(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】シゾフィランリポソーム及びその調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20221201BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20221201BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20221201BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221201BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20221201BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221201BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/63
A61K8/55
A61K8/86
A61K8/92
A61Q19/00
A61K8/894
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021132122
(22)【出願日】2021-08-16
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】202011192330.7
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520317240
【氏名又は名称】広東丸美生物技術股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫懐慶
(72)【発明者】
【氏名】郭朝万
(72)【発明者】
【氏名】胡露
(72)【発明者】
【氏名】▲ジョウ▼艶峰
(72)【発明者】
【氏名】佐佐木公夫
(72)【発明者】
【氏名】裴運林
(72)【発明者】
【氏名】蒲艶
(72)【発明者】
【氏名】王娟
(72)【発明者】
【氏名】王麗華
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-232949(JP,A)
【文献】特開2014-185090(JP,A)
【文献】特開2019-042679(JP,A)
【文献】特開2009-191004(JP,A)
【文献】特開2012-206948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質を有機溶媒に溶解し、有機溶媒を除去し、脂質膜を形成するステップ
であって、前記脂質はレシチンとコレステロールとを含み、前記レシチンと前記コレステロールとの質量比は1:(0.05~0.35)であるステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた脂質膜をシゾフィラン、界面活性剤、及び緩衝液と混合し、脂質膜が分離して乳白色の液体を形成するまで水和し、シゾフィランリポソームの粗製懸濁液を得るステップ
であって、前記界面活性剤はポリソルベート80とミリスチン酸ポリグリセリル-10との組合せを含み、前記ポリソルベート80と前記ミリスチン酸ポリグリセリル-10との質量比が(1.5~5):1であるステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたシゾフィランリポソームの粗製懸濁液を超音波処理し、濾過膜で濾過して前記シゾフィランリポソームを得るステップ(3)と
を含む、ことを特徴とするシゾフィランリポソームの調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)に記載の
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、エチルエーテル、アセトン又はジクロロメタンのいずれか1種又は少なくとも2種の組合せを
含み、
ステップ(1)に記載の
前記有機溶媒を除去すること
には、回転蒸発法が用いられる、ことを特徴とする
請求項1に記載のシゾフィランリポソームの調製方法。
【請求項3】
前記有機溶媒はエチルエーテルとメタノールとを含み、前記エチルエーテルと前記メタノールとの体積比は(1~5):1である、ことを特徴とする請求項2に記載のシゾフィランリポソームの調製方法。
【請求項4】
前記緩衝液はリン酸緩衝液を含み、pHが6.5~7.5である、ことを特徴とする
請求項1に記載のシゾフィランリポソームの調製方法。
【請求項5】
ステップ(2)に記載の
前記シゾフィランとはシゾフィラン原液を指し、前記シゾフィラン原液はスエヒロタケの発酵により得られる、質量濃度が0.5%~5%のβ-グルカン溶液である、ことを特徴とする
請求項1に記載のシゾフィランリポソームの調製方法。
【請求項6】
前記シゾフィラン原液と
前記レシチンの質量比は(0.01~0.25):1であり、
前記シゾフィラン原液と
前記界面活性剤の質量比は(2~10):1であり、
前記シゾフィラン原液と
前記緩衝液の質量比は1:(5~20)である、
ことを特徴とする請求項5に記載のシゾフィランリポソームの調製方法。
【請求項7】
ステップ(3)に記載の
前記超音波処理の超音波出力は100~600Wであり、
ステップ(3)に記載の
前記超音波処理の超音波時間は20~40minであり、
ステップ(3)に記載の
前記濾過膜は0.45μm微孔濾過膜であり、
ステップ(3)に記載の得られたシゾフィランリポソームの粒径は50~200nmである、
ことを特徴とする
、請求項1~5のいずれか一項に記載のシゾフィランリポソームの調製方法。
【請求項8】
前記レシチンと
前記コレステロールを質量比1:(0.05~0.35)でエチルエーテルとメタノールの混合
有機溶媒に溶解し、
前記有機溶媒を除去し、脂質膜を形成するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた
前記脂質膜をシゾフィラン原液、界面活性剤、及びリン酸緩衝液と混合し、
前記脂質膜が分離して乳白色の液体を形成するまで水和し、シゾフィランリポソームの粗製懸濁液を得るステップであって、
前記シゾフィラン原液と
前記レシチンの質量比は(0.01~0.25):1、
前記シゾフィラン原液と
前記界面活性剤の質量比は(2~10):1、
前記シゾフィラン原液と
前記リン酸緩衝液の質量比は1:(5~20)であるステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた
前記シゾフィランリポソームの粗製懸濁液を100~600Wで20~40分間超音波処理し、0.45μm微孔濾過膜で濾過し、粒径が50~200nmの
前記シゾフィランリポソームを得るステップ(3)と
を含む、ことを特徴とする
請求項1~5のいずれか一項に記載のシゾフィランリポソームの調製方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法でシゾフィランリポソームを調製することを特徴とする、シゾフィランリポソームを含む化粧品の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品の技術分野に属し、シゾフィラン(schizophyllan)リポソーム及びその調製方法と使用に関し、特に、粒径が小さく、分布が均一であり、カプセル化効率が高いシゾフィランリポソーム及びその調製方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シゾフィランは、スエヒロタケの子実体、菌糸体又は発酵液から抽出された水溶性多糖類であり、腫瘍の抑制、抗菌消炎、抗輻射、有機体免疫力の向上などの様々な生理活性を有し、近年、シゾフィランに関する研究は主にスエヒロタケの生物学的特性、食用と薬用価値、栽培順化及び深部発酵などの分野に集中している。
【0003】
シゾフィランは、保湿及び老化防止効果をさらに有し、活性成分として化粧品に添加可能であり、従来の技術では、シゾフィランの化粧品における使用に関する報道がある。例えば、CN107007525Aは長期的で効果的な保湿機能を有する組成物を開示しており、該組成物は、シゾフィラン、デンドロビウム・ノビル抽出物、ボウフウ抽出物、黄精抽出物、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、ポリオール及び水を含み、該組成物は保湿化粧品の調製に用いられ、即時保湿効果がよく、且つ保湿効果が長く持続されている利点を有する。例えば、CN107595724Aはスキンケアマトリックスを開示しており、該スキンケアマトリックスは、脱イオン水、変性シゾフィラン、1,3-ブタンジオール、フェノキシエタノール、ダービリア・アンタークティカ(durvillaea antarctica)抽出物及びチコリー根抽出物を含み、該スキンケアマトリックスは、従来の技術におけるスキンケア製品の機能が単一である技術的問題を軽減することができ、同時に老化防止、保湿及び修復の効果を有する。
【0004】
しかし、シゾフィランは高分子・水溶性の天然産物として、化粧品に添加すると、遊離状態で肌に浸透して保持することができず、発揮する保湿又は老化防止効果が制限される。
【発明の概要】
【0005】
従来の技術の不足について、本発明の目的は、シゾフィランリポソーム及びその調製方法と使用を提供し、特に、粒径が小さく、分布が均一であり、カプセル化効率が高いシゾフィランリポソーム及びその調製方法と使用を提供することにある。
【0006】
本発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術案を講じた。
第1の態様では、本発明はシゾフィランリポソームの調製方法を提供しており、前記調製方法は、
脂質を有機溶媒に溶解し、有機溶媒を除去し、脂質膜を形成するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた脂質膜をシゾフィラン、界面活性剤、及び緩衝液と混合し、脂質膜が分離して乳白色の液体を形成するまで水和し、シゾフィランリポソームの粗製懸濁液を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたシゾフィランリポソームの粗製懸濁液を超音波処理し、濾過膜で濾過して前記シゾフィランリポソームを得るステップ(3)とを含む。
【0007】
シゾフィランは高分子・水溶性の天然産物として、化粧品に添加すると、遊離状態で肌に浸透して保持することができず、発揮する保湿又は老化防止効果が制限される。この欠点を克服するために、本発明は、シゾフィランをリポソームにカプセル化して、肌に浸透して吸収及び肌に保持することをより容易にするシゾフィランリポソーム製品を調製することにより、肌におけるシゾフィランの利用率を著しく改善し、より良好な保湿及び老化防止効果を発揮する。しかしながら、シゾフィランをリポソームにカプセル化することは容易ではなく、リポソームの粒径サイズ及び分散性を制御することは困難でカプセル化効率を改善することも困難であり、本発明に係る調製方法は、粒径が小さく、分散が均一で、カプセル化効率が高いシゾフィランリポソーム製品を得ることができ、且つ良好な保湿、美白、及び酸化防止効果を有することがわかった。
【0008】
好ましくは、ステップ(1)に記載の脂質はレシチンとコレステロールとを含む。
【0009】
好ましくは、前記レシチンとコレステロールの質量比は1:(0.05~0.35)であり、例えば、1:0.05、1:0.10、1:0.15、1:0.20、1:0.25、1:0.30又は1:0.35などであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0010】
本発明に係る調製方法において、脂質は、レシチン及びコレステロールを特定的に選択し、且つ特定の配合比の関係で配合するため、この組合せ方式で調製される製品のカプセル化効率及び薬物担持量がより高く、その経皮吸収量と肌における保持量もより高く、保湿、美白及び老化防止により良好な効果を有する。
【0011】
好ましくは、ステップ(1)に記載の有機溶媒は、メタノール、エタノール、エチルエーテル、アセトン又はジクロロメタンのいずれか1種又は少なくとも2種の組合せを含み、好ましくは、エチルエーテルとメタノールの組合せである。
【0012】
前記少なくとも2種の組合せは、例えば、エタノールとエチルエーテルの組合せ、メタノールとエタノールの組合せ、アセトンとジクロロメタンの組合せなどであり、他の任意の組合せ方式はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0013】
好ましくは、前記エチルエーテルとメタノールの体積比は(1~5):1であり、例えば、1:1、2:1、3:1、4:1又は5:1などであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0014】
好ましくは、ステップ(1)に記載の有機溶媒を除去することは回転蒸発法が用いられる。
【0015】
好ましくは、ステップ(2)に記載の界面活性剤は、ポリソルベート80、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、カプリル酸ポリグリセリル-6、セスキステアリン酸PEG-20メチルグルコース、PEG-10ジメチコン、セテアレス-6、メチルグルセス-20、ステアリン酸グリセリル、オリーブ油脂肪酸セテアリル又はオリーブ油脂肪酸ソルビタンのいずれか1種又は少なくとも2種の組合せを含み、好ましくは、ポリソルベート80とミリスチン酸ポリグリセリル-10の組合せである。
【0016】
好ましくは、前記ポリソルベート80とミリスチン酸ポリグリセリル-10の質量比は(1.5~5):1であり、例えば、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1又は5:1などであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0017】
本発明に係る調製方法において、界面活性剤はポリソルベート80とミリスチン酸ポリグリセリル-10の組合せを特定的に選択し、且つ特定の配合比の関係で配合するため、この組合せ方式で調製される製品の粒径分布がより均一であり、カプセル化効率及び薬物担持量がより高く、その経皮吸収量と肌における保持量もより高く、保湿、美白及び老化防止により良好な効果を有する。
【0018】
好ましくは、前記緩衝液はリン酸緩衝液を含み、pHが6.5~7.5であり、例えば、pH=6.5、pH=6.7、pH=6.8、pH=7.0、pH=7.2、pH=7.4又はpH=7.5などであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0019】
好ましくは、ステップ(2)に記載のシゾフィランとはシゾフィラン原液を指し、前記シゾフィラン原液はスエヒロタケの発酵により得られる、質量濃度が0.5%~5%のβ-グルカン溶液である。
【0020】
好ましくは、前記シゾフィラン原液とレシチンの質量比は(0.01~0.25):1であり、例えば、0.01:1、0.05:1、0.08:1、0.10:1、0.12:1、0.15:1、0.20:1又は0.25:1などであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0021】
好ましくは、前記シゾフィラン原液と界面活性剤の質量比は(2~10):1であり、例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、8:1又は10:1などであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0022】
好ましくは、前記シゾフィラン原液と緩衝液の質量比は1:(5~20)であり、例えば、1:5、1:8、1:10、1:12、1:15、1:16、1:18又は1:20などであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0023】
上記したシゾフィラン原液、レシチン、界面活性剤及び緩衝液は特定の質量配合比の関係を満たすことにより、調製されるリポソームの粒径分布がより均一で安定であり、カプセル化効率及び薬物担持量がより高く、その経皮吸収量と肌における保持量もより高く、保湿、美白及び老化防止により良好な効果を有する。
【0024】
好ましくは、ステップ(3)に記載の超音波処理の超音波出力は100~600Wであり、例えば、100W、200W、300W、400W、500W又は600Wなどであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0025】
好ましくは、ステップ(3)に記載の超音波処理の超音波時間は20~40minであり、例えば、20min、25min、30min、35min又は40minなどであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0026】
好ましくは、ステップ(3)に記載の濾過膜は0.45μm微孔濾過膜である。
【0027】
好ましくは、ステップ(3)に記載の得られたシゾフィランリポソームの粒径は50~200nmであり、例えば、50nm、60nm、80nm、100nm、120nm、150nm、180nm又は200nmなどであり、上記の数値範囲内の他の具体的なポイント値はすべて選択可能であり、ここでは説明を省略する。
【0028】
本発明の好ましい技術案として、前記シゾフィランリポソームの調製方法は、具体的には、
レシチンとコレステロールを質量比1:(0.05~0.35)でエチルエーテルとメタノールの混合溶媒に溶解し、有機溶媒を除去し、脂質膜を形成するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた脂質膜をシゾフィラン原液、界面活性剤、及びリン酸緩衝液と混合し、脂質膜が分離して乳白色の液体を形成するまで水和し、シゾフィランリポソームの粗製懸濁液を得るステップであって、シゾフィラン原液とレシチンの質量比は(0.01~0.25):1、シゾフィラン原液と界面活性剤の質量比は(2~10):1、シゾフィラン原液と緩衝液の質量比は1:(5~20)であるステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたシゾフィランリポソームの粗製懸濁液を100~600Wで20~40分間超音波処理し、0.45μm微孔濾過膜で濾過し、前記粒径が50~200nmのシゾフィランリポソームを得るステップ(3)とを含む。
【0029】
第2の態様では、本発明は第1の態様に記載のシゾフィランリポソームの調製方法により調製されたシゾフィランリポソームを提供する。
【0030】
第3の態様では、本発明は第2の態様に記載のシゾフィランリポソームの化粧品の調製における使用を提供する。
【0031】
従来の技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
シゾフィランは高分子・水溶性の天然産物として、化粧品に添加すると、遊離状態で肌に浸透して保持することができず、発揮する保湿又は老化防止効果が制限される。この欠点を克服するために、本発明は、シゾフィランをリポソームにカプセル化して、肌に浸透して吸収及び肌に保持することをより容易にするシゾフィランリポソーム製品を調製することにより、肌におけるシゾフィランの利用率を著しく改善し、より良好な保湿及び老化防止効果を発揮する。本発明に係る調製方法は、粒径が小さく(115.97nm~466.38nm)、分散が均一であり、カプセル化効率が高い(80%以上)シゾフィランリポソーム製品を得ることができ、且つ良好な保湿、美白、及び酸化防止効果を有することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係るシゾフィランリポソームの光学顕微鏡観察図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、具体的実施形態によって、本発明の技術案をさらに説明する。当業者は、前記実施例が本発明を理解するためのものに過ぎず、本発明を具体に制限するものと見なすべきではないということを理解すべきである。
【0034】
下記の実施例に係るシゾフィラン原液は広州啓点生物科技有限公司から購入したもので、型番はシゾフィラン-G1であった。
【0035】
実施例1
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法は以下の通りであった。
(1)レシチンとコレステロールを質量比1:0.25で体積比2:1のエチルエーテル/メタノール混合溶媒に溶解し、40℃で恒温水浴し、減圧して回転蒸発させて有機溶媒を除去し、均一な脂質膜を形成し、
(2)ステップ(1)で得られた脂質膜をシゾフィラン原液、界面活性剤(ポリソルベート80とミリスチン酸ポリグリセリル-10の質量比が4:1の組合せ)、及びpH=7.2のリン酸緩衝液と混合し、脂質膜が分離して乳白色の液体を形成するまで水和し、シゾフィランリポソームの粗製懸濁液を得て、シゾフィラン原液とレシチンの質量比は0.2:1、シゾフィラン原液と界面活性剤の質量比は6:1、シゾフィラン原液と緩衝液の質量比は1:15であり、
(3)ステップ(2)で得られたシゾフィランリポソームの粗製懸濁液を400Wで30分間超音波処理し、0.45μm微孔濾過膜で濾過し、前記粒径が50~200nmのシゾフィランリポソームを得た。
【0036】
実施例2
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法は以下の通りであった。
(1)レシチンとコレステロールを質量比1:0.1でジクロロメタンに溶解し、40℃で恒温水浴し、減圧して回転蒸発させて有機溶媒を除去し、均一な脂質膜を形成し、
(2)ステップ(1)で得られた脂質膜をシゾフィラン原液、界面活性剤(ポリソルベート80とミリスチン酸ポリグリセリル-10の質量比が5:1の組合せ)、及びpH=7.2のリン酸緩衝液と混合し、脂質膜が分離して乳白色の液体を形成するまで水和し、シゾフィランリポソームの粗製懸濁液を得て、シゾフィラン原液とレシチンの質量比は0.05:1、シゾフィラン原液と界面活性剤の質量比は10:1、シゾフィラン原液と緩衝液の質量比は1:10であり、
(3)ステップ(2)で得られたシゾフィランリポソームの粗製懸濁液を200Wで40分間超音波処理し、0.45μm微孔濾過膜で濾過し、前記粒径が50~200nmのシゾフィランリポソームを得た。
【0037】
実施例3
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法は以下の通りであった。
(1)レシチンとコレステロールを質量比1:0.35で体積比1:1のエチルエーテル/エタノール混合溶媒に溶解し、40℃で恒温水浴し、減圧して回転蒸発させて有機溶媒を除去し、均一な脂質膜を形成し、
(2)ステップ(1)で得られた脂質膜をシゾフィラン原液、界面活性剤(ポリソルベート80とステアリン酸グリセリルの質量比が3:1の組合せ)、及びpH=7.2のリン酸緩衝液と混合し、脂質膜が分離して乳白色の液体を形成するまで水和し、シゾフィランリポソームの粗製懸濁液を得て、シゾフィラン原液とレシチンの質量比は0.25:1、シゾフィラン原液と界面活性剤の質量比は5:1、シゾフィラン原液と緩衝液の質量比は1:20であり、
(3)ステップ(2)で得られたシゾフィランリポソームの粗製懸濁液を600Wで20分間超音波処理し、0.45μm微孔濾過膜で濾過し、前記粒径が50~200nmのシゾフィランリポソームを得た。
【0038】
参考例1
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法と実施例1の区別は、レシチンを等量の大豆リン脂質に置き換えることのみであり、他の条件はすべてそのままで、調製方法も実施例1と一致した。
【0039】
参考例2
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法と実施例1の区別は、レシチンとコレステロールの質量比が1:0.02であることのみであるが、脂質の総量をそのままにした。他の条件はすべてそのままで、調製方法も実施例1と一致した。
【0040】
参考例3
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法と実施例1の区別は、レシチンとコレステロールの質量比が1:0.45であることのみであるが、脂質の総量をそのままにした。他の条件はすべてそのままで、調製方法も実施例1と一致した。
【0041】
参考例4
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法と実施例1の区別は、界面活性剤を等量のセテアレス-6に置き換えることのみであった。他の条件はすべてそのままで、調製方法も実施例1と一致した。
【0042】
参考例5
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法と実施例1の区別は、界面活性剤を等量のPEG-10ジメチコンに置き換えることのみであった。他の条件はすべてそのままで、調製方法も実施例1と一致した。
【0043】
実施例9
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法と実施例1の区別は、シゾフィラン原液の添加量をそのままにし、界面活性剤の添加量を変更することにより、シゾフィラン原液と界面活性剤の割合を1:1にすることのみであった。他の条件はすべてそのままで、調製方法も実施例1と一致した。
【0044】
実施例10
本実施例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法と実施例1の区別は、シゾフィラン原液の添加量をそのままにし、界面活性剤の添加量を変更することにより、シゾフィラン原液と界面活性剤の割合を15:1にすることのみであった。他の条件はすべてそのままで、調製方法も実施例1と一致した。
【0045】
比較例1
本比較例はシゾフィランリポソームを提供しており、その調製方法と実施例1の区別は、ステップ(2)で界面活性剤を添加しないことのみであり、他の条件はすべてそのままで、調製方法も実施例1と一致した。
【0046】
評価試験:
(1)形態の観察と粒径の分析について
実施例1~10及び比較例1で調製されたリポソームを蒸留水で10倍希釈した後、超音波分散させ、英国Malvern Instruments公司のMastersizer 2000レーザー粒度分析器を用いてリポソームの平均粒径及び分布状況を分析し、それぞれのサンプルを3回測定し、その平均値を取り、結果を表1に示した。
【0047】
【0048】
表1のデータから、本発明に係るシゾフィランリポソーム製品は、粒径が小さく、115.97nm~466.38nmに制御できることが分かった。
【0049】
実施例1で調製されたリポソームを蒸留水で10倍希釈し、400倍の光学顕微鏡で観察したところ、
図1に示すように、本発明に係るシゾフィランリポソームは、形態が球形で粒径が比較的均一であり、凝集がなく、分散性が良好であった。
【0050】
(2)カプセル化効率と薬物担持量の測定について
リポソーム懸濁液0.5mLを精秤し、PBSで3倍希釈してからカラムに加え、SephadexG-50ゲルカラムを使用し、PBSで溶出し、流速を1mL/minに制御し、遊離シゾフィランを収集し、加水分解し、フェノール硫酸法を用いてシゾフィランの含有量を測定した。また、リポソーム懸濁液0.5mLを取り、体積比2:1のエチルエーテル/メタノール混合溶媒に加えて溶解し、シゾフィランを抽出し、上記の方法によってシゾフィランの総量を測定した。カプセル効率と薬物担持量は、次の式により計算された。
【0051】
【0052】
【数2】
式中、m
総はリポソーム懸濁液におけるシゾフィランの総質量を表し、m
遊はリポソーム懸濁液における遊離シゾフィランの質量を表し、m
脂質はリポソーム懸濁液における脂質の総量を表した。
【0053】
結果を表2に示した。
【0054】
【0055】
表2のデータから、本発明に係るシゾフィランリポソーム製品のカプセル化効率及び薬物担持は高く、最高87.69%及び42.13%に達することができることが分かった。
【0056】
(3)経皮吸収効果の評価について
本実験では、屠殺されたばかりの豚の背皮を選択して研究した。まず、豚の皮膚に以下の処理を行い、まず毛を取り除き、毛を取り除くときに皮膚の毛穴をできるだけ傷つけないようにし、次に皮下脂肪を処理し、まずメスを用いて余分な脂肪をそっとこすり落とし、できるだけ皮膚の真皮層を傷つけないようにし、残った脂肪をイソプロパノールで繰り返し拭き取り、最後に生理食塩水で繰り返し洗浄した後、-20℃の冷蔵庫に入れ、1ヶ月以内に解凍し、PBSで洗浄し、濾紙間で乾燥させた後、経皮実験を行った。
【0057】
垂直式Franz拡散タンク法を用いて、分離した豚皮膚の薬物経皮実験を行った。皮膚を供給チャンバーと受容タンクの間に固定し、皮膚の角質層が供給チャンバーに面し、真皮層が受容タンクに面し、拡散タンクの有効拡散面積は1cm2であり、受容タンクの体積は10mLであった。拡散タンクを36℃の恒温水浴に入れ、薬剤供給タンクにシゾフィランリポソーム懸濁液1mLを加え、ローターを拡散タンク内に入れ、20r/minで磁気攪拌を行った。サンプルを加えて10分間バランスを取らせた後、タイミングを開始し、それぞれ、0.5、1、2、3、4、5、6、9、12、18、24時間で拡散タンクから1mLをサンプリングして測定し、1mLの等温PBSを追加した。上記した異なる時間でサンプリングした受容液におけるシゾフィランの含有量をそれぞれ測定し、次の式によって対応する各時点での豚皮膚の単位面積あたりの累積透過量Qn(mg/cm2)を計算し、各グループのサンプルを3回テストして平均値を取った。
【0058】
【数3】
ただし、C
n、C
iはn番目とi番目のサンプリングポイントで測定したシゾフィラン質量濃度(mg/mL)、V
nは受容タンクの総体積(mL)、V
0はサンプリング体積(mL)、Aは拡散タンク上の豚皮の有効面積(cm
2)であった。
【0059】
24時間後、皮膚を取り下げ、超純水で洗浄してサンプルの残液を除去してから、細かく切り、組織ホモジナイザーに移し、十分に研磨してホモジネートにし、適量のエタノールを加え、遠心分離管に移し、20分間超音波処理し、5000r/minで10分間遠心分離し、沈殿物を収集し、脱イオン水で再溶解し、フェノール硫酸法によってシゾフィランの含有量を測定し、皮膚におけるシゾフィランの保持量を計算した。
【0060】
結果を表3に示した。
【0061】
【0062】
表3のデータから、本発明に係るシゾフィランリポソーム製品の24h皮膚における累積透過量及び皮膚における保持量は、すべてシゾフィランよりも著しく超え、最高45.16mg/cm2及び363.16mg/cm2に達することができることがわかった。且つ、リポソームにおける脂質の組成と割合、界面活性剤の組成と割合は、すべてリポソームの皮膚における累積透過量及び皮膚における保持量に著しく影響した。
【0063】
使用例1
シゾフィランリポソームを含むスキンケア乳液及び実施例1~3、9、10、参考例1~5及び比較例1で調製されたシゾフィランリポソームを含むスキンケア乳液を別々に調製し(乳液におけるシゾフィランの有効量は1%)、ボランティアによって人体テストした。前記スキンケア乳液の調製方法は次の通りであった。
【0064】
【0065】
(1)A相の各原料を精秤し、ビーカーに入れ、85℃に加熱し、15分間保温攪拌した。
(2)また、別のビーカーにB相の各原料(メチルパラベンを除く)を順次に加え、70℃に加熱したらメチルパラベンを加え、90±1℃まで昇温し、15分間保温攪拌した。
(3)攪拌を開始し、A相をB相にゆっくりと注ぎ、混合してから、ホモジナイザーをオンにして、速度が3000rpmのときに5分間均質化した。
(4)混合されたサンプルを400rpmで攪拌して45℃に冷却し、C相の各原料とシゾフィランリポソーム又はシゾフィランを加え、均一になるまで15分間攪拌し、スキンケア乳液を得た。
【0066】
評価試験:
調製されたスキンケア乳液について保湿、美白及び老化防止の3つの面から評価した。
【0067】
(1)保湿効果テストについて
テスト前の準備:(1)テスト3日前から、被験部位にいずれの製品(化粧品又は外用薬品)を使用せず、実験前に被験者は両手の前腕の内側を一緒に洗浄する必要があった。(2)被験者の両手の前腕の内側に測定領域をマーキングすべきであり、実験領域の面積は少なくとも3cm×3cmであり、同一の腕に複数の領域を同時にマーキングすることができ、各テスト領域間の間隔は少なくとも1cmであった。(3)正式なテストの前に基準を満たす部屋で少なくとも20分間、水や飲み物を飲まずに静かに座るべきであった。
【0068】
テスト過程:(1)製品の適用領域とブランク比較領域は、左右の腕の定められた領域にランダムに分布し、すべての製品と領域の位置が統計的に均衡するようにすべきであった。(2)テストサンプルを(2.0±0.1)mg/cm2の使用量で1回適用した。(3)静電容量式皮膚水分測定計を用いて、製品の適用領域と比較領域内の肌における水分含有量を測定し、それぞれ使用前、使用30分後、使用60分後、使用120分後、使用後180分後の肌における水分含有量(%)をテストし、各領域を少なくとも3回並行測定してから、平均値を取った。(4)製品の使用期間にボランティアの肌に不良反応が現れた場合は、すぐにテストを中止し、ボランティアを適切に治療し、現れた不良反応を記録した。
【0069】
結果を表4に示した。
【0070】
【0071】
表4のデータから、本発明に係るシゾフィランをスキンケア乳液の調製に適用した場合、得られた製品は肌の保湿に顕著な効果を有することが分かった。且つ、リポソームにおける脂質の組成と割合、界面活性剤の組成と割合はすべて、リポソームの上記の効果に著しく影響した。
【0072】
(2)美白効果のテストについて
テスト過程は以下の通りであった。
1、テストサンプルと対象
サンプル:実施例1~3、9、10で調製された製品、参考例1~5で調製された製品、比較例1で調製された製品、シゾフィラン原液。
選択基準:顔の肌に斑点、肌のくすみ、肌の黄ぐすみ、肌の色合いが不均一などの問題を持っている、年齢が20~45歳の40人の中国成人女性であり、顔に急性炎症又は他の皮膚疾患があるもの、アレルギー体質又は化粧品アレルギーの病歴があるもの、妊娠中又は授乳中のものを除外した。
2、テストサンプルと対象
VISIA-CR顔面皮膚画像テスター 皮膚画像解析ソフトウェアFrameScan。
3、テスト環境
恒温恒湿環境、温度:22℃±1℃、湿度:50%±5%。テストの前に、被験者はこの環境で20分間静かに座る必要があった。
4、テスト方法
VISIA-CRを用いて製品の使用前、製品の使用1週後、2週後、1ヶ月後の被験者の顔全体の画像を撮影し、ソフトウェアFrameScanで肌色の明るさcieL*の変化値を分析した。結果を表5に示した。
【0073】
【0074】
表5のデータから、本発明に係るシゾフィランをスキンケア乳液の調製に適用した場合、得られた製品は肌の美白に顕著な効果を有することが分かった。且つ、リポソームにおける脂質の組成と割合、界面活性剤の組成と割合はすべて、リポソームの上記の効果に著しく影響した。
【0075】
(3)老化防止効果テストについて
テスト過程は以下の通りであった。
1、テストサンプルと対象
サンプル:実施例1~3、9、10、参考例1~5、比較例1、シゾフィラン原液。
選択基準:年齢が40~50歳の40人の健康な女性であり、顔に急性炎症又は他の皮膚疾患があるもの、アレルギー体質又は化粧品アレルギーの病歴があるもの、妊娠中又は授乳中のものを除外した。
2、テスト装置
VISIA-CR顔面皮膚画像テスター
3、テスト環境
恒温恒湿環境、温度:22℃±1℃、湿度:50%±5%。テストの前に、被験者はこの環境で20分間静かに座る必要があった。
4、テスト方法
被験者は、毎朝、毎晩温水で顔を洗った後、テストサンプルを目の周りに使用し、4週間連続使用した後、VISIA-CR顔面皮膚画像テスターで使用前後の被験者の目の写真を撮影し、目尻領域のシワ面積、シワの数、シワの深さの変化量を評価し、そのテスト結果を表6に示した。
【0076】
【0077】
表6のデータから、本発明に係るシゾフィランをスキンケア乳液の調製に適用した場合、得られた製品は肌の老化防止に顕著な効果を有することが分かった。且つ、リポソームにおける脂質の組成と割合、界面活性剤の組成と割合はすべて、リポソームの上記の効果に著しく影響した。
【0078】
本発明は上記実施例によって本発明のシゾフィランリポソーム及びその調整方法と使用を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、即ち、本発明は上記実施例によって実施しなければならないものではないと出願人は声明する。当業者にとって、本発明に対するいずれの改良、本発明の製品の各原料への等価置換及び補助成分の添加、具体的実施形態の選択などはいずれも本発明の保護範囲及び開示範囲に入ることが明瞭である。
【0079】
上記は本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明は、上記の実施形態の具体的な詳細に限定されず、本発明の技術思想の範囲内で、様々な簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更はすべて、本発明の保護範囲に属する。
【0080】
なお、上記の具体的実施形態に記載されたそれぞれの具体的な技術的特徴は、矛盾しない場合、任意の適切な方法で組み合わせることができ、不必要な繰り返しを避けるために、本発明では様々な可能な組み合わせを個別に説明しない。