(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
H05B6/12 324
H05B6/12 303
H05B6/12 334
H05B6/12 323
(21)【出願番号】P 2019523926
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2018021632
(87)【国際公開番号】W WO2018225755
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2017113919
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017220567
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】今井 慎
(72)【発明者】
【氏名】廣川 貴之
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-257996(JP,A)
【文献】特開2013-229346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を載置するように構成されたトッププレートと、
前記トッププレートの下方に配置された複数の加熱コイルと、
前記複数の加熱コイルに電力を供給するように構成されたインバータと、
前記インバータを制御するように構成された制御部と、
被加熱物が鉄系の負荷であるか、アルミ系の負荷であるかを判定するように構成された判定部と、を有し、
直流電源と、
互いに直列に接続されるとともに、前記直流電源に並列に接続された第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子と、
互いに直列に接続されるとともに、前記直流電源に並列に接続された第3のスイッチング素子および第4のスイッチング素子と、
一端が、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点に接続された第1の加熱コイルと、
一端が、前記第1の加熱コイルの他端に接続された第1の共振コンデンサと、
一端が、前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子との接続点に接続された第2の加熱コイルと、
一端が前記第2の加熱コイルの他端に接続され、他端が前記第1の共振コンデンサの他端に接続された第4の共振コンデンサと、
一端が前記第1の共振コンデンサと前記第4の共振コンデンサとの接続点に接続され、他端が前記直流電源の正極に接続された第3の共振コンデンサと、
一端が前記第1の共振コンデンサと前記第4の共振コンデンサとの接続点に接続され、他端が前記直流電源の負極に接続された第2の共振コンデンサと、を備え、
前記第2の共振コンデンサと、前記第3の共振コンデンサの容量は、前記第1の共振コンデンサと、前記第4の共振コンデンサよりも小さく設定し、
前記制御部は、前記判定部による判定結果に応じて、前記複数の加熱コイルに流れる電流の向きを制御するように構成され、
前記被加熱物が鉄系の負荷であると前記判定部が判定した場合、前記制御部が、前記複数の加熱コイルのうちの隣接する二つの加熱コイルに逆方向に電流を流すように構成され、前記被加熱物がアルミ系の負荷であると前記判定部が判定した場合、前記制御部が、前記複数の加熱コイルのうちの隣接する二つの加熱コイルに同一方向に電流を流すように構成
され、
前記
複数の加熱コイルのうちの隣接する二つの加熱コイル間の距離が40mm以下に設定され、
前記制御部は、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とを交互にオンし、前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子とを交互にオンするように構成され、
前記制御部は、被加熱物が非磁性材質である場合、前記第1のスイッチング素子と前記第3のスイッチング素子とを同時にオンし、第2のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子とを同時にオンするように構成され、
前記制御部は、被加熱物が磁性材質である場合、前記第1のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子とを同時にオンし、第2のスイッチング素子と前記第3のスイッチング素子とを同時にオンするように構成された誘導加熱装置。
【請求項2】
前記複数の加熱コイルが四つの加熱コイルを含み、直列または並列に接続された二つの加熱コイルをそれぞれ含む二つの組がX字状に交差するように、前記四つの加熱コイルが配置された、請求項1に記載の誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱装置の分野において、アルミニウム製の鍋を含む各種の金属負荷を加熱する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図14は、特許文献1に記載された誘導加熱装置のブロック構成図である。
【0004】
図14に示すように、従来の誘導加熱装置は、チョークコイル102と平滑コンデンサ103と共振コンデンサ104と加熱コイル105とスイッチング素子106および107と電流検知部109と制御部110とを備える。
【0005】
チョークコイル102の一端は、商用電源101の正極に接続される。平滑コンデンサ103は、チョークコイル102の他端と商用電源101の負極と間に接続される。スイッチング素子106の一端は平滑コンデンサ103の一端に接続され、スイッチング素子106の他端はスイッチング素子107の一端に接続される。スイッチング素子107の他端は、平滑コンデンサ103の他端に接続される。
【0006】
共振コンデンサ104と加熱コイル105とは直列に接続されて、共振回路を構成する。共振回路の一端は、スイッチング素子106とスイッチング素子107との接続点に接続される。共振回路の他端は、平滑コンデンサ103の他端に接続される。電流検知部109は、商用電源101から供給される入力電流を監視する。
【0007】
制御部110は、スイッチング素子106および107を制御する。共振回路の共振周波数は、鍋108と結合した加熱コイル105のインダクタンスと共振コンデンサ104の容量とに応じて決定される。上記従来技術では、共振周波数は、スイッチング素子106および107の駆動周波数の2倍以上に設定される。
【0008】
上記従来技術によれば、スイッチング素子106、107のスイッチング周波数を変えることなく、鉄製の鍋のみならずアルミニウム製の鍋108を加熱することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
しかしながら、鉄製の鍋は熱伝導率が低いため、一つの加熱コイルを用いた場合、加熱に寄与する磁界は加熱コイルの巻線上が強くなり、鍋の加熱分布は加熱コイルと同じ形となる。そのため、鍋を均一に加熱することは困難である。
【0011】
アルミ製の鍋は熱伝導率が高いため、一つの加熱コイルを用いた場合でも、鍋を均一に加熱することが可能である。しかしながら、アルミ製の鍋は鍋自体の固有抵抗値が低いため、加熱コイルに高周波数の大電流を印加する必要がある。そのため、損失が大きくなり、加熱効率が低下する。
【0012】
本開示は、上記従来技術の問題点を解決するもので、鉄製の鍋を加熱する場合には均一な加熱を行うことが可能で、アルミ製の鍋を加熱する場合には高周波電流を低減することが可能な誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【0013】
本開示の一態様の誘導加熱装置は、トッププレートと複数の加熱コイルとインバータと制御部と判定部とを有する。誘導加熱装置は、トッププレートは、被加熱物を載置するように構成され。複数の加熱コイルは、トッププレートの下方に配置される。インバータは、複数の加熱コイルに電力を供給するように構成される。制御部は、インバータを制御するように構成される。判定部は、被加熱物が鉄系の負荷であるか、アルミ系の負荷であるかを判定するように構成される。制御部は、判定部による判定結果に応じて、複数の加熱コイルに流れる電流の向きを制御するように構成される。
【0014】
本態様によれば、鉄系の鍋に対しては均一に加熱し、アルミ系の鍋に対しては効率的に加熱することができる。
【0015】
本態様によれば、鉄製の鍋を加熱する場合には均一な加熱を行うことが可能となり、アルミ製の鍋を加熱する場合には高周波電流を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱装置のブロック構成図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱装置における、加熱コイルの構成、配置および接続を示すブロック構成図である。
【
図3A】
図3Aは、鉄系の鍋を加熱する場合における、スイッチング素子の駆動信号、および、加熱コイルに流れる電流の波形図である。
【
図3B】
図3Bは、鉄系の鍋を加熱する場合における、加熱コイルに流れる電流の向きを模式的に示す図である。
【
図4A】
図4Aは、アルミ系の鍋を加熱する場合における、スイッチング素子の駆動信号、および、加熱コイルに流れる電流の波形図である。
【
図4B】
図4Bは、アルミ系の鍋を加熱する場合における、加熱コイルに流れる電流の向きを模式的に示す図である。
【
図5A】
図5Aは、一つまたは複数の加熱コイルの中心点からの距離と温度上昇比との関係を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、一つのまたは複数の加熱コイルの形状および中心点を模式的に示す図である。
【
図6A】
図6Aは、四つの加熱コイルを搭載するシステムにおける、中心点からの距離と温度上昇比との関係を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、加熱コイルの配置および中心点を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係る誘導加熱装置のブロック構成図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る誘導加熱装置における、加熱コイルの構成、配置および接続を示すブロック構成図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3に係る誘導加熱装置のブロック構成図である。
【
図10A】
図10Aは、実施の形態3に係る誘導加熱装置の動作を説明するための図である。
【
図10B】
図10Bは、実施の形態3に係る誘導加熱装置の動作を説明するための図である。
【
図10C】
図10Cは、実施の形態3に係る誘導加熱装置の動作を説明するための図である。
【
図10D】
図10Dは、実施の形態3に係る誘導加熱装置の動作を説明するための図である。
【
図11A】
図11Aは、実施の形態3に係る誘導加熱装置の加熱コイルの配置および接続方法の一例を示す模式図である。
【
図11B】
図11Bは、実施の形態3に係る誘導加熱装置の加熱コイルの配置および接続方法の一例を示す模式図である。
【
図12A】
図12Aは、各スイッチング素子に供給される駆動信号と、各加熱コイルに流れる電流とを示す波形図である。
【
図13A】
図13Aは、各スイッチング素子に供給される駆動信号と、各加熱コイルに流れる電流とを示す波形図である。
【
図14】
図14は、従来の誘導加熱装置のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の第1の態様の誘導加熱装置は、トッププレートと複数の加熱コイルとインバータと制御部と判定部とを有する。誘導加熱装置は、トッププレートは、被加熱物を載置するように構成され。複数の加熱コイルは、トッププレートの下方に配置される。インバータは、複数の加熱コイルに電力を供給するように構成される。制御部は、インバータを制御するように構成される。判定部は、被加熱物が鉄系の負荷であるか、アルミ系の負荷であるかを判定するように構成される。制御部は、判定部による判定結果に応じて、複数の加熱コイルに流れる電流の向きを制御するように構成される。
【0018】
本開示の第1の態様の誘導加熱装置では、さらに、被加熱物が鉄系の負荷であると判定部が判定した場合、制御部が、複数の加熱コイルのうちの隣接する二つの加熱コイルに逆方向に電流を流すように構成される。
【0019】
本開示の第1の態様の誘導加熱装置では、さらに、被加熱物がアルミ系の負荷であると判定部が判定した場合、制御部が、複数の加熱コイルのうちの隣接する二つの加熱コイルに同一方向に電流を流すように構成される。
【0020】
本開示の第1の態様の誘導加熱装置では、さらに、隣接する二つの加熱コイル間の距離が40mm以下に設定される。
【0021】
本開示の第2の態様の誘導加熱装置では、第1の態様に加えて、複数の加熱コイルが四つの加熱コイルを含み、直列または並列に接続された二つの加熱コイルをそれぞれ含む二
つの組がX字状に交差するように、四つの加熱コイルが配置される。
【0022】
本開示の第1の態様の誘導加熱装置は、さらに、直流電源と、第1~第4のスイッチング素子と、第1~第4の共振コンデンサと、第1、第2の加熱コイルと、制御部とを有する。
【0023】
第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子は、互いに直列に接続されるとともに、直流電源に並列に接続される。
【0024】
第3のスイッチング素子および第4のスイッチング素子は、互いに直列に接続されるとともに、直流電源に並列に接続される。
【0025】
第1の加熱コイルの一端は、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との接続点に接続される。
【0026】
第1の共振コンデンサの一端は、第1の加熱コイルの他端に接続される。
【0027】
第2の加熱コイルの一端は、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子との接続点に接続される。
【0028】
第4の共振コンデンサは、第2の加熱コイルの他端に接続された一端と、第1の共振コンデンサの他端に接続された他端とを有する。
【0029】
第3の共振コンデンサは、第1の共振コンデンサと第4の共振コンデンサとの接続点に接続された一端と、直流電源の正極に接続された他端とを有する。
【0030】
第2の共振コンデンサは、第1の共振コンデンサと第4の共振コンデンサとの接続点に接続された一端と、直流電源の負極に接続された他端とを有する。
【0031】
制御部は、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とを交互にオンし、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とを交互にオンする。
【0032】
制御部は、被加熱物が非磁性材質である場合、第1のスイッチング素子と第3のスイッチング素子とを同時にオンし、第2のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とを同時にオンする。
【0033】
制御部は、被加熱物が磁性材質である場合、第1のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とを同時にオンし、第2のスイッチング素子と第3のスイッチング素子とを同時にオンする。
【0034】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱装置20Aのブロック構成図である。
図1に示すように、誘導加熱装置20Aは、整流回路2とチョークコイル3とコンデンサ4とスイッチング素子5、6、9、10と加熱コイル7a、7b、11a、11bと共振コンデンサ8と制御部14と電流検知部15と電圧検知部16、17とを有する。
【0036】
整流回路2は、商用電源1からの交流電圧を整流するダイオードブリッジである。チョークコイル3の一端は、整流回路2の正側出力端に接続される。チョークコイル3の他端は、コンデンサ4の一端に接続される。コンデンサ4の他端は、整流回路2の負側出力端に接続される。チョークコイル3とコンデンサ4とは、フィルタ部を構成する。電流検知部15は、コンデンサ4の他端と整流回路2の負側出力端との間に設けられる。
【0037】
スイッチング素子5とスイッチング素子6とは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などで構成され、逆方向に接続されたダイオードを内蔵する。
【0038】
加熱コイル7a、7bと共振コンデンサ8とは直列に接続される。スイッチング素子5とスイッチング素子6との間の接続点Aは、加熱コイル7aの一端に接続される。加熱コイル7aの他端は加熱コイル7bの一端に接続される。加熱コイル7bの他端は共振コンデンサ8の一端と接続される。共振コンデンサ8の他端は、スイッチング素子6のドレインに接続された接続点Bに接続される。
【0039】
スイッチング素子5、6が、第1のインバータであるインバータ18を構成する。インバータ18は、フィルタ部により処理された電力を交流に変換し、その交流電力を加熱コイル7aと加熱コイル7bとに供給する。
【0040】
電圧検知部16は、加熱コイル7bと共振コンデンサ8との間に設けられ、加熱コイル7bと共振コンデンサ8との接続点の電圧を検出する。
【0041】
同様に、スイッチング素子9とスイッチング素子10とは、IGBTなどで構成され、逆方向に接続されたダイオードを内蔵する。
【0042】
加熱コイル11a、11bと共振コンデンサ12とは直列に接続される。スイッチング素子9とスイッチング素子10との間の接続点Cは、加熱コイル11aの一端に接続される。加熱コイル11aの他端は加熱コイル11bの一端に接続される。加熱コイル11bの他端は共振コンデンサ12の一端と接続される。共振コンデンサ12の他端は、スイッチング素子10のドレインに接続された接続点Dに接続される。
【0043】
スイッチング素子9、10が、第2のインバータであるインバータ19を構成する。インバータ19は、フィルタ部により処理された電力を交流に変換し、その交流電力を加熱コイル11aと加熱コイル11bとに供給する。
【0044】
電圧検知部17は、加熱コイル11bと共振コンデンサ12との間に設けられ、加熱コイル11bと共振コンデンサ12との接続点の電圧を検出する。
【0045】
インバータ19はインバータ18に並列に接続される。インバータ18とインバータ19とは、整流回路2、チョークコイル3、コンデンサ4を共有する。
【0046】
絶縁体で耐熱セラミック製のトッププレート(図示せず)が、加熱コイル7a、7b、11a、11bの上方に設けられる。被加熱物である鍋13は、トッププレート上に載置される。
【0047】
加熱コイル7a、7b、11a、11bは、同一の形状、サイズ、巻き方向と、異なる中心とを有し、同一平面上に配置される(
図2参照)。
【0048】
制御部14は、マイクロコンピュータで構成され、スイッチング素子5、6、9、10を制御する。制御部14は、鍋13の材質を判定する判定部14aを含む。判定部14aは、電流検知部15、電圧検知部16、17により検出された値に基づいて、鍋13が鉄系またはアルミ系のいずれの材質で構成されるかを判定する。以下、判定部14aの詳細について説明する。
【0049】
あらかじめ、制御部14は、鉄系の材質の鍋またはアルミ系の材質の鍋がトッププレートに載置され、スイッチング素子5、9が所定期間オンされた場合における、電流検知部15、電圧検知部16、17により測定された値を参考データとして記憶する。
【0050】
鍋13がトッププレート上に載置されると、加熱が開始されるまでに、制御部14は、スイッチング素子5、9を所定期間オンし、電流検知部15と電圧検知部16、17とにより測定された値を得る。
【0051】
制御部14は、実際の測定値を参考データと比較することにより、鍋13の材質を判定する。具体的には、鉄系の鍋とアルミ系の鍋とでは、直列抵抗値と直列インダクタンス値とが異なる。鉄系の鍋の場合における電流値に対する電圧値は、アルミ系の鍋の場合のそれに比べて低い。このことを利用して、制御部14は、鍋13の材質を判定する。
【0052】
図2は、誘導加熱装置20Aにおける、加熱コイル7a、7b、11a、11bの構成、配置および接続を示すブロック構成図である。
【0053】
図2に示すように、加熱コイル7a、7b、11a、11bは、外側から内側に向かって時計回りの巻き方向を有する。
【0054】
加熱コイル7a、7bは、加熱コイル7aの内側端が加熱コイル7bの外側端に接続されて直列に接続される。加熱コイル7aの外側端は、接続点Aに接続される。加熱コイル7bの内側端は、共振コンデンサ8に接続される。
【0055】
加熱コイル11a、11bは、加熱コイル11aの内側端が加熱コイル11bの外側端に接続されて直列に接続される。加熱コイル11aの外側端は、接続点Cに接続される。加熱コイル11bの内側端は、共振コンデンサ12に接続される。
【0056】
直列に接続された加熱コイル7a、7bが、直列に接続された加熱コイル11a、11bとX字状に交差するように、加熱コイル7a、7b、11a、11bが配置される。インバータ18は、加熱コイル7a、7bを駆動し、インバータ19は、加熱コイル11a、11bを駆動する。
【0057】
図3Aは、鉄系の鍋を加熱する場合における、四つのスイッチング素子の駆動信号、および、四つの加熱コイルに流れる電流の波形図である。
図3Bは、鉄系の鍋を加熱する場合における、四つの加熱コイルの各々に流れる電流の向きを模式的に示す図である。
【0058】
図3Aに示すように、制御部14は、スイッチング素子5、9を同じ駆動信号で駆動する。制御部14は、スイッチング素子6、10を、スイッチング素子5、9のための駆動信号とは異なる駆動信号で駆動する。
【0059】
図4Aは、アルミ系の鍋を加熱する場合における、四つのスイッチング素子の駆動信号、および、四つの加熱コイルに流れる電流の波形図である。
図4Bは、アルミ系の鍋を加熱する場合における、四つの加熱コイルの各々に流れる電流の向きを模式的に示す図である。
【0060】
図4Aに示すように、制御部14は、スイッチング素子5、10を同じ駆動信号で駆動する。制御部14は、スイッチング素子6、9を、スイッチング素子5、10のための駆動信号とは異なる駆動信号で駆動する。
【0061】
上述のように、制御部14はマイクロコンピュータで構成される。制御部14はマイクロコンピュータに限られるものではない。しかしながら、プログラム可能なマイクロコンピュータを用いれば、処理内容を容易に変更可能であり、設計の自由度を高めることができる。
【0062】
処理速度の向上のため、制御部14を論理回路で構成することも可能である。制御部14を物理的に一つまたは複数の素子で構成してもよい。制御部14を複数の素子で構成する場合、制御部14と判定部14aとを別々の素子で実施してもよい。この場合、これら複数の素子が一つの制御部に対応すると考えることができる。
【0063】
以下、上記のように構成された誘導加熱装置の動作、作用について説明する。
【0064】
加熱コイル7a、7b、11a、11bの上方のトッププレートに載置された鍋13の加熱を開始する前に、制御部14はスイッチング素子に駆動信号を所定期間供給する。その時の電流検知部15および電圧検知部16、17の検出値をもとに、アルミ系の鍋であるか、鉄系の鍋であるかを判定部14aが判定する。
【0065】
ここで、アルミ系の鍋には、アルミ製の鍋だけでなく、銅製の鍋、アルミの割合が多い多層構造の鍋などが含まれる。鉄系の鍋とは、ホーロー製の鍋、磁性ステンレス製の鍋などを指す。
【0066】
鍋13が鉄系の鍋と判定された場合、
図3Aに示すように、制御部14は、スイッチング素子5、6、9、10に駆動信号を供給する。
【0067】
この場合、加熱コイル7a、7bに流れる電流は、加熱コイル11a、11bに流れる電流と同位相となる。すなわち、接続点Aから加熱コイル7a、7bを通って接続点Bに電流が流れる時には、接続点Cから加熱コイル11a、11bを通って接続点Dに電流が流れる(
図1、
図2参照)。
【0068】
図3Bに示すように、隣接する二つの加熱コイル、すなわち、加熱コイル7aおよび11a、加熱コイル11aおよび7b、加熱コイル7bおよび11b、加熱コイル11bおよび7aの間の領域において、互いに逆方向に電流が流れる。
【0069】
その結果、隣接する二つの加熱コイルの間の領域において磁界が打ち消し合って、局所的な過度の加熱を防止することにより、鍋13を均一に加熱することができる。
【0070】
鍋13がアルミ系の鍋と判定された場合、
図4Aに示すように、制御部14は、スイッチング素子5、6、9、10に駆動信号を供給する。
【0071】
この場合、加熱コイル7a、7bに流れる電流は、加熱コイル11a、11bに流れる電流と逆位相となる。すなわち、接続点Aから加熱コイル7a、7bを通って接続点Bに電流が流れる時には、接続点Dから加熱コイル11b、11aを通って接続点Cに電流が流れる(
図1、
図2参照)。
【0072】
図4Bに示すように、隣接する二つの加熱コイル、すなわち、加熱コイル7aおよび11a、加熱コイル11aおよび7b、加熱コイル7bおよび11b、加熱コイル11bおよび7aの間の領域において、同一方向に電流が流れる。
【0073】
その結果、隣接する二つの加熱コイルの間の領域において磁界が互いに強め合って、加熱コイルと鍋13との磁気結合が改善される。加熱コイルから見た鍋13を含む負荷の抵抗値は増大し、固有抵抗値が低いアルミ系の鍋でも、小さな電流で十分に加熱することが可能となる。
【0074】
この場合、隣接する二つの加熱コイルの間の領域において磁界が互いに強め合うため、局所的に過度の加熱が生じる。しかし、アルミ系の鍋の場合、熱伝導率が鉄系の鍋より高く、鉄系の鍋の場合ほど加熱分布に関して大きな問題が生じない。
【0075】
図5Aは、一つまたは複数の加熱コイルの中心点からの距離と温度上昇比との関係を示す。
図5Bは、一つのまたは複数の加熱コイルの形状および中心点を模式的に示す。以下、一つまたは複数の加熱コイルの中心点を単に中心点という。
【0076】
図5Aにおいて、横軸は、中心点からの距離を示す。縦軸は、温度上昇値の最大値に対する、中心点から横軸に示す距離だけ離れた地点における温度上昇値の割合を示す。
【0077】
以下は、
図5Aに示された結果を得るために使用された実験システムの概要である(
図5B参照)。いずれの場合においても、ホーロー製の鍋が使用される。
【0078】
(5-1)一つの加熱コイルが設けられる場合、外径が190mmの加熱コイルが使用される。この場合、中心点は巻線の中心である。
【0079】
(5-2)二つの加熱コイルが設けられる場合、長軸が190mmおよび短軸が75mmの二つの楕円形状の加熱コイルが使用される。二つの加熱コイルの間の距離は20mmに設定される。中心点は、二つの加熱コイルの各々の中心を結ぶ線分の中点である。この場合のシステムは、二つの加熱コイルに互いに逆方向に電流が流れるように構成される。
【0080】
(5-3)四つの加熱コイルが設けられる場合、外径が76mmの四つの加熱コイルが使用される。隣接する二つの加熱コイルの間の距離は20mmに設定される。この場合のシステムは、上述のように、隣接する二つの加熱コイルに互いに逆方向に電流が流れるように構成される。
【0081】
図5Aに示すように、一つの加熱コイルが搭載される場合、中心点の付近および中心点から離れた地点において、温度上昇比が低下する。二つまたは四つの加熱コイルが搭載される場合、一つの加熱コイルの場合より温度上昇比の変動が小さい。
【0082】
この結果は、隣接する二つの加熱コイルに互いに逆方向に電流を流すことにより、鍋13が均一に加熱されることを示す。
【0083】
図6Aは、四つの加熱コイルを搭載するシステムにおける、中心点からの距離と温度上昇比との関係を示す。
図6Bは、四つの加熱コイルの配置および中心点を模式的に示す。
【0084】
以下は、
図6Aに示された結果を得るために使用された実験システムの概要である(
図6B参照)。いずれの場合においても、ホーロー製の鍋が使用される。
【0085】
(6-1)隣接する二つの加熱コイルの間の距離が60mmに設定される。
【0086】
(6-2)隣接する二つの加熱コイルの間の距離が40mmに設定される。
【0087】
(6-3)隣接する二つの加熱コイルの間の距離が20mmに設定される。
【0088】
これらのシステムには、内径が25mm、外径が76mmの四つの加熱コイルが設けられる。これらのシステムは、上述のように、隣接する二つの加熱コイルに互いに逆方向に電流が流れるように構成される。
【0089】
図6Aに示すように、いずれの場合も、中心点付近の地点および中心点から離れた地点において、温度上昇比が低下する。しかし、隣接する二つの加熱コイルの間の距離が20mmの場合、三つの場合のうち、温度上昇比の低下が最も少ない。
【0090】
隣接する二つの加熱コイルの間の距離が40mmの場合、隣接する二つの加熱コイルの間の距離が20mmの場合に比べて、温度上昇比は20%以上低下しない。
【0091】
隣接する二つの加熱コイルの間の距離が60mmの場合、隣接する二つの加熱コイルの間の距離が20mmの場合に比べて、温度上昇比は20%以上低下する。
【0092】
本実施の形態によれば、鉄系の鍋に対しては均一に加熱することができ、アルミ系の鍋に対しては効率的に加熱することができる。
【0093】
本実施の形態では、誘導加熱装置20Aは四つの加熱コイルを有する。しかしながら、加熱コイルの個数はこれに限定されない。鉄系の鍋を加熱する場合は、隣接する二つの加熱コイルに関して互いに逆方向に電流が流れるように、誘導加熱装置を構成しさえすればいい。アルミ系の鍋を加熱する場合は、隣接する二つの加熱コイルに関して同一方向に電流が流れるように、誘導加熱装置を構成しさえすればいい。
【0094】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2について説明する。以下の説明において、実施の形態1と同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0095】
図7は、本実施の形態に係る誘導加熱装置20Bのブロック構成図である。
図8は、誘導加熱装置20Bにおける、加熱コイル7a、7b、11a、11bの構成、配置および接続を示すブロック構成図である。
【0096】
本実施の形態では、加熱コイル7a、7bは並列に接続され、加熱コイル11a、11bは並列に接続される。並列に接続された加熱コイル7a、7bは、共振コンデンサ8と直列に接続される。並列に接続された加熱コイル11a、11bは、共振コンデンサ12と直列に接続される。それ以外の構成は、実施の形態1と同じである。
【0097】
並列に接続された加熱コイル7a、7bが、並列に接続された加熱コイル11a、11bとX字状に交差するように、加熱コイル7a、7b、11a、11bが配置される。
【0098】
実施の形態1と同様に、誘導加熱装置20Bにおいて、鉄系の鍋を加熱する場合は、隣接する二つの加熱コイルに関して互いに逆方向に電流が流れる。アルミ系の鍋を加熱する場合は、隣接する二つの加熱コイルに関して同一方向に電流が流れる。
【0099】
本実施の形態によれば、鉄系の鍋に対しては均一に加熱することができ、アルミ系の鍋に対しては効率的に加熱することができる。
【0100】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3について説明する。
図9は、本実施の形態に係る誘導加熱装置20Cのブロック構成図である。
図9に示すように、誘導加熱装置20Cは、直流電源31、共振コンデンサ32、33、38、39、スイッチング素子35、36、41、42、加熱コイル34、40、制御部37を備える。
【0101】
本実施の形態において、加熱コイル34、40は、第1、第2の加熱コイルにそれぞれ相当する。スイッチング素子35、36、41、42は、第1、第2、第3、第4のスイッチング素子にそれぞれ相当する。共振コンデンサ32、33、38、39は、第1、第2、第3、第4の共振コンデンサにそれぞれ相当する。
【0102】
スイッチング素子35、36、41、42は、IGBTなどで構成され、逆方向に接続されダイオードを内蔵する。
【0103】
スイッチング素子35は、スイッチング素子36と直列に接続される。スイッチング素子35、36は直流電源31に並列に接続される。具体的には、スイッチング素子35のエミッタはスイッチング素子36のコレクタに接続される。スイッチング素子35のコレクタは直流電源31の正極に接続される。スイッチング素子36エミッタは直流電源31の負極に接続される。
【0104】
スイッチング素子41は、スイッチング素子42と直列に接続される。スイッチング素子41、42は直流電源31に並列に接続される。具体的には、スイッチング素子41のエミッタはスイッチング素子42のコレクタに接続される。スイッチング素子41のコレクタは直流電源31の正極に接続される。スイッチング素子42のエミッタは直流電源31の負極に接続される。
【0105】
本実施の形態では、スイッチング素子35、36が、第1のインバータであるインバータ45を構成する。スイッチング素子41、42が、第2のインバータであるインバータ46を構成する。
【0106】
加熱コイル34の一端は、スイッチング素子35、36の接続点(接続点E)に接続される。共振コンデンサ32の一端は、加熱コイル34の他端に接続される。
【0107】
加熱コイル40の一端は、スイッチング素子41、42の接続点(接続点G)に接続される。共振コンデンサ39は、加熱コイル40の他端に接続された一端と、共振コンデンサ32の他端に接続された他端とを有する。
【0108】
共振コンデンサ38は、共振コンデンサ32、39の接続点(接続点F)に接続された一端と、直流電源31の正極に接続された他端とを有する。共振コンデンサ33は、共振コンデンサ32、39の接続点(接続点F)に接続された一端と、直流電源31の負極に接続された他端とを有する。
【0109】
電流検知部43は、直流電源31の負極に接続され、誘導加熱装置20Cに流れる電流を検知する。電圧検知部44は、接続点Fに接続され、接続点Fにおける電圧を検知する。
【0110】
制御部37は、インバータ45に含まれるスイッチング素子35、36と、インバータ46に含まれるスイッチング素子41、42とを制御する。制御部37は、被加熱物である鍋の材質を判定する判定部37aを有する。
【0111】
判定部37aは、電流検知部43、電圧検知部44により検出された値に基づいて、鍋の材質が磁性材質か非磁性材質かを判定する。判定部37aの判定方法は、上述の判定部14aと同じであり、詳細な説明は省略する。
【0112】
鍋が非磁性材質である場合、制御部37は、スイッチング素子35、36を交互にオンし、スイッチング素子41、42を交互にオンする。それとともに、制御部37は、スイッチング素子35、41を同時にオンし、スイッチング素子36、42を同時にオンする。
【0113】
鍋が磁性材質である場合、制御部37は、スイッチング素子35、36を交互にオンし、スイッチング素子41、42を交互にオンする。それとともに、制御部37は、スイッチング素子35、42を同時にオンし、スイッチング素子36、41を同時にオンする。
【0114】
絶縁体で耐熱セラミック製のトッププレート(図示せず)が、加熱コイル34、40の上方に設けられる。鍋(図示せず)はトッププレート上に載置される。加熱コイル34、40は、同一の形状、サイズ、巻き方向を有し、同一平面上に隣り合うように配置される。
【0115】
加熱コイル34、40が同一の鍋を加熱する場合、制御部37は、スイッチング素子35、36、41、42のための導通パターンを変更することで、加熱コイル34、40に流れる電流の向きを変えることができる。
【0116】
すなわち、制御部37は、加熱コイル34、40から発生する磁界を強め合う、または、打ち消し合う方向に、加熱コイル34、40に電流を流すことができる。このため、高効率な加熱や均一加熱を実現することができる。
【0117】
共振コンデンサ33、38の容量を、共振コンデンサ32、39の容量に比べて、十分小さく設定すると、導通パターンの変更により、電流が流れる経路上の共振コンデンサの合成容量を変更することができる。
【0118】
【0119】
まず、鍋が非磁性材質である場合について説明する。
図10Aに示すように、スイッチング素子35がオンされ、スイッチング素子36がオフされると、直流電源31と共振コンデンサ32、33と加熱コイル34とスイッチング素子35とを含む電流経路が構成される。
【0120】
スイッチング素子41がオンされ、スイッチング素子42がオフされると、共振コンデンサ38、39と加熱コイル40とスイッチング素子41とを含む電流経路が構成される。これらの電流経路には、
図10Aの矢印に示す電流が流れる。
【0121】
すなわち、
図10Aに示すように電流が流れる状態において、加熱コイル34が含まれる電流経路は、共振コンデンサ32、33の合成容量を有する。加熱コイル40が含まれる電流経路は、共振コンデンサ38、39の合成容量を有する。
【0122】
所定時間の経過後、全てのスイッチング素子がオフされる。その後、スイッチング素子36、42が同時にオンされると、
図10Bに示すように、直流電源31と共振コンデンサ32、38と加熱コイル34とスイッチング素子36とを含む電流経路が構成される。共振コンデンサ33、39と加熱コイル40とスイッチング素子42とを含む電流経路が構成される。これらの電流経路には、
図10Bの矢印に示す電流が流れる。
【0123】
すなわち、
図10Bに示すように電流が流れる状態において、加熱コイル34が含まれる電流経路は、共振コンデンサ32、38の合成容量を有する。加熱コイル40が含まれる電流経路は、共振コンデンサ33、39の合成容量を有する。
【0124】
所定時間の経過後、全てのスイッチング素子がオフされる。その後、
図10Aに示すように、スイッチング素子35、41が再びオンされる。
【0125】
次に、鍋が磁性材質である場合について説明する。
図10Cに示すように、スイッチング素子35、42がオンされ、スイッチング素子36、42がオフされると、直流電源31と共振コンデンサ32、39と加熱コイル34、40とスイッチング素子35、42とを含む電流経路が構成される。この電流経路には、
図10Cの矢印に示す電流が流れる。
【0126】
すなわち、
図10Cに示すように電流が流れる状態において、この電流経路は、共振コンデンサ32、39の合成容量を有する。
【0127】
所定時間の経過後、全てのスイッチング素子がオフされる。その後、スイッチング素子36、41が同時にオンされると、
図10Dに示すように、直流電源31と共振コンデンサ32、39と加熱コイル34、40とスイッチング素子36、41とを含む電流経路が構成される。この電流経路には、
図10Dの矢印に示す電流が流れる。
【0128】
すなわち、
図10Dに示すように電流が流れる状態において、この電流経路は、共振コンデンサ32、39の合成容量を有する。
【0129】
所定時間の経過後、全てのスイッチング素子がオフされる。その後、
図10Cに示すように、スイッチング素子35、42が再びオンされる。
【0130】
本実施の形態では、共振コンデンサ32、39の容量が、共振コンデンサ33、38の容量に比べて十分大きく設定される。これにより、鍋が磁性材質で構成されるか否かに応じて、共振コンデンサの組合せを変更することで、共振コンデンサの合成容量を変更することができる。
【0131】
【0132】
高周波の電流で加熱するためには、非磁性材質の鍋を加熱する場合の共振コンデンサの合成容量は、磁性材質の鍋を加熱する場合より小さい方がよい。一方、低周波の電流で加熱するためには、磁性材質の鍋を加熱する場合の共振コンデンサの合成容量は、非磁性材質の鍋を加熱する場合より大きいほうがよい。
【0133】
図11A、11Bは、誘導加熱装置20Cにおける、加熱コイルの配置および接続を示す模式図である。
図11Aに示す例では、加熱コイル34、加熱コイル40はいずれも、一つの加熱コイルで構成される。
【0134】
図11Aに示すように、加熱コイル34、40は、外側から内側に向かって時計回りの巻き方向を有し、互いに隣接して配置される。加熱コイル34の外側端は接続点Eに接続される。加熱コイル34の内側端は共振コンデンサ32に接続される(
図9参照)。
【0135】
図11Bに示す例では、加熱コイル34、40はいずれも、二つの加熱コイルの直列体で構成される。これら四つの加熱コイルは、外側から内側に向かって時計回りの巻き方向を有する。
【0136】
加熱コイル34を構成する二つの加熱コイルは、一方の加熱コイルの内側端が他方の加熱コイルの外側端に接続されて直列に接続される。一方の加熱コイルの外側端は接続点Eに接続される。他方の加熱コイルの内側端は共振コンデンサ32に接続される。
【0137】
加熱コイル40を構成する二つの加熱コイルは、一方の加熱コイルの内側端が他方の加熱コイルの外側端に接続されて直列に接続される。一方の加熱コイルの外側端は共振コンデンサ39に接続される。他方の加熱コイルの内側端は接続点Gに接続される。
【0138】
加熱コイル34を構成する直列に接続された二つの加熱コイルが、加熱コイル40を構成する直列に接続された二つの加熱コイルとX字状に交差するように、これら四つの加熱コイルが配置される。
【0139】
図12Aは、スイッチング素子35、36、41、42に供給される駆動信号と、加熱コイル34、40に流れる電流とを示す波形図である。
図12Aは、
図11Aに示すように加熱コイル34、40を配置し、
図10A、
図10Bに示すように非磁性材質の鍋を加熱する場合における波形図である。
図12Bは、
図12Aに示す期間t1における、加熱コイル34、40に流れる電流の向きを示す。
【0140】
図13Aは、スイッチング素子35、36、41、42に供給される駆動信号と、加熱コイル34、40に流れる電流とを示す波形図である。
図13Aは、
図11Aに示すように加熱コイル34、40を配置し、
図10C、
図10Dに示すように磁性材質の鍋を加熱する場合における波形図である。
図13Bは、
図13Aに示す期間t1における、加熱コイル34、40に流れる電流の向きを示す。
【0141】
図12A、
図12B、
図13A、
図13Bを用いて、誘導加熱装置20Cの動作を説明する。まず鍋が加熱コイル34、40の上方のトッププレートに載置される。制御部37は、各スイッチング素子に駆動信号を所定時間供給し、その間に電流検知部43および電圧検知部44により検出される値を受信する。
【0142】
判定部37aは、それらの値をもとに、鍋が非磁性材質であるか、磁性材質であるかを判定する。非磁性材質の鍋には、アルミ製の鍋、銅製の鍋、アルミの割合が多い多層構造の鍋が含まれる。磁性材質の鍋には、ホーロー製の鍋、磁性ステンレス製の鍋が含まれる。
【0143】
判定部37aが、鍋は非磁性材質であると判定した場合、
図12Aに示すように、制御部37は、スイッチング素子35、41に対して同一の駆動信号を供給し、スイッチング素子36、42に対して同一の駆動信号を供給する。スイッチング素子35、41に対する駆動信号は、スイッチング素子36、42に対する駆動信号とは異なる。
【0144】
これにより、
図10A、
図10Bに示すように電流が流れる。このとき、
図12Aに示すように、加熱コイル34に流れる電流は、加熱コイル40に流れる電流と同じ位相を有する。
【0145】
その結果、接続点Eから共振コンデンサ32に向って電流が流れる場合、接続点Gから共振コンデンサ39に向って電流が流れる(
図11A参照)。すなわち、
図12Bに示すように、加熱コイル34には矢印Xの方向に電流が流れ、加熱コイル40には矢印Yの方向に電流が流れる。この場合、加熱コイル34、40の対向する部分では、同一方向に電流が流れる。
【0146】
これにより、隣接する二つの加熱コイルの間で磁界が互いに強め合い、加熱コイルと鍋との磁気結合が向上する。加熱コイルから見た鍋を含む抵抗が増大し、比較的小さい電流で鍋を加熱することができる。そのため、固有抵抗値が比較的低い非磁性材質の鍋を効率良く加熱することができる。
【0147】
二つの加熱コイルの間で強い磁界が発生するため、鍋が局所的に加熱される。しかし、非磁性材質の鍋は、磁性材質の鍋より高い熱伝導率を有するため、加熱分布にはあまり影響しない。
【0148】
判定部37aが、鍋は磁性材質であると判定した場合、
図13Aに示すように、制御部37は、スイッチング素子35、42に対して同一の駆動信号を供給し、スイッチング素子36、41に対して同一の駆動信号を供給する。スイッチング素子35、42に対する駆動信号は、スイッチング素子36、41に対する駆動信号とは異なる。
【0149】
これにより、
図10C、
図10Dに示すように電流が流れる。このとき、
図13Aに示すように、加熱コイル34に流れる電流は、加熱コイル40に流れる電流とは逆位相を有する。
【0150】
その結果、接続点Eから共振コンデンサ32に向って電流が流れる場合、共振コンデンサ39から接続点Gに向って電流が流れる(
図11A参照)。すなわち、
図13Bに示すように、加熱コイル34には矢印Xの方法に電流が流れ、加熱コイル40には矢印Zの方向に電流が流れる。この場合、加熱コイル34、40の対向する部分では、逆方向に電流が流れる。
【0151】
これにより、隣接する二つの加熱コイルの間で磁界が互いに打ち消し合い、強い磁界の発生が抑制される。そのため、局所的な加熱を抑制して、鍋を均一に加熱することができる。
【0152】
以上のように、本実施の形態では、制御部37は、スイッチング素子35、36、41、42の導通パターンを鍋の材質に応じて変更することで、リレーを使用せずに共振コンデンサの合成容量を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本開示は、鉄系の鍋、アルミ系の鍋のいずれをも加熱可能な誘導加熱調理器に適用可能である。
【符号の説明】
【0154】
1、101 商用電源
2 整流回路
3、102 チョークコイル
4 コンデンサ
5、6、9、10、35、36、41、42、106、107 スイッチング素子
7a、7b、11a、11b、34、40、105 加熱コイル
8 共振コンデンサ
12、32、33、38、39、104 共振コンデンサ
13、108 鍋
14、37、110 制御部
14a、37a 判定部
15、43、109 電流検知部
16、17、44 電圧検知部
18、19、45、46 インバータ
20A、20B、20C 誘導加熱装置
31 直流電源
103 平滑コンデンサ