(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】コロイド結晶構造体、並びにそれを用いた発光装置及び照明システム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/26 20060101AFI20221202BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20221202BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20221202BHJP
F21V 9/08 20180101ALI20221202BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20221202BHJP
【FI】
G02B5/26
G02B5/20
H01L33/58
F21V9/08 100
F21V9/30
(21)【出願番号】P 2020568087
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020001082
(87)【国際公開番号】W WO2020153197
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2019009444
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【氏名又は名称】細川 覚
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】鴫谷 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊平
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177781(JP,A)
【文献】特開2010-058091(JP,A)
【文献】特開2007-029775(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186158(WO,A1)
【文献】特開2017-091866(JP,A)
【文献】特開2017-003843(JP,A)
【文献】特開2018-203814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/26
G02B 5/20
H01L 33/58
F21V 9/08
F21V 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコロイド粒子と、前記複数のコロイド粒子の間に配置され、前記コロイド粒子を固定しているバインダーとを含むコロイド結晶層と、
前記コロイド結晶層における一方の面に設けられ、透明であり、さらに前記バインダーとの屈折率差が10%未満である屈折率制御材と、
前記コロイド結晶層における前記一方の面と反対側の面に設けられ、透光性を有する基板と、
を備え、
前記複数のコロイド粒子同士は互いに離間しており、前記コロイド粒子間に前記バインダーが介在して
おり、
前記コロイド結晶層の厚さは、10μm~5000μmである、コロイド結晶構造体。
【請求項2】
前記屈折率制御材における前記コロイド結晶層に対向する面と反対側の面は、前記複数のコロイド粒子により形成されたコロイド結晶に由来する規則的な凹凸を有していない、請求項1に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項3】
前記コロイド結晶層の厚さは、1000μm~5000μmである、請求項1又は2に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項4】
複数種類のコロイド粒子と、前記複数種類のコロイド粒子の間に配置され、前記コロイド粒子を固定しているバインダーと、を含むコロイド構造層と、
前記コロイド構造層における一方の面に設けられ、透明であり、さらに前記バインダーとの屈折率差が10%未満である屈折率制御材と、
前記コロイド構造層における前記一方の面と反対側の面に設けられ、透光性を有する基板と、
を備え、
前記複数種類のコロイド粒子は、平均粒子径が互いに異なる第1のコロイド粒子と第2のコロイド粒子とを少なくとも含み、
前記第1のコロイド粒子及び前記第2のコロイド粒子の粒子径の変動係数は、それぞれ20%未満であり、
前記複数種類のコロイド粒子は前記バインダー中で規則配列構造を形成しており、
前記複数種類のコロイド粒子同士は互いに離間しており、前記コロイド粒子間に前記バインダーが介在して
おり、
前記コロイド構造層の厚さは、10μm~5000μmである、コロイド結晶構造体。
【請求項5】
前記コロイド構造層において、前記複数種類のコロイド粒子は、互いに混和した状態でコロイド結晶化してコロイド固溶体を成している、請求項
4に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項6】
前記屈折率制御材における前記コロイド構造層に対向する面と反対側の面は、前記複数種類のコロイド粒子により形成されたコロイド結晶に由来する規則的な凹凸を有していない、請求項
4又は
5に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項7】
前記コロイド構造層の厚さは、1000μm~5000μmである、請求項4乃至6のいずれか一項に記載のコロイド結晶構造体。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のコロイド結晶構造体を備える光学フィルタと、
光源と、
を備え、
前記光源が放つ一次光の一部が前記光学フィルタを透過する、発光装置。
【請求項9】
前記光学フィルタで反射された前記一次光の反射光によって励起される波長変換部材をさらに備える、請求項
8に記載の発光装置。
【請求項10】
請求項
8又は
9に記載の発光装置を備える照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイド結晶構造体、並びにそれを用いた発光装置及び照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コロイド粒子が三次元的かつ周期的に配列した集合体は、通常の結晶との類似性からコロイド結晶と呼ばれている。このコロイド結晶に光が入射した場合、コロイド結晶の内部で光の回折干渉が生じることから、その周期構造に起因して特定波長の光を反射する現象が起こる。例えば、サブミクロンサイズのコロイド粒子からなるコロイド結晶は、その粒子サイズに応じて、紫外から可視、さらに赤外の範囲の光を反射することができる。このような特性から、コロイド結晶を色材、光メモリ材料、表示デバイス、光学フィルタ、光スイッチ、センサーなどに応用することが検討されている。
【0003】
特許文献1では、分散媒成分中でコロイド粒子が三次元規則配列状態で分散されているコロイド分散液を基材上に塗装して塗膜を形成する工程と、塗膜中の分散媒成分を重合し、コロイド結晶膜を製造する工程を含むコロイド結晶膜の製造方法を開示している。また、特許文献1では、上記製造方法により、反射スペクトルにおいて所定の反射ピークが生じるコロイド結晶膜が得られ、さらに当該コロイド結晶膜を粉砕することにより、コロイド結晶顔料が得られることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
特許文献1の実施例では、コロイド結晶膜の反射スペクトルにおいて、ピーク波長が596nm、反射率が47%、半値幅が25nmの反射ピークが得られることが記載されている。ただ、特許文献1の反射スペクトルでは、ピーク波長が596nmの反射ピークに加えて、670nm付近にも反射ピークが確認できる。そのため、特許文献1のコロイド結晶膜を光学フィルタに用いた場合、演色性及び反射効率の低下を生じる恐れがあった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、光学フィルタに用いた場合でも、演色性及び反射効率の低下を抑制することが可能なコロイド結晶構造体、並びに当該コロイド結晶構造体を用いた発光装置及び照明システムを提供することにある。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係るコロイド結晶構造体は、複数のコロイド粒子と複数のコロイド粒子の間に配置され、コロイド粒子を固定しているバインダーとを含むコロイド結晶層と、コロイド結晶層における一方の面に設けられ、透明であり、さらにバインダーとの屈折率差が10%未満である屈折率制御材と、を備える。
【0008】
本発明の第二の態様に係るコロイド結晶構造体は、複数種類のコロイド粒子と複数種類のコロイド粒子の間に配置され、コロイド粒子を固定しているバインダーとを含むコロイド構造層と、コロイド構造層における一方の面に設けられ、透明であり、さらにバインダーとの屈折率差が10%未満である屈折率制御材と、を備える。複数種類のコロイド粒子は、平均粒子径が互いに異なる第1のコロイド粒子と第2のコロイド粒子とを少なくとも含む。第1のコロイド粒子及び第2のコロイド粒子の粒子径の変動係数は、それぞれ20%未満である。複数種類のコロイド粒子は、バインダー中で規則配列構造を形成している。
【0009】
本発明の第三の態様に係る発光装置は、コロイド結晶構造体を備える光学フィルタと、光源とを備え、光源が放つ一次光の一部が光学フィルタを透過する。
【0010】
本発明の第四の態様に係る照明システムは、発光装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、コロイド結晶層を備えた構造体の例を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるコロイド結晶層の反射スペクトルの例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るコロイド結晶構造体の一例を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るコロイド結晶構造体の他の例を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、粒子径が異なる二種類のコロイド粒子がそれぞれ単独で集合し、共晶状態となっている様子を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る発光装置の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る照明システムの一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8(a)は、本実施形態に係る照明システムに係る灯具を示す分解斜視図である。
図8(b)は、
図8(a)の領域Aを拡大した光源ユニットを示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、実施例1及び比較例1の試験サンプルの反射スペクトルを示す図である。
【
図10】
図10は、実施例2及び比較例2の試験サンプルの反射スペクトルを示す図である。
【
図11】
図11は、実施例1の試験サンプルの断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す写真である。
【
図12】
図12は、
図11において、コロイド結晶層と屈折率制御材の界面付近を拡大して示す写真である。
【
図13】
図13は、実施例1の試験サンプルの表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果を示す写真である。
【
図14】
図14は、比較例1の試験サンプルの表面を原子間力顕微鏡で観察した結果を示す写真である。
【
図15】
図15は、参考例1の試験サンプルの反射スペクトルを示す図である。
【
図16】
図16は、参考例1の試験サンプルの表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す写真である。
【
図17】
図17は、参考例1の試験サンプルの断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態に係るコロイド結晶構造体、並びに当該コロイド結晶構造体を用いた発光装置及び照明システムについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
[コロイド結晶構造体]
(第一実施形態)
図1は、コロイド結晶層を備えた構造体を示している。
図1(a)に示す構造体10aは、複数のコロイド粒子1と、複数のコロイド粒子1の間に配置され、コロイド粒子1を固定しているバインダー2とを含むコロイド結晶層3を備えている。さらに、構造体10aにおいて、コロイド結晶層3は、基板4により保持されている。
図1(a)に示すように、複数のコロイド粒子1は、三次元的かつ周期的に配列することにより、コロイド結晶を形成しており、さらに隣接するコロイド粒子1の間には、バインダー2が介在している。つまり、構造体10aは、複数のコロイド粒子同士が互いに接触してなる密充填のコロイド結晶を有しているわけではなく、複数のコロイド粒子同士が互いに離間した疎充填のコロイド結晶を有している。
【0014】
ここで、複数のコロイド粒子1の間にバインダー2を設けたコロイド結晶を作製した場合、材料によって程度は異なるが、コロイド結晶層3の表面には、コロイド結晶の周期構造に由来した微細な凹凸構造が形成される場合がある。具体的には、
図1(a)に示すように、コロイド結晶層3において、基板4と対向する面と反対側にある表面には、複数の凹凸が形成される場合がある。凸部3aは、コロイド結晶層3の表面からコロイド粒子1の一部が露出することにより形成されている。凹部3bは、露出したコロイド粒子1と、隣接したコロイド粒子1の間に位置するバインダー2とにより形成されている。そして、コロイド結晶層3の表面における微細な凹凸構造は、コロイド粒子1の規則的な配列構造に起因して形成されている。
【0015】
コロイド結晶層3の表面に形成される凹凸構造は、
図1(a)に示す構造以外にも、例えば、
図1の(b)及び(c)に示す構造となる可能性がある。
図1(b)に示す構造体10bも、構造体10aと同様に、複数のコロイド粒子1と複数のコロイド粒子1の間に配置されるバインダー2とを含むコロイド結晶層3と、コロイド結晶層3を保持する基板4とを備えている。そして、
図1(b)に示すように、凹部3bは、最上部に位置するコロイド粒子1の鉛直方向に沿って、バインダー2により形成されており、凸部3aは、隣接する凹部3bの間に位置するバインダー2により形成されている。
図1(c)に示す構造体10cも、構造体10a及び構造体10bと同様に、複数のコロイド粒子1と複数のコロイド粒子1の間に配置されるバインダー2とを含むコロイド結晶層3と、コロイド結晶層3を保持する基板4とを備えている。そして、
図1(c)に示すように、凸部3aは、最上部に位置するコロイド粒子1の鉛直方向に沿って、バインダー2により形成されており、凹部3bは、隣接する凸部3aの間に位置するバインダー2により形成されている。
【0016】
このような凸部3a及び凹部3bが形成されるメカニズムは必ずしも明確ではないが、次のことが考えられる。コロイド結晶層3の製造方法は、まず、コロイド粒子1を、バインダー2の前駆体であるモノマーに分散させることにより、コロイド分散液を調製する。次いで、得られたコロイド分散液を基板4上に塗布し、塗布膜を作製する。そして、塗布膜中のモノマーを活性エネルギー線で重合させ、コロイド粒子1をポリマーで固定化する。このような工程により、基板4上にコロイド結晶層3を形成することができる。ここで、バインダー2の前駆体であるモノマーを重合してポリマーを生成する際、モノマーは収縮して体積が減少するが、コロイド粒子1は収縮しない。そのため、モノマーの重合による収縮とコロイド粒子1の三次元周期構造とにより、コロイド結晶層3の表面に規則的な凸部3a及び凹部3bが形成されると推測される。
【0017】
図2では、
図1に示すコロイド結晶層3の反射スペクトルの例を示している。
図2に示すように、コロイド結晶層3は、560nm付近に反射率が50%程度の反射ピークP1を有していることが分かる。コロイド結晶層3は、さらに、590nm付近、620nm付近、670nm付近に、反射率が20%未満の反射ピークP2,P3,P4も有している。そのため、例えば、コロイド結晶層3を光学フィルタに使用した場合、560nm付近に加えて、590nm付近、620nm付近及び670nm付近の光も反射してしまうことから、演色性及び反射効率の低下を生じる恐れがあった。
【0018】
本発明者は、560nm付近の主ピークに加えて、複数の副ピークが発生する原因を検討した結果、コロイド結晶層3の表面に形成された規則的な凸部3a及び凹部3bに起因して発生すると推測した。本発明者は、さらに、複数の副ピークは凸部3a及び凹部3bによって形成された微細凹凸構造により、反射光が回折又は干渉するために発生すると推測した。
【0019】
本発明者は、上述の副ピークに起因した課題を解決するために鋭意検討した結果、コロイド結晶層3の表面に形成された微細凹凸構造を他の物質で埋めることにより、課題が解決できることを見出し、本実施形態を完成するに至った。本実施形態に係るコロイド結晶構造体10は、
図3に示すように、複数のコロイド粒子1と複数のコロイド粒子1の間に配置されるバインダー2とを含むコロイド結晶層3と、コロイド結晶層3を保持する基板4とを備えている。コロイド結晶構造体10は、さらに、コロイド結晶層3の表面に設けられる屈折率制御材5を備えている。
【0020】
コロイド結晶構造体10におけるコロイド結晶層3では、複数のコロイド粒子が三次元的かつ規則的に配列しており、さらに隣接するコロイド粒子1の間にバインダー2が介在している。つまり、コロイド結晶層3は、複数のコロイド粒子1同士が互いに接触してなる密充填のコロイド結晶を有しているわけではなく、複数のコロイド粒子同士が互いに離間した疎充填のコロイド結晶を有している。このような疎充填のコロイド結晶を有することにより、コロイド結晶層3に照射された光の一部はBragg反射し、反射されなかった光の一部はコロイド結晶層3を透過することができる。
【0021】
コロイド結晶層3において、コロイド粒子1は、無機材料及び樹脂材料の少なくとも一方を含むことが好ましい。コロイド粒子1が無機材料を含むことにより、得られるコロイド結晶の耐久性を高めることができる。また、コロイド粒子1が有機材料を含むことにより、コロイド粒子1の形状を真球状にしやすくなるため、コロイド粒子1は規則配列構造を形成しやすくなる。なお、コロイド粒子1は無機材料のみから形成されていてもよく、樹脂材料のみから形成されていてもよい。また、コロイド粒子1は無機材料及び樹脂材料の両方から形成されていてもよい。なお、複数のコロイド粒子1がとる規則配列構造は、例えば最密充填構造、面心立方構造又は体心立方構造であることが好ましい。
【0022】
無機材料としては、例えば、金及び銀などの金属、シリカ、アルミナ及びチタニアなどの金属酸化物を用いることができる。また、樹脂材料としては、スチレン樹脂及びアクリル樹脂などを用いることができる。これらの材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
スチレン樹脂は、スチレン系単量体を主成分として重合させたものである。スチレン系単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレンが挙げられる。また、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレンも挙げられる。これらのスチレン系単量体は一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において、主成分は50質量%以上であることを意味する。
【0024】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を主成分として重合させたものであり、(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。このような(メタ)アクリル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートも挙げられる。また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレートも挙げられる。ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートも挙げられる。(メタ)アクリル系単量体は一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル系単量体は、メタクリル系単量体及びアクリル系単量体を包含する。
【0025】
なお、コロイド粒子1は、無機粒子からなることが好ましく、シリカからなることが特に好ましい。シリカからなるコロイド粒子1は調達が容易であるため、コロイド結晶層3の工業生産性を高めることが可能となる。また、コロイド粒子1は、ポリマー粒子からなることも好ましく、アクリル樹脂及びポリスチレンの少なくとも一方からなることが特に好ましい。ポリマーからなるコロイド粒子1は、真球状のものが入手しやすく、さらにアクリル樹脂及び/又はポリスチレンからなるコロイド粒子1は汎用で調達が容易であることから、コロイド結晶層3の工業生産性を高めることが可能となる。
【0026】
コロイド結晶層3において、コロイド粒子1を固定しているバインダー2は、例えば、樹脂を含んでいることが好ましい。バインダー2が樹脂を含んでいることにより、固体である樹脂がコロイド粒子1の規則配列構造を固定化するため、コロイド結晶層3の機械的強度を高めることができる。また、後述するように、樹脂は活性エネルギー線により硬化することができるため、ハンドリング性を高め、生産性を向上させることが可能となる。なお、バインダー2は、300nm以上800nm未満の範囲内の波長領域において高い光線透過率を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
バインダー2に用いられる樹脂は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル-スチレン共重合体及びスチレン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0028】
アクリル樹脂及びスチレン樹脂としては、上述のものを使用することができる。ポリカーボネート樹脂としては、例えば二価フェノールと、ホスゲン又は炭酸ジエステル化合物とを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体、及びこれらの共重合体である芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂としては、二酸化炭素とエポキシドとの共重合体によって得られる脂肪族ポリカーボネート樹脂も挙げられる。さらにポリカーボネート樹脂としては、これらを共重合した芳香族-脂肪族ポリカーボネートも挙げられる。また、アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸等の直鎖状脂肪族二価カルボン酸等も、ポリカーボネート樹脂の共重合モノマーとして挙げられる。
【0029】
シクロオレフィン樹脂は、主鎖が炭素-炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する樹脂である。シクロオレフィン樹脂としては、エチレンとノルボルネンの付加共重合体や、エチレンとテトラシクロドデセンの付加共重合体などが挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2個以上含むプレポリマーを硬化剤で硬化した樹脂である。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いることができる。また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルヒダントイン等)を用いることもできる。さらに、これらのエポキシ樹脂を種々の材料で変性させた変性エポキシ樹脂等も使用することができる。また、これらのエポキシ樹脂の臭素化物、塩素化物等のハロゲン化物も用いることができる。
【0031】
シリコーン樹脂は、シロキサン結合からなる直鎖状高分子が架橋することで三次元網状構造となっている樹脂である。シリコーン樹脂としては、側鎖が例えばメチル基で構成されるジメチル系シリコーンや、一部分が芳香族系分子に置換されている芳香族系シリコーンがある。本実施形態では、シリコーン樹脂として特に好ましいのは芳香族系シリコーンである。
【0032】
アクリル-スチレン共重合体としては、(メタ)アクリル系単量体及びスチレン系単量体を主成分として重合したものである。また、アクリル-スチレン共重合体は、(メタ)アクリル系単量体及びスチレン系単量体と共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。アクリル-スチレン共重合体としては、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-ジエチルアミノエチルメタアクリレート共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
【0033】
コロイド結晶層3中のコロイド粒子1の平均粒子径は、10nm~10μmであることが好ましく、10nm~1000nmであることがより好ましく、50nm~300nmであることがさらに好ましく、70nm~280nmであることが特に好ましい。コロイド粒子1の平均粒子径が10nm以上であることにより、隣接するコロイド粒子1の表面間の凝集力が低下し、後述する分散液中で均一に分散し易くなる傾向がある。コロイド粒子1の平均粒子径が10μm以下であることにより、コロイド粒子1の沈降が抑制され、分散液中で均一に分散し易くなる傾向がある。なお、本明細書において、コロイド粒子1の平均粒子径は、コロイド結晶層3の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、複数のコロイド粒子1の粒子径を測定することにより、求めることができる。
【0034】
上述のように、コロイド結晶層3は、複数のコロイド粒子1を有している。そして、コロイド粒子1の変動係数は、20%未満であることが好ましい。粒子径の変動係数は、数式1で求められる値であり、この値が小さいほど粒子径のバラツキが小さいことを意味する。
[数1]
[変動係数(%)]=[粒子径の標準偏差]/[平均粒子径]×100
コロイド粒子1の粒子径の変動係数が20%未満であることにより、コロイド粒子1がバインダー2中で規則配列構造を形成しやすくなる。そのため、得られるコロイド結晶層3は、照射された光を高効率で反射することが可能となる。なお、コロイド粒子1の変動係数は15%未満であることがより好ましく、12%未満であることがさらに好ましく、10%未満であることが特に好ましく、8%未満であることが最も好ましい。
【0035】
コロイド結晶層3において、隣接するコロイド粒子1の中心間距離dは、100nm以上300nm以下であることが好ましく、140nm以上300nm以下であることがより好ましい。コロイド結晶層3を光学フィルタや色材に用いる場合、コロイド粒子の中心間距離dを調整することにより、所望とする波長の光を反射させることができる。なお、隣接するコロイド粒子1の中心間距離dは、コロイド結晶層3の表面を走査型電子顕微鏡で観察することにより求めることができる。
【0036】
コロイド結晶層3において、バインダー2の体積に対するコロイド粒子1の体積の割合は、20体積%以上50体積%以下であることが好ましい。当該体積割合が20体積%以上であることにより、複数のコロイド粒子1がバインダー2中で三次元規則配列状態となり、コロイド結晶層3の光反射能をより高めることが可能となる。また、当該体積割合が50体積%以下であることにより、バインダー2中で形成する三次元規則配列構造を容易に制御することが可能となる。また、当該体積割合が20体積%以上50体積%以下であることにより、複数のコロイド粒子同士が互いに離間した疎充填のコロイド結晶となり、コロイド粒子間にバインダー2を介在させることができる。そのため、コロイド結晶層3の形状安定性をより高めることが可能となる。
【0037】
コロイド結晶層3は、コロイド粒子1の含有割合及び/又は粒子径を調整することによって、任意の光成分を反射することができる。そのため、コロイド結晶層3は、反射スペクトルの反射ピーク波長λが300nm以上800nm未満の波長範囲内にあることが好ましい。この場合、コロイド結晶層3は、可視光領域における反射特性を示すため、光学フィルタや色材など、産業上利用しやすい構造体となる。なお、コロイド結晶層3は、反射スペクトルの反射ピーク波長λが450nm以上650nm未満の波長範囲内にあることがより好ましい。
【0038】
コロイド結晶層3は、300nm以上800nm未満の波長範囲における反射率の最大値が20%以上100%未満であることが好ましい。この場合、コロイド結晶層3は、反射スペクトルの反射ピーク波長λの光強度を選択的に低下させることができるため、光学フィルタなど、産業上利用しやすい構造体となる。
【0039】
より詳細に説明すると、上述のように、コロイド結晶層3は、コロイド粒子1の含有割合及び/又は粒子径を調整することによって、反射する光の波長及び強度を制御することができる。そして、従来の光干渉フィルタのように特定の波長範囲の光を全て反射するのではなく、特定の波長範囲における光の一部を反射することにより、所望の光をコロイド結晶層3から取り出すことができる。例えば、特定の波長範囲の光を全て反射した場合、コロイド結晶層3を透過した光は自然な白色光から遠ざかってしまうが、特定の波長範囲における光の一部を反射しつつ、残りの光を透過することにより、自然な白色光を維持しつつも演色性を高めることができる。なお、コロイド結晶層3は、300nm以上800nm未満の波長範囲における反射率の最大値が20%~95%であることが好ましく、20%~80%であることがより好ましい。
【0040】
コロイド結晶層3は、300nm以上800nm未満の波長範囲における最大の反射率を有する反射スペクトルのピークの半値幅(FWHM)が5nm以上100nm以下であることが好ましい。半値幅は、コロイド結晶層3の層厚のばらつき及びコロイド粒子1の配列などを精密に制御するほど小さくなる傾向にある。そのため、生産性の観点から、半値幅を5nm以上とすることが好ましい。また、半値幅を100nm以下とすることにより、例えば演色性を高めるために必要となる波長の光がコロイド結晶層3によって反射される恐れを低減することができる。また、半値幅を100nm以下とすることにより、コロイド結晶層3を備える発光装置において、発光効率が低減するのを抑制することができる。なお、半値幅は10nm~60nmであることがより好ましい。
【0041】
上述のように、コロイド結晶層3は、反射スペクトルの反射ピーク波長λが300nm以上800nm未満の波長範囲内にあることが好ましい。ここで、コロイド結晶構造体10の使用時において、反射スペクトルの反射ピーク波長λは、できる限りシフトしない方が好ましい。反射ピーク波長λがシフトした場合、コロイド結晶構造体10から出射される反射光や透過光の色調が変化してしまい、所望の出力光が得られ難くなる可能性がある。
【0042】
コロイド結晶構造体10の使用時において、反射ピーク波長λがシフトしないためには、コロイド結晶層3におけるコロイド粒子1の三次元規則配列構造が変化しないことが好ましい。さらに、隣接するコロイド粒子1の中心間距離dは、一定であることが好ましい。そのため、コロイド結晶構造体10の使用時において、バインダー2の体積は変化しないことが好ましい。また、バインダー2の体積が変化する場合でも、反射スペクトルの反射ピーク波長λがシフトしない範囲内で変化することが好ましい。言い換えれば、バインダー2に用いられる樹脂は、コロイド結晶構造体10の使用時に体積が変化し難い樹脂であることが好ましく、体積が変化しない樹脂であることがより好ましい。具体的には、バインダー2に用いられる樹脂は、水分を吸収又は放出して体積が変化する樹脂ではないことが好ましい。
【0043】
コロイド結晶構造体10は、コロイド結晶層3を支持する基板4を備えていることが好ましい。コロイド結晶構造体10において、基板4は必須の構成要素ではない。ただ、コロイド結晶層3が基板4で支持されることにより、コロイド結晶層3の取り扱い性及び機械的強度を高めることが可能となる。なお、コロイド結晶層3は、
図3に示すように、基板4の表面と接していてもよいが、コロイド結晶層3と基板4との間に図示しない介在層が配置されていてもよい。
【0044】
基板4は高い透光性を有していることが好ましい。例えば、基板4の全光線透過率は80%~100%であることが好ましく、85%~100%であることがより好ましい。全光線透過率は、例えば日本工業規格JIS K7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法-第1部:シングルビーム法)などの方法により測定することができる。
【0045】
基板4としては、例えばソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラス、無アルカリアルミノ硼珪酸ガラスなどのガラス板を使用することができる。また、基板4としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板も使用することができる。
【0046】
コロイド結晶構造体10において、コロイド結晶層3の形状は特に限定されず、例えば膜状とすることができる。また、コロイド結晶層3の厚さは特に限定されないが、例えば10μm~5000μmであることが好ましく、1000μm~3000μmであることがより好ましい。また、コロイド結晶構造体10において、コロイド結晶層3の面積は特に限定されないが、5mm2以上100cm2以下とすることが好ましい。この場合、コロイド結晶構造体10を、各種センサーから大型の照明器具までの幅広い用途に適用することが可能となる。
【0047】
上述のように、複数のコロイド粒子1の間にバインダー2を設けたコロイド結晶を作製した場合、材料によって程度は異なるが、コロイド結晶層3の表面には、コロイド結晶の周期構造に由来した微細な凹凸構造が形成されうる。そして、その凹凸構造に起因して、反射光の回折や干渉などの光学現象が起こることから、コロイド結晶層3自体を照明等の光学フィルタに用いた場合、演色性及び反射効率の低下が生じる可能性がある。このような反射光の回折や干渉を抑制するために、コロイド結晶構造体10は、コロイド結晶層3における複数の凸部3a及び凹部3bを有する表面に、屈折率制御材5を設けている。
【0048】
図3に示すように、屈折率制御材5は、コロイド結晶層3における複数の凸部3a及び凹部3bを有する表面に接触するように設けられている。そして、屈折率制御材5は、複数の凹部3bを埋めるように設けられることが好ましい。複数の凸部3a及び凹部3bからなる周期構造を埋めることにより、反射光の回折や干渉を抑制することが可能となる。
【0049】
屈折率制御材5の厚みは、複数の凹部3bを埋めることが可能ならば特に限定されないが、例えば10nm以上2mm以下であることが好ましい。屈折率制御材5の厚みが大きい場合には、屈折率制御材5の酸素透過性が低下することから、バインダー2の酸化を抑制して、コロイド結晶層3の耐久性を向上させることが可能となる。屈折率制御材5の厚みが小さい場合には、屈折率制御材5の光線透過性が向上することから、コロイド結晶構造体10の光学的特性を高めることが可能となる。
【0050】
屈折率制御材5を構成する材料は、複数の凹部3bを埋めることが可能ならば特に限定されない。ただ、屈折率制御材5は、樹脂材料からなることが好ましい。屈折率制御材5に用いられる樹脂は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル-スチレン共重合体及びスチレン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。また、屈折率制御材5は、無機材料からなることも好ましい。屈折率制御材5に用いられる無機材料は、例えばシリカであることが好ましい。
【0051】
屈折率制御材5は、少なくとも複数の凹部3bを埋めるように設けられることが好ましい。また、屈折率制御材5は、複数の凸部3a及び凹部3bの全体を覆うように設けられることが好ましい。屈折率制御材5は、コロイド結晶層3における複数の凸部3a及び凹部3bを有する表面全体、つまり、コロイド結晶層3における基板4と対向する面と反対側の表面全体を覆うように設けられることが好ましい。また、屈折率制御材5は、単層からなる薄膜であってもよく、複数の層からなる薄膜であってもよい。具体的には、屈折率制御材5は、コロイド結晶層3及び基板4の積層方向に沿って、複数の層が積層してなる多層膜であってもよい。
【0052】
屈折率制御材5は透明であることが好ましい。例えば、屈折率制御材5の全光線透過率は80%~100%であることが好ましく、85%~100%であることがより好ましい。全光線透過率は、上述のJIS K7361-1:1997などの方法により測定することができる。
【0053】
屈折率制御材5は、コロイド結晶層3のバインダー2との屈折率差が10%未満であることが好ましい。つまり、屈折率制御材5の屈折率がXである場合、バインダー2の屈折率は、X×0.90を超え、X×1.10未満の範囲内であることが好ましい。屈折率制御材5とバインダー2との屈折率差が10%以上の場合、屈折率制御材5とコロイド結晶層3との界面で照射光が反射する。この際、コロイド結晶層3の表面に存在する凸部3a及び凹部3bにより、反射光の干渉や回折が発生し、演色性及び反射効率が低下する可能性がある。しかしながら、屈折率制御材5とバインダー2との屈折率差が10%未満である場合には、屈折率制御材5とコロイド結晶層3との界面での屈折率差を実質的に等しくすることができる。そのため、反射光の回折現象を抑制し、光源とコロイド結晶構造体10と組み合わせた際に、演色性や反射効率の低下を防ぐことが可能となる。なお、屈折率制御材5は、コロイド結晶層3のバインダー2との屈折率差が5%未満であることがより好ましい。この場合には、反射光の回折現象をより抑制し、演色性や反射効率の低下をさらに防ぐことが可能となる。
【0054】
本明細書において、屈折率制御材5及びバインダー2の屈折率は、JIS K7142:2014(プラスチック-屈折率の求め方)、又は光干渉法により測定することができる。屈折率制御材5及びバインダー2の屈折率を光干渉法で測定する場合、反射分光膜厚計を用い、測定波長を550nmとすることにより、測定することができる。
【0055】
コロイド結晶構造体10において、屈折率制御材5におけるコロイド結晶層3に対向する面と反対側の面は、複数のコロイド粒子1により形成されたコロイド結晶に由来する規則的な凹凸を有していないことが好ましい。つまり、上述のように、コロイド結晶層3の複数の凸部3a及び凹部3bは、複数のコロイド粒子1により形成されたコロイド結晶に由来して形成されている。そして、コロイド結晶層3の凸部3a及び凹部3bを覆うように形成された屈折率制御材5の最表面は、凸部3a及び凹部3bに起因した規則的な凹凸構造を有していないことが好ましい。これにより、屈折率制御材5の最表面で照射光が反射した場合でも、反射光の干渉や回折が抑制され、演色性及び反射効率の低下を抑制することが可能となる。また、屈折率制御材5の最表面が規則的な凹凸を有していない場合には、当該最表面の面積が小さくなるため、防汚性を高めることが可能となる。さらに、仮に屈折率制御材5の最表面に機能層を設ける場合でも、当該最表面は平坦であることから、機能層を容易に形成することが可能となる。
【0056】
次に、本実施形態に係るコロイド結晶構造体10の製造方法について説明する。コロイド結晶構造体10の製造方法では、まず、コロイド粒子1を、一種類以上のモノマーと共に分散させることにより、コロイド分散液を調製する。具体的には、重合することによりバインダー2を形成するモノマーにコロイド粒子1を添加する。この際、モノマーとしては液状のものを使用し、コロイド粒子1としては粉末状のものを使用することができる。モノマーにコロイド粒子1を分散させる方法は特に限定されず、例えば攪拌及び超音波照射により分散させることができる。なお、活性エネルギー線によってモノマーを重合させる場合には、光重合開始剤などがコロイド分散液に添加されてもよい。光重合開始剤としては、ラジカル光重合開始剤、カチオン光重合開始剤、アニオン光重合開始剤など公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0057】
次に、得られたコロイド分散液を基板4上に塗布し、塗布膜を作製する。コロイド分散液を塗布する方法は特に限定されないが、例えばスプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法等が利用できる。なお、塗布膜を作製した後、塗布膜を静置することで、コロイド粒子1が三次元かつ規則的に配列する。
【0058】
そして、塗布膜中のモノマーを重合させることにより、複数のコロイド粒子1をポリマーで固定化する。モノマーを重合させる方法は特に限定されず、加熱によって重合させてもよく、活性エネルギー線(電磁波、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、γ線等)によって重合させてもよい。このような工程により、複数のコロイド粒子1がバインダー2中で規則的に配列したコロイド結晶層3を得ることができる。
【0059】
次に、重合することにより屈折率制御材5を形成するモノマーを含むモノマー溶液を調製する。この際、活性エネルギー線によってモノマーを重合させる場合には、光重合開始剤などがモノマー溶液に添加されてもよい。そして、モノマー溶液を、コロイド結晶層3における凸部3a及び凹部3bが形成された表面に塗布し、塗布膜を作製する。モノマー溶液を塗布する方法は特に限定されないが、例えばスプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法等が利用できる。そして、塗布膜中のモノマーを重合させることにより、屈折率制御材5を得ることができる。なお、モノマーを重合させる方法は特に限定されず、加熱によって重合させてもよく、活性エネルギー線によって重合させてもよい。
【0060】
上述のように、モノマーを含む塗布膜をコロイド結晶層3の表面に作製した後、当該モノマーを重合させることにより、屈折率制御材5を形成することができる。ただ、屈折率制御材5を形成する方法はこのような方法に限定されず、本実施形態の効果が得られる屈折率制御材5を形成できるならば、あらゆる方法を適用することができる。
【0061】
例えば、屈折率制御材5は、次のような方法でも形成することができる。まず、屈折率制御材5を構成する薄膜を予め準備する。次いで、屈折率制御材5を構成する薄膜をコロイド結晶層3の表面に直接積層した後、真空ラミネート処理を施すことにより、コロイド結晶層3の表面に屈折率制御材5を形成することができる。なお、真空ラミネート処理は、例えば真空ラミネーターを用いて行うことができる。
【0062】
このように、本実施形態のコロイド結晶構造体10は、複数のコロイド粒子1と、複数のコロイド粒子1の間に配置され、コロイド粒子1を固定しているバインダー2とを含むコロイド結晶層3を備える。コロイド結晶構造体10は、さらに、コロイド結晶層3における一方の面に設けられ、透明であり、さらにバインダー2との屈折率差が10%未満である屈折率制御材5を備える。本実施形態によれば、コロイド結晶層3の表面に、複数のコロイド粒子1の周期構造に由来した微細な凹凸構造が形成されていた場合であっても、屈折率制御材5によって凹凸構造の界面での屈折率差を実質的に等しくすることができる。そのため、反射光の回折現象を抑制し、光源とコロイド結晶構造体10と組み合わせた際に、演色性や反射効率の低下を防ぐことが可能となる。また、屈折率制御材5の酸素透過性が低い場合には、バインダー2の酸化を抑制することから、コロイド結晶層3の耐久性を高めることが可能となる。さらに、屈折率制御材5によりコロイド結晶層3が覆われて保護されることから、コロイド粒子1の三次元規則配列構造を長期間維持し、高い反射率を保つことが可能となる。
【0063】
コロイド結晶構造体10は、コロイド結晶層3における一方の面と反対側の面に設けられ、透光性を有する基板4をさらに備えることが好ましい。これにより、基板4によってコロイド結晶層3が保持されることから、コロイド結晶構造体10の取り扱い性を高めることが可能となる。また、基板4が透光性を有することにより、コロイド結晶構造体10を光学フィルタなどの透過光を利用する用途に用いることが可能となる。
【0064】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係るコロイド結晶構造体について、図面に基づき詳細に説明する。なお、第一実施形態と同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
本実施形態に係るコロイド結晶構造体10Aは、
図4に示すように、複数種類のコロイド粒子と複数種類のコロイド粒子の間に配置されるバインダー2とを含むコロイド構造層3Aと、コロイド構造層3Aを保持する基板4とを備えている。複数種類のコロイド粒子は、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bとを少なくとも含んでおり、さらに第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bは、平均粒子径が互いに異なっている。コロイド結晶構造体10Aは、さらに、コロイド構造層3Aの表面に設けられる屈折率制御材5を備えている。
【0066】
コロイド構造層3Aでは、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bが互いに混和した状態で三次元的かつ規則的に配列しており、さらに第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bとの間にバインダー2が介在している。つまり、コロイド構造層3Aは、複数種類のコロイド粒子同士が互いに接触してなる密充填のコロイド結晶を有しているわけではなく、複数種類のコロイド粒子同士が互いに離間した疎充填のコロイド結晶を有している。このような疎充填のコロイド結晶を有することにより、コロイド構造層3Aに照射された光の一部はBragg反射し、反射されなかった光の一部はコロイド構造層3Aを透過することができる。
【0067】
ここで、複数種類のコロイド粒子の間にバインダー2を設けたコロイド結晶を作製した場合、材料によって程度は異なるが、コロイド構造層3Aの表面には、コロイド結晶の周期構造に由来した微細な凹凸構造が形成される場合がある。そして、その凹凸構造に起因して、反射光の回折や干渉などの光学現象が起こることから、コロイド構造層3A自体を照明等の光学フィルタに用いた場合、演色性及び反射効率の低下が生じる可能性がある。
【0068】
このような反射光の回折や干渉を抑制するために、第一実施形態と同様に、コロイド結晶構造体10Aは、コロイド構造層3Aにおける複数の凸部3a及び凹部3bを有する表面に、屈折率制御材5を設けている。
【0069】
図4に示すように、屈折率制御材5は、コロイド構造層3Aにおける複数の凸部3a及び凹部3bを有する表面に接触するように設けられている。そして、屈折率制御材5は複数の凹部3bを埋めるように設けられることが好ましい。複数の凸部3a及び凹部3bからなる周期構造を埋めることにより、反射光の回折や干渉を抑制することが可能となる。なお、屈折率制御材5の厚み、屈折率制御材5を構成する材料、及び屈折率制御材5の全光線透過率は、第一実施形態と同じにすることができる。また、屈折率制御材5と、コロイド構造層3Aのバインダー2との屈折率差は、10%未満であることが好ましい。
【0070】
屈折率制御材5は、少なくとも複数の凹部3bを埋めるように設けられることが好ましい。また、屈折率制御材5は、複数の凸部3a及び凹部3bの全体を覆うように設けられることが好ましい。そして、第一実施形態と同様に、コロイド結晶構造体10Aに関し、屈折率制御材5におけるコロイド構造層3Aに対向する面と反対側の面は、複数種類のコロイド粒子1により形成されたコロイド結晶に由来する規則的な凹凸を有していないことが好ましい。
【0071】
第一実施形態と同様に、コロイド構造層3Aに含まれるコロイド粒子(第1のコロイド粒子1A,第2のコロイド粒子1B)は、無機材料及び樹脂材料の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。また、コロイド粒子を固定しているバインダー2は、樹脂を含んでいることが好ましい。
【0072】
コロイド構造層3A中のコロイド粒子(第1のコロイド粒子1A,第2のコロイド粒子1B)の平均粒子径は、0.01μm~10μmであることが好ましく、10nm~1000nmであることがより好ましく、50nm~300nmであることがさらに好ましく、70nm~280nmであることが特に好ましい。そして、コロイド構造層3Aに含まれる第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1Bの粒子径の変動係数は、それぞれ20%未満であることが好ましい。第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1Bの粒子径の変動係数がそれぞれ20%未満であることにより、第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1Bがバインダー2中で規則配列構造を形成しやすくなる。そのため、得られるコロイド構造層3Aは、照射された光を高効率で反射することが可能となる。なお、第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1Bの粒子径の変動係数は、それぞれ15%未満であることがより好ましく、12%未満であることがさらに好ましく、10%未満であることが特に好ましく、8%未満であることが最も好ましい。
【0073】
複数種類のコロイド粒子は、第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1B以外にも、平均粒子径が異なる第3のコロイド粒子、第4のコロイド粒子を含んでいてもよい。そして、第3のコロイド粒子及び第4のコロイド粒子の粒子径の変動係数は、それぞれ20%未満であることが好ましい。
【0074】
コロイド構造層3Aにおいて、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bは平均粒子径が互いに異なっている。そして、
図4に示すように、コロイド構造層3Aでは、第1のコロイド粒子1Aの平均粒子径は第2のコロイド粒子1Bの平均粒子径よりも大きくなっている。このように、粒子径が互いに異なる第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1Bが規則配列構造をとることにより、光反射能の低下を抑制しつつも、反射スペクトルにおける反射ピーク波長を調整することが可能なコロイド構造層3Aを得ることができる。なお、第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1Bがとる規則配列構造は、例えば最密充填構造、面心立方構造又は体心立方構造であることが好ましい。
【0075】
ここで、従来より、コロイド結晶膜中のコロイド粒子の濃度を変えることにより、反射スペクトルにおける反射ピーク波長がシフトすることが知られている。言い換えれば、コロイド結晶膜中のコロイド粒子の濃度を調整することにより、反射ピーク波長を適宜制御することは可能である。しかしながら、コロイド粒子の濃度が所定の範囲内の場合にはコロイド結晶膜は高い反射率を示すものの、所定の範囲から外れる場合には反射率が大きく低下する。そのため、コロイド粒子の濃度を変えることにより反射ピーク波長を調整した場合、コロイド結晶膜の光反射能が低下する場合がある。
【0076】
これに対して、コロイド構造層3Aでは、コロイド粒子による規則配列構造は維持しつつ、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bの含有割合及び/又は粒子径を調整することで、反射ピーク波長をシフトさせることができる。そのため、コロイド構造層3Aは、高い光反射能を有しつつも、簡易な方法で反射ピークを調整することが可能となる。
【0077】
コロイド構造層3Aにおいて、複数種類のコロイド粒子は、互いに混和した状態でコロイド結晶化してコロイド固溶体を成していることが好ましい。本明細書において、「コロイド固溶体」は、複数種類のコロイド粒子が混和した状態でコロイド結晶化し、固溶体に類似の結晶構造を有するものをいう。つまり、
図4に示すように、互いに異なる第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bが混和した状態で規則配列構造を形成し、あたかも固溶体のような集合体を成しているものをいう。なお、コロイド構造層3Aは、規則配列構造を形成した第1のコロイド粒子1Aの一部が、当該規則配列構造を維持しつつ、第2のコロイド粒子1Bで置換した構造体ということができる。または、コロイド構造層3Aは、規則配列構造を形成した第2のコロイド粒子1Bの一部が、当該規則配列構造を維持しつつ、第1のコロイド粒子1Aで置換した構造体ということができる。コロイド構造層3Aがこのようなコロイド固溶体を有していることにより、第1のコロイド粒子1Aからなるコロイド結晶の特性と、第2のコロイド粒子1Bからなるコロイド結晶の特性とを単に併せたものとは異なる特性を有するコロイド結晶を得ることができる。つまり、コロイド構造層3Aは、第1のコロイド粒子1Aからなるコロイド結晶と第2のコロイド粒子1Bからなるコロイド結晶の中間的な性質を有する構造体を成すことができる。
【0078】
具体的には、コロイド構造層3Aは、第1のコロイド粒子1Aからなるコロイド結晶の反射ピークと、第2のコロイド粒子1Bからなるコロイド結晶の反射ピークとの間に、反射ピークを持つことができる。上述のように、コロイド構造層3Aは、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bの含有割合及び/又は粒子径を調整することで、反射ピーク波長を変化させることができる。そのため、これらを調整することで、第1のコロイド粒子からなるコロイド結晶の反射ピークと、第2のコロイド粒子からなるコロイド結晶の反射ピークとの間の任意の位置に、反射ピークをシフトさせることが可能となる。
【0079】
上述のように、コロイド構造層3Aは、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bが混和して、あたかも固溶体のような集合体を成していることが好ましい。言い換えれば、
図5に示すように、粒子径が大きいコロイド粒子21からなるコロイド結晶と、粒子径が小さいコロイド粒子22からなるコロイド結晶とが混合してなる共晶状態ではない方が好ましい。この場合、コロイド粒子21からなるコロイド結晶に起因する反射ピークと、コロイド粒子22からなるコロイド結晶に起因する反射ピークが発現し、任意の位置に反射ピークをシフトさせることが難しくなる可能性がある。そのため、コロイド構造層3Aは、複数種類のコロイド粒子が固溶体のような規則配列構造を成していること好ましい。
【0080】
コロイド粒子として第1のコロイド粒子1Aのみを含むコロイド結晶の反射ピーク波長をλ1とし、コロイド粒子として第2のコロイド粒子1Bのみを含むコロイド結晶の反射ピーク波長をλ2とする。この場合、コロイド構造層3Aは、反射スペクトルの反射ピーク波長λがλ1とλ2との間に存在することが好ましい。これにより、第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1Bの含有割合及び/又は粒子径を調整することで、λ1とλ2との間の任意の位置に反射ピーク波長λをシフトさせることができる。そのため、コロイド構造層3Aにおける反射ピーク波長λを、簡易な方法で調整することが可能となる。
【0081】
また、上述のλ1とλ2との差の絶対値(|λ1-λ2|)は、20nm以上200nm以下であることが好ましい。この場合、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bが混和して規則配列構造を形成しやすくなる。そのため、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bとを含むコロイド固溶体を容易に形成し、λ1とλ2との間の任意の位置に反射ピーク波長λをシフトさせることが可能となる。
【0082】
コロイド構造層3Aにおいて、第1のコロイド粒子1Aの平均粒子径をd1とし、第2のコロイド粒子1Bの平均粒子径をd2とした場合、平均粒子径の比d1/d2が、1.05以上1.60未満であることが好ましい。この場合、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bが混和して規則配列構造を形成しやすくなる。そのため、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bとを含むコロイド固溶体を容易に形成し、任意の位置に反射ピークをシフトさせることが可能となる。
【0083】
コロイド構造層3Aにおいて、隣接するコロイド粒子の中心間距離dは、100nm以上300nm以下であることが好ましく、140nm以上300nm以下であることがより好ましい。後述するように、コロイド構造層3Aを光学フィルタや色材に用いる場合には、コロイド粒子の中心間距離dを調整することにより、所望とする波長を反射させることができる。なお、隣接するコロイド粒子の中心間距離dは、コロイド構造層3Aの表面を走査型電子顕微鏡で観察することにより求めることができる。
【0084】
第一実施形態と同様に、コロイド構造層3Aにおいて、バインダー2の体積に対するコロイド粒子の体積の割合は、20体積%以上50体積%以下であることが好ましい。なお、「コロイド粒子の体積」は、第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1Bを含むコロイド粒子全体の体積をいう。
【0085】
上述のように、コロイド構造層3Aは、第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bの含有割合及び/又は粒子径を調整することによって、任意の光成分を反射することができる。そのため、コロイド構造層3Aは、反射スペクトルの反射ピーク波長λが300nm以上800nm未満の波長範囲内にあることが好ましい。この場合、コロイド構造層3Aは、可視光領域における反射特性を示すため、光学フィルタや色材など、産業上利用しやすい構造体となる。なお、コロイド構造層3Aは、反射スペクトルの反射ピーク波長λが450nm以上650nm未満の波長範囲内にあることがより好ましい。
【0086】
第一実施形態と同様に、コロイド構造層3Aは、300nm以上800nm未満の波長範囲における反射率の最大値が20%以上100%未満であることが好ましい。また、コロイド構造層3Aは、300nm以上800nm未満の波長範囲における最大の反射率を有する反射スペクトルのピークの半値幅(FWHM)が5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0087】
コロイド結晶構造体10Aは、コロイド構造層3Aにおける一方の面と反対側の面に設けられ、透光性を有する基板4をさらに備えることが好ましい。これにより、基板4によってコロイド構造層3Aが保持されるので、コロイド結晶構造体10Aの取り扱い性を高めることが可能となる。また、基板4が透光性を有することにより、コロイド結晶構造体10Aを光学フィルタなどの透過光を利用する用途に用いることが可能となる。
【0088】
コロイド結晶構造体10において、コロイド構造層3Aの形状は特に限定されず、例えば膜状とすることができる。また、コロイド構造層3Aの厚さは特に限定されないが、例えば10μm~5000μmであることが好ましく、1000μm~3000μmであることがより好ましい。コロイド結晶構造体10において、コロイド構造層3Aの面積は特に限定されないが、5mm2以上100cm2以下とすることが好ましい。
【0089】
次に、本実施形態に係るコロイド結晶構造体10Aの製造方法について説明する。コロイド結晶構造体10Aの製造方法では、まず、第1のコロイド粒子と第2のコロイド粒子とを少なくとも含む複数種類のコロイド粒子を、一種類以上のモノマーと共に分散させることにより、コロイド分散液を調製する。具体的には、重合することによりバインダー2を形成するモノマーに、複数種類のコロイド粒子を添加する。この際、モノマーとしては液状のものを使用し、コロイド粒子としては粉末状のものを使用することができる。なお、活性エネルギー線によってモノマーを重合させる場合には、光重合開始剤などがコロイド分散液に添加されてもよい。
【0090】
次に、得られたコロイド分散液を基板上に塗布し、塗布膜を作製する。塗布膜を作製した後、塗布膜を静置することで、コロイド粒子が三次元かつ規則的に配列する。そして、塗布膜中のモノマーを重合させることにより、複数種類のコロイド粒子をポリマーで固定化する。モノマーを重合させる方法は特に限定されず、加熱によって重合させてもよく、活性エネルギー線によって重合させてもよい。このような工程により、複数種類のコロイド粒子がバインダー中で規則的に配列したコロイド構造層3Aを得ることができる。
【0091】
そして、第一実施形態と同様に、コロイド構造層3Aにおける凸部3a及び凹部3bが形成された表面に屈折率制御材5を形成することにより、コロイド結晶構造体10Aを得ることができる。
【0092】
このように、本実施形態のコロイド結晶構造体10Aは、複数種類のコロイド粒子と、複数種類のコロイド粒子の間に配置され、コロイド粒子を固定しているバインダー2と、を含むコロイド構造層3Aを備える。コロイド結晶構造体10Aは、さらに、コロイド構造層3Aにおける一方の面に設けられ、透明であり、さらにバインダー2との屈折率差が10%未満である屈折率制御材5を備える。複数種類のコロイド粒子は、平均粒子径が互いに異なる第1のコロイド粒子1Aと第2のコロイド粒子1Bとを少なくとも含む。第1のコロイド粒子1A及び第2のコロイド粒子1Bの粒子径の変動係数は、それぞれ20%未満である。そして、複数種類のコロイド粒子は、バインダー2中で規則配列構造を形成している。本実施形態によれば、コロイド構造層3Aの表面に、複数種類のコロイド粒子の周期構造に由来した微細な凹凸構造が形成されていた場合であっても、屈折率制御材5によって凹凸構造の界面での屈折率差を実質的に等しくすることができる。そのため、反射光の回折現象を抑制し、光源とコロイド結晶構造体10Aと組み合わせた際に、演色性や反射効率の低下を防ぐことが可能となる。また、屈折率制御材5の酸素透過性が低い場合には、バインダー2の酸化を抑制することから、コロイド構造層3Aの耐久性を高めることが可能となる。さらに、屈折率制御材5によりコロイド構造層3Aが覆われて保護されることから、複数種類のコロイド粒子の三次元規則配列構造を長期間維持し、高い反射率を保つことが可能となる。
【0093】
さらに、コロイド構造層3Aは、複数種類のコロイド粒子が混和してコロイド結晶化したコロイド固溶体を成していることが好ましい。これにより、第1のコロイド粒子1Aからなるコロイド結晶と第2のコロイド粒子1Bからなるコロイド結晶の中間的な性質を有する構造体となる。そのため、第1及び第2のコロイド粒子の含有割合及び/又は粒子径を調整することで、第1のコロイド粒子からなるコロイド結晶の反射ピークと、第2のコロイド粒子からなるコロイド結晶の反射ピークとの間の任意の位置に、反射ピークを有することができる。
【0094】
[発光装置]
次に、本実施形態に係る発光装置について説明する。本実施形態の発光装置は、コロイド結晶構造体10,10Aを備える光学フィルタ32と、光源31とを備える。そして、光源31が放つ一次光の一部が光学フィルタ32を透過する。このような光学フィルタ32を備えることによって、発光装置は、特定の波長の光を反射し、所望の光成分を放射することができる。
【0095】
図6は、発光装置の一例として、LEDモジュール30(Light-emitting diodeモジュール)を示している。本実施形態において、光源31は、LED素子からなり、回路基板33に実装された発光素子であるが、これに限定されない。
【0096】
発光素子は、例えば380nm~500nmの波長範囲内に主な発光ピークを有し、青色の光を出射する青色LED素子や紫色の光を出射する紫色LED素子を用いることができる。このような発光素子としては、例えば窒化ガリウム系のLED素子が挙げられる。
【0097】
本実施形態に係る発光装置は、光学フィルタ32で反射された一次光の反射光によって励起される波長変換部材をさらに備えてもよい。具体的には、
図6に示すように、発光装置であるLEDモジュール30は、波長変換部材34をさらに備えてもよい。本実施形態において、波長変換部材34は光源31を覆っている。波長変換部材34は、シリコーン樹脂等の透光性材料内に、例えば青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体及び赤色蛍光体の少なくとも一種の蛍光体35を含有している。青色蛍光体は、一次光の反射光により励起され、青色光を出射する。緑色蛍光体及び黄色蛍光体も一次光の反射光により励起され、それぞれ緑色光及び黄色光を出射する。
【0098】
青色蛍光体は470nm~500nmの波長領域に発光ピークを持ち、緑色蛍光体は500nm~540nmの波長領域に発光ピークを持ち、黄色蛍光体は545nm~595nmの波長領域に発光ピークを持つものである。青色蛍光体としては、例えばBaMgAl10O17:Eu2+、CaMgSi2O6:Eu2+、Ba3MgSi2O8:Eu2+、Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+などが挙げられる。緑色蛍光体としては、例えば(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu2+、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu2+,Mn2+が挙げられる。黄色蛍光体としては、例えば(Sr,Ba)2SiO4:Eu2+、(Y,Gd)3Al5O12:Ce3+、α-Ca-SiAlON:Eu2+が挙げられる。
【0099】
赤色蛍光体は、一次光の反射光や、緑色蛍光体及び黄色蛍光体の少なくとも一方の出射光により励起され、赤色光を出射する。赤色蛍光体は、600nm~650nmの波長領域に発光ピークを持つものである。赤色蛍光体としては、例えばSr2Si5N8:Eu2+、CaAlSiN3:Eu2+、SrAlSi4N7:Eu2+、CaS:Eu2+、La2O2S:Eu3+、Y3Mg2(AlO4)(SiO4)2:Ce3+が挙げられる。
【0100】
図6に示すように、LEDモジュール30の出射面側には、光学フィルタ32が配置されている。そして、光源31から出射された一次光L1の一部は、波長変換部材34及び光学フィルタ32を透過する。一方、一次光L1の一部は、上述したように光学フィルタ32で反射される。波長変換部材34の蛍光体35は、一次光L1によって励起され得るが、光学フィルタ32で反射された一次光L1の反射光Rによって励起されてもよい。すなわち、蛍光体35が一次光L1又は反射光Rのいずれか一方によって励起され、二次光L2を発してもよい。そして、光学フィルタ32を透過した透過光Tは、LEDモジュール30から出射される。
【0101】
波長変換部材34の蛍光体35が反射光Rで励起されると、反射光Rに対して長波長側にシフトした二次光L2が出射される。二次光L2は、光学フィルタ32によって反射されない波長を有する場合、光学フィルタ32を透過して外部に出射される。この場合、反射光Rは再利用されて外部に出射されるため、LEDモジュール30の発光効率を向上させることができる。
【0102】
[照明システム]
次に、本実施形態に係る照明システムについて説明する。本実施形態に係る照明システムは、発光装置を備える。
【0103】
図7では、照明システムの一例として、LEDモジュール30を備えたデスクスタンド40を示す。
図7に示すように、デスクスタンド40は、略円板状のベース41上に照明本体42が取り付けられている。照明本体42はアーム43を有し、アーム43の先端側の灯具44はLEDモジュール30を備える。照明本体42にはスイッチ45が設けられ、スイッチ45をオン・オフ操作することでLEDモジュール30の点灯状態が変更されるようになっている。
【0104】
図8(a)に示すように、灯具44は、略円筒状のベース部46と、LEDモジュール30と、カバー50とを備える。LEDモジュール30は、光源ユニット47と、配向制御部48と、光学フィルタ32からなるフィルタ49とを備える。
図8(b)に示すように、光源ユニット47は、回路基板33と、回路基板33に実装された光源31と、回路基板33の上に配置され、光源31を覆う波長変換部材34とを備えている。波長変換部材34は蛍光体35を含有している。配向制御部48は、光源ユニット47の光を所望の配光に制御するために用いられるものであり、本実施形態ではレンズを備えている。ただし、配向制御部48としては、レンズの他に、照明システムの構成によって反射板や導光板を有していてもよい。
【0105】
このように、本実施形態の照明システムは、耐久性に優れ、波長制御が容易なコロイド結晶構造体を用いているため、所望の分光特性を容易に得ることができる。つまり、本実施形態の照明システムは、例えば出射光が照射される紙面の白色度を高め、視認性を向上させることが可能となる。また、肌色を良好に見せ、さらに食材や植物の色を鮮やかに演出することも可能となる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例、比較例及び参考例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0107】
[実施例及び比較例]
実施例1及び2並びに比較例1及び2の試験サンプルを製造するに際し、次の原料を用いた。
(コロイド粒子)
シリカ粒子;平均粒子径(D50):180nm、粒子径の変動係数:5%
なお、シリカ粒子は、Stober法にて合成した。
(バインダー用モノマー)
・トリエチレングリコールジメタクリレートモノマー;新中村化学工業株式会社製、NKエステル3G
(光重合開始剤)
・2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン;BASF社製IRGACURE(登録商標)1173
(屈折率制御材用モノマー)
・トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー;新中村化学工業株式会社製、NKエステルA-TMPT
【0108】
(実施例1)
まず、含有量が28体積%になるように、シリカ粒子をバインダー用モノマー中に添加した。次に、室温(25℃)条件下において、20kHzの超音波を10分間印加することにより、シリカ粒子をモノマー中に分散させた。このようにして、コロイド粒子(シリカ粒子)がモノマー中に均一に分散したコロイド分散液を得た。
【0109】
次に、コロイド分散液に光重合開始剤を1.0質量%添加した。そして、この分散液を、室温(25℃)条件下において、200mm角で1.0mm厚のガラス基板にバーコーターを用いて塗布した。この際、バーコーターは、番手が#18のものを使用した。そして、得られた塗布膜に紫外光を照射してバインダー用モノマーを重合させることにより、ガラス基板上に層厚が約40μmのコロイド結晶層を形成した。
【0110】
次いで、光重合開始剤を1.0質量%添加した屈折率制御材用モノマーを、室温(25℃)条件下において、コロイド結晶層の表面にバーコーターを用いて塗布した。この際、バーコーターは、番手が#4のものを使用した。そして、得られた塗布膜に紫外光を照射して屈折率制御材用モノマーを重合させることにより、コロイド結晶層の表面に、層厚が約5μmの屈折率制御材を形成した。このようにして、ガラス基板上にコロイド結晶層を形成し、さらにコロイド結晶層上に屈折率制御材を形成した試験サンプルを得た。
【0111】
得られた試験サンプルに関し、バインダー用モノマーを重合して得られたアクリル樹脂の屈折率、及び屈折率制御材用モノマーを重合して得られたアクリル樹脂の屈折率を、光干渉法で測定した。具体的には、大塚電子株式会社製の反射分光膜厚計FE-3000を用い、測定波長を550nmとして、これらのアクリル樹脂の屈折率を測定した。その結果、バインダー用モノマーを重合して得られたアクリル樹脂の屈折率は、1.490であった。また、屈折率制御材用モノマーを重合して得られたアクリル樹脂の屈折率は、1.535であった。屈折率制御材の屈折率は、1.416(1.490×0.95)を超え、1.565(1.490×1.05)未満の範囲内にあることから、屈折率制御材は、バインダーとの屈折率差が5%未満であった。
【0112】
(比較例1)
屈折率制御材を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上にコロイド結晶層を形成した試験サンプルを得た。
【0113】
(実施例2)
まず、含有量が32体積%になるように、シリカ粒子をバインダー用モノマー中に添加した。次に、室温(25℃)条件下において、20kHzの超音波を10分間印加することにより、シリカ粒子をモノマー中に分散させた。このようにして、コロイド粒子(シリカ粒子)がモノマー中に均一に分散したコロイド分散液を得た。
【0114】
次に、コロイド分散液に光重合開始剤を1.0質量%添加した。そして、この分散液を、室温(25℃)条件下において、200mm角で1.0mm厚のポリメチルメタクリレート(PMMA)基板にバーコーターを用いて塗布した。この際、バーコーターは、番手が#18のものを使用した。そして、得られた塗布膜に紫外光を照射してバインダー用モノマーを重合させることにより、PMMA基板上に層厚が約40μmのコロイド結晶層を形成した。
【0115】
次いで、厚みが1mmであり、ポリメチルメタクリレートからなる押出板を準備した。そして、コロイド結晶層の表面に押出板を積層した後、真空ラミネーターを用いて真空ラミネート処理を施した。このようにして、PMMA基板上にコロイド結晶層を形成し、さらにコロイド結晶層上に屈折率制御材を形成した試験サンプルを得た。
【0116】
得られた試験サンプルに関し、バインダー用モノマーを重合して得られたアクリル樹脂の屈折率、及びポリメチルメタクリレートからなる押出板の屈折率を、実施例1と同じ光干渉法で測定した。その結果、バインダー用モノマーを重合して得られたアクリル樹脂の屈折率は、1.490であった。また、ポリメチルメタクリレートからなる押出板の屈折率は、1.489であった。押出板の屈折率は、1.416(1.490×0.95)を超え、1.565(1.490×1.05)未満の範囲内にあることから、屈折率制御材は、バインダーとの屈折率差が5%未満であった。
【0117】
(比較例2)
屈折率制御材を形成しなかったこと以外は実施例2と同様にして、PMMA基板上にコロイド結晶層を形成した試験サンプルを得た。
【0118】
[実施例及び比較例の試験サンプルの評価]
(反射スペクトル測定)
上記のようにして得られた実施例1及び2並びに比較例1及び2の試験サンプルの反射スペクトルを、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製UV-2600)を用いて測定した。
図9では実施例1及び比較例1の試験サンプルの反射スペクトルを示し、
図10では実施例2及び比較例2の試験サンプルの反射スペクトルを示す。
【0119】
図9に示すように、比較例1の試験サンプルは、590nm付近、620nm付近、670nm付近に、反射率が20%未満の反射ピークを有しているのに対して、実施例1の試験サンプルは、これらの反射ピークが存在しないことが分かる。そのため、屈折率制御材を設けることにより、副ピークに起因した演色性の低下を抑制できることが分かる。また、実施例1における560nm付近の主ピークの反射率は比較例1と同等であることから、屈折率制御材を設けた場合でも反射率の低下が生じ難いことが分かる。
【0120】
図10に示すように、比較例2の試験サンプルは、575nm付近、600nm付近、640nm付近に、反射率が20%未満の反射ピークを有しているのに対して、実施例2の試験サンプルは、これらの反射ピークが存在しないことが分かる。そのため、屈折率制御材を設けることにより、副ピークに起因した演色性の低下を抑制できることが分かる。また、実施例2における530nm付近の主ピークの反射率は比較例2よりも高いことから、屈折率制御材を設けることにより、反射効率が高まることが分かる。
【0121】
(走査型電子顕微鏡観察)
実施例1の試験サンプルの断面を、走査型電子顕微鏡で観察した。
図11では、実施例1の試験サンプルの断面を示している。また、
図12では、実施例1の試験サンプルの断面における、コロイド結晶層3と屈折率制御材5の界面付近を拡大して示している。
図11に示すように、コロイド結晶層3の表面には、屈折率制御材5が直接接触するように形成されていることが分かる。さらに、
図12に示すように、コロイド結晶層3において、複数のコロイド粒子1は規則的に配列しており、さらに隣接するコロイド粒子1の間には、バインダー2が介在していることが分かる。
【0122】
(原子間力顕微鏡観察)
実施例1及び比較例1の試験サンプルの表面を、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。
図13では、実施例1の試験サンプルの表面を原子間力顕微鏡で観察した結果を示しており、
図14では、比較例1の試験サンプルの表面を原子間力顕微鏡で観察した結果を示している。
【0123】
図13に示すように、実施例1の試験サンプルの表面は、凹凸が存在するものの、コロイド結晶の規則配列構造に由来する規則的な凹凸は存在しないことが分かる。これに対して、
図14に示すように、比較例1の試験サンプルの表面は、コロイド粒子の規則配列構造に由来する規則的な微細凹凸構造が存在することが分かる。そのため、
図9及び
図14の結果から、規則的な微細凹凸構造により反射光が回折又は干渉し、波長590nm付近、620nm付近、670nm付近に反射ピークが発生すると推測される。また、
図9及び
図13の結果から、コロイド粒子の規則配列構造に由来する規則的な微細凹凸構造を屈折率制御材で埋めることにより、反射光の回折及び干渉が抑制できることが分かる。
【0124】
[参考例]
参考例の試験サンプルを製造するに際し、次の原料を用いた。
(コロイド粒子)
・シリカ粒子1;平均粒子径(D50):150nm、粒子径の変動係数:5%
・シリカ粒子2;平均粒子径(D50):180nm、粒子径の変動係数:5%
なお、シリカ粒子1及び2は、Stober法にて合成した。
(バインダー用モノマー、光重合開始剤)
バインダー用モノマー及び光重合開始剤は、実施例1と同じものを使用した。
【0125】
まず、含有量が30体積%になるように、シリカ粒子1をバインダー用モノマー中に添加した。次に、室温(25℃)条件下において、20kHzの超音波を10分間印加することにより、シリカ粒子1をバインダー用モノマー中に分散させた。このようにして、コロイド粒子(シリカ粒子1)がバインダー用モノマー中に均一に分散したコロイド分散液1を得た。
【0126】
同様に、含有量が30体積%になるように、シリカ粒子2をバインダー用モノマー中に添加した。次に、室温(25℃)条件下において、20kHzの超音波を10分間印加することにより、シリカ粒子2をバインダー用モノマー中に分散させた。このようにして、コロイド粒子(シリカ粒子2)がバインダー用モノマー中に均一に分散したコロイド分散液2を得た。
【0127】
次に、コロイド分散液1とコロイド分散液2とを3:1の質量比で混合し、さらに光重合開始剤を1.0質量%添加した。そして、この分散液を、室温(25℃)条件下において、200mm角で1.0mm厚のガラス基板にバーコーターを用いて塗布した。この際、バーコーターは、番手が#18のものを使用した。そして、得られた塗布膜に紫外光を照射してモノマーを重合させることにより、ガラス基板上に層厚が約40μmのコロイド構造層を形成した試験サンプルを得た。
【0128】
[参考例の試験サンプルの評価]
(反射スペクトル測定)
上記のようにして得られた参考例の試験サンプルの反射スペクトルを、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製UV-2600)を用いて測定した。
図15では参考例の試験サンプルの反射スペクトルを示す。なお、
図15には、コロイド分散液1及びコロイド分散液2にそれぞれ光重合開始剤を1.0質量%添加した後、参考例と同様にしてコロイド結晶体を形成したサンプルの反射スペクトルも示す。
【0129】
図15に示すように、参考例の試験サンプルの反射ピーク波長は、コロイド粒子としてシリカ粒子1のみを含むコロイド結晶の反射ピーク波長と、コロイド粒子としてシリカ粒子2のみを含むコロイド結晶の反射ピーク波長との間に存在する。そのため、シリカ粒子1とシリカ粒子2とを混和させてコロイド結晶化することにより、反射ピーク波長を制御できることが分かる。
【0130】
さらに
図15に示すように、参考例の試験サンプルの反射ピークは反射率が55%を超えており、シリカ粒子1のみを含むコロイド結晶の反射ピーク、及びシリカ粒子2のみを含むコロイド結晶の反射ピークよりも反射率が高いことが分かる。そのため、複数種類のコロイド粒子を使用してコロイド構造層を形成することにより、光反射能の低下を抑制できることが分かる。
【0131】
(走査型電子顕微鏡観察)
参考例の試験サンプルの表面を走査型電子顕微鏡で観察した。
図16では、参考例の試験サンプルの表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示している。
図16に示すように、平均粒子径が150nmのシリカ粒子1(1B)及び平均粒子径が180nmのシリカ粒子2(1A)は、両方とも規則的に配列していることが分かる。また、シリカ粒子1とシリカ粒子2の数の割合が約3:1となっていることも分かる。そして、参考例の試験サンプルでは、シリカ粒子1とシリカ粒子2がそれぞれ分離して凝集することにより共晶状態となっているわけではなく、シリカ粒子1とシリカ粒子2が混和して固溶体のような状態となっていることが分かる。
【0132】
図17では、参考例の試験サンプルの断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示し、
図18では、
図17における符号Bの領域を拡大して示している。
図18に示すように、試験サンプルの断面でも、シリカ粒子1(1B)とシリカ粒子2(1A)が共に規則的に配列していることが分かる。また、シリカ粒子1とシリカ粒子2がそれぞれ分離して凝集することにより共晶状態となっているわけではなく、シリカ粒子1とシリカ粒子2が混和して固溶体のような状態となっていることも分かる。
【0133】
このように、参考例の試験サンプルでは、シリカ粒子1とシリカ粒子2は、互いに混和してコロイド結晶化しており、さらにバインダーであるポリマー中で三次元規則配列構造を形成していることが分かる。そして、参考例の試験サンプルに関し、実施例1及び2と同様に、コロイド構造層の表面に屈折率制御材を形成することにより、反射スペクトルにおいて副ピークの発生を防ぎ、演色性及び反射効率の低下を抑制できることは容易に推測できる。
【0134】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。具体的には、コロイド結晶構造体において、コロイド結晶層は単層であってもよく、複数層であってもよい。同様に、コロイド結晶構造体において、コロイド構造層は単層であってもよく、複数層であってもよい。また、コロイド結晶構造体において、コロイド結晶層とコロイド構造層とを積層して、多重構造としてもよい。
【0135】
特願2019-009444号(出願日:2019年1月23日)の全内容は、ここに援用される。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本開示によれば、光学フィルタに用いた場合でも、演色性及び反射効率の低下を抑制することが可能なコロイド結晶構造体、並びに当該コロイド結晶構造体を用いた発光装置及び照明システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 コロイド粒子
1A 第1のコロイド粒子
1B 第2のコロイド粒子
2 バインダー
3 コロイド結晶層
3A コロイド構造層
3a 凸部
3b 凹部
4 基板
5 屈折率制御材
10,10A コロイド結晶構造体
32 光学フィルタ
34 波長変換部材