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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】熱延鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20221201BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20221201BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20221201BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20221201BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20221201BHJP
   B22D 11/20 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C22C38/00 301W
C22C38/14
C22C38/60
C21D9/46 S
B22D11/00 A
B22D11/20 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021517743
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 KR2019011700
(87)【国際公開番号】W WO2020071654
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0116700
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コン,ゾン‐パン
(72)【発明者】
【氏名】コ,ヨン‐ジュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,キョン‐ミ
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/117552(WO,A1)
【文献】特表2014-517873(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185405(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105734412(CN,A)
【文献】国際公開第2018/117575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
C21D 8/00 - 8/04
C21D 9/46 - 9/48
B22D 11/00 - 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.16~0.27%、Mn:0.8~2.6%、Si:0.05~0.3%、Al:0.05%以下、Ti:0.01~0.08%、B:0.001~0.005%、Ca:0.001~0.005%、N:0.001~0.010%、残部はFe及びその他の不可避不純物からなり、
下記関係式1~3を満たし、
面積分率でマルテンサイト及びオートテンパード(Auto Tempered)マルテンサイトの合計が95%以上であり、フェライトが5%以下(0%を含む)である微細組織を含み、
平均サイズが40nm以下であるM(X)(M=Ti、Nb、Si、Al、B、Mg、Cr、Ca、P、X=C、N)の複合析出物を含むことを特徴とする熱延鋼板。
[関係式1]
16≦100(C+Mn/100+B/10)≦28
[関係式2]
1≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]≦14
[関係式3]
0.05≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]/100(C+Mn/100+B/10)≦0.66
(但し、前記関係式1~3に記載された合金成分の含有量は、重量%である。)
【請求項2】
前記熱延鋼板は、トランプ元素としてNb、V、Mo、Cu、Cr、Ni、Zn、Se、Sb、Zr、W、Ga、Ge及びMgからなる群から選択された1種以上をその合計が0.1重量%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板。
【請求項3】
前記熱延鋼板は、前記マルテンサイトのラス(lath)の平均幅が1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板。
【請求項4】
前記熱延鋼板は、降伏強度が1060~1400MPaであり、引張強度が1470~1800MPaであり、延伸率が5%以上であり、ビッカース硬度が420~550Hv(0.5kgf)であり、ストリップの幅方向の引張強度ばらつきが100MPa以下であり、ストリップの幅方向のビッカース硬度ばらつきが50Hv(0.5kgf)以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板。
【請求項5】
前記熱延鋼板は、厚さが1.6mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板。
【請求項6】
請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法であって、
重量%で、C:0.16~0.27%、Mn:0.8~2.6%、Si:0.05~0.3%、Al:0.05%以下、Ti:0.01~0.08%、B:0.001~0.005%、Ca:0.001~0.005%、N:0.001~0.010%、残部はFe及びその他の不可避不純物からなり、下記関係式1~3を満たす溶鋼を連続鋳造して厚さが80~120mmである薄スラブを得る段階、
前記薄スラブを粗圧延してバー(Bar)を得る段階、
前記バーを仕上げ圧延の出側温度がAr+10℃~Ar+60℃になるように仕上げ圧延して熱延鋼板を得る段階、及び
前記熱延鋼板をAr直上で200℃/sec以上で冷却し、Mf-50℃以下で巻取る段階を含み、
前記各段階は、連続的に行われることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
[関係式1]
16≦100(C+Mn/100+B/10)≦28
[関係式2]
1≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]≦14
[関係式3]
0.05≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]/100(C+Mn/100+B/10)≦0.66
(但し、前記関係式1~3に記載された合金成分の含有量は、重量%である。)
【請求項7】
前記連続鋳造時の鋳造速度は4~8mpm(m/min)であることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記連続鋳造時のモールドフラックスの塩基度は0.8~1.5であることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記連続鋳造時の2次冷却比水量は1.5~2.5L/kgであることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記粗圧延時の粗圧延出側でのバーエッジ部の温度は850~1000℃であることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記バーを得る段階の後、前記バーに200~300barの圧力で冷却水を噴射する段階をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記冷却水の噴射時に冷却水の重なり(overlap)面積率は5~25%であることを特徴とする請求項11に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記仕上げ圧延時の圧延速度ばらつきは50mpm以下であることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記仕上げ圧延時の熱延鋼板の幅方向の温度ばらつきは50℃以下であることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記仕上げ圧延時の圧延速度は200~600mpmであることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項16】
前記冷却時の冷却ノズルの間隔は150~400mmであることを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【請求項17】
前記巻取る段階の後、巻取られた熱延鋼板を酸洗処理する段階をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱延鋼板及びその製造方法に係り、より詳しくは、連鋳-圧延直結工程で連連続圧延モードを利用して、製造された熱延鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際環境規制の強化及び自動車燃費規制の強化により、車体の超高強度化及び超軽量化が必要となり、1.0GPa級以上の超高強度鋼板の開発が活発に進められている。殆どの自動車の車体補強材であるバンパー補強材及びドアインパクトビームなどに使用される超高強度熱延鋼板は、高い強度が要求されることはもちろん、ロールフォーミング(Roll Forming)成形をするため、優れた曲げ加工性及び少ない材質ばらつきが求められる。かかる物性を満足させるために、自動車構造部材用鋼板は、基本的にフェライト(Ferrite)、ベイナイト(Baintie)、マルテンサイト(Martensite)及びテンパードマルテンサイト(Tempered Martensite)相(Phase)の組み合わせから構成され、これら相の構成比率によりDP(Dual Phase)鋼、TRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼、複合組織(Complex Phase)鋼、MART鋼などに分類されて適用されている。
【0003】
このような鋼は、メンバー類、ピラー類、バンパー補強材、シルサイドなどの車両衝突時に高いエネルギー吸収能が要求される部品に主に適用され、ロールフォーミングを用いて加工するため、1.0GPa以上の引張強度に加え、高い延伸率を有する必要がある。しかし、このような鋼は、超高強度の確保に伴う延伸率の減少を避けることが難しく、熱間圧延後の冷延及び焼鈍熱処理(CAL、Continuous Annealing Line)または熱延後の急速冷却を用いた加工工程であるHPF(Hot Press Forming)のような新規工程を経る必要があるため、製造コストが上昇するという欠点がある。
一方、自動車の車体補強材部品として使用される引張強度1.2GPa級以上の超高強度鋼を提供するために多くの研究及び開発が進められており、その代表的な例としては特許文献1~5がある。
【0004】
特許文献1では、化学成分の重量比で、C:0.15~0.20%、Si:0.3~0.8%、Mn:1.8~2.5%、Al:0.02~0.06%、Mo:0.1~0.4%、Nb:0.03~0.06%、S:0.02%以下、P:0.02%以下、N:0.005%以下を添加し、鋼の製造時に不可避に含有される元素を含むアルミニウムキルド鋼を1050~1300℃で均質化処理をした後、Ar変態点の直上である850~950℃で仕上げ熱間圧延をしてから、550~650℃で熱延巻取する段階、この鋼板を30~80%の冷間圧下率で冷間圧延をしてから、A温度以上で連続焼鈍する段階、及びこの鋼板を600~700℃まで1次徐冷を実施し、2次で350~300℃まで-10~-50℃/secの冷却速度で急冷した後、350~250℃の間で徐冷しながら1分以上維持する段階を含む、自動車バンパー補強材用の引張強度1.2GPa級超高強度冷延鋼板の製造方法について開示している。
【0005】
特許文献2では、重量%で、C:0.05~0.20%、Si:2.5%以下、Mn:3.0%以下及び不純物と少量の合金元素を含有した鋼に、Cr:0.3%以下、Mo:0.3%以下、Ni:0.3%以下のうち1種または2種以上を添加して1180~1400MPaの強度を有し、鋼板の曲げ/歪みが10mm以下の良好な形状を有する冷延鋼板を製造する方法について開示している。また、連続焼鈍熱処理設備を利用して鋼板を高温で急冷した後、150~200℃の温度範囲で過時効処理をし、通常の水冷(quenching)後に焼戻し(tempering)処理により、板状不良(鋼板の幅方向の変形)を改善することができるということを開示している。
【0006】
特許文献3では、重量%で、C:0.1~0.6%、Si:1.0~3.0%、Mn:1.0~3.5%、Al:1.5%以下及びCr:0.003~2.0%を含有する冷延鋼板をAc~Ac+50℃の温度で加熱した後、3℃/s以上の冷却速度で冷却し、(Ms-100℃)~Bs(ベイナイト開始温度)範囲で恒温維持することによって加工前の残留オーステナイトの相分率が10%以上であり、オーステナイト結晶粒の長さが短軸で1ミクロン以上であり、平均軸比(長軸/短軸)が5以上の耐水素脆化特性を有する引張強度1470MPa級超高強度冷延鋼板の製造方法について紹介している。
【0007】
特許文献4では、重量%で、C:0.10~0.27%、Si:0.001~1.0%、Mn:2.3~3.5%、Al:1.0%以下(0%を除く)、Cr:2%以下(0%を除く)、P:0.02%以下(0%を除く)、S:0.01%以下(0%を除く)、N:0.01%以下(0%を除く)、B:0.005%以下(0%を除く)、Ti:0.004~0.03%、Mo:0.2%以下(0%を除く)、Nb:0.05%以下(0%を除く)、残部はFe及びその他の不可避不純物を含有した冷間圧延されたストリップを1~5℃/sの加熱速度で[(Ac-90℃)~(Ac±15℃)]の温度範囲まで加熱した後、1~3℃/sの冷却速度で500~750℃の温度範囲まで1次冷却し、3~50℃/sの冷却速度で[(Ms-120)~460℃]の温度範囲まで2次冷却した後、6~500secの間に恒温変態を維持するか、1℃/s以下の冷却速度で徐冷する連続焼鈍段階を経た引張強度1.5GPaの冷延鋼板の製造方法について紹介している。
しかし、特許文献1~4に従って製造する場合、熱間圧延後の冷延及び焼鈍熱処理(CAL、Continuous Annealing Line)工程を経る必要があるため、製造コストが急激に上昇するという欠点があるだけでなく、現在、商業的に使用されている自動車用バンパーまたは補強材に適用するには、引張強度が比較的低いという問題点がある。
【0008】
また、特許文献5では、重量%で、C:0.26~0.45%、Mn+Cr:0.5~3.0%、Nb:0.02~1.0%、3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5を満たす量のTi、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下及びAl:1%以下の1種または2種以上、場合によってはB:0.01%以下、Nb:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Ca:0.001~0.005%の1種または2種以上を含有した冷間圧延鋼板を熱間プレス成形することによって引張強度が1.8GPaである超高強度の製造方法について開示している。
特許文献5に従って製造する場合、1.8GPaの超高強度は確保することができるが、冷間圧延された鋼板が再び熱間プレス成形段階(Hot Press Forming)を経る必要があるため、製造コストがさらに高くなるという問題点がある。
したがって、従来の超高強度冷延鋼板及び熱間成形鋼を代替できるだけでなく、より高い引張強度を確保することができ、製造コストを画期的に低減することができる超高強度熱延鋼板及びその製造方法に関する開発が求められている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国特許出願公開第2004-0057777号公報
【文献】日本特許出願公開第2007-100114号公報
【文献】韓国特許出願公開第2008-0073763号公報
【文献】韓国特許出願公開第2013-0069699号公報
【文献】韓国特許出願公開第2008-0111549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的とするところは、連鋳-圧延直結工程で連連続圧延モードを利用して、製造された熱延鋼板及びその製造方法を提供することにある。
一方、本発明の課題は上述した内容に限定されない。本発明の課題は、本明細書の内容全体から理解されることができ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の付加的な課題を理解するのに何の難しさもない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の熱延鋼板は、重量%で、C:0.16~0.27%、Mn:0.8~2.6%、Si:0.05~0.3%、Al:0.05%以下、Ti:0.01~0.08%、B:0.001~0.005%、Ca:0.001~0.005%、N:0.001~0.010%、残部はFe及びその他の不可避不純物からなり、下記関係式1~3を満たし、面積分率でマルテンサイト及びオートテンパード(Auto Tempered)マルテンサイトの合計が95%以上であり、フェライトが5%以下(0%を含む)である微細組織を含み、平均サイズが40nm以下であるM(X)(M=Ti、Nb、Si、Al、B、Mg、Cr、Ca、P、X=C、N)の複合析出物を含むことを特徴とする。
[関係式1]
16≦100(C+Mn/100+B/10)≦28
[関係式2]
1≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]≦14
[関係式3]
0.05≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]/100(C+Mn/100+B/10)≦0.66
(但し、上記関係式1~3に記載された合金成分の含有量は、重量%である。)
【0012】
本発明の熱延鋼板の製造方法は、重量%で、C:0.16~0.27%、Mn:0.8~2.6%、Si:0.05~0.3%、Al:0.05%以下、Ti:0.01~0.08%、B:0.001~0.005%、Ca:0.001~0.005%、N:0.001~0.010%、残部はFe及びその他の不可避不純物からなり、下記関係式1~3を満たす溶鋼を連続鋳造して薄スラブを得る段階、上記薄スラブを粗圧延してバー(Bar)を得る段階、上記バーを仕上げ圧延の出側温度がAr+10℃~Ar+60℃になるように仕上げ圧延して熱延鋼板を得る段階、及び上記熱延鋼板をAr直上で200℃/sec以上で冷却し、Mf-50℃以下で巻取る段階を含み、上記各段階は、連続的に行われることを特徴とする。
[関係式1]
16≦100(C+Mn/100+B/10)≦28
[関係式2]
1≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]≦14
[関係式3]
0.05≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]/
100(C+Mn/100+B/10)≦0.66
(但し、上記関係式1~3に記載された合金成分の含有量は、重量%である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、本発明の熱延鋼板は、合金組成及び製造条件を適切に制御して連鋳-圧延直結工程で連連続圧延モードを利用することにより、熱延鋼板及びその製造方法を提供することができる。また、本発明の熱延鋼板は、超高強度冷延鋼板及び熱間成形鋼を代替することができるだけでなく、製造コストを画期的に低減する効果がある。併せて、薄スラブ連鋳法を介して電気炉で古鉄などのスクラップを溶解した鋼を使用することができ、資源の再利用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の熱延鋼板の製造に適用可能な連鋳-圧延直結工程のための設備の模式図である。
図2】本発明の熱延鋼板の製造に適用可能な連鋳-圧延直結工程のための設備の他の模式図である。
図3】本発明の一実施例に係る発明例1~15及び比較例1~13に関する関係式1及び2の値を示したグラフである。
図4】本発明の一実施例に係る発明例1を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した微細組織写真である。
図5】本発明の一実施例に係る発明例1を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した微細組織写真であり、(a)はラス(Lath)、(b)は炭化物を示す、
図6】本発明の一実施例に係る発明例1のマルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトのラス幅に対する分布を示したグラフである。
図7】本発明の一実施例に係る発明例1の析出物を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した写真である。
図8】本発明の一実施例に係る比較例8の析出物を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る熱延鋼板について説明する。まず、本発明の合金組成について説明する。下記に説明する合金組成の含有量は、特に断りのない限り、重量%を意味する。
【0016】
C:0.16~0.27%
炭素(C)は、熱間圧延後の急冷時に微細組織をマルテンサイトに製作して強度を増加させる非常に重要な元素である。C含有量が0.16%未満の場合には、マルテンサイト自体の強度が低くて本発明で目標とする強度確保が難しくなる虞がある。これに対し、C含有量が0.27%を超える場合には、溶接性及び過度の強度上昇により曲げ加工性が低下するという問題点がある。したがって、C含有量は0.16~0.27%であることが好ましい。上記C含有量の下限は、0.17%であることがより好ましく、0.18%であることがさらに好ましく、0.19%であることが最も好ましい。上記C含有量の上限は、0.26%であることがより好ましく、0.25%であることがさらに好ましく、0.24%であることが最も好ましい。
【0017】
Mn:0.8~2.6%
マンガン(Mn)は、フェライト形成を抑制し、オーステナイトの安定性を高めて低温変態相の形成を容易にすることで強度を増加させる。Mn含有量が0.8%未満の場合には、本発明で目標とする強度確保が難しくなる虞がある。これに対し、Mn含有量が2.6%を超える場合には、連鋳スラブ及び熱延鋼板の内部または外部、或いはこれら全てにおいて偏析帯を形成させてクラック発生と伝播を誘発し、鋼板の最終品質を低下させて溶接性及び曲げ加工性を劣位にする虞がある。したがって、Mn含有量は0.8~2.6%であることが好ましい。上記Mn含有量の下限は、0.85%であることがより好ましく、0.90%であることがさらに好ましく、0.95%であることが最も好ましい。上記Mn含有量の上限は、2.5%であることがより好ましく、2.4%であることがさらに好ましく、2.3%であることが最も好ましい。
【0018】
Si:0.05~0.3%
ケイ素(Si)は、鋼板の延性を低下させずに強度を確保することができる有用な元素である。また、フェライト形成を促進し、未変態オーステナイトへのC濃縮を助長することにより、マルテンサイト形成を促進する元素である。Si含有量が0.05%未満の場合には、上記の効果を十分に確保することが難い。これに対し、Si含有量が0.3%を超える場合には、鋼板の表面に赤スケールが生成され、酸洗後の鋼板表面に跡が残って表面品質が低下する虞がある。したがって、Si含有量は0.05~0.3%であることが好ましい。上記Si含有量の下限は、0.06%であることがより好ましく、0.07%であることがさらに好ましく、0.08%であることが最も好ましい。上記Si含有量の上限は、0.28%であることがより好ましく、0.26%であることがさらに好ましく、0.24%であることが最も好ましい。
【0019】
Al:0.05%以下
アルミニウム(Al)は、鋼板の表面に濃化されてめっき性を悪化させる一方で、炭化物形成を抑制して鋼の延性を増加させる。更に、鋼中のアルミニウム(Al)は、窒素(N)と反応してAlN析出させるが、薄スラブ製造時にこれら析出物が析出する鋳片冷却条件でスラブクラックを誘発して鋳片または熱延鋼板の品質を低下させる虞がある。したがって、その含有量をできるだけ低く制御する必要があり、0.05%以下に制御することが好ましい。上記Al含有量は0.048%以下であることがより好ましく、0.046%以下であることがさらに好ましく、0.045%以下であることが最も好ましい。
【0020】
Ti:0.01~0.08%
チタン(Ti)は、析出物及び窒化物の形成元素として鋼の強度を増加させる元素である。また、Tiは凝固温度の近くでTiN形成により固溶Nを除去し、AlNなどの析出物量を減少させることで、高温延性の低下を防止し、エッジ(Edge)クラック発生を減少させる元素である。Ti含有量が0.01%未満である場合には、微細なAlNまたはBN析出物が過度に析出することによる鋳造スラブの延性低下を招いてスラブ品質を劣化させる。これに対し、Ti含有量が0.08%を超える場合には、粗大なTiN析出物の形成による結晶粒微細化の効果を期待し難いだけでなく、製造コストが上昇する。したがって、Ti含有量は0.01~0.08%であることが好ましい。上記Ti含有量の下限は、0.012%であることがより好ましく、0.014%であることがさらに好ましく、0.016%であることが最も好ましい。上記Ti含有量の上限は、0.07%であることがより好ましく、0.06%であることがさらに好ましく、0.05%であることが最も好ましい。
【0021】
B:0.001~0.005%
ホウ素(B)は、鋼の硬化能を増加させる元素である。その含有量が0.001%未満の場合、上記効果を得ることができず、0.005%を超えると、オーステナイト再結晶温度を上昇させて溶接性を悪くする。したがって、B含有量は、0.001~0.005%に制限することが好ましい。上記B含有量の下限は、0.0012%であることがより好ましく、0.0014%であることがさらに好ましく、0.0016%であることが最も好ましい。上記B含有量の上限は、0.0045%であることがより好ましく、0.0040%であることがさらに好ましく、0.0035%であることが最も好ましい。
【0022】
Ca:0.001~0.005%
カルシウム(Ca)は、溶鋼中のAl、Oと反応して低融点である球状介在物(12CaO・17Al)を形成してノズルの目詰まり防止と介在物の分離浮上を容易にする元素である。Ca含有量が0.001%未満の場合、上記効果を確保し難い。これに対し、Ca含有量が0.005%を超える場合には、高融点介在物が形成されてノズルの目詰まりを助長することにより鋳造中断が発生する虞があり、大型介在物(>50μm)が形成されて鋼板の加工性を劣位にすることがある。したがって、Ca含有量は、0.001~0.005%に制御することが好ましい。上記Ca含有量の下限は、0.0012%であることがより好ましく、0.0014%であることがさらに好ましく、0.0016%であることが最も好ましい。上記Ca含有量の上限は、0.0045%であることがより好ましく、0.0040%であることがさらに好ましく、0.0035%であることが最も好ましい。
【0023】
N:0.001~0.010%
窒素(N)は、オーステナイト安定化及び窒化物の形成元素である。N含有量が0.001%未満の場合には、上記の効果が不十分になる。これに対し、N含有量が0.010%を超える場合には、析出物の形成元素と反応して析出強化の効果を増加させるが、延性の急激な低下を招く虞がある。したがって、N含有量は0.001~0.010%であることが好ましい。上記N含有量の下限は、0.0012%であることがより好ましく、0.0014%であることがさらに好ましく、0.0016%であることが最も好ましい。上記N含有量の上限は、0.009%であることがより好ましく、0.008%であることがさらに好ましく、0.007%であることが最も好ましい。
【0024】
本発明の残りの成分は、鉄(Fe)である。但し、通常の製造過程では、原料または周囲環境から意図されない不純物が不可避に混入することがあるため、これを排除することはできない。これら不純物は、通常の製造過程の技術者であれば、誰でも分かるものであるため、そのすべての内容を特に本明細書では言及しない。
【0025】
一方、本発明の熱延鋼板は、上記の合金成分のうちC、Mn、B、Al、Ti及びNが下記関係式1~3をそれぞれ満たすことが好ましく、これにより、本発明が目標とする機械的物性及び優れた表面品質を確保することができる。但し、下記関係式1~3に記載された合金成分の含有量は重量%である。
[関係式1]
16≦100(C+Mn/100+B/10)≦28
上記関係式1は、本発明が得ようとする機械的物性を確保するための成分関係式である。上記関係式1の値が16未満の場合には、本発明が目標とする強度を確保し難く、28を超える場合には、延伸率が低下して加工時にクラックが発生する虞がある。したがって、上記関係式1の値は、16~28の範囲を有することが好ましい。上記関係式1の値の下限は、17であることがより好ましく、18であることがさらに好ましく、19であることが最も好ましい。上記関係式1の値の上限は、27であることがより好ましく、26であることがさらに好ましく、25であることが最も好ましい。
【0026】
[関係式2]
1≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]≦14
上記関係式2は、スラブまたはバーのエッジ(Edge)の品質を確保して最終的に得られる熱延鋼板の表面品質を向上させるための成分関係式である。上記関係式2の値が1未満の場合には、TiまたはB含有量が高いか、AlまたはN含有量が低い場合であって、粗大なTi(C、N)及びB(C、N)析出物が過度に析出することによる高温延性の低下を招き、スラブまたはバーのエッジにクラックが発生する虞がある。一方、14を超える場合には、TiまたはB含有量が少ないか、AlまたはN含有量が多い場合であって、AlNが過度に析出して高温延性が低下するのに伴い、スラブまたはバーのエッジ品質が劣化する虞がある。したがって、上記関係式2の値は、1~14の範囲を有することが好ましい。上記関係式2の値の下限は、1.1であることがより好ましく、1.2であることがさらに好ましく、1.3であることが最も好ましい。上記関係式2の値の上限は、13であることがより好ましく、12であることがさらに好ましく、11であることが最も好ましい。
【0027】
[関係式3]
0.05≦[(Al/27)×(N/14)]/[(Ti/48)×(B/11)]/100(C+Mn/100+B/10)≦0.66
上記関係式3は、本発明が目標とする機械的物性及び優れた表面品質を確保するための成分関係式である。上記関係式3の値が0.05未満の場合には、目標とする強度を確保し難くなり、0.66を超える場合には、析出物が過度に析出することによる高温延性の低下を招いてスラブまたはバーのエッジにクラックが生じる虞がある。したがって、上記関係式3の値は0.05~0.66の範囲を有することが好ましい。上記関係式3の値の下限は0.06であることがより好ましく、0.08であることがさらに好ましく、0.10であることが最も好ましい。上記関係式3の値の上限は、0.62であることがより好ましく、0.58であることがさらに好ましく、0.56であることが最も好ましい。
【0028】
一方、本発明の熱延鋼板は、トランプ元素としてNb、V、Ti、Mo、Cu、Cr、Ni、Zn、Se、Sb、Zr、W、Ga、Ge及びMgからなる群から選択された1種以上をその合計が0.1重量%以下の範囲で含むことができる。上記トランプ元素は、製鋼工程で原料として使用する合金鉄またはスクラップや取鍋(Ladle)及びタンディッシュ(Tundish)耐火物などをはじめとする不純物元素であり、その合計が0.1%を超える場合には、薄スラブの表面にクラックを発生して熱延鋼板の表面品質を劣化させる虞がある。
【0029】
本発明の熱延鋼板は、面積分率でマルテンサイト及びオートテンパード(Auto Tempered)マルテンサイトの合計が95%以上であり、フェライトが5%以下(0%を含む)である微細組織を含むことが好ましい。上記マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイト組織は、本発明が目標とする強度を得るための必須組織であり、その分率が95%未満の場合には、強度確保が困難である。本発明では、延性確保のためにフェライトを5%以下の範囲で含むことができるが、但し、その分率が5%を超える場合には、延性は増大するものの、強度確保において困難性を伴う虞がある。他方、上記マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトの合計の分率は96%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることが最も好ましい。
【0030】
本発明の主な微細組織は、マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトであり、このとき、上記マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトのラス粒子の平均幅は、強度及び加工性に影響を及ぼす。このため、上記マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトのラス粒子の平均幅は短軸を基準に1μm以下であることが好ましい。上記マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトのラス粒子の平均幅が1μmを超える場合には、目標とする強度及び加工性を確保し難くなる虞がある。上記マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトのラス粒子の平均幅は狭いほど強度確保に有利であるが、通常の冷却条件で0.1μm未満に制御するのは困難を伴う。上記マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトのラスの平均幅の下限は、0.12μmであることがより好ましく、0.14μmであることがさらに好ましく、0.16μmであることが最も好ましい。上記マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトの平均幅の上限は、0.9μmであることがより好ましく、0.8μmであることがさらに好ましく、0.7μmであることが最も好ましい。
【0031】
本発明の熱延鋼板は、平均サイズが40nm以下であるM(X)(M=Ti、Nb、Si、Al、B、Mg、Cr、Ca、P、X=C、N)の複合析出物を含むことが好ましい。上記複合析出物の平均サイズが40nmを超える場合には、効果的に強度を確保し難い虞があり、エッジクラックが発生してエッジ品質が劣化する虞がある。上記複合析出物の平均サイズは小さいほど強度確保に有利であるが、本発明の製造条件では、5nm未満に制御することが難い。上記複合析出物の平均サイズは、38nm以下であることがより好ましく、34nm以下であることがさらに好ましく、30nm以下であることが最も好ましい。
【0032】
本発明が提供する熱延鋼板は、降伏強度が1060~1400MPaであり、引張強度が1470~1800MPaであり、延伸率が5%以上であり、ビッカース硬度が420~550Hv(0.5kgf)であり、ストリップの幅方向の引張強度ばらつきが100MPa以下であり、ストリップの幅方向のビッカース硬度ばらつきが50Hv(0.5kgf)以下であることが好ましい。また、本発明の熱延鋼板は、厚さが1.6mm以下であることができ、より好ましくは1.4mm以下であり、さらに好ましくは1.3mm以下であり、最も好ましくは1.2mm以下である。本発明の熱延鋼板は、上記のとおり優れた機械的物性及び表面品質と低い材質ばらつきを有することで、超高強度冷延鋼板及び熱間成形鋼を効果的に代替することができる。
【0033】
以下、本発明の熱延鋼板の製造方法の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の熱延鋼板の製造に適用可能な連鋳-圧延直結工程のための設備の模式図である。本発明の一実施形態に係る表面品質に優れ、材質ばらつきが少ない超高強度熱延鋼板は、図1のとおり連鋳-圧延直結設備を使用して生産することができる。連鋳-圧延直結設備は大きく、連続鋳造機100、粗圧延機400、仕上げ圧延機600で構成される。上記連鋳-圧延直結設備は、第1厚さの薄スラブ(Slab)aを生産する高速連続鋳造機100と、上記スラブを第1厚さよりも薄い第2厚さのバー(Bar)bで圧延させる粗圧延機400、第2厚さのバーを第3厚さのストリップcで圧延させる仕上げ圧延機600、上記ストリップを巻取る巻取り機900により製造される。さらに、粗圧延機400の前に粗圧延スケールブレーカー300(Roughing Mill Scale Breaker、以下「RSB」)と、仕上げ圧延機600の前に仕上げ圧延スケールブレーカー500(Fishing Mill Scale Breaker、以下「FSB」)をさらに含むことができ、表面スケール除去が容易であり、後工程で熱延鋼板を酸洗時に表面品質に優れたPO(Pickled&Oiled)鋼板の生産が可能である。また、連鋳-圧延直結工程で等温等速圧延が可能であり、鋼板の幅、長さ方向での温度のばらつきが顕著に少なく、ランアウトテーブル(Run Out Table:ROT)700で精密冷却制御が可能であり、表面品質に優れ、材質ばらつきが少ない超高強度熱延鋼板の生産が可能である。このように圧延及び冷却が完了したストリップは、高速剪断機800によって切断され、巻取り機900によって巻取られて製品として生産される。一方、仕上げ圧延スケールブレーカー500の前にはバーを、またさらに、加熱する加熱器200を備えることもできる。
【0034】
図2は、本発明の熱延鋼板の製造に適用可能な連鋳-圧延直結工程のための設備の他の模式図である。図2に開示した連鋳-圧延直結設備は、図1に開示した設備と構成がほとんど同一であるが、粗圧延機400及び粗圧延スケールブレーカー300の前にスラブをさらに加熱する加熱器200’を備え、スラブエッジ温度の確保を容易にし、エッジの欠陥発生率を低くして表面品質の確保に有利にしたものである。また、粗圧延機の前にスラブ1枚以上の長さ程度の空間を確保しており、バッチ(Batch)式圧延も可能である。
本発明の表面品質に優れ、材質ばらつきが少ない超高強度熱延鋼板は、図1及び2に示した連鋳-圧延直結設備で生産が可能である。
【0035】
以下、本発明の熱延鋼板の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。
まず、上記の合金組成を有する溶鋼を連続鋳造して厚さの薄いスラブを得る。この時、上記連続鋳造は4~8mpm(m/min)以上の鋳造速度で行うことが好ましい。鋳造速度を4mpm以上とする理由は、高速鋳造と圧延過程が連結されて構成され、目標の圧延温度を確保するためには、一定以上の鋳造速度が要求されるためである。鋳造速度が遅い場合、鋳片に偏析が発生する虞があり、このような偏析が発生すると、強度及び加工性の確保が難しいだけでなく、幅方向または長さ方向への材質ばらつきが発生する虞が大きくなる。仮に、8mpmを超える場合には、溶鋼湯面の不安定さによって操業成功率が低下する虞があるため、上記鋳造速度は4~8mpmの範囲を有することが好ましい。上記鋳造速度の下限は、4.2mpmであることがより好ましく、4.4mpmであることがさらに好ましく、4.6mpmであることが最も好ましい。上記鋳造速度の上限は、7.5mpmであることがより好ましく、7.0mpmであることがさらに好ましく、6.5mpmであることが最も好ましい。
【0036】
一方、上記スラブの厚さは80~120mmであることが好ましい。上記スラブの厚さが120mmを超える場合には、高速鋳造が難しいだけでなく、粗圧延時の圧延負荷が増加することになり、80mm未満の場合には、鋳片の温度低下が急激に起こり、均一な組織を形成し難い。これを解決するために付加的に加熱設備を設置することができるが、これは生産コストを向上させる要因となるため、できる限り排除することが好ましい。したがって、スラブの厚さは80~120mmに制御することが好ましい。上記スラブの厚さの下限は、82mmであることがより好ましく、84mmであることがさらに好ましく、86mmであることが最も好ましい。上記スラブの厚さの上限は、116mmであることがより好ましく、114mmであることがさらに好ましく、110mmであることが最も好ましい。
【0037】
また、上記連続鋳造時のモールドフラックスの塩基度は0.8~1.5であることが好ましい。ここで、塩基度は、CaO(%)/SiO(%)比を示す。本発明鋼の場合、高い強度を確保するために、C、Mn及びBなど添加される合金元素が多く、線形クラック活性の危険性が非常に高い。したがって、塩基度が0.8未満のモールドフラックスを使用するようになると、伝熱量が多く、スラブの表面が急冷されることにより線形クラックが発生する虞がある。これに対し、塩基度が1.5を超えるモールドフラックスを使用する場合には、伝熱量が少なすぎて健全な凝固セルを得ることが難しくなる虞がある。したがって、上記連続鋳造時のモールドフラックスの塩基度は0.8~1.5であることが好ましい。上記モールドフラックスの塩基度の下限は、0.85であることがより好ましく、0.90であることがさらに好ましく、0.95であることが最も好ましい。上記モールドフラックスの塩基度の上限は、1.45であることがより好ましく、1.40であることがさらに好ましく、1.35であることが最も好ましい。
【0038】
また、上記連続鋳造時の2次冷却比水量は1.5~2.5L/kgであることが好ましい。上記連続鋳造時の2次冷却比水量が2.5L/kgを超えると、線形クラックが発生してスラブ品質が劣化する虞があり、スラブまたはバーのエッジ温度が低くなってエッジクラック発生の危険性が高くなる。これに対し、上記連続鋳造時の2次冷却比水量が1.5L/kg未満であると、連鋳出側でスラブの未凝固による溶鋼流出などの問題が発生する虞があり、セグメント(Segment)ロールが劣化する虞があるため、設備上の問題が発生することがある。したがって、上記連続鋳造時の2次冷却比水量は1.5~2.5L/kgであることが好ましい。上記連続鋳造時の2次冷却比水量の下限は、1.55L/kgであることがより好ましく、1.60L/kgであることがさらに好ましく、1.65L/kgであることが最も好ましい。上記連続鋳造時の2次冷却比水量の上限は、2.45L/kgであることがより好ましく、2.40L/kgであることがさらに好ましく、2.35L/kgであることが最も好ましい。
【0039】
この後、上記スラブを粗圧延してバー(Bar)を得る。上記粗圧延段階は、連続鋳造されたスラブを2~5個のスタンドで構成された粗圧延機で粗圧延することによって行うことができる。
上記粗圧延時の粗圧延出側でのバーエッジ部の温度は850~1000℃であることが好ましい。上記バーエッジ部の温度が850℃未満の場合には、AlN析出物などが多量に生成され、高温延性が低下するに伴い、エッジクラック発生の危険性が非常に高くなる虞がある。これに対し、上記バーエッジ部の温度が1000℃を超える場合には、バーのエッジ部だけでなく、中心部の温度も高くなりスケールが多量に発生することにより、酸洗後の表面品質が劣化する虞がある。したがって、上記粗圧延時の粗圧延出側でのバーエッジ部の温度は850~1000℃であることが好ましい。上記粗圧延時の粗圧延出側でのバーエッジ部の温度の下限は、860℃であることがより好ましく、870℃であることがさらに好ましく、880℃であることが最も好ましい。上記粗圧延時の粗圧延出側でのバーエッジ部の温度の上限は、990℃であることがより好ましく、980℃であることがさらに好ましく、970℃であることが最も好ましい。
【0040】
上記バーを得る段階の後には、上記バーに冷却水を噴射してスケールを除去する段階をさらに含むことができる。例えば、バーを仕上げ圧延する前に仕上げ圧延スケールブレーカー(Finishing Mill Scale Breaker、以下「FSB」という)のノズルから冷却水を200~300barの圧力で噴射して表面スケールを30μm以下の厚さで除去することができる。上記冷却水噴射圧力が200bar未満の場合には、スケールの除去が不十分になり、仕上げ圧延後の鋼板表面に紡錘形、鱗片形スケールが多量に生成され、酸洗後の表面品質が劣化する。これに対し、上記冷却水の噴射圧力が300barを超える場合には、仕上げ圧延の出側温度が低くなりすぎ、効果的なオーステナイト分率を確保することが難しくなり、目標とする引張強度を確保し難くなる。したがって、上記冷却水の噴射圧力は200~300barであることが好ましい。上記冷却水の噴射圧力の下限は、210barであることがより好ましく、220barであることがさらに好ましく、230barであることが最も好ましい。上記冷却水の噴射圧力の上限は、290barであることがより好ましく、280barであることがさらに好ましく、270barであることが最も好ましい。
【0041】
また、上記冷却水の噴射時、冷却水の重なり(overlap)面積率は5~25%であることが好ましい。上記冷却水の重なり面積率が5%未満である場合、冷却水の重なり面積が小さすぎて、バーの温度が局部的に上昇するようになって幅方向に温度が不均一になることがあり、これによってスケールが完全に削除されず、表面品質が低下する虞があり、最終的に得られる熱延鋼板の幅方向の引張強度のばらつきを100MPa以下に制御することが困難になる虞がある。また、冷却水噴射の重なり面積率が25%を超える場合、局部的に冷却しすぎて幅方向に温度ばらつきが発生して最終的に得られる熱延鋼板の材質ばらつきが大きくなる虞がある。したがって、上記冷却水の噴射時、冷却水の重なり(overlap)面積率は5~25%であることが好ましい。上記冷却水の重なり面積率の下限は、6%であることがより好ましく、7%であることがさらに好ましく、8%であることが最も好ましい。上記冷却水の重なり面積率の上限は、24%であることがより好ましく、23%であることがさらに好ましく、22%であることが最も好ましい。
【0042】
この後、上記バーを仕上げ圧延の出側温度がAr+10℃~Ar+60℃になるように仕上げ圧延して熱延鋼板を得る。上記仕上げ圧延段階は粗圧延機で製作されたバーを3~7個のスタンドからなる仕上げ圧延機で仕上げ圧延することで行うことができる。上記仕上げ圧延の出側温度がAr+10℃未満である場合には、熱間圧延時のロールの負荷が大きく増加するに伴い、エネルギー消費が増加し、作業速度が遅くなり、幅方向の温度ばらつきの発生時に熱延鋼板の温度が局部的にAr以下に下がることで初析フェライトが発生することがあり、冷却後に十分なマルテンサイト分率を得ることができない。これに対し、上記仕上げ圧延の出側温度がAr+60℃を超える場合には、結晶粒が粗大となって高い強度を得ることができない。十分なマルテンサイト分率を得るためには、冷却速度をさらに速くする必要があるという問題がある。したがって、上記仕上げ圧延の出側温度はAr+10℃~Ar+60℃であることが好ましい。上記仕上げ圧延の出側温度の下限はAr+12℃であることがより好ましく、Ar+14℃であることがさらに好ましく、Ar+16℃であることが最も好ましい。上記仕上げ圧延の出側温度の上限は、Ar+58℃であることがより好ましく、Ar+56℃であることがさらに好ましく、Ar+52℃であることが最も好ましい。
【0043】
上記仕上げ圧延時の圧延速度ばらつきは50mpm以下であることが好ましい。本発明で目標とする超高強度鋼は、変態組織の形成を強化機構として利用しているため、仕上げ圧延時の変形速度に応じて材料特性が変わる可能性が非常に高い。すなわち、多数個のスタンドからなる仕上げ圧延機内で圧延速度の差が50mpmを超えると、後続するランアウトテーブル(Run Out Table:ROT)で均一な冷却速度及び目標巻取り温度を確保し難くなり、ストリップ(Strip)の幅または長さ方向の材質ばらつきを大きく発生させる原因となることがある。したがって、上記仕上げ圧延時の圧延速度ばらつきは50mpm以下であることが好ましい。上記仕上げ圧延時の圧延速度ばらつきは48mpm以下であることがより好ましく、46mpm以下であることがさらに好ましく、42mpm以下であることが最も好ましい。一方、本発明では、上記仕上げ圧延時の圧延速度ばらつきが低いほど有利であるため、その下限については特に限定しない。
【0044】
上記仕上げ圧延時の熱延鋼板の幅方向の温度ばらつきは50℃以下であることが好ましい。上記仕上げ圧延時の熱延鋼板の幅方向の温度ばらつきが50℃を超える場合、局部的にオーステナイト分率及び結晶粒サイズの差が発生して材質ばらつきがひどくなることがある。したがって、上記仕上げ圧延時の熱延鋼板の幅方向の温度ばらつきは50℃以下であることが好ましい。上記仕上げ圧延時の熱延鋼板の幅方向の温度ばらつきは48℃以下であることがより好ましく、46℃以下であることがさらに好ましく、42℃以下であることが最も好ましい。一方、本発明では、上記仕上げ圧延時の熱延鋼板の幅方向の温度ばらつきが低いほど有利であるため、その下限については特に限定しない。
【0045】
上記仕上げ圧延時の圧延速度は200~600mpmであることが好ましい。上記仕上げ圧延時の圧延速度が600mpmを超える場合、板破断のような操業事故が起こる可能性があり、等温等速の圧延が難しく、均一な温度が確保されず、材質ばらつきが発生する虞がある。これに対し、上記仕上げ圧延時の圧延速度が200mpm未満になると、仕上げ圧延速度が遅すぎて、本発明が目標とする仕上げ圧延温度を確保し難くなる虞がある。したがって、上記仕上げ圧延時の圧延速度は200~600mpmであることが好ましい。上記仕上げ圧延時の圧延速度の下限は、220mpmであることがより好ましく、250mpmであることがさらに好ましく、280mpmであることが最も好ましい。上記仕上げ圧延時の圧延速度の上限は、580mpmであることがより好ましく、550mpmであることがさらに好ましく、500mpmであることが最も好ましい。
【0046】
この後、上記熱延鋼板をAr直上で200℃/sec以上で冷却し、Mf(90)-50℃以下で巻取る。上記冷却速度が200℃/sec未満の場合には、フェライト及びベイナイトが形成されることがあり、十分なマルテンサイト組織を確保し難い。したがって、上記冷却速度は200℃/sec以上であることが好ましい。上記冷却速度は220℃/sec以上であることがより好ましく、240℃/sec以上であることがさらに好ましく、260℃/sec以上であることが最も好ましい。また、上記巻取り温度がMf(90)-50℃を超える場合には、マルテンサイト組織を得ることが難しいだけでなく、冷却によって得られたマルテンサイト組織が過度にオートテンパリング(Auto Tempering)されて本発明が目標とする引張強度を得ることが難しくなる可能性がある。したがって、上記巻取り温度はMf-50℃以下であることが好ましい。上記巻取り温度はMf-60℃以下であることがより好ましく、Mf-70℃以下であることがさらに好ましく、Mf-80℃以下であることが最も好ましい。一方、上記Mfはオーステナイト組織のマルテンサイトへの変態が100%完了される温度を意味する。
【0047】
一方、上記冷却時の冷却ノズルの間隔は150~400mmであることが好ましい。上記冷却ノズルの間隔が400mmを超える場合には、熱延鋼板の温度が局部的に上昇するようになって材質ばらつきがひどくなることがあり、150mm未満の場合には、熱延鋼板の温度が局部的に低くなって材質ばらつきがひどくなることがある。したがって、上記冷却時の冷却ノズルの間隔は150~400mmであることが好ましい。上記冷却時の冷却ノズルの間隔の下限は、160mmであることがより好ましく、170mmであることがさらに好ましく、180mmであることが最も好ましい。上記冷却時の冷却ノズルの間隔の上限は、380mmであることがより好ましく、360mmであることがさらに好ましく、340mmであることが最も好ましい。
【0048】
上記巻取段階の後には、巻取られた熱延鋼板を酸洗処理する段階をさらに含むことができ、上記酸洗処理によってPO(Pickled&Oiled)材を得ることができる。本発明では、スラブ及びバースケール除去の段階でスケールを十分に除去することができるため、一般的な酸洗処理でも表面品質に優れたPO材を得ることができる。したがって、本発明では、熱延酸洗工程で一般的に用いられる方法であれば、いずれも適用可能であるため、酸洗処理方法について特に制限しない。
【実施例
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示して、より詳細に説明するためのものにすぎず、本発明の権利範囲を限定するためのものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項と、それから合理的に類推される事項によって決定されるものである。
【0050】
(実施例1)
下記表1の合金組成を有する溶鋼を準備した後、連鋳-圧延直結工程を適用して下記表2及び3に記載した製造条件により1.2mm厚の熱延鋼板を製造した。この熱延鋼板を酸洗処理した後、ノズルの目詰まりの有無を観察し、微細組織及び析出物を測定した後、その結果を下記表4に示し、降伏強度(YS)、引張強度(TS)、延伸率(El)、ビッカース硬度(Hv(0.5kgf))、引張強度ばらつき(△TS)及びビッカース硬度ばらつき(△Hv(0.5kgf))とクラック発生の有無を測定した後、その結果を下記表5に示した。一方、表3でのAr及びMf温度は、常用熱力学ソフトウェアであるJmatPro V-8を利用して計算した値である。
微細組織及び析出物は、走査電子顕微鏡(SEM)及び透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。
【0051】
降伏強度、引張強度及び延伸率は、ストリップの全幅[一定間隔(7カ所)]に対して圧延方向に採取したJIS 5号規格の試験片を測定した後、平均値を記載した。
硬度はビッカース硬度機を利用して荷重0.5kgfで10回測定した後、平均値を記載した。
引張強度ばらつき(△TS)及びビッカース硬度ばらつき(△Hv(0.5kgf))は、全幅で測定された値のうち最大値と最小値の差を示す。
クラック発生の有無は、スラブ、バー、及びストリップから肉眼で1次確認し、表面欠陥ディテクター(Detector)のSDD(Surface Defect Detector)装置を用いて2次確認した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
上記表1~5に示したとおり、本発明が提案する合金組成、関係式1~3及び製造条件を全て満たす発明例1~15の場合には、本発明の微細組織及び析出物の条件を満たしていることが分かる。また、線形クラック及びエッジクラックが発生せず、良好な表面品質を確保していることが確認できる。さらに、本発明が目標とする降伏強度、引張強度、延伸率、ビッカース硬度、ストリップの幅方向の引張強度ばらつき及びストリップの幅方向のビッカース硬度ばらつきを確保していることが確認できる。
しかし、本発明が提案する合金組成、関係式1~3及び製造条件(仕上げ圧延の出側温度)のうち一つ以上を満たさない比較例1~12の場合は、エッジクラックが発生したり、本発明が目標とする機械的物性及び材料ばらつきの条件を確保していないことが確認できる。
【0058】
比較例13は、本発明が提案する合金組成のうちCa含有量の範囲を満たさない場合であり、ノズルの目詰まりにより鋳造中断が発生したことが確認できる。
比較例14及び15は、本発明が提案する合金組成、関係式1~3は満たしているが、製造条件(仕上げ圧延の出側温度)を満たさない場合であり、本発明が提案する微細組織が確保できなかったことによって本発明が目標とする機械的物性及び材料ばらつきの条件を確保していないことが確認できる。
【0059】
図3は、発明例1~15と比較例1~13に対する関係式1及び2の値を示したグラフである。発明領域の場合、本発明の関係式3を満たす範囲であって、発明例1~15の場合、上記発明領域に含まれることが確認できるのに対し、比較例1~12の場合には、上記発明領域を外れていることが確認できる。比較例13は、上記発明領域に含まれているが、本発明のCa含有量の範囲を満たさない場合である。
【0060】
図4は、発明例1を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した微細組織写真である。図4に示したとおり、発明例1は、マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトが主組織であり、一部にフェライトが形成されていることが確認できる。
【0061】
図5は本発明の一実施例に係る発明例1を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した微細組織写真であり、(a)はラス(Lath)、(b)は炭化物を示した。図5(a)及び(b)に示したとおり、発明例1は、マルテンサイトのラスが微細によく発達しているだけでなく、マルテンサイトのラス内には微細な炭化物が存在してオートテンパードマルテンサイト組織が一緒に存在していることが確認できる。
【0062】
図6は、発明例1のマルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトのラス幅に対する分布を示したグラフである。図6に示したとおり、発明例1の場合、マルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトのラスは0.05~1.0μm範囲に存在し、0.3μmの幅を有するマルテンサイト及びオートテンパードマルテンサイトのラスが多く存在していることが確認できる。
【0063】
図7及び8は、それぞれ発明例1と比較例8の析出物を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した写真である。このとき、TEM実験片は、カーボンレプリカ方法でサンプルを製作した。図7及び8に示したとおり、発明例1の場合には、40nm以下の微細な複合析出物〔M(X)、ここでMはTi、Nb、Si、Al、B、Mg、Cr、Ca、Pから選択される一つ以上であり、XはC又はNである〕が分布しているのに対し、比較例8の場合には、複合析出物が40nmを超えて非常に粗大であることが確認できる。
【0064】
(実施例2)
発明鋼1の合金組成を有する溶鋼を準備した後、連鋳-圧延直結工程を適用して下記表6に記載した製造条件により1.2mm厚の熱延鋼板で製造した。下記表6に記載した製造条件のほか、スケール除去、仕上げ圧延及び冷却の条件は、上記表2の発明例1の条件と同様に行った。上記で製造された熱延鋼板を酸洗処理した後、線形クラック及びエッジクラックの発生程度を測定した後、その結果を下記表6に示した。
【0065】
【表6】
【0066】
上記表6に示したとおり、本発明が提案する合金組成及び製造条件を満たす発明例16~18は、線形クラック及びエッジクラックが発生しないことが確認できる。
一方、比較例16~19は、本発明が提案する合金組成は満たすが、製造条件のうちモールドフラックスの塩基度、2次冷却比水量及び粗圧延の出側バーエッジ部の温度の条件のうち一つを満たさず、線形クラック及びエッジクラックが発生したことが確認できる。
【0067】
(実施例3)
発明鋼5の合金組成を有する溶鋼を準備した後、連鋳-圧延直結工程を適用して下記表7及び8に記載された製造条件により1.2mm厚の熱延鋼板で製造した。下記表7及び8に記載された製造条件のほか、連続鋳造及び粗圧延の条件は、上記表2の発明例5の条件と同様に行った。上記で製造された熱延鋼板を酸洗処理した後、降伏強度(YS)、引張強度(TS)、延伸率(El)、ビッカース硬度(Hv(0.5kgf))、引張強度ばらつき(△TS)及びビッカース硬度ばらつき(△Hv(0.5kgf))を測定した後、その結果を下記表9に示した。下記表7でのAr及びMf温度は、常用熱力学ソフトウェアであるJmatPro V-8を利用して計算した値である。
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
上記表7~9に示したとおり、本発明が提案する合金組成及び製造条件を満たす発明例19~21は、本発明が目標とする降伏強度、引張強度、延伸率、ビッカース硬度、ストリップの幅方向の引張強度ばらつき及びストリップの幅方向のビッカース硬度ばらつきを確保していることが確認できる。
一方、比較例20~24は、本発明が提案する合金組成は満たすが、製造条件のうち冷却水噴射の重なり面積率、仕上げ圧延時の圧延速度ばらつき、仕上げ圧延時の熱延鋼板の幅方向の温度ばらつき、及び冷却時の冷却ノズルの間隔のうち一つを満たさず、線形クラック及びエッジクラックが発生したことが確認できる。
【符号の説明】
【0072】
100 連続鋳造機
200、200’ 加熱器
300 粗圧延スケールブレーカー(Roughing Mill Scale Breaker:RSB)
400 粗圧延機
500 仕上げ圧延スケールブレーカー(Fishing Mill Scale Breaker:FSB)
600 仕上げ圧延機
700 ランアウトテーブル
800 高速剪断機
900 巻取り機
a スラブ
b バー
c ストリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8