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特許7186400ゲノム的に再コードした生物におけるセレノ-生物製剤の製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】ゲノム的に再コードした生物におけるセレノ-生物製剤の製造
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/17 20060101AFI20221202BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20221202BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221202BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20221202BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221202BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C12N15/17 ZNA
A61K38/28
A61P3/10
C07K14/62
C12N1/21
C12P21/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019531589
(86)(22)【出願日】2017-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017049354
(87)【国際公開番号】W WO2018045018
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】62/381,316
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/537,986
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マンデル, ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】タイヤー, ロス
(72)【発明者】
【氏名】エリントン, アンドリュー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ストレンジズ, ピーター ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ, クリストファー ジェイ.
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/009868(WO,A1)
【文献】特表2011-504187(JP,A)
【文献】52nd Japanese Peptide Symposium 第52回ペプチド討論会 講演要旨集,2015年,Vol.52,P.78, No.P-021
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/17
C12N 1/21
C12P 21/00
C07K 14/62
A61P 3/10
A61K 38/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのセレノシステイン残基を含む修飾ヒトインスリンタンパク質であって、少なくとも2つの前記セレノシステイン残基の間に少なくとも1つのジセレニド結合を有しており、前記タンパク質が、配列番号1630の残基90~110の配列またはその配列と少なくとも90%が同一である配列を有するA鎖と、配列番号1630の残基25~54の配列またはその配列と少なくとも90%が同一である配列を有するB鎖とを含み、前記少なくとも1つのジセレニド結合がA鎖内に発生する、前記修飾ヒトインスリンタンパク質。
【請求項2】
A鎖とB鎖との間の少なくとも1つのジセレニド結合をさらに含む、請求項1に記載の修飾ヒトインスリンタンパク質。
【請求項3】
組換え細菌において製造される、請求項2に記載の修飾ヒトインスリンタンパク質。
【請求項4】
セレノシステインtRNAが、前記細菌のアンバーコドンを認識するように前記組換え細菌が再コードされる、請求項3に記載の修飾ヒトインスリンタンパク質。
【請求項5】
医薬として許容される担体中に請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質を含む組成物。
【請求項6】
対象を処置する際に使用するための組成物であって、医薬として許容される担体中に請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質を含む、組成物。
【請求項7】
前記組成物が、皮下投与のために製剤化されている、請求項またはのいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるようにゲノム的に再コードした細菌宿主であって、前記細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていない前記コドンで置換されたヒトインスリンタンパク質の変異型をコードする構築されたDNA配列を含み、前記変異型は、配列番号1630の残基90~110の配列またはその配列と少なくとも90%が同一である配列を有するA鎖と、配列番号1630の残基25~54の配列またはその配列と少なくとも90%が同一である配列を有するB鎖とを含む、前記細菌宿主。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年8月30日に出願された米国仮特許出願第62/381,316号、及び、2017年7月28日に出願された同第62/537,986号の利益を主張するものであり、それら出願の全内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0002】
ファイル名称「UTFB_P1174WO.txt」で格納され、(マイクロソフトウィンドウズ(登録商標)で測定した)3305KBであり、かつ、2017年8月30日に作成をした配列表を、本明細書と共に電子的に提出をするものであり、そして、その内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0003】
本発明は、Office of Naval Researchが付与した認可番号第FA9550-10-1-0169号、及び、the Space and Naval Warfare Systems Center,Pacificが付与した認可番号第N66001-14-2-4051号で特定される政府支援の下で完成をした。わが国の政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0004】
本発明は、タンパク質生物製剤の分野に関する。特に、本発明は、有益な特性を有するタンパク質生物製剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
モノクローナル抗体、タンパク質治療薬、及び、ワクチンを含むタンパク質生物製剤は、がん、感染症、ならびに、免疫疾患、及び、その他の疾患に対する有効な治療法であり、数10億ドル規模の市場を形成している。しかし、ほとんどの生物製剤は、微生物細胞では形成できない化学結合、すなわち、ジスルフィド類によって安定化されているため、大部分が高価な哺乳類細胞系で製造しなければならない。さらに、ジスルフィド結合は、化学的な還元を受けやすいため、血清や細胞内などの環境では切断される可能性があるので、多くの生物製剤の半減期を短くする。
【0006】
大多数の生物製剤、すなわち、98%の治療用モノクローナル抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物系で製造される。CHO細胞は、ヒト様グリコシル化を生じるという利点を有しており、また、ジスルフィドを担持したタンパク質を高収率で製造するために必要な折り畳みシャペロンと酸化還元機構とを有している。しかしながら、CHO細胞は、微生物施設よりも多額の設備投資を実質的に必要としており、製造期間の長期化(数日に対して数週間~数ヶ月)を招き、消耗品(例えば、培地)の費用が何倍にも高騰し、さらには、内因性レトロウイルス様粒子を除去するための追加の精製工程を必要とする。
【0007】
細菌においてジスルフィドを担持した生物製剤を製造する2つの既存のアプローチがある。第1は、細胞内の化学的環境を変化させて、酸化させ、ジスルフィド形成を許容させることであるが、この変化は、中枢代謝に劇的な影響を及ぼすものであり、また、タンパク質の生産だけでなく発酵性能をも損ない得る。第2のアプローチは、ペリプラズムと呼ばれる小さな酸化コンパートメントに対して新生の生物製剤を分泌することである。このアプローチでは、分泌過程でのエネルギー損失が故に収率が低くなり、また、凝集によって、産物の損失にも影響が非常に及びやすくなる。これらの不都合が故に、いずれのアプローチも、ジスルフィドを担持した生物製剤の大規模生産に一般的に使われることはなく、高価な哺乳類バイオプロセスが幅をきかせている。重要なことに、いずれのアプローチも、ジスルフィド結合が、細胞質または血液などの環境における還元剤に対して敏感である、という本質的な問題は解決していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当該技術分野において、費用対効果の高い方法でタンパク質生物製剤を製造する方法が依然として待望されている。当該技術分野において、血液及び細胞質での安定なタンパク質生物製剤の製造方法が依然として待望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様では、少なくとも2つのセレノシステイン残基を含むタンパク質であって、少なくとも2つの当該セレノシステイン残基の間に少なくとも1つのジセレニド結合を有するタンパク質を提供する。当該タンパク質は、配列番号1~1631、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む。当該タンパク質は、配列番号1~1630、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み得る。当該タンパク質は、配列番号1631の配列と、当該配列と少なくとも80%が同一である配列とを含み得る。
【0010】
本発明の別の態様では、(i)配列番号472~801、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖配列、ならびに、(ii)配列番号812~1131、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む抗体分子を提供する。当該抗体分子での0~十五対のセレノシステイン残基が、0~十五対のシステイン残基と置換される。当該抗体は、当該重鎖と当該軽鎖との間に少なくとも1つのジセレニド結合を含み得る。当該抗体は、当該重鎖内、及び/または、当該軽鎖内に少なくとも1つの鎖内ジセレニド結合を含み得る。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、修飾インスリンタンパク質を提供する。同タンパク質は、(i)配列番号1142、1144、1146、1148、1150、1152、及び、1154、ならびに、当該配列と少なくとも80%が同一である配列から選択される配列を有するA鎖、ならびに、(ii)配列番号1143、1145、1147、1149、1151、1153、及び、1155、ならびに、当該配列と少なくとも80%が同一である配列から選択される配列を有するB鎖を含む。当該タンパク質は、当該A鎖と当該B鎖との間に少なくとも1つのジセレニド結合を含む。
【0012】
本発明の1つの態様では、割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるように、ゲノム的に再コード化した細菌宿主を提供する。当該細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていない当該コドンで置き換えられているタンパク質の変異型をコードする構築されたDNA配列を含む。当該変異型は、配列番号1~1631、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む。当該変異型は、配列番号1~1630、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み得る。当該変異型は、配列番号1631の配列、及び、当該配列と少なくとも80%同一の配列を含み得る。
【0013】
本発明の別の態様では、細菌宿主を提供する。当該細菌宿主は、割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるように、ゲノム的に再コードしている。当該細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていないコドンで置換されているモノクローナル抗体の変異型をコードする構築されたDNA配列を含む。当該モノクローナル抗体は、VL鎖を含んでおり、そして、当該VL鎖の第23位と第88位は、セレノシステイン残基で置換されている。当該モノクローナル抗体は、VH鎖を含んでおり、そして、当該VH鎖の第22位と第92位は、セレノシステイン残基で置換されている。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、タンパク質の変異型を製造する方法を提供する。当該タンパク質は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、また、当該変異型は、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有する。割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるようにゲノム的に再コードしている細菌宿主を培養する。当該細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていない当該コドンで置換されているタンパク質の変異型をコードする構築されたDNA配列を含む。当該培養は、当該タンパク質の当該変異型を発現する条件下で行う。当該変異型は、配列番号1~1631、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む。当該変異型は、配列番号1~1630、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み得る。当該変異型は、配列番号1631の配列と、当該配列と少なくとも80%同一の配列とを含み得る。
【0015】
本発明の1つの態様では、モノクローナル抗体の変異型を製造する方法を提供する。当該モノクローナル抗体は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、そして、当該変異型は、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有する。割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるようにゲノム的に再コードしている細菌宿主を培養する。当該細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていないコドンで置換されている当該モノクローナル抗体の当該変異型をコードする構築されたDNA配列を含む。当該培養は、当該モノクローナル抗体の当該変異型を発現する条件下で行う。当該モノクローナル抗体は、VL鎖を含んでおり、そして、VL鎖の第23位と第88位は、セレノシステイン残基で置換されている。当該モノクローナル抗体は、VH鎖を含んでおり、そして、当該VH鎖の第22位と第92位は、セレノシステイン残基で置換されている。
【0016】
本発明の別の態様では、タンパク質の変異型で哺乳動物を処置する方法を提供する。当該タンパク質の当該変異型を、当該哺乳動物に投与する。当該タンパク質は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有する。当該変異型は、システイン残基同士の間のジスルフィド結合の代わりに、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有する。当該変異型は、配列番号1~1631、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む。当該変異型は、配列番号1~1630、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み得る。当該変異型は、配列番号1631の配列と、当該配列と少なくとも80%が同一である配列を含み得る。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、モノクローナル抗体の変異型で哺乳動物を治療する方法を提供する。当該モノクローナル抗体の当該変異型を、当該哺乳動物に投与する。当該モノクローナル抗体は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、そして、当該変異型は、システイン残基間のジスルフィド結合の代わりにセレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有する。当該モノクローナル抗体は、VL鎖を含んでおり、そして、当該VL鎖の第23位と第88位は、セレノシステイン残基で置換されている。当該モノクローナル抗体は、VH鎖を含んでおり、そして、当該VH鎖の第22位と第92位は、セレノシステイン残基で置換されている。
【0018】
本発明の1つの態様では、構築された核酸分子とtRNA分子とを含むインビトロ翻訳系を提供する。当該構築された核酸分子は、一対のシステイン残基が、一対のセレノシステイン残基と置換されているタンパク質の変異型をコードする。当該変異型は、配列番号1~1631、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む。当該変異型は、配列番号1~1630、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み得る。当該変異型は、配列番号1631の配列と、当該配列と少なくとも80%同一の配列とを含み得る。当該核酸分子は、割り当てがされていないコドンを含むか、または、同族コドン抑制を利用して、セレノシステイン(複数可)を成長しているポリペプチドに取り込む。当該tRNA分子は、割り当てがされていない当該コドンに対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAである。
【0019】
本発明の他の態様では、構築された核酸分子、及び、tRNA分子を含むインビトロ翻訳系を提供する。当該構築された核酸分子は、VL鎖を含むモノクローナル抗体の変異型をコードする。当該VL鎖の第23位と第88位は、セレノシステイン残基で置換されている。当該モノクローナル抗体は、VH鎖を含んでおり、当該VH鎖の第22位と第92位は、セレノシステイン残基で置換されている。当該構築された核酸分子は、当該核酸において割り当てがされていないコドンと置換している少なくとも一対のシステインコドンを含む。当該tRNA分子は、割り当てがされていない当該コドンに相補的なアンチコドンを有するセレノシステインtRNAである。
【0020】
本発明のさらに別の態様では、タンパク質の変異型を製造するための方法を提供する。当該タンパク質は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、当該変異型は、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有する。当該タンパク質の当該変異型をコードする構築された核酸配列を翻訳する。当該構築された核酸配列は、割り当てがされていないコドンと置換している一対のシステインコドンを含む。当該変異型は、配列番号1~1631、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む。当該変異型は、配列番号1~1630、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み得る。当該変異型は、配列番号1631の配列と、当該配列と少なくとも80%が同一である配列とを含み得る。当該翻訳の工程は、割り当てがされていない当該コドンに対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAを使用する。
【0021】
本発明の1つの態様では、試料を試験する方法を提供する。試料を、タンパク質の変異型と接触させて、反応混合物を形成する。当該タンパク質は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有する。当該変異型は、システイン残基同士の間のジスルフィド結合の代わりに、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有する。当該変異型は、配列番号1~1631、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む。当該変異型は、配列番号1~1630、及び、当該配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み得る。当該変異型は、配列番号1631の配列と、当該配列と少なくとも80%が同一である配列とを含み得る。当該反応混合物を試験して、当該タンパク質の当該変異型に結合した特異的結合パートナーを検出する。
【0022】
本発明の別の態様では、試料を試験するための方法を提供する。試料を、モノクローナル抗体の変異型と接触させて、反応混合物を形成する。当該モノクローナル抗体は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有する。当該変異型は、システイン残基同士の間のジスルフィド結合の代わりに、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有する。当該モノクローナル抗体は、VL鎖を含んでおり、そして、当該VL鎖の第23位と第88位は、セレノシステイン残基で置換されている。当該モノクローナル抗体は、VH鎖を含んでおり、そして、当該VH鎖の第22位と第92位は、セレノシステイン残基で置換されている。当該反応混合物を試験して、当該タンパク質の当該変異型に結合した特異的結合パートナーを検出する。
【0023】
本発明のさらに別の態様では、修飾抗体を提供する。同修飾抗体は、少なくとも1つのジセレニド結合を含む。
【0024】
本発明の1つの態様では、修飾インスリンタンパク質を提供する。同修飾インスリンタンパク質は、セレノシステインに置換する少なくとも1つのシステインを有する配列番号1630の残基90~110を有するA鎖、セレノシステインに置換する少なくとも1つのシステインを有する配列番号1630の残基25~54を有するB鎖、及び、当該A鎖と当該B鎖との間の少なくとも1つのジセレニド架橋を含む。
【0025】
本発明の別の態様は、天然のヒトインスリンタンパク質にある2つのシステイン残基を置換する少なくとも2つのセレノシステイン残基を含む修飾ヒトインスリンタンパク質である。同タンパク質は、少なくとも2つの当該セレノシステイン残基の間に少なくとも1つのジセレニド結合を有する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
少なくとも2つのセレノシステイン残基を含むタンパク質であって、少なくとも2つの前記セレノシステイン残基の間に少なくとも1つのジセレニド結合を有しており、前記タンパク質が、配列番号1~1630、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む前記タンパク質。
(項目2)
少なくとも2つのセレノシステイン残基を含むタンパク質であって、少なくとも2つの前記セレノシステイン残基の間に少なくとも1つのジセレニド結合を有しており、前記タンパク質が、配列番号1631の配列、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目3)
配列番号472~801、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖配列と、配列番号812~1131、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖配列とを含む抗体分子であって、前記抗体分子でのセレノシステイン残基の0~十五対が、0~十五対のシステイン残基で置換されており、かつ、前記抗体が、前記重鎖と前記軽鎖との間に少なくとも1つのジセレニド結合を含む、前記抗体分子。
(項目4)
配列番号1142、1144、1146、1148、1150、1152、及び、1154から選択される配列、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列を有するA鎖、配列番号1143、1145、1147、1149、1151、1153、及び、1155から選択される配列、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列を有するB鎖を含む修飾インスリンタンパク質であって、前記タンパク質が、前記A鎖と前記B鎖との間に少なくとも1つのジセレニド結合を含む、前記修飾インスリンタンパク質。
(項目5)
割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるようにゲノム的に再コードした細菌宿主であって、前記細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていない前記コドンで置換されたタンパク質の変異型をコードする構築されたDNA配列を含み、前記変異型は、配列番号1~1630、及び、前記前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む、前記細菌宿主。
(項目6)
割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるようにゲノム的に再コードした細菌宿主であって、前記細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていない前記コドンで置換されたタンパク質の変異型をコードする構築されたDNA配列を含み、前記変異型は、配列番号1631の配列、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列を含む、項目5に記載の前記細菌宿主。
(項目7)
前記変異型が、モノクローナル抗体である、項目5または6に記載の細菌宿主。
(項目8)
前記モノクローナル抗体が、配列番号472~801、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖配列を含む、項目7に記載の細菌宿主。
(項目9)
前記モノクローナル抗体が、配列番号812~1131、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、項目7に記載の細菌宿主。
(項目10)
前記モノクローナル抗体が、配列番号16~243、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む、項目7に記載の細菌宿主。
(項目11)
前記モノクローナル抗体が、配列番号244~471、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖可変領域配列を含む、項目7に記載の細菌宿主。
(項目12)
前記モノクローナル抗体が、配列番号1~15、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される定常鎖配列をさらに含む、項目10または11に記載の細菌宿主。
(項目13)
前記変異型が、治療用タンパク質である、項目5または6に記載の細菌宿主。
(項目14)
前記変異型が、予防用タンパク質である、項目5または6に記載の細菌宿主。
(項目15)
割り当てがされていない前記コドンが、UAGである、項目5または6に記載の細菌宿主。
(項目16)
割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるようにゲノム的に再コードした細菌宿主であって、前記細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていない前記コドンで置換されたモノクローナル抗体の変異型をコードする構築されたDNA配列を含み、前記モノクローナル抗体は、VL鎖を含んでおり、かつ、前記VL鎖の第23位と第88位が、セレノシステイン残基で置換されており、及び、前記モノクローナル抗体は、VH鎖を含んでおり、かつ、前記VH鎖の第22位と第92位が、セレノシステイン残基で置換されている、前記細菌宿主。
(項目17)
割り当てがされていない前記コドンが、UAGである、項目16に記載の細菌宿主。
(項目18)
タンパク質の変異型を製造する方法であって、前記タンパク質が、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型が、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記方法は、
割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるように、ゲノム的に再コードした細菌宿主を培養することを含み、前記細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていない前記コドンで置換されている前記タンパク質の変異型をコードする構築されたDNA配列を含み、前記培養は、前記タンパク質の変異型が発現される条件下であり、前記変異型は、配列番号1~1630、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む、前記方法。
(項目19)
タンパク質の変異型を製造する項目18に記載の方法であって、前記タンパク質が、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型が、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記方法は、
割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるように、ゲノム的に再コードした細菌宿主を培養することを含み、前記細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていない前記コドンで置換されている前記タンパク質の変異型をコードする構築されたDNA配列を含み、前記培養は、前記タンパク質の変異型が発現される条件下であり、前記変異型は、配列番号1631、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列を含む、項目18に記載
の方法。
(項目20)
培地または前記細菌宿主の細胞に由来する前記タンパク質の前記変異型を回収する工程をさらに含む、項目18または19に記載の方法。
(項目21)
前記変異型が、モノクローナル抗体である、項目18または19に記載の方法。
(項目22)
前記モノクローナル抗体が、配列番号472~801、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖配列を含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記モノクローナル抗体が、配列番号812~1131、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記モノクローナル抗体が、配列番号16~243、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記モノクローナル抗体が、配列番号244~471、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖可変領域配列を含む、項目21に記載の方法。
(項目26)
前記モノクローナル抗体が、配列番号1~15、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される定常鎖配列をさらに含む、項目24または25に記載の方法。
(項目27)
前記変異型が、治療用タンパク質である、項目18または19に記載の方法。
(項目28)
前記変異型が、予防用タンパク質である、項目18または19に記載の方法。
(項目29)
割り当てがされていない前記コドンが、UAGである、項目18または19に記載の方法。
(項目30)
モノクローナル抗体の変異型を製造する方法であって、前記モノクローナル抗体が、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型が、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記方法は、
割り当てがされていないコドンが、対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAによって認識されるように、ゲノム的に再コードした細菌宿主を培養することを含み、前記細菌宿主は、一対のシステインコドンが、割り当てがされていない前記コドンで置換されている前記モノクローナル抗体の変異型をコードする構築されたDNA配列を含み、前記培養は、前記モノクローナル抗体の変異型が発現される条件下であり、前記モノクローナル抗体は、VL鎖を含んでおり、かつ、前記VL鎖の第23位と第88位が、セレノシステイン残基で置換されており、及び、前記モノクローナル抗体は、VH鎖を含んでおり、かつ、前記VH鎖の第22位と第92位が、セレノシステイン残基で置換されている、前記方法。
(項目31)
割り当てがされていない前記コドンが、UAGである、項目30に記載の方法。
(項目32)
タンパク質の変異型で哺乳動物を処置する方法であって、
前記タンパク質の前記変異型を前記哺乳動物に投与する工程を含み、前記タンパク質は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型は、システイン残基同士の間の前記ジスルフィド結合の代わりにセレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記変異型は、配列番号1~1630、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群より選択される配列を含む、前記方法。
(項目33)
タンパク質の変異型で哺乳動物を処置する項目32に記載の方法であって、
前記タンパク質の前記変異型を前記哺乳動物に投与する工程を含み、前記タンパク質は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型は、システイン残基同士の間の前記ジスルフィド結合の代わりにセレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記変異型は、配列番号1631、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列を含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記投与が、静脈内投与である、項目32または33に記載の方法。
(項目35)
前記タンパク質が、モノクローナル抗体である、項目32または33に記載の方法。
(項目36)
前記タンパク質が、治療用タンパク質である、項目32または33に記載の方法。
(項目37)
前記タンパク質が、予防用タンパク質である、項目32または33に記載の方法。
(項目38)
モノクローナル抗体の変異型で哺乳動物を処置する方法であって、
前記モノクローナル抗体の前記変異型を前記哺乳動物に投与する工程を含み、前記モノクローナル抗体は、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型は、システイン残基同士の間の前記ジスルフィド結合の代わりにセレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記モノクローナル抗体は、VL鎖を含んでおり、かつ、前記VL鎖の第23位と第88位が、セレノシステイン残基で置換されており、及び、前記モノクローナル抗体は、VH鎖を含んでおり、かつ、前記VH鎖の第22位と第92位が、セレノシステイン残基で置換されている、前記方法。
(項目39)
前記抗体分子での少なくとも一対のセレノシステイン残基が、一対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体。
(項目40)
前記抗体分子での一対のセレノシステイン残基が、一対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目41)
前記抗体分子での二対のセレノシステイン残基が、二対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目42)
前記抗体分子での三対のセレノシステイン残基が、三対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目43)
前記抗体分子での四対のセレノシステイン残基が、四対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目44)
前記抗体分子での五対のセレノシステイン残基が、五対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目45)
前記抗体分子での六対のセレノシステイン残基が、六対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目46)
前記抗体分子での七対のセレノシステイン残基が、七対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目47)
前記抗体分子での八対のセレノシステイン残基が、八対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目48)
前記抗体分子での九対のセレノシステイン残基が、九対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目49)
前記抗体分子での十対のセレノシステイン残基が、十対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目50)
前記抗体分子での十一対のセレノシステイン残基が、十一対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目51)
前記抗体分子での十二対のセレノシステイン残基が、十二対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目52)
前記抗体分子での十三対のセレノシステイン残基が、十三対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目53)
前記抗体分子での十四対のセレノシステイン残基が、十四対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目54)
前記抗体分子での十五対のセレノシステイン残基が、十五対のシステイン残基で置換されている、項目3に記載の抗体分子。
(項目55)
構築された核酸分子とtRNA分子とを含むインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系であって、構築された前記核酸分子が、一対のシステイン残基が一対のシステイン残基で置換されたタンパク質の変異型をコードし、前記変異型が、配列番号1~1631、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み、前記核酸分子が、割り当てがされていないコドンドンを含み、あるいは、同族コドン抑制を利用して、セレノシステイン残基を取り込み、前記tRNA分子は、割り当てがされていない前記コドンに対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAである、前記インビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目56)
前記変異型が、モノクローナル抗体である、項目55に記載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目57)
前記モノクローナル抗体が、配列番号472~801、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖配列を含む、項目55に記載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目58)
前記モノクローナル抗体が、配列番号812~1131、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、項目55に記載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目59)
前記モノクローナル抗体が、配列番号16~243、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む、項目55に記
載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目60)
前記モノクローナル抗体が、配列番号244~471、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖可変領域配列を含む、項目55に記載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目61)
前記モノクローナル抗体が、配列番号1~15、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される定常鎖配列をさらに含む、項目55に記載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目62)
前記変異型が、治療用タンパク質である、項目55に記載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目63)
前記変異型が、予防用タンパク質である、項目55に記載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目64)
割り当てがされていない前記コドンが、UAGである、項目55に記載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目65)
構築された核酸分子とtRNA分子とを含むインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系であって、前記構築された核酸分子が、モノクローナル抗体の変異型をコードするものであって、同モノクローナル抗体は、VL鎖を含んでおり、かつ、前記VL鎖の第23位と第88位はセレノシステイン残基で置換されており、そして、前記モノクローナル抗体はVH鎖を含んでおり、かつ、前記VH鎖の第22位と第92位はセレノシステイン残基で置換されており、前記構築された核酸分子は、前記核酸分子において割り当てがされていないコドンと置換された少なくとも一対のシステインコドンを含み、前記tRNA分子は、割り当てがされていない前記コドンに相補的なアンチコドンを有するセレノシステインtRNAである、前記インビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目66)
割り当てがされていない前記コドンが、UAGである、項目65に記載のインビトロ翻訳系またはインビトロ転写及び翻訳系。
(項目67)
タンパク質の変異型を製造する方法であって、前記タンパク質が、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型が、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記方法は、
前記タンパク質の前記変異型をコードする構築された核酸配列をインビトロで翻訳することを含み、前記構築された核酸配列において、一対のシステインコドンが、割り当てがされていないコドンで置換されており、前記変異型は、配列番号1~1630、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み、前記翻訳の工程が、割り当てがされていない前記コドンに対応するアンチコドンを有するセレノシステインtRNAを使用する、前記方法。
(項目68)
タンパク質の変異型を製造する項目67に記載の方法であって、前記タンパク質が、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型が、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記方法は、
前記タンパク質の前記変異型をコードする構築された核酸配列をインビトロで翻訳することを含み、前記構築された核酸配列において、一対のシステインコドンが、割り当てがされていないコドンで置換されており、前記変異型は、配列番号1631、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含み、前記翻訳の工程が、割り当てがされていない前記コドンに対応するアンチコドンを有するセレノシ
ステインtRNAを使用する、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記変異型が、モノクローナル抗体である、項目67または68に記載の方法。
(項目70)
前記モノクローナル抗体が、配列番号472~801、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖配列を含む、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記モノクローナル抗体が、配列番号812~1131、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、項目69に記載の方法。
(項目72)
前記モノクローナル抗体が、配列番号16~243、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む、項目69に記載の方法。
(項目73)
前記モノクローナル抗体が、配列番号244~471、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される軽鎖可変領域配列を含む、項目69に記載の方法。
(項目74)
前記モノクローナル抗体が、配列番号1~15、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される定常鎖配列をさらに含む、項目72または73に記載の方法。
(項目75)
前記変異型が、治療用タンパク質である、項目67または68に記載の方法。
(項目76)
前記変異型が、予防用タンパク質である、項目67または68に記載の方法。
(項目77)
割り当てがされていない前記コドンが、UAGである、項目67または68に記載の方法。
(項目78)
試料を試験する方法であって、
試料を、タンパク質の変異型と接触させて反応混合物を形成する工程であって、前記タンパク質が、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型が、システイン残基同士の間の前記ジスルフィド結合の代わりに、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記変異型は、配列番号1~1630、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列からなる群から選択される配列を含む、前記工程、及び
前記反応混合物を試験して、前記タンパク質の前記変異型に結合した特異的結合パートナーを検出する工程、
を含む前記方法。
(項目79)
試料を試験する項目78に記載の方法が、
試料を、タンパク質の変異型と接触させて反応混合物を形成する工程であって、前記タンパク質が、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型が、システイン残基同士の間の前記ジスルフィド結合の代わりに、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記変異型は、配列番号1631、及び、前記配列と少なくとも80%が同一である配列を含む、前記工程、及び
前記反応混合物を試験して、前記タンパク質の前記変異型に結合した特異的結合パートナーを検出する工程、
を含む項目78に記載の方法。
(項目80)
試料を試験する方法であって、
試料を、モノクローナル抗体の変異型と接触させて反応混合物を形成する工程であって、前記モノクローナル抗体が、システイン残基同士の間にジスルフィド結合を有しており、前記変異型が、システイン残基同士の間の前記ジスルフィド結合の代わりに、セレノシステイン残基同士の間にジセレニド結合を有しており、前記モノクローナル抗体は、VL鎖を含んでおり、かつ、前記VL鎖の第23位と第88位はセレノシステイン残基で置換されており、そして、前記モノクローナル抗体はVH鎖を含んでおり、かつ、前記VH鎖の第22位と第92位はセレノシステイン残基で置換されている、前記工程、及び
前記反応混合物を試験して、前記タンパク質の前記変異型に結合した特異的結合パートナーを検出する工程、
を含む前記方法。
(項目81)
少なくとも1つのジセレニド結合を含む修飾抗体。
(項目82)
前記ジセレニド結合が、存在する特異性が同じ抗体でのジスルフィド結合の位置にある、項目81に記載の修飾抗体。
(項目83)
前記ジセレニド結合が、分子間である、項目81に記載の修飾抗体。
(項目84)
IgA、IgD、IgE、IgG、及び、IgMからなる群から選択されるアイソタイプから選択される、項目81に記載の修飾抗体。
(項目85)
セレノシステインに置換する少なくとも1つのシステインを有する配列番号1630の残基90~110を有するA鎖、セレノシステインに置換する少なくとも1つのシステインを有する配列番号1630の残基25~54を有するB鎖、及び、前記A鎖と前記B鎖との間にある少なくとも1つのジセレニド結合を含む、修飾インスリンタンパク質。
(項目86)
天然のヒトインスリンタンパク質にある2つのシステイン残基を置換する少なくとも2つのセレノシステイン残基を含み、少なくとも2つの前記セレノシステイン残基の間に少なくとも1つのジセレニド結合を有する、修飾ヒトインスリンタンパク質。
(項目87)
組換え細菌において製造される、項目86に記載の修飾ヒトインスリンタンパク質。
(項目88)
セレノシステインtRNAが、前記細菌のアンバーコドンを認識するように前記組換え細菌が再コードされる、項目87に記載の修飾ヒトインスリンタンパク質。
【発明の効果】
【0026】
本明細書に接した当業者には自明であろうこれらの態様、及び、その他の態様は、ヒト及び動物の疾患の処置のための、ならびに、治療薬、診断薬、検査薬、及び、予防薬を製造及び使用するための方法及び産物を、当該技術分野に提供をする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ジセレニド結合とジスルフィド結合との特性の比較を示す。
図2】ジセレニド生物製剤が、ジスルフィド類よりも、血清における半減期を劇的に改善することを示す。
図3A】A~Bは、ノイズを除去した質量スペクトルを拡大したもの(図3A)と、10μMの抗-MS2 scFvの断片シーケンスマップ(図3B)とを示す。断片スペクトルを、S/N閾値が3であるXtractを使用してノイズを除去し、そして、ProSight Liteを使用して分析した。ジセレニド結合の形成は、マークしたセレノシステイン(U)残基同士の間の断片イオンの欠如として示される。セリン取り込みに対応する質量ピークは検出されなかった。
図3B】A~Bは、ノイズを除去した質量スペクトルを拡大したもの(図3A)と、10μMの抗-MS2 scFvの断片シーケンスマップ(図3B)とを示す。断片スペクトルを、S/N閾値が3であるXtractを使用してノイズを除去し、そして、ProSight Liteを使用して分析した。ジセレニド結合の形成は、マークしたセレノシステイン(U)残基同士の間の断片イオンの欠如として示される。セリン取り込みに対応する質量ピークは検出されなかった。
図4】6つの異なるセレノ生物製剤についてのタンパク質発現を示す。当該ゲル上の配列1~6は、配列表の配列番号1620~1625に対応する。ジセレニド結合は、配列番号1620 SeCys23-SeCys97、及び、SeCys138-SeCys192、配列番号1621 SeCys23-SeCys97、SeCys138-SeCys192、SeCys267-SeCys327、及び、SeCys373-SeCys431、配列番号1622 SeCys24-SeCys98、配列番号1623 SeCys24-SeCys98、SeCys164-SeCys224、及び、SeCys270-SeCys328、配列番号1624 SeCys32-SeCys92、及び、SeCys138-SeCys196、ならびに、配列番号1625 SeCys4-SeCys28、及び、SeCys86-SeCys92、にある。
図5】2つの異なるセレノ生物製剤についてのタンパク質発現を示す。当該ゲル上の配列7~8は、配列表の配列番号1626~1627に対応する。ジセレニド結合は、配列番号1626 SeCys183-SeCys190、SeCys210-SeCys234、及び、SeCys292-SeCys298、ならびに、配列番号1627 SeCys183-SeCys190、SeCys238-SeCys298、及び、SeCys344-SeCys402、にある。
図6】2つの異なるセレノ生物製剤についてのタンパク質発現を示す。当該ゲル上の配列9~10は、配列表の配列番号1628~1629に対応する。ジセレニド結合は、配列番号1628 SeCys54-SeCys166、及び、SeCys183-SeCys190、ならびに、配列番号1629 SeCys24-SeCys89、及び、SeCys149-SeCys244、にある。
図7】A~Bは、異なる酸化還元条件における、野生型(ジスルフィド)、及び、セレノ(ジセレニド)抗-RCA scFvのELISAデータを示す。野生型(A)、及び、セレノ(配列番号1631、B)-抗RCA scFvを、0、1、10、または、50mMのDTTを含むTBS pH7.5で、1μMに希釈し、そして、37℃で、16時間インキュベートした。リシンA-鎖(Sigma L9514)を、PBSで、10μgmLに希釈し、4℃で、一晩、96穴プレートに結合させた。コントロールプレートを、5%w/vのスキムミルクを含有するPBSで結合した。プレートを、PBSで洗浄し、そして、PBS 5%w/vスキムミルクで2時間ブロックした。DTTとのインキュベーションの後に、scFvを、5%w/vスキムミルクと0.05%Tween 20とを含むPBSで、0、0.25、0.5、1、1.5、2、4、6、8、10、15、及び、20nMに希釈して、そして、25℃で、2時間、4重に結合させた。二次抗体(抗-ポリヒスチジン-HRP、Sigma A7058)を、5%w/vのスキムミルクと0.05%のTween 20を含むPBSで、1/10,000に希釈し、そして、25℃で、2時間、結合させた。プレートを、TMBと一種に、25℃で、10分間、撹拌しながらインキュベートし、そして、2M H SO を添加して発色を停止した。直ちに、吸光度を450nmで測定した。すべての結合、ブロッキング、及び、酵素的工程を、450rpmで、オービタルシェーカーで行い、そして、すべての洗浄を、PBS、または、0.05%Tween20を含むPBSで行った。野生型抗-RCA scFvのみが、1及び10mMのDTTで実質的な結合の喪失を示しており、そして、セレノ-抗-RCAについては、WT scFvと比較して、結合の喪失は、すべての濃度で実質的に無効であった。
図8】A~Bは、2つの異なる生物製剤の野生型(ジスルフィド)、及び、セレノ(ジセレニド)変異体についての熱シフトデータを示す。精製した野生型及びセレノ(配列番号1132)hGH(A)、及び、野生型及びセレノ(配列番号1629)ハーセプチンscFv(B)の異なる還元条件における熱変性を、QuantStudio 3 リアルタイムPCRシステムにおけるthe Applied Biosystems Protein Thermal Shift色素を用いてモニターした。還元剤DTTを、5μgのhGH-Cys/SeCys、及び、2μgのハーセプチン scFv-Cys/SeCysに、0M及び10mMの濃度で三重に添加し、続いて、室温で、10分間、インキュベートした。これらのタンパク質を、25℃~98℃まで、0.03℃/秒の直線勾配で変性させた。融点(T)を、Protein Thermal Shift Software(ThermoFisher)を用いて、dF/dTの最小値を求めて決定した。hGH試料(A)は、DTTの双方の濃度で、単一の最小値を示した。hGH-CysのTは、DTTの不存在下での77℃から、10mMのDTTの存在下での60℃まで低下した。このSeCys変異体は、Cys変異体と比較して、還元条件下で顕著な安定化を示しており、DTTの不存在下で75℃のTを、また、10mMのDTTで66℃のTを示した。ハーセプチン(B)について、当該Cys変異体は、双方の条件において、2つの最小のdF/dTを示した。10mM DTTを添加すると、優勢なT最小値は、高い方の温度(70℃)の最小値から、低い方の温度(58℃)にシフトした。対照的に、ハーセプチン-SeCysは、双方のDTT濃度において、最小値を1つしか持っていなかった。やはり、このSeCys変異体は、還元条件下で安定化を示し、Tは、DTT不存在下での68℃から、10mMのDTTで64℃まで低下した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
配列表は、本出願の開示の一部を形成しており、そして、本開示の一部を構成するものとして援用する。
【0029】
本発明者らは、ポリペプチド類、及び、セレノシステインアミノ酸同士の間のジセレニド結合によって安定化される生物製剤に折り畳まれるゲノム的に再コードした生物(GRO)において、ポリペプチド類を製造するための方法を開発した。システインアミノ酸同士の間のジスルフィド結合は、約-220mVの酸化還元電位を有するのに対して、ジセレニド結合は、約-380mVの酸化還元電位を有する。細菌性サイトゾルは、一般的には、約-280~-300mVの酸化還元電位を有するので、ジスルフィド類ではなく、ジセレニド類は還元を回避して、当該サイトゾルで形成され、そして、存続する。ジセレニド類は、ジスルフィド類と同じ幾何学的結合角及びねじれ、ならびに、非常に類似した結合長を有するので、それらは、ポリペプチドの三次元構造を攪乱せずにポリペプチド類に置換され得る(図1)。さらに、血液などの意図したインビボ環境は、グルタチオン、アルブミン、及び、チオレドキシンなどの還元剤を含有するので、ポリペプチド類でのジスルフィド類を還元することができ、当該ポリペプチドの展開を招くこととなり、また、ジスルフィド類が複数ある場合には、間違ったシステインが互いに結合するように、当該ジスルフィド類を「処理する」のである。これらのいずれもが、当該ポリペプチドの意図した生物製剤的活性を無効にする。ジセレニド類の酸化還元電位が低いため、血清または精製した血清の還元成分に曝露した場合、それらは、還元に対して抵抗性を持つようになり(図2)、ジスルフィドを担持した対応物よりも長い血清半減期を得ることとなる(Muttenhaler et al.)。
【0030】
ジセレニドを形成するセレノシステインを担持したペプチド類は、固相ペプチド合成によってインビトロで製造し得る(Armishaw et al.,Safavi-Hemami et al.,)が、この工程は、治療適用、特に、タンパク質のために必要な収量に見合った規模にはできない。しかしながら、組換えセレノタンパク質のインビボでの生産は、セレノシステインがタンパク質中に出現し得る場所について、厳密な配列要件によって制限される。特に、セレノシステイン挿入配列(SECIS)エレメントは、特殊酵素(selA、selD)、tRNA(selC)、及び、伸長因子(selB)からなる内在性セレノシステイン翻訳機構を動員するために、セレノシステイン組込み部位でコードDNA配列に出現しなければならない。代わりに、本発明者らは、アンバーストップコドンなどの割り当てがされていないコドンを有する再コードしたE.coli株を、対応するDNAコード配列にアンバー停止コドンを導入して、セレノシステインのポリペプチド類への標的配置を許容する、抗-アンバーアンチコドンを有する改変したセレノシステインtRNAと一緒に用いる。一般的には、再コードは、すべての天然に存在する割り当てがされていないコドンをゲノムからの除去、ならびに、割り当てがされていないコドンに関連する翻訳機構を除去または不活性化(例えば、アンバー、放出因子1を除去または不活性化)を伴う。修飾tRNAは、内因性伸長因子EF-Tuと相互作用する。当該技術分野で周知の通り、その他のコドン、一般的には稀なコドンを再コードすることができる。Ostrov et al., Science,353:819-822,2016を参照されたい。mRNAでのコドン、及び、tRNAでのアンチコドンは、一般的には、相補的塩基配列のトリプレットである。
【0031】
再コードしたタンパク質は、E. coli細胞などの細菌で、または、インビトロで、翻訳系、または、連鎖転写-翻訳系で合成し得る。そのような再コードしたタンパク質をコードする遺伝子またはmRNAは、天然には存在しておらず、かつ、天然に存在するコード配列の変異体である。
【0032】
関連する配列表に示すタンパク質の多くは、ジスルフィド結合に関与するすべてのシステイン残基を、セレノシステイン残基で置換したものであるが、当該置換の利点を得るためにすべてのシステイン残基を置換する必要はない。1つのジセレニド結合でも、タンパク質の安定性を向上し得る。あらゆる数のジセレニド結合(セレノシステイン対)は、タンパク質のジスルフィド結合で置換され得る。タンパク質がN個のジスルフィド結合を有する場合、当該タンパク質は、N、N-1、N-2、N-3、N-4、....、1までの範囲で結合を有し得る。ジセレニド結合とジスルフィド類との組み合わせが異なるタンパク質は、配列番号1220~1631に示される。システインとセレノシステイン残基との間の結合、別名、セレニルスルフィドを形成することも可能である。この結合は、ジスルフィド(-220mV)よりも低い酸化還元電位(-270mV)を有するが、細菌細胞質(-280mV)よりは低くない。当該セレニルスルフィド結合は、特定の酸化還元環境における還元に対する耐性を高めるために使用され得る。単一のジスルフィドで結合されたシステインの代わりにセレノシステインを用いることで、あるいは、単一のジセレニドで結合されたセレノシステインの代わりにシステインを用いることで、本明細書に記載の方法を使用して、セレニルスルフィドは、ジセレニドの代わりに使用され得る。
【0033】
置換したセレノシステインを有するジスルフィド安定化生物製剤の配列は、標準的な実験室用振とうフラスコで、mg/Lのスケールで、本発明者らの方法を用いて、E. coliのサイトゾルで製造され、そして、微生物発酵槽において、g/L生産までスケール化され得る。これらの配列は、治療用タンパク質、ワクチン、及び、モノクローナル抗体、抗体断片、抗体コンジュゲート、及び、その他の免疫グロブリン様分子を含む。Fvドメインは、あらゆるヒトFcドメインと組み合わせられ得る。さらに、可変軽鎖でのKabat番号付与法で第23位と第88位のシステインをセレノシステインで置換し、及び/または、可変重鎖でのKabat番号付与法で第22位と第92位のシステインをセレノシステインで置換することで、あらゆるFvドメインが製造され得る。免疫グロブリンクラスIgG、IgA、IgM、IgD、及び、IgE(IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、及び、IgG4サブクラスを含む)は、代表的なクラスとして、これらの方法で製造され得るものであり、それらは、当業者に公知のIgκまたはλの定常軽鎖変異体のいずれかと組み合わせたあらゆる定常変異体を有する。開示した配列でのいずれのセレノシステインも、システインの存在が、当該ポリペプチドの発現、折り畳み、または、意図した機能を妨げない限りは、システインとして維持され得る。本発明者らは、抗体一本鎖可変断片(scFv、図3、6)、ヒト成長ホルモン(hGH、図6)、PD-L1(図4)、ヒトFcの変異体(図4)、及び、ヒトFcの変異体に対するPD-L1及びhGHの融合(図4及び5)について意図したジセレニド結合に関与するセレノシステインの製造及び検証の方法を以下に開示するが、これらの方法は、モノクローナル抗体全体、その他の抗体断片、抗体コンジュゲート、その他の治療用タンパク質、及び、ワクチンにも適用する。
【0034】
治療、診断、バイオセンシング、及び、予防のための生物製剤は、2つのセレノシステイン残基の間にジセレニド結合を有する本発明にしたがって作製及び使用され得る。この技術及び改変は、あらゆるタンパク質生物製剤に有用であり得、ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン、図8)、抗体及び抗体断片(図7及び8)、サイトカイン、成長因子、構造タンパク質などが挙げられるが、これらに限定されない。Lantus(商標)、Novorapid(商標)、Humalog(商標)、Humulin(商標)、Levemir(商標)、Apidra(商標)、及び、Tresiba(商標)などのインスリン産物は、配列番号1142~1155に示すように、そのような修飾と共に有用であり得る。これらのインスリン産物のA鎖は、配列番号1142、1144、1146、1148、1150、1152、及び、1154に示されるように修飾され得る。これらのインスリン産物のB鎖は、配列番号1143、1145、1147、1149、1151、1153、及び、1155に示されるように修飾され得る。これらのジセレニド結合は、分子内または分子間であり得る。そのような修飾に適した追加のタンパク質は、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、抗体ドメイン(複数可)に対するPD-L1融合タンパク質、PD-L1の一部、例えば、抗体ドメイン(複数可)に対して融合した、または、融合していない結合ドメイン、抗体ドメイン(複数可)に対して融合した、または、融合していないヒト成長ホルモン、及び、ハーセプチン(図4~8)がある。これは、かように修飾が可能なタンパク質の完全なリストになることを意図するものではない。
【0035】
特定の例示的なタンパク質は、本開示の一部を形成する配列表において特定の配列を用いて示されているが、これらの配列は、使用され、そして、完全に忠実に再現される必要はない。当該技術分野で公知の通り、対立遺伝子変異及び多型を含むタンパク質に対するわずかな修飾は、それらの使用及び機能にとって有害ではないタンパク質の部分において起こり得る。したがって、本発明の有用なタンパク質は、配列表に示される正確な配列を有していてもよく、あるいは、わずかに相違し得る。例えば、有用なタンパク質は、少なくとも99パーセント、少なくとも98パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも94パーセント、少なくとも93パーセント、少なくとも92パーセント、少なくとも91パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも89パーセント、少なくとも88パーセント、少なくとも87パーセント、少なくとも86パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも84パーセント、少なくとも83パーセント、少なくとも82パーセント、81パーセント、または、少なくとも80パーセントを同一とし得る。
【0036】
本発明にしたがって製造することができるタンパク質は、目的が制限されていない。同タンパク質は、治療用タンパク質、予防用タンパク質(ワクチンなど)、酵素タンパク質、内分泌タンパク質、シグナル伝達タンパク質、足場タンパク質、診断用タンパク質、分析用タンパク質などであり得る。一般的に、ジセレニド結合は、還元剤の存在下で当該タンパク質をさらに安定化させる。
【0037】
当該タンパク質は、宿主細胞内で、または、インビトロで、無細胞合成系で作製され得る。宿主細胞は、確実に再コード可能なあらゆるものとし得る。これらは、開発が十分に進んだ遺伝系を有する細菌細胞であり得、例えば、E.coliがある。また、その他の細菌種も、使用され得る。当該タンパク質を製造するための無細胞系は、共役転写/翻訳系、または、翻訳系のみであり得る。本発明の方法の重要な態様は、化学合成手段よりもむしろ、生物製剤合成の使用である。
【0038】
再コードした細胞を構築された核酸配列を用いて培養することは、当該技術分野で公知のあらゆる手段で行われ得る。この培養は、振盪フラスコまたは発酵槽において、バッチ式または連続式であり得、あるいは、より大きな容器に収容した小さな粒子の固体表面などに固定化され得る。一般的には、当該培地は、NaSeOなどのセレン供給源を用いて補充される。当該技術分野で公知の通り、当該所望のタンパク質変異体の製造は、誘導物質または抑制物質の制御下であり得る。当該技術分野で公知のあらゆるかような系は、構築及びタンパク質生産の便宜のために選択され得る。
【0039】
かような処置を必要とする対象への治療用、診断用、または、予防用タンパク質の投与は、当該技術分野において公知であり、かつ、タンパク質に適したあらゆる手段によるものであり得る。それらとしては、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、経口、冠状動脈内、及び、頭蓋内送達があるが、これらに限定されない。安定性と標的とが故に、ある種のタンパク質は、ある種の送達に適している。治療用タンパク質の投与は、例えば、液体または固体である充填剤、希釈剤、賦形剤、緩衝剤、安定剤、または、封入材料などの1つ以上の医薬として許容される担体を含むことができる。
【実施例
【0040】
上記した開示は、本発明を概説するものである。本明細書で開示した参考文献のすべてを援用する、ことをここに明示する。専ら例示目的で本明細書に記載がされ、かつ、本発明の範囲の限定を意図していない以下の特定の例を参照することで、より確かな理解が得られる。
【0041】
例1
scFvの発現及び精製
システインコドンの代わりにセレノシステインの取り込みを指示するUAGコドンを有する抗-アルファMS2 scFv抗体をコードする遺伝子を担持するプラスミドpACYC-PcaU-aMS2で形質転換したRTΔA 2X310K細胞を、1000μgmLのカルベニシリン、12.5μgmLのテトラサイクリン、及び、25μM NaSeOを補充した1Lのテリフィック培地で、1/250に希釈し、そして、対数増殖期の中期に、3,4-ジヒドロキシ安息香酸(1mM)で誘導し、続いて、37℃で、一晩、増殖させた。細胞を、8000×gで、10分間、遠心分離して回収し、そして、プロテアーゼ阻害剤カクテル(コンプリート、ミニEDTA不含、Roche)、及び、リゾチーム(0.5mg.mL-1)を含む25mLの洗浄緩衝液(50mM KHPO、300mM NaCl、20mM イミダゾール、及び、10% グリセロール、pH8.0)で再懸濁した。穏やかに攪拌しながら、4℃で、20分間インキュベートした後に、細胞を、超音波処理(Model 500、Fisher Scientific)して溶解し、35000×gで、30分間、遠心分離を3度行って浄化した。溶解物を、0.2μmの膜を通して濾過し、Ni-NTA樹脂及び重力流カラムを用いるIMACで、タンパク質を回収した。溶出液を、3mLに濃縮し、そして、pH7.5のTBSに対して透析を行い、続いて、サイズ排除FPLCで、見かけが均一になるまで精製した。有意な割合の試料が透析の際に沈殿し、そして、新たな割合の試料が、安定性の低い/可溶性の二量体の形態で存在した。可溶性aMS2セレノ-scFvモノマーの最終収量は、3mg/Lであった。
【0042】
すべてのシステインコドンの代わりにセレノシステインの取り込みを指示するUAGコドンを有する抗-TNF(腫瘍壊死因子)scFv抗体をコードする遺伝子を担持するプラスミドpACYC-TetO-aTNFで形質転換したRTΔA 2X310K-T7細胞を、1000μgmLのカルベニシリン、33μgmLのクロラムフェニコール、及び、25μM NaSeOを補充した1Lのテリフィック培地で、1/250に希釈し、そして、対数増殖期の中期に、200ngmLのアンヒドロテトラサイクリンで誘導し、続いて、30℃で、一晩、増殖させた。細胞を回収し、前述のようにして、IMACで精製した。沈殿を減らすために、試料を大量(>6mL)に透析した。タンパク質試料を、サイズ排除FPLC、あるいは、アニオン交換クロマトグラフィー(HiTrap Q HPカラム)のいずれかで、均質になるまで精製した。抗-RCA、抗-GM-CSF、及び、抗-インターフェロンガンマセレノscFvを、同じ手順で精製した。可溶性セレノ-scFvモノマーの最終収量は、0.5~1mg/Lの範囲であった。
【0043】
例2
質量分析
インタクトなタンパク質試料を、前述の方法を用いて分析した。セレノタンパク質試料を、10kDaの分子量カットオフフィルターを用いて、LC-MSグレードの水に緩衝液交換した。一旦、緩衝液交換が完了次第に、それらの試料を、メタノール/水/ギ酸(50/49/1)溶液で、20μMに希釈した。希釈した後に、タンパク質溶液を、エレクトロスプレーイオン化を介して、Orbitrap Elite質量分析計(Thermo Fisher Scientific Instruments,Bremen,Germany)に、3μL.分-1の速度で注入した。セレノシステインの取り込みを確認するために、インタクトなタンパク質質量分析を、240kの解像度で行い、そして、20回のスキャンを平均した。当該タンパク質配列の特徴決定を、前述のように、Orbitrap質量分析計に接続された193nmエキシマレーザー(Coherent、Inc.)を使用する紫外光解離(UVPD)で行った。各々のUVPDスペクトルについて、2.5mJの2つのレーザーパルスを使用し、そして、250回のスキャンを平均した。Xtractノイズ除去アルゴリズム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、MS1スペクトルのノイズを除去した。また、Xtractを使用して、UVPDマススペクトルのノイズを除去した後に、ProsightPC 3.0を使用して分析をした。4つの組み込み部位(ジセレニド結合の形成が故に、1個の水素原子の控除分を含む)で61.9146ダルトンの修飾をセリン残基に付加して、セレノシステインを含有するタンパク質を検索した。組込み効率は、修飾したタンパク質ピークの面積を、修飾されていないタンパク質ピークと修飾したタンパク質ピークとの合計面積で割って算出した。各々のタンパク質に使用したピーク面積は、各同位体クラスターに由来する5つの最も豊富なピークの積分面積の合計であった。
【0044】
例3
非標準アミノ酸を有するポリペプチドの発現に適したUAGゲノム的に再コードした生物
UAGコドン翻訳機能が完全に除去されているゲノム的に再コードした生物(GRO)を使用して、UAGに非標準アミノ酸(NSAA)を明確に組み込む。本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、Lajoie,M.J. et al., Genomically recoded organisms expand biological functions. Science 342,357-360,doi:10.1126/science. 1241459(2013)を参照されたい。ゲノム的に再コードした生物は、改めて割り当てをした1つ以上のトリプレットコドンを含んでおり、セレノシステインなどの非標準アミノ酸(NSAAa)の組み込みを容易にし得る。当業者に公知の方法を使用して、トリプレットコドンを改めて割り当てて、セレノシステインなどの非標準アミノ酸を組み込むことができる。本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、Lajoie,M.J. et al., Probing the limits of genetic recoding in essential genes. Science 342,361-363,doi:10.1126/science. 1241460(2013)を参照されたい。また、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、Thyer,R.et al., Evolving tRNASec for Efficient Canonical Incorporation of Selenocysteine,JACS 137(1),46-49,(2015)も参照されたい。また、Ostrov,et al., Design, synthesis, and testing toward a 57-codon genome,Science 353,819-822,2016も参照されたい。あるいは、当業者に公知の方法を使用して、クワドラプレットコドンを用いて、非標準アミノ酸を組み込むことができる。本明細書の一部を構成するものとしてそれらの各々の全内容を援用する、Anderson,J.C.et al. An expanded genetic code with a functional quadruplet codon. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 101, 7566-7571, doi:10.1073/pnas.0401517101(2004), Neumann,H.,Wang,K.,Davis,L.,Garcia-Alai,M.& Chin,J.W.Encoding multiple unnatural amino acids via evolution of a quadruplet-decoding ribosome.Nature 464,441-444,(2010)、及び、Chatterjee,A.,Lajoie,M.J.,Xiao,H.,Church,G.M.& Schultz,P.G.A Bacterial Strain with a Unique Quadruplet Codon Specifying Non-Native Amino Acids.Chembiochem,n/a-n/a,doi:10.1002/cbic.201402104(2014)を参照されたい。非機能的なUAGトリプレットに基づいて、クワドラプレットUAGAコドンを特異的かつ効率的にデコードする直交アミノアシル-tRNAシンテターゼ(aaRS)/tRNA対が開発されており、大きなタンパク質収率をもたらすUAGAコドンに、セレノシステインなどの非標準アミノ酸が着実に組み込まれている。かようなクワドラプレットコドンは、本方法で使用し得る。
【0045】
進化した直交アミノアシル-tRNAシンテターゼ(aaRS)/tRNA対を使用して、多様な化学的性質を有する100を超えるNSAAが合成されており、そして、共翻訳的にタンパク質に組み込まれている。本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、Liu,C.C.& Schultz,P.G.Adding new chemistries to the genetic code. An. Rev. Biochem.79,413-444,doi:10.1146/annurev.biochem.052308.105824(2010)を参照されたい。非標準アミノ酸は、チロシンまたはピロリジンに基づいてデザインされている。aaRS/tRNAは、プラスミド、または、ゲノム的に再コードした生物のゲノムに提供され得る。直交aaRS/tRNA対は、タンパク質にNSAAを生体直交的に組み込むために使用される。ベクターに基づいた過剰発現系を使用して、天然コドン機能を、再割り当てしたその機能と競合させ得る。本明細書の一部を構成するものとしてそれらの各々の全内容を援用する、Wang,L.,Brock,A.,Herberich,B.& Schultz,P.G.Expanding the genetic code of Escherichia coli. Science 292,498-500(2001),Young,T.S.,Ahmad,I.,Yin,J.A.& Schultz,P.G.An enhanced system for unnatural amino acid mutagenesis in E.coli. Journal of Molecular Biology 395,361-374(2009)、及び、Chatterjee,A.,Sun,S.B.、Furman,J.L.,Xiao,H.& Schultz,P.G. A Versatile Platform for Single- and Multiple-Unnatural Amino Acid Mutagenesis in Escherichia coli.Biochemistry 52,1828-1837,doi:10.1021/bi4000244(2013)を参照されたい。天然のUAG翻訳機能を完全に無くしてしまえば、極めて小さなaaRS/tRNA機能で、効率的なNSAA取り込みが十分に達成され得る。GROベースのNSAA取り込みは、ベクターベース、及び/または、ゲノムベースのaaRS/tRNA対を使用することができる。ゲノムベースのaaRS/tRNA対が、利用可能なNSAAの不在下での標準アミノ酸の取り込みの誤りを減らすために使用されている(本明細書の一部を構成するものとして援用するMandell and Lajoie et al., Nature.2015 Feb5;518(7537):55-60.doi:10.1038/nature 14121)。
【0046】
UAGコドン機能は、ゲノム的に再コードした生物において完全に再割り当てがされているので、セレノシステインのようなNSAAは、表現型に影響を及ぼさずに、ゲノム的に再コードした生物に組み込まれ得る。ゲノム的に再コードした生物へのNSAAの取り込みは、セレノシステインなどの非標準アミノ酸、及び、aaRSのための誘導物質の増殖培地への補充に関与し得る。あるいは、当該aaRSは、構造的に発現し得る。あるいは、本開示の通りに、当該内在性セリル-tRNAシンテターゼを用いて、セレノシステインtRNAをセリル化し、当該tRNAに、selA及びselDを含む酵素が作用して、tRNAsec(セレノシステイン荷電tRNA)を製造し得る。培地に亜セレン酸ナトリウムなどのセレン供給源を補充して、tRNAsecの製造を改善し得る。所望のタンパク質は、あらゆる所望のタンパク質の過剰発現システム(例えば、T7-RNAP、構造的取り込み、または、IPTG/アロラクトース、アンヒドロテトラサイクリン、アラビノース、ラムノース、または、その他の誘導性システムに基づいた誘導性発現)を用いて過剰発現することができる。タンパク質の架橋(ジセレニド結合)は、タンパク質の折り畳みでの近接性及び配向性に基づいて自発的に形成され得るものであり、そして、当該タンパク質は、その他のあらゆる過剰発現産物として取り扱うことができる。
【0047】
例4
方法
関心のある遺伝子をコードする配列を、Tet-リプレッサーで制御するT7プロモーターを用いて、クロラムフェニコール耐性ベクターにクローニングした。tetオペロンで制御する組み込みをしたT7 RNAポリメラーゼを用いて、ベクターを、2×310k細胞に形質転換した。細胞を、ODが約0.6になるまで増殖させ、室温で、一晩、100ng/mLのaTcで誘導した。誘導した細胞をペレット化し、そして、20mM Tris pH 7.4、100mM NaCl、20mM イミダゾール、及び、0.01% Triton X-100で再懸濁し、続いて、超音波処理をして溶解した。それら溶解物を、遠心分離して分離し、そして、ペレット化した。溶解時と同じ緩衝液で、上清を、Ni-親和性ビーズに対して流した。関心のあるタンパク質に、300mM イミダゾールを添加して、PBS pH 7.4に溶出した。精製した画分を、SDS pageゲルに流した。10個の異なるセレノ生物製剤についての結果を、図4~6に示す。
参考文献
本明細書の一部を構成するものとして引用した参考文献の各々の開示を援用する、ことをここに明示する。
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図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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