IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鞍乗り型車両 図1
  • 特許-鞍乗り型車両 図2
  • 特許-鞍乗り型車両 図3
  • 特許-鞍乗り型車両 図4
  • 特許-鞍乗り型車両 図5
  • 特許-鞍乗り型車両 図6
  • 特許-鞍乗り型車両 図7
  • 特許-鞍乗り型車両 図8
  • 特許-鞍乗り型車両 図9
  • 特許-鞍乗り型車両 図10
  • 特許-鞍乗り型車両 図11
  • 特許-鞍乗り型車両 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 35/00 20060101AFI20221201BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B62J35/00 D
B60K15/05 A
B60K15/05 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021512017
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014106
(87)【国際公開番号】W WO2020203802
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】201941012504
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 哲
(72)【発明者】
【氏名】岸 裕司
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ポンナイア グレン
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-246972(JP,A)
【文献】特開2017-200777(JP,A)
【文献】特開2018-052450(JP,A)
【文献】特開平01-175525(JP,A)
【文献】特開2015-047904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 35/00
B60K 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油口(44a)を有するフューエルタンク(44)と、
軸線(56)回りで軌道に沿って変位自在に設けられ、閉じ位置で前記給油口(44a)を塞ぐフューエルキャップ(55)と、
前記フューエルキャップ(55)の軌道から外れた位置に設けられる規制体(111)と、
前記フューエルキャップ(55)に支持され、前記フューエルキャップ(55)の外周から外方へ突出して前記規制体(111)に係り合い閉じ位置に前記フューエルキャップ(55)を保持する第1位置(Pf)、および、前記第1位置(Pf)から後退して前記規制体(111)から離脱する第2位置(Ps)の間で変位するロック爪(102a)と
を備える鞍乗り型車両において、
前記フューエルキャップ(55)を揺動可能に支持する支持体(57b)に支持されて、前記ロック爪(102a)に接続され、前記規制体(111)との係り合いから前記ロック爪(102a)を解放する駆動力を生成する操作部材(113)を備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗り型車両において、前記規制体(111)、前記支持体(57b)および前記操作部材(113)は前記フューエルタンク(44)に支持されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鞍乗り型車両において、前記フューエルキャップ(55)には、開き方向に前記フューエルキャップ(55)を駆動する弾性力を発揮する弾性部材(89)が連結されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鞍乗り型車両において、前記弾性部材(89)は、前記給油口(44a)を開放する開き位置まで前記フューエルキャップ(55)を駆動する弾性力を発揮することを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鞍乗り型車両において、
一端で前記ロック爪(102a)に結合されて、前記フューエルキャップ(55)の表面に沿って線形に変位し、他端でフューエルキャップ(55)の外周から突出するスライダー(102)と、
前記フューエルキャップ(55)に形成されて、前記スライダー(102)の変位を案内する案内路(103)と、
前記フューエルキャップ(55)が閉じ位置に位置する際に前記案内路(103)の延長上に配置されて、前記操作部材(113)の動きに応じて前記案内路(103)の線方向に変位する係り片(119)と、
前記ロック爪(102a)に結合されて、前記フューエルキャップ(55)が閉じ位置に位置すると前記係り片(119)に連結され、前記フューエルキャップ(55)が閉じ位置から開き方向に変位すると前記係り片(119)から解放されるフック(121)と
をさらに備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項6】
請求項5に記載の鞍乗り型車両において、前記スライダー(102)の表面から突出し、前記ロック爪(102a)が前記第1位置(Pf)に位置する際に、前記フューエルキャップ(55)の外縁で前記案内路(103)を塞ぐ突片(102b)を備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両において、前記フューエルタンク(44)には、前記給油口(44a)の外周に設けられ、前記給油口(44a)の一側に前記支持体(57b)を配置し、前記給油口(44a)の他側に前記規制体(111)を配置するキャップベース(57)が支持されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両において、前記操作部材(113)に連結されて、軸方向変位に応じて前記操作部材(113)を駆動し、前記ロック爪(102a)を開放する前記駆動力を生み出すケーブル(54)をさらに備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項9】
請求項に記載の鞍乗り型車両において、前記操作部材(113)は、ヒンジ軸(112)回りで揺動自在に支持され、第1角度域で前記ロック爪(102a)に連結され、前記ヒンジ軸(112)回りで前記第1角度域から特定角度(α)で変位する第2角度域で前記ケーブル(54)に連結されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項10】
請求項9に記載の鞍乗り型車両において、前記操作部材(113)は、前記ヒンジ軸(112)から第1長さ(LG1)で離れた位置で前記ロック爪(102a)に連結され、前記ヒンジ軸(112)から前記第1長さ(LG1)よりも大きい第2長さ(LG2)で離れた位置で前記ケーブル(54)に連結されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油口を有するフューエルタンクと、軸線回りで軌道に沿って変位自在にフューエルタンクに装着されて、閉じ位置で給油口を塞ぐフューエルキャップと、フューエルキャップの軌道から外れて配置されて、フューエルタンクに結合される規制体と、フューエルキャップに支持され、フューエルキャップの外周から外方へ突出して規制体に係り合い閉じ位置にフューエルキャップを保持するロック位置、および、ロック位置から後退して規制体から離脱する解除位置の間で変位するロック爪とを備える鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
日本特開2017-196951号公報は、フューエルキャップに揺動自在に支持されて、ロック爪を有するスライダーに接続される操作ノブを開示する。揺動軸回りに操作ノブが引き上げられると、ロック爪はロック位置から後退して規制体から離脱する。こうしてフューエルキャップのロックは解除される。そのまま操作ノブの引き上げが維持されると、開き方向にフューエルキャップは軸線回りに変位する。給油口は開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2017-196951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2017-196951号公報では、ロック爪を操作する操作部をフューエルキャップに設けるため、フューエルキャップには操作部を支持する強度が要求され、かつ、フューエルキャップの構造が複雑化してしまう。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、フューエルキャップに操作部を設けることなく、フューエルキャップのロック解除が可能な鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、給油口を有するフューエルタンクと、軸線回りで軌道に沿って変位自在に設けられ、閉じ位置で前記給油口を塞ぐフューエルキャップと、前記フューエルキャップの軌道から外れた位置に設けられる規制体と、前記フューエルキャップに支持され、前記フューエルキャップの外周から外方へ突出して前記規制体に係り合い閉じ位置に前記フューエルキャップを保持する第1位置、および、前記第1位置から後退して前記規制体から離脱する第2位置の間で変位するロック爪とを備える鞍乗り型車両において、前記フューエルキャップを揺動可能に支持する支持体に支持されて、前記ロック爪に接続され、前記規制体との係り合いから前記ロック爪を解放する駆動力を生成する操作部材を備える。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記規制体、前記支持体および前記操作部材は前記フューエルタンクに支持される。
【0008】
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、前記フューエルキャップには、開き方向に前記フューエルキャップを駆動する弾性力を発揮する弾性部材が連結される。
【0009】
第4側面によれば、第3側面の構成に加えて、前記弾性部材は、前記給油口を開放する開き位置まで前記フューエルキャップを駆動する弾性力を発揮する。
【0010】
第5側面によれば、第4側面の構成に加えて、一端で前記ロック爪に結合されて、前記フューエルキャップの表面に沿って線形に変位し、他端でフューエルキャップの外周から突出するスライダーと、前記フューエルキャップに形成されて、前記スライダーの変位を案内する案内路と、前記フューエルキャップが閉じ位置に位置する際に前記案内路の延長上に配置されて、前記操作部材の動きに応じて前記案内路の線方向に変位する係り片と、前記ロック爪に結合されて、前記フューエルキャップが閉じ位置に位置すると前記係り片に連結され、前記フューエルキャップが閉じ位置から開き方向に変位すると前記係り片から解放されるフックとをさらに備える。
【0011】
第6側面によれば、第5側面の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記スライダーの表面から突出し、前記ロック爪が前記第1位置に位置する際に、前記フューエルキャップの外縁で前記案内路を塞ぐ突片を備える。
【0012】
第7側面によれば、第1~第6側面のいずれか1の構成に加えて、前記フューエルタンクには、前記給油口の外周に設けられ、前記給油口の一側に前記支持体を配置し、前記給油口の他側に前記規制体を配置するキャップベースが支持される。
【0013】
第8側面によれば、第1~第7側面のいずれか1の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記操作部材に連結されて、軸方向変位に応じて前記操作部材を駆動し、前記ロック爪を開放する前記駆動力を生み出すケーブルをさらに備える。
【0014】
第9側面によれば、第1~第8側面のいずれか1の構成に加えて、前記操作部材は、ヒンジ軸回りで揺動自在に支持され、第1角度域で前記ロック爪に連結され、前記ヒンジ軸回りで前記第1角度域から特定角度で変位する第2角度域で前記ケーブルに連結される。
【0015】
第10側面によれば、第9側面の構成に加えて、前記操作部材は、前記ヒンジ軸から第1長さで離れた位置で前記ロック爪に連結され、前記ヒンジ軸から前記第1長さよりも大きい第2長さで離れた位置で前記ケーブルに連結される。
【発明の効果】
【0016】
第1側面によれば、操作部材が操作されると、ロック爪に駆動力が伝わる。駆動力は規制体との係り合いからロック爪を解放する。こうしてフューエルキャップのロックは解除される。開き方向にフューエルキャップの動作は許容される。給油口は開放されることができる。操作部材は、ロック爪を開放する駆動力を生成するものの、軸線回りにフューエルキャップに駆動力を付与するものではない。したがって、ロック爪の解除前にフューエルキャップに開き方向に操作力が加わることは防止されることができる。ロック爪に要求される強度は低減されることができる。その一方で、フューエルキャップ上に操作部材が設置されると、たとえロック爪と規制体との係り合いが維持されていても、フューエルキャップには操作部材から操作力が加わってしまう。ロック爪には付与される操作力に抗する強度が要求される。こうした強度の要求はロック爪の重量増を招く。加えて、操作部材はフューエルキャップから外れた位置に配置されるので、フューエルキャップの構造は複雑化せず、また、フューエルキャップの表面は単純な構造に仕立てられることができる。
【0017】
第2側面によれば、フューエルキャップおよび規制体はフューエルタンクに支持されることから、フューエルキャップ上のロック爪と規制体とは良好な精度で位置決めされることができる。規制体に対してロック爪の係り合いおよび解除は良好に実現されることができる。
【0018】
第3側面によれば、規制体に対してロック爪の係り合いが解除されると、弾性力の働きでフューエルキャップは開き方向に駆動される。したがって、ロック爪がフューエルキャップの外周から外方に再び突出しても、ロック爪と規制体との係り合いは確立されない。ロック爪の解放は維持されることができる。
【0019】
第4側面によれば、弾性力の働きでフューエルキャップは給油口を開放する開き位置に至ることができる。こうしてフューエルキャップに軸線回りに操作力が加わらなくても、給油口の開放は実現されることができる。
【0020】
第5側面によれば、フューエルキャップが閉じ位置に位置すると、フックは係り片に連結される。操作部材の動きに応じて係り片が変位すると、係り片の変位はフックからロック爪に伝達される。ロック爪は第1位置から第2位置に向かって駆動される。ロック爪と規制体との係り合いは解除される。弾性力の働きでフューエルキャップは開き方向に駆動される。こうしてフューエルキャップが揺動すると、フックは係り片から解放される。フューエルキャップの移動から操作部材は分離される。したがって、操作部材の小さい動作でフューエルキャップは開き位置まで開放されることができる。
【0021】
第6側面によれば、スライダーの案内路はフューエルキャップの外縁で突片によって塞がれるので、案内路からフューエルキャップの内側に向かって水の進入は防止されることができる。
【0022】
第7側面によれば、キャップベースは、フューエルキャップ、規制体、ロック爪および操作部材をユニット化することができる。フューエルキャップ、規制体、ロック爪および操作部材は予め組み立てられてフューエルタンクに組み付けられることができる。したがって、組み付けの作業性は向上することができる。
【0023】
第8側面によれば、ケーブルの軸方向変位に応じて操作部材で駆動力は生成される。遠隔で操作部材は操作されることができる。フューエルキャップの開放は良好に制限されることができる。
【0024】
第9側面によれば、ケーブルの軸方向変位は操作部材の揺動に変換される。操作部材の揺動はロック爪の変位に変換される。したがって、ケーブルの向きとロック爪の変位の向きとは一致する必要はなく、ケーブルの配置の自由度は広がることができる。
【0025】
第10側面によれば、ケーブルの引っ張り力はロック爪の駆動力に変換される。ケーブルは第1長さよりも大きい第2長さでヒンジ軸から離れることから、ケーブルの引っ張り力に対してロック爪のトルクは増幅されることができる。ケーブルに加えられる操作力は低減されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は本発明の一実施形態に係る鞍乗り型車両の一具体例であるスクーターの全体構成を概略的に示す側面図である。(第1の実施の形態)
図2図2はリアカウルの形状を概略的に示す車両後方拡大斜視図である。(第1の実施の形態)
図3図3はインナーカバーに埋め込まれるスイッチユニットを概略的に示す概念図である。(第1の実施の形態)
図4図4はフューエルキャップユニットの構造を概略的に示す車両後端の拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
図5図5はフューエルキャップユニットの拡大斜視図である。(第1の実施の形態)
図6図6はフューエルキャップユニットの拡大分解斜視図である。(第1の実施の形態)
図7図7図4の一部に相当し、フューエルキャップユニットの拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
図8図8図7に対応し、第2位置に位置するスライダーを含むフューエルキャップユニットの拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
図9図9図8に対応し、開き方向に揺動したフューエルキャップを含むフューエルキャップユニットの拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
図10図10図4に対応し、フューエルリッドが開放された際にフューエルキャップユニットの構造を概略的に示す車両後端の拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
図11図11図10に対応し、給油の様子を概略的に示す概念図である。(第1の実施の形態)
図12図12図9に対応し、フューエルリッドが閉じられる際に規制体に当たるロック爪を含むフューエルキャップユニットの拡大垂直断面図である。(第1の実施の形態)
【符号の説明】
【0027】
11…鞍乗り型車両(スクーター)
44…フューエルタンク
44a…給油口
54…ケーブル
55…フューエルキャップ
57…キャップベース
57b…支持体
89…弾性部材(捻りばね)
102…スライダー
102a…ロック爪
102b…突片
111…規制体
113…操作部材
119…係り片
121…フック
Pf…第1位置
Ps…第2位置
LG1…第1長さ
LG2…第2長さ
α…特定角度
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。なお、以下の説明では、前後、左右および上下は自動二輪車の乗員から見た方向をいう。
【第1の実施の形態】
【0029】
図1は鞍乗り型車両(自動二輪車)の一具体例であるスクーター11の全体構成を概略的に示す。スクーター11は、車体フレーム12と、車体フレーム12に装着される車体カバー13とを備える。車体フレーム12は、ヘッドパイプ14と、ヘッドパイプ14から下方に延びるダウンチューブ15と、ダウンチューブ15の後端に結合されて車幅方向に延びるクロスフレーム16と、クロスフレーム16の両端に結合されてクロスフレーム16から後上がりに延びる左右1対のサイドフレーム17とで形成される。ヘッドパイプ14にフロントフォーク18および操向ハンドル19が回転自在に支持される。フロントフォーク18には車軸21回りで回転自在に前輪WFが支持される。
【0030】
車体カバー13は、前方からヘッドパイプ14およびダウンチューブ15を覆うフロントカウル22aと、フロントカウル22aに結合されて、後方からヘッドパイプ14およびダウンチューブ15を覆うインナーカバー22bと、インナーカバー22bの下端に結合されて、地面に並行に広がるフロアーステップ22cと、フロアーステップ22cの後端に結合されて、サイドフレーム17を覆うボディカバー22dとを備える。ボディカバー22dには後輪WRの上方で乗員シート23が支持される。ボディカバー22d内でサイドフレーム17には収納ボックス24が支持される。収納ボックス24は乗員シート23で開閉される。
【0031】
車体フレーム12にはサイドフレーム17の間でスイング式のパワーユニット25が上下方向に揺動自在に支持される。パワーユニット25はリンク26でサイドフレーム17に連結される。パワーユニット25は、燃料に基づき動力を発生する内燃機関27と、内燃機関27に接続されて、後輪WRに線形に変化する変速比で内燃機関27の動力を伝達する伝動装置28とを備える。
【0032】
パワーユニット25の後端に車軸29回りで回転自在に後輪WRが支持される。パワーユニット25の後端およびサイドフレーム17の後端の間にはリアクッションユニット31が取り付けられる。パワーユニット25は、車体フレーム12に対してスイング自在に後輪WRを連結するサスペンション装置の機能を担う。
【0033】
内燃機関27の機関本体32は、回転軸線33回りで回転自在にクランクシャフトを収容するクランクケース34と、クランクケース34に結合されて、前傾したシリンダー軸線Cに沿ってピストンの線形往復運動を案内するシリンダーブロック35と、シリンダーブロック35に結合されて、ピストンとの間に燃焼室を形成するシリンダーヘッド36と、シリンダーヘッド36に結合されて、シリンダーヘッド36に組み付けられる動弁機構に覆い被さるヘッドカバー37とを備える。シリンダーヘッド36には、燃焼室に混合気を導入する吸気系38と、燃焼室から燃焼後の気体を排出する排気系39とが接続される。伝動装置28は、機関本体32のクランクケース34に一体化される変速機ケース41に収容される無段変速機(図示されず)を備える。
【0034】
ボディカバー22dは、乗員シート23の後方に配置されて、テールランプ42を支持するリアカウル43を備える。リアカウル43の内側でサイドフレーム17にはフューエルタンク44が支持される。フューエルタンク44は少なくとも部分的に車体カバー13で覆われる。フューエルタンク44は、給油口44aを区画するフィラーネック45を備える。フィラーネック45には給油口44aを塞ぐフューエルキャップユニット46が装着される。フューエルキャップユニット46の詳細は後述される。フューエルタンク44にはフューエルポンプ(図示されず)が取り付けられる。フューエルポンプの働きでフューエルタンク44内の燃料は内燃機関27の燃料噴射装置に供給される。
【0035】
図2に示されるように、リアカウル43には、乗員シート23の後方でフューエルタンク44に向き合わせられる位置に開口47が区画される。開口47にはフューエルリッド48が配置される。フューエルリッド48はリアカウル43の外側から開口47に覆い被さる。フューエルリッド48は開口47を開閉する。フューエルリッド48の開閉動作はリアカウル43外の空間で実現される。フューエルリッド48が開口47を閉じると、フューエルリッド48の外縁とリアカウル43の外面とは面一に連続する。
【0036】
図3に示されるように、インナーカバー22bには操向ハンドル19の下方でスイッチユニット49が組み込まれる。スイッチユニット49は、乗員シート23に着座する乗員の手が届きやすい位置に配置される。スイッチユニット49は、回転自在にキープラグ51を支持するキーシリンダー52を備える、キープラグ51はキー孔51aにキーを受け入れる。キー孔51aの角度が「OFF」位置に合わせられると、キー孔51aに対してキーの出し入れは許容される。キー孔51aの角度が「ON」位置に合わせられると、車両の電気系統はスイッチオンされる。キー孔51aの角度が「ON」位置を超えて「IGNITION」位置に合わせられると、内燃機関27のスターターモーターは始動する。
【0037】
「ON」位置と「OFF」位置との間に「SEAT FUEL」位置が設定される。キー孔51aの角度が「SEAT FUEL」位置に合わせられると、シーソースイッチ53の操作が許容される。シーソースイッチ53では、「FUEL」側が押し込まれると、フューエルリッド48は開口47を開放する。「SEAT」側が押し込まれると、乗員シート23のロックは解除される。乗員シート23の開放に応じて使用者は収納ボックス24へアクセスすることができる。図1に示されるように、シーソースイッチ53の「SEAT」側はケーブル54でフューエルキャップユニット46に連結される。「SEAT FUEL」位置以外ではシーソースイッチ53はロックされる。シーソースイッチ53がロックされると、「SEAT」側にも「FUEL」側にもシーソースイッチ53の押し込みは阻止される。
【0038】
図4に示されるように、フューエルキャップユニット46は、フューエルリッド48とは別体に設けられ、フューエルタンク44の給油口44aを塞ぐフューエルキャップ55を備える。フューエルキャップ55は、給油口44aを開放する開き位置、および、給油口44aを塞ぐ閉じ位置の間で軸線56回りに揺動自在にキャップベース57に支持される。キャップベース57は、給油口44a回りでフィラーネック45に装着される。キャップベース57はフューエルタンク44にねじ58で固定される。
【0039】
フューエルキャップユニット46とフューエルタンク44との間にはフューエルトレイ59が配置される。フューエルトレイ59は、フィラーネック45回りで広がって、フィラーネック45とリアカウル43との間の空間を塞ぐ。開口47から進入する水や埃はフューエルトレイ59で集められる。フューエルトレイ59は例えば樹脂材から成型されればよい。
【0040】
フューエルキャップユニット46は、フューエルキャップ55の動きにフューエルリッド48の開閉を連動させるリンク機構61を備える。リンク機構61は、回転軸線62回りで回転自在にフューエルタンク44に支持されて、フューエルリッド48を支持するヒンジアーム63と、一端で軸線56に平行な連結軸線64回りに回転自在にフューエルキャップ55に連結され、他端で回転軸線62に平行な連結軸線65回りに回転自在にヒンジアーム63に連結されるリンク部材66とを有する。リンク部材66は、フューエルキャップ55の揺動にフューエルリッド48の開閉動作を連動させる。リンク部材66は例えば樹脂材から成型されればよい。
【0041】
図5および図6に示されるように、リンク部材66の一端は、連結軸線64回りに相対回転自在に第1リンク軸67でフューエルキャップ55に結合される。第1リンク軸67はねじ68でフューエルキャップ55に固定されるブッシュで構成される。ブッシュは例えば良好な耐摩耗性および摺動性を有する樹脂成形体で構成される。樹脂材には例えばPOM(ポリアセタール)樹脂が用いられることができる。連結軸線64は軸線56から第1距離DS1で離れる。
【0042】
リンク部材66の他端は、連結軸線65回りに相対回転自在に第2リンク軸69でヒンジアーム63に結合される。第2リンク軸69はねじ71でヒンジアームに固定されるブッシュで構成される。ブッシュは例えば良好な耐摩耗性および摺動性を有する樹脂成形体で構成される。樹脂材には例えばPOM(ポリアセタール)樹脂が用いられることができる。連結軸線65は回転軸線62から第1距離DS1よりも大きい第2距離DS2で離れる。
【0043】
ヒンジアーム63は、回転軸線62回りに回転自在にブッシュ72でキャップベース57に連結される。ブッシュ72はねじ73でキャップベース57に固定される。ブッシュ72は例えば良好な耐摩耗性および摺動性を有する樹脂成形体で構成される。樹脂材には例えばPOM(ポリアセタール)樹脂が用いられることができる。
【0044】
ヒンジアーム63の回転軸線62は、フューエルキャップ55の軸線56から相違して軸線56に平行に延びる。ヒンジアーム63は、回転軸線62から車両後方に離れた位置で、フューエルリッド48の内面に向き合いながら広がる連結体63aと、連結体63aから下方に膨らむように湾曲しながら車両前方に延び、回転軸線62回りに回転自在にブッシュ72でキャップベース57に連結される前端を有する2つの湾曲腕63bとを有する。ヒンジアーム63は例えば樹脂材から成型されればよい。湾曲腕63bの間にキャップベース57は部分的に配置される。
【0045】
図4に示されるように、フューエルリッド48には、ヒンジアーム63に向き合う内面から突出して、ヒンジアーム63の連結体63aの前縁に受け止められる第1結合体48aと、第1結合体48aよりも車両後方で、ヒンジアーム63に向き合う内面から突出して、ヒンジアーム63の連結体63aの後縁に受け止められる第2結合体48bとが形成される。第2結合体48bは例えば連結体63aの両側に配置されるボスで形成されればよい。第1結合体48aには、連結体63aに受け止められる平面74から突出して、後ろ向きに延びる爪を有するフック75が形成される。第2結合体48bには、連結体63aに受け止められる平面76に穿たれて、内面に刻まれる雌ねじを有するねじ穴77が形成される。フューエルリッド48はリアカウル43と同じ材料から成型されればよい。
【0046】
第1結合体48aは、ヒンジアーム63の連結体63aに形成される第1座面78に受け止められる。第1座面78には第1結合体48aのフック75を受け入れるスリット79が形成される。第1座面78に対して第1結合体48aが位置決めされると、スリット79内のフック75は連結体63aに係り合う。第1座面78に対して第1結合体48aのがたつきは防止される。フック75は第1座面78と第1結合体48aとの接触を維持する。
【0047】
第2結合体48bは、ヒンジアーム63の連結体63aに形成される第2座面81に受け止められる。第2座面81には、第2結合体48bのねじ穴77にねじ込まれるねじ82の軸部を受け入れる円孔83が形成される。第2結合体48bはねじ82でヒンジアーム63に結合される。こうしてフック75およびねじ82でフューエルリッド48はヒンジアーム63に結合される。
【0048】
フューエルリッド48には、第1結合体48aおよび第2結合体48bでヒンジアーム63に締結されて、開口47の前端でリアカウル43との間で一体感を醸し出しながら上方からヒンジアーム63を覆う天板48cと、天板48cから折れ曲がり、開口47の後端でリアカウル43との間で一体感を醸し出しながら後方から第2結合体48bおよびねじ82を覆う隠し板48dとが形成される。
【0049】
図6に示されるように、キャップベース57は、フィラーネック45を囲んでフューエルタンク44にねじ留めされる囲い板57aと、囲い板57aから連続し、給油口44aの外縁から外側に一方向に離れるように広がって、フューエルキャップ55およびヒンジアーム63に連結される支持体57bとを有する。支持体57bは、相互に間隔を置きながら、囲い板57aの表面を含む平面から立ち上がる1対の壁体84を有する。ここでは、支持体57bは、給油口44aに対して車両前後方向で前方に配置される。したがって、フューエルキャップ55は給油口44aの開放時に給油口44aに対して車両前側に位置する。フューエルリッド48は開口47の開放時に開口47に対して車両前側に位置する。
【0050】
フューエルキャップ55は、軸線56回りで揺動自在にピボットシャフト85に連結されるキャップ本体55aを備える。キャップ本体55aは、給油口44aよりも大きい径を有して給油口44aの外縁よりも外側に広がる円板体86と、円板体86から車両前方に延び、回転自在にピボットシャフト85を受け入れる貫通孔87aを前端に有する連結腕87とを備える。ピボットシャフト85は2つの壁体84を貫通してフランジ85aおよびCクリップ88とでキャップベース57に固定される。
【0051】
連結腕87にはピボットシャフト85に同軸に外向きに突出する1対の円筒体55bが形成される。個々の円筒体55bには捻りばね89が装着される。捻りばね89の一端はキャップベース57に連結される。捻りばね89の他端はフューエルキャップ55に連結される。捻りばね89は軸線56回りに開き方向にフューエルキャップ55を駆動する弾性力を発揮する。ここでは、捻りばね89は、最大限に給油口44aを開放する開き位置までフューエルキャップ55を駆動する弾性力を発揮する。
【0052】
図7に示されるように、連結腕87には、軸線56から遠ざかるように外面から突出するリミッター91が形成される。軸線56回りで変位するリミッター91の軌道上でキャップベース57には当たり面92が形成される。当たり面92は軸線56回りに開き方向にキャップ本体55aの揺動を制限する。フューエルキャップ55の揺動時にリミッター91が当たり面92に当たることでフューエルキャップ55の開き位置は設定される。
【0053】
円板体86には、フューエルキャップ55の閉じ位置で、フィラーネック45に同軸にフューエルタンク44に向かって立ち上がる円筒壁93が形成される。円筒壁93の内側にはフューエルパッキン94が装着される。フューエルパッキン94は、給油口44a回りでフィラーネック45の先端に密着する厚肉体94aと、厚肉体94aから外側に広がる襞体94bとを有する。襞体94bは、円筒壁93の内側に嵌め込まれるパッキンホルダー95で円板体86に結合される。フューエルパッキン94は例えばゴム材から成型される。キャップ本体55aは例えばアルミニウム材から成形されればよい。パッキンホルダー95は例えばアルミニウム材から成型されればよい。
【0054】
フューエルパッキン94の厚肉体94aはプッシュ部材96に支持される。プッシュ部材96はフューエルキャップ55の閉じ位置でフィラーネック45との間にフューエルパッキン94を挟み込む。プッシュ部材96は、円板体86から突出する案内軸97に案内されてキャップ本体55aの中心軸線の線方向に変位することができる。案内軸97の先端にはCクリップ98が固着される。Cクリップ98は案内軸97からのプッシュ部材96の抜けを防止する。
【0055】
案内軸97回りでプッシュ部材96と円板体86との間には弦巻ばね99が挟まれる。弦巻ばね99は円板体86から離れる方向にCクリップ98に向かってプッシュ部材96に駆動力を付与する弾性力を発揮する。フューエルキャップ55の閉じ位置では弦巻ばね99の弾性力でフューエルパッキン94はフィラーネック45の先端に決められた圧力で押し付けられる。フューエルパッキン94がフィラーネック45の拘束から解放されると、弦巻ばね99の弾性力でプッシュ部材96はCクリップ98に押し付けられる。
【0056】
フューエルキャップユニット46には、閉じ位置にフューエルキャップ55を拘束するロック機構101が組み込まれる。ロック機構101は、一端にロック爪102aを有するスライダー102と、キャップ本体55aに形成されて、線形にスライダー102の変位を案内する案内路103を区画する1対の立ち壁104とを備える。スライダー102は、フューエルキャップ55の表面に沿って線形に変位する。ロック爪102aは、スライダー102の変位に応じて、円板体86の外周から最大限に外方に突出する第1位置Pfと、第1位置Pfから円板体86の外周に向かって後退する第2位置Psとの間で変位する。スライダー102の他端はキャップ本体55aの縁から外方に突出する。
【0057】
立ち壁104には上方から案内路103を塞ぐ押さえ板105が結合される。押さえ板105は、立ち壁104の上端から下がった段差104aに受け止められ、段差104aよりも上方で折り曲げられたかしめ片104bで段差104aに押し当てられる。
【0058】
スライダー102の他端には案内路103に沿って外側から押さえ板105の縁に接触する突片102bが形成される。突片102bは押さえ板105の縁に接触することでスライダー102の前進を規制する。このとき、ロック爪102aは、円板体86の外周から最大限に外方に突出する第1位置Pfに位置決めされる。突片102bはフューエルキャップ55の外縁で案内路103を塞ぐ。
【0059】
スライダー102には弦巻ばね106の収容空間107が区画される。弦巻ばね106は案内路103内でスライダー102とキャップ本体55aとの間に圧縮された状態で配置される。弦巻ばね106は、ロック爪102aに近い一端でスライダー102に接触し、ロック爪102aから遠い他端でキャップ本体55aに接触する。キャップ本体55aには、収容空間107内に配置されて、弦巻ばね106の他端を支持する壁108が形成される。弦巻ばね106は、案内路103に沿って第1位置Pfにロック爪102aを保持する弾性力を発揮する。
【0060】
ロック機構101は、開き位置および閉じ位置の間で行き来するフューエルキャップ55の軌道から外れた位置に配置されて、フューエルタンク44に結合される規制体111を備える。規制体111は、捻りばね89の弾性力に抗して軸線56回りで第1位置Pfのロック爪102aを拘束することができる。第1位置Pfのロック爪102aは、規制体111に係り合って閉じ位置にフューエルキャップ55を保持する。第2位置Psのロック爪102aは、規制体111から離脱して閉じ位置および開き位置の間で軸線56回りにフューエルキャップ55の揺動を許容する。規制体111は、給油口44aに対して車両前後方向に後方でキャップベース57に形成される。
【0061】
ロック機構101は、軸線56に平行なヒンジ軸線112回りで揺動自在にキャップベース57の支持体57bに支持される操作部材113をさらに備える。操作部材113は一方の壁体84と連結腕87との間に配置される。操作部材113には、ヒンジ軸線112に同軸に軸体113aが形成される。軸体113aは内側から壁体84を貫通しCクリップ114で抜け止めされる。
【0062】
操作部材113には、ヒンジ軸線112から遠心方向に離れた位置でケーブル54の先端を受け止める留め片115が形成される。留め片115は例えばヒンジ軸線112に平行な中心軸を有する円柱体で形成される。留め片115にはケーブル54の先端が連結される。
【0063】
ケーブル54は、キャップベース57に支持されるシース116に案内されてキャップベース57に対して軸方向に相対変位することができる。シーソースイッチ53で「FUEL」側が押し込まれると、ケーブル54は引っ張られる。操作部材113はヒンジ軸線112回りで第1方向FRに揺動する。操作部材113には、第1方向FRへの揺動時に壁体84の縁に当たって第1方向FRへの揺動を制限する第1ストッパー117aが形成される。第1ストッパー117aは操作部材113の非ロック位置を規定する。
【0064】
ケーブル54には、操作部材113とキャップベース57との間で圧縮された状態で弦巻ばね118が装着される。弦巻ばね118は、ヒンジ軸線112回りで第1方向FRに反対向きの第2方向SEに操作部材113を駆動する弾性力を発揮する。シーソースイッチ53で「FUEL」側の押し込みが解放されると、弦巻ばね118の弾性力の働きで操作部材113はヒンジ軸線112回りで第2方向SEに揺動する。操作部材113には、第2方向SEへの揺動時に壁体84の縁に当たって第2方向SEへの揺動を制限する第2ストッパー117bが形成される。第2ストッパー117bは操作部材113のロック位置を規定する。弦巻ばね118の弾性力はロック位置に操作部材113を保持する。
【0065】
操作部材113には、ヒンジ軸線112から遠心方向に離れた位置で、ヒンジ軸線112に平行な中心軸を有して操作部材113から突出する係り片119が形成される。係り片119は、例えばヒンジ軸線112に平行な中心軸を有する円柱体で形成される。係り片119は、フューエルキャップ55が閉じ位置に位置する際に案内路103の延長上に配置される。係り片119は、操作部材113の動きに応じて案内路103の線方向に変位する。操作部材113がヒンジ軸線112回りでロック位置に位置すると、係り片119はキャップ本体55a上の案内路103に最も近づく。操作部材113がヒンジ軸線112回りで非ロック位置に位置すると、係り片119はキャップ本体55a上の案内路103から最も遠ざかる。
【0066】
操作部材113では、ロック爪102aに連結される係り片119はヒンジ軸線112回りに第1角度域に配置される。係り片119の中心軸とヒンジ軸線112との距離は第1長さLG1に設定される。その一方で、ケーブル54に連結される留め片115はヒンジ軸線112回りに第1角度域から特定角度αで変位する第2角度域に配置される。留め片115の中心軸とヒンジ軸線112との距離は第1長さLG1よりも大きい第2長さLG2に設定される。
【0067】
スライダー102の他端には、フューエルキャップ55が閉じ位置に位置すると係り片119に連結され、フューエルキャップ55が閉じ位置から開き方向に変位すると係り片119から解放されるフック121が形成される。フューエルキャップ55が閉じ位置に位置する際に、操作部材113がロック位置から非ロック位置に揺動すると、ロック爪102aは第1位置Pfから後退して規制体111から離脱する第2位置Psに変位する。
【0068】
給油にあたってスクーター11ではキープラグ51のキー孔51aにキーが差し込まれる。キー孔51aの角度は「SEAT FUEL」位置に合わせられる。続いてシーソースイッチ53で「FUEL」側が押し込まれる。ケーブル54は弦巻ばね118の弾性力に抗して軸方向に引っ張られる。すると、図8に示されるように、操作部材113はヒンジ軸112回りで第1方向FRに回転する。操作部材113の揺動に応じて係り片119は案内路103の延長上で案内路103から遠ざかる。係り片119の変位に応じてスライダー102は弦巻ばね106の弾性力に抗して後退する。こうしてロック爪102aに駆動力が伝わる。その結果、ロック爪102aは第1位置Pfから第2位置Psに後退する。駆動力は規制体111との係り合いからロック爪102aを開放する。ロック爪102aは規制体111から離脱する。開き方向にフューエルキャップ55の動作は許容される。操作部材113は非ロック位置で停止する。
【0069】
フューエルキャップ55には軸線56回りで開き方向に捻りばね89が作用することから、フューエルキャップ55は閉じ位置から開き方向に揺動する。すると、図9に示されるように、フューエルキャップ55の揺動に応じてフック121は係り片119から離脱する。スライダー102は操作部材113の拘束から解放される。したがって、弦巻ばね106の働きでスライダー102は前進し、ロック爪102aは再び第1位置Pfに押し付けられる。
【0070】
軸線56回りでフューエルキャップ55が開き方向に揺動すると、図10に示されるように、リミッター91はキャップベース57の当たり面92に当たる。当たり面92は軸線56回りに開き方向にフューエルキャップ55の揺動を制限する。こうしてフューエルキャップ55の開き位置は決定される。フューエルタンク44の給油口44aは最大限に開放される。
【0071】
捻りばね89の働きでフューエルキャップ55には軸線56回りに接線方向に駆動力が生成される。リンク部材66の軸方向に駆動力の一成分はヒンジアーム63に伝達される。こうしてヒンジアーム63には回転軸線62回りに駆動力が付与される。フューエルキャップ55の開き動作に連動してフューエルリッド48は開口47を開放する。
【0072】
フューエルキャップ55が開き位置に到達すると、フューエルリッド48は最大限に開口47を開放する開放位置に至る。開放位置のフューエルリッド48は乗員シート23よりも上方に位置する。フューエルリッド48が最大限に開いたときにフューエルリッド48の下端部を通る水平面HPは乗員シート23よりも上方に位置する。このとき、フューエルリッド48の第2結合体48bおよびねじ82は後方から隠し板48dで覆われるものの、ねじ82は下方に向かって露出する。図11に示されるように、給油の作業者は楽に後方から開口47を経て給油口44aに給油ガン122を挿入することができる。
【0073】
いちど、ロック爪102aが規制体111の拘束から解除されると、シーソースイッチ53はユーザーの操作力から解放されることができる。すると、操作部材113はケーブル54の引っ張り力から解放されることから、操作部材113は弦巻ばね118の働きでヒンジ軸112回りに第2方向SEに回転する。操作部材113はロック位置に復帰する。
【0074】
給油が完了すると、給油の作業者は給油口44aから給油ガン122を抜き取る。続いてフューエルリッド48が回転軸線62回りで閉じられる。フューエルリッド48には作業者の手で操作力が加えられる。ヒンジアーム63には回転軸線62回りに接線方向に駆動力が生成される。リンク部材66の軸方向に駆動力の一成分はフューエルキャップ55のキャップ本体55aに伝達される。こうしてフューエルキャップ55には軸線56回りで駆動力が付与される。フューエルリッド48の閉じ動作に連動してフューエルキャップ55は給油口44aを閉鎖する。
【0075】
給油口44aの閉鎖にあたってフューエルキャップ55が閉じ位置に向かって揺動すると、第1位置Pfのロック爪102aは規制体111に衝突する。このとき、フューエルリッド48からさらに作業者の操作力が付与されると、規制体111の斜面に基づきロック爪102aに第2位置Psに向かって駆動力が生成される。弦巻ばね106の弾性力に抗してスライダー102は後退する。ロック爪102aは規制体111の斜面から離脱する。フューエルキャップ55はさらに揺動し閉じ位置に至る。給油口44aは閉鎖される。ロック爪102aは規制体111の拘束から解放されることから、弦巻ばね106の働きでスライダー102は再び前進し、ロック爪102aは第1位置Pfに復帰する。ロック爪102aは規制体111に係り合う。フューエルリッド48が作業者の操作力から解放されても、規制体111は閉じ位置にフューエルキャップを拘束する。
【0076】
フューエルキャップ55が閉じ位置に拘束されると、プッシュ部材96とフィラーネック45との間にフューエルパッキン94は挟み込まれる。プッシュ部材96には弦巻ばね99の働きでフィラーネック45に向かって押し付け力が付与される。したがって、フューエルパッキン94はプッシュ部材96とフィラーネック45とに密着する。フューエルキャップ55とフィラーネック45との間では良好な気密性が確保される。フューエルキャップ55が閉じ位置に向かって揺動する際に、操作部材113は弦巻ばね118の働きでロック位置に保持されることから、操作部材113の係り片119に再びフック121は係り合う。
【0077】
本実施形態に係るロック機構101では、操作部材113が操作されると、ロック爪102aに駆動力が伝わる。駆動力は規制体111との係り合いからロック爪102aを解放する。こうしてフューエルキャップ55のロックは解除される。開き方向にフューエルキャップ55の動作は許容される。給油口44aは開放されることができる。このとき、操作部材113の操作に応じてロック爪102aの解除は確認されることができる。操作部材113は、ロック爪102aを開放する駆動力を生成するものの、軸線56回りにフューエルキャップ55に駆動力を付与するものではない。したがって、ロック爪102aの解除前にフューエルキャップ55に開き方向に操作力が加わることは防止される。ロック爪102aに要求される強度は低減される。その一方で、フューエルキャップ55上に操作部材が設置されると、たとえロック爪102aと規制体111との係り合いが維持されていても、フューエルキャップ55には操作部材から操作力が加わってしまう。ロック爪102aには付与される操作力に抗する強度が要求される。こうした強度の要求はロック爪102aの重量増を招く。加えて、本実施形態では、操作部材113はフューエルキャップ55から外れた位置に配置されるので、フューエルキャップ55の表面は単純な構造に仕立てられることができる。
【0078】
フューエルキャップ55および規制体111はフューエルタンク44に支持されることから、フューエルキャップ55上のロック爪102aと規制体111とは良好な精度で位置決めされることができる。規制体111に対してロック爪102aの係り合いおよび解除は良好に実現される。
【0079】
フューエルキャップ55には、開き方向にフューエルキャップ55を駆動する弾性力を発揮する捻りばね89が連結される。規制体111に対してロック爪102aの係り合いが解除されると、弾性力の働きでフューエルキャップ55は開き方向に駆動される。したがって、ロック爪102aがフューエルキャップ55の外周から外方に再び突出しても、ロック爪102aと規制体111との係り合いは確立されない。ロック爪102aの解放は維持される。
【0080】
ここでは、捻りばね89は、給油口44aを開放する開き位置までフューエルキャップ55を駆動する弾性力を発揮する。弾性力の働きでフューエルキャップ55は給油口44aを開放する開き位置に至る。こうしてフューエルキャップ55に軸線56回りに操作力が加わらなくても、給油口44aの開放は実現される。
【0081】
本実施形態に係るロック機構101は、一端でロック爪102aに結合されて、フューエルキャップ55の表面に沿って線形に変位し、他端でフューエルキャップ55の外周から突出するスライダー102と、フューエルキャップ55に形成されて、スライダー102の変位を案内する案内路103と、フューエルキャップ55が閉じ位置に位置する際に案内路103の延長上に配置されて、操作部材113の動きに応じて案内路103の線方向に変位する係り片119と、ロック爪102aに結合されて、フューエルキャップ55が閉じ位置に位置すると係り片119に連結され、フューエルキャップ55が閉じ位置から開き方向に変位すると係り片119から解放されるフック121とを備える。フューエルキャップ55が閉じ位置に位置すると、フック121は係り片119に連結される。操作部材113の動きに応じて係り片119が変位すると、係り片119の変位はフック121からロック爪102aに伝達される。ロック爪102aは第1位置Pfから第2位置Psに向かって駆動される。ロック爪102aと規制体111との係り合いは解除される。弾性力の働きでフューエルキャップ55は開き方向に駆動される。こうしてフューエルキャップ55が揺動すると、フック121は係り片119から解放される。フューエルキャップ55の移動から操作部材113は分離される。したがって、操作部材113の小さい動作でフューエルキャップ55は開き位置まで開放されることができる。
【0082】
スライダー102の表面には、ロック爪102aが第1位置Pfに位置する際に、フューエルキャップ55の外縁で案内路103を塞ぐ突片102bが突出する。スライダー102の案内路103はフューエルキャップ55の外縁で突片102bによって塞がれるので、案内路103からフューエルキャップ55の内側に向かって水の進入は防止されることができる。
【0083】
フューエルタンク44には、給油口44aの外周に設けられ、給油口44aの一側に支持体57bを配置し、給油口44aの他側に規制体111を配置するキャップベース57が支持される。キャップベース57は、フューエルキャップ55、規制体111、ロック爪102aおよび操作部材113をユニット化する。フューエルキャップ55、規制体111、ロック爪102aおよび操作部材113は予め組み立てられてフューエルタンク44に組み付けられることができる。したがって、組み付けの作業性は向上することができる。
【0084】
本実施形態に係るスクーター11は、操作部材113に連結されて、軸方向変位に応じて操作部材113を駆動し、ロック爪102aを開放する駆動力を生み出すケーブル54を備える。ケーブル54の軸方向変位に応じて操作部材113で駆動力は生成される。遠隔で操作部材113は操作される。フューエルキャップ55の開放は良好に制限されることができる。
【0085】
操作部材113は、ヒンジ軸線112回りで揺動自在に支持され、第1角度域でロック爪102aに連結され、ヒンジ軸線112回りで第1角度域から特定角度αで変位する第2角度域でケーブル54に連結される。ケーブル54の軸方向変位は操作部材113の揺動に変換される。操作部材113の揺動はロック爪102aの変位に変換される。したがって、ケーブル54の向きとロック爪102aの変位の向きとは一致する必要はなく、ケーブル54の配置の自由度は広がる。
【0086】
ここでは、操作部材113は、ヒンジ軸線112から第1長さLG1で離れた位置でロック爪102aに連結され、ヒンジ軸線112から第1長さLG1よりも大きい第2長さLG2で離れた位置でケーブル54に連結される。ケーブル54の引っ張り力はロック爪102aの駆動力に変換される。ケーブル54は第1長さLG1よりも大きい第2長さLG2でヒンジ軸線112から離れることから、ケーブル54の引っ張り力に対してロック爪102aのトルクは増幅される。ケーブル54に加えられる操作力は低減されることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12