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▶ イーグルクランプ株式会社の特許一覧

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  • 特許-穴吊りクランプ 図1
  • 特許-穴吊りクランプ 図2
  • 特許-穴吊りクランプ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】穴吊りクランプ
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/66 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
B66C1/66 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019005186
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020111458
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390030328
【氏名又は名称】イーグルクランプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】中山 太一
(72)【発明者】
【氏名】深川 博己
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 実
(72)【発明者】
【氏名】津山 信治
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06349985(US,B1)
【文献】実開昭57-165674(JP,U)
【文献】登録実用新案第3026010(JP,U)
【文献】実開昭58-151187(JP,U)
【文献】登録実用新案第3166798(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り荷の厚さ方向に貫通形成されているボルト穴を挿通可能な本体ボルトと、本体ボルトの基端部に回転自在に装着されたスリーブと、本体ボルトの先端部に螺着可能なナットと、スリーブに回転自在に装着された吊り環と、その一端が前記スリーブに連結される第一のワイヤーと、その一端が前記ナットに連結される第二のワイヤーと、第一および第二のワイヤーの他端同士の間に連結されて第一および第二のワイヤーの間に捻じれが生じたときに自動的に回転するスイベルと、を有してなることを特徴とする穴吊りクランプ。
【請求項2】
前記第一のワイヤーの前記一端が第一のワイヤーカラーを介して前記スリーブに回転自在に連結され、前記第二のワイヤーの前記一端が第二のワイヤーカラーを介して前記ナットに回転自在に連結されていることを特徴とする、請求項1記載の穴吊りクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨などの吊り荷を吊り上げるために用いる穴吊りクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨などの吊り荷を吊り上げる作業には、従来、カム式の吊りクランプ(特許文献1など)が主に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-058959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カム式のクランプでは、カムと受け具(旋回顎など)との間に挟んだ吊り荷に対して荷重に応じた締付力を与えることによりカムの先端歯を吊り荷に喰い込ませて吊り上げるものであるため、その機構上、クランプの掴み傷(カム先端歯の喰い込み跡)が吊り荷に残ってしまう。このため、特に橋梁などに用いる鉄骨においては、掴み傷による強度低下が懸念される。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、掴み傷を与えずに鉄骨などの吊り荷を吊り上げることができる穴吊りクランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を達成するため、本発明は、鉄骨などの吊り荷を既設構造物にボルト止めするためにその厚さ方向に貫通形成されているボルト穴を利用して吊り上げることを提案する。すなわち、請求項1に係る本発明は、吊り荷の厚さ方向に貫通形成されているボルト穴を挿通可能な本体ボルトと、本体ボルトの基端部に回転自在に装着されたスリーブと、本体ボルトの先端部に螺着可能なナットと、スリーブに回転自在に装着された吊り環と、その一端が前記スリーブに連結される第一のワイヤーと、その一端が前記ナットに連結される第二のワイヤーと、第一および第二のワイヤーの他端同士の間に連結されて第一および第二のワイヤーの間に捻じれが生じたときに自動的に回転するスイベルと、を有してなることを特徴とする穴吊りクランプ。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の穴吊りクランプにおいて、前記第一のワイヤーの前記一端が第一のワイヤーカラーを介して前記スリーブに回転自在に連結され、前記第二のワイヤーの前記一端が第二のワイヤーカラーを介して前記ナットに回転自在に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によれば、鉄骨などの吊り荷を既設構造物にボルト止めするためにその厚さ方向に貫通形成されているボルト穴を利用して吊り荷を吊り上げることができるので、カム式クランプを用いた場合のように掴み傷が吊り荷に残ることがなく、掴み傷による強度低下を防止することができる。また、本体ボルトとスリーブと吊り環が互いにそれぞれ回転自在に取り付けられているので、吊り上げ作業中にスリーブや吊り環が回転しても、本体ボルトの姿勢が実質的に不変に維持され、作業をスムーズに行うことができる。また、第一および第二のワイヤーを介してナットがスリーブに連結されているので、ナットの脱落や紛失を防止することができる。さらに、第一のワイヤーと第二ワイヤーとの間にスイベルが設けられているので、第一および/または第二のワイヤーに捻じれが生じた場合であっても、これをスイベルで吸収して、ワイヤーに絡みを生じさせることなく、スムーズに吊り上げ作業などを行うことができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によれば、ナットを本体ボルトの先端部に取り付け、または該先端部から取り外す際にナットを本体ボルトに対して回転させても、その回転を第一および/または第二のワイヤーカラーが吸収するので、ワイヤーに捩れを生じさせることなく、スムーズに取り付け/取り外しの作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による穴吊りクランプの正面図である。
図2】この穴吊りクランプに用いるワイヤーカラーを単独で示す平面図(a)および側面図(b)である。
図3】この穴吊りクランプを一対用いて鉄骨(H形鋼)を吊り上げている使用状態斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1ないし図3を参照して、本発明の一実施形態による穴吊りクランプについて説明する。この穴吊りクランプ10は、吊り荷(図示実施形態ではH形鋼1)を既設構造物にボルト止めするためにフランジ部2を厚さ方向に貫通形成されているボルト穴3を利用して吊り上げるものであり、該ボルト穴3を挿通可能な本体ボルト11と、本体ボルト11の基端部に回転自在に装着されるスリーブ12と、本体ボルト11の先端部に螺着可能なナット13と、スリーブ12に回転自在に装着される吊り環14を有する。
【0016】
本体ボルト11はH形鋼1のフランジ部2に形成されたボルト穴3を貫通するに十分な長さ(フランジ部2の板厚より十分に長い長さ)を有し、フランジ部2の表面側から、スリーブ12の先端側の拡径部12aがフランジ部2の表面に突き当たるまでボルト穴3に挿通させたときに、その先端部がフランジ部2の裏面側に突出し、この突出したボルト先端部にナット13を螺着することにより、H形鋼1のフランジ部2に取り付けられる。
【0017】
スリーブ12は、本体ボルト11の基端部に固着されたボルト頭11aと、本体ボルト11の軸方向における所定地点に設けられたC形止め輪15との間で軸方向に位置規制された状態で、本体ボルト11に対して回転自在に装着されている。スリーブ12の軸方向両端部は拡径部12a,12bとされており、これら拡径部12a,12bの間に回転自在に配置された回転体16に吊り環14が連結されることにより、吊り環14はスリーブ12に対して回転自在とされている。吊り環14にはカップリング17が連結され、このカップリング17にワイヤースリングやチェーンスリングなどのスリング18を係止してクレーン(図示せず)などで吊り上げるように構成されている。
【0018】
本体ボルト11のボルト頭11aとスリーブ12の基端側拡径部12bとの間に挟まれてワイヤーカラー19が回転自在に設けられ、このワイヤーカラー19にワイヤー20の一端が係止されている。同様に、ナット13の凹溝部13aにワイヤーカラー21が回転自在に設けられ、このワイヤーカラー21にワイヤー22の一端が係止されている。ワイヤー20,22の各他端はスイベル23を介して互いに回転自在に連結されている。ワイヤーカラー19,21は、本体ボルト11、ナット13を回転自在に挿通するボルト通し穴24を有して略リング状に形成され、その一端の外方突出部にワイヤー20,22の一端に設けたフック(符号なし)を係止するフック係止穴25が形成されている(図2)。
【0019】
上記のように構成された穴吊りクランプ10の作用ないし用法について説明する。この穴吊りクランプ10をH形鋼1にセットするときは、ナット13を外した状態で、本体ボルト11をフランジ部2の表面側から、先端側の拡径部12aがフランジ部2の表面に突き当たるまで、H形鋼1のフランジ部2の長さ方向一端に形成されているいずれか一のボルト穴3に挿入する。これにより本体ボルト11の先端部がフランジ部2の裏面側に突出するので、この突出したボルト先端部にナット13を螺着して締め付けることにより、一の穴吊りクランプ10がセットされる。同様にして、もう一つの穴吊りクランプ10を、H形鋼のフランジ部2の長さ方向他端に形成されているいずれか一のボルト穴3に取り付ける。このようにして、一対の穴吊りクランプ10,10を、H形鋼のフランジ部2の長さ方向両端にボルト穴3,3を利用してセットする。そして、各穴吊りクランプ10の吊り環14に連結されたカップリング17およびスリング18を介してクレーン(図示せず)などにより、一対の穴吊りクランプ10,10でバランスを取ってH形鋼1を吊り上げる。
【0020】
ナット13はワイヤー20,22を介してスリーブ12に連結されているので、不慮の落下や紛失を防止することができる。また、ナット13を本体ボルト11の先端部に取り付け/取り外しする際にナット13が本体ボルト11に対して回転することになるが、ワイヤーカラー21が設けられているので、スムーズな回転が担保される。同様に、吊り上げ作業中に吊り環14がスリーブ12に対して回転しても、ワイヤーカラー19が設けられているので、スムーズな回転が担保される。さらに、ワイヤー20とワイヤー22が異なる動きをして捻じれが生じた場合であっても、これらの間に設けられているスイベル23がより戻しの作用を果たすので、ワイヤー20,22の絡みを防止することができる。これらの相乗効果により、ナット13の締付作業やH形鋼1の吊り上げ作業をスムーズに行うことができる。H形鋼1を引き起こしたり反転させたりする作業においても同様である。
【0021】
以上に本発明の一実施形態について詳細に記述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に定義される発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 H形鋼(吊り荷)2 フランジ部3 ボルト穴10 穴吊りクランプ11 本体ボルト 11a ボルト頭12 スリーブ 12a 先端側の拡径部 12b 基端側の拡径部13 ナット 13a 凹溝部14 吊り環15 C形止め輪16 回転体17 カップリング18 スリング19 ワイヤーカラー(第一のワイヤーカラー)20 ワイヤー(第一のワイヤー)21 ワイヤーカラー(第二のワイヤーカラー)22 ワイヤー(第二のワイヤー)23 スイベル24 ボルト穴25 フック係止穴
図1
図2
図3