決定される。厚さは、好ましくは、後続の第1の無機バリア層を適用することが可能な平滑で無欠陥の表面を提供するために、十分なものである。例えば、第1のポリマー層は、数nm(例えば、2又は3nm)~約5μmの厚さを有し得るものであり、必要に応じて、より厚くすることもできる。
【0042】
HSPET以上のTgを有するポリマー層によって隔てられている、1つ以上の可視光透過性無機バリア層が、この第1のポリマー層の上に存在する。これらの層は、それぞれ、「第2のポリマー層」、「第1の無機バリア層」、及び「第2の無機バリア層」と称される場合がある。必要に応じて、更なる無機バリア層及び更なるポリマー層(HSPET以上のTgを有さないポリマー層を含む)が存在し得る。しかしながら、好ましくは、隣接する無機バリア層の各対は、HSPET以上のTgを有するポリマー層(1つ又は複数)によってのみ隔てられ、より好ましくは、PMMA以上のTgを有するポリマー層(1つ又は複数)によってのみ隔てられる。
【0043】
これらの無機バリア層は、同じものである必要はない。様々な無機バリア材料を採用することができる。好ましい無機バリア材料としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属酸ホウ化物、及びこれらの組み合わせが挙げられ、例えば、シリカなどの酸化ケイ素、アルミナなどの酸化アルミニウム、チタニアなどの酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(「ITO」)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオビウム、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸窒化ホウ素、酸ホウ化ジルコニウム、酸ホウ化チタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。酸化インジウムスズ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせが、特に好ましい無機バリア材料である。ITOは、各元素成分の相対的比率を適切に選択することにより導電性になり得る、特殊なクラスのセラミック材料の一例である。無機バリア層は、好ましくは、スパッタリング(例えば、陰極スパッタリング又は平面マグネトロンスパッタリング)、蒸着(例えば、抵抗蒸着又は電子ビーム蒸着)、化学蒸着、原子層蒸着、及びめっきなどの、フィルム金属化技術で採用される技術を使用して、形成される。より好ましくは、無機バリア層は、スパッタリング、例えば反応性スパッタリングを使用して、形成される。従来の化学蒸着プロセスなどの低エネルギー技術と比較して、スパッタリングなどの高エネルギー堆積技術によって無機層が形成される場合、バリア特性の向上が観察されている。各無機バリア層の平滑性及び連続性、並びに、下に存在する層に対する接着性は、第1のポリマー層を参照して上述されたものなどの前処理(例えば、プラズマ前処理)によって、向上させることができる。
【0044】
これらの無機バリア層は、同じ厚さを有する必要はない。各無機バリア層の所望の化学組成及び厚さは、部分的に、下に存在する層の性質及び表面トポグラフィーに応じて、並びに、そのバリアアセンブリに関する所望の光学特性に応じて、決定される。これらの無機バリア層は、好ましくは、連続的となるように十分に厚いものであり、かつ、そのバリアアセンブリ並びにアセンブリを含む物品が、所望の程度の可視光透過性及び可撓性を有することを確実にするように、十分に薄いものである。好ましくは、各無機バリア層の物理的厚さ(光学的厚さではなく)は、約3~約150nm、より好ましくは約4~約75nmである。
【0045】
第1の無機バリア層、第2の無機バリア層、及び任意の更なる無機バリア層を隔てる第2のポリマー層は、同じものである必要はなく、また、全てが同じ厚さを有する必要もない。様々な第2のポリマー層材料を採用することができる。好ましい第2のポリマー層材料としては、第1のポリマー層に関して上述されたものが挙げられる。好ましくは、第2のポリマー層(1つ又は複数)は、第1のポリマー層に関して上述されたように、フラッシュ蒸発及び蒸着の後に続けて、その場で架橋することによって適用される。好ましくは、第2のポリマー層の形成の前に、上述されたものなどの前処理(例えば、プラズマ前処理)もまた採用される。第2のポリマー層(1つ又は複数)の所望の化学組成及び厚さは、下に存在する層(1つ以上)の性質及び表面トポグラフィーに応じて、部分的に決定される。第2のポリマー層の厚さは、好ましくは、後続の無機バリア層を適用することが可能な平滑で無欠陥の表面を提供するために、十分なものである。典型的には、第2のポリマー層(1つ又は複数)は、第1のポリマー層よりも薄い厚さを有し得る。例えば、第2のポリマー層のそれぞれは、約5nm~約10μmの厚さを有し得るものであり、必要に応じて、より厚くすることもできる。
【0046】
可撓性の可視光透過性超バリアフィルム、及びそれらの製造が、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,940,004号(Padiyathら)で説明されている。
【0047】
市販の超バリアフィルムとしては、例えば、3M Companyより入手可能な、FTB 3-50及びFTB 3-125が挙げられる。
【0048】
本発明の接着剤バリア組成物の層でコーティングされたガスバリアフィルムを、基材上に提供することができる。この基材は、好ましくは、可撓性かつ可視光透過性である。好適な基材材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリレート、ポリカーボネート、シリコーン、エポキシ樹脂、シリコーン官能化エポキシ樹脂、Mylar(E.I.du Pont de Nemours&Co.製)などのポリエステル、Kapton H又はKapton E(du Pont製)などのポリイミド、Apical AV(Kanegafugi Chemical Industry Company製)、Upilex(UBE Industries,Ltd.製)、ポリエーテルスルホン(PES、Sumitomo製)、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレン(PEN)、ポリメチルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/無水マレイン酸、ポリオキシメチレン、ポリビニルナフタレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、高Tgフルオロポリマー(例えば、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンのターポリマーの、DYNEON(商標)HTE)、ポリα-メチルスチレン、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフタラミド、ポリエチレン、及びポリプロピレンなどの有機ポリマー材料が挙げられる。無色ポリイミド、環状オレフィンコポリマー、及び環状オレフィンコポリマーもまた、利用することができる。好ましくは、この基材は、PETを含む。
【0049】
図1は、基材110、ガスバリアフィルム120(好ましくは、超バリアフィルム)、及びバリア接着剤層130を備える、例示的なバリアフィルム構成体100の断面構造を示す。一部の実施形態では、バリア接着剤層は、約5~約50μmの厚さを有する。一部の実施形態では、このバリアフィルム構成体は、約20~約250μmの厚さを有する。
【0050】
一部の実施形態では、バリア接着剤層の外側表面は、剥離ライナ(140)などの手段で保護することができる。例えば、剥離剤(例えば、シリコーン樹脂)で処理されたフィルム又はシートなどの、任意の有用な剥離ライナを使用することができる。エンドユーザ(end user)は、この剥離ライナを取り除くことにより、バリア構成体を、そのバリア構成体が保護することになるデバイスに接着することができる。
【0051】
あるいは、本発明のバリア接着剤を、2つの剥離ライナの間に配設して、エンドユーザに提供することもできる。
【0052】
本発明のバリアフィルム構成体は、OLEDディスプレイ及び固体素子照明、太陽電池、電気泳動ディスプレイ及びエレクトロクロミックディスプレイ、薄膜電池、量子ドットデバイス、センサ、並びに他の有機電子デバイスにおいて、酸素及び水分からの保護のために使用することができる。それらの構成体は、酸素及び水分からの保護、並びに可撓性及び良好な光透過率が必要とされる用途に、特に適している。
【0053】
図2は、例えばOLEDなどの有機電子デバイスを封入するために使用されている、本発明のバリアフィルム構成体を示す。有機電子デバイス250は、デバイス基材260上に配設されている。有機電子デバイス250は、超バリアフィルム220及びバリア接着剤層230を含む、バリアフィルム構成体200と、デバイス基材260とによって、封入されている。
【実施例
【0054】
以下の実施例によって、本発明の目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例で列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。
【0055】
これらの実施例は、単に例示を目的とするものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、特に断りのない限り、重量に基づくものである。使用されている溶媒及び他の試薬は、特に断りのない限り、Sigma-Aldrich Chemical Company(St.Louis、MO)より入手したものである。
【0056】
材料
Escorez 5300水素化石油炭化水素樹脂を、ExxonMobil Chemical Company(Houston,TX)より購入した。Clearon P105を、ヤスハラケミカル(府中市、日本)より入手した。(i)400,000g/mol(Oppanol B50 SF);(ii)800,000g/mol(Oppanol B80);(iii)1,110,000g/mol(Oppanol B100)の式量を有するポリイソブチレンを、BASF(Florham Park,NJ)より入手した。Exxon Butyl 268ブチルゴムを、ExxonMobil Chemical(Houston,TX)より入手した。ヘプタン及びトルエンを、VWR International(Radnor,PA)より購入した。キシレンを、EMD(Gibbstown,NJ)より入手した。SKC-12N及びSKC-02N剥離ライナのロールを、SKC Haas(Seoul,Korea)より購入した。M74F剥離ライナのロールを、Siliconature(Godega di Sant’Urbano,Italy)より入手した。Aldrich 682640表面修飾ナノ粘土を、Sigma-Aldrich(Saint Louis,MO)より購入した。Claytone APA有機ベントナイト、Claytone AF有機ベントナイト、及びCloisite-20微粒子化ナノ粘土を、BYK(Wesel,Germany)より入手した。
【0057】
ポリイソブチレン系接着剤混合物の調製
ポリイソブチレン樹脂及びブチルゴムポリマー樹脂を、最初に、約1インチの立方体に角切りした。次いで、これらの樹脂立方体を、粘着付与剤と共に、ヘプタン又はトルエンのいずれかに添加し、得られた配合物を、ローラ上で1~2週間にわたって混合した。この作業で使用したポリイソブチレン系接着剤溶液が、表1で説明されており、表1の「ポリマー樹脂」の列内に記載されている「部」は、重量部である。
【表1】
【0058】
ポリイソブチレン/粘土混合物の調製
モンモリロナイト粘土を、表2で指定されている重量%固形分で、その粘土粉末をヘプタン又はトルエンのいずれかに直接添加することによって、有機溶媒中に分散させた。次いで、以下のいずれかを使用して、トルエン溶媒又はヘプタン溶媒中に粘土を混合した:
(I)指定の時間にわたる、指定の回転速度での、IKA(登録商標)T25デジタルUltra-Turrax高剪断混合機(IKA(登録商標)Works,Inc.(Wilmington,NC))、又は
(II)指定の期間にわたる、指定の振幅での、Sonics Vibra Cell
VCX750超音波処理器(Sonics&Materials Inc.(Newtown,CT))。
【表2】
【0059】
PE13~PE22を調製するために、表2のモンモリロナイト粘土分散体を、表1のポリイソブチレン系ポリマー溶液と組み合わせて、ローラ上で1週間にわたって混合した。得られたナノ粘土充填ポリイソブチレン系接着剤配合物を、表3に要約する。
【表3】
【0060】
フィルム基材上への接着剤配合物のコーティング
以下の3つの異なるフィルム基材を使用した:多孔性ポリプロピレン支持フィルム(F1);3M食品グレード酸化物バリアフィルム(F2);及び3M FTB3-50(3M Company(Maplewood,MN))超バリアフィルム(F3)。これらのフィルム基材の特性を、表4に要約する。
【表4】
【0061】
手塗り(handspread)サンプルを調製するために、ベンチトップ型ノッチバーコータを使用して、SKC-12N剥離ライナ上に、接着剤混合物をコーティングした。コーティングされたサンプルを、80℃のオーブン内に20分間にわたって置くことにより、溶媒を除去した。これらのサンプルの乾燥厚さは、25μmとした。次いで、その接着剤に、M74F剥離ライナを積層することにより、それら2つの剥離ライナの間に接着剤を挟み込んだ。CE2及びEX8に関しては、3M食品グレードバリアフィルム(F2)上に接着剤を直接コーティングして、80℃で20分間にわたって乾燥させた。次いで、その接着剤に、M74F剥離ライナを積層した。
【0062】
サンプルEX3及びサンプルEX9を調製するために、ノッチバーを装備したHiranoパイロットコータを使用して、SKC-12N剥離ライナ上に、接着剤混合物をコーティングした。この接着剤を、80℃のオーブン内で1分間にわたって乾燥させ、別のオーブン内で、130℃で1分間にわたって乾燥させた。これらのサンプルの乾燥厚さは、25μmとした。次いで、その接着剤に、M74F剥離ライナを積層することにより、それら2つの剥離ライナの間に接着剤を挟み込んだ。
【0063】
この接着剤を、剥離ライナから、体積水蒸気透過率(WVTR)試験のために多孔性ポリプロピレンフィルム(F1)に転写し、カルシウム試験のために3M食品グレードバリアフィルム(F2)に転写し、剥離試験、剪断試験、及びカルシウム試験のために3M超バリアフィルム(F3)に転写した。接着剤コーティングされたバリアフィルム構成体の概略図を、図3に提示する。この作業で試験された、全てのコーティングサンプルの概要を、表5に提示する。表5の「接着剤記述子」の列内の比は、重量比である。
【表5】
【0064】
剥離及び剪断試験
ASTM D1876に従ったT-剥離試験を使用して、剥離試験を行った。25μm接着剤を、剥離ライナから転写し、図4に概略的に示されるように、2つのバリアフィルムF3のシートの間に(これらのバリアフィルムシート上のバリアコーティングが、接着剤に面するように)積層した。ASTM D1876に従って、バリアフィルムに接着剤を転写した後に、2時間の休止時間を設けた。それら0.5’’幅のサンプルを、室温で評価した。この剥離試験は、SPA2-02 T-剥離固定具を取り付けたIMASS SP-2000剥離試験機(IMASS,Inc.(Accord,MA))を使用して行った。3回の反復測定が実施され、その平均値が報告されている。
【0065】
ASTM D3654/D3654Mの手順Aに従って、剪断試験を完遂した。25μm接着剤を、バリアフィルムに(そのバリアコーティングが、接着剤に面するように)転写した。次いで、この裏面接着剤付きバリアフィルムを、ステンレス鋼プレートに接着した。CREX Research Systems(Saint Paul,MN)の剪断試験スタンドを使用して、剪断接着性能を、23℃及び50%RHで評価した。1kgの重りを各サンプルから吊り下げ、接着剤が凝集破壊されるまでに要した時間を記録した。3回の反復測定が実施され、その平均値が報告されている。
【0066】
体積WVTR試験
Mocon Permatran-W Model 1/50G(Mocon,Inc.(Minneapolis,MN))を使用して、接着剤配合物の水分透過性を試験した。これらの実験は、50cmのサンプル面積で、40℃及び100%RHで完遂するものとした。厚さ25μmの接着剤のスラブ(slab)を、多孔性ポリプロピレンフィルム(F1)上に転写することによって、サンプルを調製した。次いで、このサンプルを、2つの多孔性ポリプロピレンフィルムの間に50μmの接着剤が存在するように、半分に折り畳んだ。次いで、これらのサンプルを、試験するためにPermatran装置内に配置した。
【0067】
カルシウム試験
接着剤コーティングされた試験基材を、最初に、水分が除去されるまで80℃の真空中で焼成した。反射性金属カルシウムを、ガラス基材の指定領域(例えば、正方形の配列)上に熱溶着させた。このカルシウムコーティングされたガラス基材上に、裏面接着剤付きフィルムを配置して、この挟み込み体を積層した。この積層物品の概略図を、図5(570はガラス基材であり、580はカルシウムである)で、ある程度の近似的な層の厚さと共に提示する。接着剤は、それぞれの実施例において、厚さ25μmとした。濃度計を使用して、開始時に光学濃度を測定した。次いで、サンプルを、60℃/相対湿度90%で加速エージングするために、環境チャンバ内に保持した。最初の3日間は、1日に2回、光学濃度を測定した。次いで、光学濃度が初期濃度の50%となるまで、1日に1回、光学濃度を測定した。水蒸気透過率(WVTR)は、光学濃度がその初期値の50%に至るまでに必要とされた時間に、正比例するものである。このカルシウム試験で使用したバリアフィルムは、3M FTB3-50超バリアフィルム(F3)又は3M食品グレードバリアフィルム(F2)のいずれかとした。
【0068】
充填接着剤サンプル並びに非充填接着剤サンプルに関する剥離データ及び剪断データ
粘土充填実施例EX13~EX22並びに非充填接着剤対照サンプルCE5~CE7に関する、剥離データ及び剪断データを、表6に提示する。表6では、「接着剤記述子」の列内の比は、重量比である。一般に、剥離接着強度は、接着剤にナノ粘土が添加されると低下したが、その一方で、剪断接着強度は、粘土充填材が添加されると向上した。これらのサンプルの接着性能は、全般的に、基材にフィルムを積層するために容認可能な範囲内であった。EX19は、剥離力に関しては試験されなかった。
【表6】
【0069】
充填サンプル並びに非充填サンプルに関する体積WVTRデータ
2つの粘土充填接着剤及び2つの非充填接着剤対照に関するWVTRデータを、表7に提示する。WVTR値は、40℃及び100%RHで動作するMOCON Permatran-W Model 1/50 Gを使用して測定した。試験サンプルは、多孔性ポリプロピレンフィルム(F1)の間に挟み込まれた、厚さ50μmの接着剤を含むものとした。PIB接着剤CE1へのナノ粘土充填材の添加は、WVTRの低減をもたらす結果とはならず、EX24及びEX25の双方とも、CE8よりも高いWVTR値によって特徴付けられた。
【表7】
【0070】
裏面接着剤付き食品グレードバリアフィルムに関するカルシウム試験バリア性能データ
裏面接着剤付き食品グレードバリアフィルムサンプルに関するカルシウム試験バリア性能データが、上述のように作成されており、それらのデータを、表8並びに図6及び図7に要約する。表8は、裏面接着剤付き食品グレードバリアフィルムサンプルCE10及びEX26に関する、50%の光学損失までの時間を提示するものである。これらのデータは、60℃の温度及び90%の相対湿度の環境チャンバ内での、カルシウム試験を使用して取得した。図6は、表8で説明されているサンプルの、時間に対する光学濃度損失百分率のプロットである。塗り潰されていない正方形のマーカを有する太線は、3M食品グレードバリアフィルム上の非充填ポリイソブチレン接着剤(CE10)である。星入りのマーカを有する線は、3M食品グレードバリアフィルム上の充填ポリイソブチレン接着剤(EX26)である。塗り潰された正方形のマーカを有する線は、対照の3M超バリアフィルム上のPIBバリア接着剤である。図7は、表8で説明されている食品グレードバリアフィルム構成体が上に積層されている、カルシウムの写真を提示するものである。(a)の写真のセットは、非充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルCE10の、時間ゼロで撮影したものであり、(b)の写真のセットは、ナノ粘土充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルEX26の、時間ゼロで撮影したものであり、(c)の写真のセットは、非充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルCE10の、9時間で撮影したものであり、(d)の写真のセットは、ナノ粘土充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルEX26の、9時間で撮影したものである。
【0071】
標準的なPIB接着剤を、10重量%粘土充填接着剤で置き換えることは、積層された食品グレードバリアフィルムの性能を向上させるものではなかった。それらのサンプルの光学濃度の経時的変化を表す図6の曲線は、ほぼ重なり合うものとなり、50%の光学損失までの測定時間は、双方のサンプルに関して7時間であった。更には、図7に提示されているカルシウム正方形の配列の写真も、同様の結果を示している。これらのデータの全ては、CE2のバリア性能とEX8のバリア性能とが、識別不能であることを示唆するものである。この結論は、積層接着剤にモンモリロナイト粘土充填材を添加することにより、広範囲のバリア性能を有するバリアフィルム構成体の性能が向上することを教示している、出願公開第2012193335号及び米国特許出願公開第2014/0377554号に照らし合わせると、驚くべきことである。
【表8】
【0072】
裏面接着剤付き超バリアフィルムに関するカルシウム試験バリア性能データ
裏面接着剤付き超バリアフィルムに関するカルシウム試験バリア性能データを、表9並びに図6及び図7に要約する。表9内のサンプルの全ては、図5に示されるような、単一の超バリアフィルムの層に適用された、ナノ粘土充填接着剤を含むものとした。これらのデータは、60℃の温度及び90%の相対湿度の環境チャンバ内での、カルシウム試験を使用して取得した。図8は、表9で説明されているサンプルの、時間に対する光学濃度損失百分率のプロットである。塗り潰されていない正方形のマーカを有する線は、3M超バリアフィルム上の、高剪断混合によって分散されたナノ粘土を有するポリイソブチレン接着剤(EX27)である。星入り正方形のマーカを有する線は、3M超バリアフィルム上の、超音波処理によって分散されたナノ粘土を有するポリイソブチレン接着剤(EX28)である。塗り潰された正方形のマーカを有する青線は、対照の3M超バリアフィルム上のバリア接着剤(CE11+UV遮断材)である。図9は、超バリアフィルム構成体が上に積層されている、カルシウムの写真を提示するものである。(a)の写真のセットは、非充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルCE11+UV遮断材の、時間ゼロで撮影したものであり、(b)の写真は、ナノ粘土充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルEX28の、時間ゼロで撮影したものであり、(c)の写真は、非充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルCE11+UV遮断材の、360時間で撮影したものであり、(d)の写真は、ナノ粘土充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルEX28の、360時間で撮影したものであり、(e)の写真は、非充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルCE11+UV遮断材の、959時間で撮影したものであり、(f)の写真は、ナノ粘土充填ポリイソブチレン接着剤を使用して作製されたサンプルEX28の、959時間で撮影したものである。
【0073】
食品グレード積層体に関する、接着剤自体を通過するWVTRの測定値、及びカルシウム試験データとは異なり、これらのサンプルは、モンモリロナイト粘土を接着剤配合物に添加した場合に、有意なバリア性能の向上を示すものであった。50%の光学損失までの時間は、厚さ25μmの粘土充填接着剤で裏打ちされた、全ての超バリアサンプルの場合、厚さ25μmの非充填の対照接着剤で積層された、同等の超バリアサンプル(CE11及びCE12)の場合よりも長いものであった。それらのPIBサンプルに関する、50%の光学損失までの時間の増大は、2重量%のナノ粘土充填材を使用したEX30に関する27%の増大から、10重量%のナノ粘土充填材を使用したEX28に関する183%の増大までの範囲であった。
【表9】
【0074】
対照サンプル(接着剤が何らかのUV遮断材を含むものであった点を除き、CE11と同一のもの)EX27及びEX28に関する光学濃度データを、図8に提示する。EX27の曲線及びEX28の曲線の双方とも、開始約150時間で、非充填接着剤対照サンプルの曲線を明らかに下回っている。より低いこれらの曲線は、より長いカルシウム存続期間、及びバリア性能の向上を示すものである。EX28サンプル中の粘土は、超音波処理を使用して分散されたものであり、その一方で、EX27中の粘土は、高剪断混合機を使用して分散されたものである。EX27と比較したEX28の性能の向上は、粘土充填バリア接着剤の調製に関しては、超音波処理が好ましいプロトコルであることを示唆するものである。
【0075】
非充填対照サンプル(CE11+UV遮断材)及びEX28に関する、カルシウム正方形の配列の写真を、図9に提示する。非充填対照に関するカルシウム正方形は、60℃/90%RHの959時間の環境曝露の後に、ほぼ完全に消失しており、これは、水蒸気がバリア構成体を通過して浸透し、カルシウムと反応した結果である。EX28に関するカルシウム正方形は、対照的に、60℃/90%RHの959時間の環境曝露の後であっても、概ね完全なままであった。これらの画像は、標準的なPIB接着剤で積層された超バリアフィルムと比較して、粘土充填PIB接着剤で基材に積層された超バリアフィルムの、優れたバリア性能を示すものである。この性能は、食品グレードの酸素バリアフィルム構成体では、認められなかったものである。
【0076】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、本発明に対する様々な修正及び改変が当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載された例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることを意図するものではなく、そのような実施例及び実施形態は、例としてのみ提示されており、本発明の範囲は、本明細書で以下の通り記載される特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されている点を理解されたい。以下、例示的実施形態を示す。
[1]
(i)23℃及び90%RHで約0.005cc/m /日未満の酸素透過率、並びに、23℃及び90%RHで約0.005g/m /日未満の水蒸気透過率を有する、超バリアフィルムと、(ii)前記超バリアフィルム上に配設されたバリア接着剤層と、を備え、前記接着剤層が、樹脂系及び有機修飾ナノ粘土を有する、バリア接着剤組成物を含み、前記樹脂系が、約100,000~約1,200,000g/molの粘度平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂、及び粘着付与剤を含む、バリアフィルム構成体。
[2]
前記第1のポリイソブチレン樹脂が、約300,000~約900,000g/molの粘度平均分子量を有する、[1]に記載のバリアフィルム構成体。
[3]
前記第1のポリイソブチレン樹脂が、約300,000~約500,000g/molの粘度平均分子量を有し、前記樹脂系が、約700,000~約900,000g/molの粘度平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂を更に含む、[1]に記載のバリアフィルム構成体。
[4]
前記樹脂系が、前記樹脂系の総重量に対して、約15~約35重量%の前記第1のポリイソブチレン樹脂を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[5]
前記樹脂系が、前記樹脂系の総重量に対して、約40~約60重量%の前記第2のポリイソブチレン樹脂を含む、[3]又は[4]に記載のバリアフィルム構成体。
[6]
前記樹脂系が、前記樹脂系の総重量に対して、約15~約35重量%の前記粘着付与剤を含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[7]
前記バリア接着剤組成物が、前記樹脂系及び前記ナノ粘土の総重量に対して、約2~約15重量%の前記ナノ粘土を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[8]
前記粘着付与剤が、水素化石油樹脂である、[1]~[7]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[9]
前記ナノ粘土が、ベントナイト粘土又はモンモリロナイトナノ粘土である、[1]~[8]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[10]
前記ナノ粘土が、四級アンモニウムイオンで修飾されている、[1]~[9]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[11]
前記ナノ粘土が、前記ナノ粘土の最長寸法において約100~約1000nmである、[1]~[10]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[12]
前記超バリアフィルムが、2つのポリマー層の間に配設されている無機可視光透過層を備える、多層フィルムである、[1]~[11]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[13]
前記超バリアフィルムが、箔である、[1]~[11]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[14]
前記バリア接着剤層の反対側で前記超バリアフィルム上に配設されている、基材を更に備える、[1]~[13]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[15]
前記基材が、ポリエチレンテレフタレートを含む、[14]に記載のバリアフィルム構成体。
[16]
前記超バリアフィルムの反対側で前記バリア接着剤層上に配設されている、剥離層を更に備える、[1]~[15]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[17]
約20~約250μmの厚さを有する、[1]~[16]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[18]
前記バリア接着剤層が、約50μm以下の厚さを有する、[1]~[17]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体。
[19]
封入された有機電子デバイスであって、
(a)デバイス基材と、
(b)前記デバイス基材上に配設されている、有機電子デバイスと、
(c)前記有機電子デバイス、及び前記デバイス基材の少なくとも一部分上に配設されている、[1]~[18]のいずれか一項に記載のバリアフィルム構成体と、を備え、
前記バリア接着剤層及び前記デバイス基材が、前記有機電子デバイスを封入している、封入された有機電子デバイス。
[20]
前記有機電子デバイスが、有機発光ダイオードである、[19]に記載の封入された有機電子デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9