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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】研磨シート
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/22 20120101AFI20221202BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20221202BHJP
   B24D 11/00 20060101ALI20221202BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B24B37/22
B24B37/24 C
B24B37/24 E
B24D11/00 A
H01L21/304 622F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018242715
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020104187
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591086407
【氏名又は名称】東レコーテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】城 邦恭
(72)【発明者】
【氏名】和田 雅治
(72)【発明者】
【氏名】寺田 幸平
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101338(JP,A)
【文献】特開2012-101339(JP,A)
【文献】特開2012-223875(JP,A)
【文献】特開2011-212808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/22
B24B 37/24
B24D 11/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一層から第五層の順に隣接して積層している研磨シートであって、
第一層は、表面が開口し内部の形状が涙状である孔を複数有するポリウレタン樹脂の多孔層であり、
第二の層は、ポリウレタン樹脂と、ウレア結合数のウレタン結合数に対する割合が5~18%のポリウレタンウレア樹脂とを含有し、第二層のポリウレタン樹脂およびポリウレタンウレア樹脂に対する該ポリウレタンウレア樹脂成分の質量割合が16~36%であり、
第三の層はポリエステルフィルムであり、
第四の層は、接着剤層であり、
第五の層は、圧縮弾性率が0.10~0.50MPaであるクッション層である、
研磨シート。
【請求項2】
第五の層は不織布である請求項1記載の研磨シート。
【請求項3】
第三の層の厚が75~250μmである請求項1または2記載の研磨シート。
【請求項4】
第二の層の厚みが10~30μmであることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の研磨シート。
【請求項5】
第五層が極細繊維不織布であることを特徴とする請求項1~4いずれかに記載の研磨シート。
【請求項6】
第二の層に含まれるポリウレタン樹脂が第一の層に含まれるポリウレタン樹脂と同じものである請求項1~5いずれかに記載の研磨シート。
【請求項7】
第一層から第五層の順に隣接して積層している研磨シートの製造方法であって、
第三の層となるポリエステルフィルムに接着剤を塗布・乾燥して第四の層である接着剤層を形成し、第四の層を介して第三の層と第五の層のクッション層とを貼り合せ、
第三の層の第四の層とは反対の面に、
A.ポリウレタン樹脂、
B.ポリオール化合物、多価アミン化合物およびポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物(ここでB成分はA成分およびB成分の和に対して16~36質量%)
ならびに
C.溶媒
を含有する塗液を塗布して、溶媒を気化させて、ポリオール化合物とアミン化合物とポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物とを化学反応させて、第二の層を形成し、
第二の層の表面に第一の層としてポリウレタン樹脂および溶媒を含有する塗液を塗布し、
凝固浴で湿式凝固して、内部に孔を複数形成させて、洗浄後に乾燥した後、表面にバフ研磨をおこない、孔の第一の層の表面部分を開口させることを特徴とする研磨シートの製造方法。
【請求項8】
第二層に含まれる、ポリオール化合物とアミン化合物とポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物との化学反応から得られるポリウレタンウレア樹脂は、ウレア結合のウレタン結合に対する割合が5~18%である請求項7記載の研磨シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1~6いずれか記載の研磨シートまたは請求項7または8の製造方法で得られた研磨シートで被研磨基板を研磨することを特徴とする基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンベアウエハ、ガラス、化合物半導体基板およびハードディスク基板等に対して良好な鏡面を形成するために使用され、仕上げ用に好適な研磨シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンベアウエハ、ガラス、化合物半導体基板およびハードディスク基板等を鏡面化する手段として、研磨シートを用いた研磨加工法が採用されている。研磨シートは、合成繊維と合成ゴム等とを素材とする不織布や編織布を基材にして、その上面にポリウレタン系溶液が塗布され、湿式凝固法によりポリウレタン系溶液が凝固される工程を経て、表面に複数の開口部を有し、前記開口部から内部に涙滴状の孔を複数有する軟質多孔層を表層に有する構造となっている。表面に複数の開口部を有するために、内部に有する涙滴状の孔を複数有する軟質多孔層の表皮層の表面が研削、除去されることにより開口部を形成する方法が開示されている。(特許文献1参照。)。
【0003】
このような研磨シートは、基板の被研磨面の要求品質が年々厳しくなっている近年では、基材の表面が不織布等で平滑ではないことから、上層の開口部を形成した軟質多孔層で基板を研磨した際に、基板の被研磨面が微細な欠陥が多いという問題と基板のエッジ部の縁ダレが大きいという問題がある。一方で、ポリエステルフィルムの上に軟質多孔層を形成した仕上げ研磨シートも特許文献2に示されているが、軟質多孔層をポリエステルフィルム上に形成した後、該軟質多孔層を剥離して、ポリエステルフィルムと接着して一体化した研磨シートが知られているが、基板のエッジ部の縁ダレは小さいが、製造方法として、基材に軟質多孔層を形成せしめた後、剥離して接着して一体化していることから、剥離時または接着時での軟質多孔層の微妙な残留歪が原因なのか、基板の被研磨面の微細な欠陥が多いという問題があった。さらに、ポリエステルフィルムと軟質多孔層との間の界面の接着力を高める公知技術として、特許文献3に示すようにポリエステルフィルムの上にポリウレタンーポリエステル共重合体の熱可塑性樹脂層を形成した後に、軟質多孔層を直接塗布して形成せしめる技術が知られているが、本技術を利用して得られた研磨シートは、軟質多孔層とポリウレタン―ポリエステル共重合体樹脂層との界面が弱く実用上必要な接着力が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-335979号公報
【文献】特開平12-101339号公報
【文献】特開2000-42909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の背景に鑑み、シリコンベアウエハ、ガラス、化合物半導体基板およびハードディスク基板等において、エッジ部の縁ダレが小さく、微細な欠陥が少ない、より品質の高い被研磨面を得られる、鏡面研磨に好適な研磨シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次の研磨シートを開示する。
【0007】
第一層から第五層の順に隣接して積層している研磨シートであって、
第一層は、表面が開口し内部の形状が涙状である孔を複数有するポリウレタン樹脂の軟質多孔層であり、
第二の層は、ポリウレタン樹脂と、ウレア結合数のウレタン結合数に対する割合が5~18%のポリウレタンウレア樹脂とを含有し、第二層のポリウレタン樹脂およびポリウレタンウレア樹脂に対する該ポリウレタンウレア樹脂成分質量割合が16~36%であり、
第三の層はポリエステルフィルムであり、
第四の層は、接着剤層であり、
第五の層は、圧縮弾性率が0.10~0.50MPaであるクッション層である、
研磨シート。
【0008】
また上記課題を解決するために、本発明は次の研磨シートの製造方法を開示する。
【0009】
第一層から第五層の順に隣接して積層している研磨シートの製造方法であって、
第三の層となるポリエステルフィルムに接着剤を塗布・乾燥して第四の層である接着剤層を形成し、第四の層を介して第三の層と第五の層のクッション層とを貼り合せ、
第三の層の第四の層とは反対の面に、
A.ポリウレタン樹脂、
B.ポリオール化合物、多価アミン化合物およびポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物(ここでB成分はA成分およびB成分の和に対して16~36質量%)
ならびに
C.溶媒
を含有する塗液を塗布して、溶媒を気化させて、ポリオール化合物とアミン化合物とポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物とを化学反応させて、第二の層を形成し、
第二の層の表面に第一の層としてポリウレタン樹脂および溶媒を含有する塗液を塗布し、
凝固浴で湿式凝固して、内部に孔を複数形成させて、洗浄後に乾燥した後、表面にバフ研磨をおこない、孔の第一の層の表面部分を開口させることを特徴とする研磨シートの製造方法。
【0010】
本発明の研磨シートでは以下のいずれかに記載の好ましい態様がある。
第五の層は不織布である。
第三の層の厚さが75~250μmである。
第二の層の厚みが10~30μmである。
第五層が極細繊維不織布である。
第二の層に含まれるポリウレタン樹脂が第一の層に含まれるポリウレタン樹脂と同じものである前記いずれかの研磨シート。
【0011】
本発明の研磨シートの製造方法では以下の好ましい態様がある。
第二層では、ポリオール化合物とアミン化合物とポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物との化学反応から得られるポリウレタンウレア樹脂の、ウレア結合のウレタン結合に対する割合が5~18%である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リコンベアウエハー、ガラス、化合物半導体基板およびハードディスク基板等において、エッジ部の縁ダレが小さく、微細な欠陥が少ない、よりより品質の高い被研磨面を得られる、鏡面研磨に好適な研磨シートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明での研磨シートおよびその製造方法について説明する。
【0014】
本発明において、第一の層である、表面が開口し内部に涙状の孔を複数有するポリウレタン樹脂の多孔層は、ポリウレタン樹脂の湿式凝固法で軟質多孔層を形成できる。ポリウレタンを有機溶媒に溶解させたポリウレタン樹脂溶液を、第二の層の表の面に塗布し、水系凝固液中でポリウレタン樹脂を凝固再生させることにより、製造することができる。本製造方法で、製造されたポリウレタン樹脂の多孔層の表面をサンドペーパー等で表面を研削することで、孔は層の表面に開口部を形成させることができる。湿式凝固法により製造される多孔層は、前記開口部から内部に向けて涙滴状の孔となる
ポリウレタン樹脂の多孔層の厚みは、被研磨基板および研磨プロセスに応じて設定されるが、200~900μmの範囲が好ましい。開口部の開口径は、同様に被研磨基板および研磨プロセスに応じて設定されるが、10~150μmの範囲が好ましい。
【0015】
本発明の多孔層に用いることができるポリウレタン樹脂は、末端に複数の活性水素、特に水酸基を有するプレポリマと複数の複数のイソシアネート基を有する化合物を重付加して得られたウレタン結合を有する重合体である。
【0016】
末端に複数の活性水素を有するプレポリマとしては、主鎖骨格としてポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系およびポリカプロラクタン系などが例示される。
【0017】
第一の層を設けるためのポリウレタン溶液の溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」)、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびN-メチルピロリドン等の極性を有する溶媒が用いられる。上記ポリウレタン樹脂を溶解させる溶媒としては、DMFが好適である。
【0018】
上記ポリウレタン溶液は、他の樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホン等のポリマーを適宜含有することができる。また、ポリウレタン溶液は、必要に応じて、カーボンや有機顔料、表面張力を下げる界面活性剤および撥水性を付与できる撥水剤等も含有することもできる。
【0019】
第二の層はポリウレタン樹脂とポリウレタンウレア樹脂とを含む。
【0020】
第二の層に含まれるポリウレタンとしては、第一の層について説明したものと同様のポリウレタンが例示される。第一の層と第二の層との間の接着力強化のためには、ポリマーの繰り返し構造単位が第一の層のポリウレタン樹脂と同じものを含むポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。さらに同じポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0021】
第二の層に含まれるポリウレタンウレア樹脂は、ウレア結合のウレタン結合に対する割合が5%~18%である。このポリウレタンウレア樹脂は、ポリオール化合物と多価アミン化合物とウレタン結合含有多価イソシアネート化合物とが反応して、ウレタン結合含有多価イソシアネート化合物のイソシアネート基とポリオール化合物の水酸基およびアミン化合物のアミノ基が反応して重合体となりウレタン結合およびウレア結合を有するポリウレタンウレア樹脂となる。
ポリウレタンウレア樹脂の原料となるポリオール化合物とは、分子内に二つ以上のアルコール性水酸基を有する化合物である。具体的には以下のものが例示される。
エチレングリコール、ブチレングリコール等のジオール化合物、
トリオール化合物、
ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール化合物、エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応生成物等のポリエステルポリオール化合物、
ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物。
【0022】
これらの中でもポリテトラメチレングリコールが機械的な靱性が得られるという点で好ましく、数平均分子量が約500~5000がさらに好ましく、さらに好ましくは約1000のポリテトラメチレングリコールである。
【0023】
ポリウレタンウレア樹脂の原料となる多価アミン化合物とは、分子内に二つ以上のアミノ基を有する化合物である。ポリアミン化合物は、架橋剤的な作用を果たし、一部は前記ポリイソシアネート化合物と反応してハードセグメントを形成して、このハードセグメントが疑似架橋的な作用を果たし、一部は後述するポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(ソフトセグメント部)の主鎖末端基と結合して、ポリマー鎖にハードセグメントを形成し、ハードセグメントとソフトセグメントのブロックコポリマーを有するポリウレタンウレア樹脂が作られる。このハードセグメントが疑似架橋剤的な作用をおこなう。
【0024】
ポリアミン化合物を具体的に挙げるとすると、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物、特にはジアミン化合物を使用することができる。以下のものが例示される。エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス-o-クロロアニリン)、メチレン-o-クロロアニリン。またこれらと類似の構造を有するポリアミン化合物。
【0025】
また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシジエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシジプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。ポリアミン化合物としては、靱性の高いという点でジアミン化合物が好ましく、メチレンビス-o-クロロアニリンおよびメチレン-o-クロロアニリン類似構造化合物、ジアミノジフェニルスルホンがより好ましく、メチレンビス-o-クロロアニリンおよびメチレン-o-クロロアニリンの類似構造化合物が特に好ましい。
【0026】
ウレタン結合含有多価イソシアネート化合物は、上記のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、反応させることにより得られる化合物であり、ポリウレタン構造と複数のイソシアネート基を有する。ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物としては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。前記反応に特に制限はなく、ポリウレタンの製造において公知の方法及び条件を用いて付加重合反応すればよい。例えば、45℃に加熱したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹拌しながら55℃に加温した多価イソシアネート化合物を添加し、40分後に85℃まで昇温させ更に85℃にて60分間反応させるといった方法で製造することができる。ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の重量平均分子量として特に制限がないが、靱性の点で、500~2000が好ましく、1000~1500がより好ましい。
【0027】
ポリウレタン結合多価イソシアネートの原料として多価イソシアネート化合物が使用され、分子内に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。以下の化合物が例示される。
m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1、4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-メチレン-(シクロヘキシルイソシアネート)、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3、3’-ジメチルジフェニルメタン-4、4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、エチリジンジイソチオシアネート。
【0028】
第二の層が含有するポリウレタンウレア樹脂は、ウレア結合数のウレタン結合数に対する割合が5%~18%である。この比率はポリオール化合物、アミン化合物、ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物の仕込み量を調整して得ることができる。
また第二の層が含有するポリウレタン樹脂およびポリウレタンウレア樹脂の和に対して、ポリウレタンウレア樹脂の質量割合が16~36%の範囲であることが好ましい態様である。
【0029】
本発明の第二の層に含有されているポリウレタンウレア樹脂においてウレタン結合に対するウレア結合の割合が小さすぎると第二の層と第三の層であるポリエステルフィルムとの界面で剥離が生じやすい。ウレタン結合に対するウレア結合の割合が大きすぎると第一の層と第二の層との界面で剥離が生やすい。
【0030】
本発明では第二の層の好ましい形成方法は、後述の第三の層であるポリエステルフィルムの上に、A.第一の層のポリウレタン樹脂成分と、B.「ポリオール化合物と、多価アミン化合物とおよびポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物」ならびにC.溶媒を含有する塗液を塗布して、溶媒を気化させて、ポリオール化合物とアミン化合物とポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物とを化学反応させて得る方法である。ここでB成分はA成分とB成分の和に対して16~36質量%であることが好ましく、さらに20~33質量%が好ましい。
【0031】
この割合が小さいと、第二の層と第三の層のポリエステルフィルムとの界面で剥離しやすくなる。また、この割合が大きいと、第二の層と第一の層とが剥離しやすくなる。第二の層の該ポリウレタンウレア樹脂成分のより好ましい質量割合は、20~33%の範囲である。第二の層の好ましい形成方法で、B成分の各原料は化学反応でポリウレタンウレア樹脂を形成するが、ウレア結合数のウレタン結合数に対する割合が5~18%となるよう各原料の組成であることが好ましい。
第三の層のポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂をフィルム状にした形状である。ポリエステルフィルムは、表面に処理をしていないタイプ、易接着処理をしているタイプ、離形処理をしているタイプがあるが、第三の層に第一の層を直接形成したものは、界面での剥離強度が小さい傾向があった。ポリエステルフィルムに易接着処理をしているタイプを使用しても、第一の層を直接形成したものであっても、さらに界面での剥離強度が要求されていた。第一の層と第三の層のポリエステルフィルムとの間に、本発明の第二の層を介在させることで、ポリエステルフィルムと第二の層との界面の剥離強度が大きくなり、第二の層と第一の層との界面の剥離強度も高くなる。
第三の層のポリエステルフィルムの厚みは、75μm以上250μm以下が好ましい。厚みが75μmを下回ると、被研磨基板のエッジ部の縁ダレが大きくなるので好ましくない。厚みが250μmを超えると第五層のクッション層の追随性が悪化する影響を反映してか、微細な欠陥が多くなり被研磨基板における品質が得られにくいので好ましくない。
【0032】
第四層は第三の層のポリエステルフィルムと第五の層とを接着させる接着材の層である。この接着剤としては、アクリル樹脂系接着剤、α-オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤および熱可塑性樹脂からなるホットメルト接着剤が挙げられるが、ウレタン樹脂系接着剤やホットメルト接着剤が短時間で接着できるという点で好ましく用いられる。ウレタン樹脂系接着剤については、各種有機溶剤に接着剤を溶解させたものをラミネーターで乾式塗工する方法を好適な例として挙げることができる。
【0033】
ホットメルト接着剤として、日立化成ポリマー(株)製の“ハイボン”(登録商標)シリーズ、三井武田ケミカル(株)の“タケメルト”(登録商標)MAシリーズ、東亜合成(株)の“アロンメルト”(登録商標)Rシリーズ、新田ゼラチン(株)の“ニッタイト”(登録商標)ARXシリーズ、およびコニシ(株)の“ボンド”(登録商標)KUMシリーズを挙げることができる。
【0034】
接着剤の厚みは、接着力が高く維持できているという点で、30~150μmが好ましく、40~100μmがより好ましい。
【0035】
本発明で用いられる第三層のポリエステルフィルムと第五層のクッションとの接合には、第三の層の上に第四層の接着剤を設けて、その後第五の層を貼る方法が挙げられる。る。
【0036】
本発明の第五の層であるクッション層は、圧縮弾性率が0.10~0.50MPaの範囲であるクッション層が好ましい。さらに0.2~0.45MPaが好ましい。クッション層としては、不織布や軟質ゴムの発泡シート等が挙げられるが、体積弾性率が低く、追随性が良好という点で不織布が好ましい。さらに、繊維径が数μm程度の極細繊維不織布は体積弾性率が低く、追随性が面内で均一であるという点で、クッション層としてさらに好ましい。繊維径の好ましい範囲は、1~6μmである。圧縮弾性率が0.10MPaが下回ると、被研磨基板のエッジ部の縁ダレが大きくなるので好ましくない。クッション層の圧縮弾性率が大きいと、被研磨基板全面に第一の層の表面が均一に接触しにくいのか、研磨結果に微細な欠陥が多くなる傾向があるので好ましくない。
【0037】
本発明の研磨シートの好ましい製造方法の手順としては、第三の層であるポリエステルフィルムに接着剤を塗布・乾燥して第四の層である接着剤層を形成し、第四の層を介して第三の層と第五の層とのクッション層の貼り合せをおこない、第三の層のポリエステルフィルムの接着剤層の反対の面に後で示す化合物を含有する液を塗布して、溶媒を気化させて、ポリオール化合物とアミン化合物とポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物とを化学反応させて、第二の層を形成し、 第二の層の表面に第一の層としてポリウレタン樹脂および溶媒を含有する塗布し、凝固浴で湿式凝固して、内部にの孔を複数形成せしめて、洗浄後に乾燥した後、表面にバフ研磨をおこない、孔の第1の層の表面部分を開口させる方法である。ここで第二の層の塗液としては下記のA~Bを含有するものが好ましい。
A.ポリウレタン樹脂、
B.ポリオール化合物、多価アミン化合物およびポリウレタン結合含有多価イソシアネート化合物(ここでB成分はA成分およびB成分の和に対して16~36質量%)
ならびに
C.溶媒
第二の層の塗液を塗布し、乾燥した後、第一の層を塗布する前に、しばらく時間をおいたほうが、第一の層と第二の層との剥離強度が高くなり接着力が安定するので、好ましい。また、第3の層であるポリエステルフィルムに第四の層である接着層を介して、第五の層であるクッション層を貼り合せした後に、第三の層を形成するので、第三の層から第五の層の積層体を巻き取った場合、クッション層と第三の層とが接触する形となるので、ブロッキングが起きないので好ましい。
【0038】
第三の層のポリエステルフィルムに隣接する第二の層の表面に第一の層の樹脂を含有した塗液を塗布する手段の例としては、ロールコーター、ナイフコーター、ナイフオーバーロールコーターおよびダイコーター等が挙げられる。第一の層の樹脂を含有した塗液を塗布した後、軟質多孔層を形成させる凝固浴には、DMFとは親和性を有するが、第一の層の樹脂とは溶解しない溶媒を使用する。一般的には、水または水とDMFとの混合溶液が使用される。
【0039】
第一の層の表面をバフする方法として、サンドペーパーを回転するロールに巻き付けて、回転したサンドペーパー面を第一の層の表面に接触させて研削することで実施することができる。適切な研削量を管理する方法として、サンドペーパーを巻き付けた回転ロールの軸の抵抗値をモニターすることで、適切におこなうことができる。 そして、本発明の研磨シートで、または本発明の研磨シートの製造方法をで得られた研磨シートで被研磨基板を研磨することで光沢面を有する基板を完成することができる。
【実施例
【0040】
以下、実施例によって、さらに本発明の詳細を説明する。しかしながら、本実施例により本発明が限定して解釈される訳ではない。研磨評価および各測定は以下のとおりに行った。
【0041】
〔圧縮弾性率の測定〕
カトーテック社製自動化圧縮試験機(KESFB3-AUTO-A)を使用して、次の条件で測定した。本機を用いて0gf/cmから50gf/cmまで加圧したときの、16gf/cm(0.00157MPa)と40gf/cm(0.00392MPa)のひずみ率から算出した(5回測定の平均値)。
【0042】
・ ひずみ率:(初期厚み-所定圧力時の厚み)/初期厚み
・圧縮弾性率:(0.00392-0.00157)/(40gf/cmでのひずみ率-16gf/cmでのひずみ率)
〔MPa〕
・圧子面積:1.0cm
・圧子速度:0.02mm/sec
・上限荷重:50gf/cm。
【0043】
〔研磨評価〕
岡本工作機械製作所製研磨装置(型式:SPP600)を使用し、 エッジドウエハーをSUBA800で一次研磨した8インチシリコンベアウエハーを用いて、試作した研磨シートの裏面に両面テープを貼り合せして、610mmφの研磨パッドを作製し、次の条件で評価を行った。
・プラテン回転:46rpm
・ウエハヘッド回転:49rpm
・ヘッド荷重:200g/cm
・スラリー量:700ml/min(スラリー:コロイダルシリカスラリー砥粒濃度1%)
・研磨時間:15分。
【0044】
・ダミーウエハーを100枚研磨した後、上記8インチシリコンベアウエハーを研磨した。
【0045】
〔シリコンウエハー上の欠陥〕
上記研磨条件で研磨したシリコンウエハ表面を、ケーエルエー・テンコール社製、 SURFSCAN SP-3で分析を行い、0.026μmの欠陥数を求めた。
【0046】
〔シリコンウエハーのエッジ部の縁ダレ〕
上記研磨条件で、ZYGO NewView7300で、エッジ部の2mm外周の縁ダレの測定をおこなった。
〔ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物の合成〕
2,4―トリレンジイソシアネート、279質量部と、数平均分子量約1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、284質量部と、ジエチレングリコール、64質量部とを反応させ、イソシアネート基含有量が9.6質量%のウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物(1)を合成した。
【0047】
〔ポリオール化合物とアミン化合物との混合物の調製〕
ポリオール化合物とアミン化合物の混合物(1):
数平均分子量約1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、100質量部を120℃に加熱し、メチレンビス-o-クロロアニリンを120℃に加熱して液状にして、1.40質量部を混合して、ポリオール化合物とアミン化合物との混合物(1)を調製した。
【0048】
ポリオール化合物とアミン化合物の混合物(2):
数平均分子量約1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、100質量部を120℃に加熱し、同じく120℃に加熱して液状としたメチレンビス-o-クロロアニリンを120℃に加熱して液状にして、2.96質量部を添加して、ポリオール化合物とアミン化合物との混合物(2)を調製した。
【0049】
ポリオール化合物とアミン化合物の混合物(3):
数平均分子量約1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、100質量部を120℃に加熱し、メチレンビス-o-クロロアニリンを120℃に加熱して液状にして、4.71質量部を混合して、ポリオール化合物とアミン化合物との混合物(3)を調製した。
【0050】
ポリオール化合物とアミン化合物の混合物(4):
数平均分子量約1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、100質量部を120℃に加熱し、120℃に加熱して液状にしたメチレンビス-o-クロロアニリンを、0.82質量部を混合して、ポリオール化合物とアミン化合物との混合物(4)を調製した。
【0051】
ポリオール化合物とアミン化合物の混合物(5):
数平均分子量約1000のポリテトラメチレンエーテルグリコールの100質量部を120℃に加熱し、120℃に加熱して液状にしたメチレンビス-o-クロロアニリンを、6.26質量部を混合して、ポリオール化合物とアミン化合物の混合物(5)を調製した。
【0052】
以下、実施例および比較例を説明する。表1に研磨シートの組成を示し、表2には得られた研磨シートによる研磨特性を示す。
【0053】
[実施例1]
第三の層となる75μmのポリエステルフィルムに、第四の層となるアクリル系接着剤を、層厚みが50μmとなるように塗布し、第五の層となる繊維径14μmの繊維綿を使用した圧縮弾性率0.25MPaの不織布(厚み:0.9mm)を接着した。
【0054】
固形分濃度30%のポリエステル系ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液100質量部、ジメチルホルムアミド溶媒を60質量部、発泡助剤1.5質量部、および顔料としてカーボンブラックを20%含有するジメチルホルムアミド溶液、10質量部をそれぞれ分散して、第一の層である軟質多孔層を形成する塗液を事前に調製しておいた。
【0055】
第一の層と同じポリエステル系ポリウレタン20.60質量部と、ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物(1)、3.78質量部と、ポリオール化合物とアミン化合物との混合物(1)、4.16質量部と、ジメチルホルムアミドの257質量部を混合して、塗液を調製して、第三の層~第五の層の積層体の第三の層であるポリエステルフィルムの表面に塗布・乾燥して、第二の層を45μm厚みで形成した。第二の層の中の、該ポリウレタンウレア樹脂のウレア結合数のウレタン結合数に対する比率は5.26%であり、樹脂全体でのポリウレタンウレア樹脂の質量割合は、27.82%であった。
【0056】
第二の層の表面に、第一の層を形成する塗液を塗布して、ジメチルホルムアミド10%の水溶液の凝固浴に浸漬して、湿式凝固をおこない、水で洗浄してジメチルホルムアミドを除き、乾燥して、第一の層として軟質である多孔層を厚み550μmで形成した。第一の層の表面をサンドペーパーで研削し研磨シートを得た。
【0057】
得られた研磨シートの断面を観察したところ第一の層には涙状の孔が多数形成され、孔の表層では平均で40μmの直径の穴が形成されていた。得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートでの層間剥離はなく、問題なく研磨できた。欠陥数およびエッジ部の縁ダレについては、表2に示すように良好であった。
【0058】
[実施例2]
第三の層となる100μmのポリエステルフィルムに、第四の層となるアクリル系接着剤を60μmで塗布し、第五の層となる繊維径14μmの繊維綿を使用した圧縮弾性率0.11MPaの不織布(厚み:1.2mm)を接着した。
【0059】
実施例1と同じ第一の層となる塗液に事前に調製しておいた。
【0060】
第一の層と同じポリエステル系ポリウレタン、23.01質量部と、ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物(1)、2.24質量部と、ポリオール化合物とアミン化合物との混合物(2)、2.37質量部と、ジメチルホルムアミド249質量部とを混合して、塗液を調製して、第三の層~第五の層の積層体の第三の層であるポリエステルフィルムの表面に塗布・乾燥して、第二の層を35μm厚みで形成した。第二の層の中の、ポリウレタンウレア樹脂のウレア結合数のウレタン結合数に対する比率は11.11%であり、樹脂全体のポリウレタンウレア樹脂の質量割合は、16.67%であった。本第二の層の表面に、第一の層である多孔層を形成する塗液を塗布して、ジメチルホルムアミド10%の水溶液の凝固浴に浸漬して、湿式凝固をおこない、水で洗浄してジメチルホルムアミドを除き、乾燥して、第一の層として、軟質である多孔層を450μmの厚みで形成した。第一の層の表面をサンドペーパーで研削し研磨シートを得た。
【0061】
得られた研磨シートの断面を観察したところ第一の層には涙状の孔が多数形成され、孔の表層部分では平均で50μmの直径の穴が形成されていた。得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。特に研磨シートでの層間剥離はなく、問題なく研磨できた。欠陥数およびエッジ部の縁ダレについては、表2に示すように良好であった。
【0062】
[実施例3]
第三の層となる245μmのポリエステルフィルムに、第四の層となるアクリル系接着剤を厚み40μmで塗布し、第五の層となる繊維径14μmの繊維綿を使用した圧縮弾性率0.48MPaの不織布(厚み:0.7mm)を接着した。
【0063】
固形分濃度30%のポリエステル系ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液100質量部、ジメチルホルムアミド溶媒60質量部、発泡助剤1.5質量部、および顔料であるカーボンブラックを20%含有するジメチルホルムアミド溶液を10質量部をそれぞれ分散して、第一の層である軟質多孔層を形成する塗液を調製しておいた。
【0064】
第一の層と同じポリエステル系ポリウレタン23.73質量部と、ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物(3)、6.33質量部と、ポリオール化合物とアミン化合物との混合物(3)の6.44質量部と、ジメチルホルムアミド328.5質量部とを混合して、塗液を調製して、第三の層~第五の層の積層体の第三の層であるポリエステルフィルムの表面に塗布・乾燥して、第二の層を60μm厚みで形成した。第二の層の中の、ポリウレタンウレア樹脂のウレア結合数のウレタン結合数に対する比率は17.65%であり、樹脂全体のポリウレタンウレア樹脂の質量比は、34.98%であった。
【0065】
第二の層の表面に、第一の層を形成する塗液を塗布して、ジメチルホルムアミド10%の水溶液の凝固浴に浸漬して、湿式凝固をおこない、水で洗浄してジメチルホルムアミドを除き、乾燥して、第一の層として軟質な多孔層を600μmの厚みで形成した。第一の層の表面をサンドペーパーで研削して、研磨シートを形成した。表面の開口径は平均60μmであった。
【0066】
得られた研磨シートの断面を観察したところ第一の層には涙状の孔が多数形成され、孔の表層部分では平均直径60μmの穴が形成されていた。得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは特に層間剥離なく、問題なく研磨できた。欠陥数およびエッジ部の縁ダレについては、表2に示すように良好であった。
【0067】
[比較例1]
実施例1で用いた不織布の代わりに、繊維径は同じで、表1に示すように密度を変えて、圧縮弾性率0.09MPa(厚み:0.9mm)を変更した以外は、すべて同じ条件で研磨シートを作製した。
【0068】
得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは層間剥離せず、特に問題なく研磨できた。ただし欠陥数およびエッジ部の縁ダレについては、表2に示すようにエッジ部の縁ダレが不良であった。
【0069】
[比較例2]
実施例1で用いた不織布の代わりに、繊維径は同じで、表1に示すように密度を変えて、圧縮弾性率0.57MPa(厚み:0.8mm)を変更した以外は、すべて同じ条件で研磨シートを作製した。
【0070】
得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは剥離せず、特に問題なく研磨できた。欠陥数およびエッジ部の縁ダレについては、表2に示すように欠陥数が多く不良であった。
[比較例3]
実施例1で用いた第二の層の塗液成分を変更し、実施例1の第一の層で使用したポリエステル系ポリウレタン、20.61質量部と、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(1)、1.77質量部と、ポリオール化合物とアミン化合物との混合物(1)、1.95質量部と、ジメチルホルムアミド、219質量部を混合して、塗液を調製して、第三の層~第五の層の積層体の第三の層であるポリエステルフィルム表面に塗布・乾燥して、第二の層を45μm厚みで形成した。第二の層の中の、ポリウレタンウレア樹脂のウレア結合数のウレタン結合数に対する比率は5.26%であり、樹脂全体のポリウレタンウレア樹脂の質量比は、15.29%であった。それ以外は、実施例1と同じ条件で研磨シートを作製した。
【0071】
得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは、ダミーウエハーを100枚研磨中に、第三の層であるポリエステルフィルム第二の層との間で剥離が生じており、適切に研磨することができなかった。
[比較例4]
実施例1で用いた第二の層の塗液成分を変更し、実施例の第一の層で使用したポリエステル系ポリウレタン、20.55質量部と、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(1)、6.05質量部と、ポリオール化合物とアミン化合物との混合物(1)の6.66質量部と、ジメチルホルムアミド、299質量部を混合して、塗液を調製して、第三の層~第五の層の積層体の第三の層であるポリエステルフィルム表面に塗布・乾燥して、第二の層を45μm厚みで形成した。第二の層の中の、ポリウレタンウレア樹脂のウレア結合数のウレタン結合数に対する比率は5.26%であり、樹脂全体のポリウレタンウレア樹脂の質量比は、38.21%であった。それ以外は、実施例1と同じ条件で研磨シートを作製した。
【0072】
得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは、ダミーウエハーを100枚研磨中に、一部の部分で第一の層と第二の層との界面で、多孔層が剥離を生じており、適切に研磨することができなかった。
【0073】
[実施例4]
実施例2における不織布の代わりに、表1に示すように繊維径4μmの極細繊維からなる不織布で圧縮弾性率0.30MPa(厚み:0.95mm)を用いて、他の条件は実施例2と同じようにして、研磨シートを作製した。
【0074】
得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは層間剥離もせず、特に問題なく研磨ができた。欠陥数およびエッジ部の縁ダレは、表2に示すように良好であった。
【0075】
[実施例5]
実施例1で用いたポリエステルフィルムの厚みを60μmのものを用いた以外は、実施例1と同じ条件で研磨シートを作製した。得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは剥離もせず、特に問題なく研磨できた。欠陥数およびエッジ部の縁ダレは、表2に示すような結果であった。
【0076】
[実施例6]
実施例1で用いたポリエステルフィルムの厚みを300μmのものを用いた以外は、実施例1と同じ条件で研磨シートを作製した。得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは剥離もせず、特に問題なく研磨できた。欠陥数およびエッジ部の縁ダレは、表2に示すような結果であった。
【0077】
[実施例7]
実施例1で用いた不織布の代わりに、圧縮率が0.3MPaの軟質発泡ポリウレタンシート(厚み:0.95mm)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で研磨シートを作製した。得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは剥離もせず、特に問題なく研磨できた。欠陥数およびエッジ部の縁ダレは、表2に示すような結果であった。
【0078】
[比較例5]
実施例1で、第一の層に用いたポリエステル系ポリウレタン24.01質量部と、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(1)、3.78質量部と、ポリオール化合物とアミン化合物の混合物(4)、4.22質量部と、ジメチルホルムアミドの288質量部を混合して、塗液を調製して、第三の層~第五の層の積層体の第三の層であるポリエステルフィルム表面に塗布・乾燥して、第二の層を50μm厚みで形成した。第二の層の中の、ポリウレタンウレア樹脂のウレア結合数のウレタン結合数に対する比率は3.09%であり、樹脂全体のポリウレタンウレア樹脂の質量比は、25.00%であった。それ以外の条件は、実施例1と同じ条件で研磨シートを作製した。
【0079】
得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは、ダミーウエハーを100枚研磨中に、第三の層とポリエステルフィルムと第二のとの間の一部で剥離が生じており、研磨することができなかった。
【0080】
[比較例6]
実施例1で、第一の層の樹脂であるポリエステル系ポリウレタン26.80質量部と、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(1)、3.78質量部と、ポリオール化合物とアミン化合物の混合物(5)、3.78質量部と、ジメチルホルムアミドの309質量部を混合して、塗液を調製して、第三の層~第五の層の積層体の第三の層であるポリエステルフィルム表面に塗布・乾燥して、第二の層を50μm厚みで形成した。第二の層の中の、ポリウレタンウレア樹脂のウレア結合数のウレタン結合数に対する比率は20.48%であり、樹脂全体の該ポリウレタンウレア樹脂の質量割合は、22.00%であった。それ以外の条件は、実施例1と同じ条件で研磨シートを作製した。
【0081】
得られた研磨シートで、研磨装置を使用してシリコンウエハーを研磨した。研磨シートは、ダミーウエハーを100枚研磨中に、第一の層は第二の層との界面の一部で、剥離が生じており、研磨することができなかった。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】