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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】電池ブロック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20221202BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221202BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20221202BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20221202BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20221202BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20221202BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20221202BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20221202BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20221202BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/643
H01M10/658
H01M50/204 401Z
H01M50/213
H01M50/227
H01M50/289 101
H01M50/293
H01M50/342 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021127321
(22)【出願日】2021-08-03
(62)【分割の表示】P 2018525018の分割
【原出願日】2017-06-12
(65)【公開番号】P2021177499
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2016129166
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 信行
(72)【発明者】
【氏名】榎本 武史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆史
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-009389(JP,A)
【文献】特開2008-204990(JP,A)
【文献】特開2010-282811(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156022(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/132135(WO,A1)
【文献】特許第5330810(JP,B2)
【文献】国際公開第2013/133181(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/157094(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/204 - 216
H01M 50/289 - 293
H01M 50/342
H01M 10/658
H01M 50/227
H01M 10/613
H01M 10/643
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一端部側の第1端面部に安全弁が設けられる複数の円筒形電池と、
前記各円筒形電池の軸方向一端部がそれぞれ挿入されると共に前記軸方向一端部を包囲する複数の収容部を有する樹脂製の第1ホルダーと前記各円筒形電池の軸方向他端部がそれぞれ挿入される複数の収容部を有する樹脂製の第2ホルダーとを連結して構成される電池ホルダーと、
を備え、
前記第1ホルダーの各収容部は、前記円筒形電池の外周面に沿って形成された第1隔壁部と、前記軸方向一端部を露出させる第1開口と、を有し、
前記第2ホルダーの各収容部は、前記円筒形電池の外周面に沿って形成された第2隔壁部を有し、
前記円筒形電池には、前記軸方向一端部において前記第1開口から露出する領域に前記安全弁が設けられており、
前記第1ホルダー内部の前記各円筒形電池の軸方向において前記第1隔壁部が形成されていないと共に、前記第2ホルダー内部の前記各円筒形電池の軸方向において前記第2隔壁部が形成されていない内部空隙が前記電池ホルダー内部の各円筒形電池の間に形成され、
前記内部空隙は、前記第1ホルダーと前記第2ホルダーとの連結部分において前記電池ホルダーの外部とつながらない閉じられた空間である、
電池ブロック。
【請求項2】
前記第1ホルダーおよび前記第2ホルダーはそれぞれ、前記複数の収容部を囲う側壁を含む、
請求項1に記載の電池ブロック。
【請求項3】
前記第1ホルダーの前記側壁は、前記複数の円筒形電池が並ぶ方向において、前記第2ホルダーの側壁と重なる、
請求項2に記載の電池ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに直列接続された複数の電池ブロックと、各電池ブロックを収納するケースとを備えた電池モジュールが開示されている。特許文献1の電池ブロックは、円筒形状に貫通する複数の電池収容部が形成された金属製の電池ホルダーと、当該金属製ホルダーに収容された複数の円筒形電池を並列接続する一対の端子板とを備える。
【0003】
ところで、上記金属製ホルダーを用いた場合、端子板とホルダーの間に絶縁板を設ける必要があり、端子板とホルダーの間に大きな隙間が形成される。また、各電池収容部は、電池の直径よりもやや大きな寸法でホルダーを電池の軸方向に貫通して形成されるため、ホルダーと電池の間には、ガスが当該軸方向に流通可能な隙間が形成される。このため、1つの電池に異常が発生して高温のガスが噴出したときに、そのガスの一部が他の電池収容部に流入し易く、他の正常な電池が高温に曝される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-160551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の円筒形電池を搭載する電池ブロックにおいて、1つの円筒形電池に異常が発生して当該電池から高温のガスが噴出した場合に、他の電池に対する影響を抑制することは重要な課題である。特許文献1の電池ブロックでは、例えば絶縁板と円筒形電池の間に電池の安全弁を囲むように接着剤を塗布して隙間を塞ぐことで、かかる課題に対処することが考えられるが、より簡便で確実な方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である電池ブロックは、複数の円筒形電池と、硬化型樹脂で構成され、各円筒形電池の軸方向一端部がそれぞれ挿入される複数の収容部を有する電池ホルダーと、電池ホルダーにそれぞれ密接した状態で取り付けられ、各円筒形電池を並列接続する一対の端子板とを備え、各円筒形電池の軸方向一端部側の第1端面部には、安全弁が設けられ、各収容部は、円筒形電池の外周面に沿って形成された隔壁部と、第1端面部の安全弁が設けられた部分を包囲するように第1端面部上に張り出し、隔壁部と一体的に形成された張り出し部と、第1端面部の安全弁が設けられた部分を露出させる開口とをそれぞれ有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様である電池ブロックによれば、1つの円筒形電池に異常が発生して当該電池から高温のガスが噴出した場合に、他の電池に対する影響を十分に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例である電池ブロック及び電池モジュールを正面側斜め上方から見た斜視図である。
図2】実施形態の一例である電池ブロック及び電池モジュールを背面側斜め下方から見た斜視図である。
図3】実施形態の一例である電池ブロックの分解斜視図である。
図4】実施形態の一例である電池ブロック及び電池モジュールの縦方向断面図である。
図5図4において、円筒形電池を取り外した状態を示す図である。
図6】実施形態の一例である円筒形電池の断面図である。
図7】実施形態の一例である電池ホルダーの電池収容部の上下端部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述のように、複数の円筒形電池を搭載する電池ブロックにおいて、1つの円筒形電池に異常が発生した場合に、他の正常な電池に対する影響を抑制することは重要である。かかる課題に対処すべく、本開示の一態様である電池ブロックは、硬化型樹脂で構成された電池ホルダーと、電池ホルダーにそれぞれ密接した状態で取り付けられた一対の端子板とを備える。電池ホルダーは樹脂製であるため、端子板とホルダーの間に絶縁板を設ける必要がなく、端子板を電池ホルダーに密接させることができる。即ち、端子板とホルダーの間にガスが吹き抜けるような大きな隙間は形成されない。
【0010】
さらに、少なくとも安全弁が設けられる側の各円筒形電池の軸方向端部を電池ホルダーが包囲するため、円筒形電池から高温のガスが噴出した場合に、ガスはホルダー内に流入し難く、高温のガスが各円筒形電池の間を吹き抜けることはない。また、電池ホルダーは硬化型樹脂から構成されるため、円筒形電池が異常発熱しても溶融し難くホルダーの形状が維持される。このように、本開示の一態様である電池ブロックによれば、1つの円筒形電池から高温のガスが噴出したとしても、他の電池に対する影響を十分に抑制できる。
【0011】
以下、実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本開示に係る電池ブロックは、以下で説明する実施形態に限定されない。実施形態の説明で参照する図面は模式的に記載されたものであるから、図面に描画された構成要素の寸法などは以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0012】
以下では、説明の便宜上、円筒形電池の列に沿った方向を電池ブロック等の「縦方向」、円筒形電池の列が並ぶ方向を電池ブロック等の「横方向」とする。円筒形電池の軸方向に沿った方向を電池ブロック等の「上下方向」とし、正極集電板側を「上」、負極集電板側を「下」とする。また、正極側のバスバー部を収容する凹部が形成される電池ブロックの縦方向一方側(正面側)を「前」、負極側のバスバー部を収容する凹部が形成される電池ブロックの縦方向他方側(背面側)を「後」とする。
【0013】
図1及び図2は、実施形態の一例である2つの電池ブロック11を電気的に接続して構成された電池モジュール10の斜視図である。図3は、電池ブロック11の分解斜視図である(円筒形電池の図示省略)。図4は電池モジュール10の縦方向断面図、図5図4において円筒形電池12を取り外した状態を示す図である。
【0014】
図1図5に例示するように、電池モジュール10を構成する電池ブロック11は、複
数の円筒形電池12と、硬化型樹脂で構成され、各円筒形電池12の軸方向一端部(上端部)がそれぞれ挿入される複数の収容部32(図4及び図5参照)を有する電池ホルダー13とを備える。また、電池ブロック11は、電池ホルダー13にそれぞれ密接した状態で取り付けられ、各円筒形電池12を並列接続する一対の端子板4,5を備える。各円筒形電池12の軸方向一端側(上端側)の第1端面部12aには、安全弁50(後述の図6参照)が設けられる。
【0015】
本実施形態では、各円筒形電池12の上端部を保持するアッパーホルダー20(第1ホルダー)と、各円筒形電池12の軸方向他端部(下端部)を保持するロアーホルダー25(第2ホルダー)とを電池ホルダー13周囲の複数個所をネジ止めにより連結して、電池ホルダー13が構成されている。アッパーホルダー20のロアーホルダー25との連結部分は、ロアーホルダー25の内側に入る縁部が形成されており、ロアーホルダー25の連結部分はアッパーホルダー20の縁部が挿入される部分が肉薄になっており、アッパーホルダー20とロアーホルダー25とは嵌合されて、連結部分において隙間無く連結される。
【0016】
電池モジュール10は、円筒形電池12の列に沿った縦方向に並ぶ2つの電池ブロック11を直列接続して構成される。2つの電池ブロック11は、例えば同じものであり、互いに形状、寸法が同じで、同数の円筒形電池12を搭載している。以下では、説明の便宜上、一方の電池ブロック11を「電池ブロック11A(第1電池ブロック)」、他方の電池ブロック11を「電池ブロック11B(第2電池ブロック)」とする。電池モジュール10では、電池ブロック11Aの後面と電池ブロック11Bの前面が対向配置されている。電池ブロック11Aの後面を形成する電池ホルダー13Aの側壁部と電池ブロック11Bの前面を形成する電池ホルダー13Bの側壁部は、接触していてもよいが、本実施形態では、部品公差を考慮して僅かに離間させている。
【0017】
電池ブロック11は、電池ホルダー13に収容された複数の円筒形電池12が端子板4,5により並列接続された組電池ユニットである。端子板4は、各円筒形電池12の正極端子に接続される正極端子板である。端子板5は、各円筒形電池12の負極端子に接続される負極端子板であって、各円筒形電池12を挟んで端子板4と対向配置されている。端子板4は、正極集電板14と、各円筒形電池12の正極端子に当接される正極リード部となる正極リード板16とで構成される。端子板5は、負極集電板15と、各円筒形電池12の負極端子に当接される負極リード部となる負極リード板17とで構成される。電池モジュール10は、電池ブロック11Aの負極集電板15Aと、電池ブロック11Bの正極集電板14Bとを接続して構成される。なお、電池モジュール10は、3つ以上の電池ブロック11を電気的に接続して構成されてもよい。
【0018】
端子板4は、アッパーホルダー20に取り付けられる。端子板4の正極集電板14は、複数の開口42が形成された基部40と、基部40の縦方向一端部(前端部)から延出するバスバー部41とを有する。開口42は、アッパーホルダー20の上壁部21に形成された後述の開口32cと重なる位置に形成される。バスバー部41は、基部40との境界位置である根元で下方に折り曲げられ、途中で前方に折り曲げられている。正極集電板14には、互いに同じ形状、同じ寸法を有するバスバー部41が2つ設けられる。
【0019】
端子板5は、ロアーホルダー25に取り付けられる。端子板5の負極集電板15は、複数の開口47が形成された基部45と、基部45の縦方向他端部(後端部)から延出するバスバー部46とを有する。開口47は、ロアーホルダー25の下壁部26に形成された後述の開口33cと重なる位置に形成される。バスバー部46は、基部45との境界位置である根元で上方に折り曲げられ、途中で後方に折り曲げられている。負極集電板15には、互いに同じ形状、同じ寸法を有するバスバー部46が2つ設けられる。
【0020】
端子板4の正極リード板16は、アッパーホルダー20の上壁部21と正極集電板14の間に介在して各円筒形電池12の正極端子と電気的に接続される。端子板5の負極リード板17は、ロアーホルダー25の下壁部26と負極集電板15の間に介在して各円筒形電池12の負極端子と電気的に接続される。正極リード板16は正極集電板14の基部40の裏面に、負極リード板17は負極集電板15の基部45の裏面にそれぞれ接合されて、各集電板と一体化されている。
【0021】
ここで、図6の断面図を参照しながら、円筒形電池12の構造の一例について説明する。図6に例示するように、円筒形電池12は、正極51及び負極52がセパレータ53を介して巻回されてなる巻回型の電極体54と、非水電解質(図示せず)と、これらを収容するケース55とを備える。ケース55は、有底略円筒形状のケース本体56と、ケース本体56の開口部を塞ぐ封口体57とで構成される。ケース55は、平面視円形状の第1端面部12aと、底面視円形状の第2端面部12bと、軸方向に沿った曲面である外周面12cとを含み、径方向よりも軸方向に長い略円柱形状を有する。
【0022】
円筒形電池12は、電極体54の上下にそれぞれ配置された絶縁板59,60を備える。図6に示す例では、正極51に取り付けられた正極タブ61が絶縁板59の貫通孔を通って封口体57側に延び、負極52に取り付けられた負極タブ62が絶縁板60の外側を通ってケース本体56の底部側に延びている。正極タブ61は封口体57の底板であるフィルタ63の下面に溶接等で接続され、フィルタ63と電気的に接続された封口体57の天板であるキャップ64が正極端子となる。負極タブ62はケース本体56の底部内面に溶接等で接続され、ケース本体56が負極端子となる。
【0023】
図6に示す例では、正極端子となる封口体57が円筒形電池12の上端側の第1端面部12aを構成し、負極端子となるケース本体56の底部が円筒形電池12の軸方向他端側(下端側)の第2端面部12bを構成する。本実施形態では、正極リード板16が第1端面部12aに接続され、負極リード板17が第2端面部12bに接続される。安全弁50は、後述するように、封口体57に設けられる。なお、ケース本体56の底部に安全弁が設けられてもよい。
【0024】
ケース本体56は、有底略円筒形状の金属製容器である。ケース本体56と封口体57の間にはガスケット58が設けられ、ケース55内の密閉性が確保される。ケース本体56は、例えば外周面12cを外側からプレスして形成された、封口体57を支持する張り出し部65を有する。張り出し部65は、ケース本体56の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体57を支持する。
【0025】
封口体57は、積層構造を有する略円板状の部材であって、底板であるフィルタ63上に配置された安全弁50を有する。安全弁50は、フィルタ63の開口部63aを塞いでおり、内部短絡等による発熱で電池の内圧が上昇した場合に破断する。安全弁50は、下弁体66と上弁体67を含み、その間に絶縁部材68が配置された構造を有する。封口体57では、フィルタ63と下弁体66が各々の周縁部で互いに接合され、上弁体67とキャップ64が各々の周縁部で互いに接合されている。下弁体66と上弁体67は、各々の中央部で互いに接続され、各周縁部の間には絶縁部材68が介在している。
【0026】
以下、再び図1図5を参照し、電池ホルダー13について詳説する。電池ホルダー13は、硬化型樹脂で構成される。電池ホルダー13を構成する硬化型樹脂は、600℃以上の高温に曝されても溶融しない架橋構造を有する樹脂であって、例えば800℃~1000℃の高温に曝されても溶融せずに炭化して電池ホルダー13の形状を維持する。具体例としては、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱
硬化性樹脂が挙げられる。
【0027】
電池ホルダー13を構成する硬化型樹脂には、例えば吸熱フィラー及び熱伝導性フィラーの少なくとも一方が含有され、好ましくは吸熱フィラー及び熱伝導性フィラーの両方が含有されている。吸熱フィラーは、熱分解時に吸熱作用を発揮するものであり、具体例としては、水酸化アルミニウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。熱伝導性フィラーとしては、酸化金属(例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛)、窒化金属(例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素)、酸窒化金属(例えば、酸窒化アルミニウム)などが例示できる。
【0028】
電池ホルダー13は、複数の円筒形電池12を収容可能な内部空間18を有する。電池ホルダー13は、複数の円筒形電池12を収容する電池ケースともいえる。電池ホルダー13は、上下方向よりも縦方向及び横方向に長い略直方体形状を有する。電池ホルダー13の上下方向長さは、例えば円筒形電池12の軸方向長さよりもやや長い。電池ホルダー13の縦方向長さは円筒形電池12の列の長さ等に応じて設定され、横方向長さは後述する収容部群30の数等に応じて設定される。
【0029】
電池ホルダー13には、正極集電板14のバスバー部41を収容する凹部23と、負極集電板15のバスバー部46を収容する凹部28とがそれぞれ形成されている。凹部23は電池ホルダー13の前端部に形成され、凹部28は電池ホルダー13の後端部に形成される。凹部23は、電池ホルダー13の前端部において、後述する各収容部群30の中央の列34をそれぞれ構成する2つの電池収容部31の間隙に形成される。凹部28についても、電池ホルダー13の後端部において、各収容部群30の中央の列34をそれぞれ構成する2つの電池収容部31の間隙に形成される。
【0030】
凹部23は、アッパーホルダー20の前端部に形成された窪みであって、当該ホルダーの上端から上下方向中央部にわたって形成されている。凹部23は、バスバー部41の全体を収容する。凹部23の下壁部には、ネジ孔37が形成されている。ネジ孔37には、バスバー部41,46を固定するネジ36が取り付けられる。ネジ36が挿通される貫通孔43が形成されたバスバー部41の先端側部分は、貫通孔43がネジ孔37と上下方向に重なり凹部23の下壁部に沿うように配置される。
【0031】
凹部28は、アッパーホルダー20及びロアーホルダー25の後端部に形成された窪みであって、ロアーホルダー25の下端からアッパーホルダー20の上下方向中央部にわたって形成されている。凹部28は、アッパーホルダー20に形成されたアッパーホルダー側凹部24と、ロアーホルダー25の上下方向全長にわたって形成されたロアーホルダー側凹部29とで構成されている。凹部28は、バスバー部46の上下方向に延びた部分の全体を収容し、バスバー部46の縦方向に延びた部分の一部を収容する。ネジ36が挿通される貫通孔48が形成されたバスバー部46の先端側部分は、凹部28から張り出し、電池ホルダー13の端から後方へ突出している。
【0032】
凹部23と凹部28は、縦方向に重なるように形成されている。即ち、凹部23,28は、互いに縦方向に重なる上下方向長さとされる。凹部23の上下方向長さが決まっている場合、凹部28は、その上端が凹部23の下端よりも上に位置するように形成される。電池モジュール10では、電池ブロック11Aの凹部28Aの上部と電池ブロック11Bの凹部23Bの下部が、縦方向に重なって対向している。このため、電池ブロック11Aの凹部28Aから張り出して後方に突出したバスバー部46Aの先端側部分を、電池ブロック11Bの凹部23B内に挿し込むことが可能となる。
【0033】
電池モジュール10では、電池ブロック11Aのバスバー部46Aが電池ブロック11
B側に延出し、電池ブロック11Bのバスバー部41Bと当該ブロックの凹部23B内で接続されている。電池ブロック11Aのバスバー部46Aは、貫通孔48が貫通孔43と上下方向に重なるように、バスバー部41Bの上に重ねられる。そして、ネジ36を貫通孔43,48に挿通してネジ孔37に取り付けることで、バスバー部41Bとバスバー部46Aが電気的に接続され、電池ブロック11A,11Bの接続構造が形成される。
【0034】
電池ホルダー13は、千鳥状に形成された複数の電池収容部31を有する。電池収容部31は、アッパーホルダー20の収容部32と、ロアーホルダー25の収容部33とで構成される。円筒形電池12の上端部は収容部32(第1収容部)に挿入され、円筒形電池12の下端部は収容部33(第2収容部)に挿入される。電池ホルダー13の各電池収容部31に収容された各円筒形電池12の間には、内部空隙19が連続的に形成されている。
【0035】
電池ホルダー13は、電池収容部31(収容部32,33)によって各円筒形電池12の上下端部のみを保持し、上下方向中央部を保持しない。そして、各円筒形電池12の間に形成される内部空隙19は、収容部32と収容部33の間において水平方向につながって電池ホルダー13内の全体に広がっている。即ち、電池ホルダー13の内部空間18(内部空隙19)は、電池収容部31毎に区画されていない。
【0036】
内部空隙19は、断熱層として機能し、例えば1つの円筒形電池12が異常発熱したときに、その熱を他の電池に伝え難くする役割を果たす。また、内部空隙19は、例えばアッパーホルダー20とロアーホルダー25との連結部分において電池ホルダー13の外部とつながらない閉じられた空間であり、1つの円筒形電池12から噴出した高温のガスの一部が内部空隙19に侵入したとしても、内部空隙19を通るガスの排出路は形成されない。即ち、高温のガスが各円筒形電池12の間を吹き抜けることはない。なお、内部空隙19にガスの一部が侵入すると、ホルダーの内圧が高くなり、それ以上のガスの侵入は起こり難くなる。また、内部空隙19は、電池ホルダー13内で連続して広がっているため、ガスの一部が内部空隙19に流入したとしても電池ホルダー13内の大幅な温度上昇は起こり難い。
【0037】
電池ホルダー13は、隣り合う列の各円筒形電池12同士が千鳥状に配置されるように3列で形成された電池収容部31の群である収容部群30を2つ以上有する。本実施形態では、3つの収容部群30が電池ホルダー13の横方向に並んで設けられている。内部空隙19は、各収容部群30にわたって連続し、電池ホルダー13内の全体に広がっている。各収容部群30の間には、1つの収容部群30を構成する各電池収容部31の間隔よりも広いスペースが形成される。このため、内部空隙19は、1つの収容部群30を構成する各電池収容部31の間よりも各収容部群30の間で大きくなっている。
【0038】
各収容部群30は、3列ある電池収容部31の列のうち、両端の列35を構成する電池収容部31の数よりも中央の列34を構成する電池収容部31の数が1つ多くなるようにそれぞれ構成されている。本実施形態では、列34が8つの電池収容部31から形成され、列35が7つの電池収容部31から形成されている。列34,35は、いずれも複数の電池収容部31が縦方向に真っ直ぐ並んで形成されている。列34を構成する電池収容部31と列35を構成する電池収容部31は、縦方向に半ピッチずつずれて千鳥状に配置される。
【0039】
電池ホルダー13は、上述の通り、アッパーホルダー20と、ロアーホルダー25とを有し、いずれも硬化型樹脂で構成される。アッパーホルダー20及びロアーホルダー25は、円筒形電池12の収容部32,33がそれぞれ複数形成されたトレイ状部材である。アッパーホルダー20とロアーホルダー25が連結されたときに収容部32と収容部33
が上下方向に重なることで、電池収容部31が形成される。アッパーホルダー20とロアーホルダー25の縦方向長さ、横方向長さ、上下方向長さは、例えばそれぞれ互いに略同一である。
【0040】
アッパーホルダー20は、平面視略四角形状の上壁部21と、上壁部21に対して略垂直に形成された側壁部22とを有する。収容部32は、側壁部22に囲まれたアッパーホルダー20の内側に複数形成される。ロアーホルダー25は、平面視略四角形状の下壁部26と、下壁部26に対して略垂直に形成された側壁部27とを有する。収容部33は、側壁部27に囲まれたロアーホルダー25の内側に複数形成される。
【0041】
アッパーホルダー20及びロアーホルダー25の各側壁部には、連結部38が設けられている。例えば、各円筒形電池12の下端部を各収容部33に挿入したロアーホルダー25にアッパーホルダー20を被せて両ホルダーを連結部38でネジ止めすることによって、複数の円筒形電池12を内部に収容した電池ホルダー13が形成される。上壁部21の開口32cは円筒形電池12の第1端面部12aによって、下壁部26の開口33cは円筒形電池12の第2端面部12bによってそれぞれ塞がれ、また側壁部22,27の先端部同士が互いにほとんど隙間なく当接する。これにより、内部空隙19は閉じられた空間となる。
【0042】
図7は、電池収容部31の上下端部を拡大して示す断面図である。図7に例示するように(図4及び図5も参照)、アッパーホルダー20の各収容部32は、円筒形電池12の外周面12cに沿って形成された隔壁部32a(第1隔壁部)と、隔壁部32aと一体的に形成された張り出し部32b(第1張り出し部)とをそれぞれ有する。張り出し部32bは、第1端面部12aの安全弁50が設けられた部分を包囲するように第1端面部12a上に張り出している。また、各収容部32は、第1端面部12aの安全弁50が設けられた部分を露出させる開口32c(第1開口)をそれぞれ有する。
【0043】
収容部32は、その上端の一部が張り出し部32bにより塞がれた円筒形状の凹部であって、円筒形電池12の上端部を保持する。開口32cは、上壁部21に形成された貫通孔であって、張り出し部32bは、上壁部21の開口32cの周囲に位置する部分により形成されている。端子板4の正極リード板16は、開口32cを介して第1端面部12aに接続される。また、円筒形電池12の安全弁50が破断してガスが噴出する場合には、開口32cを通ってガスが排出される。開口32cは、例えば円形状を有し、千鳥状に形成される。
【0044】
隔壁部32aは、円筒形電池12の外周面12cに近接して形成され、外周面12cに接触していてもよい。張り出し部32bは、開口32cの周囲において、第1端面部12aの外面の周縁部に対向配置される。張り出し部32bは、第1端面部12aの外面に近接して形成され、第1端面部12aの外面に接触していてもよい。円筒形電池12の上端部は収容部32によってこのように包囲されるため、安全弁50が破断して噴出したガスは電池ホルダー13内にほとんど流入しない。つまり、隔壁部32a及び張り出し部32bによる流入抵抗の増大によりガスの流入が阻止される。
【0045】
隔壁部32aの好適な上下方向長さL32は、円筒形電池12の容量、出力、種類等によっても異なるが、例えば円筒形電池12の軸方向長さの3%~30%、又は5%~25%、又は10%~25%である。即ち、アッパーホルダー20は、円筒形電池12の外周面12cに対して、例えば外周面12cの上端から円筒形電池12の軸方向長さの3%~30%の長さの範囲を包囲する。上下方向長さL32を円筒形電池12の軸方向長さの3%~30%程度にすることで、電池ホルダー13の軽量化、材料コストの削減等を図りながら、ホルダー内へのガスの流入を効率良く阻止できる。各隔壁部32aの上下方向長さL32は、例えば互いに同一である。
【0046】
アッパーホルダー20の上壁部21には、端子板4が密接した状態で取り付けられる。このため、端子板4と電池ホルダー13の間には、ガスが容易に流通するような隙間が存在しない。本実施形態では、正極リード板16が接合された正極集電板14の基部40が上壁部21にネジ止めされる。上壁部21には、端子板4を固定するためのネジ36が挿通されるネジ孔(図示せず)が形成されている。
【0047】
ロアーホルダー25の各収容部33は、円筒形電池12の外周面12cに沿って形成された隔壁部33a(第2隔壁部)と、第2端面部12b上に張り出し、隔壁部33aと一体的に形成された張り出し部33b(第2張り出し部)とをそれぞれ有する。また、各収容部33は、第2端面部12bの一部を露出させる開口33c(第2開口)をそれぞれ有する。第2端面部12bに安全弁が設けられる場合は、第2端面部12bの安全弁が設けられた部分を包囲するように第2端面部12b上に張り出し部33bが張り出し、開口33cは安全弁が設けられた部分を露出させるように形成される。
【0048】
収容部33は、その下端の一部が張り出し部33bにより塞がれた円筒形状の凹部であって、円筒形電池12の下端部を保持する。開口33cは、下壁部26に形成された貫通孔であって、張り出し部33bは、下壁部26の開口33cの周囲に位置する部分により形成されている。端子板5の負極リード板17は、開口33cを介して第2端面部12bに接続される。開口33cは、例えば略半円形状を有し、千鳥状に形成される。
【0049】
隔壁部33aは、円筒形電池12の外周面12cに近接して形成され、外周面12cに接触していてもよい。張り出し部33bは、開口33cの周囲において、第2端面部12bの外面の周縁部に対向配置される。張り出し部33bは、第2端面部12bの外面に近接して形成され、第2端面部12bの外面に接触していてもよい。円筒形電池12の下端部は収容部33によってこのように包囲されるため、安全弁が破断して噴出したガスは電池ホルダー13の下側からもほとんど流入しない。
【0050】
隔壁部33aの好適な上下方向長さL33は、収容部32の場合と同様に、円筒形電池12の容量、出力、種類等によっても異なるが、例えば円筒形電池12の軸方向長さの3%~30%、又は5%~25%、又は10%~25%である。本実施形態では、各隔壁部32a,33aの上下方向長さは同一である。ロアーホルダー25は、円筒形電池12の外周面12cに対して、例えば外周面12cの下端から円筒形電池12の軸方向長さの3%~30%の長さの範囲を包囲する。
【0051】
ロアーホルダー25の下壁部26には、端子板5が密接した状態で取り付けられる。このため、端子板5と電池ホルダー13の間には、ガスが容易に流通するような隙間が存在しない。本実施形態では、負極リード板17が接合された負極集電板15の基部45が下壁部26にネジ止めされる。下壁部26には、端子板5を固定するためのネジ36が挿通されるネジ孔(図示せず)が形成されている。
【0052】
上述のように、電池ブロック11では、端子板4,5が電池ホルダー13の上下壁部に密接した状態で取り付けられ、また電池ホルダー13が円筒形電池12の上下両端部を包囲している。したがって、1つの円筒形電池12に異常が発生して当該電池から高温のガスが噴出したとしても、硬化型樹脂で構成された電池ホルダー13の形状は維持され、ホルダー内へのガスの流入が阻止される。つまり、電池ブロック11によれば、高温のガスが各円筒形電池12の間を吹き抜けることが防止され、他の正常な電池に対する影響を十分に抑制できる。
【0053】
なお、上述の実施形態は、本開示の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、各円筒形電池の第1端面部のみに安全弁が設けられる場合に、第1ホルダーのみが安全弁が設けられた部分を包囲するように第1端面部上に張り出し、第2ホルダーは各円筒形電池の第2端面部上に張り出さない形態としてもよい。また、電池ホルダーの内部空隙(内部空間)は収容部群毎に区画されていてもよく、電池収容部の列が電池ホルダーの横方向に一定の間隔で3列以上形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
4,5 端子板、10 電池モジュール、11,11A,11B 電池ブロック、12 円筒形電池、12a 第1端面部、12b 第2端面部、12c 外周面、13,13A,13B 電池ホルダー、14,14B 正極集電板、15,15A 負極集電板、16 正極リード板、17 負極リード板、18 内部空間、19 内部空隙、20 アッパーホルダー(第1ホルダー)、21 上壁部、22,27 側壁部、23,23B 凹部、24 アッパーホルダー側凹部、25 ロアーホルダー(第2ホルダー)、26 下壁部、28,28A 凹部、29 ロアーホルダー側凹部、30 収容部群、31 電池収容部、32,33 収容部、32a,33a 隔壁部、32b,33b 張り出し部、32c,33c 開口、34,35 列、36 ネジ、37 ネジ孔、38 連結部、40,45 基部、41,41B,46,46A バスバー部、42,47 開口、43,48 貫通孔、50 安全弁、51 正極、52 負極、53 セパレータ、54 電極体、55 ケース、56 ケース本体、57 封口体、58 ガスケット、59,60 絶縁板、61 正極タブ、62 負極タブ、63 フィルタ、63a,64a 開口部、64 キャップ、65 張り出し部、66 下弁体、67 上弁体、68 絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7