(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】プレス用鋼板取出装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20221202BHJP
B21D 43/24 20060101ALI20221202BHJP
B21D 43/18 20060101ALI20221202BHJP
B21D 43/00 20060101ALI20221202BHJP
B21D 43/02 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
B21D43/24 A
B21D43/18 C
B21D43/00 A
B21D43/00 H
B21D43/02 A
(21)【出願番号】P 2018167999
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 秀展
(72)【発明者】
【氏名】藤森 優希
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第96/030169(WO,A1)
【文献】特開平09-285935(JP,A)
【文献】特開2001-179374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
B21D 43/00 ~ 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のシート状のプレス用鋼板を積み上げてなる段積体を載置可能なパレットが交換可能に位置決めされるパレット位置決め手段と、
該パレット位置決め手段に位置決めされたパレットに載置される上記段積体の各鋼板を最上段から順に把持可能な把持部と、該把持部の座標位置を検出可能な位置検出部とを有し、上記把持部を移動操作可能な鋼板移動操作手段と、
上記段積体の鋼板に上記把持部が到達したか否かを検出可能な到達検出手段と、
上記鋼板移動操作手段及び上記到達検出手段に接続された制御手段とを備え、
該制御手段は、上記パレット位置決め手段にパレットが位置決めされた際、上記到達検出手段による検出がなされるまで上記把持部が上記段積体の上方の所定の位置から下降するよう上記鋼板移動操作手段に作動信号を出力する探索部と、
上記段積体における各鋼板の板厚tを予め記憶するとともに、
上記段積体から1回目の鋼板の取出時における上記到達検出手段による検出がなされた際に上記位置検出部において得られる座標位置を上記把持部の初期把持位置P(X,Y,Z)として記憶する記憶部と、
該記憶部にて記憶された上記板厚t及び上記初期把持位置Pを用いて上記段積体からα回目(α≧2)の鋼板の取出時における上記把持部の把持位置P’(X,Y,Z-(α-1)×t)を演算する演算部と、
上記段積体からα回目の鋼板の取り出しを行う際、上記鋼板移動操作手段に作動信号を出力して上記把持部を上記把持位置P’に移動させるとともに上記把持部に上記鋼板を把持させて上記パレットから取り出すのを指示する取出指示部とを有
し、
上記制御手段には、作業者に対して上記パレットの交換時期であることを知らせる警報手段が接続され、
上記記憶部は、上記パレット位置決め手段に位置決めされた上記パレットの上面位置Bの座標位置と、上記パレットの交換時期であることを作業者に対して知らせるか否かの閾値である上記段積体における鋼板の交換時期枚数n’とを予め記憶しており、
上記演算部は、上記上面位置Bと上記初期把持位置Pとに基づく上記段積体の初期高さHと、該初期高さHと上記板厚tとに基づく上記段積体の初期枚数N=H/tと、上記鋼板をα回取り出した後の上記段積体の枚数n=N-αとをそれぞれ演算し、
上記取出指示部は、上記枚数nが上記交換時期枚数n’より少なくなった際、上記警報手段に作動信号を出力して当該警報手段を作動させるよう構成されてい
ることを特徴とするプレス用鋼板取出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス用鋼板取出装置において、
上記把持部は、上記鋼板を吸着により把持する1つ以上の吸着パッドであり、
上記到達検出手段は、上記吸着パッドが上記鋼板を吸着したか否かを判定する吸着センサであり、上記鋼板を吸着したと上記吸着センサが判定した際、上記鋼板に上記把持部が到達したと検出するよう構成されているプレス用鋼板取出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のシート状のプレス用鋼板を積み上げてなる段積体から各鋼板を後工程へと搬出するために順次取り出すプレス用鋼板取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に開示されているプレス用鋼板取出装置は、パレットが交換可能に位置決めされるリフターを備え、パレットには、多数のシート状のプレス用鋼板を積み上げてなる段積体が載置されている。リフターの上方には、平面視で格子状をなす把持フレームが配設され、該把持フレームの外周部分には、吸着部分が下方に向く多数の吸着パッドが周方向に所定の間隔をあけて取り付けられている。また、把持フレームの中央部分には、上下方向に延びるガイド柱が設けられている。該ガイド柱は、把持フレームを上下方向に案内するようになっていて、該把持フレームは、下降するとともに吸着パッドで段積体の最上段の鋼板を吸着した後、上昇することにより鋼板をパレットから取り出すようになっている。ガイド柱には、把持フレームの下降量を検出可能な検出機構が設けられていて、鋼板を取り出す際に検出機構にて下降量を検出することにより段積体の高さが得られ、把持フレームの次に取り出す鋼板の把持位置が分かるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のプレス用鋼板取出装置では、把持フレームによる各鋼板の把持位置を導き出すために、パレットから各鋼板を取り出す毎に検出機構を用いて段積体の高さを得ているので、効率が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置の無駄な動作をなくして効率良く鋼板の取出作業を繰り返すことができるプレス用鋼板取出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、段積体における2枚目以降の鋼板の取出時における装置の把持部分の把持位置を位置検出手段を用いずに求めるよう工夫したことを特徴とする。
【0007】
すなわち、第1の発明では、多数のシート状のプレス用鋼板を積み上げてなる段積体を載置可能なパレットが交換可能に位置決めされるパレット位置決め手段と、該パレット位置決め手段に位置決めされたパレットに載置される上記段積体の各鋼板を最上段から順に把持可能な把持部と、該把持部の座標位置を検出可能な位置検出部とを有し、上記把持部を移動操作可能な鋼板移動操作手段と、上記段積体の鋼板に上記把持部が到達したか否かを検出可能な到達検出手段と、上記鋼板移動操作手段及び上記到達検出手段に接続された制御手段とを備え、該制御手段は、上記パレット位置決め手段にパレットが位置決めされた際、上記到達検出手段による検出がなされるまで上記把持部が上記段積体の上方の所定の位置から下降するよう上記鋼板移動操作手段に作動信号を出力する探索部と、上記段積体における各鋼板の板厚tを予め記憶するとともに、上記段積体から1回目の鋼板の取出時における上記到達検出手段による検出がなされた際に上記位置検出部において得られる座標位置を上記把持部の初期把持位置P(X,Y,Z)として記憶する記憶部と、該記憶部にて記憶された上記板厚t及び上記初期把持位置Pを用いて上記段積体からα回目(α≧2)の鋼板の取出時における上記把持部の把持位置P’(X,Y,Z-(α-1)×t)を演算する演算部と、上記段積体からα回目の鋼板の取り出しを行う際、上記鋼板移動操作手段に作動信号を出力して上記把持部を上記把持位置P’に移動させるとともに上記把持部に上記鋼板を把持させて上記パレットから取り出すのを指示する取出指示部とを有し、上記制御手段には、作業者に対して上記パレットの交換時期であることを知らせる警報手段が接続され、上記記憶部は、上記パレット位置決め手段に位置決めされた上記パレットの上面位置Bの座標位置と、上記パレットの交換時期であることを作業者に対して知らせるか否かの閾値である上記段積体における鋼板の交換時期枚数n’とを予め記憶しており、上記演算部は、上記上面位置Bと上記初期把持位置Pとに基づく上記段積体の初期高さHと、該初期高さHと上記板厚tとに基づく上記段積体の初期枚数N=H/tと、上記鋼板をα回取り出した後の上記段積体の枚数n=N-αとをそれぞれ演算し、上記取出指示部は、上記枚数nが上記交換時期枚数n’より少なくなった際、上記警報手段に作動信号を出力して当該警報手段を作動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0008】
第2の発明では、第1の発明において、上記把持部は、上記鋼板を吸着により把持する1つ以上の吸着パッドであり、上記到達検出手段は、上記吸着パッドが上記鋼板を吸着したか否かを判定する吸着センサであり、上記鋼板を吸着したと上記吸着センサが判定した際、上記鋼板に上記把持部が到達したと検出するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明では、2回目以降の鋼板の取出作業時における把持部の把持位置を制御手段
における演算にて求めるので、特許文献1の如き鋼板を取り出す毎に検出機構で把持部分の把持位置を検出するといった動作を行う必要が無くなる。したがって、装置の動作に無駄がなくなるので、効率良く鋼板の取出作業を行うことができる。また、第1の発明では、パレットに載置される段積体の鋼板枚数が所定の枚数以下になると、作業者は警報手段によりパレットを新しいものに交換する時期になったことを知ることができる。したがって、作業者は、パレット位置決め手段に位置決めされているパレットに載置された各鋼板が完全になくなる前にパレット位置決め手段に近い領域に新しいパレットを準備しておくことができるようになり、効率良く設備の段取り替えを行うことができる。
【0011】
第2の発明では、吸着パッドにより鋼板を把持したか否かを判定するための吸着センサを利用して段積体における最上段の鋼板の位置が分かるようになるので、段積体における最上段の位置を調べるためのセンサ等を別途取り付ける必要が無くなり、コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るプレス用鋼板取出装置の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るプレス用鋼板取出装置の制御動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の後、段積体の1枚目の鋼板の取出作業を開始した直後の状態を示す図である。
【
図4】
図3の後、段積体の1枚目の鋼板を取り出している途中の状態を示す図である。
【
図5】
図4の後、段積体の1枚目の鋼板を取り出した直後の状態を示す図である。
【
図6】
図5の後、段積体の複数枚目の鋼板を取り出す直前の状態を示す図である。
【
図7】
図6の後、段積体の複数枚目の鋼板を取り出している途中の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るプレス用鋼板取出装置1を示す。該プレス用鋼板取出装置1は、厚みを有する略平板状をなすパレット3が交換可能に位置決めされるパレット台2(パレット位置決め手段)を備え、該パレット台2は、パレット3を載置するベースプレート2aと、該ベースプレート2aの外周部分に上方に延びるように設けられたマグネットフローター2bとを有している。
【0016】
パレット3には、多数のシート状をなすプレス用鋼板10aを積み上げてなる段積体10が載置できるようになっている。
【0017】
マグネットフローター2bは、パレット台2の中央側に移動可能になっていて、パレット台2にパレット3を位置決めした際、パレット台2の中央側に移動してパレット3に載置された段積体10の側面に接触するようになっている。
【0018】
パレット台2の側方には、アーム部4aを有する6軸の垂直多関節型ロボット4(鋼板移動操作手段)が配設されている。
【0019】
アーム部4aの先端部分には、鋼板10aを上方から把持可能な把持フレーム6が取り付けられ、ロボット4は、把持フレーム6を移動操作可能になっている。
【0020】
ロボット4は、アーム部4aの関節部分を作動させる各モータ(図示せず)に繋がるエンコーダ5(位置検出部)を有し、該エンコーダ5の値に基づいて把持フレーム6の座標位置が検出可能になっている。
【0021】
把持フレーム6は、水平方向に延びる角棒状の第1フレーム6aと、該第1フレーム6aと交差する水平方向に延びる角棒状の第2フレーム6bとを備え、該第2フレーム6bは、第1フレーム6aの長手方向に所定の間隔をあけて一対設けられている。
【0022】
各第2フレーム6bの端部には、それぞれ鋼板10aを吸着により把持可能な吸着パッド6c(把持部)が設けられている。
【0023】
該吸着パッド6cは、上下方向にスライド可能に第2フレーム6bに取り付けられた細長いガイド棒6dと、該ガイド棒6dの下端に取り付けられたゴム製の傘状部材6eと、ガイド棒6dに巻装され、当該ガイド棒6dを下方に付勢するコイルバネ6fとを備え、図示しない吸引器を作動させると、傘状部材6eの下端開口から空気が吸引されるようになっている。
【0024】
また、各吸着パッド6cに下方から力が加わると、各吸着パッド6cが各コイルバネ6fの付勢力に抗して各第2フレーム6bに対して上方に移動することにより衝撃が吸収されるようになっている。
【0025】
各吸着パッド6cには、当該各吸着パッド6cが鋼板10aを吸着したか否かを判定する吸着センサ7(到達検出手段)が取り付けられ、当該吸着センサ7が鋼板10aを吸着したと判定することにより、段積体10の鋼板10aに把持フレーム6が到達したことを検出できるようになっている。
【0026】
ロボット4及び各吸着センサ7には、当該各吸着センサ7から信号を受け取るとともに、ロボット4に作動信号を出力可能な制御盤8(制御手段)が接続され、該制御盤8の上面には、作業者に対してパレット3の交換時期であることを知らせる警報灯9(警報手段)が接続されている。
【0027】
制御盤8は、段積体10の上面位置の探索を指示する探索部8aと、各種データを記憶する記憶部8bと、各種データを演算する演算部8cと、パレット3から鋼板10aを取り出すように指示する取出指示部8dとを備えている。
【0028】
探索部8aは、パレット台2にパレット3が位置決めされた際、把持フレーム6が元位置X1から段積体10の上方の探索開始位置X2まで移動するとともに、各吸着センサ7による検出がなされるまで探索開始位置X2から下降するようロボット4に作動信号を出力するようになっている。
【0029】
尚、探索開始位置X2は、パレット3に載置される可能性のある段積体10の最大高さよりも上方の位置に設定されている。
【0030】
記憶部8bは、段積体10における各鋼板10aの板厚tを予め記憶するとともに、吸着センサ7からの吸着信号を取得すると、エンコーダ5の値に基づいて得られる吸着パッド6cの座標位置を初期把持位置P(X,Y,Z)として記憶するようになっている。
【0031】
また、記憶部8bは、パレット台2に位置決めされたパレット3の上面位置Bの座標位置と、パレット3の交換時期であることを作業者に対して知らせるか否かの閾値である段積体10における鋼板10aの交換時期枚数n’とを予め記憶している。
【0032】
演算部8cは、記憶部8bにて記憶された板厚t及び初期把持位置Pを用いて段積体10からα回目(α≧2)の鋼板10aの取出時における把持フレーム6の把持位置P’(X,Y,Z-(α-1)×t)を演算するようになっている。
【0033】
また、演算部8cは、上面位置Bと初期把持位置Pとに基づく段積体10の初期高さHと、該初期高さHと板厚tとに基づく段積体10の初期枚数N=H/tと、鋼板10aをα回取り出した後の段積体10の枚数n=N-αとをそれぞれ演算するようになっている。
【0034】
取出指示部8dは、段積体10からα回目の鋼板10aの取り出しを行う際、ロボット4に作動信号を出力して把持フレーム6を把持位置P’に移動させるとともに把持フレーム6に鋼板10aを把持させてパレット3から取り出すのを指示するようになっている。
【0035】
また、取出指示部8dは、鋼板10aをα回取出した後の段積体10の枚数nが交換時期枚数n’より少なくなった際、警報灯9に作動信号を出力して警報灯9を作動させるようになっている。
【0036】
具体的には、警報灯9は、取出指示部8dからの作動信号を受け取ると、光が点灯又は点滅して作業者にパレット3の交換時期であることを知らせるようになっている。
【0037】
そして、把持フレーム6を元位置X1からパレット台2の上方の探索開始位置X2に移動させるとともに当該探索開始位置X2から下降させると、
図3及び
図4に示すように、パレット3に載置された段積体10の上面に各吸着パッド6cにおける傘状部材6eの下端が接触するとともに、各コイルバネ6fの付勢力に抗して各第2フレーム6bが各吸着パッド6cに対して下方に移動するようになっている。
【0038】
また、把持フレーム6の各吸着パッド6cにおける傘状部材6eの下端が段積体10の上面に接触している状態において図示しない吸引器を作動させると、傘状部材6eの下端開口から傘状部材6eの内部に空気が吸引されて段積体10の最上段に位置する鋼板10aが傘状部材6eの下端に吸着し、把持フレーム6が鋼板10aを把持するようになっている。
【0039】
さらに、把持フレーム6が鋼板10aを把持した状態において把持フレーム6を上昇させると、
図5に示すように、段積体10における最上段の鋼板10aがパレット3から取り出されるようになっている。
【0040】
また、パレット台2に位置決めされたパレット3の段積体10からα回目の鋼板10aの取り出しを行う際、
図6及び
図7に示すように、把持フレーム6を元位置X1から演算部8cにより求めた把持位置P’にまで直接移動させて把持フレーム6に鋼板10aを把持させてパレット3から取り出すようになっている。
【0041】
尚、ロボット4のアーム部4aは、把持フレーム6が元位置X1から把持位置P’の直前の所定位置まで高速移動するとともに、把持位置P’の直前の所定位置において減速して把持位置P’に到達するように制御される。
【0042】
このようにして、把持フレーム6は、パレット3に載置される段積体10の各鋼板10aを最上段から順に把持して取り出すようになっている。
【0043】
次に、プレス用鋼板取出装置1における具体的な制御動作を
図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
まず、ステップS1において、制御盤8がロボット4を作動させて把持フレーム6を元位置X1にまで移動させた後、ステップS2に進む(
図1参照)。
【0045】
次に、ステップS2にて、パレット3がパレット台2に位置決めされた直後であるか否かが判定される。例えば、作業者が交換確認ボタン(図示せず)を押すことにより発生する交換確認信号を制御盤8が検出するか否かによってパレット台2にパレット3が位置決めされた直後か否かを判定する。
【0046】
このステップS2の判定がYESのとき、すなわち、パレット台2にパレット3が位置決めされた直後である場合には、ステップS3に進んで探索部8aがロボット4に作動信号を出力して把持フレーム6を探索開始位置X2まで移動させる(
図3参照)。
【0047】
探索部8aが把持フレーム6を探索開始位置X2まで移動させると、ステップS4に進んで探索部8aが把持フレーム6を下方に移動させるとともに、各吸着パッド6cを段積体10における最上段の鋼板10aに接触させる(
図4参照)。
【0048】
各吸着パッド6cが段積体10における最上段の鋼板10aに接触すると、ステップS5に進んで取出指示部8dが吸引器(図示せず)を作動させる。すると、各吸着パッド6cの吸引動作が開始されて鋼板10aが各吸着パッド6cに吸着し、把持フレーム6が鋼板10aを把持するとともに、記憶部8bがエンコーダ5の値により得られる吸着パッド6cの座標位置を初期把持位置Pとして記憶する。
【0049】
しかる後、取出指示部8dは、把持フレーム6を上昇させて把持フレーム6が把持する鋼板10aをパレット3から取り出した後、ステップS8に進む。
【0050】
一方、ステップS2の判定がNOのとき、すなわち、パレット3がパレット台2に位置決めされた直後でない場合には、ステップS6に進んで演算部8cが記憶部8bにて記憶された板厚t及び初期把持位置Pを用いて段積体10からα回目の鋼板10aの取出時における把持フレーム6の把持位置P’(X,Y,Z-(α-1)×t)を演算し、その後、ステップS7に進む。
【0051】
ステップS7では、取出指示部8dが把持フレーム6を把持位置P’まで移動させるとともに吸引器(図示せず)を作動させる。すると、各吸着パッド6cの吸着動作が開始されて鋼板10aが各吸着パッド6cに吸着し、把持フレーム6が鋼板10aを把持する。
【0052】
しかる後、取出指示部8dは、把持フレーム6を上昇させて把持フレーム6が把持する鋼板10aをパレット3から取り出した後、ステップS8に進む。
【0053】
ステップS8では、演算部8cがパレット3の上面位置Bと初期把持位置Pとに基づく段積体10の初期高さHと、初期高さHと板厚tとに基づく段積体10の初期枚数N=H/tと、鋼板10aをα回取り出した後の段積体10の枚数n=N-αをそれぞれ演算した後、上記枚数nが交換時期枚数n’より少ない状態であるか否かを取出指示部8dが判定する。
【0054】
ステップS8の判定がNOの場合、ステップS10に進んで上記枚数nがゼロになったか否かを取出指示部8dが判定する。
【0055】
一方、ステップS8の判定がYESの場合、ステップS9に進んで取出指示部8dが警報灯9を作動させた後、ステップS10に進む。
【0056】
ステップS10の判定がNOの場合、すなわち、パレット3に鋼板10aが残っている場合、ステップS1に戻って取出指示部8dが把持フレーム6を元位置X1にまで移動させる。
【0057】
一方、ステップS10の判定がYESの場合、すなわち、パレット3に鋼板10aが残っていない場合、プレス用鋼板取出装置1の動作が終了する。
【0058】
以上より、本発明の実施形態によると、2回目以降の鋼板10aの取出作業時における把持フレーム6の把持位置P’を制御盤8における演算にて求めるので、特許文献1の如き鋼板10aを取り出す毎に検出機構で把持部分の把持位置を検出するといった動作を行う必要が無くなる。したがって、装置の動作に無駄がなくなるので、効率良く鋼板10aの取出作業を行うことができる。
【0059】
また、吸着パッド6cにより鋼板10aを把持したか否かを判定するための吸着センサ7を利用して段積体10における最上段の鋼板10aの位置が分かるようになるので、段積体10における最上段の位置を調べるためのセンサ等を別途取り付ける必要が無くなり、コストを低く抑えることができる。
【0060】
さらに、パレット3に載置される段積体10の鋼板10aの枚数が所定の枚数以下になると、作業者は警報灯9によりパレット3を新しいものに交換する時期になったことを知ることができる。したがって、作業者は、パレット台2に位置決めされているパレット3に載置された各鋼板10aが完全になくなる前にパレット台2に近い領域に新しいパレット3を準備しておくことができるようになり、効率良く設備の段取り替えを行うことができる。
【0061】
尚、本発明の実施形態では、把持フレーム6を移動させるのに6軸の垂直多関節型ロボット4を用いているが、例えば、3軸直交ロボットを用いて把持フレーム6を移動させるようにしてもよい。
【0062】
また、本発明の実施形態では、パレット3の交換時期であることを知らせる警報手段として警報灯9を用いているが、その他の警報手段であってもよく、例えば、警報音を発する警報ブザーであってもよい。
【0063】
さらに、本発明の実施形態では、吸着パッド6cが複数設けられているが、1つであってもよい。
【0064】
それに加えて、本発明の実施形態では、吸着センサ7により把持フレーム6が段積体10の最上段の鋼板10aに到達したのを検出しているが、他のセンサを用いて把持フレーム6が段積体10の最上段の鋼板10aに到達したのを検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、多数のシート状のプレス用鋼板を積み上げてなる段積体から各鋼板を後工程へと搬出するために順次取り出すプレス用鋼板取出装置に適している。
【符号の説明】
【0066】
1 プレス用鋼板取出装置
2 パレット台(パレット位置決め手段)
3 パレット
4 ロボット(鋼板移動操作手段)
5 エンコーダ(位置検出部)
6c 吸着パッド(把持部)
7 吸着センサ(到達検出手段)
8 制御盤(制御手段)
8a 探索部
8b 記憶部
8c 演算部
8d 取出指示部
9 警報灯(警報手段)
10 段積体
10a 鋼板