IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-積層体 図1
  • 特許-積層体 図2
  • 特許-積層体 図3
  • 特許-積層体 図4
  • 特許-積層体 図5
  • 特許-積層体 図6
  • 特許-積層体 図7
  • 特許-積層体 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20221201BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221201BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221201BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20221201BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20221201BHJP
   C23C 14/06 20060101ALN20221201BHJP
   C23C 14/12 20060101ALN20221201BHJP
   C23C 14/10 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B7/023
B32B27/00 101
G02B1/18
G02B1/115
C23C14/06 Q
C23C14/12
C23C14/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022536380
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2021026254
(87)【国際公開番号】W WO2022014576
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2020120131
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020146144
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020166844
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020166847
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020190465
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020190468
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020190466
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020191680
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021015316
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸大
(72)【発明者】
【氏名】梨木 智剛
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-301208(JP,A)
【文献】特開2009-139530(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0104891(US,A1)
【文献】特開2018-004921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/000
C23C 14/00-14/58
G02B 1/18
G02B 1/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、防汚層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、
前記防汚層が、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含み、
微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定される前記防汚層のパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークの半値全幅が、0.4Å-1以上であり、
前記防汚層の厚み方向他方面に、プライマー層を備え、
前記プライマー層は、二酸化ケイ素を含む層である、積層体。
【請求項2】
基材層と、防汚層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、
前記防汚層が、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含み、
微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定される前記防汚層のパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークの半値全幅が、0.4Å -1 以上であり、
前記基材層および前記防汚層の間に、さらに、密着層および反射防止層を備え、
前記反射防止層の厚み方向一方面は、二酸化ケイ素を含む層である、積層体。
【請求項3】
前記防汚層は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物が、シロキサン結合を介して、前記プライマー層に形成されている、請求項に記載の積層体。
【請求項4】
前記反射防止層は、互いに異なる屈折率を有する2以上の層からなる、請求項に記載の積層体。
【請求項5】
前記反射防止層は、金属、金属酸化物、金属窒化物からなる群から選択される1種を含む、請求項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関し、詳しくは、防汚層を備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム基材の表面や光学フィルムなどの光学部品の表面に、手垢、指紋などの汚れの付着を防止する観点から、防汚層を形成することが知られている。
【0003】
このような防汚層を備える光学フィルムとして、例えば、フィルム基材と、反射防止層と、防汚層とを順に備える反射防止フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-52221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、防汚層に付着した汚れを拭き取ると、防汚層の防汚性が低下するという不具合がある。
【0006】
本発明は、防汚層に付着した汚れを拭き取った後でも、防汚層の防汚性の低下を抑制できる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、基材層と、防汚層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、前記防汚層が、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含み、微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定される前記防汚層のパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークの半値全幅が、0.4Å-1以上である、積層体である。
【0008】
本発明[2]は、前記防汚層の厚み方向他方面に、プライマー層を備える、上記[1]に記載の積層体を含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記プライマー層は、二酸化ケイ素を含む層である、上記[2]に記載の積層体を含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、前記防汚層は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物が、シロキサン結合を介して、前記プライマー層に形成されている、上記[3]に記載の積層体を含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、前記基材層および前記防汚層の間に、さらに、密着層および反射防止層を備える、上記[1]に記載の積層体を含んでいる。
【0012】
本発明[6]は、前記反射防止層は、互いに異なる屈折率を有する2以上の層からなる、上記[5]に記載の積層体を含んでいる。
【0013】
本発明[7]は、前記反射防止層は、金属、金属酸化物、金属窒化物からなる群から選択される1種を含む、上記[6]に記載の積層体を含んでいる。
【0014】
本発明[8]は、前記反射防止層の厚み方向一方面は、二酸化ケイ素を含む層である、上記[6]または[7]に記載の積層体を含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層体における防汚層は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含む。また、防汚層において、微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定される防汚層のパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークの半値全幅が、0.4Å-1以上である。そのため、防汚層に付着した汚れを拭き取った後でも、防汚層の防汚性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の積層体の第1実施形態の断面図を示す。
図2図2A図2Cは、本発明の積層体の第1実施形態の製造方法の一実施形態を示す。図2Aは、第1工程において、基材を準備する工程を示す。図2Bは、第1工程において、基材に、ハードコート層(機能層)を配置する工程を示す。図2Cは、基材層に、防汚層を配置する第2工程を示す。
図3図3A図3Gは、基材層に堆積するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の説明図を示す。図3Aは、基材層に堆積する、単数のパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の説明図を示す。図3Bは、基材層に堆積する、複数のパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の説明図を示す。図3Cは、防汚層の半値全幅が小さい場合の、基材層に堆積するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の説明図を示す。図3Dは、防汚層の半値全幅が大きい場合の、基材層に堆積するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の説明図を示す。図3Eは、防汚層の積分強度比が小さい場合の、基材層に堆積するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の説明図を示す。図3Fは、防汚層の積分強度比が大きい場合の、基材層に堆積するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の説明図を示す。図3Gは、防汚層の半値全幅が所定の範囲以上であり、かつ、防汚層の積分強度比が、所定の範囲以下である場合の、基材層に堆積するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の説明図を示す。
図4図4は、本発明の積層体の第2実施形態の断面図を示す。
図5図5A図5Dは、本発明の積層体の第2実施形態の製造方法の一実施形態を示す。図5Aは、第3工程において、基材を準備する工程を示す。図5Bは、第3工程において、基材に、ハードコート層(機能層)を配置する工程を示す。図5Cは、基材層に、密着層および光学機能層(反射防止層)を順に配置する第4工程を示す。図5Dは、光学機能層(反射防止層)に、防汚層を配置する第5工程を示す。
図6図6は、本発明の積層体の第1実施形態の変形例(基材層および防汚層の間に、さらに、プライマー層を備える積層体)の断面図を示す。
図7図7は、実施例2の面内回折(インプレーン)測定の結果を示す。
図8図8は、実施例2の面内回折(インプレーン)測定におけるフィッティングの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態
図1を参照して、本発明の積層体の第1実施形態を説明する。
【0018】
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0019】
<積層体>
積層体1は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。積層体1は、厚み方向と直交する面方向に延びる。積層体1は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0020】
図1に示すように、積層体1は、基材層2と、防汚層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。積層体1は、より具体的には、基材層2と、基材層2の上面(厚み方向一方面)に直接配置される防汚層3とを備える。
【0021】
積層体1の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上である。
【0022】
積層体1の厚みは、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下、また、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上である。
【0023】
<基材層>
基材層2は、積層体1の機械強度を確保するための基材である。
【0024】
基材層2は、フィルム形状を有する。基材層2は、防汚層3の下面に接触するように、防汚層3の下面全面に、配置されている。
【0025】
基材層2は、基材4および機能層5を備えている。具体的には、基材層2は、基材4と、機能層5とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0026】
基材層2の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上である。
【0027】
<基材>
基材4は、防汚層3によって、防汚性を付与される被処理体である。
【0028】
基材4は、フィルム形状を有する。基材4は、好ましくは、可撓性を有する。基材4は、機能層5の下面に接触するように、機能層5の下面全面に、配置されている。
【0029】
基材4としては、例えば、高分子フィルムが挙げられる。高分子フィルムの材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、および、ポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリレートが挙げられる。オレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、シクロオレフィンポリマーが挙げられる。セルロース樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロースが挙げられる。高分子フィルムの材料として、好ましくは、セルロース樹脂、より好ましくは、トリアセチルセルロースが挙げられる。
【0030】
基材4の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上、また、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下、より好ましくは、100μm以下である。
【0031】
基材4の厚みは、ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、「DG-205」)を用いて測定することができる。
【0032】
<機能層>
機能層5は、フィルム形状を有する。機能層5は、基材4の厚み方向一方面に配置されている。
【0033】
機能層5としては、例えば、ハードコート層が挙げられる。
【0034】
このような場合には、基材層2は、基材4と、ハードコート層とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0035】
以下の説明では、機能層5がハードコート層である場合について、説明する。
【0036】
ハードコート層は、基材4に傷が発生することを抑制するための保護層である。
【0037】
ハードコート層は、例えば、ハードコート組成物から形成される。
【0038】
ハードコート組成物は、樹脂、および、必要により、粒子を含む。つまり、ハードコート層は、樹脂、および、必要により、粒子を含む。
【0039】
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、および、硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0040】
硬化性樹脂としては、例えば、活性エネルギー線(例えば、紫外線、および、電子線)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、および、加熱により硬化する熱硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂としては、好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
【0041】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、および、有機シラン縮合物が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、好ましくは、(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
【0042】
また、樹脂は、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を含むことができる。具体的には、樹脂は、多官能(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0043】
樹脂は、単独使用または2種以上併用できる。
【0044】
粒子としては、例えば、金属酸化物微粒子および有機系微粒子が挙げられる。金属酸化物微粒子の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、および、酸化アンチモンが挙げられる。有機系微粒子の材料としては、ポリメチルメタクリレート、シリコーン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル-スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、および、ポリカーボネートが挙げられる。有機系微粒子としては、好ましくは、ポリメチルメタクリレートが挙げられる。
【0045】
粒子をハードコート層に含ませる目的は、例えば、防眩性付与、密着性向上、硬度向上、屈折率調整などである。
【0046】
粒子は、単独使用または2種以上併用できる。
【0047】
また、ハードコート組成物には、必要により、チキソトロピー付与剤(例えば、有機粘土)、光重合開始剤、充填剤、および、レベリング剤を適宜の割合で配合することができる。また、ハードコート組成物は、公知の溶剤で希釈することができる。
【0048】
また、ハードコート層を形成するには、詳しくは後述するが、ハードコート組成物の希釈液を基材4の厚み方向一方面に塗布し、必要により加熱して、乾燥させる。乾燥後、例えば、活性エネルギー線照射、または、加熱により、ハードコート組成物を硬化させる。
【0049】
これにより、ハードコート層を形成する。
【0050】
ハードコート層の厚みは、1μm以上、また、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0051】
<防汚層>
防汚層3は、基材層2の厚み方向一方側に対して、垢、指紋などの汚れの付着を防止するための層である。
【0052】
防汚層3は、フィルム形状を有する。防汚層3は、基材層2の上面全面に、基材層2の上面に接触するように、配置されている。
【0053】
防汚層3は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物から形成されている。換言すれば、防汚層3は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含み、好ましくは、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物からなる。
【0054】
パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
-R-X-(CH)-Si(OR) (1)
【0055】
一般式(1)において、Rは、アルキル基における一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換された、直鎖状または分岐状のフッ化アルキル基(炭素数は例えば1以上20以下)を表し、好ましくは、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基を表す。
【0056】
は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)基の繰り返し構造を少なくとも一つ含む構造を表し、好ましくは、PFPE基の繰り返し構造を二つ含む構造を表す。PFPE基の繰り返し構造としては、例えば、直鎖状PFPE基の繰り返し構造、および、分岐状PFPE基の繰り返し構造が挙げられる。直鎖状PFPE基の繰り返し構造としては、例えば、-(OC2n)-で表される構造(nは、1以上20以下の整数を表し、pは、1以上50以下の整数を表す。以下同じ)が挙げられる。分岐状PFPE基の繰り返し構造としては、例えば、-(OC(CF))-で表される構造、および、-(OCFCF(CF)CF)-で表される構造が挙げられる。PFPE基の繰り返し構造としては、好ましくは、直鎖状PFPE基の繰り返し構造が挙げられ、より好ましくは、-(OCF)-および-(OC)-が挙げられる。
【0057】
は、炭素数1以上4以下アルキル基を表し、好ましくはメチル基を表す。
【0058】
Xは、エーテル基、カルボニル基、アミノ基、またはアミド基を表し、好ましくはエーテル基を表す。
【0059】
mは、1以上の整数を表す。また、mは、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下の整数を表す。
【0060】
このようなパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物のうち、好ましくは、下記の一般式(2)に示される化合物が用いられる。
【0061】
CF-(OCF)-(OC)-O-(CH)-Si(OCH) (2)
【0062】
一般式(2)において、qは、1以上50以下の整数を表し、rは、1以上50以下の整数を表す。
【0063】
パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物は、市販品を用いることもでき、具体的には、オプツールUD509(上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物、ダイキン工業社製)、オプツールUD120(ダイキン工業株式会社製)、および、KY1903-1(信越化学製)が挙げられる。
【0064】
パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物は、単独使用または2種以上併用することができる
【0065】
防汚層3は、後述する方法により形成される。
【0066】
防汚層3の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、また、例えば、30nm以下、好ましくは、20nm以下、より好ましくは、15nm以下、さらに好ましくは、10nm以下である。
【0067】
防汚層3の厚みは、蛍光X線(リガク製 ZXS PrimusII)で測定する事ができる。
【0068】
そして、防汚層3の、後述する微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定されるパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークの半値全幅は、0.4Å-1以上、好ましくは、0.45Å-1以上、より好ましくは、0.5Å-1以上、さらに好ましくは、0.55Å-1以上、また、例えば、0.8Å-1以下である。
【0069】
また、上記パーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピーク(ピークA4(後述する実施例で詳述))は、波数1.5~2.0Å-1の間に観測される。
【0070】
また、好ましくは、後述する試験により測定される積分強度比が、例えば、0.78以下、好ましくは、0.60以下、より好ましくは、0.50以下、さらに好ましくは、0.40以下、とりわけ好ましくは、0.35以下、最も好ましくは、0.30以下である。
【0071】
上記半値全幅および上記積分強度比は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の種類、後述する第2工程における基材層2に対する表面処理方法(その表面処理方法がプラズマ処理である場合には、プラズマ処理に用いるガスの種類)、および、その表面処理方法がプラズマ処理である場合におけるプラズマ処理の出力電力を調整することで、上記所定値以上または上記所定値以下に調整することができる。
【0072】
また、後述する微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定されるラメラ積層構造を示すピークの半値全幅は、例えば、0.0Å-1以上、また、例えば、1.0Å-1以下である。
【0073】
また、上記したラメラ構造を示すピーク(ピークA1(後述する実施例で詳述))は、波数0.2~1.0Å-1の間に観測される。
【0074】
後述する微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定されるラメラ積層構造を示すピークの、後述する微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定されるパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークに対する強度比(後述する微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定されるラメラ積層構造を示すピーク/後述する微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定されるパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピーク)は、例えば、0以上、また、例えば、1.0以下である。
【0075】
なお、面内回折(インプレーン)測定(半値全幅および積分強度)の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0076】
また、防汚層3の水接触角は、例えば、100°以上、好ましくは、105°以上、また、例えば、130°以下である。
【0077】
防汚層3の水接触角が、上記下限以上であれば、防汚層5の防汚性を向上できる。
【0078】
なお、防汚層3の水接触角の測定方法については、後述する実施例で詳述する。
【0079】
<積層体の製造方法>
図2A図2Cを参照して、積層体1の製造方法を説明する。
【0080】
積層体1の製造方法の製造方法は、基材層2を準備する第1工程と、基材層2に、防汚層3を配置する第2工程とを備える。また、この製造方法では、各層を、例えば、ロールトゥロール方式で、順に配置する。
【0081】
<第1工程>
第1工程では、図2Aに示すように、まず、基材4を準備する。
【0082】
次いで、図2Bに示すように、基材4の厚み方向一方面に、ハードコート組成物の希釈液を塗布し、乾燥後、紫外線照射または加熱により、ハードコート組成物を硬化させる。
これにより、基材4の厚み方向一方面に、ハードコート層(機能層5)を配置(形成)する。これにより、基材層2を準備する。
【0083】
<第2工程>
第2工程では、図2Cに示すように、基材層2に、防汚層3を配置する。具体的には、基材層2の厚み方向一方面に、防汚層3を配置する。
【0084】
基材層2に防汚層3を配置するには、まず、基材層2の表面に、基材層2および防汚層3の密着性の向上の観点から、例えば、表面処理を施す。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、および、ケン化処理が挙げられ、好ましくは、プラズマ処理が挙げられる。
【0085】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスによるプラズマ処理、および、酸素ガスによるプラズマ処理が挙げられ、好ましくは、酸素ガスによるプラズマ処理が挙げられる。また、プラズマ処理の出力電力は、例えば、80W以上、また、例えば、150W以下である。
【0086】
そして、基材層2に防汚層3を配置する方法としては、例えば、ドライコーティング法、および、ウェットコーティング法が挙げられ、好ましくは、上記積分強度比を所定値以下に調整する観点から、ドライコーティング法が挙げられる。ドライコーティング法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、および、CVDが挙げられ、好ましくは、真空蒸着法が挙げられる。
【0087】
真空蒸着法は、真空チャンバー内に蒸着源(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)および基材層2(機能層5)を対向配置し、蒸着源を加熱し、蒸発または昇華させて、蒸発または昇華した蒸着源を基材層2(機能層5)の表面に堆積させる。
【0088】
真空蒸着法において、蒸着源(るつぼ)の温度は、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上、また、例えば、300℃以下である。
これにより、基材層2の厚み方向一方面に防汚層3を配置し、基材層2と、防汚層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える積層体1が製造される。
【0089】
<作用効果>
この積層体1において、防汚層3の、微小角入射X線回折法における面内回折測定により測定されるパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークの半値全幅は、0.4Å-1以上である。
【0090】
上記半値全幅が、上記下限以上であれば、防汚層3に付着した汚れを拭き取った後でも、防汚層3の防汚性の低下を抑制できる(防汚耐久性に優れる。)
【0091】
詳しくは、上記第2工程において、図3Aに示すように、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物20は、基材層2の厚み方向一方面に堆積する。このようなパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物20は、基材層2に対して配向する。具体的には、基材層2に対して垂直に配向したアルコキシシラン化合物20A、基材層2に対して傾いて配向したアルコキシシラン化合物20B、および、基材層2に対して平行に配向したアルコキシシラン化合物20Cが挙げられる。
【0092】
また、図3Bに示すように、同一方向に配向する複数の、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物20は堆積し、群21を構成する。具体的には、基材層2に対して垂直に配向した、複数のアルコキシシラン化合物20Aを備える群21A、基材層2に対して傾いて配向した、複数のアルコキシシラン化合物20Bを備える群21B、および、基材層2に対して平行に配向した、複数のアルコキシシラン化合物20Cが挙げられる。
【0093】
そして、上記半値全幅は、相関長の逆数を示す。つまり、1つ1つの群21の領域22の大きさ(換言すれば、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物のフルオロアルキル基が、周期的に整列している量)を示す指標である。
【0094】
そのため、半値全幅が小さくなると、図3Cに示すように、1つ1つの群21の領域22の大きさが大きくなることを意味する。一方、半値全幅が大きくなると、図3Dに示すように、1つ1つの群21の領域22の大きさが、小さくなることを意味する。
【0095】
そして、この防汚層3の半値全幅は、0.4Å-1以上である。つまり、図3Cに示すように、1つ1つの群21の領域22の大きさが、相対的に小さい。そうすると、防汚層3に付着した汚れを拭き取った後でも、防汚層3の防汚性の低下を抑制できる(防汚耐久性に優れる。)。
【0096】
また、この積層体1において、好ましくは、防汚層3は、後述する試験により測定される積分強度比が、好ましくは、0.78以下である。
【0097】
詳しくは、試験では、防汚層3について、微小角入射X線回折法における面内回折(インプレーン)測定により、ラメラ構造(ラメラが基材層2に対して平行に配向した構造)に帰属されるピークの積分強度(第1インプレーン回折積分強度)を測定する。別途、防汚層について、微小角入射X線回折法における面内回折測定により、パーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークの積分強度(第2インプレーン回折積分強度)を測定する。得られた第1インプレーン回折積分強度および第2インプレーン回折積分強度に基づいて、第1インプレーン回折積分強度の、第2インプレーン回折積分強度に対する積分強度比(第1インプレーン回折積分強度/第2インプレーン回折積分強度)を算出する。
【0098】
積分強度比は、防汚層3において、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物のフルオロアルキル基が、周期的に面内方向に整列している量(以下、整列量と称する場合がある。)の指標である。積分強度比が小さくなると、図3Eに示すように、整列量が多くなることを意味する。一方、積分強度比が大きくなると、図3Fに示すように、整列量が少なくなることを意味する。
【0099】
そして、上記したように、このような積分強度比は、第1インプレーン回折積分強度を、第2インプレーン回折積分強度で除することにより算出される。
【0100】
第2インプレーン回折積分強度は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物のパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークの積分強度である。第2インプレーン回折積分強度が大きくなると、整列量が多くなることを意味する。そうすると、このような第2インプレーン回折積分強度を、整列量の指標として、そのまま用いることも検討される。
【0101】
しかし、微小角入射X線回折測定において、試料の僅かな差によって、バックグラウンド値が測定毎に変化するため、第2インプレーン回折積分強度も、測定毎に変化する。そのため、第2インプレーン回折積分強度の絶対値を、そのまま指標とすると、整列量を画一的に求めることができない。
【0102】
そこで、第1インプレーン回折積分強度を、第2インプレーン回折積分強度で除することにより、第2インプレーン回折積分強度を、第1インプレーン回折積分強度に対する相対値である積分強度比として示す。これにより、整列量を画一的に求めることができる。
【0103】
積分強度比が、上記上限以下であれば、整列量が多くなる。そうすると、防汚層3に付着した汚れを拭き取った後でも、防汚層3の防汚性の低下を抑制できる(防汚耐久性に優れる。)。
【0104】
以上より、防汚層3の上記半値全幅は、0.4Å-1以上であり、好ましくは、積分強度比が、0.78以下である。すなわち、好ましくは、図3Gに示すように、群21の領域22の大きさは小さく、かつ、群21の領域22の量は多い態様である。
【0105】
また、防汚耐久性は、後述する実施例で詳述する防汚耐久性試験によって評価することができる。具体的には、防汚耐久性試験によって得られる接触角の変化量が、例えば、30°以下、好ましくは、23°以下、より好ましくは、15°以下であれば、防汚層3は、防汚耐久性に優れる。
【0106】
2.第2実施形態
図4を参照して、本発明の積層体の第2実施形態を説明する。
【0107】
なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第2実施形態は、特記する以外、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態および第2実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0108】
<積層体>
図4に示すように、積層体1は、基材層2と、密着層6と、光学機能層7と、防汚層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。積層体1は、より具体的には、基材層2と、基材層2の上面(厚み方向一方面)に直接配置される密着層6と、密着層6の上面(厚み方向一方面)に直接配置される光学機能層7と、光学機能層7の上面(厚み方向一方面)に直接配置される防汚層3とを備える。
【0109】
積層体1の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上である。
【0110】
積層体1の厚みは、例えば、250μm以下、好ましくは、200μm以下、また、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上である。
【0111】
<基材層>
基材層2は、積層体1の機械強度を確保するための基材である。
【0112】
基材層2は、フィルム形状を有する。基材層2は、光学機能層7の下面に接触するように、光学機能層7の下面全面に、配置されている。
【0113】
基材層2は、第1実施形態における基材層2と同様に、基材4および機能層5を備えている。
【0114】
基材層2の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上である。
【0115】
<基材>
基材4は、フィルム形状を有する。基材4は、好ましくは、可撓性を有する。基材4は、機能層5の下面に接触するように、機能層5の下面全面に、配置されている。
【0116】
基材4としては、第1実施形態における基材4と同様の基材が挙げられ、好ましくは、セルロース樹脂、より好ましくは、トリアセチルセルロースが挙げられる。
【0117】
基材4の厚みは、第1実施形態における基材4の厚みと同様である。
【0118】
<機能層>
機能層5は、フィルム形状を有する。機能層5は、基材4の厚み方向一方面に配置されている。
【0119】
機能層5としては、例えば、第1実施形態と同様のハードコート層が挙げられる。
【0120】
このような場合には、基材層2は、基材4と、ハードコート層とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0121】
ハードコート層の厚みは、第1実施形態におけるハードコート層の厚みと同様である。
【0122】
<密着層>
密着層6は、基材層2と、光学機能層7との間の密着力を確保するための層である。
【0123】
密着層6は、フィルム形状を有する。密着層6は、基材層2(機能層5)の上面全面に、基材層2(機能層5)の上面に接触するように、配置されている。
【0124】
密着層6の材料としては、例えば、金属が挙げられる。金属としては、例えば、インジウム、シリコン、ニッケル、クロム、アルミニウム、錫、金、銀、白金、亜鉛、チタン、タングステン、ジルコニウム、および、パラジウムが挙げられる。また、密着層6の材料としては、上記金属の2種類以上の合金、および、上記金属の酸化物も挙げられる。
【0125】
密着層6の材料として、密着性および透明性の観点から、好ましくは、酸化シリコン(SiOx)および、インジウムスズ酸化物(ITO)が挙げられる。密着層6の材料として酸化シリコンが用いられる場合、好ましくは、化学量論組成よりも酸素量の少ないSiOxが用いられ、より好ましくは、xが1.2以上1.9以下のSiOxが用いられる。密着層6の材料として、より好ましくは、インジウムスズ酸化物(ITO)が挙げられる。
【0126】
密着層6の厚みは、基材層2と、光学機能層7との間の密着力の確保、および、密着層6の透明性の両立の観点から、例えば、1nm以上、また、例えば、10nm以下である。
【0127】
<光学機能層>
第2実施形態では、光学機能層7は、外光の反射強度を抑制するための反射防止層である。
【0128】
以下の説明では、光学機能層7が、反射防止層である場合について詳述する。
【0129】
反射防止層は、互いに異なる屈折率を有する2以上の層を有する。具体的には、反射防止層は、相対的に屈折率が大きな高屈折率層と、相対的に屈折率が小さな低屈折率層とを、厚み方向に交互に有する。反射防止層では、それに含まれる複数の薄層(高屈折率層、低屈折率層)における複数の界面での反射光間の干渉作用により、正味の反射光強度が減衰される。また、反射防止層では、各薄層の光学膜厚(屈折率と厚みとの積)の調整により、反射光強度を減衰させる干渉作用を発現させることができる。このような反射防止層は、第1高屈折率層11と、第1低屈折率層12と、第2高屈折率層13と、第2低屈折率層14とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0130】
反射防止層(具体的には、高屈折率層および低屈折率層)は、好ましくは、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、および、金属フッ化物からなる群から選択される1種を含み、より好ましくは、金属、金属酸化物、および、金属窒化物からなる群から選択される1種を含む。これにより、反射防止層は、外光の反射強度を抑制できる。
【0131】
金属としては、例えば、ケイ素、ニッケル、クロム、アルミニウム、錫、金、銀、白金、亜鉛、チタン、タングステン、ジルコニウム、ニオブ、および、パラジウムが挙げられる。合金としては、例えば、上記金属の合金が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、上記金属の金属酸化物が挙げられる。金属窒化物としては、例えば、上記金属の金属窒化物が挙げられる。金属フッ化物としては、例えば、上記金属の金属フッ化物の金属窒化物が挙げられる。
【0132】
とりわけ、反射防止層に用いられる材料は、所望する屈折率に応じて選択される。
【0133】
具体的には、第1高屈折率層11および第2高屈折率層13は、それぞれ、波長550nmにおける屈折率が好ましくは1.9以上の高屈折率材料からなる。高屈折率と可視光の低吸収性との両立の観点から、高屈折率材料としては、例えば、酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、インジウムスズ酸化物(ITO)、および、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)が挙げられ、好ましくは、酸化ニオブが挙げられる。つまり、好ましくは、第1低屈折率層12の材料および第2低屈折率層14の材料が、ともに酸化ニオブである。
【0134】
第1低屈折率層12および第2低屈折率層14は、それぞれ、波長550nmにおける屈折率が好ましくは1.6以下の低屈折率材料からなる。低屈折率と可視光の低吸収性との両立の観点から、低屈折率材料としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO)、および、フッ化マグネシウム、好ましくは、二酸化ケイ素が挙げられる。つまり、好ましくは、第1低屈折率層12の材料および第2低屈折率層14の材料が、ともに二酸化ケイ素である。
【0135】
とりわけ、第2低屈折率層14の材料が、二酸化ケイ素であれば(換言すれば、反射防止層の厚み方向一方面が、二酸化ケイ素を含む層であれば)、第2低屈折率層14と、防汚層3との間の密着性に優れる。
【0136】
また、反射防止層において、第1高屈折率層11の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、また、例えば、30nm以下、好ましくは、20nm以下である。第1低屈折率層12の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは20nm以上、また、例えば、50nm以下、好ましくは、30nm以下である。第2高屈折率層13の厚みは、例えば、50nm以上、好ましくは、80nm以上、また、例えば、200nm以下、好ましくは、150nm以下である。第2低屈折率層14の厚みは、例えば、60nm以上、好ましくは、80nm以上、また、例えば、150nm以下、好ましくは、100nm以下である。
【0137】
第2高屈折率層13の厚みに対する第2低屈折率層14の厚みの比(第2低屈折率層14の厚み/第2高屈折率層13の厚み)は、例えば、0.5以上、好ましくは、0.7以上、また、例えば、0.9以下である。
【0138】
第1高屈折率層11の厚みに対する第2高屈折率層13の厚みの比(第2高屈折率層13の厚み/第1高屈折率層11の厚み)は、例えば、5以上、好ましくは、7以上、また、例えば、15以下、好ましくは、10以下である。
【0139】
第1低屈折率層12の厚みに対する第2低屈折率層14の厚みの比(第2低屈折率層14の厚み/第1低屈折率層12の厚み)は、例えば、1以上、好ましくは、3以上、また、例えば、10以下、好ましくは、8以下である。
【0140】
反射防止層は、後述する方法により形成される。
【0141】
反射防止層の厚みは、例えば、100nm以上、好ましくは、150nm以上、また、例えば、300nm以下、好ましくは、250nm以下である。
【0142】
反射防止層の厚みは、断面TEM観察により測定できる。
【0143】
<防汚層>
防汚層3は、フィルム形状を有する。防汚層3は、光学機能層7(反射防止層)の上面全面に、光学機能層7(反射防止層)の上面に接触するように、配置されている。
【0144】
防汚層3は、上記したパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物(好ましくは、上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)から形成されている。換言すれば、防汚層3は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含み、好ましくは、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物からなる。
【0145】
防汚層3は、後述する方法により形成される。
【0146】
防汚層3の厚み、半値全幅、積分強度比、および、水接触角は、第1実施形態における防汚層3の厚み、半値全幅、積分強度比、および、水接触角と同様である。
【0147】
半値全幅および積分強度は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物の種類、後述する第5工程における光学機能層7(反射防止層)に対する表面処理方法(その表面処理方法がプラズマ処理である場合には、プラズマ処理に用いるガスの種類)、および、その表面処理方法がプラズマ処理である場合におけるプラズマ処理の出力電力を調整することで、上記所定値以上または上記所定値以下に調整することができる。
【0148】
<積層体の製造方法>
図5A図5Dを参照して、積層体1の製造方法を説明する。
【0149】
積層体1の製造方法の製造方法は、基材層2を準備する第3工程と、基材層2に、密着層6および光学機能層7(反射防止層)を順に配置する第4工程と、光学機能層7(反射防止層)に、防汚層3を配置する第5工程とを備える。また、この製造方法では、各層を、例えば、ロールトゥロール方式で、順に配置する。
【0150】
<第3工程>
第3工程では、図5Aに示すように、まず、基材4を準備する。
【0151】
次いで、図5Bに示すように、基材4の厚み方向一方面に、ハードコート組成物の希釈液を塗布し、乾燥後、紫外線照射または加熱により、ハードコート組成物を硬化させる。
これにより、基材4の厚み方向一方面に、ハードコート層(機能層5)を配置(形成)する。これにより、基材層2を準備する。
【0152】
<第4工程>
第4工程では、図5Cに示すように、基材層2に、密着層6および光学機能層7(反射防止層)を順に配置する。具体的には、基材層2の厚み方向一方面に、密着層6および光学機能層7(反射防止層)を順に配置する。
【0153】
より具体的には、基材層2に、密着層6と、第1高屈折率層11と、第1低屈折率層12と、第2高屈折率層13と、第2低屈折率層14とを厚み方向一方側に向かって順に配置する。
【0154】
つまり、この方法では、第4工程は、基材層2に密着層6を配置する密着層配置工程と、密着層6に第1高屈折率層11を配置する第1高屈折率層配置工程と、第1高屈折率層11に第1低屈折率層12を配置する第1低屈折率層配置工程と、第1低屈折率層12に第2高屈折率層13を配置する第2高屈折率層配置工程と、第2高屈折率層13に第2低屈折率層14を配置する第2低屈折率層配置工程とを備える。また、この製造方法では、各層を、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、ラミネート法、めっき法、イオンプレーティング法、好ましくは、スパッタリング法で、順に配置する。
【0155】
以下、スパッタリング法で各層を順に配置する方法について詳述する。
【0156】
この方法では、まず、基材層2の表面に、基材層2および密着層6の密着性の向上の観点から、例えば、表面処理を施す。表面処理としては、上記第2工程で挙げた表面処理が挙げられ、好ましくは、プラズマ処理が挙げられる。
【0157】
そして、スパッタリング法では、真空チャンバー内にターゲット(各層(密着層6、第1高屈折率層11、第1低屈折率層12、第2高屈折率層13、および、第2低屈折率層14)の材料)および基材層2を対向配置し、ガスを供給するとともに電源から電圧を印加することによりガスイオンを加速しターゲットに照射させて、ターゲット表面からターゲット材料をはじき出して、そのターゲット材料を基材層2の表面に各層を順に堆積させる。
【0158】
ガスとしては、例えば、不活性ガス(例えば、アルゴン)が挙げられる。また、必要に応じて、酸素ガスなどの反応性ガスを併用することができる。反応性ガスを併用する場合において、反応性ガスの流量比(sccm)は特に限定しないが、スパッタガスおよび反応性ガスの合計流量比に対して、例えば、0.1流量%以上100流量%以下である。
【0159】
スパッタリング時の気圧は、例えば、0.1Pa以上、また、例えば、1.0Pa以下、好ましくは、0.7Pa以下である。
【0160】
電源は、例えば、DC電源、AC電源、MF電源およびRF電源のいずれであってもよく、また、これらの組み合わせであってもよい。
【0161】
これにより、基材層2の厚み方向一方面に、密着層6および光学機能層7(反射防止層)を順に配置する。
【0162】
<第5工程>
第5工程では、図5Dに示すように、光学機能層7(反射防止層)に、防汚層3を配置する。具体的には、光学機能層7(反射防止層)の厚み方向一方面に、防汚層3を配置する。
【0163】
この方法では、まず、光学機能層7(反射防止層)の表面に、光学機能層7(反射防止層)および防汚層3の密着性の向上の観点から、例えば、表面処理を施す。表面処理としては、上記第2工程で挙げた表面処理が挙げられ、好ましくは、プラズマ処理、より好ましくは、酸素ガスによるプラズマ処理が挙げられる。
【0164】
光学機能層7(反射防止層)に防汚層3を配置する方法としては、上記第2工程の基材層2に防汚層3を配置する方法として挙げた方法と同様の方法が挙げられ、好ましくは、上記積分強度比を所定値以下に調整する観点から、ドライコーティング法、より好ましくは、真空蒸着法が挙げられる。
【0165】
真空蒸着法は、真空チャンバー内に蒸着源(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)および光学機能層7(反射防止層)を対向配置し、蒸着源を加熱し、蒸発または昇華させて、蒸発または昇華した蒸着源を光学機能層7(反射防止層)の表面に堆積させる。
【0166】
真空蒸着法において、蒸着源(るつぼ)の温度は、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上、また、例えば、300℃以下である。
【0167】
これにより、光学機能層7(反射防止層)の厚み方向一方面に防汚層3を配置し、基材層2と、密着層6と、光学機能層7(反射防止層)と、防汚層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える積層体1が製造される。
【0168】
<作用効果>
積層体1は、基材層2および防汚層3の間に、光学機能層7(反射防止層)を備える。
そのため、外光の反射を抑制することができる。
【0169】
また、光学機能層7(反射防止層)の厚み方向一方面が、二酸化ケイ素を含む層である場合には、換言すれば、防汚層3の下面に、二酸化ケイ素を含む層(例えば、二酸化ケイ素からなる第2低屈折率層14)が直接配置されている場合には、防汚層3のパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物における加水分解基(上記式(1)における-(OR))の加水分解の過程で生ずるシラノール基と、二酸化ケイ素におけるケイ素とが、脱水縮合反応する。換言すれば、防汚層3は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物が、シロキサン結合を介して、光学機能層7(反射防止層)に形成される。これにより、防汚耐久性をより一層向上させることができる。
【0170】
3.変形例
変形例において、第1実施形態および第2実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態、第2実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0171】
第1実施形態では、積層体1は、基材層2と防汚層3とを備えたが、図6に示すように、基材層2および防汚層3の間に、さらに、プライマー層15を備えることもできる。詳しくは、積層体1は、防汚層3の厚み方向他方面に、プライマー層15を備えることもできる。
【0172】
つまり、このような場合には、積層体1は、基材層2とプライマー層15と防汚層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0173】
プライマー層15は、防汚層3と密着する層である。
【0174】
プライマー層15の材料としては、好ましくは、二酸化ケイ素(SiO)が挙げられる。より好ましくは、プライマー層15は、二酸化ケイ素(SiO)からなる。
【0175】
プライマー層15の材料が、二酸化ケイ素(SiO)であれば、防汚層3のパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物における加水分解基(上記式(1)における-(OR))の加水分解の過程で生ずるシラノール基と、二酸化ケイ素におけるケイ素とが、脱水縮合反応する。換言すれば、防汚層3は、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物が、シロキサン結合を介して、プライマー層15に形成される。これにより、防汚耐久性をより一層向上させることができる。
【0176】
プライマー層15は、例えば、スパッタリング法、プラズマCVD法、真空蒸着法などによって形成される。
【0177】
第1実施形態および第2実施形態では、基材層2は、基材4と、機能層5とを厚み方向一方側に向かって順に備える。しかし、基材層2は、機能層5を備えず、基材4からなることもできる。
【0178】
第2実施形態では、反射防止層は、相対的に屈折率の高い高屈折率層を2層備えるとともに、相対的に屈折率の低い低屈折率層を2層備える。しかし、高屈折率層および低屈折率層の数は、特に限定されない。
【実施例
【0179】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0180】
1.積層体の製造
実施例1
<第3工程>
基材として、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ80μm)を準備した。
【0181】
次いで、基材(TACフィルム)の厚み方向一方面に、ハードコート層を配置した。具体的には、まず、紫外線硬化性アクリル系樹脂組成物(DIC製、商品名「GRANDIC PC-1070」、波長405nmにおける屈折率:1.55)に、樹脂成分100質量部に対するシリカ粒子の量が25質量部となるように、オルガノシリカゾル(日産化学社製「MEK-ST-L」、シリカ粒子(無機フィラー)の平均一次粒子径:50nm、シリカ粒子の粒子径分布:30nm~130nm、固形分30重量%)を添加して混合し、ハードコート組成物を調製した。基材(TACフィルム)の厚み方向一方面に、ハードコート組成物を、乾燥後の厚みが6μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプを用いて、積算光量200mJ/cmの紫外線を照射し、塗布層を硬化させハードコート層を形成した。これにより、基材層を準備した。
【0182】
<第4工程>
ロールトゥロール方式のプラズマ処理装置により、基材層(ハードコート層)の厚み方向一方面を、1.0Paの真空雰囲気下でプラズマ処理した。このプラズマ処理では、不活性ガスとしてアルゴンガスを用い、放電電力を100Wとした。
【0183】
次いで、基材層の厚み方向一方面に、密着層および反射防止層(光学機能層)を順に配置(形成)した。
【0184】
具体的には、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置により、プラズマ処理後のHC層付きTACフィルムのHC層上に、密着層としての厚さ2.0nmのインジウムスズ酸化物(ITO)層と、第1高屈折率層としての厚さ12nmのNb層と、第1低屈折率層としての厚さ28nmのSiO層と、第2高屈折率層としての厚さ100nmのNb層と、第2低屈折率層としての厚さ85nmのSiO層とを順に配置(形成)した。
【0185】
密着層の形成では、ITOターゲットを用い、不活性ガスとしてのアルゴンガスと、アルゴンガス100体積部に対して10体積部の反応性ガスとしての酸素ガスとを用い、放電電圧を350Vとし、成膜室内の気圧(成膜気圧)を0.4Paとし、MFACスパッタリングによってITO層を成膜した。
【0186】
第1高屈折率層の形成では、Nbターゲットを用いた。また、100体積部のアルゴンガスおよび5体積部の酸素ガスを用いた。また、放電電圧を415Vとし、成膜気圧を0.42Paとし、MFACスパッタリングによってNb層を成膜した。
【0187】
第1低屈折率層の形成では、Siターゲットを用いた。また、100体積部のアルゴンガスおよび30体積部の酸素ガスを用いた。また、放電電圧を350Vとし、成膜気圧を0.3Paとし、MFACスパッタリングによってSiO層を成膜した。
【0188】
第2高屈折率層の形成では、Nbターゲットを用いた。また、100体積部のアルゴンガスおよび13体積部の酸素ガスを用いた。また、放電電圧を460Vとし、成膜気圧を0.5Paとし、MFACスパッタリングによってNb層を成膜した。
【0189】
第2低屈折率層の形成では、Siターゲットを用いた。また、100体積部のアルゴンガスおよび30体積部の酸素ガスを用いた。また、放電電圧を340Vとし、成膜気圧を0.25Paとし、MFACスパッタリングによってSiO層を成膜した。
【0190】
以上のようにして、基材層の厚み方向一方面に、密着層および反射防止層を順に配置(形成)した。
【0191】
<第5工程>
反射防止層の厚み方向一方面に、防汚層を配置した。
【0192】
具体的には、まず、反射防止層の厚み方向一方面に対して、表面処理として、アルゴンガスによるプラズマ処理を実施した。プラズマ処理の出力電力は100Wであった。次いで、パーフルオロポリエーテル基含有のアルコキシシラン化合物を蒸着源として用いた真空蒸着法により、厚さ7nmの防汚層を反射防止層の厚み方向一方面に配置した。
【0193】
蒸着源は、オプツールUD120(ダイキン工業株式会社製)を乾燥して得た固形分である。また、真空蒸着法における蒸着源(るつぼ)の加熱温度は260℃とした。これにより、積層体を得た。
【0194】
実施例2
実施例1と同様の手順に基づいて、積層体を製造した。
【0195】
但し、第5工程において、反射防止層の厚み方向一方面に対して、表面処理として、アルゴンガスによるプラズマ処理に代えて、酸素によるプラズマ処理に変更した。
【0196】
実施例3
実施例2と同様の手順に基づいて、積層体を製造した。
【0197】
但し、第5工程において、蒸着源を、KY1903-1(信越化学製)に変更した。
【0198】
比較例1
実施例1と同様の手順に基づいて、積層体を製造した。
【0199】
但し、第5工程を以下の通りに変更した。
<第5工程>
反射防止層の厚み方向一方面に、オプツールUD509を、グラビアコーターで塗工厚み8μmになるように塗工した。その後、乾燥温度60℃で60秒加熱処理した。これにより、反射防止層の厚み方向一方面に厚み7nmの防汚層を配置した。
【0200】
比較例2
実施例1と同様の手順に基づいて、積層体を製造した。
但し、第5工程において、プラズマ処理の出力電力を4500Wに変更した。
【0201】
2.評価
(微小角入射X線回折測定)
各実施例および各比較例の積層体の防汚層について、以下の条件に基づき、微小角入射X線回折法により、面内回折(インプレーン)測定を実施した。
【0202】
実施例2の面内回折(インプレーン)測定の結果を、図7に示す。
【0203】
<測定条件>
実験施設:あいちシンクロトロン光センター
実験ステーション:BL8S1
入射エネルギー:14.4keV
ビームサイズ:500μm(横幅)×40μm(縦)
試料角:入射光に対して0.1度
検出器:2次元検出器 PILATAS
試料設置方法:薄く塗布したグリスにて平面試料台上に固定
【0204】
以下、得られた面内回折(インプレーン)測定の結果から、半値全幅を算出した。算出方法は、半値全幅を画一的に算出する観点から、フィッティング法を用いた。その方法について、実施例2を例に挙げて、詳述する。
【0205】
まず、面内回折(インプレーン)測定において得られた結果(以下、実測データ(面内回折(インプレーン)測定)とする。)に対し、下記式(3)に基づき、フィッティングを実施した。詳しくは、実測データ(面内回折(インプレーン)測定)が、バックグラウンドと、ピークA1~A4(図8参照)との総和であると仮定して、フィッティングを実施した。なお、全試料間で高波長24nm-1のバックグラウンドが一致するよう規格化した。
【式1】
【0206】
【0207】
(式(3)において、qは、散乱ベクトル(波数)(=4πsinΘ/λ)/nm-1(Θは、ブラッグ角を示す。λは、X線の波長を示す。)を示す。Anは、ピーク強度(nは、1~4の整数である。Aは、ピークA1のピーク強度を示す。Aは、ピークA2のピーク強度を示す。Aは、ピークA3のピーク強度を示す。Aは、ピークA4のピーク強度を示す。)を示す。qAnは、重心位置(qA1は、ピークA1の重心位置を示す。qA2は、ピークA2の重心位置を示す。qA3は、ピークA3の重心位置を示す。qA4は、ピークA4の重心位置を示す。)を示す。ΔqAnは、半値全幅(ΔqA1は、ピークA1の半値全幅を示す。ΔqA2は、ピークA2の半値全幅を示す。ΔqA3は、ピークA3の半値全幅を示す。ΔqA4は、ピークA4の半値全幅を示す。)を示す。
【0208】
また、ピークA1は、ラメラ積層構造を示すピークであり、重心位置は、0.2Å-1以上1.0Å-1以下である。また、ピークA4は、パーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークであり、重心位置は、1.5Å-1以上2.0Å-1以下である。
【0209】
フィッティングの結果を、図8(実施例2)に示す。
【0210】
また、フィッティングの結果を、実測データ(面内回折(インプレーン)測定)とともに、図7に併記する。
【0211】
図7によれば、実測データ(面内回折(インプレーン)測定)とフィッティング結果とがよく一致していることがわかる。
【0212】
このことから、仮定通り、実測データ(面内回折(インプレーン)測定)を、バックグラウンドと、ピークA1~A4との総和として示すことができるとわかる。
【0213】
また、フィッティングにより得られたパーフルオロポリエーテル基の面内方向における周期配列性由来のピークA4の半値全幅、ピークの強度、ピーク位置、積分強度および規格化積分強度と、ラメラ積層構造を示すピークA1のピークの強度、ピーク位置、半値全幅、積分強度および規格化積分強度とを表1に示す。
【0214】
(防汚耐久性)
各実施例および各比較例の積層体の防汚層について、協和界面科学社製DMo-501を用いて、以下の条件に基づき、防汚層の純水に対する接触角(初期接触角と称する場合がある。)を測定した。その結果を表1に示す。
<測定条件>
液滴量:2μl
温度:25℃
湿度:40%
【0215】
次いで、各実施例および各比較例の積層体の防汚層について、以下の条件に基づき、消しゴム摺動試験を実施した後、上記した方法と同様の手順で、水接触角(消しゴム摺動試験後の接触角と称する場合がある。)を測定した。その結果を表1に示す。
【0216】
そして、下記式(4)に基づき、接触角の変化量を算出した。その結果を表1に示す。
接触角の変化量が小さいほど、防汚耐久性に優れると評価した。
接触角の変化量=初期接触角-消しゴム摺動試験後の接触角 (4)
【0217】
(消しゴム摺動試験)
Minoan社製の消しゴム(Φ6mm)
摺動距離:片道100mm
摺動速度:100mm/秒
荷重:1kg/6mmΦ
摺動回数:3000回
【0218】
【表1】
【0219】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明の積層体は、例えば、例えば、防汚層付き反射防止フィルム、防汚層付き透明導電性フィルム、および、防汚層付き電磁波遮蔽フィルムにおいて、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0221】
1 積層体
2 基材層
3 防汚層
6 密着層
15 プライマー層
20 パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8