IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-海洋構造物 図1
  • 特許-海洋構造物 図2
  • 特許-海洋構造物 図3
  • 特許-海洋構造物 図4
  • 特許-海洋構造物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】海洋構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/52 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
E02D27/52 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022109513
(22)【出願日】2022-07-07
【審査請求日】2022-07-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】舟竹 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 暢一
(72)【発明者】
【氏名】片山 能輔
(72)【発明者】
【氏名】藤士 尚也
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-017764(JP,A)
【文献】特開2005-299265(JP,A)
【文献】特開2021-130983(JP,A)
【文献】特開2020-007728(JP,A)
【文献】特開2018-138745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭と、
前記鋼管杭の内径よりも小さな外径のジャケット脚と、
前記ジャケット脚に取り付けられる円環状フランジであって、前記鋼管杭の内周面と前記ジャケット脚の外周面との間に形成されるグラウト充填空間の上方に取り付けられる円環状フランジと、
を備える海洋構造物であって、
前記円環状フランジは、前記グラウト充填空間に充填されるグラウトが硬化した後、前記ジャケット脚から取り外される、
ことを特徴とする海洋構造物。
【請求項2】
前記円環状フランジは、リブを介して前記ジャケット脚に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の海洋構造物。
【請求項3】
前記円環状フランジは、前記グラウト充填空間に充填される前記グラウトが硬化した後、前記リブが前記ジャケット脚から切断されることで、前記ジャケット脚から取り外される、
ことを特徴とする請求項2に記載の海洋構造物。
【請求項4】
前記グラウト充填空間から溢れた前記グラウトを受け止めるグラウトシールと、
前記円環状フランジから垂直に立設され、前記グラウトシールを保持するグラウトシール受けプレートと、
を更に備え、
前記グラウトシールは、前記鋼管杭、前記ジャケット脚、前記円環状フランジ、及び、前記グラウトシール受けプレートを覆う、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の海洋構造物。
【請求項5】
前記円環状フランジは、リブを介して前記ジャケット脚に接続され、
前記リブの上端は、水平方向に沿って見て、前記グラウトシール受けプレートから突出している、
ことを特徴とする請求項4に記載の海洋構造物。
【請求項6】
前記ジャケット脚と接続されるブレース、
を更に備え、
前記リブは、前記ジャケット脚を挟んで、前記ブレースと反対側に配置される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の海洋構造物。
【請求項7】
前記ジャケット脚と接続されるブレース、
を更に備え、
前記円環状フランジは、前記鋼管杭の上端と当接する当接部を含み、
前記当接部は、前記円環状フランジの前記当接部以外の部分よりも厚く、
前記当接部は、前記ジャケット脚を挟んで、前記ブレースと反対側に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の海洋構造物。
【請求項8】
前記円環状フランジは、リブを介して前記ジャケット脚に接続され、
前記リブは、第1のリブと、第2のリブと、第3のリブと、第4のリブと、を含み、
前記当接部は、前記第1のリブと前記第2のリブとが配置され、
前記円環状フランジの前記当接部以外の部分は、前記第3のリブと前記第4のリブとが配置され、
前記第1のリブと前記第2のリブとの間隔は、前記第3のリブと前記第4のリブとの間隔よりも狭い、
ことを特徴とする請求項7に記載の海洋構造物。
【請求項9】
前記第3のリブ及び前記第4のリブの板厚は、前記第1のリブ及び前記第2のリブの板厚よりも薄い、
ことを特徴とする請求項8に記載の海洋構造物。
【請求項10】
前記円環状フランジは、前記ジャケット脚に直接溶接されていない、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の海洋構造物。
【請求項11】
鋼管杭と、
前記鋼管杭の内径よりも小さな外径のジャケット脚と、
前記ジャケット脚が挿通可能な穴を有する円環状フランジであって、前記鋼管杭の内周面と前記ジャケット脚の外周面との間に形成されるグラウト充填空間の上方に取り付けられる円環状フランジと、
を備える海洋構造物であって、
前記ジャケット脚に溶接されるリブ、
を更に備え、
前記円環状フランジは、前記リブに溶接され、前記ジャケット脚には溶接されていない、
ことを特徴とする海洋構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋構造物の脚、と海底に打設された杭とを、グラウトにより固定する構造が開示されている。特許文献1では、グラウトの海洋への排出を抑制した海洋構造物が開示されている。特許文献2では、ジャケット杭と基礎杭とを、グラウトが硬化するまでの間一時的に保持する結合システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6824464号公報
【文献】特表2021-505793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造において、グラウトが硬化するまでの間、脚と杭とを仮保持する必要がある。脚と杭とを仮保持するためには、脚と杭との間における応力の伝達が可能な構造が必要である。しかしながら、完成後の海洋構造物に、脚と杭とを仮保持する構造を残す仕様とすると、脚と杭との間における応力の伝達経路が複雑となる。これにより、完成後の海洋構造物を想定した構造計算に手間がかかる課題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、完成後を想定した構造解析を容易に行うことができる海上構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る海洋構造物は、鋼管杭と、前記鋼管杭の内径よりも小さな外径のジャケット脚と、前記ジャケット脚に取り付けられる円環状フランジであって、前記鋼管杭の内周面と前記ジャケット脚の外周面との間に形成されるグラウト充填空間の上方に取り付けられる円環状フランジと、を備える海洋構造物であって、前記円環状フランジは、前記グラウト充填空間に充填されるグラウトが硬化した後、前記ジャケット脚から取り外されることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、円環状フランジは、グラウト充填空間に充填されるグラウトが硬化した後、ジャケット脚から取り外される。グラウトが硬化した後に円環状フランジを取り外すことで、完成状態の海洋構造物について構造解析を行う際、円環状フランジについて考慮することを不要とすることができる。したがって、構造解析を行う際の負担を小さくすることができる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係る海洋構造物は、態様1に係る海洋構造物において、前記円環状フランジは、リブを介して前記ジャケット脚に接続されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、円環状フランジは、リブを介してジャケット脚に接続されている。これにより、円環状フランジとジャケット脚とが直接に接続されている場合等と比較して、円環状フランジをジャケット脚から取り外す作業を容易にすることができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係る海洋構造物は、態様2に係る海洋構造物において、前記円環状フランジは、前記グラウト充填空間に充填される前記グラウトが硬化した後、前記リブが前記ジャケット脚から切断されることで、前記ジャケット脚から取り外されることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、円環状フランジは、グラウト充填空間に充填されるグラウトが硬化した後、リブがジャケット脚から切断されることで、ジャケット脚から取り外される。これにより、円環状フランジをジャケット脚から取り外す作業を容易かつ短時間で行うことができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係る海洋構造物は、態様1から態様3のいずれか1つに係る海洋構造物において、前記グラウト充填空間から溢れた前記グラウトを受け止めるグラウトシールと、前記円環状フランジから垂直に立設され、前記グラウトシールを保持するグラウトシール受けプレートと、を更に備え、前記グラウトシールは、前記鋼管杭、前記ジャケット脚、前記円環状フランジ、及び、前記グラウトシール受けプレートを覆うことを特徴とする。
【0013】
ここで、グラウト充填空間にグラウトを充填する作業において、グラウトがグラウト充填空間から溢れることがある。これに対し、グラウトシールは、鋼管杭、ジャケット脚、円環状フランジ、及び、グラウトシール受けプレートを覆う。これにより、グラウト充填空間から溢れたグラウトが海洋に落下することを防ぐことができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係る海洋構造物は、態様4に係る海洋構造物において、前記円環状フランジは、リブを介して前記ジャケット脚に接続され、前記リブの上端は、水平方向に沿って見て、前記グラウトシール受けプレートから突出していることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、リブの上端は、水平方向に沿って見て、グラウトシール受けプレートから突出している。これにより、例えば、作業者がグラウトシール受けプレートの外側からリブを目視しやすくすることができる。よって、リブ周辺の出来形を確認しやすくすることができる。また、リブを切断して円環状フランジをジャケット脚から取り外す際に、作業者の手がリブに届きやすくすることができる。よって、リブを切断する作業を容易にすることができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係る海洋構造物は、態様2から態様5のいずれか1つに係る海洋構造物において、前記ジャケット脚と接続されるブレース、を更に備え、前記リブは、前記ジャケット脚を挟んで、前記ブレースと反対側に配置されることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、ジャケット脚と接続されるブレースを更に備える。これにより、海洋構造物の強度を向上することができる。ここで、ジャケット脚にブレースが接続されていると、ジャケット脚の周辺で作業を行う際に、作業者の作業を妨げる原因となることがある。これに対し、リブは、ジャケット脚を挟んで、ブレースと反対側に配置される。これにより、リブを切断する際、ブレースの影響を受けることなく作業を行うことができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係る海洋構造物は、態様1から態様6のいずれか1つに係る海洋構造物において、前記ジャケット脚と接続されるブレース、を更に備え、前記円環状フランジは、前記鋼管杭の上端と当接する当接部を含み、前記当接部は、前記円環状フランジの前記当接部以外の部分よりも厚く、前記当接部は、前記ジャケット脚を挟んで、前記ブレースと反対側に配置されることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、円環状フランジは、鋼管杭の上端と当接する当接部を含む。これにより、円環状フランジと鋼管杭とがグラウトによって固定される前の状態においては、ジャケット脚の荷重は、当接部を介して鋼管杭に伝達される。これにより、グラウト充填空間にグラウトが充填される前において、ジャケット脚と鋼管杭とを仮保持することができる。また、当接部は、ジャケット脚を挟んで、ブレースと反対側に配置される。これにより、作業者は、ブレースの影響を受けることなく、当接部の付近で作業を行うことができる。
【0020】
当接部は、円環状フランジの当接部以外の部分よりも厚い。これにより、円環状フランジは、当接部のみが鋼管杭の上端に当接する。また、鋼管杭の上端と、円環状フランジの当接部以外の部分との間には、隙間が生じる。この隙間は、グラウト充填空間の開口部となる。したがって、グラウト充填空間にグラウトが満たされた後は、隙間からグラウトが溢れる。このように、グラウト充填空間からグラウトが溢れるようにすることで、グラウト充填空間にグラウトを満たしやすくすることができる。よって、鋼管杭とジャケット脚とがグラウトによって確実に固定されやすくすることができる。
【0021】
<8>本発明の態様8に係る海洋構造物は、態様7に係る海洋構造物において、前記円環状フランジは、リブを介して前記ジャケット脚に接続され、前記リブは、第1のリブと、第2のリブと、第3のリブと、第4のリブと、を含み、前記当接部は、前記第1のリブと前記第2のリブとが配置され、前記円環状フランジの前記当接部以外の部分は、前記第3のリブと前記第4のリブとが配置され、前記第1のリブと前記第2のリブとの間隔は、前記第3のリブと前記第4のリブとの間隔よりも狭いことを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、当接部は、第1のリブと第2のリブとが配置される。これにより、第1のリブと第2のリブとによって、ジャケット脚の荷重を鋼管杭に伝達することができる。円環状フランジの当接部以外の部分は、第3のリブと第4のリブとが配置される。これにより、第3のリブと第4のリブとによって、当接部以外の部分をジャケット脚に固定することができる。
第1のリブと第2のリブとの間隔は、第3のリブと第4のリブとの間隔よりも狭い。これにより、第1のリブと第2のリブとによって、ジャケット脚の荷重を受け止めやすくすることができる。
【0023】
<9>本発明の態様9に係る海洋構造物は、態様1から態様3のいずれか1つに係る海洋構造物において、前記第3のリブ及び前記第4のリブの板厚は、前記第1のリブ及び前記第2のリブの板厚よりも薄いことを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、第3のリブ及び第4のリブの板厚は、第1のリブ及び第2のリブの板厚よりも薄い。つまり、当接部に配置され、荷重を伝達する第1のリブ及び第2のリブよりも、当接部以外の部分に配置され、荷重を伝達しない第3のリブ及び第4のリブの方が薄い。これにより、第3のリブ及び第4のリブの板厚をより薄くすることができる。したがって、例えば、第3のリブ及び第4のリブを切断する作業を容易にすることができる。更に、第3のリブ及び第4のリブの費用を抑えることができる。
【0025】
<10>本発明の態様10に係る海洋構造物は、態様1から態様9のいずれか1つに係る海洋構造物において、前記円環状フランジは、前記ジャケット脚に直接溶接されていないことを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、円環状フランジは、ジャケット脚に直接溶接されていない。言い換えれば、円環状フランジは、リブのみによってジャケット脚に接続されている。これにより、円環状フランジは、リブを切断することのみによって、ジャケット脚から取り外すことができる。よって、円環状フランジをジャケット脚から取り外す作業を容易にすることができる。
【0027】
<11>本発明の態様11に係る海洋構造物は、鋼管杭と、前記鋼管杭の内径よりも小さな外径のジャケット脚と、前記ジャケット脚が挿通可能な穴を有する円環状フランジであって、前記鋼管杭の内周面と前記ジャケット脚の外周面との間に形成されるグラウト充填空間の上方に取り付けられる円環状フランジと、を備える海洋構造物であって、前記ジャケット脚に溶接されるリブ、を更に備え、前記円環状フランジは、前記リブに溶接され、前記ジャケット脚には溶接されていないことを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、円環状フランジは、リブに溶接され、ジャケット脚には溶接されていない。言い換えれば、円環状フランジは、リブのみによってジャケット脚に溶接されている。これにより、円環状フランジは、リブを切断することのみによって、ジャケット脚から取り外すことができる。よって、円環状フランジをジャケット脚から取り外す作業を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、完成後を想定した構造解析を容易に行うことができる海上構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る海洋構造物を示す側面図である。
図2図1に示す海洋構造物を構成するジャケットを含む縦断面図である。
図3図2に示す海洋構造物の要部の縦断面図である。
図4図2に示す海洋構造物の要部の下面図である。
図5図2に示す海洋構造物の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る海洋構造物10を説明する。
図1から図5に示すように、海洋構造物10は、鋼管杭20と、ジャケット30と、を備えている。なお図1には、海洋構造物10の施工に用いられる作業船85も併せて図示されている。
【0032】
図3に示すように、鋼管杭20は、海底11に打設されている。鋼管杭20は、中空であり、管状である。鋼管杭20は、ジャケット30の後述するジャケット脚31と同数設けられている。鋼管杭20のそれぞれは、海底11においてジャケット脚31が固定される位置に打設されている。鋼管杭20の内部の海底面12(すなわち、海底地盤土の表面)は、鋼管杭20の外部の海底面12よりも低い。海底面12を形成する海底地盤土は、鋼管杭20の内部において削られている。鋼管杭20は、鋼製である。
【0033】
鋼管杭20には、プレート受け21が設けられている。プレート受け21は、ドーナツ状(環状)である。プレート受け21は、鋼管杭20を海底11に打設する前に、鋼管杭20に予め固定されている。
【0034】
プレート受け21には、仕切りプレート22(仕切り部材)が設置されている。プレート受け21は、仕切りプレート22を下方から支持する。仕切りプレート22は、プレート受け21に単に置かれているだけである。すなわち、仕切りプレート22は、プレート受け21に、溶接などによって固定されてはいない。仕切りプレート22の外径は、鋼管杭20の内径よりも小さく、プレート受け21の内径よりも大きい。仕切りプレート22は、後述するグラウト充填空間50の下部に設置される。仕切りプレート22は、鋼製である。
【0035】
図1に示すように、ジャケット30は、固定式の海洋プラットホームである。ジャケット30は、全体として四角錘状に形成されている。ジャケット30は、鋼製である。
ジャケット30は、ジャケット脚31と、デッキ32と、ブレース33と、を備えている。
【0036】
本実施形態において、ジャケット脚31は、4本設けられている。各ジャケット脚31は、中空であり、管状である。
図2に示すように、各ジャケット脚31は、基部34と、本体部35と、を備えている。
基部34は、ジャケット脚31の下端に位置する。基部34は、鋼管杭20の内部に挿入されている。ジャケット脚31のうち、少なくとも基部34の外径は、鋼管杭20の内径よりも小さい。基部34の外径が鋼管杭20の内径よりも小さければ、本体部35の外径は鋼管杭20の内径以上であってもよい。ジャケット脚31の全体の外径が、鋼管杭20の内径よりも小さくてもよい。基部34の下端は、鋼管杭20の外部の海底面12よりも下方に位置している。基部34の上端は、鋼管杭20の外部の海底面12よりも上方に位置している。基部34は、鉛直方向に対して実質的に平行である。
【0037】
図3に示すように、基部34の下端は、ボトムキャップ36によって閉塞されている。ボトムキャップ36には、ガイド37が設けられている。ガイド37は、ボトムキャップ36から下方に突出している。ガイド37は、下方に向けて突となる錘状である。ガイド37は、基部34が鋼管杭20の内部に差し込まれることを案内する。
【0038】
基部34には、円環状フランジ38が設けられている。円環状フランジ38は、環状の部材である。円環状フランジ38は、ジャケット脚31の少なくとも基部34が挿通可能な穴を有する。円環状フランジ38は、例えば、基部34の周囲において複数の円弧状の部材を接続することで形成される。部材の接続は、例えば、溶接によってなされる。前記円弧状の部材同士の接合部は、例えば、ジャケット脚31を挟んで、ブレース33と反対側に設けられることが好ましい。これにより、円環状フランジ38は、基部34の外側から円環状フランジ38を取り付ける。円環状フランジ38は、ジャケット脚31の基部34において、後述するグラウト充填空間50の上方に取り付けられる。円環状フランジ38は、基部34の外周面から径方向の外側に突出している。円環状フランジ38の外径は、鋼管杭20の外径よりも大きい。円環状フランジ38は、鋼管杭20の上端よりも上方に位置している。円環状フランジ38は、鋼管杭20によって下方から支持されている。
【0039】
円環状フランジ38には、グラウトシール受けプレート39が設けられている。グラウトシール受けプレート39は、後述するグラウトシール54を保持する。グラウトシール受けプレート39は、円環状フランジ38の外周縁から垂直に立設される。
【0040】
図2に示すように、本体部35は、基部34の上端から上方に延びている。本体部35は、基部34よりも長い。本体部35は、鉛直方向に対して傾斜している。本体部35は、下方から上方に向かうに従い、ジャケット30の中央に向けて延びている。本体部35の上端は、海水面13よりも上方(海上)に配置されている。本体部35には、本体部35の内部と外部とを連通する図示しない貫通孔が形成されている。貫通孔は、海水面13の近くに形成されている。
【0041】
図1に示すように、デッキ32は、ジャケット30の頂部に設けられている。デッキ32は、4本のジャケット脚31の上端に設けられている。デッキ32は、4本のジャケット脚31によって支持されている。
ブレース33は、ジャケット脚31と接続される。具体的には、ブレース33は、水平方向に隣り合うジャケット脚31を連結する。これにより、ブレース33は、ジャケット30を補強する。ブレース33は、デッキ32よりも下方に位置している。ブレース33は、ジャケット脚31の本体部35を水平方向に連結する。ブレース33は、水平方向に対して傾斜している。ブレース33は、水平方向に隣り合うジャケット脚31の間にたすき掛けされている。ブレース33は、鉛直方向に複数段(図示の例では2段)設けられている。
【0042】
ここで図3に示すように、鋼管杭20の内周面とジャケット脚31の外周面との間には、グラウト充填空間50が形成されている。グラウト充填空間50には、グラウト51が充填される。これにより、ジャケット脚31と鋼管杭20とが固定される。グラウト充填空間50は、全体で4つ形成されている。
【0043】
グラウト充填空間50は、(1)鋼管杭20の内周面、(2)ジャケット脚31(基部34)の外周面、(3)仕切りプレート22の上面、(4)ボトムキャップ36の下面、(5)円環状フランジ38の下面、の間に形成されている。グラウト充填空間50には、グラウト51が注入され、グラウト51が流れる。グラウト充填空間50に注入されたグラウト51が凝固することにより、鋼管杭20とジャケット脚31とが接合される。
【0044】
グラウト充填空間50には、供給管52が接続されている。図1および図2に示すように、供給管52は、海上からグラウト充填空間50にグラウト51を供給する。供給管52は、4つのグラウト充填空間50それぞれに対応して1つずつ設けられている。供給管52は、全体で4つ設けられている。なお図示の例では、供給管52にバルブ53が設けられているが、バルブ53はなくてもよい。
また、グラウト充填空間50には、エマージェンシーホール52aが接続されている。エマージェンシーホール52aは、供給管52の予備として設けられる。すなわち、エマージェンシーホール52aは、何らかの理由により供給管52を用いてグラウト充填空間50にグラウト51を充填することが不可能となった場合に、グラウト充填空間50へのグラウト51の充填を継続できるようにするために設けられる配管である。エマージェンシーホール52aは、ジャケット脚31を挟んで、ブレース33と反対側に設けられることが好ましい。これにより、エマージェンシーホール52aを用いたグラウト51の充填の作業性を向上させることが好ましい。
【0045】
各供給管52は、ジャケット30に設けられている。各供給管52の上端は、デッキ32の上方に位置している。各供給管52は、デッキ32の上方からデッキ32を鉛直方向に貫通した後、ジャケット脚31(本体部35)の上端からジャケット脚31の内部に差し込まれている。各供給管52は、ジャケット脚31に沿って、ジャケット脚31の上端から下端まで延びている。
【0046】
図3に示すように、各供給管52は、ボトムキャップ36を鉛直方向に貫通し、グラウト充填空間50に差し込まれている。各供給管52の下端は、グラウト充填空間50にグラウト51を注入する注入口となっている。各供給管52は、ジャケット脚31の中心軸に対して、ジャケット脚31の径方向にずらされている。供給管52は、ジャケット脚31と同軸ではない。
【0047】
グラウト充填空間50では、供給管52(注入口)から注入されたグラウト51が、ボトムキャップ36と仕切りプレート22との間から鋼管杭20の径方向の外側に広がり、鋼管杭20の内周面とジャケット脚31の外周面との間を通して上昇する(後述する図10も参照)。グラウト充填空間50では、下方の空間が上流であり、上方の空間が下流となる。
【0048】
ジャケット脚31の周囲には、グラウトシール54が設けられている。グラウトシール54は、グラウト充填空間50から溢れたグラウト51を受け止める。グラウトシール54は、鋼管杭20、ジャケット脚31、円環状フランジ38、及び、グラウトシール受けプレート39を径方向の外側から覆う。グラウトシール54は、中空であり、管状である。グラウトシール54は、鋼管杭20やジャケット脚31に比べて軟質な材料によって形成されている。グラウトシール54は、例えば帆布によって形成されたシートである。
【0049】
グラウトシール54の上端は、グラウトシール受けプレート39に固定されている。グラウトシール54の下端は、鋼管杭20に固定されている。グラウトシール54は、グラウトシール受けプレート39や鋼管杭20それぞれに、固定用のベルト55によって固定されている。ベルト55は、グラウトシール受けプレート39や鋼管杭20それぞれの外面との間にグラウトシール54を挟み込んだ状態で、グラウトシール受けプレート39や鋼管杭20に対して外側から締め込まれている。この時、固定用のベルト55のバックルは、例えば、ジャケット脚31を挟んで、ブレース33の反対側に位置するように配置することが好ましい。
【0050】
グラウトシール54の内部は、グラウト充填空間50と連通している。本実施形態では、円環状フランジ38と鋼管杭20の上端との間にライナープレート56が局所的に配置されている。ライナープレート56の下面は、鋼管杭20の上端に当接する。円環状フランジ38において、ライナープレート56が配置されていない領域の下面は、鋼管杭20の上端に、隙間57をあけて対向している。この隙間57が、グラウト充填空間50とグラウトシール54の内部とを連通している。なお、ライナープレート56の厚さや、隙間57の鉛直方向の大きさも、例えば、50~100mmである。
【0051】
図4及び図5に示すように、ライナープレート56は、円環状フランジ38における周方向の一部分に限定して配置されている。言い換えると、円環状フランジ38は、ライナープレート56が設けられた第1領域38aと、ライナープレート56が設けられていない第2領域38bと、を備えている。第1領域38aは、第2領域38bよりも周方向に小さい。ライナープレート56の周方向の大きさは、円環状フランジ38の周方向の大きさの半分以下(半分未満)である。
【0052】
図3に示すように、ライナープレート56は、円環状フランジ38の第1領域38aの下面に固定されている。ライナープレート56の下面は、鋼管杭20の上端に接触している。円環状フランジ38は、ライナープレート56を介して鋼管杭20に支持されている。第1領域38aは、供給管52を間に挟んでジャケット脚31の中心軸の反対側に位置している。言い換えると、第1領域38aは、供給管52に対して径方向の外側に位置している。
【0053】
円環状フランジ38は、当接部を含む。本実施形態において、第1領域38aは、円環状フランジ38の当接部である。当接部は、鋼管杭20の上端と当接する。当接部は、円環状フランジ38の当接部以外の部分よりも厚い。第2領域38bは、円環状フランジ38の当接部以外の部分である。本実施形態において、当接部は、ジャケット脚31を挟んで、ブレース33と反対側に配置される。つまり、ライナープレート56は、ジャケット脚31を挟んで、ブレース33と反対側に配置される。
【0054】
円環状フランジ38は、リブ40を介してジャケット脚31に接続されている。言い換えれば、本実施形態において、円環状フランジ38は、リブ40に接続され、ジャケット脚31には直接接続されていない。円環状フランジ38とリブ40との接続は、例えば、溶接によってされる。リブ40は、円環状フランジ38から上方に突出するように配置される。リブ40は、基部34(ジャケット脚31)の外周面およびグラウトシール受けプレート39の内周面それぞれに連結されている。図示の例では、リブ40は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。リブ40は、第1のリブ41と、第2のリブ42と、第3のリブ43と、第4のリブ44と、を含む。以下、これらを区別しない場合に、リブ40と呼称する。
【0055】
第1のリブ41と第2のリブ42とは、円環状フランジ38における当接部に配置される。つまり、本実施形態において、第1のリブ41と第2のリブ42とは、図3に示すようにライナープレート56の上方に配置される。これにより、ジャケット脚31の荷重は、第1のリブ41及び第2のリブ42を介して当接部に伝達される。当接部に伝達された荷重は、鋼管杭20に伝達される。これにより、第1のリブ41と第2のリブ42とによって、ジャケット脚31を鋼管杭20に仮保持する。また、第1のリブ41と第2のリブ42とは、ジャケット脚31を挟んで、後述するブレース33と反対側に配置される。
【0056】
第3のリブ43と第4のリブ44とは、円環状フランジ38の当接部以外の部分に配置される。これにより、当接部以外の部分において、円環状フランジ38とジャケット脚31との位置がずれることを防ぐ。本実施形態において、第3のリブ43及び第4のリブ44の板厚は、第1のリブ41及び第2のリブ42の板厚よりも薄い。また、図5に示すように、ジャケット脚31の基部34の周方向において、第1のリブ41と第2のリブ42との間隔は、第3のリブ43と第4のリブ44との間隔よりも狭い。
【0057】
本実施形態において、円環状フランジ38は、グラウト充填空間50に充填されるグラウト51が硬化した後、ジャケット脚31から取り外される。
つまり、円環状フランジ38は、海洋構造物10の施工時において、ジャケット脚31と鋼管杭20とを仮保持するためにのみ用いられる。海洋構造物10の完成後は、円環状フランジ38は、例えば、海洋構造物10から完全に取り外される。具体的には、円環状フランジ38は、リブ40がジャケット脚31から切断されることで、ジャケット脚31から取り外される。その後、円環状フランジ38をジャケット脚31の基部34の周方向に沿って複数に分割されることで、ジャケット脚31から完全に取り外される。
なお、本実施形態において、リブ40の上端は、水平方向に沿って見て、グラウトシール受けプレート39から突出している。これにより、リブ40をジャケット30の外側から容易に目視可能とする。
【0058】
円環状フランジ38の第2領域38bの下面は、鋼管杭20の上端に、前記隙間57をあけて対向している。円環状フランジ38は、グラウト充填空間50を流れるグラウト51の一部がグラウトシール54の内部に流れるよう、グラウト充填空間50を流れるグラウト51の流れの向きを変える。すなわち、グラウト充填空間50を流れるグラウト51は、前記隙間57を通して、グラウト充填空間50からグラウトシール54内に流入する。言い換えれば、グラウト充填空間50にグラウト51が満たされた後は、隙間57を通してグラウトシール54内にグラウト51が溢れる。
【0059】
グラウト51は、少なくとも、グラウト充填空間50の上端まで充填されている。さらに本実施形態では、グラウト51は、グラウトシール54の内部にも充填されている。グラウトシール54の内部の一部は、海水であってもよく、海水に希釈されたグラウト51であってもよい。なお、海水に希釈されたグラウト51は、通常のグラウト51よりも比重が低い。
グラウト51としては、経時硬化性の材料が挙げられる。グラウト51としては、例えば、超高強度グラウト材が挙げられる。
【0060】
そして本実施形態では、海洋構造物10には、グラウト充填空間50とジャケット脚31内部とを連通する配管58(通路)が設けられている。配管58は、(1)グラウト充填空間50に充填された海水、又は(2)グラウト充填空間50に注入されたグラウト51であって海水に希釈されたグラウト51(品質が悪いグラウト51)、又は(3)グラウト充填空間50に注入されたグラウト51の一部(グラウト51の上澄みを含む)、をジャケット脚31内部に注入する注入部59として機能する。配管58は、グラウト充填空間50を流れるグラウト51がジャケット脚31内部に流れるよう、当該グラウト51の流れの向きを変更する変更部60としても機能する。
【0061】
配管58は、グラウト充填空間50の上方に設けられている。配管58は、円環状フランジ38に設けられている。言い換えると、円環状フランジ38は、グラウト充填空間50と変更部60との間に設けられている。配管58は、グラウト充填空間50を流れるグラウト51の下流に設けられている。
配管58は、円環状フランジ38の第2領域38bに設けられている。図4に示すように、配管58は、周方向に間隔をあけて複数(図示の例では3つ)設けられている。
【0062】
図3に示すように、各配管58は、第1部分58aと、第2部分58bと、を備えている。第1部分58aは、円環状フランジ38を上下方向に貫通し、グラウト充填空間50に開口している。第1部分58aは、円環状フランジ38から上方に延びている。第2部分58bは、第1部分58aの上端から、ジャケット脚31(基部34)の外周面に延びている。第2部分58bは、ジャケット脚31を水平方向に貫通し、ジャケット脚31の内部に開口している。
各配管58の少なくとも一部は、グラウトシール受けプレート39によって水平方向の外側から覆われている。なお図示の例では、各配管58の上端は、グラウトシール受けプレート39の上端よりも上方に位置している。
【0063】
図4に示すように、円環状フランジ38の第2領域38bには、配管58に加え、エマージェンシーホール61が形成されている。エマージェンシーホール61は、周方向に隣り合う配管58の間に形成されている。エマージェンシーホール61は、グラウト充填空間50に開口している。エマージェンシーホール61には、離脱可能な栓62が嵌め込まれている。栓62は、エマージェンシーホール61を塞いでいる。
【0064】
エマージェンシーホール61は、緊急時に、グラウト充填空間50にグラウト51を注入するための穴である。緊急時としては、例えば、供給管52でグラウト詰まりが発生した場合などが挙げられる。この場合、栓62をエマージェンシーホール61から取り外し、エマージェンシーホール61からグラウト充填空間50にグラウト51を注入する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る海洋構造物10によれば、円環状フランジ38は、グラウト充填空間50に充填されるグラウト51が硬化した後、ジャケット脚31から取り外される。グラウト51が硬化した後に円環状フランジ38を取り外すことで、完成状態の海洋構造物10について構造解析を行う際、円環状フランジ38について考慮することを不要とすることができる。したがって、構造解析を行う際の負担を小さくすることができる。
【0066】
また、円環状フランジ38は、リブ40を介してジャケット脚31に接続されている。これにより、円環状フランジ38とジャケット脚31とが直接に接続されている場合等と比較して、円環状フランジ38をジャケット脚31から取り外す作業を容易にすることができる。
【0067】
また、円環状フランジ38は、グラウト充填空間50に充填されるグラウト51が硬化した後、リブ40がジャケット脚31から切断されることで、ジャケット脚31から取り外される。これにより、円環状フランジ38をジャケット脚31から取り外す作業を容易かつ短時間で行うことができる。
【0068】
ここで、グラウト充填空間50にグラウト51を充填する作業において、グラウト51がグラウト充填空間50から溢れることがある。これに対し、グラウトシール54は、鋼管杭20、ジャケット脚31、円環状フランジ38、及び、グラウトシール受けプレート39を覆う。これにより、グラウト充填空間50から溢れたグラウト51が海洋に落下することを防ぐことができる。
【0069】
また、リブ40の上端は、水平方向に沿って見て、グラウトシール受けプレート39から突出している。これにより、例えば、作業者がグラウトシール受けプレート39の外側からリブ40を目視しやすくすることができる。よって、リブ40周辺の出来形を確認しやすくすることができる。また、リブ40を切断して円環状フランジ38をジャケット脚31から取り外す際に、作業者の手がリブ40に届きやすくすることができる。よって、リブ40を切断する作業を容易にすることができる。
【0070】
また、ジャケット脚31と接続されるブレース33を更に備える。これにより、海洋構造物10の強度を向上することができる。ここで、ジャケット脚31にブレース33が接続されていると、ジャケット脚31の周辺で作業を行う際に、作業者の作業を妨げる原因となることがある。これに対し、リブ40は、ジャケット脚31を挟んで、ブレース33と反対側に配置される。これにより、リブ40を切断する際、ブレース33の影響を受けることなく作業を行うことができる。
【0071】
また、円環状フランジ38は、鋼管杭20の上端と当接する当接部を含む。これにより、円環状フランジ38と鋼管杭20とがグラウト51によって固定される前の状態においては、ジャケット脚31の荷重は、当接部を介して鋼管杭20に伝達される。これにより、グラウト充填空間50にグラウト51が充填される前において、ジャケット脚31と鋼管杭20とを仮保持することができる。また、当接部は、ジャケット脚31を挟んで、ブレース33と反対側に配置される。これにより、作業者は、ブレース33の影響を受けることなく、当接部の付近で作業を行うことができる。
【0072】
当接部は、円環状フランジ38の当接部以外の部分よりも厚い。これにより、円環状フランジ38は、当接部のみが鋼管杭20の上端に当接する。また、鋼管杭20の上端と、円環状フランジ38の当接部以外の部分との間には、隙間が生じる。この隙間は、グラウト充填空間50の開口部となる。したがって、グラウト充填空間50にグラウト51が満たされた後は、隙間からグラウト51が溢れる。このように、グラウト充填空間50からグラウト51が溢れるようにすることで、グラウト充填空間50にグラウト51を満たしやすくすることができる。よって、鋼管杭20とジャケット脚31とがグラウト51によって確実に固定されやすくすることができる。
【0073】
また、当接部は、第1のリブ41と第2のリブ42とが配置される。これにより、第1のリブ41と第2のリブ42とによって、ジャケット脚31の荷重を鋼管杭20に伝達することができる。円環状フランジ38の当接部以外の部分は、第3のリブ43と第4のリブ44とが配置される。これにより、第3のリブ43と第4のリブ44とによって、当接部以外の部分をジャケット脚31に固定することができる。
第1のリブ41と第2のリブ42との間隔は、第3のリブ43と第4のリブ44との間隔よりも狭い。これにより、第1のリブ41と第2のリブ42とによって、ジャケット脚31の荷重を受け止めやすくすることができる。
【0074】
また、第3のリブ43及び第4のリブ44の板厚は、第1のリブ41及び第2のリブ42の板厚よりも薄い。つまり、当接部に配置され、荷重を伝達する第1のリブ41及び第2のリブ42よりも、当接部以外の部分に配置され、荷重を伝達しない第3のリブ43及び第4のリブ44の方が薄い。これにより、第3のリブ43及び第4のリブ44の板厚をより薄くすることができる。したがって、例えば、第3のリブ43及び第4のリブ44を切断する作業を容易にすることができる。更に、第3のリブ43及び第4のリブ44の費用を抑えることができる。
【0075】
また、円環状フランジ38は、ジャケット脚31に直接溶接されていない。言い換えれば、円環状フランジ38は、リブ40のみによってジャケット脚31に接続されている。これにより、円環状フランジ38は、リブ40を切断することのみによって、ジャケット脚31から取り外すことができる。よって、円環状フランジ38をジャケット脚31から取り外す作業を容易にすることができる。
【0076】
また、円環状フランジ38は、リブ40に溶接され、ジャケット脚31には溶接されていない。言い換えれば、円環状フランジ38は、リブ40のみによってジャケット脚31に溶接されている。これにより、円環状フランジ38は、リブ40を切断することのみによって、ジャケット脚31から取り外すことができる。よって、円環状フランジ38をジャケット脚31から取り外す作業を容易にすることができる。
【0077】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、ジャケット脚31にリブ40によって取り付けられた円環状フランジ38は、ジャケット30構造体から除去されずに残置されてもよい。具体的には、例えば、第1のリブ41及び第2のリブ42とジャケット脚31との間を切断する。これにより、施工後の海洋構造物10において、ジャケット脚31と鋼管杭20との間の応力の伝達経路に、円環状フランジ38が含まれなくなる。したがって、ジャケット脚31と鋼管杭20との間における応力の伝達は、硬化後のグラウト51のみを介してされるようになる。このことで、本発明に係る海洋構造物10の作用効果は担保できる。また、この場合において、第1のリブ41及び第2のリブ42とジャケット脚31との間のみに限らず、第3のリブ43及び第4のリブ44とジャケット脚31との間も同時に切断してもよい。
また、円環状フランジ38をジャケット脚31の基部34の周方向に沿って複数に分割する際の補助として、円環状フランジ38を切断容易とするための切れ目を設けてもよい。前記切れ目は、例えば、ジャケット脚31を挟んで、ブレース33と反対側に設けられることが好ましい。
また、円環状フランジ38の当接部は、ライナープレート56を取り付けることで形成されなくてもよい。例えば、円環状フランジ38は、厚さの異なる円弧状の部材を接合することで形成されてもよい。
【0078】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 海洋構造物
20 鋼管杭
30 ジャケット
31 ジャケット脚
33 ブレース
38 円環状フランジ
39 プレート
40 リブ
41 第1のリブ
42 第2のリブ
43 第3のリブ
44 第4のリブ
50 グラウト充填空間
51 グラウト
54 グラウトシール
【要約】
【課題】完成後を想定した構造解析を容易に行うことができる海上構造物を提供する。
【解決手段】本発明の態様1に係る海洋構造物10は、鋼管杭20と、鋼管杭20の内径よりも小さな外径のジャケット脚31と、ジャケット脚31に取り付けられる円環状フランジ38であって、鋼管杭20の内周面とジャケット脚31の外周面との間に形成されるグラウト充填空間50の上方に取り付けられる円環状フランジ38と、を備える海洋構造物10であって、円環状フランジ38は、グラウト充填空間50に充填されるグラウト51が硬化した後、ジャケット脚31から取り外されることを特徴とする。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5