(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】微粒子吸着防止ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 220/04 20060101AFI20221202BHJP
C08F 220/34 20060101ALI20221202BHJP
C08F 220/60 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C08F220/04
C08F220/34
C08F220/60
(21)【出願番号】P 2021155835
(22)【出願日】2021-09-24
(62)【分割の表示】P 2021542931の分割
【原出願日】2020-08-25
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2019153634
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】中路 正
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 欣幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 秦平
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-029176(JP,A)
【文献】特開2018-104554(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235952(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079659(WO,A1)
【文献】特開2008-133549(JP,A)
【文献】特開2014-080586(JP,A)
【文献】特開2001-271094(JP,A)
【文献】特開2001-181353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00-220/70
C08L 33/00-33/26
C08L 101/00-101/16
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C09K 3/00、3/16
D06M 10/00-11/84
D06M 13/00-15/715
D06M 16/00
D06M 19/00-23/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子吸着防止ポリマーであって、
前記ポリマーは、酸基およびアミノ基を少なくとも有するポリマー(A)であり、前記ポリマー(A)は、酸基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを構成単位として含むポリマーであり、
前記ポリマー(A)の骨格は(メタ)アクリル骨格であり、前記ポリマー(A)の重量平均分子量は49,000~1,000,000の範囲内であり、
前記ポリマー(A)の酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、前記ポリマー(A)のアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、
前記ポリマー(A)の酸価の値V
ac(A)および前記ポリマー(A)のアミン価の値V
am(A)が、下記式:
V
ac(A)/V
am(A)=0.5~1.9
を満たす、
微粒子吸着防止ポリマーを含む、微粒子吸着防止剤製造用の材料。
【請求項2】
前記ポリマー(A)は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを構成単位として含むポリマーである、請求項
1に記載の微粒子吸着防止剤製造用の材料。
【請求項3】
微粒子は、花粉、ウイルス、細菌、菌類、塵埃、酵母、原生動物、胞子、動物の皮膚の破片、ダニの糞、及び、ダニの死
骸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1
又は2に記載の微粒子吸着防止剤製造用の材料。
【請求項4】
微粒子は花粉である、請求項1~
3のいずれかに記載の微粒子吸着防止剤製造用の材料。
【請求項5】
微粒子はハウスダストである、請求項1
又は2に記載の微粒子吸着防止剤製造用の材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子吸着防止ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
空気中に浮遊する微粒子、例えば花粉、ウイルス、ハウスダスト、微小粒子状物質(PM2.5)等は、人体に望ましくない影響を及ぼす可能性がある物質である。例えば花粉に関しては、花粉症を発症する人は、日本国内において年々増加傾向にある。花粉症に対して、現状では確実な根本的療法は確立されていない。一般的な花粉症対策は、花粉に触れる機会および量を減らすことである。また、ウイルス及びハウスダスト等の微粒子に関しても、これらによる人体への影響や、アレルギーの発症等を防止する観点で、接触の機会及び量を減らすことが望まれている。さらに、工場や自動車、船舶、航空機、火山や土壌などから排出されたばい煙、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)等のガス状大気汚染物質などに由来する微小粒子状物質などの塵埃はぜんそく等の呼吸器疾患やアレルギー疾患の原因となるため、接触機会及び量を減らすことが望まれている。このような対策として、例えば外出時にマスク、眼鏡、帽子を着用して、花粉、ウイルス、ハウスダスト、微小粒子状物質等の微粒子との接触を低減することなどが広く行われている。しかしながらこれらは、例えば食事中、睡眠中など着用することが困難である場合があり、さらに、これらを着用することによって視界などが妨げられる恐れもある。そのため、このような不具合を伴うことなく、花粉、ウイルス、ハウスダスト、微小粒子状物質等の微粒子との接触を低減することができる手段が強く求められている。
【0003】
特開2006-002147号公報(特許文献1)には、ホスホベタイン基、カルボキシベタイン基、スルホベタイン基の中から選ばれる1種または2種以上の両性イオン基を有するモノマーユニット、および/または、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基の中から選ばれる1種または2種以上のアニオン基を有するモノマーユニット、を構成単位として含むポリマーを含有する、花粉吸着防止剤が記載されている。また特開2004-189762号公報(特許文献2)には、(a)水と共沸混合物を形成し、1013.25hPaにおける水との共沸温度が100℃未満になる有機化合物、(b)水、並びに(c)(a)及び(b)の少なくとも一方に溶解し、該溶液中の液体成分の蒸発により固体を生成させる固体源物質を含有する溶液を、衣料に接触させ乾燥させた後、生成した固体を除去する操作を行なうことで固体と共に衣料に付着した花粉を除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-002147号公報
【文献】特開2004-189762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、毛髪または衣類等に塗布・噴霧することによって、これらへの花粉の付着を未然に、簡便かつ積極的に防止する花粉吸着防止剤について記載する。一方で、毛髪または衣類等に塗布・噴霧する用途においては、毛髪または衣類等の塗布・噴霧対象に対して一時的に花粉吸着防止剤を付着させるため、花粉吸着防止剤類を塗布・噴霧対象から容易に除去することができる性質もまた必要とされる。しかしながら上記花粉吸着防止剤は、そのポリマー構造によっては、容易除去性が劣ることもある。上記特許文献2は、衣料に付着した花粉を除去する方法を記載する。この除去方法は、花粉が対象に吸着することを積極的に防ぐ方法ではない。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、花粉、ウイルス、ハウスダスト、微小粒子状物質等の微粒子に対する吸着防止性能を有し、そして塗布・噴霧対象から容易に除去することができる、微粒子吸着防止ポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
微粒子吸着防止ポリマーであって、
上記ポリマーは、酸基およびアミノ基を少なくとも有するポリマー(A)であり、
上記ポリマー(A)の酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ポリマー(A)のアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、
上記ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)および上記ポリマー(A)のアミン価の値Vam(A)が、下記式:
Vac(A)/Vam(A)=0.5~1.9
を満たす、
微粒子吸着防止ポリマー。
[2]
微粒子吸着防止ポリマーであって、
上記ポリマーは、少なくとも酸基を有するポリマー(B1)、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)を含むブレンドポリマー(B)であり、
上記ブレンドポリマー(B)における酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ブレンドポリマー(B)におけるアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、
上記ブレンドポリマー(B)における酸価の値Vac(B)および上記ブレンドポリマー(B)におけるアミン価の値Vam(B)が、下記式:
Vac(B)/Vam(B)=0.5~1.9
を満たす、
微粒子吸着防止ポリマー。
[3]
上記ポリマー(A)の重量平均分子量は、3,000~1,000,000の範囲内である、[1]に記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[4]
上記ブレンドポリマー(B)に含まれる、少なくとも酸基を有するポリマー(B1)の重量平均分子量は3,000~1,000,000の範囲内であり、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)の重量平均分子量は3,000~1,000,000の範囲内である、[2]に記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[5]
上記ポリマー(A)は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーの少なくとも一方を構成単位として含むポリマーである、[1]または[3]に記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[6]
上記ポリマー(B1)はカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも構成単位として含むポリマーであり、上記ポリマー(B2)はアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも構成単位として含むポリマーである、[2]または[4]に記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[7]
微粒子は、花粉、ウイルス、細菌、菌類、塵埃、酵母、原生動物、胞子、動物の皮膚の破片、ダニの糞や死骸、ハウスダスト、及び、微小粒子状物質からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれかに記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[8]
微粒子は花粉である、[1]~[6]のいずれかに記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[9]
上記微粒子吸着防止ポリマーを含む、微粒子吸着防止剤。
【発明の効果】
【0008】
上記微粒子吸着防止ポリマーは、有意な微粒子吸着防止性能を有する。さらに上記微粒子吸着防止ポリマーは、水洗浄によって、塗布・噴霧対象から容易に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、塗布・噴霧対象に対して一時的に微粒子吸着防止性能を付与することができる、微粒子吸着防止ポリマーに関する。そして本明細書において、上記微粒子吸着防止ポリマーは、
・酸基およびアミノ基を少なくとも有するポリマー(A)、および
・少なくとも酸基を有するポリマー(B1)、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)を含むブレンドポリマー(B)、
の2種類に大別することができる。
以下、ポリマー(A)およびブレンドポリマー(B)について詳述する。
【0010】
〔ポリマー(A)〕
微粒子吸着防止ポリマーの1態様であるポリマー(A)は、酸基およびアミノ基の両方を少なくとも有するポリマー(A)である。具体的には、ポリマー(A)は、酸基を有するモノマーと、アミノ基を有するモノマーとの共重合体である。そして、上記ポリマー(A)は、酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ポリマー(A)のアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)および上記ポリマー(A)のアミン価の値Vam(A)が、式:Vac(A)/Vam(A)=0.5~1.9を満たすことを条件とする。
【0011】
上記ポリマー(A)は、(メタ)アクリル骨格を有するのが好ましい。なお本明細書中において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。上記ポリマー(A)は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーの少なくとも一方を構成単位として含むポリマーであるのが好ましい。また、上記ポリマー(A)は、酸基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも構成単位として含むポリマーであるのがより好ましい。上記ポリマー(A)は、例えば、酸基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも含むモノマー混合物を重合することによって調製することができる。
【0012】
酸基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、酸基としてカルボキシル基、スルホン酸基またはリン酸基を有するものなどが挙げられる。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、および、マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル等のエチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステルなどが挙げられる。
スルホン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、アクリル酸3-スルホニルプロピルエステル、メタクリル酸3-スルホニルプロピルエステルおよびイタコン酸ビス(3-スルホニルプロピル)エステルなどが挙げられる。
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、アシッドホスホキシエチルアクリレート、アシッドホスホキシエチルメタクリレート、アシッドホスホキシプロピルメタクリレートおよびアシッドホスホキシ3-クロロプロピルメタクリレートなどが挙げられる。上記酸基含有エチレン性不飽和モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0013】
酸基含有エチレン性不飽和モノマーとして、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーが好適に用いられる。
【0014】
アミノ基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0015】
上記ポリマーの構成単位として、必要に応じて他のモノマーが含まれてもよい。他のモノマーとして、例えば、
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有エチレン性不飽和モノマー;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの、グリシジル基含有エチレン性不飽和モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステル;
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミドなどの、アミド基含有エチレン性不飽和モノマー;
N-ビニルピロリドン、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの他のエチレン性不飽和モノマー;
などが挙げられる。これらは、必要に応じて1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0016】
上記ポリマー(A)は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも構成単位として含むポリマーであるのがより好ましい。このようなポリマー(A)は、良好な微粒子吸着防止性能を有する利点がある。
【0017】
上記ポリマー(A)は、酸基含有エチレン性不飽和モノマー、アミノ基含有エチレン性不飽和モノマー、そして必要に応じた他のモノマーを含むモノマー混合物を重合することによって調製することができる。モノマー混合物の重合は、当業者において通常用いられる手法により行うことができ、加熱または光照射によりモノマー混合物を重合させることが挙げられる。具体的な重合方法として、例えば、バルク重合法、析出重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などが挙げられる。上記重合方法のうち、微粒子吸着防止剤として用いることを考慮すると、予め水、親水性溶媒、またはこれらの混合物中で共重合する溶液重合法により調製するのがより好ましい。
【0018】
本明細書において、親水性溶媒とは、水に対する溶解度が10g/水100g(25℃)以上である有機溶媒をいう。このような親水性溶媒の具体例としては、例えば炭素数が1~4の脂肪族1~4価アルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、酢酸メチル、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。上記親水性溶媒のうち、1~2価アルコールを用いるのが特に好ましい。
【0019】
1価アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。2価アルコールとして、例えば、プロピレングリコールなどが挙げられる。
これらの中でも、エタノール、イソプロパノールが特に好ましい。
【0020】
上記モノマー混合物の溶液重合は、モノマー混合物を、水、水と親水性溶媒との混合物、または親水性溶媒中などの溶媒中に溶解し、重合開始剤を添加し、加熱しながら撹拌することにより行なうことができる。上記重合は、例えばチッ素ガスまたはアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うのがより好ましい。
【0021】
上記重合開始剤としては、溶液重合法において一般的に用いられているものを用いることができる。重合開始剤の例として、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物;アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物;などが挙げられる。上記重合開始剤のうちアゾ系化合物を用いることが、重合反応の制御の観点などからより好ましい。
【0022】
上記重合において、上記溶媒の量は、モノマー成分の混合物の濃度が30~60重量%程度となるように調整して用いることが好ましい。重合温度および重合時間は、モノマー混合物に含まれるモノマーの種類、重合開始剤の種類および反応スケールの大きさなどに応じて適宜選択することができる。例えば、重合溶媒の還流温度に近い温度で重合を行うことが好ましい。重合時間は、8時間以上であるのが好ましく、12~36時間であるのがより好ましい。
【0023】
上記手順により、酸基およびアミノ基を少なくとも有するポリマー(A)を調製することができる。そして、上記ポリマー(A)は、酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、アミン価が10~400mgKOH/gの範囲内である。ポリマー(A)の酸価およびアミン価は、調製に用いるモノマー混合物中に含まれる酸基含有モノマー及びアミノ基含有モノマー、例えば酸基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーの量を調節することによって、上記範囲とすることができる。上記ポリマー(A)の酸価は、10~350mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、14~250mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、18~150mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。上記ポリマー(A)のアミン価は、10~350mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、14~250mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、18~150mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。ポリマー(A)の酸価およびアミン価が上記範囲内であることによって、微粒子吸着防止ポリマーとしてのポリマー性能、および、微粒子吸着防止性能を良好に確保することができる利点がある。
【0024】
なお本明細書において、ポリマーの酸価は固形分酸価を表し、一例として、JIS K 0070に記載される公知の方法によって測定することができる。また、アミン価は固形分アミン価を表し、一例として、JIS K 7237に記載される公知の方法によって測定することができる。
【0025】
ポリマー(A)の酸価およびアミン価は、ポリマー(A)を構成する各モノマーの構造および用いた各モノマー量比から求めてもよい。具体的には、酸価は、ポリマー(A)中の酸基を中和するために必要は理論上のKOHのmg数、アミン価は、ポリマー(A)中のアミンを中和するために必要な理論上のKOHのmg数から求めてもよい。また、ポリマー(A)を作製する際に用いた各モノマーの酸価およびアミン価が既知の場合は、既知の値を用いてもよい。なお本明細書においては、ポリマー(A)がベタインモノマーなどのモノマー中に酸基とアミン基との両方を含む両性モノマーを有する場合には、両性モノマーの酸基やアミン基は酸価やアミン価に含まないものとする。
【0026】
また、上記ポリマー(A)においては、ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)およびポリマー(A)のアミン価の値Vam(A)が、下記式:
Vac(A)/Vam(A)=0.5~1.9
を満たすことを条件とする。上記Vac(A)/Vam(A)は、0.67~1.5の範囲内であるのが好ましく、0.8~1.2の範囲内であるのがより好ましく、0.86~1.13の範囲内であるのがさらに好ましい。ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)およびアミン価の値Vam(A)が上記範囲を満たすことによって、微粒子吸着防止性能が良好に発揮されることとなる。
【0027】
上記ポリマー(A)は、重量平均分子量(Mw)が3,000~1,000,000の範囲内であるのが好ましく、3,000~100,000の範囲内であるのがより好ましい。上記ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であることによって、微粒子吸着防止ポリマーとしてのポリマー性能を良好に確保することができる利点がある。
【0028】
本明細書において重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ポリスチレン標準サンプル基準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定することができる。
【0029】
〔ブレンドポリマー(B)〕
微粒子吸着防止ポリマーの他の1態様であるブレンドポリマー(B)は、少なくとも酸基を有するポリマー(B1)、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)のブレンドポリマー(B)である。いわば、ブレンドポリマー(B)は、ポリマー(B1)とポリマー(B2)との混合物である。そして、上記ブレンドポリマー(B)における酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、ブレンドポリマー(B)におけるアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ブレンドポリマー(B)における酸価の値Vac(B)およびアミン価の値Vam(B)が、下記式:
Vac(B)/Vam(B)=0.5~1.9
を満たすことを条件とする。ブレンドポリマー(B)とポリマー(A)との相違点は、ポリマー(B)が少なくとも酸基を有するポリマー(B1)、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)の混合物であるのに対し、ポリマー(A)は、酸基を有するモノマーと、アミノ基を有するモノマーとの共重合体であることにある。したがって、ポリマー(A)に関する上記の記載に関しては、後述の点を除き、ポリマー(A)と共通するため、記載を省略する。
【0030】
「ブレンドポリマー(B)における酸価」とは、ブレンドポリマー(B)中に存在する酸基に由来する酸価を意味する。また「ブレンドポリマー(B)におけるアミン価」とは、ブレンドポリマー(B)中に存在するアミノ基に由来するアミン価を意味する。例えば「ブレンドポリマー(B)における酸価」は、少なくとも酸基を有するポリマー(B1)の酸基、そして、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)が有してもよい酸基、に由来する酸価である。また例えば「ブレンドポリマー(B)におけるアミン価」は、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)のアミノ基、そして少なくとも酸基を有するポリマー(B1)が有してもよいアミノ基、に由来するアミン価である。
【0031】
上記ブレンドポリマー(B)を構成する少なくとも酸基を有するポリマー(B1)および少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)は、いずれも(メタ)アクリル骨格を有するのが好ましい。
【0032】
少なくとも酸基を有するポリマー(B1)は、酸基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも構成単位として含むポリマーであるのが好ましく、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも構成単位として含むポリマーであるのがより好ましい。上記ポリマー(B1)は、例えば、酸基含有エチレン性不飽和モノマーおよび他のモノマーを含むモノマー混合物を重合することによって調製することができる。上記モノマー混合物は、必要に応じてアミノ基含有モノマー、例えばアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0033】
少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)は、アミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも構成単位として含むポリマーであるのが好ましい。上記ポリマー(B2)は、例えば、アミノ基含有エチレン性不飽和モノマーおよび他のモノマーを含むモノマー混合物を重合することによって調製することができる。上記モノマー混合物は、必要に応じて酸基含有モノマー、例えば酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0034】
少なくとも酸基を有するポリマー(B1)および少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)の調製は、いずれも、上記ポリマー(A)と同様の手順により調製することができる。ブレンドポリマー(B)における酸価およびアミン価の調整は、例えば、少なくとも酸基を有するポリマー(B1)の調製で用いるモノマー混合物中に含まれる酸基含有モノマー、例えば酸基含有エチレン性不飽和モノマーの量、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)の調製で用いるモノマー混合物中に含まれるアミノ基含有モノマー、例えばアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーの量を調節することによって調整することができる。
【0035】
上記ブレンドポリマー(B)に含まれる、少なくとも酸基を有するポリマー(B1)の重量平均分子量は3,000~1,000,000の範囲内であるのが好ましく、3,000~100,000の範囲内であるのが好ましい。また、上記ブレンドポリマー(B)に含まれる、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)の重量平均分子量は3,000~1,000,000の範囲内であるのが好ましく、3,000~100,000の範囲内であるのが好ましい。上記ポリマー(B1)および(B2)の重量平均分子量が上記範囲内であることによって、ブレンドポリマー(B)における各ポリマーの混和性が確保され、良好な微粒子吸着防止性能を確保することができる利点がある。
【0036】
上記ブレンドポリマー(B)における酸価およびアミン価の好ましい範囲は、上記ポリマー(A)と同様である。また、上記ブレンドポリマー(B)における酸価の値Vac(B)およびアミン価の値Vam(B)のVac(B)/Vam(B)は、0.5~1.9の範囲内であり、0.67~1.5の範囲内であるのが好ましく、0.8~1.2の範囲内であるのがより好ましく、0.86~1.13の範囲内であるのがさらに好ましい。Vac(B)/Vam(B)が上記範囲を満たすことによって、ブレンドポリマー(B)における良好な微粒子吸着防止性能を確保することができる利点がある。
【0037】
〔微粒子〕
本発明のポリマー(A)及びブレンドポリマー(B)は、微粒子吸着防止ポリマーであり、塗布・噴霧対象に対して一時的に微粒子吸着防止性能を付与することができる。微粒子としては、例えば花粉、ウイルス、細菌、菌類、塵埃(例えば、ばい煙、ばいじん、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)等のガス状大気汚染物質などに由来する微小粒子状物質(PM2.5)等)、酵母、原生動物、胞子、動物の皮膚の破片、ダニの糞や死骸、ハウスダスト等が挙げられる。微粒子吸着防止性が得られやすい観点からは、微粒子は、好ましくは花粉、ウイルス、細菌、菌類、塵埃、酵母、原生動物、胞子、動物の皮膚の破片、ダニの糞や死骸、及び、ハウスダストからなる群から選択される少なくとも1種であり、例えば大気中に浮遊可能なサイズ(好ましくは直径60μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下)の微粒子、特に、花粉及び/又はウイルスであってよい。これらの微粒子は、通常正または負の電荷を帯びていることが知られている。本発明のポリマーがこれらの微粒子に対する吸着防止性能を有する理由は明らかではないが、ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)およびアミン価の値Vam(A)から算出されるVac(A)/Vam(A)が0.5~1.9である場合、及び、ブレンドポリマー(B)の酸価の値Vac(B)およびアミン価の値Vam(B)から算出されるVac(B)/Vam(B)が0.5~1.9である場合、これらのポリマーが有するアミノ基及び酸基の量が特定の範囲内となると考えられる。このようなアミノ基及び酸基を有するポリマーが、塗布・噴霧対象である毛髪または衣類等の表面に存在することによって、例えば、正または負の電荷を帯びた、直径が例えば60μm以下の微粒子の吸着を防止することが可能であると考えられる。なお、本発明は上記のメカニズムに何ら限定されるものではない。
【0038】
〔微粒子吸着防止剤〕
本開示はまた、上記微粒子吸着防止ポリマーを含む微粒子吸着防止剤を提供する。微粒子吸着防止剤は、上記微粒子吸着防止ポリマー、および、溶媒などの媒質、を少なくとも含む。微粒子吸着防止剤の剤型は特に限定されるものではなく、例えば、ジェル、スプレー、ミスト、ローション、クリーム、乳液、ファンデーション、オーバーコート剤、洗剤などが挙げられる。媒質の種類は、微粒子吸着防止剤の剤型に応じて適宜選択することができる。また、微粒子吸着防止剤は、界面活性剤、紫外線吸収剤や酸化防止剤等の添加剤、および、香料などを含んでもよい。界面活性剤を含む際は、微粒子吸着防止効果をより奏する観点から、非イオン型界面活性剤、および、両性イオン型界面活性剤が好ましい。
【0039】
上記微粒子吸着防止ポリマーによって吸着が防止される花粉として、例えば、ヒノキ科植物(例えば、スギ属、ヒノキ属など)の花粉、イネ科植物(例えば、カモガヤ属、アワガエリ属など)の花粉、キク科植物(例えば、ブタクサ属、ヨモギ属など)の花粉、カバノキ科植物(例えばシラカンバなど)などが挙げられるが、花粉の種類は上記に限定されるものではない。
【0040】
上記微粒子吸着防止ポリマーによって吸着が防止されるウイルスとして、例えばインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、風疹ウイルス、コロナウイルス、エボラウイルス、肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルスなどが挙げられるが、ウイルスの種類は上記に限定されるものではない。
【0041】
上記微粒子吸着防止ポリマーによって吸着が防止される細菌としては、グラム陽性菌(例えばブドウ球菌、連鎖球菌、枯草菌、結核菌、ボツリヌス菌など)及びグラム陰性菌(例えば大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌など)が挙げられるが、細菌の種類は上記に限定されるものではない。
【0042】
上記微粒子吸着防止ポリマーによって吸着が防止される菌類としては白癬菌、カンジタ、アスペルギルスなどが挙げられるが、菌類の種類は上記に限定されるものではない。
【0043】
上記微粒子吸着防止ポリマーによって吸着が防止される塵埃としては、微小粒子状物質(PM2.5)、ばい煙(物の燃焼等に伴い発生するいおう酸化物(SOx)、ばいじん(いわゆるスス)、有害物質(カドミウム及びその化合物、塩素及び塩化水素、弗素、弗化水素及び弗化珪素、鉛及びその化合物、ならびに窒素酸化物(NOx)など)のうち、粒子状のものなどが挙げられるが、塵埃の種類は上記に限定されるものではない。
【0044】
上記微粒子吸着防止ポリマーによって吸着が防止される微粒子としては、さらに、酵母、原生動物、胞子、動物の皮膚の破片、ダニの糞や死骸、ハウスダスト等が挙げられる。
【0045】
上記微粒子吸着防止ポリマーを含む微粒子吸着防止剤を、身体、毛髪、衣類、寝具カバー、装身品(例えばマスク、眼鏡、ゴーグル、帽子、マフラー、スカーフなど)などの塗布・噴霧対象に対して、予め塗布または噴霧することによって、これらの対象に微粒子が吸着することを、簡便かつ有意に防止することができ、これにより微粒子との接触を低減することができる。上記微粒子吸着防止ポリマーが良好な微粒子吸着防止性能を発揮する理由として、理論に拘束されるものではないが、上記微粒子吸着防止ポリマーに含まれる上記ポリマー(A)が酸基およびアミノ基の両方を有する構造、または上記ブレンドポリマー(B)が酸基およびアミノ基の両方を含む構造であって、これらの基の量が特定範囲内であることによって、例えば直径が10~60μm程度であるような微粒子の吸着が防止されることとなると考えられる。
【0046】
上記微粒子吸着防止ポリマーはさらに、上記塗布・噴霧対象に一時的に付着させた後、水洗浄することによって、容易に除去することができる利点もある。上記微粒子吸着防止ポリマーはまた、水洗浄が容易である一方で、耐湿性に優れる利点もある。これらの性能は、上記微粒子吸着防止ポリマーに含まれる上記ポリマー(A)が酸基およびアミノ基の両方を有する構造、または上記ブレンドポリマー(B)が酸基およびアミノ基の両方を含む構造に由来すると考えられる。
【0047】
上記微粒子吸着防止ポリマーを含む微粒子吸着防止剤は、塗布・噴霧対象に対して微粒子吸着防止性能を付与することができ、そして塗布・噴霧対象から容易に除去することができる利点がある。
【実施例】
【0048】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0049】
〔実施例1-1 微粒子吸着防止ポリマー(A-1)の製造〕
還流冷却器、温度計、チッ素導入管、仕込み管および撹拌装置を取り付けた500ml容の五つ口フラスコに、メタクリル酸10部(質量部、以下同様)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド20部、ブチルメタクリレート70部からなるモノマー混合物と、無水エタノール150部とを入れ、これにα,α’-アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)0.2部を加え、撹拌しながらチッ素気流下に80℃で加熱還流した。
重合開始6時間後に、AIBN 0.2部をさらに加え、さらに12時間重合反応させた。
【0050】
得られた樹脂組成物を濃度が30重量%となるようにエタノールで希釈し、ポリマー(A-1)(30%ポリマーエタノール溶液)を得た。
得られたポリマー(A-1)は、酸価が65.24mgKOH/g、アミン価が66.01mgKOH/gであった。上記酸価およびアミン価は、下記式に従い算出した。なお、酸基含有モノマーが2種またはそれ以上を併用する場合は、下記式に従い算出した各モノマーの酸価および各モノマーの質量割合に基づいた算出平均値を酸価とする。これは、アミノ基含有モノマーにおいても同様である。
得られたポリマーの酸価の値Vac(A)およびアミン価の値Vam(A)の比Vac(A)/Vam(A)は0.99であった。
また、得られたポリマー(A-1)の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、およそ50,000であった。
・酸価(mgKOH/g)=酸基含有モノマーの量(g)/酸基含有モノマーのMw×56.11(KOHの分子量)×1000/ポリマー固形分(g)
・アミン価(mgKOH/g)=アミノ基含有モノマーの量(g)/アミノ基含有モノマーのMw×56.11(KOHの分子量)×1000/ポリマー固形分(g)
【0051】
〔実施例1-2〕
AIBNの量を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、重量平均分子量が5000のポリマーを合成した。得られたポリマーの各数値を下記表に示す。
【0052】
〔実施例1-3〕
AIBNの量を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、重量平均分子量が100000のポリマーを合成した。得られたポリマーの各数値を下記表に示す。
【0053】
〔実施例1-4~1-9、1-11~1-14および比較例1-1~1-9の製造〕
ポリマー(A)の調製に用いたモノマー混合物中に含まれる各モノマーの種類および量を、下記表に記載の通り変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして、ポリマーを調製した。得られたポリマーの各数値を下記表に示す。
【0054】
〔実施例1-10の製造〕
ポリマー(A)の調製に用いたモノマー混合物中に含まれる各モノマーの種類および量を、下記表に記載の通り変更したこと以外は、実施例1-3と同様にして、ポリマーを調製した。得られたポリマーの各数値を下記表に示す。
【0055】
〔実施例2-1、比較例2-1、2-2〕
(微粒子吸着防止ポリマー(B1)の製造)
還流冷却器、温度計、チッ素導入管、仕込み管および撹拌装置を取り付けた500ml容の五つ口フラスコに、メタクリル酸30部およびブチルメタクリレート70部からなるモノマー混合物と、無水エタノール150部とを入れ、これにAIBN 0.2部を加え、撹拌しながらチッ素気流下に80℃で加熱還流した。
重合開始6時間後に、AIBN 0.2部をさらに加え、さらに12時間重合反応させた。
得られた樹脂組成物を濃度が30重量%となるようにエタノールで希釈し、酸基を有するポリマー(B1)(30%ポリマーエタノール溶液)を得た。
調製したポリマー(B1)の酸価の値Vac(B)は195.73であり、重量平均分子量は51,000であった。
【0056】
(微粒子吸着防止ポリマー(B2)の製造)
還流冷却器、温度計、チッ素導入管、仕込み管および撹拌装置を取り付けた500ml容の五つ口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート30部およびブチルメタクリレート70部からなるモノマー混合物と、無水エタノール150部とを入れ、これにAIBN 0.2部を加え、撹拌しながらチッ素気流下に80℃で加熱還流した。
重合開始6時間後に、AIBN 0.2部をさらに加え、さらに12時間重合反応させた。
【0057】
得られた樹脂組成物を濃度が30重量%となるようにエタノールで希釈し、アミノ基を有するポリマー(B2)(30%ポリマーエタノール溶液)を得た。
調製したポリマー(B2)のアミン価の値Vam(B)は107.2であり、重量平均分子量は49,000であった。
【0058】
上記酸価の値Vac(B)、アミン価の値Vam(B)および重量平均分子量は、実施例1-1と同様の手順により求めた。
【0059】
〔実施例2-1〕
上記より得られた、酸基を有するポリマー(B1)35.4部およびアミノ基を有するポリマー(B2)64.6部を混合して、ブレンドポリマー(B-1)を得た。
得られたブレンドポリマー(B-1)における酸価の値Vac(B)およびアミン価の値Vam(B)の比Vac(B)/Vam(B)は1.00であった。
【0060】
〔比較例2-1および2-2〕
比較例2-1として、上記より得られたアミノ基を有するポリマー(B2)をそのまま用いた。
比較例2-2として、上記より得られた酸基を有するポリマー(B1)をそのまま用いた。
【0061】
〔参考例〕
参考例として、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルーN,N-ジメチルアンモニウムーα-N-メチルカルボキシベタイン ポリマー(大阪有機化学工業株式会社製。以下、CMBという)の30%エタノール溶液を調整した。
このポリマーの重量平均分子量は74200であった。
【0062】
上記実施例および比較例により得られたポリマー、ブレンドポリマーを用いて、下記評価試験を行った。評価結果を下記表に示す。
【0063】
〔微粒子(花粉)吸着防止性評価〕
実施例、比較例、および参考例のポリマーまたはブレンドポリマーを5w/v%で有溶媒(エタノールまたはトルエン)に溶解させ、その溶液に基板を1日浸漬させた後、エタノールで洗浄し窒素ガスにより乾燥させることにより、試験板を作成した。
得られた試験板を、面積が100cm2である帯電防止加工がされたプラスチック製の密閉容器に固定した。さらに、温度25℃湿度65%の条件で2時間静置した。その後、スギ花粉粒子 10mgを密閉容器中に入れて、振とうさせながら10時間放置した。
次いで、試験板を取り出し、窒素ガスを吹き付けて、表面に降り積もった花粉を取り除いた後、試験板に吸着された、単位面積0.55mm2の範囲に存在する花粉の個数を、光学顕微鏡(倍率10倍)で観察し、試験板に吸着された花粉の個数を求めた。
以下の評価基準に基づいて評価した。
A:単位面積当たりの花粉の数が10個以下
A’:単位面積当たりの花粉の数が11個以上25個以下
B:単位面積当たりの花粉の数が26個以上100個以下
C:単位面積当たりの花粉の数が101個以上
【0064】
〔水溶性評価〕
各実施例および比較例で得られたポリマー溶液の液温を20℃に保ち、市販のバーコーターにより、ガラス板(10×10cm)に各ポリマー溶液を塗布した。ポリマー溶液を塗布したガラス板を庫内の温度を105℃に設定した温風乾燥機に入れ、30分間乾燥させ、取り出したガラス板を20℃の雰囲気下で30分間冷却することで、ガラス板上に膜厚が10μm~30μmの被膜を形成した試験板を作成した。
この試験板の被膜上に精製水をピペットにて落とし、被膜の状態を観察することで、水溶性を評価した。具体的には、精製水を落としてからの被膜の変化を以下の基準に沿って評価した。
A:1分以内にガラス表面が露出したことが観察された。
A’:30分以内にガラス表面が露出したことが観察された。
B:30分後、被膜が膨潤した状態が観察された。
C:30分を超えても、被膜の状態に変化が見られない。
【0065】
〔耐湿性評価〕
上記の水溶性評価と同様にして、各ポリマー溶液を塗布した試験板を作成した。
これらの試験板を30℃、相対湿度90%の雰囲気中に垂直に立てかけ3時間静置した後、20℃の雰囲気化で30分間冷却し、各試験板の状態を観察し、被膜の状態を以下の基準に沿って評価した。
A:被膜が綺麗に残っている。
A’:被膜表面がやや白濁している。
B:被膜表面が膨潤している。
C:被膜が無くなっている。
【0066】
〔微粒子(ウイルス)吸着防止性評価〕
(試験板の調製)
実施例および比較例で得られたポリマー溶液の液温を20℃に保ち、市販のバーコーターにより、ガラス板(2.5×4.0cm)に各ポリマー溶液を塗布した。ポリマー溶液を塗布したガラス板を庫内の温度を105℃に設定した温風乾燥機に入れ、30分間乾燥させ、取り出したガラス板を20℃の雰囲気下で30分間冷却することで、ガラス板上に膜厚が10μm~30μmの被膜を形成した試験板を作成した。このようにして、表5に示すポリマーを被覆した試験区1~5を設定した。
(ウイルス液の調製)
1)Swine influenza virus H1N1 IOWA株(以下、「SIV」と称する)をMDCK細胞に接種した。
2)37℃で1時間吸着後、接種ウイルス液を除去し、滅菌PBSで2回洗浄した。
3)MEM培地を加え、37℃、5%CO
2下で培養した。
4)70~80%程度の細胞変性効果(以下、「CPE」と称する)が観察された時点で、培養上清を回収した。
5)回収した培養上清を、3000rpmで30分間遠心後、遠心上清を分注し、-70℃以下で保存したものを供試ウイルス液とした。
(試験方法)
1)供試ウイルス液をMEM培地で希釈し、試験液(ウイルス力価:10
6.7TCID
50/mL)を調製後、シャーレに20mLずつ分注した。
2)試験資材1枚をピンセットでつまみ、試験液20mLにポリマー塗布面を10秒間接触させた。
3)10秒後、試験資材を試験液から持ち上げ、空のシャーレ内へ入れた。
4)試験資材のポリマー塗布面に対し、細胞維持培地5mL(1mL×5回)をピペットで滴下し、表面の付着ウイルス液を洗い出し回収した。
5)回収した液について、TCID
50法(以下、(1)~(3)参照)でウイルス力価を測定した。
(1)細胞維持培地で10倍階段希釈した。
(2)希釈液をMDCK細胞に接種後、37℃、5%CO
2下で5日間培養した。
(3)培養後、CPEの有無からウイルス力価を測定した。
以上、2)~5)の手順を全ての試験区で実施した。なお、試験液は試験区ごと(試験資材ごと)に交換した。得られた結果を表5に示す。なお、表5中の抑制率は、対照であるBMAを用いた場合のウイルス力価に対して、各ポリマーを用いた場合にどの程度ウイルス力価を小さくすることができたかを表し、次の式:
【数1】
より算出した。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
実施例のポリマーおよびブレンドポリマーはいずれも、微粒子(花粉)吸着防止性に優れており、また、耐湿性および水溶性の性能もまた良好であることが確認された。また、実施例1-1及び1-9のポリマーについては、花粉と同様に微粒子であるウイルスの吸着防止性に優れることも確認された。耐湿性および水溶性の性能は、一般的には相反する性能でもあり、例えば水溶性が高い場合は、耐湿性が劣る傾向がある。上記実施例のポリマーおよびブレンドポリマーはいずれも耐湿性が良好であることから、微粒子吸着防止剤を塗布・噴霧した際に湿度に対する耐性があり、さらに、水溶性が高いことから、微粒子吸着防止剤を塗布・噴霧した後の水洗浄が容易であるという利点がある。
比較例1-1、1-5は、ポリマー(A)におけるアミノ基を有しない例である。この例では、微粒子吸着防止性、水溶性が劣ることが確認された。
比較例1-2は、ポリマー(A)における酸基を有しない例である。この例では、特に微粒子吸着防止性が劣ることが確認された。
比較例1-3は、ポリマー(A)における酸基およびアミノ基の両方を有しない例である。この例では、微粒子吸着防止性、水溶性などの諸性能が劣ることが確認された。
比較例1-4は、両性イオン基(カルボキシベタイン)を有するモノマーユニットを含む例である。この例では、微粒子吸着防止性は優れる一方で、水溶性などが劣ることが確認された。
比較例1-6~1-9は、Vac(A)/Vam(A)の値が上記範囲の範囲外となる例である。これらの例では、微粒子(花粉又はウイルス)吸着防止性が低いことが確認された。
比較例2-1は、ブレンドポリマー(B)において酸基を有するポリマー(B1)を含まない例である。また比較例2-2は、ブレンドポリマー(B)においてアミノ基を有するポリマー(B2)を含まない例である。これら例ではいずれも、微粒子吸着防止性、水溶性などの諸性能が劣ることが確認された。
参考例は、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルーN,N-ジメチルアンモニウムーα-N-メチルカルボキシベタイン ポリマーを用いた例である。この例では、微粒子吸着防止性は優れる一方で、耐湿性が劣ることが確認された。
【0073】
次に、本発明の微粒子吸着防止ポリマーの処方例を以下に記載するが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0074】
〔処方例1 エアゾールスプレー〕
以下の各成分を混合することにより、エアゾールスプレーを調製した。得られたエアゾールスプレーは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 7.0重量部
(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1重量部
(3)エチルアルコール 50.0重量部
(4)精製水 10.0重量%
(5)香料 適量
(6)ジメチルエーテル(噴射剤) 残部
【0075】
〔処方例2 ミストスプレー〕
以下の各成分を混合することにより、ミストスプレーを調製した。得られたミストスプレーは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 3.0質量部
(2)エチルアルコール 10.0質量部
(3)フェノキシエタノール 0.2質量部
(4)1,3-ブチレングリコール 10.0質量部
(5)精製水 残部
【0076】
〔処方例3 ローション〕
以下の各成分を混合することにより、ローションを調製した。得られたローションは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 1.0質量部
(2)エチルアルコール 2.0質量部
(3)フェノキシエタノール 0.2質量部
(4)1,3-ブチレングリコール 10.0質量部
(5)ナイロンパウダー 1.0質量部
(6)亜鉛華 1.0質量部
(7)精製水 残部
【0077】
〔処方例4 スキン用クリーム〕
以下の各成分を混合することにより、スキン用クリームを調製した。得られたスキン用クリームは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 4質量部
(2)エタノール 8質量部
(3)ジメチルポリシロキサン 5質量部
(4)デカメチルシクロペンタシロキサン 25質量部
(5)トリメチルシロキシケイ酸 5質量部
(6)ポリオキシエチレン-メチルポリシロキサン共重合体 2質量部
(7)ジプロピレングリコール 5質量部
(7)微粒子酸化亜鉛 15質量部
(8)パラベン 適量
(9)フェノキシエタノール 適量
(10)エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩 適量
(11)パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 7.5質量部
(12)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5質量部
(13)球状ポリアクリル酸アルキル粉末 5質量部
(14)香料 適量
(15)精製水 残部
【0078】
〔処方例5 スキン用乳液〕
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、スキン用乳液を調製した。得られたスキン用乳液は、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)エタノール 8質量部
(3)ワセリン 1質量部
(4)ジメチルポリシロキサン 3質量部
(5)メチルフェニルポリシロキサン 3質量部
(6)ステアリルアルコール 0.5質量部
(7)グリセリン 7質量部
(8)ジプロピレングリコール 3質量部
(9)1,3-ブチレングリコール 7質量部
(10)キシリトール 3質量部
(11)スクワラン 1質量部
(12)イソステアリン酸 0.5質量部
(13)ステアリン酸 0.5質量部
(14)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1質量部
(15)モノステアリン酸グリセリン 2質量部
(16)水酸化カリウム 0.05質量部
(17)リン酸L-アスコルビルマグネシウム 0.1質量部
(18)酢酸トコフェロール 0.1質量部
(19)アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部
(20)エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩 0.05質量部
(21)4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン 2質量部
(22)パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 5質量部
(23)カルボキシビニルポリマー 0.1質量部
(24)フェノキシエタノール 適量
(25)香料 適量
(26)精製水 残部
【0079】
〔処方例6 日焼け止めジェル〕
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、日焼け止めジェルを調製した。得られた日焼け止めジェルは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 3質量部
(2)エタノール 15質量部
(3)ブタンジオール 5質量部
(4)トリエタノールアミン 0.1質量部
(5)フェノキシエタノール 適量
(6)エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 適量
(7)PEGPPG-19/19ジメチコン 4質量部
(8)イソステアリン酸PEG-60グリセリル 0.1質量部
(9)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5質量部
(10)オクトクリレン 2質量部
(11)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 3質量部
(12)キサンタンガム 0.1質量部
(13)アクリル酸-アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数:10-30)コポリマー 0.1質量部
(14)カルボマー 0.1質量部
(15)香料 適量
(16)トラネキサム酸 2質量部
(17)タルク 3質量部
(18)オキシベンゾン 1質量部
(19)精製水 残部
【0080】
〔処方例7 ファンデーション〕
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、ファンデーションを調製した。得られたファンデーションは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)エタノール 8質量部
(3)ジメチルポリシロキサン 8質量部
(4)ベヘニルアルコール 0.5質量部
(5)バチルアルコール 0.5質量部
(6)1,3-ブチレングリコール 5質量部
(7)マカデミアナッツ油 0.1質量部
(8)イソステアリン酸 1.5質量部
(9)ステアリン酸 1質量部
(10)ベヘニン酸 0.5質量部
(11)2-エチルヘキサン酸セチル 5質量部
(12)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1質量部
(13)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1質量部
(14)黄酸化鉄被覆雲母チタン 2質量部
(15)酸化チタン 4質量部
(16)タルク 0.5質量部
(17)カオリン 3質量部
(18)合成金雲母 0.1質量部
(19)架橋型シリコーン粉末 0.1質量部
(20)無水ケイ酸 5質量部
(21)水酸化カリウム 0.2質量部
(22)トリエタノールアミン 0.8質量部
(23)酢酸DL-α-トコフェロール 0.1質量部
(24)ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部
(25)パラオキシ安息香酸エステル 適量
(26)パラメトキシ桂皮酸2-エチルへキシル 1質量部
(27)ベンガラ 適量
(28)黄酸化鉄 適量
(29)黒酸化鉄 適量
(30)キサンタンガム 0.1質量部
(31)ベントナイト 1質量部
(32)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1質量部
(33)香料 適量
(34)精製水 残部
【0081】
〔処方例8 水中油型乳液ファンデーション〕
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、水中油型乳液ファンデーションを調製した。得られた水中油型乳液ファンデーションは微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化チタン 9質量部
(3)アルキル変性シリコーン樹脂被覆超微粒子酸化チタン 5質量部
(4)アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化鉄(赤) 0.5質量部
(5)アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化鉄(黄) 1.5質量部
(6)アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化鉄(黒) 0.2質量部
(7)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン 0.5質量部
(8)デカメチルペンタシクロシロキサン 5質量部
(9)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5質量部
(10)アクリルシリコーン 4質量部
(11)PEG-100水添ヒマシ油 2質量部
(12)ダイナマイトグリセリン 6質量部
(13)キサンタンガム 適量
(14)カルボキシメチルセルロース 適量
(15)アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体 0.5質量部
(16)エタノール 8質量部
(17)イオン交換水 残部
【0082】
〔処方例9 化粧下地〕
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、化粧下地を調製した。得られた化粧下地は、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)エタノール 8質量部
(3)α-オレフィンオリゴマー 10質量部
(4)ジメチルポリシロキサン 5質量部
(5)ベヘニルアルコール 0.5質量部
(6)バチルアルコール 0.5質量部
(7)1,3-ブチレングリコール 5質量部
(8)イソステアリン酸 1質量部
(9)ステアリン酸 1質量部
(10)ベヘニン酸 1質量部
(11)2-エチルヘキサン酸セチル 2質量部
(12)N-ラウロイル L-グルタミン酸ジ(フィトステアリル・2-オクチルドデシル) 0.1質量部
(13)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 2質量部
(14)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.5質量部
(15)タルク 0.5質量部
(16)雲母チタン 0.5質量部
(17)黒酸化鉄被覆雲母チタン 0.1質量部
(18)水酸化カリウム 0.2質量部
(19)メタリン酸ナトリウム 0.5質量部
(20)酢酸トコフェロール 0.1質量部
(21)パラオキシ安息香酸エステル 適量
(22)パラメトキシ桂皮酸2-エチルへキシル 3質量部
(23)有色顔料 適量
(24)キサンタンガム 0.1質量部
(25)ベントナイト 1質量部
(26)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1質量部
(27)球状ポリアクリル酸アルキル粉末 0.1質量部
(28)球状無水ケイ酸 5質量部
(29)酸化チタン 5質量部
(30)香料 適量
(31)精製水 残部
【0083】
〔処方例10 オーバーコート剤〕
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、オーバーコート剤を調製した。得られたオーバーコート剤は、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩 0.1質量部
(2)グリセリン 5質量部
(3)ジプロピレングリコール 5質量部
(4)フェノキシエタノール 0.5質量部
(5)(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー 0.4質量部
(6)エタノール 8質量部
(7)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(8)香料 適量
(9)精製水 残部
【0084】
〔処方例11 衣服用液体洗剤〕
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、衣服用液体洗剤を調製した。得られた衣服用液体洗剤で選択した衣服は微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)ポリエチレングリコール 2質量%。
(3)エタノール 7質量%。
(4)安息香酸ナトリウム 0.5質量%。
(5)クエン酸 0.1質量%。
(6)パラトルエンスルホン酸 0.5質量%。
(7)モノエタノールアミン 適量。
(8)水酸化ナトリウム 適量。
(9)香料 0.5質量%。
(10)イソチジアゾロン液 0.001質量%。
(11)ジブチルヒドロキシトルエン 質量%。
(12)精製水 残部
【0085】
〔処方例12 市販マスク用ミストスプレー〕
以下の各成分を混合することにより、ミストスプレーを調製した。得られたミストスプレーは市販のマスクにスプレーすることで、微粒子吸着防止能を有することが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 3.0質量部
(2)フェノキシエタノール 0.2質量部
(3)1,3-ブチレングリコール 10.0質量部
(4)精製水 残部
【産業上の利用可能性】
【0086】
上記微粒子吸着防止ポリマーは、有意な微粒子吸着防止性能を有する。さらに上記微粒子吸着防止ポリマーは、水洗浄によって、塗布・噴霧対象から容易に除去することができる利点がある。上記微粒子吸着防止ポリマーを用いることによって、微粒子との接触を有意に低減することができる。