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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20221201BHJP
   F16K 41/00 20060101ALI20221201BHJP
   F16K 31/68 20060101ALN20221201BHJP
   F16K 51/00 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
F16K1/32 B
F16K41/00
F16K31/68 A
F16K51/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022542713
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2022012001
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2021083627
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】浅田 哲夫
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073676(WO,A1)
【文献】特開2018-189173(JP,A)
【文献】中国実用新案第210968723(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F16K 41/00-41/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸と同軸の貫通孔が形成され、流体が流通するケーシングと、
前記軸と同軸に延びて前記貫通孔を貫通する操作部と、
前記貫通孔に設けられ、前記貫通孔と前記操作部との間をシールする環状のグランドパッキンと、
筒状に形成され、内周側を前記操作部のうち前記ケーシングの外部に位置する端部が貫通する状態で前記貫通孔に挿入され、前記グランドパッキンを押えるパッキン押えとを備え、
前記操作部が前記軸を中心に回転することによって前記軸の方向へ移動するように、前記パッキン押えの内周面には、雌ネジが形成されると共に、前記操作部の前記端部の外周面には、前記雌ネジと螺合する雄ネジが形成され、
前記グランドパッキンの内周面には、前記操作部の前記雄ネジと螺合可能な雌ネジが形成されており、
前記操作部は、前記パッキン押えを取り外した後に前記貫通孔から引き抜いた前記操作部の前記雄ネジを前記グランドパッキンの前記雌ネジに螺合させて前記グランドパッキンを前記貫通孔から取り出す治具を兼ねている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
前記ケーシング内に配置され、弁孔を有する弁座と、
前記ケーシング内に配置され、前記弁孔を開閉する弁体と、
前記ケーシング内に配置され、流体の温度に応じて変形することによって前記弁体に前記弁孔を開閉させる熱応動部材とをさらに備え、
前記操作部は、前記軸の方向へ移動することによって前記熱応動部材を移動させて、前記弁体が閉弁するときの温度を変更する
ことを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1に記載の弁装置において、
前記ケーシング内の対象箇所を清掃する清掃部材をさらに備え、
前記清掃部材は、前記操作部に連結されており、
前記操作部は、前記軸の方向へ移動することによって前記清掃部材を前記対象箇所の方へ移動させて、前記対象箇所に付着した異物を前記清掃部材に除去させる
ことを特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体が流通するケーシングと、所定の軸心の方向に延びてケーシングを貫通した状態で支持され、軸心を中心に回転することによって軸心の方向へ移動する操作部とを備えた弁装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された弁装置は、前述のようなケーシング及び操作部に加え、弁座と、弁体と、熱応動部材とをさらに備えている。熱応動部材は、温度に応じて変形することによって弁体を移動させ、弁体に弁座の弁孔を開閉させる。熱応動部材の温度が所定の温度になると、弁体が弁孔を閉じる。特許文献1の操作部の一端部は、ケーシングから外部に露出している。作業者は、操作部を回転させて移動させる。これに応じて、熱応動部材が移動する。熱応動部材が移動すると、弁体が弁孔を閉じるときの熱応動部材の温度(即ち、ケーシング内の流体の温度)が変更される。つまり、特許文献1の操作部は、閉弁されるときの流体の温度を調節する際に用いられる。
【0004】
また、特許文献1の弁装置においては、操作部は、弁座に付着した異物を除去する際にも用いられる。詳しくは、操作部には、シャフトが連結されている。シャフトの先端は、弁座から異物を削り取ることができる形状に形成されている。操作部が回転すると、シャフトは、シャフトの軸心の方向へ操作部と共に移動する。やがて、シャフトの先端は弁座に接触し、弁座に付着した異物を削り落とす。
【0005】
このように、弁装置には、ケーシングの外部に部分的に露出する操作部を備えるものがある。操作部は、様々な用途に使用される。例えば、前述のように、熱応動部材の位置を変更させるため、又は、対象箇所に付着した異物を除去するために操作部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-372166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のような弁装置においては、操作部がケーシングに螺合により貫通して支持されている。そのケーシングの貫通孔では、操作部を安定して支持するために必要な螺合長さと、ケーシングと操作部との隙間をシールするために必要なシール長さを確保しなければならない。そのため、ケーシングにおける貫通孔が形成されている部分の厚さが厚くなり、ケーシングが大型化してしまう。
【0008】
本開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーシングを小型化することができる弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の弁装置は、ケーシングと、操作部と、環状のグランドパッキンと、パッキン押えとを備えている。前記ケーシングは、所定の軸と同軸の貫通孔が形成され、流体が流通するものである。前記操作部は、前記軸と同軸に延びて前記貫通孔を貫通している。前記グランドパッキンは、前記貫通孔に設けられ、前記貫通孔と前記操作部との間をシールする。前記パッキン押えは、筒状に形成され、内周側を前記操作部のうち前記ケーシングの外部に位置する端部が貫通する状態で前記貫通孔に挿入され、前記グランドパッキンを押える。そして、前記操作部が前記軸を中心に回転することによって前記軸の方向へ移動するように、前記パッキン押えの内周面には、雌ネジが形成されると共に、前記操作部の前記端部の外周面には、前記雌ネジと螺合する雄ネジが形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示の弁装置によれば、ケーシングを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、弁孔が全開状態における弁装置の断面図である。
図2図2は、弁孔が全閉状態における弁装置の断面図である。
図3図3は、清掃時の弁装置の断面図である。
図4図4は、グランドパッキンの取外し作業を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0013】
図1は、弁孔21が全開状態における弁装置100の断面図である。図2は、弁孔21が全閉状態における弁装置100の断面図である。
【0014】
弁装置100は、ケーシング1と、操作部6と、グランドパッキン64と、パッキン押え7とを備えている。さらに、弁装置100は、それぞれケーシング1内に配置される、弁座20、弁体25、熱応動部材81および清掃棒5を備えている。
【0015】
ケーシング1では、所定の軸Xと同軸の貫通孔18が形成され、流体が流通する。ケーシング1は、流体が流入する流入口13、弁室14、及び、流体が流出する流出口15が形成された本体11と、本体11に取り付けられ、本体11と共に弁室14を区画する蓋12とを有している。
【0016】
本体11は、軸Xを中心軸とする略円筒状に形成されている。本体11には、上方へ開口し、底を有する開口11aが形成されている。開口11aの内径は、下方に向かって段階的に小さくなっている。この開口11aは、蓋12によって閉塞されている。この開口11aによって弁室14が形成されている。本体11には、流入口13と弁室14とを連通させる第1連通路16と、弁室14と流出口15とを連通させる第2連通路17とが形成されている。ケーシング1には、流入口13、第1連通路16、弁室14、第2連通路17及び流出口15によって流路Pが形成されている。
【0017】
以下、本開示においては、特段の断りが無い限り、「周方向」とは、軸Xを中心とする周方向を意味し、「径方向」とは、軸Xを中心とする径方向を意味する。また、軸Xの方向を「軸X方向」とも称する。
【0018】
弁室14には、弁座20が配置されている。つまり、弁座20はケーシング1内に配置されている。第1連通路16は、弁室14のうち弁座20よりも上方の空間に連通している。第2連通路17は、弁室14のうち弁座20よりも下方の空間に連通している。
【0019】
弁室14のうち弁座20よりも上方の空間には、流路Pを流通する流体が通過し、その流体から異物を除去するスクリーン4が設けられている。スクリーン4は、軸Xと同軸の円筒状に形成されている。スクリーン4には、複数の微小な貫通孔(図示省略)が形成されており、流体が通過可能となっている。スクリーン4の外径は、開口11aの内径よりも小さく、スクリーン4と開口11aの内周面との間には空間が形成されている。スクリーン4の上端は蓋12の下面に接しており、スクリーン4の下端は開口11aの内周面に形成された段差に接している。
【0020】
弁座20は、弁孔21を有する。具体的に、弁座20は、軸Xを中心軸とする略円筒状に形成されている。弁座20の内部には、X軸と同軸に延びる貫通孔22が形成されている。貫通孔22には隔壁23が設けられている。弁孔21は、隔壁23に形成されている。弁座20は、弁室14の下部においてケーシング1の本体11にネジ締結されている。
【0021】
流入口13から第1連通路16を介して弁室14へ流入する流体は、スクリーン4と開口11aの内周面との間に形成された空間へ流れる。この流体は、スクリーン4を径方向内側へ向かって通過する。このとき、流体に含まれる異物がスクリーン4によって除去される。スクリーン4の内側へ流入した流体は、弁座20の方へ流れる。この流体は、弁座20の弁孔21を通過して、第2連通路17を介して流出口15から流出していく。
【0022】
清掃棒5は、弁座20に付着した異物を除去する。清掃棒5は、清掃部材の一例であり、弁座20は、清掃される対象箇所の一例である。清掃棒5は、操作部6に連結されている。操作部6は、軸Xと同軸に延びてケーシング1の貫通孔18を貫通している。貫通孔18は、蓋12に形成されている。つまり、操作部6は、ケーシング1(より詳しくは、蓋12)を軸X方向に貫通している。操作部6は、上端が閉塞される一方、下端が開放された略円筒状に形成されている。
【0023】
操作部6には、下端から軸Xと同軸に延びる挿入孔61が形成されている。操作部6の下部には、軸X方向に延びる2本のガイド溝66が形成されている。2本のガイド溝66は、軸Xを中心に互いに180°異なる位置に形成されている。これらガイド溝66によって、操作部6の下部は二叉状に形成されている。ガイド溝66は、軸X方向において、操作部6の下端から所定の長さだけ形成されている。
【0024】
清掃棒5は、軸Xと同軸に延びる棒状(より詳しくは、略円柱状)に形成されている。清掃棒5は、操作部6に対して、軸Xを中心に回転不能に且つ軸X方向に進退するように連結されている。詳しくは、清掃棒5には、径方向に清掃棒5を貫通する係合ピン51が設けられている。清掃棒5は、操作部6の挿入孔61に挿入される。このとき、係合ピン51は、ガイド溝66に係合している。清掃棒5は、挿入孔61及びガイド溝66に案内されることによって、操作部6に対して軸Xを中心に回転不能且つ軸X方向に進退する。ただし、係合ピン51がガイド溝66の上端に接することによって、清掃棒5が軸X方向においてそれ以上、上方へ移動することが規制される。つまり、ガイド溝66の上端は、清掃棒5の軸X方向における上方への移動を規制するストッパ67となっている。
【0025】
清掃棒5の下端部には、平板状のスクレーパ部52が形成されている。スクレーパ部52は、弁座20の貫通孔22に進入する。詳しくは後述するが、スクレーパ部52は、弁座20の隔壁23の上面に付着した異物を削り落とす。
【0026】
弁体25は、清掃棒5の下端、即ち、スクレーパ部52の下端に設けられている。即ち、弁体25は、清掃棒5と一体的に形成され、ケーシング1内に配置されている。弁体25は、弁孔21を開閉する。弁体25は、略円錐状に形成されており、弁孔21に嵌って弁孔21を閉鎖する。
【0027】
また、清掃棒5には、後述するコイルバネ82の一端を支持するバネ受け部53が設けられている。具体的に、バネ受け部53は、清掃棒5における操作部6よりも下方の部分に一体的に設けられている。バネ受け部53は、軸Xと同軸の円環状に形成されており、内側を清掃棒5が貫通している。バネ受け部53は、清掃棒5に溶接、嵌め合い、又はその他の手段で固定されている。即ち、バネ受け部53は、清掃棒5に対して、軸Xを中心に回転不能且つ軸X方向に移動不能に設けられている。
【0028】
熱応動部材81は、ケーシング1内に配置され、流体の温度に応じて変形することによって弁体25に弁孔21を開閉させる。熱応動部材81は、線膨張率の異なる2種類の金属を重ね合わせて円盤状に形成されたバイメタルで構成されている。熱応動部材81は、常温においては、略平板状となっている。熱応動部材81は、温度が上昇するほど、円盤の中央が膨出するように湾曲する。熱応動部材81の中央には、清掃棒5が貫通する貫通孔が形成されている。複数の熱応動部材81は、弁室14において、清掃棒5が貫通した状態でバネ受け部53の上面に配置されている。複数の熱応動部材81は、膨出する方向が互い違いになるように積層されている。つまり、一の熱応動部材81は、上方へ膨出するように配置され、それと隣接する熱応動部材81は、下方へ膨出するように配置される。こうすることによって、複数の熱応動部材81の上下方向、即ち、軸X方向の全長は、温度が上昇するほど増大し、温度が低下するほど減少する。最上に位置する熱応動部材81は、操作部6に接している。最下に位置する熱応動部材81は、バネ受け部53に接している。
【0029】
一方、弁室14におけるバネ受け部53の下方には、コイルバネ82が配置されている。コイルバネ82の上端は、バネ受け部53の下面に接触し、コイルバネ82の下端は、ケーシング1の本体11に接触している。コイルバネ82は、圧縮された状態で配置されている。コイルバネ82は、バネ受け部53を上方へ押圧している。これにより、最上の熱応動部材81が操作部6に接触し且つ最下の熱応動部材81がバネ受け部53に接触した状態が維持される。
【0030】
熱応動部材81及びコイルバネ82は、弁体25を駆動する駆動部を構成する。複数の熱応動部材81の温度が上昇すると、複数の熱応動部材81の軸X方向の全長が増大する。これにより、バネ受け部53が複数の熱応動部材81によって下方へ押圧される。図2に示すように、バネ受け部53は、コイルバネ82の付勢力に抗して下方へ移動し、それに伴い、清掃棒5も下方へ移動する。清掃棒5には弁体25が一体的に形成されているので、弁体25も下方へ移動する。弁体25の移動量は、熱応動部材81の温度、即ち、ケーシング1内の流体の温度に依存している。弁体25が最も下方へ移動すると、弁体25が弁孔21を全閉する。以下、閉弁するときの流体の温度を「閉弁温度」と称する。
【0031】
一方、複数の熱応動部材81の温度が低下すると、複数の熱応動部材81の軸X方向の全長が減少する。これにより、バネ受け部53は、コイルバネ82の付勢力によって上方へ移動し、それに伴い、清掃棒5及び弁体25も上方へ移動する。こうして、弁体25が弁孔21を開放する。
【0032】
つまり、流体の温度が高い場合には弁孔21の開度が絞られ、流量が減少する。一方、流体の温度が低い場合には弁孔21の開度が大きくなり、流量が増大する。流体の温度が閉弁温度になると、弁孔21が閉鎖される。
【0033】
尚、前述のように清掃棒5が軸X方向へ移動する際には、操作部6は固定されたままなので、清掃棒5は、ガイド溝66及び係合ピン51の係合によって軸Xを中心として回転不能となっている。
【0034】
操作部6は、軸Xを中心に回転することによって軸Xの方向へ移動するようにパッキン押え7によって支持されている。そして、操作部6は、軸Xの方向へ移動することによって熱応動部材81を移動させて、閉弁温度を変更する。また、操作部6は、軸Xの方向へ移動することによって清掃棒5を弁座20の方へ移動させて、弁座20に付着した異物を清掃棒5に除去させる。
【0035】
詳しくは、操作部6の上端部の外周面には雄ネジ62が形成され、操作部6の下端部の外周面には雄ネジが形成されていない。つまり、操作部6の下部の外周面は、円柱状の平滑面である非ネジ部63となっている。蓋12に形成された貫通孔18には、上から順に、雌ネジ18a、第1非ネジ部18bおよび第2非ネジ部18cが形成されている。第1非ネジ部18bおよび第2非ネジ部18cは、雌ネジが形成されていない円筒状の平滑面である。雌ネジ18aおよび第1非ネジ部18bの内径は、第2非ネジ部18cの内径よりも大きい。
【0036】
操作部6の外径は、軸X方向の全長に亘って一定である。つまり、雄ネジ62の外径と非ネジ部63の外径とは同一である。貫通孔18では、操作部6の非ネジ部63は第1非ネジ部18bおよび第2非ネジ部18cに位置している。操作部6の非ネジ部63の外径は、貫通孔18の第2非ネジ部18cの内径と略同一である。操作部6の非ネジ部63は、第2非ネジ部18cに摺動自在に挿入されている。操作部6の上端である第1端6aは、蓋12から突出している。つまり、操作部6の上端部(即ち、操作部6の雄ネジ62)は、ケーシング1の外部に位置している。第1端6aには、工具が係合する係合部65が設けられている。係合部65は、軸Xと直交する溝によって形成されている。
【0037】
貫通孔18には、グランドパッキン64が設けられている。グランドパッキン64は、貫通孔18と操作部6との間をシールする。グランドパッキン64は、軸Xと同軸の円環状に形成されている。詳しくは、グランドパッキン64は、貫通孔18の第1非ネジ部18bに装着されている。グランドパッキン64は、操作部6の非ネジ部63の外周面と第1非ネジ部18bの内周面との間をシールする。操作部6の非ネジ部63は、グランドパッキン64に対して摺動自在である。グランドパッキン64は、一般に、Oリングと比べて耐熱性が高い。
【0038】
貫通孔18には、パッキン押え7が取り付けられている。パッキン押え7は、軸Xと同軸の円筒状に形成されている。パッキン押え7は、内周側(即ち、貫通孔72)を操作部6のうちケーシング1の外部に位置する端部(即ち、上端部)が貫通する状態で貫通孔18に挿入され、グランドパッキン64を押える。具体的に、パッキン押え7の外周面には、貫通孔18の雌ネジ18aと螺合する雄ネジ71が形成されている。つまり、パッキン押え7は貫通孔18の上部に螺合によって取り付けられる。パッキン押え7は、蓋12から突出する状態で貫通孔18に螺合している。
【0039】
パッキン押え7の貫通孔72には、雌ネジ72aが形成されている。より詳しくは、雌ネジ72aは、貫通孔72のうち上部に形成されている。操作部6は、雄ネジ62が雌ネジ72aと螺合することによってパッキン押え7に支持されている。この構成により、操作部6は、軸Xを中心に回転することによって軸X方向へ移動することができる。操作部6の第1端6aは、パッキン押え7から突出している。このように、弁装置100では、操作部6が軸Xを中心に回転することによって軸X方向へ移動するように、パッキン押え7の内周面には、雌ネジ72aが形成されると共に、操作部6の端部(即ち、上端部)の外周面には雌ネジ72aと螺合する雄ネジ62が形成されている。
【0040】
貫通孔18では、パッキン押え7を締め付けることによって、グランドパッキン64の内周面が操作部6の非ネジ部63の外周面に密着し、且つ、グランドパッキン64の外周面が第1非ネジ部18bの内周面に密着する。こうして、グランドパッキン64は、操作部6と貫通孔18との間をシールする。
【0041】
グランドパッキン64の内周面には、操作部6の雄ネジ62と螺合可能な雌ネジ64aが形成されている。操作部6は、貫通孔18からケーシング1の外部に引き抜かれた状態で雄ネジ62をグランドパッキン64の雌ネジ64aに螺合させてグランドパッキン64を貫通孔18から取り出す治具を兼ねている。より詳しくは、操作部6の雄ネジ62がグランドパッキン64の雌ネジ64aと僅かな螺合長さで螺合するだけで、操作部6でグランドパッキン64を引き抜くことが可能である。
【0042】
蓋12には、キャップ91が取り付けられている。キャップ91は、蓋12から突出した操作部6およびパッキン押え7を覆う。キャップ91は、軸Xと同軸の円筒状に形成されている。より詳しくは、キャップ91は、上端が閉塞され、下端が開放された円筒状に形成されている。キャップ91の下端部の内周面には、雌ネジ91aが形成されている。蓋12における雌ネジ18aに相当する外周面には、キャップ91の雌ネジ91aと螺合する雄ネジ19が形成されている。こうして、キャップ91は蓋12に螺合により取り付けられる。
【0043】
作業者は、キャップ91を取り外した状態で、第1端6aの係合部65に工具を係合させて、操作部6を回転操作する。操作部6は、回転操作されると、軸X方向へ移動する。操作部6は、閉弁温度の調節又は弁座20の清掃を行う際に回転操作される。
【0044】
〈閉弁温度の調節〉
先ず、閉弁温度の調節について説明する。操作部6が作業者によって回転操作されて操作部6がケーシング1内へ進入するように軸X方向へ移動すると、熱応動部材81が軸X方向において弁座20へ近づくように(即ち、下方へ)移動する。熱応動部材81が下方へ移動すると、バネ受け部53も下方へ移動し、それに伴って清掃棒5も下方へ移動する。清掃棒5の下端には弁体25が設けられているので、弁体25と弁座20との距離が減少する。これにより、閉弁するのに必要な熱応動部材81の軸X方向の伸び量、即ち、熱応動部材81の温度上昇量が減少する。その結果、閉弁温度が低下する。一方、操作部6が回転操作されてケーシング1から後退するように軸X方向へ移動すると、熱応動部材81が軸X方向において弁座20から離隔するように(即ち、上方へ)移動する。それに応じて、弁体25と弁座20との距離が増大する。これにより、閉弁するのに必要な熱応動部材81の温度上昇量が増大する。その結果、閉弁温度が上昇する。このように、操作部6が回転操作されることによって、閉弁温度が調節される。
【0045】
〈弁座の清掃〉
次に、弁座20の清掃について説明する。ここでは、図1に示すように、弁体25が弁孔21を全開にした状態から清掃を開始する場合について説明する。図3は、清掃時の弁装置の断面図である。
【0046】
操作部6が作業者によって回転操作されて操作部6がケーシング1内へ進入するように軸X方向へ移動すると、清掃棒5の係合ピン51と操作部6のストッパ67との接触により、清掃棒5も軸X方向において弁座20へ近づくように(即ち、下方へ)移動する。このとき、係合ピン51とガイド溝66とが係合しているため、清掃棒5は、操作部6と共に軸Xを中心に回転する。操作部6が軸X方向へ移動していくと、やがて清掃棒5のスクレーパ部52は、図3に示すように、軸X回りに回転しながら弁座20の隔壁23に接触する。その際、スクレーパ部52は、隔壁23に付着した異物を削り取る。こうして、弁座20に付着している異物が清掃棒5によって清掃される。清掃が完了すると、操作部6がケーシング1から後退するように回転操作される。これにより、清掃棒5は弁座20から離隔していく。
【0047】
〈グランドパッキンの取外し〉
次に、グランドパッキン64の取外し作業について説明する。ここでは、図2に示すように、弁体25が弁孔21を全閉にした状態において取外しを行う場合について説明する。図4は、グランドパッキン64の取外し作業を説明するための断面図である。尚、この取外し作業は、例えば、弁装置100が組み込まれたシステムが停止した状態で行われる。
【0048】
作業者によって、キャップ91およびパッキン押え7の順に、ケーシング1(即ち、蓋12)から取り外される。続いて、作業者によって、操作部6が蓋12から引き抜かれる。このとき、操作部6の上端部は蓋12から突出しているので、作業者は容易に操作部6の上端部を把持して引き抜くことができる。続いて、作業者は、引き抜いた操作部6の雄ネジ62を貫通孔18に挿入してグランドパッキン64の雌ネジ64aに螺合させる。このとき、図4に示すように、操作部6の雄ネジ62は、雌ネジ64aにおける僅かな部分と螺合するだけで足りる。続いて、作業者は、グランドパッキン64と螺合した操作部6を貫通孔18から引き抜く。これにより、グランドパッキン64が操作部6と共に貫通孔18から引き抜かれる。こうして、グランドパッキン64が貫通孔18から取り外される。そして、新たなグランドパッキン64が貫通孔18に装着される。
【0049】
以上のように、前記実施形態の弁装置100は、所定の軸Xと同軸の貫通孔18が形成され、流体が流通するケーシング1と、軸Xと同軸に延びて貫通孔18を貫通する操作部6と、貫通孔18に設けられ、貫通孔18と操作部6との間をシールする環状のグランドパッキン64と、筒状に形成され、内周側を操作部6のうちケーシング1の外部に位置する上端部が貫通する状態で貫通孔18に挿入され、グランドパッキン64を押えるパッキン押え7とを備えている。そして、操作部6が軸Xを中心に回転することによって軸Xの方向へ移動するように、パッキン押え7の内周面には、雌ネジ72aが形成されると共に、操作部6の上端部の外周面には、雌ネジ72aと螺合する雄ネジ62が形成されている。
【0050】
前記の構成によれば、ケーシング1の貫通孔18と操作部6との間がグランドパッキン64によってシールされる。グランドパッキン64は、例えばOリングに比べて、耐熱性が高いため、特にケーシング1を高温流体が流通するような弁装置100の場合、シール性をより長い期間確保することができる。また、ケーシング1の貫通孔18を貫通する操作部6のうちケーシング1の外部に位置する上端部の雄ネジ62が、パッキン押え7の内周面の雌ネジ72aと螺合しているため、操作部6は軸Xを中心に回転することによって軸Xの方向へ移動することができる。そのため、操作部6の雄ネジ62と螺合する雌ネジを貫通孔18に形成しなくてもよい。その分、貫通孔18の軸X方向の長さを短くすることができるので、ケーシング1を小型化することができる。
【0051】
また、前記実施形態の弁装置100は、ケーシング1内に配置され、弁孔21を有する弁座20と、ケーシング1内に配置され、弁孔21を開閉する弁体25と、ケーシング1内に配置され、流体の温度に応じて変形することによって弁体25に弁孔21を開閉させる熱応動部材81とをさらに備えている。そして、操作部6は、軸Xの方向へ移動することによって熱応動部材81を移動させて、弁体25が閉弁するときの温度、即ち閉弁温度を変更する。
【0052】
前記の構成によれば、ケーシング1内の流体の温度に応じて熱応動部材81が変形して弁体25を移動させる。流体の温度が閉弁温度になると、弁体25は弁孔21を閉じる、即ち、閉弁する。そして、操作部6は、作業者による回転操作に応じて熱応動部材81を移動させる。熱応動部材81の位置が変わると、弁体25を閉弁させるのに必要な熱応動部材81の変形量、即ち、温度変化量が変化する。その結果、閉弁温度が変化する。つまり、操作部6の操作によって、閉弁温度が調節される。
【0053】
また、前記実施形態の弁装置100は、ケーシング1内の弁座20(対象箇所)を清掃する清掃棒5(清掃部材)をさらに備えている。清掃棒5は、操作部6に連結されており、操作部6は、軸Xの方向へ移動することによって清掃棒5を弁座20の方へ移動させて、弁座20に付着した異物を清掃棒5に除去させる。
【0054】
前記の構成によれば、操作部6には清掃棒5が連結されている。操作部6が作業者によって回転操作されて軸Xの方向へ移動すると、清掃棒5も移動して弁座20の異物を除去する。つまり、操作部6の操作によって、弁座20が清掃される。
【0055】
また、前記実施形態の弁装置100において、グランドパッキン64の内周面には、操作部6の雄ネジ62と螺合可能な雌ネジ64aが形成されている。操作部6は、貫通孔18からケーシング1の外部に引き抜かれた状態で雄ネジ62をグランドパッキン64の雌ネジ64aに螺合させてグランドパッキン64を貫通孔18から取り出す治具を兼ねている。
【0056】
前記の構成によれば、グランドパッキン64の内周面に操作部6の雄ネジ62と螺合可能な雌ネジ64aを形成するようにしたため、操作部6とグランドパッキン64とを容易に連結させることができる。そして、操作部6は、グランドパッキン64に螺合してグランドパッキン64を貫通孔18から取り出す治具を兼ねているので、グランドパッキン64を貫通孔18から取り出すための特殊な工具が不要となる。したがって、部品点数を増加させることなく、グランドパッキン64の交換を簡易に行うことができる。
【0057】
《その他の実施形態》
本開示の技術は、前記実施形態において以下のような構成としてもよい。
【0058】
例えば、操作部6の回転操作に応じた動作は、閉弁温度の調節及び対象箇所の清掃に限定されるものではない。本開示の技術は、ケーシング1から部分的に露出し、回転操作されることによって任意の動作を引き起こす操作部6を備える弁装置100に適用できる。操作部6の回転操作によって、閉弁温度の調節及び対象箇所の清掃の何れか一方だけが行われる構成であってもよい。
【0059】
また、操作部6の回転操作によって対象箇所の清掃のみが行われる弁装置においては、弁体25の駆動源は、熱応動部材81に限定されない。弁体25は、液体に浮くフロート式であってもよい。或いは、弁装置100は、弁体25を備えておらず、オリフィスが形成されたオリフィス部材を備え、流体の流量を調節するものであってもよい。その場合、オリフィス及びその周辺が清掃の対象箇所となり得る。
【0060】
また、操作部6の回転操作によって閉弁温度の調節のみが行われる弁装置は、清掃部材を備えていなくてもよい。
【0061】
清掃部材は、清掃棒5に限定されるものではない。清掃部材は、ブラシ等であってもよい。清掃棒5は、操作部6と単一部材で形成されていてもよい。清掃棒5には、弁体25が形成されていなくてもよい。清掃部材の対象箇所は、弁座20に限定されず、スクリーン4等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本開示の技術は、弁装置について有用である。
【符号の説明】
【0063】
100 弁装置
1 ケーシング
18 貫通孔
20 弁座
21 弁孔
25 弁体
5 清掃棒(清掃部材)
6 操作部
62 雄ネジ
64 グランドパッキン
64a 雌ネジ
7 パッキン押え
72a 雌ネジ
81 熱応動部材
X 軸

【要約】
弁装置100は、所定の軸Xと同軸の貫通孔18が形成され、流体が流通するケーシング1と、軸Xと同軸に延びて貫通孔18を貫通する操作部6と、貫通孔18に設けられ、貫通孔18と操作部6との間をシールする環状のグランドパッキン64と、筒状に形成され、内周側を操作部6のうちケーシング1の外部に位置する上端部が貫通する状態で貫通孔18に挿入され、グランドパッキン64を押えるパッキン押え7とを備える。操作部6が軸Xを中心に回転することによって軸Xの方向へ移動するように、パッキン押え7の内周面には、雌ネジ72aが形成されると共に、操作部6の上端部の外周面には、雌ネジ72aと螺合する雄ネジ62が形成されている。

図1
図2
図3
図4