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特許7186271積層体、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】積層体、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/025 20190101AFI20221201BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20221201BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20221201BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B32B7/025
C23C14/08 D
G06F3/041 495
G06F3/041 470
H01B5/14 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021160979
(22)【出願日】2021-09-30
(62)【分割の表示】P 2021517075の分割
【原出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022017241
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020016508
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】藤野 望
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-150338(JP,A)
【文献】国際公開第2007/080738(WO,A1)
【文献】特開平09-286070(JP,A)
【文献】特開2008-149681(JP,A)
【文献】特開平07-073738(JP,A)
【文献】特表2014-529185(JP,A)
【文献】特開2017-105069(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072441(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0279471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
C23C 14/00 - 14/58
G06F 3/03
G06F 3/041 - 3/047
H01B 5/00 - 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートまたは機能層と、透明導電層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、
前記透明導電層は、第1主面、および、前記第1主面と厚み方向に対向し、前記基材シートまたは前記機能層の前記厚み方向の一方面に接触する第2主面を備え、
前記透明導電層は、前記厚み方向に直交する面方向に延びる単一の層であり、
前記透明導電層は、
複数の結晶粒と、
前記複数の結晶粒を仕切り、厚み方向一端縁および他端縁のそれぞれが前記第1主面および前記第2主面のそれぞれにおいて開放される複数の第1粒界と、
一の前記第1粒界の厚み方向中間部から分岐し、前記一の第1粒界に隣接する他の前記第1粒界の厚み方向中間部に至る第2粒界とを有し、
前記基材シートは、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、および、ノルボルネン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記機能層は、有機材料を含む、積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の積層体を備える、タッチセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の積層体を備える、調光素子。
【請求項4】
請求項1に記載の積層体を備える、光電変換素子。
【請求項5】
請求項1に記載の積層体を備える、熱線制御部材。
【請求項6】
請求項1に記載の積層体を備える、アンテナ。
【請求項7】
請求項1に記載の積層体を備える、電磁波シールド部材。
【請求項8】
請求項1に記載の積層体を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電層、透明導電性シート、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、結晶質の透明導電層を備える透明導電性シートが知られている。
【0003】
例えば、複数の結晶粒を有する光透過性導電層を備える光透過性導電フィルムが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に記載の光透過性導電層を構成する第2無機酸化物層には、上記した複数の結晶粒を仕切る粒界が、光透過性導電層の上面から下面に至る粒界が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-41059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、タッチパネルや太陽電池や調光素子等に用いられている光透過性導電層には、より低い抵抗特性が求められている。光透過性導電層には、インジウムスズ複合酸化物(ITO)等の導電性酸化物か、特許文献1に記載の光透過性導電層のように金属層と無機酸化物層を複合した金属/酸化物複合層等を用いることができるが、湿熱等の過酷環境での信頼性が高い導電性酸化物が、特に好適に採用されている。導電性酸化物を用いて低抵抗特性を担保するためには、結晶質の導電性酸化物を光透過性導電層とすることが好ましい。一方、結晶質の導電性酸化物は、厚み方向における概して透湿性が大きい。光透過性導電層には、低い透湿性も求められるが、結晶質の導電性酸化物を適用すると、透湿性の観点では課題が生じる。すなわち、特許文献1に記載の光透過性導電層を構成する第2無機酸化物層は、上記した低透湿性の要求を満足できないという不具合がある。
【0007】
本発明は、耐透湿性に優れる透明導電層、透明導電性シート、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、厚み方向に互いに対向する第1主面および第2主面を備え、前記厚み方向に直交する面方向に延びる単一の層であり、複数の結晶粒と、前記複数の結晶粒を仕切り、厚み方向一端縁および他端縁のそれぞれが前記第1主面および前記第2主面のそれぞれにおいて開放される複数の第1粒界と、一の前記第1粒界の厚み方向中間部から分岐し、前記一の第1粒界に隣接する他の前記第1粒界の厚み方向中間部に至る第2粒界とを有する、透明導電層を含む。
【0009】
この透明導電層は、一の第1粒界の厚み方向中間部から分岐し、一の第1粒界に隣接する他の第1粒界の厚み方向中間部に至る第2粒界を有する。そのため、第2主面に水が接触しても、第2主面から第1主面に至る水の経路を長く確保できる。その結果、透明導電層は、耐透湿性に優れる。
【0010】
本発明[2]は、前記第2粒界が、断面視において、一の前記第1粒界の厚み方向中間部と他の前記第1粒界の厚み方向中間部とを結ぶ線分に対して5nm以上離れた位置にある頂点を有する、[1]に記載の透明導電層を含む。
【0011】
この透明導電層では、第2粒界が、頂点を有するので、上記した水の経路をより一層長くすることができる。その結果、透明導電層は、耐透湿性により一層優れる。
【0012】
本発明[3]は、材料が、スズ含有酸化物である、[1]または[2]に記載の透明導電層を含む。
【0013】
この透明導電層の材料は、スズ含有酸化物であるので、透明導電層は、透明性および電気伝導性に優れる。
【0014】
本発明[4]は、厚みが、100nm以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の透明導電層を含む。
【0015】
透明導電層の厚みが、100nm以上であるので、透明導電層は、耐透湿性に優れる。
【0016】
本発明[5]は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の透明導電層と、前記透明導電層の前記第2主面側に位置する基材シートとを備える、透明導電性シートを含む。
【0017】
この透明導電性シートは、上記した透明導電層を備えるので、耐透湿性に優れる。
【0018】
本発明[6]は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の透明導電層を備える、タッチセンサを含む。
【0019】
このタッチセンサは、上記した透明導電層を備えるので、耐透湿性に優れる。
【0020】
本発明[7]は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の透明導電層を備える、調光素子を含む。
【0021】
この調光素子は、上記した透明導電層を備えるので、耐透湿性に優れる。
【0022】
本発明[8]は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の透明導電層を備える、光電変換素子を含む。
【0023】
この光電変換素子は、上記した透明導電層を備えるので、耐透湿性に優れる。
【0024】
本発明[9]は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の透明導電層を備える、熱線制御部材を含む。
【0025】
この熱線制御部材は、上記した透明導電層を備えるので、耐透湿性に優れる。
【0026】
本発明[10]は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の透明導電層を備える、アンテナを含む。
【0027】
このアンテナは、上記した透明導電層を備えるので、耐透湿性に優れる。
【0028】
本発明[11]は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の透明導電層を備える、電磁波シールド部材を含む。
【0029】
この電磁波シールド部材は、上記した透明導電層を備えるので、耐透湿性に優れる。
【0030】
本発明[12]は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の透明導電層を備える、画像表示装置を含む。
【0031】
この画像表示装置は、上記した透明導電層を備えるので、耐透湿性に優れる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の透明導電層、透明導電性シート、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置は、耐透湿性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1A図1Cは、本発明の透明導電性シートの一実施形態の製造方法を説明する工程断面図であり、図1Aが、基材シートを準備する工程、図1Bが、非晶質透明導電層を形成する工程、図1Cが、結晶質の透明導電層を形成する工程である。
図2図2は、図1Cに示す透明導電性シートにおける透明導電層の断面図である。
図3図3は、図1Bに示す非晶質透明導電層を形成する工程で用いられるスパッタ装置の概略図である。
図4図4は、本発明の透明導電層の変形例(第2粒界が頂点を有しない変形例)の断面図である。
図5図5は、本発明の透明導電層の変形例(厚み方向に並ぶ複数の第2粒界を備える変形例)の断面図である。
図6図6は、本発明の透明導電性シートの変形例(機能層を備える変形例)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の透明導電性シートの一実施形態を図1A図3を参照して説明する。なお、図2において、複数の結晶粒4(後述)を明確に示し、また、第1粒界7(後述)および第2粒界8(後述)と、引出線および仮想線分(鎖線)とを区別するために、複数の結晶粒4を濃度が互いに異なるグレーで描画している。
【0035】
図1Cに示すように、この透明導電性シート1は、所定厚みを有し、厚み方向に直交する面方向に延びるシート形状を有する。この透明導電性シート1は、基材シート2と、透明導電層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0036】
基材シート2は、透明導電性シート1の機械強度を確保するための透明基材である。基材シート2は、面方向に延びる。基材シート2は、基材第1主面21および基材第2主面22を有する。基材第1主面21は、平坦面である。基材第2主面22は、基材第1主面21に対して厚み方向他方側に間隔を隔てて対向配置される。なお、基材シート2は、透明導電層3の第2主面6(後述)側に位置する。基材第2主面22は、基材第1主面21に平行する。
【0037】
なお、平坦面は、基材シート2の基材第1主面21と基材第2主面22とが略平行の平面であることを問わない。例えば、観察できない程度の微細な凹凸、波打ちは、許容される。
【0038】
基材シート2の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーなどのオレフィン樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂などが挙げられる。透明性および耐透湿性の観点から、好ましくは、ポリエステル樹脂、より好ましくは、PETが挙げられる。基材シート2の厚みは、例えば、10μm以上であり、また、例えば、100μm以下である。
【0039】
透明導電層3は、基材シート2の厚み方向一方側に配置されている。具体的には、透明導電層3は、基材シート2の基材第1主面21の全面に接触している。透明導電層3は、所定厚みを有し、面方向に延びる単一の層である。具体的には、透明導電層3は、厚み方向に積層される複数の層ではない。より詳しくは、面方向に沿って仕切られる複数の透明導電層であって、基材シート2の基材第1主面21に平行な境界を含む複数の透明導電層は、本発明の透明導電層ではない。
【0040】
透明導電層3は、第1主面5および第2主面6を備える。
【0041】
第1主面5は、厚み方向一方側に露出する。第1主面5は、平坦面である。
【0042】
第2主面6は、第1主面5の厚み方向他方側に間隔を隔てて対向配置される。第2主面6は、第1主面5に平行な平坦面である。この一実施形態では、第2主面6は、基材第1主面21に接触する。
【0043】
なお、平坦面とは、第1主面5と第2主面6とが略平行の平面であることを問わない。
例えば、観察できない程度の微細な凹凸、波打ちは、許容される。
【0044】
この透明導電層3は、結晶質である。好ましくは、透明導電層3は、面方向で、非晶質な領域を含まず、結晶質な領域のみを含む。なお、非晶質な領域を含む透明導電層は、例えば、透明導電層の面方向の結晶粒をTEMで観察することにより、同定される。
【0045】
透明導電層3が結晶質である場合には、例えば、透明導電層3を、20℃、5質量%の塩酸水溶液に15分間浸漬した後、水洗および乾燥し、第1主面5において15mm程度の間の二端子間抵抗を測定し、二端子間抵抗が10kΩ以下である。一方、上記した二端子間抵抗が10kΩ超過であれば、透明導電層3は、非晶質である。
【0046】
図2に示すように、透明導電層3は、複数の結晶粒4を有する。結晶粒4は、グレインと称されることもある。
【0047】
透明導電層3は、複数の結晶粒4を仕切る第1粒界7および第2粒界8を有する。
【0048】
第1粒界7は、厚み方向に延びており、断面視において、その厚み方向一端縁9および他端縁10のそれぞれが第1主面5および第2主面6のそれぞれにおいて開放される。第1粒界7は、面方向に互いに間隔を隔てて複数存在する。また、第1粒界7は、断面視において、湾曲部15、折曲部16などを含むことができる。
【0049】
第2粒界8は、複数の第1粒界7のうち、一の第1粒界7(符号7A参照)の厚み方向における第1中間部11から分岐し、一の第1粒界7に隣接する他の第1粒界7(符号7B参照)の厚み方向における第2中間部12に至る。なお、第1中間部11および第2中間部12は、例えば、いずれも、折曲部16である。第2粒界8は、第1中間部11および第2中間部12を連結する。これによって、第2粒界8は、その厚み方向一方側に位置する第1結晶粒31と、厚み方向他方側に位置する第2結晶粒32とを、厚み方向に仕切る。つまり、第2粒界8によって、第1結晶粒31および第2結晶粒32が、厚み方向に順に配置される。第1結晶粒31は、第1主面5を含む。第2結晶粒32は、第2主面6を含む。
【0050】
また、第2粒界8は、第2湾曲部17を含む。この実施形態では、第2湾曲部17は、1つの頂点20を有する。
【0051】
頂点20は、第1中間部11と第2中間部12とを結ぶ線分(破線)に対して5nm以上離れた位置にある。上記した距離は、好ましくは、10nm以上である。なお、本実施形態において、線分から距離が5nm未満である点は、本実施形態における頂点に含まれない。
【0052】
なお、この一実施形態では、頂点20は、上記した線分より、厚み方向一方側に位置する。
【0053】
また、一の第1粒界7Aの厚み方向一端縁9から第1中間部11に延び、第1中間部11から第2粒界8に分岐して、第2中間部12から他の第1粒界7Bに至り、続いて、厚み方向他端縁10に至る粒界は、本発明の第1粒界ではない。つまり、一の第1粒界7Aから第2粒界8を経由して他の粒界7Bに至る粒界は、本発明の第1粒界ではない。
【0054】
一方、一の第1粒界7(符号7A参照)の厚み方向一端縁9から第1中間部11に延び、第1中間部11から複数に分岐して、複数の第1粒界7のそれぞれが厚み方向他端縁10に至る粒界は、本発明の第1粒界に含まれる。つまり、第2粒界8を経由しない第1粒界7は、本発明の第1粒界に含まれる。
【0055】
透明導電層3の材料は、特に限定されない。透明導電層3の材料としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Nb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物が挙げられる。具体的には、好ましくは、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などの金属酸化物が挙げられ、好ましくは、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などのスズ含有酸化物などが挙げられる。透明導電層3の材料がスズ含有酸化物であれば、透明性および電気伝導性に優れる。
【0056】
透明導電層3(スズ含有酸化物)における酸化スズ(SnO)の含有量は、特に限定されず、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、6質量%以上であり、また、例えば、50質量%未満、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。
【0057】
透明導電層3の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、30nm以上、より好ましくは、70nm以上、さらに好ましくは、100nm以上、とりわけ好ましくは、120nm以上、最も好ましくは、140nm以上であり、また、例えば、300nm以下、好ましくは、200nm以下である。透明導電層3の厚みの求め方は、後の実施例で詳述する。
【0058】
透明導電層3の厚みが上記した下限以上であれば、透明導電層3は、耐透湿性に優れる。
【0059】
透明導電層3の厚みが上記した上限以下であれば、透明導電層3は、薄型化が図られる。
【0060】
透明導電層3の厚みに対する、断面視における第1粒界7の厚み方向一端縁9および他端縁10の道のりの平均の比は、例えば、1超過、好ましくは、1.1以上、より好ましくは、1.2以上、さらに好ましくは、1.5以上であり、また、例えば、5以下、好ましくは、2.5以下である。また、断面視において、第1粒界7の厚み方向一端縁9および他端縁10の道のりの平均に対する、第2粒界8の第1中間部11および第2中間部12の道のりの平均の比は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上であり、また、例えば、5以下、好ましくは、3以下である。上記した比が上記した下限を上回り、また、上記した上限を下回ればば、透明導電層3の耐透湿性を向上できる。
【0061】
透明導電層3の、温度40℃、相対湿度90%における透湿度は、10-1[g/m・24h]以下、好ましくは、10-2[g/m・24h]以下、より好ましくは、10-3[g/m・24h]以下、さらに好ましくは、10-4[g/m・24h]以下であり、さらには、10-5[g/m・24h]以下が好適であり、また、例えば、0[g/m・24h]超過である。透明導電層3の透湿度が上記した上限以下であれば、透明導電層3は、耐透湿性に優れる。透明導電層3の透湿度は、後述する実施例の評価方法で説明する。
【0062】
透明導電層3の表面抵抗は、例えば、200Ω/□以下、好ましくは、50Ω/□以下、より好ましくは、30Ω/□以下、さらに好ましくは、20Ω/□以下、とりわけ好ましくは、17Ω/□以下であり、また、例えば、0Ω/□超過である。
【0063】
透明導電層3の比抵抗値は、例えば、3.5×10-4Ωcm以下、好ましくは、3.0×10-4Ωcm以下、より好ましくは、2.8×10-4Ωcm以下、さらに好ましくは、2.5x10-4Ωcm以下、特に好ましくは、2.5×10-4Ωcm以下であり、また、例えば、0.5×10-4Ωcm以上である。比抵抗値は、透明導電層3の厚みと表面抵抗の値とを乗じることで求めることができる。
【0064】
次に、この透明導電性シート1の製造方法を説明する。
【0065】
この方法では、例えば、ロール-トゥ-ロール方式で基材シート2を搬送しながら、透明導電層3を形成する。
【0066】
図1Aに示すように、具体的には、まず、基材シート2を準備する。
【0067】
図1Cに示すように、次いで、透明導電層3を、基材シート2の基材第1主面21に形成する。透明導電層3は、例えば、スパッタリングなどの乾式法、例えば、めっきなどの湿式法により形成される。好ましくは、透明導電層3を、乾式法、より好ましくは、スパッタリングにより形成する。
【0068】
透明導電層3の製造方法は、特に限定されない。例えば、複数のターゲット41~45を備えるスパッタ装置30(図3参照)を用いて、図1Bに示す非晶質透明導電層28を形成し、その後、非晶質透明導電層28を加熱する。
【0069】
図3に示すように、このようなスパッタ装置30は、繰出部35と、スパッタ部36と、巻取部37とを、基材シート2の搬送方向上流側から下流側に向かって、この順で備える。
【0070】
操出部35は、繰出ロール38を備える。
【0071】
スパッタ部36は、成膜ロール40と、複数のターゲット41~45とを備える。
【0072】
複数のターゲット41~45は、第1ターゲット41と、第2ターゲット42と、第3ターゲット43と、第4ターゲット44と、第5ターゲット45とからなる。第1ターゲット41~第5ターゲット45は、成膜ロール40の周方向に沿って、順に配置されている。
【0073】
ターゲットの材料としては、上記した透明導電層3と同様の材料が挙げられる。
【0074】
また、複数のターゲット41~45における上記した酸化スズの含有量は、同一または異なる。
【0075】
複数のターゲット41~45のそれぞれは、複数の成膜室51~55のそれぞれに収容されている。
【0076】
複数の成膜室51~55は、第1成膜室51、第2成膜室52、第3成膜室53、第4成膜室54、および、第5成膜室55からなる。第1成膜室51~第5成膜室55は、周方向に沿って、互いに隣接配置されている。
【0077】
複数の成膜室51~55のそれぞれには、複数のガス供給機61~65のそれぞれが設けられている。複数のガス供給機61~65は、複数のターゲット41~45にそれぞれ対応する。複数のガス供給機61~65は、第1ガス供給機61、第2ガス供給機62、第3ガス供給機63、第4ガス供給機64、および、第5ガス供給機65からなる。複数のガス供給機61~65のそれぞれは、スパッタガスを、複数の成膜室51~55のそれぞれに供給可能である。
【0078】
具体的には、複数のガス供給機61~65のそれぞれは、不活性ガス供給機61A~65Aのそれぞれと、酸素ガス供給機61B~65Bのそれぞれとを備える。
【0079】
不活性ガス供給機61A~65Aは、第1不活性ガス供給機61Aと、第2不活性ガス供給機62Aと、第3不活性ガス供給機63Aと、第4不活性ガス供給機64Aと、第5不活性ガス供給機65Aとからなる。第1不活性ガス供給機61A~第5不活性ガス供給機65Aとは、不活性ガスを、複数の成膜室51~55のそれぞれに供給可能である。
【0080】
酸素ガス供給機61B~65Bは、第1酸素ガス供給機61Bと、第2酸素ガス供給機62Bと、第3酸素ガス供給機63Bと、第4酸素ガス供給機64Bと、第5酸素ガス供給機65Bとからなる。第1酸素ガス供給機61B~第5酸素ガス供給機65Bとは、酸素ガスを、複数の成膜室51~55のそれぞれに供給可能である。
【0081】
また、複数の成膜室51~55のそれぞれには、複数の成膜室51~55のそれぞれを減圧可能なポンプ50が設けられている。
【0082】
巻取部37は、巻取ロール39を備える。
【0083】
なお、スパッタ装置30は、例えば、複数のターゲット41~45を備えれば、特に限定されず、例えば、特開2015-74810号公報などに記載のスパッタ装置が用いられる。
【0084】
このスパッタ装置30を用いて、非晶質透明導電層28を基材シート2の基材第1主面21に形成(スパッタリング)するには、まず、基材シート2を、操出ロール38、成膜ロール40および巻取ロール39に掛け渡す。
【0085】
続いて、複数のポンプ50を駆動して、第1成膜室51~第5成膜室55を真空にするともに、第1ガス供給機61~第5ガス供給機65のそれぞれから、第1成膜室51~第5成膜室55のそれぞれに、スパッタガスを供給する。
【0086】
スパッタガスとしては、例えば、Arなどの不活性ガス、例えば、反応性ガスが挙げられ、好ましくは、反応性ガスが挙げられる。反応性ガスは、好ましくは、不活性ガスと、酸素ガスとの混合ガスである。
【0087】
不活性ガスの流量(mL/分)に対する酸素ガスの流量(mL/分)の比(酸素ガス流量/不活性ガス流量)は、例えば、0.0001以上、好ましくは、0.001以上であり、また、例えば、0.5未満、好ましくは、0.1以下である。
【0088】
複数のガス供給機61~65から供給されるスパッタガスにおいて、不活性ガスの流量(mL/分)に対するにおける酸素ガスの流量(mL/分)の比(酸素ガス流量/不活性ガス流量)は、同一または相異なる。好ましくは、複数のガス供給機61~65から供給される反応性ガスにおける酸素流量比が、相異なる。
【0089】
詳しくは、例えば、下記式(1)を満足し、また、好ましくは、下記式(2)を満足する。
【0090】
R2>R3>R4>R5 (1)
R1<R2 (2)
式中、R1は、第1ガス供給機61から供給される酸素ガス流量の比である。R2は、第2ガス供給機62から供給される酸素ガス流量の比である。R3は、第3ガス供給機63から供給される酸素ガス流量の比である。R4は、第4ガス供給機64から供給される酸素ガス流量の比である。R5は、第5ガス供給機65から供給される酸素ガス流量の比である。
【0091】
しかるに、非晶質透明導電層28は、大気中での加熱により透明導電層3に転化する際に、空気中の酸素ガスを取り込みながら、第1主面5から第2主面6に向かって結晶化を開始する。そして、式(1)を満足すれば、第1主面5に近い領域では、酸素含有量が比較的低く、また、第2主面6に近い領域では、酸素含有量が比較的高くなるため、2つの領域で、結晶化が進行する。具体的には、非晶質透明導電層28において、第1主面5に近い領域は、大気下での酸化を伴いながら結晶化し、結晶粒4を形成する。また、第2主面6に近い領域では、大気中の酸素ガスは供給されにくいが、スパッタリング時の酸素ガス流量が比較的多く、層内に含まれる酸素量が充分であるため、加熱により結晶化を生じ、結晶粒4を形成する。その結果、複数の結晶粒4が形成され、第2粒界8を確実に形成できる。
【0092】
(2)を満足すれば、非晶質透明導電層28において第1領域71(基材第1主面21近傍の領域)(後述)を確実に結晶化できる。
【0093】
しかるに、第1領域71には、スパッタリング中に、基材シート2から放出されるガス(酸素を含む)が混入する。(2)を満足しない場合、つまり、R1≧R2であれば、第1領域71に含まれる酸素量が過多となり、その結果、第1領域71を結晶化できない場合がある。
【0094】
しかし、式(2)を満足すれば、たとえ、基材シート2から放出される酸素が第1領域71に混入しても、第1領域71の酸素量が過多になることを抑制でき、そのため、第1領域71を確実に結晶化することができる。なお、R2に対するR1の比(R1/R2)は、好ましくは、0.95以下、好ましくは、0.9以下、より好ましくは、0.8以下、さらに好ましくは、0.7以下であり、また、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上、より好ましくは、0.5以上である。
【0095】
続いて、巻取ロール39を駆動することにより、操出ロール38から基材シート2を繰り出す。
【0096】
また、第1ターゲット41~第5ターゲット45のそれぞれの近傍において、スパッタガスをイオン化させて、イオン化ガスを生成する。続いて、イオン化ガスが、第1ターゲット41~第5ターゲット45のそれぞれに衝突し、第1ターゲット41~第5ターゲット45のそれぞれのターゲット材料が叩き出され、これらが、基材シート2に対して付着する。
【0097】
基材シート2の基材第1主面21に、第1ターゲット41のターゲット材料が付着し、次いで、第2ターゲット42のターゲット材料が付着し、次いで、第3ターゲット43のターゲット材料が付着し、次いで、第4ターゲット44のターゲット材料が付着し、次いで、第5ターゲット45のターゲット材料が付着する。つまり、基材シート2の基材第1主面21に、第1ターゲット41~第5ターゲット45のターゲット材料が順に堆積する。
【0098】
これによって、非晶質透明導電層28が、基材第1主面21に形成される。これによって、基材シート2および非晶質透明導電層28を備える非晶質透明導電性シート29が得られる。
【0099】
なお、非晶質透明導電層28は、図1Bの拡大図で示すように、第1ターゲット41のターゲット材料からなる第1領域71、第2ターゲット42のターゲット材料からなる第2領域72、第3ターゲット43のターゲット材料からなる第3領域73、第4ターゲット44のターゲット材料からなる第4領域74、および、第5ターゲット45のターゲット材料からなる第5領域75を、厚み方向一方側に向かって順に含む。
【0100】
なお、図1Bの拡大図では、互いに隣接する第1領域71~第5領域75の相対位置を明確に示すために、それらの境界を示しているが、この非晶質透明導電層28では、境界は、明確に観察されなくてもよい。
【0101】
次いで、非晶質透明導電層28を結晶化して、結晶性の透明導電層3を形成する。
【0102】
非晶質透明導電層28を結晶化するには、例えば、非晶質透明導電層28を加熱する。
【0103】
加熱条件は、特に限定されない。加熱温度が、例えば、90℃以上、好ましくは、110℃以上あり、また、例えば、200℃未満、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、170℃以下、さらに好ましくは、165℃以下である。加熱時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、3分間以上、より好ましくは、5分間以上であり、また、例えば、5時間以下、好ましくは、3時間以下、より好ましくは、2時間以下である。また、加熱は、例えば、大気雰囲気下で、実施される。
【0104】
これにより、非晶質透明導電層28が、複数の結晶粒4と、第1粒界7と、第2粒界8とを有する透明導電層3に転化する。
【0105】
これにより、基材シート2と、透明導電層3とを備える透明導電性シート1を得る。
【0106】
そして、この透明導電性シート1は、種々の用途に用いられ、例えば、タッチセンサ、電磁波シールド、調光素子(PDLCやSPD等の電圧駆動型調光素子やエレクトロクロクロミック(EC)等の電流駆動型調光素子)、光電変換素子(有機薄膜太陽電池や色素増感太陽電池に代表される太陽電池素子の電極など)、熱線制御部材(近赤外反射および/または吸収部材や遠赤外反射および/または吸収部材)、アンテナ部材(光透過性アンテナ)、画像表示装置などに用いられる。
【0107】
調光素子では、第1主面5は、調光機能層と隣接して配置され、基材シート2の基材第2主面22は、外気に晒される。
【0108】
太陽電池素子では、第1主面5は、セル18と隣接して配置され、基材第2主面22は、外気に晒される。
【0109】
調光素子および太陽電池素子のいずれにおいても、透明導電層3の第2主面6は、基材シート2を介して外気に面する。
【0110】
(一実施形態の作用効果)
この透明導電層3は、一の第1粒界7Aの第1中間部11から分岐し、他の第1粒界7Bの第2中間部12に至る第2粒界8を有する。そのため、第2主面6に水が接触しても、第2主面6から第1主面5に至る水の経路を長く確保することができる。その結果、透明導電層3は、耐透湿性に優れる。また、透明導電層3を備える透明導電性シート1も、耐透湿性に優れる。
【0111】
具体的には、透明導電性シート1を調光素子または太陽電池素子の電極に用いるときに、基材第2主面22が、水分を含む外気に曝されても、透明導電層3が第2粒界8を備えるので、第2主面6から第1主面5までの水の侵入経路が長くなり、水の第1主面5への到達を遅延できる。そのため、水の浸入に起因する調光層またはセル18の損傷を遅延させることができる。つまり、耐湿性に優れる調光素子または太陽電池素子を構成することができる。
【0112】
(変形例)
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0113】
上記したスパッタ装置30では、複数のターゲット41~45の数、複数の成膜室51~55の数、および、複数のガス供給機61~65の数が、いずれも5であったが、例えば、2以上であれば特に限定されず、好ましくは、4以上である。
【0114】
複数のターゲットの数、複数の成膜室の数、および、複数のガス供給機の数が、いずれも4以上である場合には、複数のガス供給機は、少なくとも第1ガス供給機61~第4ガス供給機64を搬送方向下流側に向かって順に備える。そして、非晶質透明導電層28を形成する工程において、第2ガス供給機62から供給される、不活性ガスの流量に対する酸素ガスの流量の比を、第3ガス供給機63から供給される、不活性ガスの流量に対する酸素ガスの流量の比より高くし、かつ、第3ガス供給機63から供給される、不活性ガスの流量に対する酸素ガスの流量の比を、第4ガス供給機64から供給される、不活性ガスの流量に対する酸素ガスの流量の比より高くする。この方法であれば、非晶質透明導電層28において、第1主面5に近い領域では、酸素含有量が比較的低く、また、第2主面6に近い領域では、酸素含有量が比較的高くなるため、2つの領域のそれぞれで、結晶化が進む。具体的には、非晶質透明導電層28において、第1主面5に近い領域と、第2主面6に近い領域とは、それぞれ、結晶化する。その結果、第2粒界8を確実に形成できる。
【0115】
ターゲット、成膜室、および、ガス供給機のそれぞれの数が1である場合は、非晶質透明導電層28を複数回形成することができる。その場合、例えば、5回形成する場合は、第1領域71、第2領域72、第3領域73、第4領域74、第5領域75の酸素導入量を調整することが好ましい。具体的には、第1主面5に近い領域では、酸素含有量が比較的低く、また、第2主面6に近い領域では、酸素含有量が比較的高く導入することで、2つの領域で、結晶化が進み、第2粒界8を確実に形成できる。
【0116】
図示しないが、頂点20は、破線で示す線分より、厚み方向他方側に位置してもよい。
【0117】
図4に示すように、第2粒界8は、頂点20を有さなくてもよい。
【0118】
好ましくは、一実施形態のように、第2粒界8が、頂点20を有する。これによって、頂点20を有する第2粒界8を経由する水の経路をより一層長くすることができる。そのため、透明導電層3の耐透湿性は、より一層優れる。
【0119】
図5に示すように、この変形例では、透明導電層3は、厚み方向に投影したときに、互いに重複する複数の第2粒界8を含む。
【0120】
また、図5に示すように、第1粒界7は、断面視において第2粒界8と接触しない非接触第1粒界7Cを含んでもよい。
【0121】
図6に示すように、透明導電性シート1の基材シート2は、その一方面に配置される機能層19をさらに備えることができる。機能層19は、基材シート2に含まれる。機能層19としては、例えば、アンチブロッキング層、光学調整層、ハードコート層などが挙げられる。機能層19は、単層または複層である。機能層19は、構成材料として、無機材料、有機材料、有機材料および無機材料の複合材料の、いずれも適用することができる。
【0122】
スパッタ装置30において、成膜ロール40に代えて、図示しないが、面方向に延びる平坦な成膜板を用いることもできる。第1ターゲット41~45は、成膜板と間隔を隔てて、一直線上に、整列配置される。
【実施例
【0123】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0124】
実施例1
まず、PETフィルムロール(三菱樹脂社製、厚み50μm)を用意した。
【0125】
次いで、PETフィルムロールの上面に、アクリル樹脂からなる紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線照射により硬化させて、硬化樹脂層からなり、厚みが2μmである機能層を形成した。これにより、図6に示すように、透明基材と、機能層19とを備える基材シート2を得た。
【0126】
その後、基材シート2の基材第1主面21に、スパッタリングにより、厚み144nmの透明導電層3を形成した。
【0127】
詳しくは、まず、酸化スズ濃度が10重量%であるITOからなる第1ターゲット41~第5ターゲット45を備えるスパッタ装置30を準備し、基材シート2を、スパッタ装置30の操出ロール38、成膜ロール40および巻取ロール39に掛け渡した。
【0128】
続いて、複数のポンプ50を駆動して、第1成膜室51~第5成膜室55のそれぞれを0.4Paに真空(減圧雰囲気)にするともに、第1ガス供給機61~第5ガス供給機65のそれぞれから、第1成膜室51~第5成膜室55のそれぞれに、表1に記載の流量比(酸素ガス流量/アルゴンガス流量)で反応性ガスを供給した。
【0129】
また、巻取ロール39の駆動によって、操出ロール38から基材シート2を繰り出した。
【0130】
そして、第1成膜室51~第5成膜室55のそれぞれでスパッタリングを実施した。
【0131】
これにより、第1領域71~第5領域75を有する非晶質透明導電層28を、基材シート2の基材第1主面21(機能層19の一方面)に形成した。これにより、基材シート2と、非晶質透明導電層28とを備える非晶質透明導電性シート29を得た。
【0132】
その後、非晶質透明導電性シート29を、大気雰囲気下で、165℃、120分加熱して、透明導電層3(非晶質透明導電層28)を結晶化した。これにより、基材シート2および透明導電層3を備える透明導電性シート1を製造した。
【0133】
比較例1
表1の記載に従って、成膜条件と透明導電層3の厚みとを変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
【0134】
<評価>
下記の項目を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0135】
[透明導電層の厚み]
透明導電層3の厚みを、透過型電子顕微鏡(日立製作所製、装置名「HF-2000」)を用いた断面観察により、求めた。
【0136】
[結晶粒の断面観察]
FIBマイクロサンプリング法により、実施例1および比較例1のそれぞれの透明導電層3の透明導電性シート1を断面調製した後、それぞれの透明導電層3の断面をFE-TEM観察した。なお、倍率を、少なくとも第1粒界7が観察できるように、設定した。
【0137】
装置および測定条件は以下のとおりである。
FIB装置; Hitachi製 FB2200、 加速電圧: 10kV
FE-TEM 装置; JEOL製 JEM-2800、加速電圧: 200kV
【0138】
[透明導電層の表面抵抗]
実施例1および比較例1のそれぞれの透明導電層3の表面抵抗を四端子法により測定した。
【0139】
[透明導電層の透湿度]
実施例1および比較例1のそれぞれの透明導電層3の透湿度を、水蒸気透過率測定装置(「PERMATRAN W3/33」、MOCON社製)を用いて、温度40℃、相対湿度90%の条件で、測定した。なお、測定に際して、基材シート2の基材第2主面22を、検出器側に配置した。
【0140】
【表1】
【0141】
第2粒界8を備える実施例1の透明導電層3は、第2粒界8を備えない比較例1の透明導電層3よりも、透湿度が低い。一般的に、透湿度は、水が透過する膜の厚み(本願においては、透明導電層3の厚み)に反比例する。ここで、実施例1、及び、比較例1の透湿度を、各例の厚みで除した値を求めると、実施例1では、3.47×10-6未満となり、比較例1では、1.25×10-2となる。上記の単位は、それぞれ、(g/cm・24h)/nmである。この結果は、厚みの要因を除いた場合においても、実施例1の透明導電層3の透湿度が、比較例1の透湿度よりも低い水準であることを示唆している。
【0142】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
透明導電層は、例えば、透明導電性シート、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置に用いられる。
【符号の説明】
【0144】
1 透明導電性シート
3 透明導電層
2 基材シート
4 結晶粒
5 第1主面
6 第2主面
7 第1粒界
8 第2粒界
9 頂点
11 第1中間部
12 第2中間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6