(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】成形品及び成形品の形状変更方法
(51)【国際特許分類】
B29C 51/42 20060101AFI20221202BHJP
B29C 53/84 20060101ALI20221202BHJP
B33Y 80/00 20150101ALN20221202BHJP
【FI】
B29C51/42
B29C53/84
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2018178215
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3212374(JP,U)
【文献】特開平11-280983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00-51/46
B29C 53/00-53/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が120℃以上であり、ガラス転移温度が30~50℃であり、結晶化温度が50~120℃であるポリマー組成物にて構成されたボディと、
このボディに設けられた、可撓性を備えたヒーターと
、
前記ボディに設けられた、可撓性を備えた冷却用のクーラーとを有し、
前記ボディは、前記ガラス転移温度以上に加温することにより形状変更が可能である
ことを特徴とする成形品。
【請求項2】
同一部材がヒーターとクーラーとを兼ねていることを特徴とする請求項1記載の成形品。
【請求項3】
請求項1または2記載の成形品におけるヒーターを動作させてポリマー組成物を加熱することで、ポリマー組成物を軟化させて、ボディを変形させることを特徴とする成形品の形状変更方法。
【請求項4】
成形品を変形させた後にさらに加熱することによってポリマー組成物を結晶化させることを特徴とする請求項3記載の成形品の形状変更方法。
【請求項5】
請求項1または2記載の成形品におけるヒーターを動作させてポリマー組成物をそのガラス転移温度以上の温度に加熱して軟化させてボディを変形させた後に、クーラーを動作させてポリマー組成物を冷却することによって、このポリマー組成物を再びガラス状態に戻すことを特徴とする成形品の形状変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品及び成形品の形状変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品は、産業用品、日用品などで幅広く使用されている。成形方法としては、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、回転成形法、切削成形法、付加製造法などがある。これらの成形法で得られた成形品について、成形後の形状は、基本的には変更されることはない。このため、成形品が使用者の所望の形状では無い場合に、その対応が難しい。例えば、上記の成形法のうち、切削成形法や付加製造法は、樹脂成形品の少量製作に適しており、成形前に3Dモデルをデザインし、これを成形機にかけることで、所望の形状の樹脂成形品を得ることができる。しかし、成形後に実物を手に取ったときに、修正すべき点に気が付いた場合には、3Dモデルの修正からやり直すこととなり、このため時間や手間がかかる問題点がある。
【0003】
パラフィンやポリカプロラクトンなどの低融点樹脂であれば、成形後に熱水などで加熱することで、半溶融または溶融させて軟化させやすくしたうえで、形状変更することができる。しかし、変形後の樹脂成形品の耐熱性が乏しく、用途が限定される。
【0004】
この問題点に対し、本発明者らは、熱溶融積層造形した直後は非晶状態であり、ガラス転移温度が50℃以下であることから、ひと肌で温めることで軟化できる樹脂成形品を開発した(特許文献1)。この樹脂成形品は、温水、ヘアドライヤーなど家庭環境で一般的に使用される熱源で軟化できる樹脂成形品である。そして、形状変更後の結晶化処理により形状を固定して、耐熱性を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1では、3Dプリンターなどの材料押出型の付加製造装置を用いて樹脂成形品を成形するが、材料吐出ヘッドが複数備わった機種を使用した場合、樹脂成形品の一部分にのみ前記発明に係る造形材料を配し、他の部位は、従来公知のPLAやABSなど他素材を配することで、特定の部位のみ軟化および形状変更することにも触れている。しかし、大型、肉厚のモデルの場合、軟化するまでの加熱時間が非常に長くなってしまう。また特定箇所のみを選択的に加熱、軟化させることが難しい。
【0007】
本発明の課題は、樹脂成形品の形状を容易に変更しうると共に、変更後において造型物を高強度又は高剛性としうる、樹脂成形品のための成形材料及び成形品の形状変更方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の成形品は、
融点が120℃以上であり、ガラス転移温度が30~50℃であり、結晶化温度が50~120℃である成形用ポリマー組成物にて構成されたボディと、
このボディに設けられた、可撓性を備えたヒーターと、
前記ボディに設けられた、可撓性を備えた冷却用のクーラーとを有し、
前記ボディは、前記ガラス転移温度以上に加温することにより形状変更が可能であることを特徴とする。
【0009】
上記の成形品においては、同一部材がヒーターとクーラーを兼ねていることが好適である。
【0010】
本発明の成形品の形状変更方法は、上記の成形品におけるヒーターを動作させてポリマー組成物を加熱することで、ポリマー組成物を軟化させて、ボディを変形させることを特徴とする。
【0011】
上記の成形品の形状変更方法によれば、成形品を変形させた後にさらに加熱することによってポリマー組成物を結晶化させることが好適である。
【0012】
上記の成形品の形状変更方法によれば、上述の成形品におけるヒーターを動作させてポリマー組成物をそのガラス転移温度以上の温度に加熱して軟化させてボディを変形させた後に、クーラーを動作させてポリマー組成物を冷却することによって、このポリマー組成物を再びガラス状態に戻すことが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の成形品は、ヒーターによってボディを加熱させると速やかに軟化させて形状変更しうるものであり、また変更後にさらに加熱することにより成形品を速やかに高強度又は高剛性にすることができる。特に、形状変更は30~50℃程度で可能であり、その後の加熱による熱処理は100℃程度で実施可能であるため、家庭で造型物の形状変更が容易に行え、また家庭で造型物を容易に高強度又は高剛性にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態の成形品の立体図である。
【
図2】
図1の成形品の形状を変更した様子を示す立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の成形品は、
図1に例示するように、特定のポリマー組成物にて構成されたボディ11と、このボディ11に設けられた、可撓性を備えたヒーター12とを有する。
図1では、ボディ11は板状体として描かれているが、その形態は任意である。
【0016】
ボディ11を構成するポリマー組成物は、結晶性の熱可塑性樹脂であって、融点が120℃以上であり、ガラス転移温度が30~50℃であり、結晶化温度が50~120℃である。ここでは、DSCにて20℃/分で融点+50℃まで昇温して1分間保持したのち、20℃/分で降温したときの、昇温時のガラス転移温度、結晶化ピーク温度、融解ピーク温度から、それぞれの値を規定する。
【0017】
ポリマー組成物は、上記の温度条件を満たすものであれば特に限定されない。例えば、酸成分としてテレフタル酸を含み、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4-ブタンジオールを含むポリエステル共重合体を主体とするものが、好適に用いられる。あるいは、酸成分としてテレフタル酸及びε-カプロラクトンを含み、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4-ブタンジオールを含むポリエステル共重合体を主体とするものも、好適に用いられる。なお、ε-カプロラクトンは、環状エステルであるが、便宜上、本明細書では酸成分に属するものとする。
【0018】
上記のポリエステル共重合体は、公知の重縮合法で製造することができる。すなわち、一般的には、酸成分50モル%とジオール成分50モル%を仕込んで脱水縮合することにより、製造することができる。上記のように、酸成分としてテレフタル酸(必要によりε-カプロラクトンを併せて)を用い、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4-ブタンジオールを用いることが好適であるが、これら各成分は、ガラス転移温度及び結晶化温度の調整のために用いられる。
【0019】
ジオール成分としてエチレングリコールと併用される1,4-ブタンジオールは、ジオール成分中30~70モル%であることが好ましい。1,4-ブタンジオールが30モル%未満又は70モル%を超えると、ポリエステル共重合体のガラス転移温度が低下しにくくなる傾向が生じる。酸成分としてテレフタル酸と併用されるε-カプロラクトンは、酸成分中、5~20モル%であることが好ましい。ε-カプロラクトンを共重合成分として用いると、ポリエステル共重合体のガラス転移温度をより低下することができる。なお、ε-カプロラクトンが20モル%を超えると、ポリエステル共重合体が所定温度で結晶化しにくくなる傾向が生じる。
【0020】
ポリマー組成物は、上述のように融点が120℃以上であり、好ましくは120~200℃である。融点が120℃未満では、樹脂成形品を結晶化処理するときに熱湯などの高温に耐えられない。反対に融点が200℃以上であると、一般的に廉価品として流通している材料押出型の3Dプリンターのヒーター能力では溶融させられない恐れがある。しかし、ヒーター能力が十分に備わっている場合はこの限りではない。
【0021】
ポリマー組成物のガラス転移温度は、上述のように30~50℃である。すなわち、本発明の成形品は、結晶化温度で熱処理されない限り、結晶化が進んでおらず、非晶領域を多く持つ状態となっている。このため、成形品のボディ11をヒーター12によってガラス転移温度以上に加温すると、
図2に例示するように容易に形状変更が可能である。
図2は、板状のボディ11を側面視でJ字形に形状変更した例を示す。
【0022】
形状変更した後に、ヒーター12を用いて結晶化温度にて熱処理すると、結晶化が進み高強度又は高剛性の成形品とすることができる。ポリマー組成物の結晶化温度は、上記のように50~120℃である。ガラス転移温度よりも20℃以上高い温度であることが好ましい。結晶化温度が高すぎると結晶化処理が難しく、特に個人ユーザーが扱いづらくなる。結晶化温度とガラス転移温度が近すぎると、成形品のボディ11をヒーター12により加温して形状変更させる際に結晶化も進みやすく、十分に軟化している時間が短くなり、扱いが難しくなる。なお、結晶化温度は、ポリエステル共重合体の結晶化が最も促進される温度である。
【0023】
本発明の成形品を構成するポリマー組成物には、樹脂成形品の強度等を調整するための重合体が添加されていてもよい。たとえば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂又はポリウレタン系樹脂を、単独で又は互いに混合したうえで、ポリマー組成物に添加してもよい。これらの重合体は、樹脂成形品のボディにおける特定部位の内部に添加されていてもよいし、その表面を被覆する状態で添加されていてもよい。
【0024】
また本発明の成形品を構成するポリマー組成物には、所望に応じて種々の添加剤が含有されていてもよい。たとえば、着色のために染料又は顔料を添加してもよい。特に、本発明ではガラス転移温度及び結晶化温度で変色するサーモクロミック顔料を添加おくと、樹脂成形品のボディの特定部位が変形可能か否か、又は特定部位のポリマー組成物が結晶化したか否かを判断でき、好ましいものである。さらに、充填剤、可塑剤、難燃剤、滑剤、耐候剤、酸化防止剤又は耐熱剤等を添加することもできる。
【0025】
樹脂成形品のボディ11において、成形後に変形させたい特定部位以外の箇所については、Tgが50℃以上、Tmが120℃以上の樹脂の使用が好ましい。この樹脂には、ボディ11における成形後に変形させたい特定部位以外の箇所の加熱が必要以上に進まないよう、ヒーターを設けないことが望ましい。また、特定部位以外の箇所に用いられる樹脂は、特定部位に用いる材料との界面接着力が十分に得られるよう選定することが望ましい。例えば特定部位に用いるポリマー組成物がポリエステル系である場合、特定部位以外には同系の樹脂であるポリエステル系樹脂や、ポリエステルと親和性の高いポリウレタン系樹脂の使用が望ましい。
【0026】
樹脂成形品のボディ11を得る方法としては、特に限定されないが、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、回転成形法、切削成形法、付加製造法などから選択できる。また、これらの方法で得られた複数の樹脂部品を接着剤やボルトなどで連結させて、最終的な樹脂成形品を得ることも可能である。射出成型法や押出成形法などでは、成形時に用いる原料形態としてはペレットやフレークなどが一般的である。
【0027】
付加製造法の場合は、使用する成形機の種類により、成形前の材料を線条物やパウダーなどの形態にする必要がある。線条物は、直径が1~3mm程度の連続体であり、これを数十~数百m巻いてリール状として、成形機に取り付ける。線条物としては、モノフィラメント糸又はモノフィラメント糸を複数本引き揃えたマルチフィラメント糸が用いられる。マルチフィラメント糸を用いる場合は、引き揃えたまま又は撚りを掛けたうえで、各モノフィラメント糸を融着させて、各モノフィラメント糸をほぐれにくくすることが、取り扱い上好ましい。また、線条物は、モノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸を編組機(製紐機)にて編組して組紐とした後、各モノフィラメント糸を融着させたものであることが好ましい。組紐は、破断強度や屈曲強度等の機械的物性に優れているため、取り扱い上、好ましい。さらに、上記したものに限らず、線条となっているものであれば、どのようなものでも付加製造法のための線条物として用いられる。
【0028】
線条物を構成するモノフィラメント糸は、前記のポリマー組成物を主体とする原料を溶融し、これを紡糸ノズルから押し出すことによって、得ることができる。特に、以下の方法でモノフィラメント糸を得るのが好ましい。すなわち、原料を溶融紡糸法によって紡糸した後、延伸してポリマー組成物を結晶化させてモノフィラメント糸を得るのが好ましい。また、溶融紡糸法によって紡糸した後、熱処理してポリマー組成物を結晶化させてモノフィラメント糸を得るのも好ましい。なお、熱処理する際の温度は、ポリマー組成物の結晶化が進行する前述の温度範囲で行うのが良い。かかる方法によって得られたモノフィラメント糸は、ポリマー組成物が結晶化されているため、このモノフィラメント糸で構成される線条物は破断しにくく、また変形しにくい。よって、取り扱い性が良く、好ましいものである。
【0029】
モノフィラメント糸は複数種の樹脂からなる複合繊維であってもよい。複合形態としては芯鞘、海島、サイドバイサイドなどが挙げられる。本発明にもとづくポリマー組成物同士を複合してもよく、それ以外の樹脂を複合してもよい。複合比率も適宜選択が可能であるが、本発明にもとづくポリマー組成物が50質量%以上であることが好ましい。
【0030】
成形機に取り付けられた線条物は、フィーダーによって、押出機に送り込まれる。押出機は、押出ノズルとこの押出ノズルを加熱する加熱装置とを備えており、線条物は、加熱装置中で溶融して押出ノズルから吐出される。押出機はデータに基づいて線条物を移動させており、吐出した溶融物が積層されることで立体形状の樹脂成形品が得られる。溶融物を積層する際に、必要に応じて加温したり冷却したりしてもよいが、室温中で積層することで十分である。加温する場合も、成形品の結晶化が促進しない程度とするのが好ましい。冷却する場合は、成形品が結晶化する恐れが少ないので、任意に行えばよい。なお、本発明の成形材料にて構成された線条物の他に、従来公知の線条物も成形機に取り付けて、複数材料からなる成形品を得てもよい。
【0031】
上述のように、成形品における特定の部位のみを、本発明にもとづく成形用ポリマー組成物にて構成された線条物で造型してもよい。また、この場合、本発明にもとづく成形用ポリマー組成物にて構成された線条物で造型される部位と、従来公知の線条物で造型される部位との接着性を向上させるため、本発明にもとづく成形用ポリマー組成物にて構成された線条物又は成形された部位に、プラズマ加工等の種々の加工を施してもよい。本発明にもとづく成形用ポリマー組成物にて構成された線条物と、従来公知の線条物とを別に用意したうえで、被覆、噛合せなどの形態でそれぞれが組み合わさる形で成形することも可能である。
【0032】
上述のように、成形品のボディ11には、可撓性を有するヒーター12(加熱部材)が設けられる。このヒーター12は、ボディ11におけるこのヒーター12の周辺の特定部位を積極的に加温するためにボディ11に組み込まれる。特に樹脂成形品のボディ11の内部に組み込まれることで、大型、肉厚の成形品を内部から加熱できるため、成形品のボディ11の外部のみからの加熱に比べて迅速に所定温度まで加温することができる。樹脂成形品のボディ11に組み込まれるヒーター12の数は、一個でも複数個でもよく、複数個の場合は同時稼働でも個別稼働でもよい。個別稼働であれば部位ごとに温度調整し、軟化の程度を区分けすることができる。
【0033】
ヒーター12の形態は特に限定されず、面状、線状などのヒーター12を適当な寸法で使用することができ、形態や寸法が異なるものを組合せて使用してもよい。ヒーター12の種類としては、電熱、熱媒、化学反応熱、物理反応熱など、特に限定されない。これらの中でも、加熱のオン、オフの切り替えの容易な電熱式や熱媒式が好ましい。電熱の場合は例えばニクロム線やカーボン素材などを用いた線状または面状のヒーターがあり、熱媒の場合は液体や蒸気を導通させたチューブ、ホースなどが使用できる。ヒーターに求められる可撓性は樹脂成形品の形状や使途によって異なるが、樹脂部材をガラス転移温度以上に加温して変形させる際に追随できればよい。また多少の伸縮性を有していると、樹脂部材の変形にさらに追随しやすいため好ましい。
【0034】
樹脂成形品にはさらに1個または複数個のクーラー(冷却部材)が組み込まれてもよく、同一の部材が加熱(ヒーター)と冷却(クーラー)の2つの機能を併せ持っていてもよい。例えばチューブに温水と冷水を交互に導通することで加熱と冷却を繰り返すことができる。冷却部材を組み込むことで、ガラス転移温度以上に加温され軟化した樹脂部材を急速に冷却し、再びガラス状態に戻すことで固化することができる。加熱と冷却を制御することで樹脂部材の硬さの制御の自由度が向上する。
【0035】
樹脂成形品の構成部材は少なくともポリマー組成物にて構成されたボディ11とヒーター12との2種を含むが、さらに上述のクーラーや他の樹脂部品、金属部品、被覆材、塗料などが組み合わさっていてもよい。
【0036】
構成部材の組合せ方法は特に限定されず、接着、粘着、嵌め合せ、ネジ止め、結束などから適宜選定すればよい。本発明にもとづくボディ以外に樹脂部品を使用する場合、この樹脂部品にはTgが50℃以上、Tmが120℃以上の樹脂の使用が好ましい。また上記のポリマー組成物に他の樹脂材料が直接連結されてボディを構成する場合は、例えば熱プレス、二色押出などで両者が連結される場合は、他の樹脂材料は、上記のポリマー組成物との界面接着力が十分に得られるよう選定することが望ましい。例えば上記のポリマー組成物がポリエステル系である場合、他の樹脂材料としては、同系の樹脂であるポリエステル系樹脂や、ポリエステルと親和性の高いポリウレタン系樹脂の使用が望ましい。
【0037】
樹脂成形品の熱処理に際しては、構成しているヒーター以外の熱源を併用してもよく、例えばドライヤー、温水、電気コテ、ホットプレートなどを使用してよい。これらを用いて樹脂成形品を加温させたとき、ポリマー組成物のガラス転移温度以上に加温すると軟化し、形状変更が可能となる。さらに続けて、またはガラス転移点未満まで一度冷やしてから結晶化温度付近まで加温することで、ポリマー組成物を結晶化させることができる。