(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/024 20060101AFI20221202BHJP
H01S 5/02315 20210101ALI20221202BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/02315
H01L23/46 Z
(21)【出願番号】P 2020521053
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010978
(87)【国際公開番号】W WO2019225128
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018097377
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】大森 弘治
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2485346(EP,A2)
【文献】国際公開第2016/103536(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/063436(WO,A1)
【文献】特開2004-186212(JP,A)
【文献】特開2009-76730(JP,A)
【文献】特開2015-176975(JP,A)
【文献】特開2005-353614(JP,A)
【文献】特開2005-158902(JP,A)
【文献】特開2013-191787(JP,A)
【文献】特表2004-515086(JP,A)
【文献】米国特許第8483249(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0062348(US,A1)
【文献】国際公開第2009/049799(WO,A1)
【文献】米国特許第4719631(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
B23K 26/00 -26/70
H01L 23/29
H01L 23/34 -23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる流路が内部に設けられた放熱ブロックと、
前記放熱ブロックに配設された第1及び第2半導体レーザモジュールと、を少なくとも備えた半導体レーザ装置であって、
前記放熱ブロックは、前記流路を構成する溝部が形成された下部放熱ブロックと、前記下部放熱ブロックの上面に接して配設され、前記溝部の上側に開口を有する絶縁シール材と、前記開口を覆うように前記絶縁シール材の上面に接して配設された導電性材料からなる上部放熱ブロックと、を有し、
前記第1半導体レーザモジュールは正極側を下にして前記上部放熱ブロックの上面に接して配設される一方、前記第2半導体レーザモジュールは負極側を下にして前記上部放熱ブロックの上面に接して配設されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1及び第2半導体レーザモジュールは、下部電極ブロックと、前記下部電極ブロックに電気的に接続されたサブマウントと、前記サブマウントに配設され、前記サブマウント及び前記下部電極ブロックに電気的に接続された半導体レーザ素子と、前記下部電極ブロックとで前記サブマウント及び前記半導体レーザ素子を挟持するように設けられ、前記半導体レーザ素子に電気的に接続される一方、絶縁層によって前記下部電極ブロックと電気的に絶縁された上部電極ブロックと、をそれぞれ有し、
前記第1及び第2半導体レーザモジュールの下部電極ブロックが、それぞれ前記上部放熱ブロックの上面に接して配設されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1及び第2半導体レーザモジュールの上部電極ブロックの上面に接して別の放熱ブロックが配設されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体レーザ装置において、
前記別の放熱ブロックは、冷媒が流れる流路を構成する溝部が形成された下部放熱ブロックと、前記下部放熱ブロックの上面に接して配設されるとともに、前記溝部の上側に開口を有する絶縁シール材と、前記開口を覆うように前記絶縁シール材の上面に接して配設された上部放熱ブロックとで構成され、
前記別の放熱ブロックは、前記上部放熱ブロックの上面が、前記第1及び第2半導体レーザモジュールの上部電極ブロックの上面に接して配設されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1半導体レーザモジュールの上部電極ブロックと前記第2半導体レーザモジュールの上部電極ブロックとは、上面視で外形が同じであり、
前記第1半導体レーザモジュールの上部電極ブロックと前記第2半導体レーザモジュールの下部電極ブロックとは、上面視で外形が同じであることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1及び第2半導体レーザモジュールにおける上部電極ブロックと下部電極ブロックとは、上面視でそれぞれ外形が同じであることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1半導体レーザモジュールの下部電極ブロックに、前記サブマウント及び前記半導体レーザ素子を収容する凹部が形成され、
前記第2半導体レーザモジュールの上部電極ブロックに、前記サブマウント及び前記半導体レーザ素子を収容する凹部が形成されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項8】
請求項2に記載の半導体レーザ装置において、
前記放熱ブロックに配設された第3及び第4半導体レーザモジュールをさらに備え、
前記放熱ブロックは、前記下部放熱ブロックと、前記下部放熱ブロックの上面に接して配設されるとともに、前記溝部の上側に互いに間隔をあけて形成された少なくとも2つの開口を有する絶縁シール材と、2つの前記開口のそれぞれを覆うように前記絶縁シール材の上面に接するとともに、互いに間隔をあけて配設された第1及び第2上部放熱ブロックと、を少なくとも有し、
前記第1及び第2上部放熱ブロックは導電性材料からなり、
前記第1半導体レーザモジュールは正極側を下にして前記第1上部放熱ブロックの上面に接して配設される一方、前記第2半導体レーザモジュールは負極側を下にして前記第1上部放熱ブロックの上面に接して配設されており、
前記第3半導体レーザモジュールは正極側を下にして前記第2上部放熱ブロックの上面に接して配設される一方、前記第4半導体レーザモジュールは負極側を下にして前記第2上部放熱ブロックの上面に接して配設されており、
前記第2半導体レーザモジュールの正極側と前記第3半導体レーザモジュールの負極側とが導電部材によって電気的に接続されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体レーザ装置において、
前記第3及び第4半導体レーザモジュールは、下部電極ブロックと、前記下部電極ブロックに電気的に接続されたサブマウントと、前記サブマウントに配設され、前記サブマウント及び前記下部電極ブロックに電気的に接続された半導体レーザ素子と、前記下部電極ブロックとで前記サブマウント及び前記半導体レーザ素子を挟持するように設けられ、前記半導体レーザ素子に電気的に接続される一方、絶縁層によって前記下部電極ブロックと電気的に絶縁された上部電極ブロックと、をそれぞれ有し、
前記第1及び第2半導体レーザモジュールの下部電極ブロックが、それぞれ前記第1上部放熱ブロックの上面に接して配設されるとともに、前記第3及び第4半導体レーザモジュールの下部電極ブロックが、それぞれ前記第2上部放熱ブロックの上面に接して配設されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1~第4半導体レーザモジュールの上部電極ブロックの上面に接して別の放熱ブロックが配設されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体レーザ装置において、
前記別の放熱ブロックは、冷媒が流れる流路を構成する溝部が形成された下部放熱ブロックと、前記下部放熱ブロックの上面に接して配設されるとともに、前記溝部の上側に互いに間隔をあけて形成された少なくとも3つの開口を有する絶縁シール材と、3つの前記開口をそれぞれ覆うように前記絶縁シール材の上面に接するとともに、互いに間隔をあけて配設された第3~第5上部放熱ブロックとで構成され、
前記別の放熱ブロックは、前記第1~第3上部放熱ブロックの上面を下にして、前記第1~第4半導体レーザモジュールの上部電極ブロックの上面に配設されており、
前記第3上部放熱ブロックの上面が前記第1半導体レーザモジュールの上部電極ブロックの上面に、前記第4上部放熱ブロックの上面が前記第2及び第3半導体レーザモジュールの上部電極ブロックの上面に、前記第5上部放熱ブロックの上面が前記第3半導体レーザモジュールの上部電極ブロックの上面に、それぞれ接していることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体レーザ装置において、
前記別の放熱ブロックに設けられた冷媒の流入口及び排出口は、上面視で、前記放熱ブロックに設けられた冷媒の流入口及び排出口と反対側に設けられていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1~第4半導体レーザモジュールの上部電極ブロックは、上面視で外形が同じであり、
前記第1~第4半導体レーザモジュールの下部電極ブロックは、上面視で外形が同じであることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1~第4半導体レーザモジュールの上部電極ブロックと前記第1~第4半導体レーザモジュールの下部電極ブロックは、上面視でそれぞれ外形が同じであることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項15】
請求項8ないし14のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1及び第3半導体レーザモジュールの下部電極ブロックに、前記サブマウント及び前記半導体レーザ素子を収容する凹部が形成され、
前記第2及び第4半導体レーザモジュールの上部電極ブロックに、前記サブマウント及び前記半導体レーザ素子を収容する凹部が形成されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ装置に関し、特に、内部に冷媒が流れる流路が形成された放熱ブロックを有する半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光を用いた金属加工の需要が高まっており、レーザ装置の高出力化が要求されており、光-電気変換効率の高い半導体レーザ素子を用いた半導体レーザ装置が注目されている。しかし、半導体レーザ装置の高出力化に伴い、半導体レーザ素子に流れる電流量が大きくなり、ジュール熱により半導体レーザ素子の温度が上昇し、性能の低下や素子の劣化、故障等を引き起こすおそれがある。
【0003】
そこで、従来、半導体レーザ素子及びサブマウントを上下から電極ブロックで挟み込み、電極ブロックを介して半導体レーザ素子で発生した熱を排出する構造の半導体レーザ装置が提案されている。特許文献1には、半導体レーザ素子及びサブマウントが配設された第1の電極ブロックと、半導体レーザ素子及びサブマウントを上方から覆うように設けられた第2の電極ブロックとを、各々の部材に設けられたねじ孔にねじを締結することにより一体化する構造が開示されている。
【0004】
また、半導体レーザ素子とサブマウントとが配設されるヒートシンク内に冷却水を流すための流路を設け、半導体レーザ素子を冷却する構造が提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/103536号
【文献】特開2008-172141号公報
【文献】特許第3951919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2,3に開示されるような従来の構成において、内部に冷却水が流れるヒートシンクと半導体レーザ素子との間には、両者を電気的に絶縁するための樹脂やセラミック等の絶縁性材料からなる絶縁部を設ける必要がある。
【0007】
しかし、絶縁性材料は一般に熱伝導率が低く、上記の絶縁部を設けることにより、半導体レーザ素子で発生した熱の排出効率を低下させていた。このことは、半導体レーザ装置の高出力化を妨げる要因となっていた。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、内部に冷媒が流れる流路を有する放熱ブロックに半導体レーザ素子が配設された半導体レーザ装置において、高い冷却効率を有する半導体レーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る半導体レーザ装置は、冷媒が流れる流路が内部に設けられた放熱ブロックと、前記放熱ブロックに配設された第1及び第2半導体レーザモジュールと、を少なくとも備えた半導体レーザ装置であって、前記放熱ブロックは、前記流路を構成する溝部が形成された下部放熱ブロックと、前記下部放熱ブロックの上面に接して配設され、前記溝部の上側に開口を有する絶縁シール材と、前記開口を覆うように前記絶縁シール材の上面に接して配設された導電性材料からなる上部放熱ブロックと、を有し、前記第1半導体レーザモジュールは正極側を下にして前記上部放熱ブロックの上面に接して配設される一方、前記第2半導体レーザモジュールは負極側を下にして前記上部放熱ブロックの上面に接して配設されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、絶縁シール材の開口の上方に位置する上部放熱ブロックを冷媒により直接冷却できるため、上部放熱ブロックの上面に接して配設された第1及び第2半導体レーザモジュールで発生した熱を、冷媒を介して速やかに半導体レーザ装置の外部に排出することで、半導体レーザモジュールの冷却効率を高めることができる。また、半導体レーザ素子に流す電流量を増やすことができ、半導体レーザ装置を高出力化できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体レーザ装置によれば、半導体レーザモジュールの冷却効率を高めることができる。また、半導体レーザ装置の高出力化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る半導体レーザ装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、半導体レーザ装置の前方側面を示す模式図である。
【
図4A】
図4Aは、半導体レーザモジュールの構成を示す斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、変形例1に係る半導体レーザ装置の前方側面を示す模式図である。
【
図5B】
図5Bは、変形例1に係る別の半導体レーザ装置の前方側面を示す模式図である。
【
図6A】
図6Aは、比較のための半導体レーザ装置の前方側面を示す模式図である。
【
図6B】
図6Bは、変形例2に係る半導体レーザ装置の前方側面を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態2に係る半導体レーザ装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、半導体レーザ装置の前方側面を示す模式図である。
【
図9】
図9は、別の放熱ブロックの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0014】
(実施形態1)
[半導体レーザ装置及びその構成部品の構成]
図1は、本実施形態に係る半導体レーザ装置の斜視図を示し、
図2は、前方側面の模式図を示す。なお、
図2において、半導体レーザ装置100及び各部の構造は模式図として例示的に示している。従って、
図2において、各部の形状、位置、配置関係、寸法は実際の関係とは異なるものである。また、説明の便宜上、
図2において、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40や放熱ブロック60やブスバー51~53の細部の図示を省略している。また、モジュール固定ねじ90や端子固定ねじ91も図示を省略している。
【0015】
なお、以降の説明において、
図1,2における半導体レーザ装置100における放熱ブロック60が配設された側を下側または下と、その反対側、つまり、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40が配設された側を上側または上と呼ぶことがある。また、放熱ブロック60の流入口66a及び排出口66bが設けられた側を右側または右と、その反対側を左側または左と呼ぶことがある。また、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40において、半導体レーザ素子14,24,34,44のレーザ光出射端面が配設された側を前側または前と、その反対側を後側または後と呼ぶことがある。
【0016】
また、
図3は、放熱ブロックの分解斜視図を示す。
図4Aは、半導体レーザモジュールの斜視図を、
図4Bは、
図4Aに示す半導体レーザモジュールの分解斜視図をそれぞれ示す。なお、説明の便宜上、
図4A,4Bにおいて、第1半導体レーザモジュール10のみを示している。
【0017】
図1に示すように、半導体レーザ装置100は、放熱ブロック60と第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40とブスバー51~53とを有している。
【0018】
図3に示すように、放熱ブロック60は、下部放熱ブロック61と絶縁シール材62と第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bとを有しており、下部放熱ブロック61と絶縁シール材62及び絶縁シール材62と第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bとは、それぞれ所定の耐熱性を有する接着剤によって接合されている。ただし、これらの部材の接合方法は特にこれに限定されず、例えば、下部放熱ブロック61と絶縁シール材62と第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bとの四隅にそれぞれねじ孔(図示せず)を設け、ねじ等(図示せず)でこれらの部材を互いに締結するようにしてもよい。その場合は、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bと下部放熱ブロック61との絶縁を図るために、各々のねじ孔の内面を絶縁性材料でコーティングするか、絶縁材料からなるねじまたは絶縁性材料で被覆されたねじを用いて各部材を互いに締結するのが好ましい。
【0019】
また、放熱ブロック60の内部には、上面視でU字形状の流路66が設けられている。冷媒の流入口66aは放熱ブロック60の右側面かつ前側に設けられ、排出口66bは放熱ブロック60の右側面かつ流入口の後側に流入口66aと所定の間隔をあけて設けられている。外部から供給された冷媒が流入口66aから流入し、流路内を通過して、排出口66bから外部に排出される。また、本実施形態において、冷媒として、抵抗率が所定値以上に調整された冷却水を用いており、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bから冷媒を介して漏電するのを抑制するように冷却水の抵抗率を管理することが好ましい。
【0020】
下部放熱ブロック61は、例えば、銅または銅-アルミ合金あるいは銅とアルミの積層体等からなる金属製の部材であり、上面には流路66を構成する溝部65が形成されている。また、溝部65以外の上面は平坦面である。
【0021】
絶縁シール材62は、所定の絶縁性を有する材料からなり、例えば、絶縁性の樹脂やセラミック等からなる。絶縁シール材62は、下部放熱ブロック61における溝部65以外の上面に接して配設されている。また、絶縁シール材62には所定の間隔をあけて開口62a,62bがそれぞれ設けられており、上面視で開口62a,62bは溝部65の上側に位置している。また、開口62a,62bは絶縁シール材62を厚み方向に貫通している。絶縁シール材62は、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bと下部放熱ブロック61とを電気的に絶縁するとともに、流路66から冷却水が漏れ出るのを防止するシール材としても機能する。
【0022】
第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bは、下部放熱ブロック61と同じ材質からなる金属部材であり、絶縁シール材62の開口62a,62bをそれぞれ覆うように、絶縁シール材62の上面に接して配設されている。また、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bは互いに所定の間隔をあけて配設されている。このことにより、第1上部放熱ブロック63aの上面に配設された第1及び第2半導体レーザモジュール10,20と、第2上部放熱ブロック63bの上面に配設された第3及び第4半導体レーザモジュール40,40とが互いに電気的に絶縁分離されている。ただし、後述するように、第2半導体レーザモジュール20と第3半導体レーザモジュール30とはブスバー52によって電気的に接続されている。なお、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bと下部放熱ブロック61とは互いに異なる材質であってもよいが、後述するように、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bには所定の大きさの電流がそれぞれ流れるため、導電性材料とする必要がある。
【0023】
また、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bの前側には、それぞれ複数のねじ孔64が形成されている。ねじ孔64は第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bを貫通せずに、底面が第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bの内部に留まっている。第1半導体レーザモジュール10に設けられたねじ孔11a,16a(
図4B参照)と、第1上部放熱ブロック63aに設けられたねじ孔とに挿入されたモジュール固定ねじ90によって、第1半導体レーザモジュール10が第1上部放熱ブロック63aに取付固定される。同様に、第2半導体レーザモジュール10が第1上部放熱ブロック63aにまた、第3及び第4半導体レーザモジュール30,40が第2上部放熱ブロック63bにそれぞれ取付固定される。なお、ねじ孔64が設けられた部分を除き、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bの上面は平坦面である。
【0024】
図4A,4Bに示すように、第1半導体レーザモジュール10は、下部電極ブロック11と絶縁シート12とサブマウント13と半導体レーザ素子14と上部電極ブロック16とを有している。また、図示しないが、第2~第4半導体レーザモジュール20,30,40も同様の構成を備えている。従って、以下、第1半導体レーザモジュール10の構成を例に取って説明する。
【0025】
下部電極ブロック11は、導電材料からなる厚板状の部材である。例えば、銅(Cu)からなる板材にニッケル(Ni)と金(Au)とをこの順にメッキして得られる。また、下部電極ブロック11は、その下面が第1上部放熱ブロック63aの上面に接するように配設されている。また、下部電極ブロック11は、上面及び前方側面の一部が切り欠かれて開放された切欠状の凹部11bを有している。凹部11bはサブマウント13及び半導体レーザ素子14が収容される部分であり、凹部11bの前方開放部を通して、半導体レーザ素子14からレーザ光が出射される。また、下部電極ブロック11は、凹部11bの左右に1箇所ずつ、凹部11bと離間して設けられ、下部電極ブロック11を貫通するねじ孔11aを有している。また、ねじ孔11aの後方かつ上面視で2つのねじ孔11aの間を通る線上にねじ孔(図示せず)を有している。このねじ孔は、下部電極ブロック11の上面で開口する一方、その底面が下部電極ブロック11の内部に留まっており、
図1に示す端子固定ねじ91が収容される。ねじ孔11aと第1上部放熱ブロック63aに設けられたねじ孔64とが連通するように、下部電極ブロック11は第1上部放熱ブロック63aの上面に配設される。なお、ねじ孔11aが設けられた部分を除き、下部電極ブロック11の下面は平坦面であり、端子固定ねじ91が収容されるねじ孔(図示せず)及び凹部11bが設けられた部分を除き、下部電極ブロック11の上面は平坦面である。
【0026】
絶縁シート12は、下部電極ブロック11の上面に凹部11bを囲むように設けられており、下部電極ブロック11に設けられたねじ孔11aと対応する位置に開口12aが設けられている。また、絶縁シート12は、下部電極ブロック11に上部電極ブロック16を取り付ける際に、両者を電気的に絶縁する機能を有する。絶縁シート12は、例えば、ポリイミドやセラミック等の絶縁材料からなる。
【0027】
サブマウント13は、例えば銅タングステン(Cu:W)等の導電材料からなる。
図4Bに示すように、サブマウント13は、下部電極ブロック11の前方側面とサブマウント13の前方側面がほぼ一致するように凹部11b内に配設されている。また、サブマウント13と下部電極ブロック11とは図示しないハンダ材料により接着され、電気的に接続されている。ハンダ材料は、例えば、スズ(Sn)を96.5%と銀(Ag)を3.5%とを含んでいる。
【0028】
半導体レーザ素子14は端面放射型の半導体レーザ素子である。また、半導体レーザ素子14は下面に上側電極を、上面に下側電極をそれぞれ有しており(いずれも図示せず)、サブマウント13の上面に上側電極が金スズ(Au-Sn)ハンダ等(図示せず)を介して配設されることで、サブマウント13に電気的に接続されている。なお、本実施形態において、半導体レーザ素子14の上側電極は正極(+極)であり、下側電極は負極(-極)である。また、サブマウント13の上面に半導体レーザ素子14の上側電極が直接接するようにしてもよい。また、下側電極の上面には複数のバンプ15が設けられている。半導体レーザ素子14の共振器(図示せず)は、前後方向に延びて設けられており、半導体レーザ素子14の前方側面が、レーザ光出射端面に相当する。また、半導体レーザ素子14は、レーザ光出射端面とサブマウント13の前方側面とがほぼ一致するようにサブマウント13上に配設されている。なお、半導体レーザ素子14における共振器の数は複数であってもよい。
【0029】
バンプ15は、例えば金(Au)を材料とするワイヤを溶融させて形成した金バンプである。金は他の金属に比べて柔らかいため、半導体レーザ素子14と上部電極ブロック16とを接続する際にバンプが変形する。そのため、半導体レーザ素子14と上部電極ブロック16とに機械的なダメージをあまり与えることなく、両者の間を電気的に良好に接続することができる。なお、バンプの材料は金に限らず、導電性であって、半導体レーザ素子14の下側電極と上部電極ブロック16との電気的接続を確保できる材料であればよい。また、図示しないが、バンプと上部電極ブロック16との間に金箔等の金属シートが挿入される。金属シートを挿入することにより、バンプ15と金属シートとの接触面積を増加させることができ、バンプ15と上部電極ブロック16との間の接触抵抗を減少させることができる。なお、金属シートは金箔に限らず、他の導電材料からなるシートを用いてもよい。また、バンプ15と上部電極ブロック16との間に挿入される金属シートは複数枚であってもよいし、バンプ15と上部電極ブロック15との間の電気的接続が十分に良好であれば、金属シートを挿入しなくてもよい。
【0030】
上部電極ブロック16は、凹部11bの上方を覆うように、絶縁シート12を挟んで下部電極ブロック11の上面に設けられており、導電材料からなる厚板状の部材である。例えば、銅(Cu)からなる板材にニッケル(Ni)と金(Au)とをこの順にメッキして得られる。上部電極ブロック16は、下部電極ブロック11に設けられたねじ孔11aに連通する位置にねじ孔16aを有するとともに、ねじ孔16aの後方かつ上面視で2つのねじ孔16aの間を通る線上にねじ孔16bを有している。ねじ孔16aは上部電極ブロック16を貫通しているが、ねじ孔16bは、その底面が上部電極ブロック16の内部に留まっている。
【0031】
上部電極ブロック16に設けられたねじ孔16aと、絶縁シート12に設けられた開口12aと、下部電極ブロック11に設けられたねじ孔11aと、第1上部放熱ブロック63aに設けられたねじ孔64とに、モジュール固定ねじ90が挿入されて締結されることで、これらの部材が位置決め固定される。なお、第1上部放熱ブロック63aと下部放熱ブロック61及び下部電極ブロック11と上部電極ブロック16との絶縁を図るために、各々のねじ孔の内面を絶縁性材料でコーティングするか、モジュール固定ねじ90を樹脂等の絶縁材料からなるねじまたは絶縁性材料で被覆されたねじとするのが好ましい。なお、ねじ孔16a,16bが設けられた部分を除き、上部電極ブロック16の上面及び下面は平坦面である。また、上部電極ブロック16と下部電極ブロック11とは凹部11b以外の部分において厚みが同じであり、かつ、上面視で、上部電極ブロック11と下部電極ブロック16とは外形が同じになるように構成されている。なお、本願明細書において、「厚みが同じ」あるいは「外形が同じ」とは、上部電極ブロック11及び下部電極ブロック16の製造公差を含んで同じという意味であり、両者の厚みまたは外形が厳密に一致していなくてもよい。
【0032】
[半導体レーザモジュール間の電気的接続について]
図1に示すように、ブスバー51~53は、金属材料からなる板状の部材で、例えば、銅からなる。ブスバー51の右端部、ブスバー52の両端部及びブスバー53の左端部には、それぞれ開口(図示せず)が形成されている。ブスバー51に設けられた開口と第1半導体レーザモジュール10の上部電極ブロック16に設けられたねじ孔16bとに端子固定ねじ91を挿入して締結することで、第1半導体レーザモジュール10にブスバー51が取付けられる。同様に、ブスバー53に設けられた開口と第4半導体レーザモジュール40の上部電極ブロック46に設けられたねじ孔とに端子固定ねじ91を挿入して締結することで、第4半導体レーザモジュール40にブスバー53が取付けられる。ブスバー51,53はそれぞれ、図示しない外部電源に電気的に接続されており、具体的には、ブスバー51にはグランド(GND)電位の電源端子(図示せず)が、ブスバー53には正電位の電源端子(図示せず)が、それぞれ電気的に接続されている。従って、例えば、第1半導体レーザモジュール10の上部電極ブロック16は負極として機能し、下部電極ブロック11は正極として機能する。
【0033】
また、ブスバー52の左端部に設けられた開口と第2半導体レーザモジュール20の上部電極ブロック26に設けられたねじ孔とに端子固定ねじ91を挿入して締結するとともに、ブスバー52の右端部に設けられた開口と第3半導体レーザモジュール30の上部電極ブロック36に設けられたねじ孔とに端子固定ねじ91を挿入して締結することで、ブスバー52が第2及び第3半導体レーザモジュール20,30に取付けられる。
【0034】
ここで、
図2に示すように、半導体レーザ装置100では、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40が直列に接続されている。具体的には、第1半導体レーザモジュール10の上部電極ブロック16にグランド電位のブスバー51が接続され、第1半導体レーザモジュール10の下部電極ブロック11と第2半導体レーザモジュール20の下部電極ブロック21とが第1上部放熱ブロック63aを介して電気的に接続される。また、ブスバー52によって、第2半導体レーザモジュール20の上部電極ブロック26と第3半導体レーザモジュール30の上部電極ブロック36とが電気的に接続される。さらに、第3半導体レーザモジュール30の下部電極ブロック31と第4半導体レーザモジュール40の下部電極ブロック41とが第2上部放熱ブロック63bを介して電気的に接続され、第4半導体レーザモジュール40の上部電極ブロック46に正電位のブスバー53が接続される。ここで、第1上部放熱ブロック63aと第2上部放熱ブロック63bとは電気的に分離されているため、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20の下部電極ブロック11,21と第3及び第4半導体レーザモジュール30,40の下部電極ブロック31,41とは電気的に分離される。
【0035】
また、
図2から明らかなように、第1及び第3半導体レーザモジュール10,30の上部電極ブロック16,36と第2及び第4半導体レーザモジュール20,40の下部電極ブロック21,41とが負極として機能し、第1及び第3半導体レーザモジュール10,30の下部電極ブロック11,31と第2及び第4半導体レーザモジュール20,40の上部電極ブロック26,46とが正極として機能する。
【0036】
[半導体レーザ装置の熱排出について]
図示しない冷却水循環機構により、放熱ブロック60内の流路66に冷却水を流した状態で、ブスバー53に所定の正の電圧を印加すると、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の半導体レーザ素子14,24,34,44にそれぞれ電流が流れ始め、所定のしきい値電流を越えると、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40のそれぞれからレーザ光が前方に出射される。
【0037】
このとき、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の半導体レーザ素子14,24,34,44でそれぞれ発生した熱は、主に2つの経路から外部に排出される。第1の熱排出経路は、各上部電極ブロック16,26,36,46から周囲の雰囲気中に排出される経路である。第2の熱排出経路は、半導体レーザ素子14,24,34,44からサブマウント13,23,33,43及び下部電極ブロック11,21,31,41を介して放熱ブロック60の流路66に排出される経路である。
【0038】
流路66は、下部放熱ブロック61に形成された溝部65の上を第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bが覆うことで構成されており、前述したように、下部放熱ブロック61と第1及び第2上部放熱ブロック53a,63bとの間に介在する絶縁シール材62には開口62a,62bが設けられている。つまり、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bの下面は、流路66内を流れる冷却水に直接接触しており、第1及び第2上部放熱ブロック53a,63bは冷却水によって直接冷却されている。よって、熱伝導により各下部電極ブロック11,21,31,41から第1及び第2上部放熱ブロック53a,63bに伝搬した熱は、冷却水を介して速やかに半導体レーザ装置100の外部に排出される。なお、排出口66bから排出された冷却水は、図示しない冷媒循環機構により所定の温度まで冷却された後、再び流入口66aから流路66内に供給される。
【0039】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る半導体レーザ装置100は、冷却水が流れる流路66が内部に設けられた放熱ブロック60と、放熱ブロック60に配設された第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40と、を備えている。
【0040】
放熱ブロック60は、流路66を構成する溝部65が形成された下部放熱ブロック61と、下部放熱ブロック61の上面に接して配設され、溝部65の上側に開口62a,62bを有する絶縁シール材62と、開口62a,62bを覆うように絶縁シール材62の上面に接して配設された、導電性材料からなる第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bと、を有している。また、第1上部放熱ブロック63aと第2上部放熱ブロック63bとは互いに所定の間隔をあけて設けられている。
【0041】
第1半導体レーザモジュール10は正極側を下にして第1上部放熱ブロック63aの上面に接して配設される一方、第2半導体レーザモジュール20は負極側を下にして第1上部放熱ブロック63aの上面に接して配設されている。また、第3半導体レーザモジュール30は正極側を下にして第2上部放熱ブロック63bの上面に接して配設される一方、第4半導体レーザモジュール40は負極側を下にして第2上部放熱ブロック63bの上面に接して配設されている。また、第2半導体レーザモジュール20の正極側と第3半導体レーザモジュール30の負極側とがブスバー52によって電気的に接続されている。
【0042】
半導体レーザ装置100をこのように構成することで、絶縁シール材62の開口62a,62bの上方にそれぞれ位置する第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bを冷却水により直接冷却できるため、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bの上面に接して配設された第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40で発生した熱を速やかに半導体レーザ装置100の外部に排出することができる。つまり、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の冷却効率を高めることができる。また、このことにより、半導体レーザ素子14,24,34,44に流す電流量を増やすことができ、半導体レーザ装置100を高出力化できる。また、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bと下部放熱ブロック61との間に絶縁シール材62を介在させることにより、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40と下部放熱ブロック61との絶縁が図れるとともに、流路66内を流れる冷却水が外部に漏れ出るのを防止できる。
【0043】
また、第1上部放熱ブロック63aを電流経路として用いることができるため、導電部材を用いることなく、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20を直列接続することができる。同様に、第2上部放熱ブロック63bを電流経路として用いることができるため、導電部材を用いることなく、第3及び第4半導体レーザモジュール30,40を直列接続することができる。さらに、第2半導体レーザモジュール20の正極側と第3半導体レーザモジュール30の負極側をブスバー52によって接続することで、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40を直列接続することができる。
【0044】
複数の半導体レーザモジュールを並列接続して高出力の半導体レーザ装置100を実現しようとすると、半導体レーザ装置に接続される電源への負荷が増大するため、電源容量を大きくする必要があり、電源設備の大型化及び設備コストの上昇を招いていた。
【0045】
本実施形態によれば、電源への負荷が増大するのを抑制でき、電源の小型化を図ることができる。また、設備コストの上昇を抑制できる。
【0046】
また、放熱ブロック60上に複数の半導体レーザモジュールを配置し、これらを電気的に分離した上でブスバー等の導電部材で直列接続する構成では、半導体レーザモジュール間の配置間隔を互いの絶縁が確保できる距離以上にあける必要があった。しかし、半導体レーザ装置100を高出力化しようすると、印加される電圧自体も高くなり、半導体レーザモジュール間の絶縁距離を確保するために、半導体レーザ装置100が大型化してしまっていた。また、多数の導電部材が必要になるとともに、電気抵抗を下げるため、各々の導電部材の厚みを増やす必要があるが、これは、コストの増大を招いていた。また、絶縁距離との関係で、導電部材の長さを所定以下にすることができず、電流経路全体での電気抵抗を十分に低下させることができなかった。
【0047】
一方、本実施形態によれば、第1上部放熱ブロック63aによって、第1半導体レーザモジュール10と第2半導体レーザモジュール20の間を電気的に接続するため、これらの間で絶縁のための間隔をあける必要が無い。同様に、第2上部放熱ブロック63bによって、第3半導体レーザモジュール30と第4半導体レーザモジュール40の間で絶縁のための間隔をあける必要が無い。これらのことにより、半導体レーザ装置100が大型化するのを抑制できる。また、半導体レーザモジュール間を接続する導電部材の個数を減らすことができ、コストが増大するのを抑制できる。
【0048】
第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40は、下部電極ブロック11,21,31,41と、これらの各々に対応して電気的に接続されたサブマウント13,23,33,43と、サブマウント13,23,33,43のそれぞれに配設され、かつ電気的に接続された半導体レーザ素子14,24,34,44と、下部電極ブロック11,21,31,41とでサブマウント13,23,33,43と半導体レーザ素子14,24,34,44との組をそれぞれ挟持するように設けられ、半導体レーザ素子14,24,34,44のそれぞれに電気的に接続される一方、絶縁シート12によって下部電極ブロック11,21,31,41と電気的に絶縁された上部電極ブロック16,26,36,46と、をそれぞれ有している。
【0049】
第1及び第2半導体レーザモジュール10,20の下部電極ブロック11,21が、それぞれ第1上部放熱ブロック63aの上面に接して配設されるとともに、第3及び第4半導体レーザモジュール30,40の下部電極ブロック31,41が、それぞれ第2上部放熱ブロック63aの上面に接して配設されている。
【0050】
第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40をこのように構成することで、発熱源である半導体レーザ素子14,24,34,44からそれぞれ下部電極ブロック11,21,31,41を介して速やかに熱を外部に排出することができる。
【0051】
また、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の上部電極ブロック16,26,36,46は、それぞれ上面視で外形が同じであり、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の下部電極ブロック11,21,31,41は、それぞれ上面視で外形が同じであることが好ましい。
【0052】
このようにすることで、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40において、共通した形状の電極ブロックを用いることができ、コストを低減できる。
【0053】
さらに、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の上部電極ブロック16,26,36,46と下部電極ブロック11,21,31,41とは、上面視でそれぞれ外形が同じであることが好ましい。第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の上部電極ブロック16,26,36,46と下部電極ブロック11,21,31,41とのそれぞれにおいて、モジュール固定用のねじ孔及び端子固定用のねじ孔が、上面視で同じ位置にあることが、より好ましい。
【0054】
図2に示したように、第1及び第3半導体レーザモジュール10,30と第2及び第4半導体レーザモジュール20,40とは互いに上下反転した構成となっている。つまり、凹部が形成された電極ブロックの配置が上下反転している。この場合、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40のそれぞれにおいて、上部電極ブロック16,26,36,46の外形と下部電極ブロック11,21,31,41の外形とが異なると、これらを作り分ける必要があり、コストが増大してしまう。
【0055】
一方、本実施形態によれば、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40のそれぞれにおいて、上部電極ブロック16,26,36,46と下部電極ブロック11,21,31,41とを同じ外形とすることで、前述した作り分け等を行う必要が無く、コストが増加するのを抑制できる。
【0056】
また、本実施形態に係る半導体レーザ装置100では、第1及び第3半導体レーザモジュール10.30の下部電極ブロック11,31に、サブマウント13,33及び半導体レーザ素子14,34をそれぞれ収容する凹部11b,31bが形成され、第2及び第4半導体レーザモジュール20,40の上部電極ブロック26,46に、サブマウント23,43及び半導体レーザ素子24,44をそれぞれ収容する凹部26c,46cが形成されている。
【0057】
このようにすることで、半導体レーザ素子の下側電極に接続される電極ブロックの位置を交互に上下反転させることができ、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40を簡便な構成で直列接続することができる。
【0058】
また、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40において、半導体レーザ素子14,24,34,44のレーザ光出射端面は、上面視で放熱ブロック60の流路66の近傍に位置しているのが好ましく、流路60のうち冷却水の流入口66aから直接延びている部分の近傍に位置しているのがさらに好ましい。
【0059】
半導体レーザ素子の動作中に、レーザ光出射端面近傍の温度が最も上昇する。よって、レーザ光出射端面を、放熱ブロック60の流路66の近傍、特に、冷却水が加熱されずに流入口66aから直接流れる部分の近傍に配置することで、各々、半導体レーザ素子14,24,34,44を含む、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の冷却効率を高めることができる。
【0060】
第1上部放熱ブロック63aの上面と、これに接する第1及び第2半導体レーザモジュール10,20の下部電極ブロック11,21の下面は、それぞれ平坦面であることが好ましい。また、第2上部放熱ブロック63bの上面と、これに接する第3及び第4半導体レーザモジュール30,40の下部電極ブロック31,41の下面は、それぞれ平坦面であることが好ましい。
【0061】
このようにすることで、第1上部放熱ブロック63と第1及び第2半導体レーザモジュール10,20の下部電極ブロック11,21との接触面積を大きくでき、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20の冷却効率を高めることができる。同様に、第2上部放熱ブロック63bと第3及び第4半導体レーザモジュール30,40の下部電極ブロック31,41との接触面積を大きくでき、第3及び第4半導体レーザモジュール30,40の冷却効率を高めることができる。
【0062】
<変形例1>
図5A,5Bは、本変形例に係る半導体レーザ装置の前方側面の模式図を示し、半導体レーザ装置200,300の各部の形状、位置、配置関係、寸法については、
図2に示すのと同様に、実際の関係とは異なるものである。また、各部の細部の図示を省略している。
【0063】
本変形例に示す構成と実施形態1の
図1に示す構成との違いは、1つの放熱ブロック70に2つの半導体レーザモジュール10,20あるいは半導体レーザモジュール30,40のみが配設されている点にある。このため、本変形例に示す放熱ブロック70では、
図1~3に示す第2上部放熱ブロックが省略されており、下部放熱ブロック71と絶縁シール材72と第1上部放熱ブロック73とで構成されている。なお、放熱ブロック70の内部に流路76が形成され、流路76の一端が冷却水の流入口76aであり、他端が冷却水の排出口76bであることは実施形態1に示す構成と同様である。また、図示しないが、絶縁シール材72には開口が1つ設けられている。
【0064】
要求されるレーザ光出力の仕様によっては、半導体レーザ装置200を
図5Aに示す構成としてもよい。放熱ブロック70の構造を簡略化でき、半導体レーザ装置200のコストを低減できる。
【0065】
また、
図1に示す構成に代えて、半導体レーザ装置300を
図5Bに示す構成としてもよい。
図5Bに示す構成は、
図1に示す構成に比べて、構成部品の点数が増加し、また、隣り合う放熱ブロック70の間隔を適切に離してやる必要がある。
【0066】
一方、前述したように、上面視で、流入口76aから流れ込んだ冷却水がそのままレーザ光出射端面の近傍を通過するようにすると、半導体レーザモジュールの冷却効率を高めることができる。よって、
図5Bに示すように、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20が配設された放熱ブロック70と、第3及び第4半導体レーザモジュール30,40が配設された放熱ブロック70とに対して、それぞれ独立に冷却水が流れるようにすることで、
図1に示す構成に比べて、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の冷却効率をより高めることができる。
【0067】
<変形例2>
図6Aは、比較のための半導体レーザ装置の前方側面の模式図を、
図6Bは、本変形例に係る半導体レーザ装置の前方側面の模式図をそれぞれ示す。なお、
図6A,6Bに示す構成は
図5Aに示す構成と同様であるが、説明の便宜上、絶縁シール材を含め一部の図示を省略している。また、半導体レーザ装置200の各部の形状、位置、配置関係、寸法については、
図2に示すのと同様に、実際の関係とは異なるものである。また、各部の細部の図示を省略している。さらに、説明の便宜上、半導体レーザ素子14,24と、これに対向する電極ブロック16、21との間隔をあけて図示しているが、実際には、これらの間にはバンプ及び金属シートが介在しており、半導体レーザ素子14と上部電極ブロック16とは接触している。同様に、半導体レーザ素子24と下部電極ブロック21とは接触している。
【0068】
半導体レーザ装置を単独あるいは複数個並置したレーザ装置において、搭載された半導体レーザ素子からそれぞれレーザ光を出射させる場合、これらのレーザ光を1つのレーザ光に光学的に結合することで、より高出力のレーザ光を得ることができる。また、各々の半導体レーザ素子から出射されるレーザ光を所定の方向に偏向する光偏向部材や集光レンズ等の光学部品を所定の位置に配置することで、上記の光学結合を行うことができる。
【0069】
このとき、基準面、例えば、第1上部放熱ブロック63a及び/または第2上部放熱ブロック63bの上面から、各半導体レーザ素子の発光点までの距離が等しいと、レーザ光を上下方向に偏向させる光偏向部材が不要となり、レーザ装置の構成が簡素化されるとともに、コストを低減できる。
【0070】
図6A,6Bを例に取ると、基準面を第1上部放熱ブロック63aの上面とし、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20において、凹部が形成されていない電極ブロックの厚みをt1、凹部が形成された電極ブロックの凹部以外の部分の厚みをt2、凹部の深さをd1、サブマウント13,23の厚みと、サブマウント13,23にそれぞれ載置された半導体レーザ素子14,24の底面から発光点までの距離をd2とする。このとき、基準面から第1半導体レーザモジュール10の発光点までの距離D1、基準面から第2半導体レーザモジュールの発光点までの距離D2及びD2-D1は、それぞれ、式(1)~式(3)で表わされる。
【0071】
D1=t2-d1+d2 ・・・(1)
D2=t1+d1-d2 ・・・(2)
D2-D1=(t1-t2)+2(d1-d2) ・・・(3)
【0072】
なお、サブマウント13,23の厚みには、図示しないサブマウント13,23と半導体レーザ素子14,24との接着層も含まれる。また、絶縁シート12の厚みは第1及び第2半導体レーザモジュール10,20のそれぞれで同じであるため、説明の便宜上、式(1)~(3)において、絶縁シート12の厚みを考慮していない。
【0073】
ここで、t1=t2とすると、つまり、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20において、上部電極ブロック16,26及び下部電極ブロック11,21の厚みがそれぞれ同じであるとすると、
D2-D1=2(d1-d2) ・・・(4)
【0074】
また、前述したように、半導体レーザ素子14,24にはバンプ50が形成されているため、d1>d2である。よって、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20において、基準面から発光点までの距離がそれぞれ異なる。よって、上記の光学結合を行うためには、第1半導体レーザモジュール10または第2半導体レーザモジュール20から出射されるレーザ光のいずれかを上下方向に偏向する必要があり、レーザ装置の構成が複雑となりコストが上昇する。
【0075】
このような不具合を解消するため、
図6Bに示すように、つまり、式(3)の左辺が零となるように、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20において、上部電極ブロック16及び下部電極ブロック21の厚みを調整してもよい。
【0076】
このとき、
t1=t2-2(d1-d2) ・・・(5)
の関係が成り立つ。
【0077】
ただし、この場合、下部電極ブロック11,21の厚みがそれぞれことなるため、第1半導体レーザモジュール10における流路66及び外部への放熱効率と第2半導体レーザモジュール20における流路66及び外部への放熱効率とが異なってしまうことがある。このため、各半導体レーザモジュールでの放熱効率が同じになるようにするか、あるいは、発光点位置が同じになるようにするかは、レーザ装置における要求仕様等に応じて適宜選択される。
【0078】
なお、実施形態1に示すのと同様に、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20の上部電極ブロック16,26及び下部電極ブロック11,21をそれぞれ、上面視で同じ外形とし、第1及び第2半導体レーザモジュール10,20のそれぞれの上部電極ブロック16,26及び下部電極ブロック11,21において、モジュール固定用のねじ孔及び端子固定用のねじ孔が、上面視で同じ位置に配置することで、作り分けが必要な電極ブロックの種類を2種類に抑えることができる。なお、第3及び第4半導体レーザモジュール30,40においても同様の議論が成り立つことは言うまでもない。
【0079】
(実施形態2)
図7は、本実施形態に係る半導体レーザ装置の分解斜視図を、
図8は、前方側面の模式図を、
図9は、別の放熱ブロックの分解斜視図をそれぞれ示す。なお、
図8において、半導体レーザ装置400の各部の形状、位置、配置関係、寸法については、
図2に示すのと同様に、実際の関係とは異なるものである。また、各部の細部の図示を省略している。
【0080】
実施形態1の
図1に示す構成に対して、本実施形態に示す半導体レーザ装置400は、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の上部電極ブロック16,26,36,46の上面に別の放熱ブロック80が配置されている点で異なる。
【0081】
前述したように、
図1に示す構成において、半導体レーザ素子14,24,34,44から上部電極ブロック16,26,36,46にそれぞれ伝わる熱は、上部電極ブロック16,26,36,46の表面から外部雰囲気に排出される。しかし、この熱排出経路は、下部電極ブロック11,21,31,41と放熱ブロック60の流路66内に流れる冷却水とを介して、半導体レーザ素子14,24,34,44で発生した熱を外部に排出する経路よりも冷却効率が低い。
【0082】
また、一般に、半導体レーザ素子において、下側電極(負極)よりも上側電極(正極)に近い側に発光点があり(
図6A,6B参照)、半導体レーザ素子の動作中には、この発光点近傍で最も温度が上昇する。このため、通常、上側電極がサブマウントに熱的に接触するように半導体レーザ素子は実装される。
【0083】
一方、例えば、
図2に示すように、第2半導体レーザモジュール20や第4半導体レーザモジュール40では、サブマウント23,43がそれぞれ配置された上部電極ブロック26,46は、放熱ブロック60に接触しておらず、これらの半導体レーザモジュールの冷却効率は十分なものとは言えなかった。
【0084】
本実施形態によれば、この点を改善することができる。以下、このことについて説明する。
【0085】
図9に示すように、別の放熱ブロック80は、絶縁シール材82に3つの開口82a~82cが設けられ、それぞれを覆うように第3~第5上部電極ブロック83a~83cが設けられている点で、
図3A,3Bに示す構成と異なるが、それ以外は材質も含めて放熱ブロック60と同様である。例えば、流路86を構成する溝部85は、上面視でU字形状である(
図9参照)。実施形態1に示す構成と同様に、3つの開口82a~82cはいずれも絶縁シール材82を厚み方向に貫通している。なお、各半導体レーザモジュール10,20,30,40の上面に熱の放熱ブロック80が配設されるため、モジュール固定ねじ90aの頭は、各上部電極ブロック16,26,36,46の上面と同じか、これらよりも下方に位置している。また、端子固定ねじ91は設けられていない。
【0086】
なお、実際の配設方向と上下関係が異なるが、別の放熱ブロック80において、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の上部電極ブロック16,26,36,46の上面に配設された部材を第3~第5上部放熱ブロック83a~83cと、流路86を構成する溝部85が形成されたブロックを下部放熱ブロック81と呼ぶこととする。従って、別の放熱ブロック80の第3~第5上部放熱ブロック83a~83cの上面は流路86内を流れる冷却水に直接、接触している。
【0087】
本実施形態によれば、半導体レーザ素子14,24,34,44から半導体レーザモジュール10,20,30,40の上部電極ブロック16,26,36,46にそれぞれ伝わる熱を、第3~第5上部放熱ブロック83a~83c及び流路86内に流れる冷却水を介して外部に効率良く排出することができる。このことにより、半導体レーザ素子14,24,34,44に流す電流量を増やして、半導体レーザ装置400のさらなる高出力化が図れる。
【0088】
また、本実施形態によれば、
図1に示すブスバー51~53を省略することができる。
図8に示すように、別の放熱ブロック80の第4上部放熱ブロック83bは、第2及び第3半導体レーザモジュール20,30の上部電極ブロック26,36の上面に接して配設され、
図1に示すブスバー52と同様の機能、つまり、第2半導体レーザモジュール20と第3半導体レーザモジュール30とを電気的に接続する機能を奏する。
【0089】
半導体レーザ装置400をこのような構成とすることで、
図1に示す構成に比べて、実装される部品点数を低減できるとともに、部品コスト及び組立コストを低減することができる。また、簡便な構成で、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40を直列接続することができる。なお、この場合、第3上部放熱ブロック83aにグランド電位の電源端子(図示せず)が、第5上部放熱ブロック83cに正電位の電源端子(図示せず)が、それぞれ電気的に接続される。
【0090】
また、本実施形態の別の放熱ブロック80において、冷却水の流入口86aは左側面かつ前側に設けられ、排出口86bは左側面かつ流入口86aの後側に流入口86aと所定の間隔をあけて設けられている。つまり、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の下面に配設された放熱ブロック60と、流入口及び排出口の配置が左右反転した構造となっている。
【0091】
放熱ブロック60の流入口66aから流路66内に流れ込む冷却水は、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の下方を順次通過するにつれて、流入した熱により温度が次第に上昇する。同様に、別の放熱ブロック80においても、冷却水は、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の上方を順次通過するにつれて、流入した熱により温度が次第に上昇する。この場合、放熱ブロック60の流入口66aから流れ込む冷却水と、別の放熱ブロック80の流入口86aから流れ込む冷却水とが同じ方向に進行すると、流入口に近い半導体レーザモジュールと流入口から遠い半導体レーザモジュールとで冷却効率が異なってしまう。半導体レーザ装置400を長期間使用する場合に、このような状態が続くと、個々の半導体レーザモジュールでの劣化度合いが異なってしまい、結果として、半導体レーザ装置400の寿命を低下させるおそれがあった。
【0092】
一方、本実施形態によれば、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の下方を流れる冷却水の進行方向と、第1~第4半導体レーザモジュール10,20,30,40の上方を流れる冷却水の進行方向とを互いに反対向きにすることで、例えば、
図7,8に示す構成において、4つ並置された半導体レーザモジュール10,20,30,40の左端に位置する第1半導体レーザモジュール10と右端に位置する第4半導体レーザモジュール40とでの冷却効率の差を小さくし、半導体レーザ装置400の寿命低下を抑制することができる。
【0093】
(その他の実施形態)
実施形態1,2において、同じ放熱ブロック60の上に4つの半導体レーザモジュール10,20,30,40を配設する例を示したが、特にこれに限定されず、偶数個の半導体レーザモジュールが同じ放熱ブロックの上に配設されていてもよい。ただし、その場合は、一つの上部放熱ブロックに2個ずつの半導体レーザモジュールを配設し、互いに隣り合う上部放熱ブロックの間隔を所定の距離以上にあけて半導体レーザモジュール間の絶縁を図る必要がある。また、半導体レーザモジュールの上方に別の放熱ブロック80を配設する場合は、同じ放熱ブロック60の上にn個(nは4以上の偶数)の半導体レーザモジュールが配設される。
【0094】
なお、
図1に示す構成において、第1及び第3半導体レーザモジュール10,30の上部電極ブロック16,36の下面であって、凹部11b,31bを覆う位置に図示しない金属層が設けられていてもよい。このように金属層を設けることで、金属シートと接触して、バンプ50と上部電極ブロック16,36とを電気的に接続するとともに、バンプ50の側面に入り込んでバンプ50と上部電極ブロック16,36との間の接触抵抗を減少させることができる。なお、金属層は金を用いるのが好ましいが、他の導電材料を用いてもよい。ただし、上部電極ブロック16,36を下部電極ブロック21,31にそれぞれ取り付ける際に、バンプ50が大きく変形したり、あるいは脱離したりしないように硬度等を考慮する必要がある。同様に、第2及び第4半導体レーザモジュール20,40の下部電極ブロック21,41の上面であって、第1及び第3半導体レーザモジュール10,30の上部電極ブロック16,36の凹部16c,36cに対向する位置に金属層を設けてもよい。上記と同様の効果を奏することができる。
【0095】
また、冷媒として冷却水を用いる例を示したが、水以外の冷媒、例えば、不凍液等を用いてもよい。なお、半導体レーザ素子を過度に冷却する、例えば、数℃まで冷却すると、レーザ出射光端面等で結露するおそれがある。このような結露が生じると、レーザ発振が起こらなくなったり、場合によっては半導体レーザ装置が破損したりするおそれがある。また、半導体レーザ素子の温度が60℃を大きく越えると光出力特性が変化し、所望の出力が得られない場合がある。よって、動作中の半導体レーザ素子が10℃~40℃程度の温度に維持できるように冷媒の種類を選択するか、冷媒の温度管理をするのが好ましい。
【0096】
また、第1及び第2上部放熱ブロック63a,63bの下面を絶縁材料で覆うようにしてもよい。同様に、第3~第5上部放熱ブロック83a~83cの下面(流路の一面を構成する面)を絶縁材料で覆うようにしてもよい。
【0097】
冷却水を長期間使用していると、図示しない配管等から不純物が溶け出すことで、冷却水の抵抗率が低下してしまうことがあり、冷却水を介した漏電をうまく防止できないことがある。また、冷媒の種類によっては、抵抗率を所望値以上に高めることができない場合もあり得る。
【0098】
このような場合に、上記のように、第1~第5上部放熱ブロック63a,63b,83a~83cのうち冷却水等の冷媒が直接、接触する面を絶縁材料で覆うことにより、冷媒を介した漏電の発生を防止することができる。なお、第1~第5上部放熱ブロック63a,63b,83a~83cから冷媒への熱排出効率を低下させないように、絶縁材料の熱伝導率や厚みを適切に設定する必要がある。
【0099】
また、変形例を含む上記の実施形態において、上部電極ブロックと下部電極ブロックとの形状、例えば、上面視での外形が異なっていてもよい。
【0100】
また、これに限らず、上記の各実施形態及び変形例で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る半導体レーザ装置は、搭載される半導体レーザモジュールの冷却効率を高めることができ、レーザ加工装置等のレーザ光源に適用する上で有用である。
【符号の説明】
【0102】
10 第1半導体レーザモジュール
11 下部電極ブロック
11a ねじ孔
11b ねじ孔
12 絶縁シート
12a 開口
13 サブマウント
14 半導体レーザ素子
15 バンプ
16 上部電極ブロック
16a ねじ孔
16b ねじ孔
20 第2半導体レーザモジュール
21 下部電極ブロック
23 サブマウント
24 半導体レーザ素子
26 上部電極ブロック
26c 凹部
30 第3半導体レーザモジュール
31 下部電極ブロック
31b 凹部
33 サブマウント
34 半導体レーザ素子
36 上部電極ブロック
40 第4半導体レーザモジュール
41 下部電極ブロック
43 サブマウント
44 半導体レーザ素子
46 上部電極ブロック
46c 凹部
51~53 ブスバー
60,70 放熱ブロック
61,71 下部放熱ブロック
62,72 絶縁シール材
62a,62b 開口
63a,73a 第1上部放熱ブロック
63b 第2上部放熱ブロック
64 ねじ孔
65 溝部
66,76 流路
66a,76a 流入口
66b,76b 排出口
80 別の放熱ブロック
81 下部放熱ブロック
82 絶縁シール材
82a~82c 開口
83a 第3上部放熱ブロック
83b 第4上部放熱ブロック
83c 第5上部放熱ブロック
90,90a モジュール固定ねじ
91 端子固定ねじ
100,200,300,400 半導体レーザ装置