(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】水中油型エマルション
(51)【国際特許分類】
A61K 8/89 20060101AFI20221201BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20221201BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221201BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20221201BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20221201BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221201BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61K8/89
A61K8/898
A61K8/86
A61K8/92
A61Q5/02
A61Q5/00
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2021516810
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2018107847
(87)【国際公開番号】W WO2020061880
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】リアン、シンユー
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、チユアン
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240915(JP,A)
【文献】特表2000-510480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a1)25℃における動粘度が
40,000~
100,000mPa・sであるシリコーン化合物と、(a2)アミン価が
5~
40mgKOH/gであ
り、かつ、25℃における動粘度が2,000~6,000mPa・sであるアミノ官能性シリコーンとを含むシロキサン混合物、
(b)
野菜、種子又はナッツに由来する天然油、
(c)乳化剤、および
(d)水
を含み、
成分(a1)が、下記式:
R
1R
2
2SiO(R
2
2SiO)
mSiR
2
2R
1 I
(式中、R
2は、同一または異なる1~18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、
R
1は、同一または異なる、R
2、ヒドロキシル基、またはC
1~C
6アルコキシ基である)
を有
し、
成分(b)と成分(a)の質量比が1:(1~8)である、水中油型エマルション。
【請求項2】
成分(b)と成分(a)の質量比が1:(2~8)であることを特徴とする、請求項
1記載の水中油型エマルション。
【請求項3】
成分(b)と成分(a1)の質量比が5:(4~32)であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の水中油型エマルション。
【請求項4】
成分(b)と成分(a2)の質量比が5:(1~8)であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の水中油型エマルション。
【請求項5】
成分(b)が、前記エマルションの全重量に基づいて5~25重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の水中油型エマルション。
【請求項6】
成分(a)が、前記エマルションの全重量に基づいて20~60重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の水中油型エマルション。
【請求項7】
成分(b)および(a)が、前記エマルションの全重量に基づいて40~70重量%の合計量で存在することを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の水中油型エマルション。
【請求項8】
成分(c)が、5~10HLB値を有する1種のポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルエステルと、10~20のHLB値を有する2種のポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルエステルとを含むことを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の水中油型エマルション。
【請求項9】
成分(c)が、12~16のHLB値を有することを特徴とする、請求項
8に記載の水中油型エマルション。
【請求項10】
成分(c)が、シリコーン混合物および天然油の全重量に基づいて15重量%未満の量で存在することを特徴とする、請求項
8または
9に記載の水中油型エマルション。
【請求項11】
成分(a2)のアミン価が5~10mgKOH/gであることを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載の水中油型エマルション。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の水中油型エマルションの製造方法であって、
前記水中油型エマルションの粒径が500nm未満であることを特徴とする、水中油型エマルションの製造方法。
【請求項13】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の水中油型エマルションの製造方法であって、
下記の工程:
1)前記シロキサン混合物を前記天然油と混合して、混合油を得る工程、
2)前記乳化剤と前記混合油を混合して、ペーストを得る工程、
3)前記ペーストに水を加え、均質化して、生成物を得る工程、
を含む、水中油型エマルションの製造方法。
【請求項14】
パーソナルケア製品における、請求項1~
11のいずれか一項に記載の水中油型エマルションの使用。
【請求項15】
前記パーソナルケア製品が、リンスオフヘアケア製品であることを特徴とする、請求項
14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中油型エマルションに関し、特に、ヘアケアに使用することができるシリコーンオイルと天然オイルとを含む混合エマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
天然油、特に植物油は、そのマイルドさと特異な効果のため、ヘアケア製品に広く使用されている。植物油が髪表面に付着するだけでなく、髪の内部にも浸透するため、ダブル効果のケアをもたらす。しかし、植物油は二重結合を多く含んでいるため、ヘアケア製品に直接加えると酸化し易く効果が低下する。したがって、ヘアケア製品に加える前に植物油を予め乳化させることが望ましい。
【0003】
現在、ヘアケア製品、典型的にはシャンプーは、より滑らかにするために通常シリコーンオイルを配合している。しかしながら,植物油とシリコーンオイルを一緒に添加する場合,それらの低い相溶性のために処方系の安定性の大きなリスクがある。混合油処方物の安定性を改善するために、混合エマルションまたはヘアケア製品に使用される植物油および/またはシリコーンオイルは、通常、修飾されているか、または非常に少量しか存在しない。したがって、製品の性能に影響を及ぼす2つの油の相乗効果を真に発揮することは不可能である。例えば、CN104000749Aは、実施例2において頭皮ケア溶液を開示しており、それはケア溶液の100重量部に基づいて、3重量部のシロキサンエマルション(35重量%)、2重量部の水溶性植物油、5重量部の界面活性剤、20重量部の変性エタノール、および他の成分を含む。
【0004】
ヘアケアに加えて、シリコーンオイルと植物油を配合した混合エマルションが化粧品にも使われている。例えば、EP0160430Aは、実施例8において乾燥した荒れた皮膚を処理するための混合エマルションを開示し、エマルションの100重量部に基づいて、17重量部の低粘度シリコーンオイル、2.5重量部の植物油および1.5重量部の乳化剤を含む。WO2016097387Aは、実施例2において化粧品の性能を改善することができる混合エマルションを開示しており、このエマルションは、エマルションの100重量部に基づいて、1.2重量部の乳化アミノシリコーン、10重量部の植物油および10重量部の乳化剤を含む。しかしながら、油相の分離を防止するために、シリコーンオイルおよび植物油は、上記エマルション中に少量存在する。
【0005】
また、化粧品の調製時に、予め乳化されたものの代わりに、シリコーンオイルおよび植物油を直接添加する従来技術もあるが、この方法は、依然として安定性の問題に対処することができず、植物油は容易に酸化され、効果が低下する。例えば、WO2009017866A1は、実施例1において化粧品用エマルション組成物を開示しており、この組成物は、組成物の100重量部に基づいて、4重量部の低粘度ジメチコン、0.4重量部の植物油および10.16重量部の乳化剤を含む。WO2007133720Aは、実施例15において、サンスクリーンエマルションを開示しており、このサンスクリーンエマルションは、エマルションの100重量部に基づいて、15重量部の低粘度シリコーンオイル、1重量部の鉱油、0.5重量部100の植物油、2重量部の乳化剤および0.5重量部の増粘剤を含む。CN106109270Aは、実施例4において化粧料エマルション組成物を開示しており、この化粧料エマルション組成物は、組成物の1000重量部に基づいて、20重量部のメチコン、45重量部の植物油、45重量部の乳化剤および20重量部の増粘剤を含む。
【発明の概要】
【0006】
したがって、シリコーンオイルと植物油を混合して、シリコーンオイルと植物油の含有量が高く、ヘアケア及び頭皮ケアに有益な安定したエマルションを可能にする技術を開発する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の第1の態様は、安定に乳化されたシリコーンオイルおよび天然オイルを高含有量で含み、天然オイルがエマルションの内相にカプセル化され、そのケア効果を最大化するために酸化から効果的に保護され得る水中油型エマルションを提供する。驚くべきことに、シリコーン化合物、アミノ官能性シリコーンおよび天然オイルの間の相乗作用は、ヘア表面および内部の二重効果ケア、ならびにヘアおよび頭皮の二重ケア、特に低いコーミング力および有意に改善されたヘア柔軟性を提供する。
【0008】
本明細書で使用される用語「水中油型エマルション」は、一方の液体(油相)が他方の液体(水相)中に液滴の形で分散される分散系を指す。本開示によれば、油相は、水中油型エマルション中に、水中油型エマルションの全重量に対して、10重量%超の量(例えば、15質量%超または20質量%超)、特に25重量%超の量(例えば、30重量%超の量、35重量%超の量、40重量%超の量、45重量%超の量、または50重量%超の量、さらにまたは55重量%超の量、60重量%超の量、または65重量%超の量)で存在する。
【0009】
本開示において、動的粘度は、別段の指定がない限り、25℃でDIN53019に従って測定される。
【0010】
本明細書中で使用される、用語「アミン価」とは、別段の指定がない限り、1gのアミノ官能性シリコーンを中和するのに必要な塩酸と等価の水酸化カリウムのミリグラム数を指す。
【0011】
水中油型エマルションは、以下の成分を含む。
(a)(a1)25℃における動粘度が30,000~1,2000,000mPa・sであるシリコーン化合物と、(a2)アミン価が1~50mgKOH/gであるアミノ官能性シリコーンとを含むシロキサン混合物、
(b)天然油、
(c)乳化剤、および
(d)水
【0012】
成分(a1)
シリコーン化合物は、アミノ官能基を有しないシリコーンであり、R3SiO1/2、R2SiO2/2、RSiO3/2またはSiO4/2のシロキシ単位またはそれらの組合せを任意の数で含んでもよく、Rはアミノ官能基を除く任意の一価の有機基であり得る。これらのシロキシユニットは、環状、直鎖または分岐鎖構造、好ましくは直鎖構造を形成するために種々の方法で組み合わせることができる。より好ましくは、シリコーン化合物は、下記一般式を有する。
R1R2
2SiO(R2
2SiO)mSiR2
2R1
I
式中、R2は、同一または異なる1~18個の炭素原子、例えば1~6個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、好ましくはメチルまたはエチルであり、特に好ましくはメチルであり得る。
R1は、同一または異なる、R2、ヒドロキシル基、またはC1~C6アルコキシ基であり、好ましくはメチルまたはエチルであり、特に好ましくはメチルであり得る。
mは、シリコーン化合物の25℃における動粘度が40,000~1,000,000mPa・s、好ましくは40,000~1000,000mPa・sとなるような数であることが好ましい。
【0013】
成分(a1)は、エマルションの全重量を基準として、20~40重量%、好ましくは24~36重量%、例えば24重量%、30重量%および36重量%の量で好適に存在する。
【0014】
成分(a2)
アミノ官能性シリコーンとは、1以上のアミノアルキル官能基で修飾された上記シリコーンをいい、好ましくは下記一般式を有する。
R3R4
2SiO(R4RNSiO)n(R4
2SiO)pSiR4
2R3
II
式中、R4は、同一または異なる1~18個の炭素原子、例えば1~6個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、好ましくはメチルまたはエチルであり、特に好ましくはメチルであり得る。
式中、R3は、同一または異なるR4、ヒドロキシル基またはC1~C6アルコキシ基であり、好ましくはメチルまたはエチルであり、特に好ましくはメチルであり得る;
RNは、式“-Ra-[NRb-Rc-]xNRb
2”を有するアミノ基又はそのプロトン化体であり、Raは、同一又は異なる1~6個の炭素原子を有する2価炭化水素基であり、好ましくは-CH2CH2CH2-又は-CH2CH(CH3)-CH2-である。Rbは、同一または異なる、Hまたは1~4個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、好ましくはHであり得る。Rcは、同一または異なる1~6個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であり、好ましくは-CH2CH2-であり得る。xは好ましくは0または1である;
n+pの合計は、アミノ官能性シリコーン化合物が25℃で400から10,000mPa・s、好ましくは2,000から6,000mPa・sの動的粘度を有するような数である。
nはアミノ官能性シリコーン化合物のアミン価が5~40mgKOH/g、特に5~10mgKOH/gである数が好ましい。
【0015】
成分(a2)は、エマルションの全重量に対して5~15重量%、例えば5重量%、10重量%および15重量%の量で好適に存在する。
【0016】
エマルションの安定性およびヘアケアの有益な効果を得るために、成分(a1)における成分(a1)と成分(a2)との適切な質量比は、1:1~10:1、好ましくは2:1~6:1、例えば4:1の範囲である。
【0017】
特定の実施態様では、成分(a)は、25℃での動的粘度が40,000から70,000mPa・sであるポリジメチルシロキサンと、25℃での動的粘度が2,000から6,000mPa・sであるアミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンとの混合物を4:1の質量比で混合したものである。
【0018】
本開示によれば、成分(a)は、水中油型エマルション中に、エマルションの全重量に基づいて、最大60重量%、例えば20~60重量%(例えば、40質量%、50質量%または60質量%)の量で存在させることができる。
【0019】
成分(b)
天然油とは、動物、野菜、種子及びナッツから直接抽出される油をいい、石油又は石油系油から抽出される油を含まない。好適な天然油の例としては、ニートフット油、獣脂、羊脂、ラード、馬油、魚油、アーモンド油、アプリコット油、アボガド油、クルミ油、ヒマシ油、コーン油、オート麦油、綿実油、菜種油、亜麻仁油、グレープシード油、ザクロ種子油、柑橘類種子油、小麦胚芽油、カシューナッツ油、松の実油、マカデミアナッツ油、モロッコ油、落花生油、大豆油、ゴマ油、ヒマワリ油、茶樹油、コメ糠油、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、ヤシ油、オリーブ油、ホホバ油、アルガン油、ブラッククミン油、ベリーオイル、カロフィラム油、シアバター、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。天然油は、好ましくは、野菜、種子またはナッツに由来するものである。
【0020】
(b)成分と(a)成分との適切な質量比は、優れた燃焼性を得るためには1:(1~8)、例えば1:2または1:4であり、同時に良好な柔らかさを得るためには1:(2~8)が好ましい。成分(b)と成分(a1)との適切な質量比は、5:(4~32)、例えば、5:4、5:8、5:16または5:32、好ましくは5:(8~32)である。成分(b)と成分(a2)との適切な質量比は、5:(1~8)、例えば、5:1、5:2、5:4または5:8、好ましくは5:(2~8)である。
【0021】
本開示によれば、成分(b)は、水中油型エマルション中に最大25重量%、例えば5~25重量%(例えば、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、または25重量%)、好ましくは5~20重量%の量で存在することができる。成分(a)および(b)は、エマルションの全重量に基づいて、合計で最大70重量%、例えば20~70重量%(例えば、25~70重量%、40~70重量%)で存在し得る。
【0022】
成分(c)
乳化剤は、一般に、非イオン性、カチオン性、アニオン性もしくは両性界面活性剤、またはそれらの組み合わせ、好ましくは1種以上の非イオン性界面活性剤であり得る。
【0023】
典型的な非イオン界面活性剤には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビトールエーテル、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルエステルが含まれる。適切なポリオキシエチレンアルキルエーテルは、C8~C16のポリオキシエチレンエーテル、例えば3~50EO単位を有するC10、C11またはC13脂肪族アルコールが挙げられる。適当なポリオキシエチレンアルキルエステルとしては、C16~C18のポリオキシエチレンエステル、例えば2~120EO単位を有するC18脂肪酸が挙げられる。
【0024】
乳化剤は好ましくは少なくとも三つのポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル、特に5~10のHLB値を有する少なくとも1種のポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル、および10~20のHLB値を有する少なくとも2種のポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルを含み、それらの混合物は好ましくは12~16のHLB値を有し、これらは以下の式によって評価することができる:
HLBMIX=HLBaWa+HLBbWb+・・・+HLBnWn
式中、HLBa、HLBb、およびHLBnは、それぞれポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルa、b、およびnのHLB値である。
Wa、WbおよびWnは、それぞれポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルa、bおよびnの質量%である。
HLBMIXは、混合物のHLB値です。
【0025】
特定の実施態様では、乳化剤は、5~10のHLB値を有する1種のポリオキシエチレンアルキルエーテル又はエステルと10~20のHLB値を有する2種のポリオキシエチレンアルキルエーテル又はエステルとの混合物、例えば、12~16のHLB値を有するトリデセス-3、トリデセス-10及びトリデセス-12の混合物である。
【0026】
本開示によれば、成分(c)は、界面活性剤の種類によって様々な量で水中油型エマルション中に存在することができ、一般に、シリコーン混合物および天然油の全重量に基づいて、20~30重量%である。驚くべきことに、乳化剤の量は、シリコーン混合物および天然油の全重量に基づいて、15重量%未満、例えば10重量%から15重量%に低減することができ、一方、5~10のHLB値を有する1種のポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルと、10~20のHLB値を有する2種のポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルとの間の相乗作用により、シリコーンオイルおよび天然油は高含量で安定に乳化される。
【0027】
その他の任意成分
本開示によれば、水中油型エマルションは、必要に応じて、増粘剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤および保湿剤など、上記以外の他の成分をさらに含むことができるが、これらに限定されない。
【0028】
上記の任意の他の成分のいずれも、エマルションの全重量に基づいて、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、例えば4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、または0.1重量%未満の量で存在させることができる。
【0029】
本開示によれば、水中油型エマルションは、25℃における動的粘度が、1,000~20,000mPa・s、例えば、1,000~3,000mPa・s、3,000~5,000mPa・s、5,000~7,000mPa・s、7,000~10,000mPa・s、11,000~13,000mPa・s、13,000~15,000mPa・s、15,000~17,000mPa・s、および17,000から20,000mPa・sである。
【0030】
本開示の第2の態様は、
下記の工程:
1)前記シロキサン混合物を前記天然油と混合して、混合油を得る工程、
2)前記乳化剤と前記混合油を混合して、ペーストを得る工程、
3)前記ペーストに水を加え、均質化して、生成物を得る工程、
を含む、水中油型エマルションの製造方法も提供する。
【0031】
工程1)および2)における混合操作は、各成分が均一に混合されていれば、例えば、不特定の速度で簡単に攪拌するなど、公知の手段により行うことができる。
【0032】
工程3)では、ペーストに水を数回、例えば5~6回のように4回以上加えることが好ましい。均質化の速度は、シロキサン混合物と天然油とが油分離せずに完全に乳化され得る限り、任意であり得る。
【0033】
本開示の第3の態様は、パーソナルケア製品における第1の態様の水中油型エマルションの使用を提供する。
【0034】
水中油型エマルションは、ヘアケアおよびスキンケア製品、好ましくはヘアケア製品、より好ましくはシャンプーおよびコンディショナーのような洗い流すヘアケア製品を含むパーソナルケア製品中のコンディショニング成分として主に使用される。
【0035】
本開示の第4の態様は、第1の態様の水中油型エマルションを含む洗い流すヘアケア製品を提供する。
【0036】
水中油型エマルションの投与量は、個々の必要性に応じて、一般的には洗い流すヘアケア製品の全重量に基づいて1~10重量%、例えば2~5重量%(例えば3重量%)の量で調節することができる。
【実施例】
【0037】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、その範囲に限定されない。なお、以下の実施例では、条件を設定していない実験方法は、従来の方法及び条件又は製品仕様に基づいて選択する。
【0038】
1.粒度試験
本発明によれば、水中油型エマルションの粒径は、Malvern Zetasizer Nano ZS 90ナノ粒子径分析器によって特徴付けられる。試験前に、エマルションを脱イオン水で適当な濃度、例えば0.5重量%に希釈する。エマルションの粒径はメジアン径(D50)を用いて評価した。
【0039】
2.乳化安定性試験
エマルションを48℃のオーブンに二ヶ月間置いた後、層化が認められず、すべての指標(外観、pH、粘度、固形分、粒径等)が有意に変化しなければ、安定とみなす。
【0040】
3.シャンプーの処方
表1に従って処方されたシャンプーを用いて、本発明の水中油型エマルションのヘアケア効果を試験した。
【0041】
【0042】
4.コーミング力テスト
本発明によれば、コーミング力は、インストロン3365引張強度試験機で、25±2℃、相対湿度60±10%で測定される。各髪束(重さ10g、長さ20cm)は、少なくとも11回連続して測定する必要がある。以下の工程で5つの測定データグループを選択し、平均化する。
1)風乾した髪束をブランクとしてテスター固定具上に置き、乾燥コーミング力Fdry(ブランク)を測定する。
2)髪束を完全に水で濡らし、6回繰り返しすすぎ、水分を除去する。
3)髪束ごとにシャンプー0.7mLをとり、均等に塗布し、髪束を30秒間洗浄し、さらに30秒間静置した後、35℃のぬるま湯で6回洗い流し、髪束から水分を除去する。
4)工程3)を繰り返し、目の広いクシで髪をやさしくほぐし、使用のためのヘアラックに吊るす。
5)工程4)の風乾した髪束をテスター上に置き、処理したサンプルFdry(サンプル)の乾燥コーミング力を測定し、コーミング力の低下率をパーセンテージの形でΔFdry/%=(Fdry(ブランク)-Fdry(サンプル))/Fdry(ブランク)*100%として計算する。
【0043】
5.柔らかさ評価
上記工程4)の風乾したヘアートレスを吊るし、35人用テストパネルで触ってその柔らかさを評価する。採点ルールは、0=普通、1=良い、2=非常に良い。最終結果は合計スコアである。スコアが高いほど、柔らかさが増す。
【0044】
表2に、個々の実施例および比較例で使用された成分はすべて市販されており、詳細な情報は以下の通りである:
MULTISO 13/30:3EO単位を有するイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、HLB値7.9、Sasol Limited製。
MULTISO 13/109:10EO単位を有するイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテルの水溶液、有効成分含有量90重量%、HLB値13.7、Sasol Limited製。
MULTISO 13/120、12EO単位を有するイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、HLB値14.5、Sasol Limited製。
BELSIL(登録商標)DM 60000:DIN53019に従って25℃で測定した動粘度が約60,000mPa・sであるポリジメチルシロキサン、Wacker Chemicals社製。
WACKER(登録商標)AMINFLUID 6002:DIN53019に従って25℃で測定した動粘度が約4,000 mPa・sであるアミン数6.7mgKOH/gのアミノアルキル官能性ポリジメチルシロキサン、Wacker Chemicals社製。
Microcare IT:メチルクロロイソチアゾリノン(1.1重量%)とメチルイソチアゾリノン(0.4重量%)を有効成分とする液体防腐剤、Thor Chemicals社製。
【0045】
以下、特に記載のない限り、「重量%」は水中油型エマルションの全重量を基準とする。
【0046】
実施例1~5
表2に従い、ポリジメチルシロキサンと、アミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンと、天然油とを均一に攪拌混合し、得られた混合油に乳化剤を添加し、攪拌してペーストを得た後、3.60重量%、5.61重量%、7.00重量%、12.00重量%、15.00重量%の水を順次添加し、均質化して生成物を得た。得られた水中油型エマルションは、25℃における動的粘度が3,000~10,000mPa・sである。
【0047】
比較例1~5
比較例1~5の製造方法は、ポリジメチルシロキサンとアミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンとを乳化した後、比較例1には天然油を添加した以外は、実施例1~5と基本的に同様であった。比較例2には天然油を添加しなかった。比較例3にはアミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンを添加しなかった。比較例4にはポリジメチルシロキサンを添加しなかった。比較例5にはポリジメチルシロキサン及びアミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンを添加しなかった。
【0048】
実施例及び比較例のそれぞれについて、粒径、安定性、及びΔFdry(パーセンテージ)としてコーミング力の低下率の試験結果を表3に示す。同じ乳化剤系において、実施例1~5の水中油型エマルションは安定である。比較例1の水中油型エマルションは、シロキサン混合物の乳化後に添加したため、天然油が分離した状態のままであったため、安定性の点から測定しなかった。アミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンと天然油を含有する比較例4の水中油型エマルションと、天然油のみを含有する比較例5の水中油型エマルションは不安定である(実施例2との比較)。実施例1と比較例2とを比較すると、シロキサン混合物の一部を同じ油相重量で天然油で置換した場合、得られる水中油型エマルションは依然として同等の△Fdryを有することがわかる。実施例2~4の水中油型エマルションは、油相中により多くの天然油をさらに含有するが、ΔFdryは有意に減少せず、これは、乾燥コーミング力を低下させるのに依然として良好な効果を提供し得ることを意味する。また、予め乳化してシャンプーに直接添加していない天然油は、予め乳化している天然油に比べて、乾燥コーミング力を低下させる効果が低いことも注目に値する(比較例2と比較例1)。
【0049】
実施例2~3及び比較例2~3の柔らかさ評価結果を表4に示す。一般的にシリコーンオイルは天然油よりもヘアの柔らかさを改善する効果が高い。しかしながら、同一油相量では、天然油、ポリジメチルシロキサン及びアミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンが相乗効果をもたらすため、天然油を含まない比較例2及びアミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンを含まない比較例3の水中油型エマルションは、実施例2~3よりもはるかに軟らかくない。
【0050】
【0051】
【0052】