(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】水系メイクアップ化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20221202BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20221202BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/19
A61Q1/02
(21)【出願番号】P 2017093503
(22)【出願日】2017-05-10
【審査請求日】2020-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390041036
【氏名又は名称】株式会社日本色材工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100136560
【氏名又は名称】森 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】作井 沙紀子
(72)【発明者】
【氏名】小西 桂子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 さおり
(72)【発明者】
【氏名】菅野 奈緒子
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-214103(JP,A)
【文献】特開2010-260839(JP,A)
【文献】特開2014-009228(JP,A)
【文献】特開2007-217320(JP,A)
【文献】Kicks, Sweden,Lift Lash Volume & Curl Mascara,Mintel GNPD [online],2017年01月,https://portal.mintel.com,ID#4576563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)皮膜形成性樹脂エマルションと、
(B)アクリレーツコポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーまたはそのAMP塩および(ジアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上である溶液系高分子を固形換算で1.0~5.0質量%と、
(C)着色剤と、
(D)pH調整剤を0.01~0.2質量%と、
を含有し、
前記(C)着色剤が、平均粒子径が120~150nmで、容積比重が1.7~1.9g/cm
3の
カーボンブラックであることを特徴とする水系メイクアップ化粧料。
【請求項2】
(A)皮膜形成性樹脂エマルションと、
(B)アクリレーツコポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーまたはそのAMP塩および(ジアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上である溶液系高分子を固形換算で1.0~5.0質量%と、
(C)着色剤と、
(D)pH調整剤を0.01~0.2質量%と、
を含有し、
前記(C)着色剤が、平均粒子径が100~200nmで、かさ比重が0.46~1.3g/cm
3の
酸化鉄であることを特徴とする水系メイクアップ化粧料。
【請求項3】
前記皮膜形成性樹脂エマルションが、アクリレーツコポリマーの樹脂エマルションである請求項1または2記載の水系メイクアップ化粧料。
【請求項4】
前記溶液系高分子が、アクリレーツコポリマーAMPである請求項1~3のうちいずれか一項に記載の水系メイクアップ化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイクアップ化粧料に関し、特に、水系のメイクアップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水系メイクアップ化粧料、特に水系アイメイクアップ化粧料において、塗布後の耐水性、耐摩擦性などの化粧持ちが優れているものが好まれており、その機能を発揮する主要原料である皮膜形成剤を含有する水系メイクアップ化粧料について様々な改良の検討がなされている。
【0003】
かかる改良として、例えば、特許文献1には、顔料と、皮膜形成性樹脂からなる分散剤0.5~5質量%と、皮膜形成剤2~15質量%(固形分換算)と、分子量200~4300のグリセリン誘導体3~15質量%と、水とを含有し、かつ、EMD型粘度計におけるずり速度76.8S-1の粘度(25℃)が20~250mPa・sの範囲であることを特徴とする液体化粧料が、開示され、特許文献2には、塗布手段として筆穂又はペン芯を用いる液体化粧料塗布具に内蔵される液体化粧料であって、該液体化粧料は、少なくとも、黒酸化鉄1~30質量%と、水と、皮膜形成性樹脂からなる分散剤0.5~5質量%と、皮膜形成剤2~15質量%(固形分換算)と、界面活性剤0.1~3質量%と、揮発性アルコール0.05~5質量%と、グリコール類5~20質量%とを含有し、かつ、ELD型粘度計による温度25℃、ずり速度3.83S-1での粘度が2~10mPa・sの範囲であり、かつ、黒酸化鉄分散トナーの平均粒子径が100~300nmであることを特徴とする液体化粧料が、開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、アニオン系高分子分散剤と、分子量300以下の酸と、酸化鉄粒子とを含み、化粧料の粘度が15mPa・s以下であり、化粧料中の酸化鉄粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする化粧料組成物が、開示され、特許文献4には、下記成分(A)~(E)、(A):光輝性顔料、(B):カーボンブラック、(C):微生物由来の多糖類、(D):揮発性アルコール、(E):アクリル酸アルキル共重合体エマルジョンを含有することを特徴とする水系アイライナー組成物が、開示されている。
【0005】
また、特許文献5には、少なくとも無機顔料、分散剤、皮膜形成剤及び水とからなる液体化粧料であって、該分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの(C1~C4およびC8)アルキルエステルのうちから選択される1種又は2種以上の化合物を原料モノマーとする単独重合体もしくは共重合体であり、該皮膜形成剤が、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの(C1~C4およびC8)アルキルエステル、又はスチレンのうちから選択される1種又は2種以上の化合物を原料モノマーとする単独重合体もしくは共重合体のエマルジョンであることを特徴とする液体化粧料が、開示され、特許文献6には、粘度が50~250mPa・sであり、少なくとも板状顔料と、顔料分散剤と、皮膜形成剤と、0.001~0.5質量%の界面活性剤と、水とを含む水系液体メイクアップ化粧料であって、更に、球状粉体を含むことを特徴とする水系液体メイクアップ化粧料が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-140473号公報
【文献】特開2014-214103号公報
【文献】特開2015-164912号公報
【文献】特開2007-153744号公報
【文献】国際公開第2007/083753号
【文献】国際公開第2007/123115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、自然浸透式のペン型塗布具、すなわち、毛細管現象等により圧を加える等の外的要因がなくても自然に化粧料が筆穂やペン芯に浸透するペン型塗布具で使用する場合、経時で筆穂やペン芯などにつまりを生じて液状化粧料が吐出されなくなるのを抑制するため、粘度を低く抑えようとすると、皮膜形成剤の量を増やせず、化粧持ち効果が十分に得られ難くなる。また、特許文献2に記載されている技術は、顔料の分散剤として水に溶解することが望ましいとされる溶液系高分子を配合し、皮膜形成剤としてエマルション樹脂を使用しているが、粘度が2~10mPa・sの範囲であり、この粘度にするための皮膜形成剤の量では、化粧持ち効果が十分に得られ難くい。
【0008】
また、特許文献3に記載されている技術は、顔料の分散性に優れているものではあるが、粘度が2~8mPa・sと低く、化粧持ち効果が十分に得られ難くい。さらに、特許文献4に記載されている技術は、被膜形成剤となるアクリル酸アルキル共重合体エマルジョンを含有しているが、自然浸透式のペン型塗布具で使用する場合、経時で筆穂やペン芯などにつまりを生じて液状化粧料が吐出されなくなるのを抑制するため、粘度を低く抑えようとすると、皮膜形成剤の量を増やせず、化粧持ち効果が十分に得られ難くなる。
【0009】
また、特許文献5に記載されている技術は、分散剤として、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの(C1~C4およびC8)アルキルエステルのうちから選択される1種又は2種以上の化合物を原料モノマーとする単独重合体もしくは共重合体を含有し、皮膜形成剤として、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの(C1~C4およびC8)アルキルエステル、又はスチレンのうちから選択される1種又は2種以上の化合物を原料モノマーとする単独重合体もしくは共重合体のエマルジョンを含有しているが、自然浸透式のペン型塗布具で使用する場合、経時で筆穂やペン芯などにつまりを生じて液状化粧料が吐出されなくなるのを抑制するため、粘度を低く抑えようとすると、皮膜形成剤の量を増やせず、化粧持ち効果が十分に得られ難くなる。さらに、特許文献6に記載されている技術でも、自然浸透式のペン型塗布具で使用する場合、経時で筆穂やペン芯などにつまりを生じて液状化粧料が吐出されなくなるのを抑制するため、粘度を低く抑えようとすると、皮膜形成剤の量を増やせず、化粧持ち効果が十分に得られ難くなる。
【0010】
ノックや回転式のしかけにより圧力を加える等の「外的要因によって吐出を促す塗布具」等では、皮膜形成剤の量を増やすことで、皮膚への塗布時の化粧持ちをよくすることはできるが、筆記具と同様の構造で化粧料が自然に吐出してくる自然浸透式のペン型塗布具等では、良好な吐出量を維持するためには粘度を低くする必要があるために皮膜形成剤を増やせず、また、場合によっては減らさなければならず、その結果、容器からの吐出量は維持できるものの皮膚への塗布時の化粧持ちが悪くなる。一方で、化粧持ちを向上するために皮膜形成剤を増やすと筆穂やペン芯などのつまりなどにより、吐出量を維持できなくなり、かすれなどが生じて皮膚への塗布が困難になる場合がある。このため、上記のように、特許文献1~6に記載の技術では、自然浸透式のペン型塗布具等を使用するためには、皮膜形成剤の量を増やさないか、場合によっては減らす必要があるが、皮膜形成剤の量を増やせないと、化粧持ちが低下してしまう。このように、従来の技術では、化粧持ちを向上させようとすると、自然浸透式のペン型塗布具等を使用できなくなるといったように、使用できる容器が限られ、コストや生産性などを考慮した容器の選択が制限され、使用できる容器の制限を減らすために皮膜形成剤の量を増やさないか、減らすと化粧持ち効果が十分に得られなくなるという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決し、使用できる容器の制限を減らしながら化粧持ち効果を向上した水系メイクアップ化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、皮膜形成性樹脂エマルションと溶液系高分子を含有することによって、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の水系メイクアップ化粧料は、
(A)皮膜形成性樹脂エマルションと、
(B)アクリレーツコポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーまたはそのAMP塩および(ジアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上である溶液系高分子を固形換算で1.0~5.0質量%と、
(C)着色剤と、
(D)pH調整剤を0.01~0.2質量%と、
を含有し、
前記(C)着色剤が、平均粒子径が120~150nmで、容積比重が1.7~1.9g/cm3のカーボンブラックであることを特徴とするものである。また、本発明の水系メイクアップ化粧料は、
(A)皮膜形成性樹脂エマルションと、
(B)アクリレーツコポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーまたはそのAMP塩および(ジアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上である溶液系高分子を固形換算で1.0~5.0質量%と、
(C)着色剤と、
(D)pH調整剤を0.01~0.2質量%と、
を含有し、
前記(C)着色剤が、平均粒子径が100~200nmで、かさ比重が0.46~1.3g/cm3の酸化鉄であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の水系メイクアップ化粧料は、前記皮膜形成性樹脂エマルションが、アクリレーツコポリマーの樹脂エマルションであることが好ましく、前記溶液系高分子が、アクリレーツコポリマーAMPであることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の水系メイクアップ化粧料は、前記(C)着色剤が、カーボンブラック、黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄およびコンジョウからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明の水系メイクアップ化粧料は、前記(D)pH調整剤が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グリコール酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸および2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の水系メイクアップ化粧料は、アイライナー化粧料用またはアイブロウ化粧料用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、使用できる容器の制限を減らしながら化粧持ち効果が向上した水系メイクアップ化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の水系メイクアップ化粧料について具体的に説明する。
本発明の水系メイクアップ化粧料は、(A)皮膜形成性樹脂エマルションと、(B)アクリレーツコポリマーAMP、(アクリル酸ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMPおよび(ジアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上である溶液系高分子と、(C)着色剤と、(D)pH調整剤を0.01~0.2質量%と、を含有し、前記(C)着色剤が、平均粒子径が120~150nmで、容積比重が1.7~1.9g/cm
3
の粉体顔料であることを特徴とするものである。また、本発明の水系メイクアップ化粧料は、(A)皮膜形成性樹脂エマルションと、(B)アクリレーツコポリマーAMP、(アクリル酸ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMPおよび(ジアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上である溶液系高分子と、(C)着色剤と、(D)pH調整剤を0.01~0.2質量%と、を含有し、前記(C)着色剤が、平均粒子径が100~200nmで、かさ比重が0.46~1.3g/cm
3
の粒体顔料であることを特徴とするものである。これにより、使用できる容器の制限を減らしながら化粧持ち効果が向上した水系メイクアップ化粧料を提供することができる。また、前記(B)溶液系高分子は、一般に外力によって破壊されにくい強靭な皮膜形成物性を持ち、感触の面でも柔軟性や弾力性があり、そのため振動等で皮膜が壊れることなく、例えば、アイライナーに使用することで、目の細かなうごきに柔軟に対応し、外力にも強い耐摩擦のあるアイライナーを提供でき、さらに前記(A)皮膜形成性樹脂エマルションと併用することで、刺激を低減し、さらに耐摩耗性を向上しながら、かつ、使用できる容器の制限を低減できる水系メイクアップ化粧料を提供することができる。また、前記(B)溶液系高分子を含有しないで前記(A)皮膜形成性樹脂エマルションのみの場合や単に前記(A)皮膜形成性樹脂エマルションの配合量を増加させるのみの場合、目を大きく演出する際に、故意に目尻からはみ出して描いた線などが摩擦に弱く、経時ですぐにこすれてなくなってしまう傾向であったのに対し、本発明では、経時での前髪のこすれや目の動きにも対応できる柔軟な皮膜形成能力と、かつ吐出力を担保できるものである。
【0020】
本発明において、前記(A)皮膜形成性樹脂エマルションとしては、水にポリマーが分散されたものであり、通常化粧料に配合されるポリマーエマルジョンを使用できるが、重合性モノマーを乳化重合して得られるポリマーエマルジョンを用いることが好ましい。ポリマーエマルジョン中に分散されているポリマーとしては、ポリマーエマルジョンを基材に塗布して乾燥させた後に皮膜を形成するものであれば特に制限されず、具体的には、アクリル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー等が挙げられ、中でもアクリル系ポリマーが好ましい。
【0021】
前記アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル酸エステル系モノマーを含むモノマーの重合物(アクリル酸エステル系モノマー単位を含むポリマー)が好ましい。前記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられ、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。アクリル酸エステル系モノマーは1種または2種以上が組合されて用いられる。
【0022】
前記アクリル系ポリマーは、アクリル酸エステル系モノマーからなるポリマーでも、他モノマーとのコポリマーでも構わない。前記他モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、スチレン、エチレン、プロピレン等のオレフィン等が挙げられる。
【0023】
前記アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを主成分とするポリマーが好ましい。特に、アクリル酸エチル及び/又はメタクリル酸エチルを主成分とするポリマーが好ましく、アクリル酸アルキル(C1-C4およびC8)、メタクリル酸アルキル(C1-C4およびC8)、アクリル酸又はメタクリル酸のうち2種以上のモノマーで構成される共重合体である「アクリレーツコポリマー」が、より好ましい。
【0024】
また、酢酸ビニル系ポリマーとしては、酢酸ビニルを含むモノマーの重合物(酢酸ビニル単位を含むポリマー)が好ましい。前記酢酸ビニル系ポリマーは酢酸ビニルホモポリマーでも、他モノマーとのコポリマーでも構わない。前記他モノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、エチレン、プロピレン等のオレフィン等が挙げられる。酢酸ビニル系ポリマーとしては、酢酸ビニルポリマーが好ましい。ポリマーエマルジョンは1種または2種以上が任意に選択されて配合することができる。
【0025】
本発明において、前記(A)皮膜形成性樹脂エマルションとしては、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、アクリル酸エステル共重合体のポリマーエマルジョンとして、ダイトゾール(大東化成工業株式会社製)、ヨドゾール(アクゾノーベル株式会社製)、ポリ酢酸ビニルポリマーエマルジョンとして、ビニブラン(日信化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0026】
また、本発明において、前記(A)皮膜形成性樹脂エマルションの含有量としては、例えば、アクリレーツコポリマーの固形換算として1.0~7.0質量%含有することが好ましく、1.0~5.0質量%含有することがより好ましく、2.0~4.5質量%含有することがさらにより好ましい。1.0質量%より少ない含有量であると化粧もち効果はあるものの、実感を感じ難くなるおそれがあり、7.0質量%より多い含有量であると自然浸透式のペン型塗布具だと若干吐出力が悪くなるおそれや、消費者がかすれ感を感じるおそれがあるため好ましくない。
【0027】
さらに、本発明において、前記(B)溶液系高分子は、アクリレーツコポリマーAMP、(アクリル酸ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMPおよび(ジアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上であり、かかる(B)溶液系高分子としては、通常化粧料に配合されるものを使用でき、例えば、主としてアクリル酸アルキル(C1~C4、C8)、メタクリル酸アルキル(C1~C4、C8)、アクリル酸又はメタクリル酸の中の2種類以上のモノマーからなる共重合体で、AMPの塩を使用できる。なお、「AMP」とは、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを示す。(B)溶液系高分子は、これらの高分子を化粧料に使用可能な適宜の溶媒、通常、水、エタノール、プロピレングリコール又はこれらの混液、あるいは変性アルコールなどに溶解して溶液系高分子として用いることが好ましいが、特に、本発明の効果を確実に得るためには、エタノールに溶解したAMPの塩であることがより好ましい。
【0028】
さらにまた、本発明において、前記(B)溶液系高分子の含有量としては、例えば、アクリレーツコポリマーAMPの固形換算として1.0~5.0質量%含有することが好ましく、1.5~3.5質量%含有することがより好ましい。1.0質量%より少ない含有量であると化粧もち効果はあるものの、実感を感じ難くなるおそれがあり、5.0質量%より多い含有量であると自然浸透式のペン型塗布具だと若干吐出力が悪くなるおそれや、消費者がかすれ感を感じるおそれ、眼への刺激の懸念があるため好ましくない。
【0029】
また、本発明において、アクリレーツコポリマーを2.0~4.5質量%、アクリレーツコポリマーAMPを1.5~3.5質量%を含有することで、化粧持ち効果をより向上できるため、特に好ましい。
【0030】
さらに、本発明において、前記(B)溶液系高分子としては、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、P-7279A(アクリレーツコポリマーAMP:大同化成株式会社製)、ダイナミクス(アクゾノーベル株式会社製)、プラスサイズL-3200B(互応化学工業株式会社製)、プラスサイズL-53P(互応化学工業株式会社製)、プラスサイズL-6010(互応化学工業株式会社製)、プラスサイズL-2700(互応化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0031】
本発明において、前記(C)着色剤としては、本発明の効果が得られれば限定されず、通常化粧品に使用できる着色剤を使用でき、例えば、カーボンブラック,赤色226号,青色204号等の粉体顔料、黒酸化鉄,ベンガラ,黄酸化鉄、コンジョウ,合成雲母,シリカ,雲母チタン等の粒体顔料を挙げることができる。中でも、カーボンブラックは、磁性があるために分散状態の安定性が得難くなる可能性がある酸化鉄に比べ、カーボンブラック自身に磁性がなく、顔料分散性がよく、さらに粒径が細かく肌への付着力が高く、少量で高発色力を示すため、特に好ましい。
【0032】
また、本発明において、前記(C)着色剤が、平均粒子径が120~150nmで、容積比重が1.7~1.9g/cm3の粉体顔料であることが好ましい。これにより、粉体顔料の分散性がよく、さらに粒径が細かく肌への付着力が高く、少量で高発色力を示すことができる。特に、平均粒子径が120~150nmであり、容積比重が1.7~1.9g/cm3のカーボンブラックは、カーボンブラック自身に磁性がないため、特に好ましい。また、かかる粉体顔料を含有することで、経時で筆穂やペン芯などにつまりが生じ難くなり、特にペン先が筆穂やフェルト製等のペン芯で筆記具のような自然浸透式のペン型塗布具に適した水系メイクアップ化粧料を提供できる。
【0033】
さらに、本発明において、前記(C)着色剤が、平均粒子径が100~200nmで、かさ比重が0.46~1.3g/cm3の粒体顔料であることが好ましい。これにより、粒体顔料の分散性がよく、さらに粒径が細かく肌への付着力が高く、少量で高発色力を示すことができる。このような粉体顔料としては、例えば、通常の酸化鉄よりも粒径が細かい透明酸化鉄などと称される酸化鉄などがあり、通常の酸化鉄に比べ分散性が高い。また、かかる粒体顔料を含有することで、経時で筆穂やペン芯などにつまりが生じ難くなり、特にペン先が筆穂やフェルト製等のペン芯で筆記具のような自然浸透式のペン型塗布具に適した水系メイクアップ化粧料を提供できる。
【0034】
また、本発明において、「平均粒子径」とは、例えば、レーザー回折散乱を用いた測定、または、超高圧透過型電子顕微鏡(TEM)もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)による観察などによって求められる数値であり、市販品を使用する場合には、製品に表示された平均粒子径であってよい。
【0035】
また、本発明において、容積比重およびかさ比重は、(1)ふるいを通してメスシリンダーに入れた既知質量の粉体試料の体積を測定する方法、(2)ボリュメーターを通して容器内に入れた既知体積の粉体試料の質量を測定する方法、(3)測定用容器を用いる方法等で、測定することができる。
【0036】
また、本発明において、前記(C)着色剤の含有量としては、5.0~15.0質量%であることが好ましく、6.0~10.0質量%であることがより好ましい。かかる範囲とすることで、吐出力を担保しつつ、より発色を向上したアイライナー製品を提供できる。
【0037】
本発明において、前記(D)pH調整剤としては、本発明の効果が得られれば限定されず、通常化粧品に使用できるpH調整剤を使用でき、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グリコール酸等のヒドロキシ酸類、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸類、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸類、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等を挙げることができ、これらから選択される1種又は2種以上を使用できる。また、中でも、目元に使用する化粧料においては、眼刺激などのより高い安全性が求められることから、クエン酸を使用することが好ましい。
【0038】
さらに、本発明において、前記(D)pH調整剤の含有量としては、眼刺激などの安全性の観点から0.01~0.3質量%であることが好ましく、吐出力に関する前記(C)着色剤等の凝集のおそれを考慮して0.05~0.2質量%であることがより好ましい。
【0039】
また、本発明において、エタノールを含有することが好ましい。かかるエタノールとしては、化粧料に配合できるエタノールであれば特に由来等を含め制限されるものではない。また、添加方法は、前記(A)皮膜形成性樹脂エマルション、前記(B)溶液系高分子、前記(C)着色剤、前記(D)pH調整剤等にあらかじめ添加して加えてもよいし、エタノール単体として添加してもよい。
【0040】
さらにまた、本発明において、親水性非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。かかる親水性非イオン界面活性剤としては、化粧料に配合できる親水性非イオン界面活性剤であれば特に制限されないが、好ましくは、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)、ポリオキシプロピレン(以下、POPという。)等のポリオキシアルキレン(以下、POAという。)付加型の非イオン界面活性剤(以下、「POA系活性剤」ともいう。)であって、親水性に調整されたものを用いることができる。
【0041】
前記親水性POA系活性剤としては、例えば、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2-オクチルドデシルエーテル、POE2-ヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、モノステアリン酸POEグリセリル、モノオレイン酸POEグリセリル、モノイソステアリン酸POEグリセリル等のPOEグリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタン等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸POEソルビット等のPOEソルビット脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(PEG)、モノオレイン酸PEG、モノラウリン酸PEG等のPEG脂肪酸エステル等であって、これらがPOE、POPの付加モル数の調整等常法により親水性に調整されたものが挙げられる。親水性POA系活性剤としては、脂肪族アルコール等のOH基にPOA、好ましくはPOEを付加させた、エーテル基を有するエーテル系の界面活性剤であって、親水性に調整されたものが好ましい。特に、親水性POEアルキルエーテル、POE・POPアルキルエーテルが好ましく、なかでもPOEアルキルエーテルが好ましい。なお、親水性非イオン界面活性剤は1種または2種以上が任意に選択されて配合することができる。
【0042】
かかる親水性POEアルキルエーテルとしては、例えば、ステアレス-11、ステアレス-15、ステアレス-20、ステアレス-25、ステアレス-30、ステアレス-40等を挙げることができ、これらを1種または2種以上が任意に選択されて配合することが好ましい。また、中でも水系メイクアップ化粧料の肌へのなじみと顔料分散性を考慮するとステアレス-20を含むことがより好ましい。親水性POEアルキルエーテルの市販品の例としては、例えば、EMALEX600系(日本エマルジョン株式会社製)等を挙げることができる。
【0043】
また、親水性非イオン界面活性剤の含有量としては、1~3質量%であることが好ましい。かかる範囲とすることで、前記(C)着色剤の分散性がよりよくなり、より安定的に配合することができる。
【0044】
さらに、本発明において、高分子を含有することが好ましい。かかる高分子としては、本発明の効果が得られれば限定されず、通常化粧品に使用できる高分子を使用でき、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子、デキストリン,アラビアガム等の植物系高分子、キサンタンガム,ヒアルロン酸等の微生物系高分子、ポリエチレングリコール等の合成高分子等を挙げることができ、このうちどれか1種又は2種以上を含むことが好ましい。また、中でもPVPは少量添加で顔料分散能を示すため特に好ましく、0.1~0.5質量%配合することが好ましい。
【0045】
また、本発明において、前記高分子は、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、ポリビニルピロリドン(ISPジャパン株式会社製、BASFジャパン株式会社製)、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体(ISPジャパン株式会社製、BASFジャパン株式会社製)等を挙げることができる。
【0046】
さらに、本発明において、グリコール系の基剤は眼刺激に相当しない量で含有することが好ましい。中でも、顔料の濡れや分散や系中の防腐を考慮して、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコールからなる群から選択される1種又は2種以上を含有することが好ましい。
【0047】
本発明の水系メイクアップ化粧料には、前記成分の他に、通常化粧料に用いられる他の成分を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。前記任意配合成分としては、例えば、上記以外の着色剤(粉末・顔料)、上記以外の多価アルコール、油分、上記以外の界面活性剤、保湿剤、増粘剤、染料、低級アルコール、紫外線吸収剤、有機酸、有機アミン、金属イオン封鎖剤、上記以外のpH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、ポリマーエマルジョン中以外の水等を挙げることができる。
【0048】
また、本発明の水系メイクアップ化粧料は、アイライナー化粧料用またはアイブロウ化粧料用であることが好ましく、特に、ペン型のアイライナー化粧料用またはアイブロウ化粧料用として好適である。ペン型塗布具には、レフィルまたはカートリッジ等と呼ばれる容器に水系メイクアップ化粧料を充填したものをペン型の塗布具内に装着し、ノックや回転式の仕掛けがあって圧を加える等の外的要因によって吐出を促すことにより、水系メイクアップ化粧料を塗布具内の筆穂やペン芯へと導入させるものがある。さらに、ペン先のタイプにより、ペン先が筆穂になっている筆ペンタイプやフェルト製等のペン芯になっているペン芯タイプなどがある。
【0049】
さらに、近年は、ノックや回転式の仕掛けによって圧を加える等の外的要因によって吐出を促すペン型の塗布具ではなく、自然浸透式のペン型塗布具がペン型塗布具では主流となってきている。自然浸透式のペン型塗布具は、毛細管現象等により、圧を加える等の外的要因がなくても、自然に化粧料が筆穂やペン芯に浸透するものである。自然浸透式のペン型塗布具には、蛇腹式や中綿式と呼ばれる塗布具がある。蛇腹式は、ペン内に設けられた収容部に化粧料を充填し、蛇腹状の液の吐出量の調整部を介して毛細管現象などによりペン先に化粧料を導くものである。また、中綿式は、塗布具内に収容された中綿に化粧料を含浸させ、この中綿に含浸された化粧料を毛細管現象などによりペン先に導くものである。さらに、蛇腹式や中綿式の自然浸透式のペン型塗布具には、ペン先のタイプにより、ペン先が筆穂になっている筆ペンタイプやフェルト製等のペン芯になっているペン芯タイプなどがある。
【0050】
本発明においては、前記水系メイクアップ化粧料を、ノックや回転式の仕掛けがあって圧を加える等の外的要因によって吐出を促すペン型の塗布具や自然浸透式のペン型塗布具などに充填してペン型化粧料を調製できる。調製の方法は特に限定されず一般的な方法が用いられる。充填に際しては、ペン型化粧料容器に直接充填する方式、カートリッジやレフィルに充填し、筆ペン型化粧料容器に組み込む方式等があるが特に限定されるものではない。さらに、本発明の水系メイクアップ化粧料ペン型化粧料だけでなく、ボトル部に化粧料を充填し、充填した化粧料を蓋部に具備された筆穂やチップなどに付着させて塗布するボトル型の化粧料にも適用できる。
【0051】
また、本発明の水系メイクアップ化粧料は、筆ペン型の化粧料の使用性の点から粘度を10~20mPa・sに調整することが好ましく、10~15mPa・sであることがより好ましい。なお、ここでいう粘度はB型粘度計(RB-80L型やTVB-10m型: 東機産業社製品)を用いて、ローターNo.1、60rpmにおいて30秒後に測定した値である。
【0052】
本発明の水系メイクアップ化粧料を使用した筆ペン型のアイライナー化粧料およびアイブロウ化粧料は、経時で水系メイクアップ化粧料の筆からの吐出は良好で、経時吐出安定性に優れ、使用に際しては塗布しやすく、塗布された化粧料の化粧持ちもより向上する等使用性も良好なものである。
【0053】
また、本発明の水系メイクアップ化粧料の容器としては、例えば、三菱鉛筆株式会社製の直液UC-76、中綿UC-75、回転方式UC-22、株式会社呉竹社製の中綿式容器、吉田コスメワークス株式会社製の中綿式容器、ShyaHsin社製の直液式容器、フィグラ株式会社製のノック式容器等があるが、特に限定されず使用でき、いずれの場合も経時での化粧持ち効果が向上した水系メイクアップ化粧料を提供できる。
【0054】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下、処方中の数値は質量%を示す。
【実施例】
【0055】
(実施例1~7、比較例1~5)
下記表1記載の配合量(含有量)で、水系メイクアップ化粧料となる組成物を従来用いられてきた手順、即ち精製水に(C)着色剤であるカーボンブラック粒子と分散剤を加え、分散機としてディスパー(PRIMIX株式会社製ホモディスパー2.5型DH-2.5)を用いて分散させた後に、その他成分を添加して混合することにより、実施例1~7および比較例1~5の水系メイクアップ化粧料を作製した。得られた水系メイクアップ化粧料について、「経時での化粧持ち効果」の評価を下記「密着力試験」、「吐出力試験」、「耐摩擦性試験」および「耐水性試験」に基づいて行い、結果を下記表1に併記した。なお、表1中、「*」は樹脂エマルション、「**」は溶液系高分子を示し、配合量は固形換算質量%を示す。また、カーボンブラックの平均粒子径は135nmで平均容積比重は1.8g/cm3であり、グリコール系溶媒としては1,3-ブチレングリコールを使用した。
【0056】
<密着力試験>
筆ペンタイプ直液式アイライナー容器に上記で得られた水系メイクアップ化粧料を充填し、水系メイクアップ化粧料を手の甲に塗布し、肌上に塗布した際に肌への密着力を目視により、下記評価基準で観察し評価した。
◎:塗布直後ににじむことなくすぐに乾き、まっすぐな線を描くことができる。
〇:塗布直後に若干肌のキメに入りこむが、まっすぐな線が描ける。
×:塗布直後皮膚のキメに入り込み、まっすぐな線を描く事がやや難しい。
【0057】
<吐出力試験>
筆ペンタイプの直液式アイライナー容器に上記で得られた水系メイクアップ化粧料を充填し、室温、50℃で1週間経過後のそれぞれの筆記描線状態を紙面上と皮膚上で観察し、下記評価基準で評価した。
◎:塗布時に筆に乾燥感や引っかかりを感じることなく吐出の具合もちょうどよく、書ける。
〇:吐出がやや少なく、筆にひっかかりを感じる。
×:初期筆記にかすれがみられ、肌に乾燥感を感じるが、次第に吐出力が回復する。
【0058】
<耐摩擦性試験>
筆ペンタイプの直液式アイライナー容器に上記で得られた水系メイクアップ化粧料を充填し、水系メイクアップ化粧料を手の甲に塗布し10分間自然乾燥させた後、指で擦過し塗布物の落ち具合を目視により下記評価基準で官能評価した。
◎:塗布部の剥がれが少なく良好。
〇:部分的に塗布部の剥がれが生じる。
×:塗布部の半分以上が剥がれてしまう。
【0059】
<耐水性試験>
筆ペンタイプの直液式アイライナー容器に上記で得られた水系メイクアップ化粧料を充填し、水系メイクアップ化粧料を手の甲に塗布し10分間自然乾燥させた後、流水をあて、指で擦過し塗布物の落ち具合を目視により下記評価基準で官能評価した。
◎:塗布部の剥がれが少なく良好。
〇:部分的に塗布部の剥がれが生じる。
×:塗布部の半分以上が剥がれてしまう。
【0060】
【0061】
表1に示すように、実施例1~7の水系メイクアップ化粧料は、密着力試験、吐出力試験、耐摩擦性試験および耐水性試験の全てにおいて良好で、経時での化粧持ち効果は、良好であった。一方、比較例1の水系メイクアップ化粧料は密着力と耐水性が悪く、比較例2と比較例3の水系メイクアップ化粧料は密着力と耐摩擦性が悪く、比較例4の水系メイクアップ化粧料は耐水性が悪く、比較例5の水系メイクアップ化粧料は耐摩擦性が悪く、いずれも良好な経時での化粧持ち効果は得られなかった。
【0062】
次いで、上記表1の結果より特に優位性のみられた実施例3の水系メイクアップ化粧料について、市場実績のある比較例5の水系メイクアップ化粧料を対象にし、実使用に基づいた下記有用性試験を行い、「実使用耐摩擦性」の結果を下記表2、「実使用耐皮脂性」の結果を下記表3、「実使用耐水性」の結果を下記表4に示した。
【0063】
<実使用耐摩擦性>
白い人工皮革に塗布し乾いたことを確認した後、摩擦感テスター(カトーテック株式会社製の摩擦感テスターKES-SE)で、シリコン摩擦子100gf静荷重、1cm/secで摩擦を加えた。試験前後の画像比較から塗膜の耐摩擦性を評価した。
【0064】
【0065】
表2は、「実使用耐摩擦性」の試験結果写真である。比較例5の水系メイクアップ化粧料は、実施例3の水系メイクアップ化粧料と比較して、100往復後には描いた塗膜に剥がれが目立ち始めた。最終的に200往復すると比較例5の水系メイクアップ化粧料は皮膜がもろく、塗膜がはがれているのに対し、実施例3の水系メイクアップ化粧料は塗膜のはがれが少なく、耐摩擦性の向上が見受けられた。
【0066】
<実使用耐皮脂性>
白い人工皮革に塗布し乾いたことを確認した後、人工皮脂(オレイン酸:スクワラン酸:オリーブオイル=1:1:2)をスポイトで1滴(20mg)垂らし摩擦感テスター(カト-テック株式会社製の摩擦感テスターKES-SE)でシリコン摩擦子100gf静荷重、1cm/secで摩擦を加えた。試験前後の画像比較から塗膜の耐皮脂性を評価した。
【0067】
【0068】
表3は、「実使用耐皮脂性」の試験結果写真である。比較例5の水系メイクアップ化粧料は、実施例3の水系メイクアップ化粧料と比較して、100往復後には描いた線の塗膜に剥がれが目立ち始めた。最終的に200往復すると比較例5の水系メイクアップ化粧料では塗膜がはがれているのに対し、実施例3の水系メイクアップ化粧料では塗膜の剥がれが少なく、耐皮脂性の向上が見受けられた。
【0069】
<実使用耐水性>
白い人工皮革に塗布し乾いたことを確認した後、精製水をスプレーで5プッシュ(400mg)垂らし摩擦感テスター(カトーテック株式会社製の摩擦感テスターKES-SE)でシリコン摩擦子100gf静荷重、1cm/secで摩擦を加えた。試験前後の画像比較から塗膜の耐水性を評価した。
【0070】
【0071】
表4は、「実使用耐水性」の試験結果写真である。比較例5の水系メイクアップ化粧料は、実施例3の水系メイクアップ化粧料と比較して、10往復後、塗膜にはがれが目立ちはじめた。20往復すると顕著に実施例3の水系メイクアップ化粧料よりも比較例5の水系メイクアップ化粧料の塗膜が剥がれているのに対し、実施例3の水系メイクアップ化粧料の方が耐水性の向上が見受けられた。
【0072】
表1~4の結果から、溶液系高分子「アクリレーツコポリマーAMP:大同化成株式会社製のP-7279A」と樹脂エマルション「アクリレーツコポリマー」を配合した実施例3の水系メイクアップ化粧料は、経時での耐摩擦性、耐皮脂性、耐水性が向上していることが判明した。
【0073】
実施例3の水系メイクアップ化粧料は、ペン先が筆で筆記具のようなワンウェイで出てくるタイプの容器(直液式蛇腹容器)用に適したもので、低粘度10~20mPa・s(B型粘度計「TVB-10m型:東機産業製」を用いて、ローターNo.1、60rpmで30秒後に測定)の水系処方において、着色剤として粒子径20nm以上のカーボンブラックを8質量%含み、アクリル系樹脂エマルション(アクリレーツコポリマー)固形換算で4.2質量%とエタノール溶媒の溶液系高分子(AMPをアクリレーツコポリマーに作用させた塩構造の重合体:アクリレーツコポリマーAMP:大同化成株式会社製のP-7279A使用)固形換算で1.5質量%を併用することで、耐摩擦性、耐皮脂性、耐水性に優れた水系メイクアップ化粧料(アイライナー化粧料)を作製できた。実施例3の水系メイクアップ化粧料はノック式やダイヤル式などのコストが高い容器のみではなく、ノックやダイヤルなどの外的要素を加えずに自然に吐出してくるコストの安い自然浸透式のペン型塗布具も使用することができるため、使用する容器に制限がなく、より良いコストパフォーマンスと品質を提供できる効果がある。また、この機能性の向上は、ペン型の塗布具用の化粧料だけではなくボトル型容器用の粘度が中程度(5~3000mPa・s)のボトル仕様のアイライナーにも応用できるものである。