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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/483 20070101AFI20221202BHJP
【FI】
H02M7/483
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019077207
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020178389
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】高田 悠生
(72)【発明者】
【氏名】藤居 直章
(72)【発明者】
【氏名】廣田 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】志谷 和真
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069654(WO,A1)
【文献】特開2014-050134(JP,A)
【文献】特開2017-169250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続される第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の接続点と前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子の接続点との間に接続された第1フライングキャパシタを有する第1フライングキャパシタ回路と、
直列に接続される第5スイッチング素子、第6スイッチング素子、第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子と、前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子の接続点と前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子の接続点との間に接続された第2フライングキャパシタを有する第2フライングキャパシタ回路と、
直列に接続される第9スイッチング素子、第10スイッチング素子、第11スイッチング素子及び第12スイッチング素子と、前記第9スイッチング素子と前記第10スイッチング素子の接続点と前記第11スイッチング素子と前記第12スイッチング素子の接続点との間に接続された第3フライングキャパシタを有する第3フライングキャパシタ回路と、
直列に接続される第13スイッチング素子、第14スイッチング素子、第15スイッチング素子及び第16スイッチング素子と、前記第13スイッチング素子と前記第14スイッチング素子の接続点と前記第15スイッチング素子と前記第16スイッチング素子の接続点との間に接続された第4フライングキャパシタを有する第4フライングキャパシタ回路と、
前記第1フライングキャパシタ回路の中点と前記第2フライングキャパシタ回路の中点との間に直列に接続される第1スイッチ部と第2スイッチ部を有し、前記第1スイッチ部と前記第2スイッチ部との間の接続点が、系統電源または交流負荷に接続された交流経路の一端に接続される第1出力回路と、
前記第3フライングキャパシタ回路の中点と前記第4フライングキャパシタ回路の中点との間に直列に接続される第3スイッチ部と第4スイッチ部を有し、前記第3スイッチ部と前記第4スイッチ部との間の接続点が、前記交流経路の他端に接続される第2出力回路と、を備え、
前記第1フライングキャパシタ回路及び前記第2フライングキャパシタ回路は直流電源の両端間に直列に接続され、
前記第3フライングキャパシタ回路及び前記第4フライングキャパシタ回路は前記直流電源の両端間に直列に接続され、
前記第1フライングキャパシタ回路と前記第2フライングキャパシタ回路との接続点と、前記第3フライングキャパシタ回路と前記第4フライングキャパシタ回路との接続点との間が中間配線で接続され、
本電力変換装置は、
前記直流電源の正極に接続された正側直流バスと、前記中間配線との間に接続された第1分割コンデンサと、
前記中間配線と、前記直流電源の負極に接続された負側直流バスとの間に接続された第2分割コンデンサと、
前記第1出力回路の両端間に接続された第1出力コンデンサと、
をさらに備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第1出力コンデンサの容量値は、前記第1分割コンデンサおよび前記第2分割コンデンサの容量値より低く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2出力回路の両端間に接続された第2出力コンデンサを、
さらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第2出力コンデンサの容量値は、前記第1分割コンデンサおよび前記第2分割コンデンサの容量値より低く設定されていることを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、蓄電池、燃料電池などに接続されるパワーコンディショナは、高効率な電力変換と小型設計が望まれる。それを実現する電力変換装置の1つに、フライングキャパシタを用いたマルチレベル電力変換装置がある(例えば、特許文献1参照)。マルチベル電力変換装置におけるフライングキャパシタの電圧は、部品パラメータのばらつきのない理想的な状態では一定の電圧値にバランスされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-91179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際には回路を構成する部品パラメータのばらつきにより、理想とする電圧値にバランスしないことが多い。フライングキャパシタの電圧バランスが崩れると、スイッチング素子に印加される電圧バランスも崩れる。その場合、デバイスの耐圧超過による不具合や、U相とW相の出力端子の対地間電位のずれによるアースへの漏洩電流などが発生する。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、フライングキャパシタの電圧バランスが安定したマルチレベル電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電力変換装置は、直列に接続される第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の接続点と前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子の接続点との間に接続された第1フライングキャパシタを有する第1フライングキャパシタ回路と、直列に接続される第5スイッチング素子、第6スイッチング素子、第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子と、前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子の接続点と前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子の接続点との間に接続された第2フライングキャパシタを有する第2フライングキャパシタ回路と、直列に接続される第9スイッチング素子、第10スイッチング素子、第11スイッチング素子及び第12スイッチング素子と、前記第9スイッチング素子と前記第10スイッチング素子の接続点と前記第11スイッチング素子と前記第12スイッチング素子の接続点との間に接続された第3フライングキャパシタを有する第3フライングキャパシタ回路と、直列に接続される第13スイッチング素子、第14スイッチング素子、第15スイッチング素子及び第16スイッチング素子と、前記第13スイッチング素子と前記第14スイッチング素子の接続点と前記第15スイッチング素子と前記第16スイッチング素子の接続点との間に接続された第4フライングキャパシタを有する第4フライングキャパシタ回路と、前記第1フライングキャパシタ回路の中点と前記第2フライングキャパシタ回路の中点との間に直列に接続される第1スイッチ部と第2スイッチ部を有し、前記第1スイッチ部と前記第2スイッチ部との間の接続点が、系統電源または交流負荷に接続された交流経路の一端に接続される第1出力回路と、前記第3フライングキャパシタ回路の中点と前記第4フライングキャパシタ回路の中点との間に直列に接続される第3スイッチ部と第4スイッチ部を有し、前記第3スイッチ部と前記第4スイッチ部との間の接続点が、前記交流経路の他端に接続される第2出力回路と、を備える。前記第1フライングキャパシタ回路及び前記第2フライングキャパシタ回路は直流電源の両端間に直列に接続され、前記第3フライングキャパシタ回路及び前記第4フライングキャパシタ回路は前記直流電源の両端間に直列に接続され、前記第1フライングキャパシタ回路と前記第2フライングキャパシタ回路との接続点と、前記第3フライングキャパシタ回路と前記第4フライングキャパシタ回路との接続点との間が中間配線で接続され、本電力変換装置は、前記直流電源の正極に接続された正側直流バスと、前記中間配線との間に接続された第1分割コンデンサと、前記中間配線と、前記直流電源の負極に接続された負側直流バスとの間に接続された第2分割コンデンサと、前記第1出力回路の両端間に接続された第1出力コンデンサと、をさらに備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、フライングキャパシタの電圧バランスが安定したマルチレベル電力変換装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】比較例に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
図2】5レベル(+E、+1/2E、0、-1/2E、-E)の電圧で生成される擬似正弦波を示す図である。
図3図1の電力変換装置における第1スイッチング素子-第24スイッチング素子のスイッチングパターンをまとめた図である。
図4図4(a)-(d)は、図3に示すスイッチングパターンの正の半周期のスイッチングパターンを示す回路図である。
図5図5(a)-(d)は、図3に示すスイッチングパターンの負の半周期のスイッチングパターンを示す回路図である。
図6】実施の形態に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
図7図7(a)-(d)は、第1出力コンデンサ及び第2出力コンデンサが追加された構成における+1/2E出力時の電流経路を説明するための図である。
図8図8(a)-(d)は、第1出力コンデンサ及び第2出力コンデンサが追加された構成における-1/2E出力時の電流経路を説明するための図である。
図9図9(a)-(d)は、図2の区間(4、6)の状態(1)-状態(4)の電流経路を説明するための図である。
図10図10(a)-(d)は、区間(4、6)の状態(5)-状態(8)の電流経路を説明するための図である。
図11図11(a)-(d)は、図2の区間(5)の状態(1)-状態(4)の電流経路を説明するための図である。
図12図12(a)-(d)は、区間(5)の状態(5)-状態(8)の電流経路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、比較例に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。電力変換装置1は、直流電源2から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を商用電力系統(以下、単に系統3という)又は交流負荷に出力する。直流電源2は例えば、分散型電源(太陽電池、蓄電池、燃料電池など)と、当該分散型電源の出力を制御可能なDC/DCコンバータにより構成される。当該DC/DCコンバータと電力変換装置1との間は、直流バスで接続される。なお直流電源2は、分散型電源とDC/DCコンバータの組が複数、並列接続されて構成されていてもよい。
【0010】
電力変換装置1は、インバータ回路10、フィルタ回路20及び制御回路30を備える。インバータ回路10は、直流電源2から供給される直流電圧をもとに、マルチレベル(本実施の形態では5レベル)の電圧を有する疑似正弦波を生成する。インバータ回路10は、複数のフライングキャパシタ回路を含み、5レベル以上の電位を出力可能なマルチレベル出力部と、マルチレベル出力部の2点間に流れる電流の向きを制御する極性切替部を有する。図1に示す例では、マルチレベル出力部は、第1フライングキャパシタ回路11、第2フライングキャパシタ回路12、第3フライングキャパシタ回路13及び第4フライングキャパシタ回路14を含む。極性切替部は、第1出力回路15及び第2出力回路16を含む。
【0011】
第1フライングキャパシタ回路11及び第2フライングキャパシタ回路12は直流電源2の両端間に直列に接続される。第3フライングキャパシタ回路13及び第4フライングキャパシタ回路14は直流電源2の両端間に直列に接続される。第1フライングキャパシタ回路11と第2フライングキャパシタ回路12との接続点と、第3フライングキャパシタ回路13と第4フライングキャパシタ回路14との接続点との間が中間配線で接続される。
【0012】
第1フライングキャパシタ回路11は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4及び第1フライングキャパシタC1を含む。第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4は直列に接続され、直流電源2の正側バスと中間配線の間に接続される。第1フライングキャパシタC1は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との接続点と、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4との接続点との間に接続され、第1スイッチング素子Q1-第4スイッチング素子Q4により充放電される。
【0013】
第2フライングキャパシタ回路12は、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8及び第2フライングキャパシタC2を含む。第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8は直列に接続され、中間配線と、直流電源2の負側バスの間に接続される。第2フライングキャパシタC2は、第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6との接続点と、第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8との接続点との間に接続され、第5スイッチング素子Q5-第8スイッチング素子Q8により充放電される。
【0014】
第3フライングキャパシタ回路13は、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12及び第3フライングキャパシタC3を含む。第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第11スイッチング素子Q11及び第12スイッチング素子Q12は直列に接続され、直流電源2の正側バスと中間配線の間に接続される。第3フライングキャパシタC3は、第9スイッチング素子Q9と第10スイッチング素子Q10との接続点と、第11スイッチング素子Q11と第12スイッチング素子Q12との接続点との間に接続され、第9スイッチング素子Q9-第12スイッチング素子Q12により充放電される。
【0015】
第4フライングキャパシタ回路14は、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16及び第4フライングキャパシタC4を含む。第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第15スイッチング素子Q15及び第16スイッチング素子Q16は直列に接続され、中間配線と直流電源2の負側バスの間に接続される。第4フライングキャパシタC4は、第13スイッチング素子Q13と第14スイッチング素子Q14との接続点と、第15スイッチング素子Q15と第16スイッチング素子Q16との接続点との間に接続され、第13スイッチング素子Q13-第16スイッチング素子Q16により充放電される。
【0016】
第1出力回路15は、第1フライングキャパシタ回路11の中点(具体的には、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3との接続点)と、第2フライングキャパシタ回路12の中点(具体的には、第6スイッチング素子Q6と第7スイッチング素子Q7との接続点)との間に接続される。第1出力回路15は、直列に接続された第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第19スイッチング素子Q19及び第20スイッチング素子Q20を含む。第1出力回路15の中点(具体的には、第18スイッチング素子Q18と第19スイッチング素子Q19との接続点)は、フィルタ回路20を介して、系統3または交流負荷に接続された交流経路の一端に接続される。
【0017】
第2出力回路16は、第3フライングキャパシタ回路13の中点(具体的には、第10スイッチング素子Q10と第11スイッチング素子Q11との接続点)と、第4フライングキャパシタ回路14の中点(具体的には、第14スイッチング素子Q14と第15スイッチング素子Q15との接続点)との間に接続される。第2出力回路16は、直列に接続された第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24を含む。第2出力回路16の中点(具体的には、第22スイッチング素子Q22と第23スイッチング素子Q23との接続点)は、フィルタ回路20を介して上記交流経路の他端に接続される。
【0018】
直流電源2の正側バスと負側バスの間に、第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6が直列に接続される。具体的には、正側バスと中間配線の間に第1分割コンデンサC5が接続され、中間配線と負側バスの間に第2分割コンデンサC6が接続される。第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6は、直流電源2の電圧Eを1/2に分圧する作用、インバータ回路10内で発生するサージ電圧を抑制するためのスナバコンデンサとしての作用を有する。
【0019】
第1フライングキャパシタ回路11の中点からは、第1スイッチング素子Q1の上側端子に印加されるE[V]と、第4スイッチング素子Q4の下側端子に印加される1/2E[V]の間の範囲の電位が出力される。第1フライングキャパシタC1は1/4E[V]の電圧になるように初期充電(プリチャージ)され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第1フライングキャパシタ回路11からは、概ね、E[V]、3/4E[V]、1/2E[V]の3レベルの電位が出力される。
【0020】
第2フライングキャパシタ回路12の中点からは、第5スイッチング素子Q5の上側端子に印加される1/2E[V]と、第8スイッチング素子Q8の下側端子に印加される0[V]の間の範囲の電位が出力される。第2フライングキャパシタC2は1/4E[V]の電圧になるように初期充電され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第2フライングキャパシタ回路12からは、概ね、1/2E[V]、1/4E[V]、0[V]の3レベルの電位が出力される。
【0021】
第3フライングキャパシタ回路13の中点からは、第9スイッチング素子Q9の上側端子に印加されるE[V]と、第12スイッチング素子Q12の下側端子に印加される1/2E[V]の間の範囲の電位が出力される。第3フライングキャパシタC3は1/4E[V]の電圧になるように初期充電され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第3フライングキャパシタ回路13からは、概ね、E[V]、3/4E[V]、1/2E[V]の3レベルの電位が出力される。
【0022】
第4フライングキャパシタ回路14の中点からは、第13スイッチング素子Q13の上側端子に印加される1/2E[V]と、第16スイッチング素子Q16の下側端子に印加される0[V]の間の範囲の電位が出力される。第4フライングキャパシタC4は1/4E[V]の電圧になるように初期充電され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第4フライングキャパシタ回路14からは、概ね、1/2E[V]、1/4E[V]、0[V]の3レベルの電位が出力される。
【0023】
上記の第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24にはそれぞれ、第1ダイオードD1-第24ダイオードD24が逆並列に形成/接続される。以下、本実施の形態では第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24に、NチャネルMOSFETを使用する例を想定する。NチャネルMOSFETでは、ソースからドレイン方向に寄生ダイオードが形成される。
【0024】
なお、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やバイポーラトランジスタを使用してもよい。その場合、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24に寄生ダイオードは形成されず、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24にそれぞれ外付けダイオードが逆並列に接続される。
【0025】
第1出力回路15の中点(具体的には、第18スイッチング素子Q18と第19スイッチング素子Q19との接続点)と、第2出力回路16の中点(具体的には、第22スイッチング素子Q22と第23スイッチング素子Q23との接続点)から、マルチレベルの電圧(本実施の形態では5レベルの電圧)がフィルタ回路20に出力される。レベル数が多いほど、より正規の正弦波に近い擬似正弦波となる。なお、本実施の形態では第1出力回路15の中点からU相の電力を出力し、第2出力回路16の中点からW相の電力を出力する。
【0026】
フィルタ回路20は、第1リアクトルL1、第2リアクトルL2及び第3出力コンデンサC9を含み、第1出力回路15及び第2出力回路16から出力される電圧及び電流の高調波成分を減衰させて、系統3の正弦波と同期した正弦波に近づける。
【0027】
制御回路30は、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24のオン/オフを制御して、インバータ回路10に、直流電源2から供給される直流電力を交流電力に変換させる。また制御回路30は、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24のオン/オフを制御して、インバータ回路10に、系統3から供給される交流電力を直流電力に変換させる。制御回路30は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、ASIC、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
【0028】
図2は、5レベル(+E、+1/2E、0、-1/2E、-E)の電圧で生成される擬似正弦波を示す図である。区間(1)では+1/2Eと0を交互に出力し、区間(2)では+Eと+1/2Eを交互に出力し、区間(3)では+1/2Eと0を交互に出力し、区間(4)では0と-1/2Eを交互に出力し、区間(5)では-1/2Eと-Eを交互に出力し、区間(6)では0と-1/2Eを交互に出力する。これにより、1周期の疑似正弦波が生成される。インバータ回路10の出力電圧Vinv(疑似正弦波)が高品位に生成されると、フィルタ回路20を通過後の出力電流Ioutは滑らかな正弦波になる。
【0029】
図3は、図1の電力変換装置1における第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24のスイッチングパターンをまとめた図である。
【0030】
図3に示すスイッチングパターンでは、第1スイッチング素子Q1、第5スイッチング素子Q5、第12スイッチング素子Q12、第16スイッチング素子Q16のグループと、第4スイッチング素子Q4、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第13スイッチング素子Q13のグループが相補関係となる。第2スイッチング素子Q2、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第15スイッチング素子Q15のグループと、第3スイッチング素子Q3、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第14スイッチング素子Q14のグループが相補関係となる。
【0031】
また、第1スイッチング素子Q1、第5スイッチング素子Q5、第12スイッチング素子Q12、第16スイッチング素子Q16のグループと、第2スイッチング素子Q2、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第15スイッチング素子Q15のグループが半周期(180°)の位相差を持つ関係となる。第3スイッチング素子Q3、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第14スイッチング素子Q14のグループと、第4スイッチング素子Q4、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第13スイッチング素子Q13のグループが半周期の位相差を持つ関係となる。
【0032】
また、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23、第24スイッチング素子Q24のグループは、基本波の正の半周期の期間に常時オンし、負の半周期の期間に常時オフする。第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22のグループは、基本波の負の半周期の期間に常時オンし、正の半周期の期間に常時オフする。日本では、基本波は50Hz/60Hzの正弦波である。
【0033】
図4(a)-(d)は、図3に示すスイッチングパターンの正の半周期のスイッチングパターンを示す回路図である。図5(a)-(d)は、図3に示すスイッチングパターンの負の半周期のスイッチングパターンを示す回路図である。なお、図面の簡略化のためMOSFETを単純なスイッチ記号で描いている。
【0034】
図4(a)に示すように、インバータ回路10から+0を出力する場合、制御回路30は、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0035】
図4(b)に示すように、直流電源2から第1フライングキャパシタC1及び第4フライングキャパシタC4を充電しつつ、インバータ回路10から+1/2Eを出力する場合、制御回路30は、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0036】
図4(c)に示すように、第1フライングキャパシタC1及び第4フライングキャパシタC4から交流経路に放電しつつ、インバータ回路10から+1/2Eを出力する場合、制御回路30は、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0037】
制御回路30は、図4(b)に示すスイッチングパターンと、図4(c)に示すスイッチングパターンを交互に繰り返すことにより、インバータ回路10から+1/2Eを出力させることができる。
【0038】
図4(d)に示すように、インバータ回路10から+Eを出力する場合、制御回路30は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態に制御し、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0039】
図5(a)に示すように、インバータ回路10から-0を出力する場合、制御回路30は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態に制御し、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0040】
図5(b)に示すように、直流電源2から第2フライングキャパシタC2及び第3フライングキャパシタC3を充電しつつ、インバータ回路10から-1/2Eを出力する場合、制御回路30は、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0041】
図5(c)に示すように、第2フライングキャパシタC2及び第3フライングキャパシタC3から交流経路に放電しつつ、インバータ回路10から-1/2Eを出力する場合、制御回路30は、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0042】
制御回路30は、図5(b)に示すスイッチングパターンと、図5(c)に示すスイッチングパターンを交互に繰り返すことにより、インバータ回路10から-1/2Eを出力させることができる。
【0043】
図5(d)に示すように、インバータ回路10から-Eを出力する場合、制御回路30は、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0044】
図6は、実施の形態に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。実施の形態に係る電力変換装置1は、図1に示した比較例に係る電力変換装置1に、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8が追加された構成である。第1出力コンデンサC7は、第1出力回路15の両端間に接続される。第2出力コンデンサC8は、第2出力回路16の両端間に接続される。
【0045】
第1出力コンデンサC7の容量値及び第2出力コンデンサC8の容量値には、任意の値を設定することができるが、第1分割コンデンサC5の容量値及び第2分割コンデンサC6の容量値より、低い値に設定することが好ましい。第1出力コンデンサC7の容量値及び第2出力コンデンサC8の容量値が第1分割コンデンサC5の容量値及び第2分割コンデンサC6の容量値より大きい場合、第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6にとって相対的に大きな電流が流れることになり、中間配線の電位(1/2E)の安定性が低下する。これに対して、第1出力コンデンサC7の容量値及び第2出力コンデンサC8の容量値が第1分割コンデンサC5の容量値及び第2分割コンデンサC6の容量値より低い場合、第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6にとって相対的に小さな電流が流れることになり、中間配線の電位(1/2E)が安定する。
【0046】
図7(a)-(d)は、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8が追加された構成における+1/2E出力時の電流経路を説明するための図である。図8(a)-(d)は、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8が追加された構成における-1/2E出力時の電流経路を説明するための図である。
【0047】
図7(a)は、図4(b)に示した+1/2E(充電)の状態において、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8が追加されたことにより、新たに形成される電流経路を示す図である。図7(b)は、図4(b)に示したメインの電流経路と、新たに形成された電流経路を併記した図である。第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8のそれぞれに印加される電圧は、回路トポロジ上、フライングキャパシタによる電圧変動分を除き、1/2Eである。
【0048】
図4(b)に示したように、第1フライングキャパシタC1及び第4フライングキャパシタC4を充電しつつ、+1/2Eを出力している状態において、図7(a)に示すように、第1フライングキャパシタC1から放電された電荷が、第1出力コンデンサC7と第1分割コンデンサC5を介して、第2フライングキャパシタC2に充電される電流経路が形成される。メイン電流により第1フライングキャパシタC1が充電されているため、第1フライングキャパシタC1の電圧が増加し、第1フライングキャパシタC1+第1出力コンデンサC7から、第2フライングキャパシタC2+第1分割コンデンサC5に電流経路が発生する。第1出力コンデンサC7の電圧≒1/2E=第1分割コンデンサC5の電圧であるため、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧との差分が0に収束する。
【0049】
同様に、第4フライングキャパシタC4から放電された電荷が、第2出力コンデンサC8と第2分割コンデンサC6を介して、第3フライングキャパシタC3に充電される電流経路が形成される。メイン電流により第4フライングキャパシタC4が充電されているため、第4フライングキャパシタC4の電圧が増加し、第4フライングキャパシタC4+第2出力コンデンサC8から、第3フライングキャパシタC3+第2分割コンデンサC6に電流経路が発生する。第2出力コンデンサC8の電圧≒1/2E=第2分割コンデンサC6の電圧であるため、第3フライングキャパシタC3の電圧と第4フライングキャパシタC4の電圧との差分が0に収束する。
【0050】
図7(c)は、図4(c)に示した+1/2E(放電)の状態において、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8が追加されたことにより、新たに形成される電流経路を示す図である。図7(d)は、図4(c)に示したメインの電流経路と、新たに形成された電流経路を併記した図である。
【0051】
図4(c)に示したように、第1フライングキャパシタC1及び第4フライングキャパシタC4から放電しつつ、+1/2Eを出力している状態において、図7(c)に示すように、第2フライングキャパシタC2から放電された電荷が、第1出力コンデンサC7と第2分割コンデンサC6を介して、第1フライングキャパシタC1に充電される電流経路が形成される。メイン電流により第1フライングキャパシタC1が放電されているため、第1フライングキャパシタC1の電圧が減少し、第2フライングキャパシタC2+第1出力コンデンサC7から、第1フライングキャパシタC1+第2分割コンデンサC6に電流経路が発生する。第1出力コンデンサC7の電圧≒1/2E=第2分割コンデンサC6の電圧であるため、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧との差分が0に収束する。
【0052】
同様に、第3フライングキャパシタC3から放電された電荷が、第2出力コンデンサC8と第1分割コンデンサC5を介して、第4フライングキャパシタC4に充電される電流経路が形成される。メイン電流により第4フライングキャパシタC4が放電されているため、第4フライングキャパシタC4の電圧が減少し、第3フライングキャパシタC3+第2出力コンデンサC8から、第4フライングキャパシタC4+第1分割コンデンサC5に電流経路が発生する。第2出力コンデンサC8の電圧≒1/2E=第1分割コンデンサC5の電圧であるため、第3フライングキャパシタC3の電圧と第4フライングキャパシタC4の電圧との差分が0に収束する。
【0053】
図7(b)に示した状態と図7(d)に示した状態が1:1で繰り返されることにより、第1フライングキャパシタC1と第2フライングキャパシタC2が交互に充放電を繰り返し、第3フライングキャパシタC3と第4フライングキャパシタC4が交互に充放電を繰り返す。これにより、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧がバランスし、第3フライングキャパシタC3の電圧と第4フライングキャパシタC4の電圧がバランスする。
【0054】
図8(a)は、図5(b)に示した-1/2E(充電)の状態において、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8が追加されたことにより、新たに形成される電流経路を示す図である。図8(b)は、図5(b)に示したメインの電流経路と、新たに形成された電流経路を併記した図である。
【0055】
図5(b)に示したように、第2フライングキャパシタC2及び第3フライングキャパシタC3を充電しつつ、-1/2Eを出力している状態において、図8(a)に示すように、第2フライングキャパシタC2から放電された電荷が、第1出力コンデンサC7と第2分割コンデンサC6を介して、第1フライングキャパシタC1に充電される電流経路が形成される。メイン電流により第2フライングキャパシタC2が充電されているため、第2フライングキャパシタC2の電圧が増加し、第2フライングキャパシタC2+第1出力コンデンサC7から、第1フライングキャパシタC1+第2分割コンデンサC6に電流経路が発生する。第1出力コンデンサC7の電圧≒1/2E=第2分割コンデンサC6の電圧であるため、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧との差分が0に収束する。
【0056】
同様に、第3フライングキャパシタC3から放電された電荷が、第2出力コンデンサC8と第1分割コンデンサC5を介して、第4フライングキャパシタC4に充電される電流経路が形成される。メイン電流により第3フライングキャパシタC3が充電されているため、第3フライングキャパシタC3の電圧が増加し、第3フライングキャパシタC3+第2出力コンデンサC8から、第4フライングキャパシタC4+第1分割コンデンサC5に電流経路が発生する。第2出力コンデンサC8の電圧≒1/2E=第1分割コンデンサC5の電圧であるため、第3フライングキャパシタC3の電圧と第4フライングキャパシタC4の電圧との差分が0に収束する。
【0057】
図8(c)は、図5(c)に示した-1/2E(放電)の状態において、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8が追加されたことにより、新たに形成される電流経路を示す図である。図8(d)は、図5(c)に示したメインの電流経路と、新たに形成された電流経路を併記した図である。
【0058】
図5(c)に示したように、第2フライングキャパシタC2及び第3フライングキャパシタC3から放電しつつ、-1/2Eを出力している状態において、図8(c)に示すように、第1フライングキャパシタC1から放電された電荷が、第1出力コンデンサC7と第1分割コンデンサC5を介して、第2フライングキャパシタC2に充電される電流経路が形成される。メイン電流により第2フライングキャパシタC2が放電されているため、第2フライングキャパシタC2の電圧が減少し、第1フライングキャパシタC1+第1出力コンデンサC7から、第2フライングキャパシタC2+第1分割コンデンサC5に電流経路が発生する。第1出力コンデンサC7の電圧≒1/2E=第1分割コンデンサC5の電圧であるため、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧との差分が0に収束する。
【0059】
同様に、第4フライングキャパシタC4から放電された電荷が、第2出力コンデンサC8と第2分割コンデンサC6を介して、第3フライングキャパシタC3に充電される電流経路が形成される。メイン電流により第3フライングキャパシタC3が放電されているため、第3フライングキャパシタC3の電圧が減少し、第4フライングキャパシタC4+第2出力コンデンサC8から、第3フライングキャパシタC3+第2分割コンデンサC6に電流経路が発生する。第2出力コンデンサC8の電圧≒1/2E=第2分割コンデンサC6の電圧であるため、第3フライングキャパシタC3の電圧と第4フライングキャパシタC4の電圧との差分が0に収束する。
【0060】
図8(b)に示した状態と図8(d)に示した状態が1:1で繰り返されることにより、第1フライングキャパシタC1と第2フライングキャパシタC2が交互に充放電を繰り返し、第3フライングキャパシタC3と第4フライングキャパシタC4が交互に充放電を繰り返す。これにより、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧がバランスし、第3フライングキャパシタC3の電圧と第4フライングキャパシタC4の電圧がバランスする。
【0061】
以下、上記図2の区間(4、6)(0~-1/2E)及び区間(5)(-1/2E~-E)の動作について詳細に説明する。区間(1、3)(0~+1/2E)及び区間(2)(+1/2E~+E)は、区間(4、6)(0~-1/2E)及び区間(5)(-1/2E~-E)と対称の動作となるため、説明を割愛する。
【0062】
図9(a)-(d)は、図2の区間(4、6)の状態(1)-状態(4)の電流経路を説明するための図である。図10(a)-(d)は、区間(4、6)の状態(5)-状態(8)の電流経路を説明するための図である。
【0063】
図9(a)は、図2の区間(4、6)の状態(1)を示す図である。状態(1)では、それぞれ相補関係にある第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3、第6スイッチング素子Q6と第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10と第11スイッチング素子Q11、及び第14スイッチング素子Q14と第15スイッチング素子Q15がデッドタイム期間にあり、両方ともオフの状態にある。第6スイッチング素子Q6の両端は第6ダイオードD6(図9(a)不図示、図6参照)を介して導通しており、第11スイッチング素子Q11の両端は第11ダイオードD11(図9(a)不図示、図6参照)を介して導通している。
【0064】
状態(1)では、第1出力コンデンサC7の電圧は(1/2E-ΔV)となる。第1出力コンデンサC7の電圧は、第1出力コンデンサC7の放電電流を考慮しない場合、3/8Eとなるが、第1出力コンデンサC7の放電電流を考慮する場合、1/2Eになる。
【0065】
第1出力コンデンサC7が接続されていない場合、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3の各電圧は、バランス抵抗(不図示)に流れる電流により1/8Eとなる。バランス抵抗は、第1スイッチング素子Q1-第8スイッチング素子Q8とそれぞれ並列に接続された8個の抵抗、及び第9スイッチング素子Q9-第16スイッチング素子Q16とそれぞれ並列に接続された8個の抵抗である。
【0066】
第1出力コンデンサC7が接続される場合、正側の直流バスの電位(E)から第2スイッチング素子Q2の電圧が減算された電位と、中間配線の電位(1/2E)との電位差は、(1/2E-ΔV)となる。そのため第2スイッチング素子Q2に、1/2Eとの差分(ΔV)が発生せざるを得ない。バランス抵抗(不図示)に流れる電流は、第1出力コンデンサC7の放電電流と比較して極小さいため、第2スイッチング素子Q2の電圧は1/8Eから容易に変動する。
【0067】
第2スイッチング素子Q2の電圧と第3スイッチング素子Q3の電圧の合計電圧は、第1フライングキャパシタC1の電圧(1/4E)と等価であり、第2スイッチング素子Q2の電圧がΔVであるため、第7スイッチング素子Q7の電圧は(1/4E-ΔV)となる。
【0068】
図9(b)は、図2の区間(4、6)の状態(2)を示す図である。状態(2)のスイッチングパターンは、図5(a)に示したスイッチングパターンと同じである。状態(2)では、第1出力コンデンサC7の電圧は(1/2E-ΔV)から1/2E(状態電位)に変動する。第1出力コンデンサC7の両端電位はそれぞれ、正側の直流バスの電位(E)、中間配線の電位(1/2E)であるため、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eに収束する。そのため、ΔVを相殺するための瞬時電流が発生する。この瞬時電流の大きさは、第1出力コンデンサC7のESR(Equivalent Series Resistance)、容量、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の容量(電圧変動分)によって決定される。
【0069】
図9(c)は、図2の区間(4、6)の状態(3)を示す図である。状態(3)では、それぞれ相補関係にある第1スイッチング素子Q1と第4スイッチング素子Q4、第5スイッチング素子Q5と第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9と第12スイッチング素子Q12、及び第13スイッチング素子Q13と第16スイッチング素子Q16がデッドタイム期間にあり、両方ともオフの状態にある。第5スイッチング素子Q5の両端は第5ダイオードD5(図9(c)不図示、図6参照)を介して導通しており、第12スイッチング素子Q12の両端は第12ダイオードD12(図9(c)不図示、図6参照)を介して導通している。
【0070】
状態(3)では、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eとなる。第1出力コンデンサC7の両端電位はそれぞれ、正側の直流バスの電位(E)から第1スイッチング素子Q1の電圧が減算された電位、中間配線の電位(1/2E)である。第1出力コンデンサC7が接続されていない場合、第1スイッチング素子Q1の電圧は1/8Eである。第1出力コンデンサC7の放電電流を考慮しない場合、第1出力コンデンサC7の電圧は3/8Eとなる。しかしながら、バランス抵抗(不図示)に流れる電流は、第1出力コンデンサC7の放電電流と比較して極小さいため、第1スイッチング素子Q1の電圧は1/8Eから容易に変動する。
【0071】
第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eであり、第1出力コンデンサC7の両端電位が1/2Eとなるためには、第1スイッチング素子Q1の電圧が0となる必要がある。状態(1)と異なり、状態(3)では、第1出力コンデンサC7の電圧が1/2Eであるため、ΔVの差がなく、第1スイッチング素子Q1に見た目上、電圧が印加されない。第1スイッチング素子Q1と対となる第4スイッチング素子Q4の電圧は1/4Eになる。
【0072】
図9(d)は、図2の区間(4、6)の状態(4)を示す図である。状態(4)のスイッチングパターンは、図5(b)に示したスイッチングパターンと同じである。状態(4)では、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eとなる。第1出力コンデンサC7の正側の電位は、中間配線の電位(1/2E)に第1フライングキャパシタC1の電圧が加算された電位から、中間配線の電位(1/2E)に1/4Eが加算された電位に変動する。第1出力コンデンサC7の負側の電位は、負側の直流バスの電位(0)に第2フライングキャパシタC2の電圧が加算された電位から、中間配線の電位(1/2E)に1/4Eが加算され、ΔVが減算された電位に変動する。
【0073】
したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は、1/2Eから(1/2E+ΔV)に増加し、その後、(1/2E-ΔV)に減少する。第1出力コンデンサC7の電圧は、正側の電位につられて、ΔV分の充電電流が瞬時に流れ込むことにより、(1/2E+ΔV)まで増加する。この状態において、メインの電流経路により第2フライングキャパシタC2が充電されるため、第2フライングキャパシタC2の電圧は、(1/2E-ΔV)から(1/2E+ΔV)に増加する。その間、第1出力コンデンサC7の電圧は、(1/2E+ΔV)から(1/2E-ΔV)に減少する。
【0074】
図10(a)は、図2の区間(4、6)の状態(5)を示す図である。状態(5)では、それぞれ相補関係にある第1スイッチング素子Q1と第4スイッチング素子Q4、第5スイッチング素子Q5と第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9と第12スイッチング素子Q12、及び第13スイッチング素子Q13と第16スイッチング素子Q16がデッドタイム期間にあり、両方ともオフの状態にある。第5スイッチング素子Q5の両端は第5ダイオードD5(図10(a)不図示、図6参照)を介して導通しており、第12スイッチング素子Q12の両端は第12ダイオードD12(図10(a)不図示、図6参照)を介して導通している。
【0075】
状態(5)では、第1出力コンデンサC7の電圧は(1/2E-ΔV)となる。第1出力コンデンサC7の両端電位はそれぞれ、正側の直流バスの電位(E)から第1スイッチング素子Q1の電圧が減算された電位、中間配線の電位(1/2E)である。
【0076】
第1出力コンデンサC7が接続されていない場合、第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4の各電圧は、バランス抵抗(不図示)に流れる電流により1/8Eとなる。第1出力コンデンサC7が接続される場合、正側の直流バスの電位(E)から第1スイッチング素子Q1の電圧が減算された電位と、中間配線の電位(1/2E)との電位差は、(1/2E-ΔV)となる。そのため第1スイッチング素子Q1に、1/2Eとの差分(ΔV)が発生せざるを得ない。バランス抵抗(不図示)に流れる電流は、第1出力コンデンサC7の放電電流と比較して極小さいため、第1スイッチング素子Q1の電圧は1/8Eから容易に変動する。
【0077】
第1スイッチング素子Q1の電圧と第4スイッチング素子Q4の電圧の合計電圧は、第3スイッチング素子Q3の電圧(1/4E)と等価であり、第1スイッチング素子Q1の電圧がΔVであるため、第4スイッチング素子Q4の電圧は(1/4E-ΔV)となる。
【0078】
図10(b)は、図2の区間(4、6)の状態(6)を示す図である。状態(6)は図9(b)に示した状態(2)と同様であるため、説明を割愛する。
【0079】
図10(c)は、図2の区間(4、6)の状態(7)を示す図である。状態(7)では、それぞれ相補関係にある第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3、第6スイッチング素子Q6と第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10と第11スイッチング素子Q11、及び第14スイッチング素子Q14と第15スイッチング素子Q15がデッドタイム期間にあり、両方ともオフの状態にある。第6スイッチング素子Q6の両端は第6ダイオードD6(図10(c)不図示、図6参照)を介して導通しており、第11スイッチング素子Q11の両端は第11ダイオードD11(図10(c)不図示、図6参照)を介して導通している。
【0080】
状態(7)では、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eとなる。第1出力コンデンサC7の両端電位はそれぞれ、正側の直流バスの電位(E)から第2スイッチング素子Q2の電圧が減算された電位、中間配線の電位(1/2E)である。第1出力コンデンサC7が接続されていない場合、第2スイッチング素子Q2の電圧は1/8Eである。第1出力コンデンサC7の放電電流を考慮しない場合、第1出力コンデンサC7の電圧は3/8Eとなる。しかしながら、バランス抵抗(不図示)に流れる電流は、第1出力コンデンサC7の放電電流と比較して極小さいため、第2スイッチング素子Q2の電圧は1/8Eから容易に変動する。
【0081】
第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eであり、第1出力コンデンサC7の両端電位が1/2Eとなるためには、第2スイッチング素子Q2の電圧が0となる必要がある。状態(1)と異なり、状態(7)では、第1出力コンデンサC7の電圧が1/2Eであるため、ΔVの差がなく、第2スイッチング素子Q2に見た目上、電圧が印加されない。第2スイッチング素子Q2と対となる第3スイッチング素子Q3の電圧は1/4Eになる。
【0082】
図10(d)は、図2の区間(4、6)の状態(8)を示す図である。状態(8)のスイッチングパターンは、図5(c)に示したスイッチングパターンと同じである。状態(8)では、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eとなる。第1出力コンデンサC7の正側の電位は、正側の直流バスの電位(E)から第1フライングキャパシタC1の電圧が減算された電位から、正側の直流バスの電位(E)から1/4Eが減算された電位に変動する。第1出力コンデンサC7の負側の電位は、中間配線の電位(1/2E)から第2フライングキャパシタC2の電圧が減算された電位から、中間配線の電位(1/2E)から1/4EとΔVが減算された電位に変動する。
【0083】
したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は、1/2Eから(1/2E+ΔV)に増加し、その後、(1/2E-ΔV)に減少する。第1出力コンデンサC7の電圧は、正側の電位につられて、ΔV分の充電電流が瞬時に流れ込むことにより、(1/2E+ΔV)まで増加する。この状態において、メインの電流経路により第2フライングキャパシタC2が放電されるため、第2フライングキャパシタC2の電圧は、(1/2E+ΔV)から(1/2E-ΔV)に減少する。その間、第1出力コンデンサC7の電圧は、(1/2E+ΔV)から(1/2E-ΔV)に減少する。
【0084】
図2の区間(4、6)では、以上に説明した状態(1)-状態(8)の動作が繰り返される。以上の説明はU相についてのものであるが、W相も同じ原理であるため、説明を割愛する。
【0085】
図11(a)-(d)は、図2の区間(5)の状態(1)-状態(4)の電流経路を説明するための図である。図12(a)-(d)は、区間(5)の状態(5)-状態(8)の電流経路を説明するための図である。以下の説明では、第2フライングキャパシタC2の最大電圧変動幅をΔV1、デッドタイム突入時の変動幅をΔV2とする。
【0086】
図11(a)は、図2の区間(5)の状態(1)を示す図である。状態(1)では、それぞれ相補関係にある第1スイッチング素子Q1と第4スイッチング素子Q4、第5スイッチング素子Q5と第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9と第12スイッチング素子Q12、及び第13スイッチング素子Q13と第16スイッチング素子Q16がデッドタイム期間にあり、両方ともオフの状態にある。第5スイッチング素子Q5の両端は第5ダイオードD5(図11(a)不図示、図6参照)を介して導通しており、第12スイッチング素子Q12の両端は第12ダイオードD12(図11(a)不図示、図6参照)を介して導通しており、第1スイッチング素子Q1の両端は第1ダイオードD1(図11(a)不図示、図6参照)を介して導通しており、第16スイッチング素子Q16の両端は第16ダイオードD16(図11(a)不図示、図6参照)を介して導通している。
【0087】
状態(1)では、第1出力コンデンサC7の電圧は(1/2E-ΔV2)となる。ここで、ΔV2は下限より手前の値をとる。第1出力コンデンサC7の正側の電位は、正側の直流バスの電位(E)から第1フライングキャパシタC1の電圧と第1フライングキャパシタC1の電圧が減算された電位となる。第1出力コンデンサC7の負側の電位は、中間配線の電位(1/2E)から第2フライングキャパシタC2の電圧が減算された電位となる。したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は、1/2Eから第1スイッチング素子Q1の電圧とΔV2が減算された電圧となる。
【0088】
第1スイッチング素子Q1の電圧に応じて第1出力コンデンサC7の電圧が変化する可能性があるが、現条件の下ではバランス抵抗(不図示)くらいしか第1スイッチング素子Q1の電圧を決める要素がなく、第1出力コンデンサC7の電圧は保たれる。したがって、第1スイッチング素子Q1の電圧は0になり、第1出力コンデンサC7の電圧は、(1/2E-ΔV2)に保たれる。また、第2フライングキャパシタC2の放電によりΔV2がΔV1となるため、第1出力コンデンサC7の電圧も減少を続け、(1/2E-ΔV1)となる。
【0089】
また、上下の第1フライングキャパシタC1と第2フライングキャパシタC2間にバランス電流が流れる。メイン電流の経路上のスイッチング素子は、オン状態でなくともボディダイオード(還流ダイオード)を経由して電流が疑似的に流れる。状態(1)では、第5スイッチング素子Q5及び第12スイッチング素子Q12が疑似的にオン状態となっている。なお、ボディダイオードの逆向きには電流が流れないが、その場合はバランス電流分が差し引かれる。
【0090】
図11(b)は、図2の区間(5)の状態(2)を示す図である。状態(2)のスイッチングパターンは、図5(d)に示したスイッチングパターンと同じである。状態(2)では、第1出力コンデンサC7の電圧は(1/2E-ΔV1)となる。ここで、ΔV1は下限値をとる。第1出力コンデンサC7の両端電位はそれぞれ、正側の直流バスの電位(E)、負側の直流バスの電位(0)である。したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は、1/2Eに収束する。ΔV1を相殺するため、第1出力コンデンサC7に充電電流が瞬時的に流れる。この電流の大きさは、ΔV1、第1出力コンデンサC7の容量、ESRにより決まる。
【0091】
図11(c)は、図2の区間(5)の状態(3)を示す図である。状態(3)では、それぞれ相補関係にある第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3、第6スイッチング素子Q6と第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10と第11スイッチング素子Q11、及び第14スイッチング素子Q14と第15スイッチング素子Q15がデッドタイム期間にあり、両方ともオフの状態にある。第7スイッチング素子Q7の両端は第7ダイオードD7(図11(c)不図示、図6参照)を介して導通しており、第10スイッチング素子Q10の両端は第10ダイオードD10(図11(c)不図示、図6参照)を介して導通している。
【0092】
状態(3)では、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eとなる。第1出力コンデンサC7の正側の電位は、中間配線の電位(1/2E)に第1フライングキャパシタC1の電圧が加算され、第2スイッチング素子Q2の電圧が減算された電位となる。第1出力コンデンサC7の負側の電位は、負側の直流バスの電位(0)に第2フライングキャパシタC2の電圧が加算された電位となる。したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は、1/2EにΔV1が加算され、第2スイッチング素子Q2の電圧が減算された電圧となる。
【0093】
第2スイッチング素子Q2の電圧は、バランス抵抗(不図示)以外で電圧を固定する要素がないため、ΔV1となる。したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eを維持する。
【0094】
図11(d)は、図2の区間(5)の状態(4)を示す図である。状態(4)のスイッチングパターンは、図5(b)に示したスイッチングパターンと同じである。状態(4)では、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eとなる。第1出力コンデンサC7の正側の電位は、中間配線の電位(1/2E)に第1フライングキャパシタC1の電圧が加算された電位となる。第1出力コンデンサC7の負側の電位は、負側の直流バスの電位(0)に第2フライングキャパシタC2の電圧が加算された電位となる。
【0095】
したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は、1/2Eから(1/2E+ΔV2)に増加し、第2フライングキャパシタC2の充電により、最終的に(1/2E-ΔV2)に減少する。ΔV2を相殺するため、充電方向に瞬時電流が発生する。また、上下の第1フライングキャパシタC1と第2フライングキャパシタC2間にバランス電流が流れる。
【0096】
図12(a)は、図2の区間(5)の状態(5)を示す図である。状態(5)では、それぞれ相補関係にある第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3、第6スイッチング素子Q6と第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10と第11スイッチング素子Q11、及び第14スイッチング素子Q14と第15スイッチング素子Q15がデッドタイム期間にあり、両方ともオフの状態にある。第6スイッチング素子Q6の両端は第6ダイオードD6(図12(a)不図示、図6参照)を介して導通しており、第11スイッチング素子Q11の両端は第11ダイオードD11(図12(a)不図示、図6参照)を介して導通しており、第2スイッチング素子Q2の両端は第2ダイオードD2(図12(a)不図示、図6参照)を介して導通しており、第15スイッチング素子Q15の両端は第15ダイオードD15(図12(a)不図示、図6参照)を介して導通している。
【0097】
状態(5)では、第1出力コンデンサC7の電圧は(1/2E-ΔV2)となる。ここで、ΔV2は下限より手前の値をとる。第1出力コンデンサC7の正側の電位は、中間配線の電位(1/2E)に第1フライングキャパシタC1の電圧が加算され、第2スイッチング素子Q2の電圧が減算された電位となる。第1出力コンデンサC7の負側の電位は、負側の直流バスの電位(0)に第2フライングキャパシタC2の電圧が加算された電位となる。したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は、1/2Eから第2スイッチング素子Q2の電圧とΔV2が減算された電圧となる。
【0098】
第2スイッチング素子Q2の電圧に応じて第1出力コンデンサC7の電圧が変化する可能性があるが、現条件の下ではバランス抵抗(不図示)くらいしか第2スイッチング素子Q2の電圧を決める要素がなく、第1出力コンデンサC7の電圧は保たれる。したがって、第2スイッチング素子Q2の電圧は0になり、第1出力コンデンサC7の電圧は、(1/2E-ΔV2)に保たれる。また、第2フライングキャパシタC2の放電によりΔV2がΔV1となるため、第1出力コンデンサC7の電圧も減少を続け、(1/2E-ΔV1)となる。
【0099】
また、上下の第1フライングキャパシタC1と第2フライングキャパシタC2間にバランス電流が流れる。メイン電流の経路上のスイッチング素子は、オン状態でなくともボディダイオード(還流ダイオード)を経由して電流が疑似的に流れる。状態(5)では、第6スイッチング素子Q6及び第11スイッチング素子Q11が疑似的にオン状態となっている。なお、ボディダイオードの逆向きには電流が流れないが、その場合はバランス電流分が差し引かれる。
【0100】
図12(b)は、図2の区間(5)の状態(6)を示す図である。状態(6)は図11(b)に示した状態(2)と同様であるため、説明を割愛する。
【0101】
図12(c)は、図2の区間(5)の状態(7)を示す図である。状態(7)では、それぞれ相補関係にある第1スイッチング素子Q1と第4スイッチング素子Q4、第5スイッチング素子Q5と第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9と第12スイッチング素子Q12、及び第13スイッチング素子Q13と第16スイッチング素子Q16がデッドタイム期間にあり、両方ともオフの状態にある。第8スイッチング素子Q8の両端は第8ダイオードD8(図12(c)不図示、図6参照)を介して導通しており、第9スイッチング素子Q9の両端は第9ダイオードD9(図12(c)不図示、図6参照)を介して導通している。
【0102】
状態(7)では、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eとなる。第1出力コンデンサC7の正側の電位は、中間配線の電位(1/2E)に第4スイッチング素子Q4の電圧が加算された電位となる。第1出力コンデンサC7の負側の電位は、中間配線の電位(1/2E)から第2フライングキャパシタC2の電圧が減算された電位となる。したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は、1/4Eに、ΔV1と第4スイッチング素子Q4の電圧が加算された電圧となる。
【0103】
第4スイッチング素子Q4の電圧は、バランス抵抗(不図示)以外で電圧を固定する要素がないため、(1/4E-ΔV1)となる。したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eを維持する。
【0104】
図12(d)は、図2の区間(5)の状態(8)を示す図である。状態(8)のスイッチングパターンは、図5(c)に示したスイッチングパターンと同じである。状態(8)では、第1出力コンデンサC7の電圧は1/2Eとなる。第1出力コンデンサC7の正側の電位は、正側の直流バスの電位(E)から第1フライングキャパシタC1の電圧が減算された電位となる。第1出力コンデンサC7の負側の電位は、中間配線の電位(1/2E)から第2フライングキャパシタC2の電圧が減算された電位となる。
【0105】
したがって、第1出力コンデンサC7の電圧は、1/2Eから(1/2E+ΔV2)に増加し、第2フライングキャパシタC2の放電により、最終的に(1/2E-ΔV2)に減少する。ΔV2を相殺するため、充電方向に瞬時電流が発生する。また、上下の第1フライングキャパシタC1と第2フライングキャパシタC2間にバランス電流が流れる。
【0106】
以上説明したように本実施の形態によれば、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8を追加することにより、+1/2Eまたは-1/2Eの出力時において、第1フライングキャパシタC1の電圧値と第2フライングキャパシタC2の電圧値が同値に収束しやすくなり、第3フライングキャパシタC3の電圧値と第4フライングキャパシタC4の電圧値が同値に収束しやすくなる。
【0107】
これにより、フライングキャパシタの電圧バランスの崩れに起因するスイッチング素子の耐圧超過、アースへの漏洩電流などの発生を抑制することができ、電力変換装置1の動作の安全性が向上する。
【0108】
また、+1/2Eまたは-1/2Eを出力すべき区間のデッドタイム期間中に、出力電圧が+3/8E、+5/8E、-3/8E、-5/8Eなどと、大きくずれることを防止し、+1/2Eまたは-1/2Eに近い電圧を出力することができる。
【0109】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0110】
上記の実施の形態において、第17スイッチング素子Q17と第18スイッチング素子Q18を、耐圧の大きい1つのスイッチング素子に置き換えることが可能である。第19スイッチング素子Q19と第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21と第22スイッチング素子Q22、及び第23スイッチング素子Q23と第24スイッチング素子Q24も同様である。
【0111】
上記の実施の形態において、単相交流方式の電力変換装置1を説明したが、本開示は三相交流方式の電力変換装置1にも拡張可能である。U相-V相間、U相-W相間、V相-W相間のそれぞれについて、上述した構成と制御を適用可能である。
【0112】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0113】
[項目1]
直列に接続される第1スイッチング素子(Q1)、第2スイッチング素子(Q2)、第3スイッチング素子(Q3)及び第4スイッチング素子(Q4)と、前記第1スイッチング素子(Q1)と前記第2スイッチング素子(Q2)の接続点と前記第3スイッチング素子(Q3)と前記第4スイッチング素子(Q4)の接続点との間に接続された第1フライングキャパシタ(C1)を有する第1フライングキャパシタ回路(11)と、
直列に接続される第5スイッチング素子(Q5)、第6スイッチング素子(Q6)、第7スイッチング素子(Q7)及び第8スイッチング素子(Q8)と、前記第5スイッチング素子(Q5)と前記第6スイッチング素子(Q6)の接続点と前記第7スイッチング素子(Q7)と前記第8スイッチング素子(Q8)の接続点との間に接続された第2フライングキャパシタ(C2)を有する第2フライングキャパシタ回路(12)と、
直列に接続される第9スイッチング素子(Q9)、第10スイッチング素子(Q10)、第11スイッチング素子(Q11)及び第12スイッチング素子(Q12)と、前記第9スイッチング素子(Q9)と前記第10スイッチング素子(Q10)の接続点と前記第11スイッチング素子(Q11)と前記第12スイッチング素子(Q12)の接続点との間に接続された第3フライングキャパシタ(C3)を有する第3フライングキャパシタ回路(13)と、
直列に接続される第13スイッチング素子(Q13)、第14スイッチング素子(Q14)、第15スイッチング素子(Q15)及び第16スイッチング素子(Q16)と、前記第13スイッチング素子(Q13)と前記第14スイッチング素子(Q14)の接続点と前記第15スイッチング素子(Q15)と前記第16スイッチング素子(Q16)の接続点との間に接続された第4フライングキャパシタ(C4)を有する第4フライングキャパシタ回路(14)と、
前記第1フライングキャパシタ回路(11)の中点と前記第2フライングキャパシタ回路(12)の中点との間に直列に接続される第1スイッチ部(Q17、Q18)と第2スイッチ部(Q19、Q20)を有し、前記第1スイッチ部(Q17、Q18)と前記第2スイッチ部(Q19、Q20)との間の接続点が、系統電源(3)または交流負荷に接続された交流経路の一端に接続される第1出力回路(15)と、
前記第3フライングキャパシタ回路(13)の中点と前記第4フライングキャパシタ回路(14)の中点との間に直列に接続される第3スイッチ部(Q21、Q22)と第4スイッチ部(Q23、Q24)を有し、前記第3スイッチ部(Q21、Q22)と前記第4スイッチ部(Q23、Q24)との間の接続点が、前記交流経路の他端に接続される第2出力回路(16)と、を備え、
前記第1フライングキャパシタ回路(11)及び前記第2フライングキャパシタ回路(12)は直流電源(2)の両端間に直列に接続され、
前記第3フライングキャパシタ回路(13)及び前記第4フライングキャパシタ回路(14)は前記直流電源(2)の両端間に直列に接続され、
前記第1フライングキャパシタ回路(11)と前記第2フライングキャパシタ回路(12)との接続点と、前記第3フライングキャパシタ回路(13)と前記第4フライングキャパシタ回路(14)との接続点との間が中間配線で接続され、
本電力変換装置(1)は、
前記直流電源(2)の正極に接続された正側直流バスと、前記中間配線との間に接続された第1分割コンデンサ(C5)と、
前記中間配線と、前記直流電源(2)の負極に接続された負側直流バスとの間に接続された第2分割コンデンサ(C6)と、
前記第1出力回路(15)の両端間に接続された第1出力コンデンサ(C7)と、
をさらに備えることを特徴とする電力変換装置(1)。
これによれば、第1フライングキャパシタ(C1)と第2フライングキャパシタ(C2)間の電圧バランスの崩れを抑制することができる。
[項目2]
前記第1出力コンデンサ(C7)の容量値は、前記第1分割コンデンサ(C5)および前記第2分割コンデンサ(C6)の容量値より低く設定されていることを特徴とする項目1に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、第1分割コンデンサ(C5)と第2分割コンデンサ(C6)との間の中間電位の安定性が低下することを抑制できる。
[項目3]
前記第2出力回路(16)の両端間に接続された第2出力コンデンサ(C8)を、
さらに備えることを特徴とする項目1または2に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、第3フライングキャパシタ(C3)と第4フライングキャパシタ(C4)間の電圧バランスの崩れを抑制することができる。
[項目4]
前記第2出力コンデンサ(C8)の容量値は、前記第1分割コンデンサ(C5)および前記第2分割コンデンサ(C6)の容量値より低く設定されていることを特徴とする項目3に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、第1分割コンデンサ(C5)と第2分割コンデンサ(C6)との間の中間電位の安定性が低下することを抑制できる。
【符号の説明】
【0114】
1 電力変換装置、 2 直流電源、 3 系統、 10 インバータ回路、 11-14 フライングキャパシタ回路、 15,16 出力回路、 20 フィルタ回路、 30 制御回路、 Q1-Q24 スイッチング素子、 D1-D24 ダイオード、 C1-C4 フライングキャパシタ、 C5,C6 分割コンデンサ、 C7-C9 出力コンデンサ、 L1,L2 リアクトル。
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