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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】データ作成システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
H05K13/04 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018110771
(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公開番号】P2019216130
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 道明
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332792(JP,A)
【文献】特開2004-055705(JP,A)
【文献】特開2005-166944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着ヘッドに取り付けられたノズルで部品を吸着し前記部品を下方に押し込むことによって基板に装着する部品実装システムにおいて用いられる実装用データを作成するデータ作成システムであって、
前記部品が受ける押し込み荷重の下限値および上限値である第1の下限値および第1の上限値を記憶する部品情報記憶部と、
複数の装着ヘッドが押し込み荷重を制御する機能を具備しているか否かと前記複数の装着ヘッドが作用させる押し込み荷重の下限値および上限値である第2の下限値および第2の上限値を記憶する装着ヘッド情報記憶部と、
前記部品情報記憶部に記憶された第1の下限値および第1の上限値と、前記装着ヘッド情報記憶部に記憶された前記複数の装着ヘッドの第2の下限値および第2の上限値とに基づいて、前記複数の装着ヘッドのうち前記部品に対して使用可能な装着ヘッドを選択して前記部品に割り当てるヘッド割当部と、を備え
前記ヘッド割当部は、前記押し込み荷重を制御する機能があり、前記第2の下限値が前記第1の上限値以下又は前記第2の上限値が前記第1の下限値以上の条件を満たす装着ヘッドと、前記押し込み荷重を制御する機能がなく、前記第2の下限値が前記第1の下限値以上且つ前記第2の上限値が前記第1の上限値以下の条件を満たす装着ヘッドとを選択する、データ作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装システムにおいて用いられる実装用データを作成するデータ作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に部品を実装して実装基板を製造する部品実装システムを構成する部品実装装置では、装着ヘッドによって部品供給部から部品を取り出して基板に装着する部品実装動作が反復して実行される。この部品実装動作においては、装着ヘッドに取り付けられたノズルによって部品を吸着して保持し、基板に対して部品を押圧することにより、保持した部品を実装位置に装着する(例えば特許文献1参照)。この特許文献例に示す先行技術では、部品を基板に押圧する実装荷重が小さい軽実装荷重の部品を装着対象に含めることが可能な構成が記載されている。
【0003】
基板に実装される部品の実装荷重は部品の種類によって異なっており、これら実装荷重が異なる複数種類の部品を対象とする部品実装システムでは、異なる実装荷重に対応可能なように、対象荷重範囲が異なる複数種類の装着ヘッドが準備される。そして部品実装作業の実行に先立って作成される実装用データによって、各部品に対してそれぞれの部品に使用される装着ヘッドの割り当てが予め決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-151893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
部品実装システムにおいて使用される装着ヘッドには、荷重制御機能を備えたものや、荷重制御機能を有しないものが混在して使用される。荷重制御機能を備えた装着ヘッドでは、予め設定された荷重範囲では任意の実装荷重で部品を押圧することが可能となっている。これに対し荷重制御機能を有しない装着ヘッドでは、従来より実装荷重の指定がないチップ部品など限定された種類の部品のみが対象部品とされる。
【0006】
実装対象となる多種類の部品のうち、上述の限定された種類の部品以外には部品サプライヤにより実装荷重が指定されており、従来はこのような部品については指定された実装荷重に対応させるために荷重制御機能を有する装着ヘッドのみを割り当てる運用がなされていた。このため、実装用データの作成において部品に対する装着ヘッドの割り当ての自由度が制約されて、部品実装動作における部品配置や動作シーケンスの最適化が阻害される結果となっていた。
【0007】
そこで本発明は、部品に対する装着ヘッドの割り当ての自由度を拡大し、部品実装動作における部品配置や動作シーケンスの最適化の効果を向上させることができるデータ作成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデータ作成システムは、装着ヘッドに取り付けられたノズルで部品を吸着し前記部品を下方に押し込むことによって基板に装着する部品実装システムにおいて用いられる実装用データを作成するデータ作成システムであって、前記部品が受ける押し込み荷重の下限値および上限値である第1の下限値および第1の上限値を記憶する部品情報記憶部と、複数の装着ヘッドが押し込み荷重を制御する機能を具備しているか否かと前記複数の装着ヘッドが作用させる押し込み荷重の下限値および上限値である第2の下限値および第2の上限値を記憶する装着ヘッド情報記憶部と、前記部品情報記憶部に記憶された第1の下限値および第1の上限値と、前記装着ヘッド情報記憶部に記憶された前記複数の装着ヘッドの第2の下限値および第2の上限値とに基づいて、前記複数の装着ヘッドのうち前記部品に対して使用可能な装着ヘッドを選択して前記部品に割り当てるヘッド割当部と、を備え、前記ヘッド割当部は、前記押し込み荷重を制御する機能があり、前記第2の下限値が前記第1の上限値以下又は前記第2の上限値が前記第1の下限値以上の条件を満たす装着ヘッドと、前記押し込み荷重を制御する機能がなく、前記第2の下限値が前記第1の下限値以上且つ前記第2の上限値が前記第1の上限値以下の条件を満たす装着ヘッドとを選択する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品に対する装着ヘッドの割り当ての自由度を拡大し、部品実装動作における部品配置や動作シーケンスの最適化の効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
図2】本発明の一実施の形態の部品実装システムに配置された部品実装装置の平面図
図3】本発明の一実施の形態の部品実装システムの制御系の構成を示すブロック図
図4】本発明の一実施の形態の部品実装システムにおける装着ヘッド情報および部品情報の説明図
図5】本発明の一実施の形態の部品実装システムにおける実装用データ作成処理を示すフロー図
図6】本発明の一実施の形態の部品実装システムにおける実装用データ作成処理を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は基板に部品を実装して実装基板を生産する機能を有しており、基板供給装置M1、基板受渡装置M2、半田印刷装置M3、同一構成の部品実装装置M4、M5およびリフロー装置M6、基板回収装置M7を直列に連結して構成された部品実装ライン1aを主体としている。基板供給装置M1~基板回収装置M7の各装置は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。
【0012】
基板供給装置M1によって供給された基板6(図2参照)は基板受渡装置M2を介して半田印刷装置M3に搬入され、ここで基板6に部品接合用の半田をスクリーン印刷する半田印刷作業が行われる。半田が印刷された基板6は部品実装装置M4、M5に順次受け渡され、部品実装装置M4、M5にそれぞれ設けられた部品実装ステージにて、半田が印刷された基板6に対して部品を実装する部品実装作業が実行される。部品が実装された基板6はリフロー装置M6に搬入され、ここで所定の加熱プロファイルにしたがって加熱されることにより部品接合用の半田が溶融固化する。これにより部品が基板6に半田接合されて基板6に部品を実装した実装基板が完成し、基板回収装置M7に回収される。
【0013】
次に図2を参照して、部品実装装置M4,M5の構造を説明する。図2において、基台4上にはX方向に基板搬送機構5が配設されている。基板搬送機構5は部品が実装される基板6をコンベアにより搬送し、基板搬送機構5上に設けられ実装作業位置に基板6を位置決めする。基板搬送機構5の両側方には、部品供給部7が設けられている。
【0014】
部品供給部7には部品を供給するテープフィーダ8を装着するためにY方向に形成された複数のフィーダスロット(図示省略)が、X方向に並設されている。各フィーダスロットには、当該基板6の基板種類について予め設定された部品配置データ26b(図3参照)にしたがってテープフィーダ8が装着される。テープフィーダ8は供給リールから引き出されたキャリアテープをピッチ送りすることにより、キャリアテープに保持された部品を以下に説明する装着ヘッド12による取り出し位置に供給する。
【0015】
基台4上面においてX方向の一方側の端部には、リニア駆動機構を備えたY軸移動テーブル10が配設されており、Y軸移動テーブル10には、同様にリニア駆動機構を備えた2基のX軸移動テーブル11が、Y方向に移動自在に結合されている。2基のX軸移動テーブル11には、それぞれ装着ヘッド12がX方向に移動自在に装着されている。装着ヘッド12は複数の単位ヘッドを備えた多連型ヘッドであり、それぞれの単位ヘッドの下端部には、部品を吸着して保持し個別に昇降可能な吸着ノズル(図示省略・・以下単に「ノズル」と略記)が装着されている。
【0016】
Y軸移動テーブル10、X軸移動テーブル11を駆動することにより、装着ヘッド12はX方向、Y方向に移動する。そして2つの装着ヘッド12に取り付けられたノズルによって、それぞれ対応した部品供給部7のテープフィーダ8の部品吸着位置から部品を吸着し、この部品を下方に押し込むことにより基板6に装着する。Y軸移動テーブル10、X軸移動テーブル11および装着ヘッド12は、部品を保持した装着ヘッド12を移動させることにより部品を取り出して基板6に装着する部品装着機構13を構成する。
【0017】
部品供給部7と基板搬送機構5との間には、部品認識カメラ9およびノズル収納部15が配設されている。部品供給部7から部品を取り出した装着ヘッド12が部品認識カメラ9の上方を移動する際に、部品認識カメラ9は装着ヘッド12に保持された状態の部品を撮像して認識する。ノズル収納部15には、装着ヘッド12に装着されるノズルが収納されている。装着ヘッド12がノズル収納部15にアクセスして所定のノズル交換動作を実行することにより、装着ヘッド12には保持対象の部品に対応したノズルが装着される。
【0018】
なお本実施の形態においては、部品と装着ヘッド12との対応関係は、部品実装装置M4,M5の記憶部32(図3参照)に記憶された実装用データ26に含まれるヘッド割り当てデータ26aによって規定されている。ヘッド割り当てデータ26aは、以下に説明する管理コンピュータ3の演算部20が備えたヘッド割当部20bの演算処理機能によって求められる。
【0019】
装着ヘッド12にはX軸移動テーブル11の下面側に位置して、それぞれ装着ヘッド12と一体的に移動する基板認識カメラ14が装着されている。装着ヘッド12が移動することにより、基板認識カメラ14は基板搬送機構5に位置決めされた基板6の上方に移動し、基板6を撮像して認識する。装着ヘッド12による基板6への部品実装動作においては、部品認識カメラ9による部品の認識結果と、基板認識カメラ14による基板認識結果とを加味して搭載位置補正が行われる。
【0020】
次に図3を参照して、部品実装システム1の制御系の構成を説明する。図3において、管理コンピュータ3は演算部20、記憶部21、操作・入力部27、表示部28および通信部29を備えている。管理コンピュータ3は、通信インターフェイスである通信部29および通信ネットワーク2を介して、部品実装システム1を構成する他装置との間での制御信号やデータの授受を行う。
【0021】
演算部20は、ヘッド割当部20b、最適化演算部20cを備えた実装用データ作成部20aを有している。実装用データ作成部20aは、部品実装システム1の部品実装装置M4、M5において用いられる実装用データ26を作成する機能を有する。実装用データ作成部20aを有する管理コンピュータ3は、部品実装システム1において実装用データ26を作成するデータ作成システムを構成する。
【0022】
実装用データ26には、各部品実装装置M4,M5の部品供給部7における部品配置、ノズル収納部15におけるノズル配置や、部品実装作業における動作順序を示す作業シーケンスなどが含まれる。作成された実装用データ26は、以下に説明する記憶部21に基板種類ごとに記憶されるとともに、部品実装装置M4,M5に伝達されてそれぞれの記憶部32に記憶され、部品装着作業時に参照される。
【0023】
演算部20による実装用データ作成に際しては、記憶部21に記憶された以下のデータが参照される。記憶部21には、設備構成情報22、装着ヘッド情報23、生産データ24、部品情報25が、外部装置から入力されて記憶されている。設備構成情報22は、部品実装ライン1aを構成する各装置における設備構成を示す情報である。部品実装装置M4、M5についての設備構成情報22には、それぞれに取り付けられた装着ヘッド12の仕様情報を示す装着ヘッド情報23が含まれている(図4参照)。ここで装着ヘッド情報23には、装着ヘッド12が作用させる押し込み荷重の荷重範囲に関する情報が含まれている。
【0024】
生産データ24は、生産対象となる実装基板の生産に必要な基板や部品に関する情報である。生産データ24には、部品実装装置M4、M5によって装着される部品に関する部品情報25が含まれており、さらに部品情報25には当該部品が受ける押し込み荷重の荷重範囲に関する情報が含まれている。
【0025】
実装用データ26には、ヘッド割り当てデータ26a、部品配置データ26bが含まれている。ヘッド割り当てデータ26aは、部品実装ライン1aの各装置に取り付けられた複数の装着ヘッド12のうち、装着対象の部品に対して使用可能な装着ヘッド12を選択して部品に割り当てるデータである。部品配置データ26bは、部品実装装置M4,M5の各部品供給部7における部品配置を示すデータである。すなわち部品供給部7に設けられた複数のフィーダスロットのスロットアドレスのそれぞれに、装着対象の部品種類を対応させることにより部品配置データが構成されている。
【0026】
実装用データ作成部20aによる部品配置データ26bの作成に際しては、所与の制約条件の下で、部品実装作業の効率を極力向上させる最適化を目的とした演算が実行される。これらの制約条件としては、本実施の形態ではヘッド割当部20bによって決定されたヘッド割り当てデータ26aに基づくヘッド割り当てを所与の条件として、最適化演算が最適化演算部20cによって実行される。
【0027】
操作・入力部27は、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスを備えた入力装置であり、管理コンピュータ3への操作入力やデータ入力を行う。表示部28は、液晶パネルなどの表示装置であり、操作入力や演算部20による演算処理のための案内画面などの各種の画面を表示する。通信部29は、通信インターフェイスであり、通信ネットワーク2を介して部品実装装置M4、M5など他装置との間で制御信号やデータの授受を行う。
【0028】
部品実装装置M4、M5は、通信部30、装置制御部31、記憶部32、機構駆動部33、操作・入力部34および表示部35を備えている。通信部30は通信インターフェイスであり、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3や他装置との間の信号の授受を行う。装置制御部31は記憶部32に記憶された実装用データ26など部品実装作業の実行に必要なデータに基づき、当該部品実装装置の動作制御を行う。
【0029】
機構駆動部33は装置制御部31によって制御されて、基板搬送機構5や部品装着機構13を駆動する。操作・入力部34は、タッチパネルなどの入力装置であり、当該部品実装装置への操作入力やデータ入力を行う。表示部35は、液晶パネルなどの表示装置であり、操作・入力部34による操作入力時の案内画面や各種の報知画面を表示する。
【0030】
ここで図4を参照して、記憶部21に記憶される装着ヘッド情報23および部品情報25について説明する。なお部品情報25についての説明では、装着ヘッド情報23および部品情報25に基づいて、ヘッド割当部20bによって実行されるヘッド割り当ての実行形態を、「ヘッド選択肢」25dにて例示している。
【0031】
図4(a)は、装着ヘッド情報23の構成を示している。ここでは、A、B、C、Dの4種類の装着ヘッド12について、「荷重制御機能」23c、「第2の下限値」23a、「第2の上限値」23bが規定されている。なお、以下の記述においては、A、B、C、Dで示される装着ヘッド12を、単にヘッドA、B、C、Dと略記する。
【0032】
「荷重制御機能」23cは、部品の吸着・装着時に部品を押し込む押し込み荷重を制御する機能を具備しているか否かを明示する。ここに示す例では、ヘッドA、Bの2種類は荷重制御機能を備えていない。これに対し、ヘッドC、Dの2種類は、それぞれ(0.5~5N)、(5~100N)の範囲で押し込み荷重を制御することが可能な荷重制御機能を備えた例が示されている。
【0033】
「第2の下限値」23a、「第2の上限値」23bは、図3において記憶部21に記憶される「第2の下限値」23a、「第2の上限値」23bに対応しており、A、B、C、Dのそれぞれについて1対で設定されている。すなわち、ヘッドA、B、C、Dのそれぞれは、(0.5~3N)、(1~3N)、(0.5~5N)、(5~100N)の荷重範囲で押し込み荷重を作用させて使用することが許容されている。
【0034】
上述構成の装着ヘッド情報23を記憶する記憶部21は、複数の装着ヘッド12が作用させる押し込み荷重の下限値および上限値である第2の下限値23aおよび第2の上限値23bを記憶する装着ヘッド情報記憶部となっている。
【0035】
図4(b)は、部品情報25の構成を示している。ここでは、a、b、c、d、eの5種類の部品について、「荷重設定」25c、「第1の下限値」25a、「第1の上限値」25bが規定されている。なお「ヘッド選択肢」25dは、これらの部品に対して図4(a)に示す装着ヘッド12を割り当てる場合に許容されるヘッド選択肢の例を示している。
【0036】
「荷重設定」25cは、部品サプライヤによって推奨的に指定される押し込み荷重である。ここに示す例では、汎用部品である部品a以外のb、c、d、eのそれぞれについて、1N、1N、8N、50Nの固定値が設定されている。
【0037】
「第1の下限値」25a、「第1の上限値」25bは、図3において記憶部21に記憶される「第1の下限値」25a、「第1の上限値」25bに対応しており、b、c、d、eのそれぞれについて1対で設定されている。すなわち、b、c、d、eで示される部品のそれぞれは、(0.5~1N)、(1~3N)、(3~10N)、(50~100N)の荷重範囲で押し込み荷重を受けることが許容されている。
【0038】
上述構成の部品情報25を記憶する記憶部21は、装着対象の部品が受ける押し込み荷重の下限値および上限値である第1の下限値25aおよび第1の上限値25bを記憶する部品情報記憶部となっている。
【0039】
そして実装用データ作成部20aが備えたヘッド割当部20b は、上述の部品情報記憶部に記憶された第1の下限値25aおよび第1の上限値25bと、上述の装着ヘッド情報記憶部に記憶された複数の装着ヘッド12の第2の下限値23aおよび第2の上限値23bとに基づいて、複数の装着ヘッド12のうち部品に対して使用可能な装着ヘッド12を選択して部品に割り当てる機能を有している。
【0040】
ここで図4(b)の「ヘッド選択肢」25dに示すヘッド選択の実行形態について説明する。部品aについては、「荷重設定」25cにて荷重設定がないことから、装着ヘッド情報23にて示す全ての装着ヘッド12、すなわちヘッドA、B、C、Dのいずれをも部品aに割り当てることが許容される。
【0041】
また部品bでは、荷重範囲が(0.5~1N)であり、ヘッドCの荷重範囲(0.5~5N)と部分的に重なる範囲が存在する。これにより、部品bについてのヘッド選択肢としてヘッドCが挙げられる。また部品cでは、荷重範囲が(1~3N)であり、ヘッドBの荷重範囲(1~3N)と完全に重なっており、またヘッドCの荷重範囲(0.5~5N)とは部分的に重なる範囲が存在する。これにより、部品cについてのヘッド選択肢としてヘッドB、Cが挙げられる。
【0042】
また部品dでは、荷重範囲が(3~10N)であり、ヘッドCの荷重範囲(0.5~5N)と部分的に重なる範囲が存在し、またヘッドDの荷重範囲(5~100N)とも部分的に重なる範囲が存在する。これにより、部品dについてのヘッド選択肢としてヘッドC、Dが挙げられる。さらに部品eでは、荷重範囲が(50~100N)であり、ヘッドDの荷重範囲(5~100N)とは部分的に重なる範囲が存在する。これにより、部品eについてのヘッド選択肢としてヘッドDが挙げられる。
【0043】
上述のヘッド選択の実行形態において、部品cに対してヘッドBを割り当てる例では、部品cについての荷重範囲がヘッドBについての荷重範囲に完全に含まれる形態となっている。すなわちこの形態では、ヘッド割当部20bは、第2の下限値23aが第1の下限値25a以上且つ第2の上限値23bが第1の上限値25b以下の条件を満たす装着ヘッド12を選択するようになっている。
【0044】
なおヘッド選択においては、部品についての荷重範囲がヘッドについての荷重範囲に含まれることが望ましいが、常にこのような割り当てが可能であるとは限らない。このような場合には、部品についての荷重範囲とヘッドについての荷重範囲に重なる範囲が存在するような組合わせで部品にヘッドを割り当てるようにする。
【0045】
例えば図4(b)に示すヘッド選択肢の例では、部品bに対してヘッドCを割り当てる例、部品dに対してヘッドC,Dを割り当てる例、また部品eに対してヘッドDを割り当てる例においては、部品についての荷重範囲とヘッドについての荷重範囲とは部分的に重なる形態となっている。すなわちこれらの形態では、ヘッド割当部20bは、第2の下限値23aが第1の上限値25b以下又は第2の上限値23bが第1の下限値25a以上の条件を満たす装着ヘッド12を選択するようになっている。
【0046】
次に、図5図6を参照して、部品実装システム1における実装用データ作成処理について説明する。先ず図5は、対象となる部品実装ライン1aに荷重制御機能付きの装着ヘッド12と荷重制御機能を有しない装着ヘッド12とが混在して配置されており、荷重制御機能を有しない装着ヘッド12については荷重閾値が設定されていない場合の例を示している。
【0047】
図5において、先ず対象基板の生産データを取得する(ST1)。すなわち、部品実装システム1において管理コンピュータ3の記憶部21に予め記憶された生産データ24を読み出す。次いで対象となる部品実装ラインの設備構成情報を取得する(ST2)。すなわち同様に管理コンピュータ3の記憶部21に予め記憶された設備構成情報22を読み出す。
【0048】
次に読み出された生産データ24を参照して、対象部品に押し込み荷重の荷重閾値が設定されているかを判断する(ST3)。ここで荷重閾値が設定されていない場合には、対象となる基板の部品については押し込み荷重の考慮が不要であると判断して、以下の(ST6)までの処理をスキップして、部品配置の最適化を実施する(ST7)。
【0049】
これに対し、(ST3)にて荷重閾値が設定されている場合には、読み出された設備構成情報22を参照して、対象となる部品実装ライン1aに荷重制御機能付きの装着ヘッド12があるか否かを判断する(ST4)。ここで荷重制御機能付きの装着ヘッド12がない場合には、生産対象となる基板の当該部品実装ライン1aでの生産が不可である旨を、表示部28を介して作業者に報知する(ST5)。
【0050】
これに対し、荷重制御機能付きの装着ヘッド12がある場合には、荷重閾値が設定されている荷重制御対象部品を荷重制御機能付きの装着ヘッド12に割り当てる(ST6)。そして(ST6)に示す部品へ上述の装着ヘッド12を割り当てる条件下で、最適化演算部20cの演算機能により部品配置の最適化を実施する(ST7)。
【0051】
ここに示すように、荷重制御機能を有しない装着ヘッド12に荷重閾値が設定されていない場合には、対象となる部品実装ライン1aにおいて装着ヘッド12の部品への割り当てにおける自由度が大きく低下する。すなわち、荷重制御機能を有しない装着ヘッド12を割り当てることが可能な部品は、荷重設定のない一部の部品種に限定される。このため、装着ヘッド12の部品への割り当てに際して自由度が大幅に低減し、結果として部品配置の最適化の効果が損なわれることとなる。
【0052】
これに対し図6は、対象となる部品実装ライン1aに配置された装着ヘッド12に、荷重閾値が設定されている場合の例を示している。すなわち荷重制御機能の有無に拘わらず、全ての装着ヘッド12に荷重閾値が予め設定されている。
【0053】
図6において、先ず対象基板の生産データを取得する(ST11)。すなわち、部品実装システム1において管理コンピュータ3の記憶部21に予め記憶された生産データ24を読み出す。次いで、対象となる部品実装ラインの設備構成情報を取得する(ST12)。すなわち同様に管理コンピュータ3の記憶部21に予め記憶された設備構成情報22を読み出す。
【0054】
次に読み出された生産データ24を参照して、対象部品に押し込み荷重の荷重閾値が設定されているかを判断する(ST13)。ここで荷重閾値が設定されていない場合には、対象となる基板の部品については押し込み荷重の考慮が不要であると判断して、以下の(ST16)までの処理をスキップして、部品配置の最適化を実施する(ST17)。
【0055】
これに対し、(ST13)にて荷重閾値が設定されている場合には、対象となる部品実装ライン1aに対象部品の荷重閾値範囲に対応する押し込み荷重を有する装着ヘッド12があるか否かを判断する(ST14)。ここで対応する押し込み荷重を有する装着ヘッド12がない場合には、生産対象となる基板の当該部品実装ライン1aでの生産が不可である旨を、表示部28を介して作業者に報知する(ST15)
【0056】
また対応する押し込み荷重を有する装着ヘッド12がある場合には、荷重閾値が設定されている荷重制御対象部品を各装着ヘッド12の荷重閾値ごとに割り当てる(ST16)。そして(ST16)に示す部品へ装着ヘッド12を割り当てる条件下で、最適化演算部20cの演算機能により部品配置の最適化を実施する(ST17)。
【0057】
ここに示すように、荷重制御機能を有しない装着ヘッド12に予め荷重閾値を設定することにより、対象となる部品実装ライン1aにおいて装着ヘッド12の部品への割り当てにおける自由度を大幅に向上させることができる。すなわち、荷重閾値の設定がない場合には、荷重制御機能を有しない装着ヘッド12を割り当てることが可能な部品は、荷重設定のない一部の部品種に限定される。これに対し、予め荷重閾値を設定することにより、装着ヘッド12の部品への割り当ての自由度を大幅に向上させることができる。この結果、部品配置の最適化の効果を改善して、部品装着作業の効率を向上させることができる。
【0058】
上記説明したように、本実施の形態では、部品実装システムにおいて用いられる実装用データを実装用データ作成部20aにより作成するデータ作成システムとしての管理コンピュータ3を、部品が受ける押し込み荷重の下限値および上限値である第1の下限値25aおよび第1の上限値25bを含む部品情報25、複数の装着ヘッド12が作用させる押し込み荷重の下限値および上限値である第2の下限値23aおよび第2の上限値23bを含む装着ヘッド情報23を記憶する記憶部21と、第1の下限値25aおよび第1の上限値25bと、複数の装着ヘッド12の第2の下限値23aおよび第2の上限値23bとに基づいて、複数の装着ヘッド12のうち部品に対して使用可能な装着ヘッド12を選択して部品に割り当てるヘッド割当部20bとを備える構成としている。これにより、部品に対する装着ヘッドの割り当ての自由度を拡大し、部品実装動作における部品配置や動作シーケンスの最適化の効果を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のデータ作成システムは、部品に対する装着ヘッドの割り当ての自由度を拡大し、部品実装動作における部品配置や動作シーケンスの最適化の効果を向上させることができるという効果を有し、装着ヘッドによって部品を保持して基板に装着する分野において有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 部品実装システム
1a 部品実装ライン
6 基板
12 装着ヘッド
M4,M5 部品実装装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6