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特許71864602-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールの共結晶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールの共結晶
(51)【国際特許分類】
   C07C 39/23 20060101AFI20221202BHJP
   C07C 37/84 20060101ALI20221202BHJP
   C07D 207/16 20060101ALI20221202BHJP
   C07C 229/12 20060101ALI20221202BHJP
   C07D 209/42 20060101ALI20221202BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C07C39/23
C07C37/84
C07D207/16
C07C229/12
C07D209/42
A61P25/18
A61K31/05
A61K36/185
A61K47/18
A61K47/22
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020506341
(86)(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071238
(87)【国際公開番号】W WO2019030158
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】17382555.5
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518428990
【氏名又は名称】エナンティア,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コメリー,アレキサンダー クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】テッソン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ヒメネス ゴンザレス,カルメン
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-505674(JP,A)
【文献】国際公開第2004/026802(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/126501(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/116349(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/049191(WO,A1)
【文献】特開2011-256175(JP,A)
【文献】He, Hongyan et al.,Zwitterionic Cocrystals of Flavonoids and Proline: Solid-State Characterization, Pharmaceutical Properties, and Pharmacokinetic Performance,Crystal Growth & Design,2016年,(2016), 16(4), 2348-2356
【文献】Veverka, Miroslav et al.,Cocrystals of quercetin: synthesis, characterization, and screening of biological activity,Monatshefte fuer Chemie,2015年,(2015), 146(1), 99-109
【文献】He, Hongyan et al.,Modulating the Dissolution and Mechanical Properties of Resveratrol by Cocrystallization,Crystal Growth & Design,2017年,(2017 ), 17(7), 3989-3996
【文献】Tilborg, Anaelle et al.,On the influence of using a zwitterionic coformer for cocrystallization: structural focus on naproxen-proline cocrystals,CrystEngComm,2013年,(2013), 15(17), 3341-3350
【文献】Shan, Ning et al.,Impact of pharmaceutical cocrystals: the effects on drug pharmacokinetics,Expert Opinion on Drug Metabolism & Toxicology,2014年,(2014), 10(9), 1255-1271
【文献】Qiao, Ning et al.,Pharmaceutical cocrystals: An overview,International Journal of Pharmaceutics,2011年,(2011), 419(1-2), 1-11
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,p.17-23,37-40,45-51,57-65
【文献】Pharm Tech Japan,2009年,Vol. 25, No.12,p.155-66
【文献】薬剤学,2010年,vol. 70, no. 3,pp.193-197
【文献】Crystal Growth & Design,2009年,Vol.9, No.6,p.2950-67
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,Vol.6, No.10,2007年01月15日,p.20-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu-K α 放射線、λ=1.5406Åにおいて5.8、11.1、及び15.8±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含むX線ディフラクトグラムを有することを特徴とする、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとL-プロリンとの共結晶;
Cu-K α 放射線、λ=1.5406Åにおいて9.1、10.7、及び18.4±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含むX線ディフラクトグラムを有することを特徴とする、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとベタインとの共結晶;
Cu-K α 放射線、λ=1.5406Åにおいて6.8、11.3、及び20.0±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含むX線ディフラクトグラムを有することを特徴とする、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとL-カルニチンとの共結晶;
Cu-K α 放射線、λ=1.5406Åにおいて5.7、11.1、及び15.7±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含むX線ディフラクトグラムを有することを特徴とする、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとDL-プロリンとの共結晶;及び
Cu-K α 放射線、λ=1.5406Åにおいて4.4、6.2、及び8.3±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含むX線ディフラクトグラムを有することを特徴とする、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールと(2S,3aS,7aS)-オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸との共結晶;
からなる群から選択される、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールと双性イオンコフォーマとの共結晶。
【請求項2】
前記共結晶が、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとL-プロリンとの共結晶であり、且つCu-Kα放射線、λ=1.5406Åにおいて7.4、11.4、及び21.2±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを前記粉末X線ディフラクトグラム中に更に含むことを特徴とする、請求項に記載の共結晶。
【請求項3】
前記共結晶が、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとベタインとの共結晶であり、且つCu-Kα放射線、λ=1.5406Åにおいて5.3及び13.0±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを前記粉末X線ディフラクトグラム中に更に含むことを特徴とする、請求項に記載の共結晶。
【請求項4】
前記共結晶が、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとL-カルニチンとの共結晶であり、且つCu-Kα放射線、λ=1.5406Åにおいて12.7、13.6、及び15.6並びにその±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを前記粉末X線ディフラクトグラム中に更に含むことを特徴とする、請求項に記載の共結晶。
【請求項5】
前記共結晶が、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとDL-プロリンとの共結晶であり、且つCu-Kα放射線、λ=1.5406Åにおいて11.4及び21.0±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを前記粉末X線ディフラクトグラム中に更に含むことを特徴とする、請求項に記載の共結晶。
【請求項6】
前記共結晶が、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールと(2S,3aS,7aS)-オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸との共結晶であり、且つCu-Kα放射線、λ=1.5406Åにおいて10.0、13.3、及び16.0±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを前記粉末X線ディフラクトグラム中に更に含むことを特徴とする、請求項に記載の共結晶。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに定義される共結晶及びCu-K α 放射線、λ=1.5406Åにおいて5.7、11.2、及び15.7±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含むX線ディフラクトグラムを有することを特徴とする、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとD-プロリンとの共結晶からなる群から選択される共結晶の調製方法であって、
前記共結晶が前記請求項1~6のいずれかに定義される共結晶である場合、
(c)2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールと双性イオンコフォーマとを有機溶媒と共にスラリー化する工程、並びに
(d)このようにして得られた共結晶を単離する工程、
を含み、
前記共結晶が前記2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとD-プロリンとの共結晶である場合、
(c)2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールと双性イオンコフォーマであるD-プロリンとを有機溶媒であるヘプタンと共にスラリー化する工程、並びに
(d)このようにして得られた共結晶を単離する工程、
を含む、方法。
【請求項8】
2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールの精製方法であって、
(e)そのような反応条件下で請求項1~のいずれかに定義された共結晶及びCu-K α 放射線、λ=1.5406Åにおいて5.7、11.2、及び15.7±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含むX線ディフラクトグラムを有することを特徴とする、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとD-プロリンとの共結晶からなる群から選択される共結晶を解離させて、2-[(1R、6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールを得る工程、並びに
(f)このようにして得られた2-[(1R、6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールを単離する工程、
を含む、方法。
【請求項9】
(c)2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールと双性イオンコフォーマとを有機溶媒と共にスラリー化する工程、並びに
(d)このようにして得られた共結晶を単離する工程、
を更に含む、請求項に記載の方法
【請求項10】
薬学的有効量の、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールと請求項1~のいずれかに定義される「薬学的に許容されるコフォーマ」との共結晶と共に、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
炎症、精神病、又は痙攣で生じる疾患又は状態の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールと、請求項1~のいずれかに定義されるコフォーマとの共結晶の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月7日に提出の欧州特許出願第17382555.5号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールと双性イオンコフォーマとの共結晶、それらの調製方法、並びにそれらの医薬品としての使用又は2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールの精製のための使用に関する。また、それらを含む組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
カンナビジオール((-)-CBD又はCBDと略される))は、CAS番号13956-29-1を有する2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールの国際一般名(Nonpropietary Name)である。カンナビジオールの構造は式(I)に対応する:
【化1】
【0004】
カンナビジオールは、大麻中で同定された少なくとも113の活性カンナビノイドの1つである。特に、CBDは、薬理学的広域スペクトル活性を有し、望ましくない向精神作用を有さないので、特に興味深いものである。CBDの毒性は非常に低く、有害作用は非常に少ないため、CBDは安全であり、ヒトにとって忍容性良好である。特に、CBDは抗炎症活性、抗精神病活性及び抗痙攣活性を有することが報告されており、油、カプセル又は舌下スプレー等の経口剤形の形態で市販されている。CBDは、ドラベ症候群、周産期仮死の治療及び移植片対宿主病の予防のためのオーファンドラッグの地位を有する。
【0005】
更に、研究者は現在、てんかん、パーキンソン病、ハンチンドン病、脊髄損傷、脳卒中、脳血管障害、リウマチ、骨粗鬆症、関節炎、神経障害性疼痛、線維筋痛症、不安、外傷性後ストレス障害、うつ病、気分障害、統合失調症、吐き気、乗り物酔い、多発性硬化症、睡眠障害、摂食障害、がん、メタボリックシンドローム、糖尿病、肥満、肝疾患、腎臓病、心臓病、緑内障、大腸炎、過敏性腸症候群、クローン病、喘息、にきび、乾癬、皮膚そう痒、及び皮膚障害の予防及び/又は治療のためにCBDを調査している。
【0006】
しかし、その水難溶性(約0.1ug/mL)及び広範な初回通過代謝のために、その経口バイオアベイラビリティは低い(ヒトでは6~33%の範囲)。特に、CBDは水不溶性であるが、ペンタン等の有機溶媒には可溶性である。また、CBDは66℃の低融点を有し、室温で無色の結晶性固体である。残念ながら、融点が低いため、高エネルギー方法工程(粉砕、圧縮、コーティングなど)の際にCBDが局所溶融する可能性があるため、医薬製剤化の際のCBDの化学的安定性には大きなリスクがある。
【0007】
更に、いくつかの分解研究により、CBDが一般的に使用される合成反応及び保管条件で傷つきやすいことが示されている。特に、強塩基性媒体の下では、空気の存在下でCBDが酸化され、酸性条件下ではCBDは環化されて、望ましくない向精神作用を有する望ましくない副生成物テトラヒドロカンナビノール(THC)が得られることが知られている。最後に、最新技術では、CBDは光反応性であることも開示されており、これは、保管時に光から保護する必要があることを意味している。
【0008】
CDBの非常に低い溶解度を克服するために、舌下投与に適したシクロデキストリン又はマルトデキストリンとの複合体が最新技術において開示されている。これらの複合体は、蒸発乾固又は共沈とそれに続く凍結乾燥によって得られ、つまり、これらの複合体は、CBDを含む医薬剤形の調製を妨げる結晶形ではないことを意味する。
【0009】
薬学的活性成分は固体形態が異なれば、異なる特性を有することができ、例えば、安定性、バイオアベイラビリティ、製剤化の容易さ、投与の容易さなどに関して特定の利点を提供することができる。いくつかの固体形態はある製剤タイプにより適しており、他の形態は他の異なる製剤により適しているため、新しい固体形態の開発により、それらを含む医薬製剤の特性を改善することができる。更に、治療的兆候に応じて、いずれかの医薬製剤が好ましくなる場合がある。
【0010】
新しい結晶形の特に望ましい改善/利点には、例えば、より良い安定性、流動性、溶解性、扱いやすさ、又は圧縮性、その製造又は製剤化を容易にするための物理化学的特性の改善、より一定した物理化学的特性で容易に入手できる吸収及び/又はバイオアベイラビリティ、製剤化の際の柔軟性の向上、又はその製剤化の容易さ、より優れた分散特性、従って、特に水性生理学的媒体に分散する場合の分散速度の向上、又は吸湿性の低減、新しい投与経路の実現が含まれる。
【0011】
従って、最新技術において公知のことから、物理化学的特性が改善された新しいCBD結晶形を見出す必要がある。
【0012】
CBDは一般に、合成経路又は大麻属の植物(カンナビス・インディカ(Cannabis indica)及びカンナビス・サティバ(Cannabis sativa)等)等の植物からの抽出方法のいずれかの、いくつかの方法によって得られる。特に、CBD抽出方法には通常、大麻植物からの1又は複数の抽出工程、続く酸形態のカンナビノイド(テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)及びカンナビジオール酸(CBDA)など)を中性カンナビノイド(THC及びCBD等)に変換する脱炭酸工程、最後に1又は複数の精製工程が含まれる。この精製方法には、蒸発工程(揮発性不純物を除去するため)、脱ろう手順(ワックス不純物を除去するため)、シリカプラグを通したろ過(極性の高い不純物を除去するため)、カラムクロマトグラフィー、結晶化、及び高真空(残留溶媒を除去するため)が含まれる。しかし、これらの方法の組み合わせは面倒で、時間がかかり、経済的ではなく、CBDを低収率でもたらす可能性がある。
【0013】
いくつかの合成方法が最新技術で開示されている。特に、これらの合成方法は、酸触媒によるフェノールのテルペニル化、例えば、(+)-p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールとオリベトールとの酸触媒縮合に基づいている。これらの反応の反応条件には、N,N-ジメチルホルムアミドジネオペンチルアセタール(非特許文献1参照);ピクリン酸、シュウ酸又はマレイン酸(非特許文献2参照);p-トルエンスルホン酸(PTSA)(特許文献1参照);BF-EtO/アルミナ(非特許文献3参照);又はZnCl(特許文献2参照)の使用が含まれる。しかし、これらの方法では、CBDが低収率で、かなりの数の望ましくない副産物(THCを含む)を含んで生じる。更に、これらの方法は複雑な精製工程も含む。特に、精製/単離工程には、カラムクロマトグラフィー技術の使用、又は分別蒸留と有機溶媒媒体からのCBDの結晶化との組み合わせの使用が含まれる。
【0014】
CBDの純度を高めるために、出発物質としてオリベトールの代わりにオリベトール酸のエステルを使用した、フェノールの上記酸触媒テルペニル化の使用が開示されている(特許文献3及び4参照)。これらの方法では、純粋なCBDを得るために、少なくとも追加の脱炭酸工程が必要となる。しかし、オリベトール酸のエステルは非常に高価であり、その使用はこの経路の費用対効果を妨げる。
【0015】
従って、最新技術において公知であることがらから、高純度及び高収率を提供する堅牢なCBD精製方法が依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第2009018389号パンフレット
【文献】国際公開第2006133941号パンフレット
【文献】国際公開第2007041167号パンフレット
【文献】国際公開第2015032519号パンフレット
【非特許文献】
【0017】
【文献】T.Petrzilkaら、「synthese und chiralitaet des(-)-cannabidiols vorlaeufige mitteilung」Helvetica Chimica Acta.1967、vol.50(2)、pp719-23
【文献】T.Petrzilkaら、「synthese von haschisch-inhaltsstoffen.4.Mitteilung」Helvetica Chimica Acta.1969、vol.52(4)、pp1102-34
【文献】Tetrahedron Letters1985、26(8)、1083
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、最新技術で言及されている高純度のCBDの調製及び医薬品としてのそれらの使用に関連する問題を克服する、CBDの共結晶を提供する。本発明者らは、本発明の共結晶が、単純で費用効果が高く、工業的に拡張可能な方法によりCBDを精製できることを発見した。
【0020】
特に、本発明の共結晶は、植物抽出法によってCBDが得られる場合と合成経路から得られる場合との両方でCBDを精製することを可能にする。実施例に示されるように、本発明の共結晶は、出発CBDが既に高純度(約98%a/a)である場合、及び出発物質として使用されるCBDが低純度(約50%w/w)の植物抽出物である場合でも99%より高い純度のCBDを提供する。
【0021】
従って、本発明の共結晶の使用は、医薬品規制当局が必要とする不純物制限仕様の厳格な基準への準拠を可能にする。それらは、CBDの精製に有用な中間体としても使用することができる。
【0022】
更に、本発明の共結晶は、CBDよりも高い融点を有する。これは、融点の上昇により、最終剤形の貯蔵中又は調製中の活性成分の局所融解による非晶質化の可能性を低減できるため有利である。従って、実施例に示されるように、本発明の共結晶、より具体的には2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールとL-プロリンとの共結晶(共結晶Form I)は、医薬品としての使用に適した安定性に優れている。
【0023】
従って、改善された特性を有するCBDの共結晶の提供は、当技術分野への貢献と考えられる。従って、本発明の第1の態様は、2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオール(CBD)と双性イオンコフォーマとの共結晶に関する。
【0024】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様で定義された共結晶の調製方法であって、(a)CBDとコフォーマとの混合物を溶媒中で湿式粉砕する工程;並びに(b)このようにして得られた共結晶を乾燥させる工程;
又は代替的に、(c)CBDとコフォーマとを有機溶媒と共にスラリー化する工程;並びに(d)このようにして得られた共結晶を単離する工程、
を含む方法に関する。
【0025】
本発明の第3の態様は、CBDの精製方法であって、(e)そのような反応条件下で本発明の第1の態様で定義された共結晶を解離させてCBDを得る工程;並びに(f)このようにして得られたCBDを単離する工程、を含む方法に関する。
【0026】
本発明の第4の態様は、薬学的有効量のCBDと本発明の第1の態様で定義される「薬学的に許容されるコフォーマ」との共結晶と共に、1又は複数の適切な許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物に関する。
【0027】
最後に、本発明の第5の態様は、医薬品として使用するための、本発明の第1の態様で定義されたCBDとコフォーマとの共結晶に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】共結晶Form Iの粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示す図である。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ度(°)を表す。
図2】共結晶Form IのTGAを示す図である。サーモグラムは、重量損失(%w/w)対温度(℃)を表す。
図3】共結晶Form IIの粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示す図である。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ度(°)を表す。
図4】共結晶Form IIIの粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示す図である。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ度(°)を表す。
図5】実施例1.1.B.2で出発物質として使用した50%w/wのCBD(サンプル1)を含むカンナビス・サティバ(Cannabis sativa)の花抽出物の1H NMRスペクトル(スペクトルA)、及び実施例1.1.B.2で得られた共結晶Form Iの解離後に回収したCBDの1H NMRスペクトル(スペクトルB)を示す図である。
図6】純粋な市販のCBDの粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)(ディフラクトグラムB)、及び実施例1.1.B.2で得られた共結晶Form Iから単離されたCBDの粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)(ディフラクトグラムA)を示す図である。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ度(°)を表す。
図7】共結晶Form IVの粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示す図である。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ度(°)を表す。
図8】共結晶Form IVのDSCを示す図である。スペクトルは、熱流(mW/mg)対温度(℃)を表す。
図9】共結晶Form Vの粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示す図である。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ度(°)を表す。
図10】共結晶Form VのDSCを示す図である。スペクトルは、熱流(mW/mg)対温度(℃)を表す。
図11】共結晶Form IのDSCを示す図である。スペクトルは、熱流(mW/mg)対温度(℃)を表す。
図12】共結晶Form VIの粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示す。スペクトルは、強度(I;カウント)対2シータ度(°)を表す。
図13】共結晶Form VIのDSCを示す図である。スペクトルは、熱流(mW/mg)対温度(℃)を表す。
【発明の詳細な説明】
【0029】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で公知の通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は以下に示すとおりであり、特に明示的に述べた定義がより広い定義を提供しない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体に一律に適用されることを意図している。
【0030】
本発明の目的のために、任意の所与の範囲は、その範囲の下限及び上限の両方の終点を含む。温度、時間等の指定された範囲及び値は、特に明記されていない限り、近似値と見なすべきである。
【0031】
本発明の目的では、用語「共結晶」は、本明細書では、室温(20~25℃)で単位格子を構成し、弱い相互作用により相互作用する少なくとも2つの異なる成分(「コフォーマ」とも呼ばれる)を有する結晶体を指す。従って、共結晶では、1つの成分が1又は複数の中性成分と共に結晶化する。共結晶は、結晶格子内に1又は複数の溶媒分子を含んでもよい。
【0032】
X線ディフラクトグラムの特徴的なピークの値が得られた場合、これらは「近似」値であると言われる。値は、X線回折計でCu-Kα放射線、λ=1.5406Åにおいて測定された、対応するリスト又は表に示されている値±0.3度(2シータ)であることを理解すべきである。
【0033】
「湿式粉砕」と「液体補助粉砕」という用語は同等であり、溶媒を数滴加えた生成物又は混合物を製粉又は粉砕する技術を指す。ニート粉砕及び液体補助粉砕は、共結晶を生成するために使用できる技術である。ニート(乾式)粉砕では、乳鉢と乳棒、ボールミル、又は振動ミルを使用して、共結晶形成剤を手作業で一緒に粉砕する。液体補助粉砕又は混練では、少量又は半化学量論量の液体(溶媒)を粉砕混合物に加える。
【0034】
本明細書で開示される「スラリー化」という用語は、化合物の懸濁液を撹拌することにより洗浄又は分散するために溶媒を使用する任意の方法を指す。
【0035】
「室温」という用語は、加熱又は冷却を行わない環境の温度を指し、一般に20℃~25℃で構成される。
【0036】
「一晩」という用語は、10時間~20時間までの時間間隔を指す。
【0037】
「モル比」という用語は、化合物の別の化合物に対する化学量論量をモル数で表すために使用される。例えば、共結晶の1つのコフォーマの他のコフォーマに対するモルでの化学量論量である。モル比はH NMRで決定できる。
【0038】
上述のように、本発明の第1の態様は、CBDとコフォーマとの共結晶を指す。
【0039】
一実施形態では、コフォーマは「薬学的に許容されるコフォーマ」である。「薬学的に許容されるコフォーマ」という用語は、医学的用途のある組成物の調製において医薬品としての使用に適したコフォーマを指す。また、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性もしくは他の問題、又は合理的な利益/リスク比に見合った合併症なしに、ヒト及び動物の組織又は臓器と接触して使用するのに適している必要がある。
【0040】
一実施形態では、コフォーマは双性イオンである。「双性イオン」という用語は、同じ分子上に存在する分離された別個の正及び負に帯電した部分を有する分子を指す。一実施形態では、双性イオンは、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは2~3個の炭素原子により分離されるように、正に帯電した窒素基と、有機双性イオン上の正に帯電した窒素基と遠位にある負に帯電した基とを含む。一実施形態では、コフォーマは、L-プロリン、ベタイン、L-カルニチン、D-プロリン、DL-プロリン、及び(2S,3aS,7aS)-オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸からなる群から選択される双性イオンである。一実施形態では、コフォーマは、L-プロリン、ベタイン、及びL-カルニチンからなる群から選択される双性イオンである。
【0041】
一実施形態では、本発明の共結晶は、Form Iとも呼ばれるCBDとL-プロリンとの共結晶である。本発明の目的では、L-プロリンは、(S)-ピロリジンカルボン酸の国際一般名(INN)であり、CAS番号147-85-3を有する。L-プロリンの構造は次のとおりである:
【化2】
【0042】
一実施形態では、本発明の共結晶Form Iは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで5.8、11、1、及び15.8±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明の共結晶Form Iは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406で7.4、11、4、及び21.2±0.3度(2シータ)に更なる特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0043】
より具体的には、本発明の共結晶Form Iは、粉末X線ディフラクトグラムにおいて、2シータ単位の度数、2θ(°)で表されるピークパターンを示すことを特徴とし、これを表1に示す。
【0044】
表1:選択されたピークのリスト(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【表1】
【0045】
本発明の共結晶Form Iは、図1のようなX線ディフラクトグラムによって更に特徴付けることができる。
【0046】
本発明の共結晶Form Iはまた、以下のH NMRスペクトル(CDOD、400MHz,δ):6.08(s,2H,ArH);5.29(s,1H);4.45(d,2H,J=14.4Hz);3.98-3.90(m,2H);3.42-3.35(m,1H);3.26-3.19(m,1H);2.94-2.87(m,1H);2.38(t,2H,J=7.2Hz);2.34-2.25(m,1H);2.24-2.08(m,2H);2.04-1.91(m,3H);1.76-1.71(m,2H);1.68(s,3H);1.64(s,3H);1.58-1.51(m,2H);1.39-1.24(m,4H);0.90(t,3H,J=7.2Hz)によって更に特徴付けることができる。
【0047】
本発明の共結晶Form Iは、図11に示されるDSC(示差走査熱量測定)分析によって更に特徴付けることもできる。共結晶Form IのDSC分析は、共結晶Form Iの融点に対応する145.3℃で開始する吸熱イベントを示し、次いで分解(デコンポジション)イベントによると思われる吸熱ピークが続く。本発明の共結晶Form Iは、142~152℃の融解範囲を有することによって更に特徴付けることもできる。
【0048】
本発明の共結晶Form Iは、熱重量分析(TGA)によって更に特徴付けることもできる。共結晶Form IのTG分析は、26.7℃~61.5℃の間に、約0.05水分子(0.20%、1つの水分子に相当する計算値は4.0%)の損失に相当する重量損失を示している。従って、TGAにより、本発明の共結晶Form Iが水和物ではないことが確認される。共結晶Form IのTGAは、融解前に有意な重量損失を示していない(図2を参照されたい)。
【0049】
純粋な市販のCBD(98.8%a/aHPLC)から調製された本発明のForm Iの共結晶は、HPLCによる測定で99%a/a以上の純度を有する。この分析で使用されるHPLC条件でコフォーマが検出されないことは注目に値する。
【0050】
本発明の共結晶Form Iは、モル比1:1(CBD:L-プロリン)である。
【0051】
一実施形態では、本発明の共結晶は、Form IIとも呼ばれるCBDとベタインとの共結晶である。本発明の目的では、ベタインは、2-トリメチルアンモニオアセテートの国際一般名(INN)であり、CAS番号107-43-7を有する。ベタインの構造は次のとおりである:
【化3】
【0052】
一実施形態では、本発明の共結晶Form IIは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで9.1、10.7、及び18.4±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明の共結晶Form IIは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで5.3及び13.0±0.3度(2シータ)に更なる特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0053】
より具体的には、本発明の共結晶Form IIは、粉末X線ディフラクトグラムにおいて、2シータ単位の度数、2θ(°)で表されるピークパターンを示すことを特徴とし、これを表2に示す。
【0054】
表2:選択されたピークのリスト(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【表2】
【0055】
本発明の共結晶Form IIは、図3のようなX線ディフラクトグラムによって更に特徴付けることができる。
【0056】
本発明の共結晶Form IIはまた、以下のH NMRスペクトル(CDOD、400MHz,δ):6.08(s,2H,ArH);5.29(s,1H);4.47-4.43(m,2H);3.95-3.90(m,1H);3.62(s,2H);3.27(s,9H);2.94-2.86(m,1H);2.38(t,2H,J=7.2 Hz);2.25-2.15(m,1H);2.04-1.96(m,1H);1.76-1.71(m,2H);1.68(s,3H);1.64(s,3H);1.59-1.51(m,2H);1.38-1.24(m,4H);0.90(t,3H,J=7.2 Hz)によって更に特徴付けることができる。
【0057】
本発明の共結晶Form IIは、DSC(示差走査熱量測定)分析によって更に特徴付けることもできる。共結晶Form IIのDSC分析は、32.0℃、79.2℃、159.0℃、及び233.0℃で開始する吸熱イベントを示している。
【0058】
純粋な市販のCBD(98.8%a/aHPLC)から調製された本発明のForm IIの共結晶は、HPLCによる測定で99%a/a以上の純度を有する。この分析で使用されるHPLC条件でコフォーマが検出されないことは注目に値する。
【0059】
本発明の共結晶Form IIは、モル比1:1(CBD:ベタイン)である。
【0060】
一実施形態では、本発明の共結晶は、Form IIIとも呼ばれるCBDとL-カルニチンとの共結晶である。本発明の目的では、L-カルニチンは、(3R)-3-ヒドロキシ-4-(トリメチルアンモニオ)ブタノエートの国際一般名(INN)であり、CAS番号541-15-1を有する。L-カルニチンの構造は次のとおりである:
【化4】
【0061】
一実施形態では、本発明の共結晶Form IIIは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで6.8、11,3、及び20.0±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明の共結晶Form IIは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで12.7、13.6、及び15.6±0.3度(2シータ)に更なる特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0062】
より具体的には、本発明の共結晶Form III は、粉末X線ディフラクトグラムにおいて、2シータ単位の度数、2θ(°)で表されるピークパターンを示すことを特徴とし、これを表3に示す。
【0063】
表3:選択されたピークのリスト(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【表3】
【0064】
本発明の共結晶Form IIIは、図4のようなX線ディフラクトグラムによって更に特徴付けることができる。
【0065】
本発明の共結晶Form IIlはまた、以下のH NMRスペクトル(CDOD、400MHz,δ):6.08(s,2H,ArH);5.29(s,1H);4.48-4.42(m,4H);3.95-3.90(m,1H);3.42-3.33(m,4H);3.22(s,18H);2.94-2.88(m,1H);2.40-2.16(m,7H);2.04-1.95(m,1H);1.76-1.71(m,2H);1.68(s,3H);1.64(s,3H);1.58-1.51(m,2H);1.39-1.24(m,4H);0.90(t,3H,J=7.2Hz)によって更に特徴付けることができる。
【0066】
本発明の共結晶Form IIIは、DSC(示差走査熱量測定)分析によって更に特徴付けることもできる。共結晶Form IIIのDSC分析は、56.4℃で開始する第1の吸熱イベント;112.7℃で開始する第2のイベント;138.7℃で開始する第3のイベント;最後に174.7℃で開始する吸熱イベントを示している。
【0067】
56.4及び112.7℃で開始する最初の2つの熱イベントは、融解イベントに対応しないことが確認された。両方のイベントの後に得られた固体は、室温まで急速に冷却した後、Form IIIに対応する。従って、これらのイベントは、水解離及び/又は脱水に対応するものである。脱水の場合、結晶形は、Form IIIと同じ単位格子サイズの脱水型になるか、又はXRPD分析の前にこの脱水型がForm IIIに変換される可能性がある。138.7℃で開始する第3のイベントは、Form IIIから別の結晶形への固体-固体変換に対応する。従って、共結晶Form IIIの融解は観察されなかった。
【0068】
純粋な市販のCBD(98.9%a/aHPLC)から調製された本発明のForm IIIの共結晶は、出発物質と同様の純度を有する。この分析で使用されるHPLC条件でコフォーマが検出されないことは注目に値する。
【0069】
本発明の共結晶Form IIIは、モル比1:2(CBD:L-カルニチン)である。
【0070】
一実施形態では、本発明の共結晶は、Form IVとも呼ばれるCBDとD-プロリンとの共結晶である。本発明の目的では、D-プロリンは、(R)-ピロリジンカルボン酸の国際一般名(INN)であり、CAS番号344-25-2を有する。D-プロリンの構造は次のとおりである:
【化5】
【0071】
一実施形態では、本発明の共結晶Form IVは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで5.7、11.2、及び15.7±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明の共結晶Form IVは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで11.5及び21.1±0.3度(2シータ)に更なる特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0072】
より具体的には、本発明の共結晶Form IVは、粉末X線ディフラクトグラムにおいて、2シータ単位の度数、2θ(°)で表されるピークパターンを示すことを特徴とし、これを表5に示す。
【0073】
表5:選択されたピークのリスト(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数1】
【0074】
本発明の共結晶Form IVは、図7のようなX線ディフラクトグラムによって更に特徴付けることができる。
【0075】
本発明の共結晶Form IVはまた、以下のH NMRスペクトル(CDOD、400MHz,δ):6.08(s,2H,ArH);5.29(s,1H);4.45(d,2H,J=14.2Hz);3.99-3.90(m,2H);3.42-3.35(m,1H);3.26-3.20(m,1H);2.94-2.86(m,1H);2.38(t,2H,J=7.7Hz);2.35-2.25(m,1H);2.24-2.08(m,2H);2.02-1.92(m,3H);1.77-1.71(m,2H);1.68(s,3H);1.64(s,3H);1.59-1.51(m,2H);1.39-1.25(m,4H);0.90(t,3H,J=7.0Hz)によって更に特徴付けることができる。
【0076】
本発明の共結晶Form IVは、図8に示されるDSC(示差走査熱量測定)分析によって更に特徴付けることもできる。共結晶Form IVのDSC分析は、共結晶Form IVの融点に対応する154.0℃で開始する吸熱イベントを示し、次いで分解(デコンポジション)イベントによると思われる吸熱ピークが続く。本発明の共結晶Form IVは、152~160℃の融解範囲を有することによって更に特徴付けることもできる。
【0077】
純粋な市販のCBD(98.6%a/aHPLC)から調製された本発明のForm IVの共結晶は、出発物質と同様の純度を有する。この分析で使用されるHPLC条件でコフォーマが検出されないことは注目に値する。
【0078】
本発明の共結晶Form IVは、モル比1:1(CBD:D-プロリン)である。
【0079】
一実施形態では、本発明の共結晶は、Form Vとも呼ばれるCBDとDL-プロリンとの共結晶である。本発明の目的では、DL-プロリンは、(rac)-ピロリジンカルボン酸の国際一般名(INN)であり、CAS番号609-36-9を有する。DL-プロリンの構造は次のとおりである:
【化6】
【0080】
一実施形態では、本発明の共結晶Form Vは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで5.7、11.1、及び15.7±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明の共結晶Form Vは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで11.4及び21.0±0.3度(2シータ)に更なる特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0081】
より具体的には、本発明の共結晶Form Vは、粉末X線ディフラクトグラムにおいて、2シータ単位の度数、2θ(°)で表されるピークパターンを示すことを特徴とし、これを表6に示す。
【0082】
表6:選択されたピークのリスト(相対強度が1%以上のピークのみを示す):
【数2】
【0083】
本発明の共結晶Form Vは、図9のようなX線ディフラクトグラムによって更に特徴付けることができる。
【0084】
本発明の共結晶Form Vはまた、以下のH NMRスペクトル(CDOD、400MHz,δ):6.08(s,2H,ArH);5.29(s,1H);4.45(d,2H,J=14.1Hz);3.99-3.90(m,2H);3.42-3.35(m,1H);3.26-3.19(m,1H);2.94-2.87(m,1H);2.38(t,2H,J=7.7Hz);2.35-2.25(m,1H);2.24-2.08(m,2H);2.02-1.92(m,3H);1.77-1.71(m,2H);1.68(s,3H);1.64(s,3H);1.59-1.51(m,2H);1.39-1.25(m,4H);0.90(t,3H,J=7.0Hz)によって更に特徴付けることができる。
【0085】
本発明の共結晶Form Vは、図10に示されるDSC(示差走査熱量測定)分析によって更に特徴付けることもできる。共結晶Form VのDSC分析は、共結晶Form Vの融点に対応する130℃で開始する吸熱イベントを示し、次いで分解(デコンポジション)イベントによると思われる吸熱ピークが続く。本発明の共結晶Form Vは、128~134℃の融解範囲を有することによって更に特徴付けることもできる。
【0086】
純粋な市販のCBD(98.6%a/aHPLC)から調製された本発明のForm Vの共結晶は、出発物質と同様の純度を有する。この分析で使用されるHPLC条件でコフォーマが検出されないことは注目に値する。
【0087】
本発明の共結晶Form Vは、モル比1:1(CBD:DL-プロリン)である。
【0088】
一実施形態では、本発明の共結晶は、Form VIとも呼ばれるCBDと(2S,3aS,7aS)-オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸との共結晶である。本発明の目的では、(2S,3aS,7aS)-オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸はCAS番号80875-98-5を有する。(2S,3aS,7aS)-オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸の構造は次のとおりである:
【化7】
【0089】
一実施形態では、本発明の共結晶Form VIは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで4.4、6.2、及び8.3±0.3度(2シータ)に特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。一実施形態では、本発明の共結晶Form Vlは、Cu-Kα放射線、λ=1.5406Åで10.0、13.3、及び16.0±0.3度(2シータ)に更なる特徴的なピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有することを特徴とする。
【0090】
より具体的には、本発明の共結晶Form Vlは、粉末X線ディフラクトグラムにおいて、2シータ単位の度数、2θ(°)で表されるピークパターンを示すことを特徴とし、これを表7に示す。
【0091】
表7:選択されたピークのリスト(相対強度が1%以上のピークのみが示されている):
【数3】
【0092】
本発明の共結晶Form VIは、図12のようなX線ディフラクトグラムによって更に特徴付けることができる。
【0093】
本発明の共結晶Form Vlはまた、以下のH NMRスペクトル(CDOD、400MHz,δ):6.08(s,2H,ArH);5.29(s,1H);4.45(d,2H,J=14.2Hz);4.01-3.91(m,2H);3.67-3.63(m,1H);2.94-2.87(m,1H);2.41-2.31(m,4H);2.27-2.15(m,1H);2.12-2.05(m,1H);2.04-1.96(m,1H);1.93-1.84(m,1H);1.81-1.61(m,11H);1.59-1.25(m,10H);0.90(t,3H,J=7.0Hz)によって更に特徴付けることができる。
【0094】
本発明の共結晶Form VIは、図13に示されるDSC(示差走査熱量測定)分析によって更に特徴付けることもできる。共結晶Form VIのDSC分析は、共結晶Form VIの融点に対応する91℃で開始する吸熱イベントを示し、次いで分解(デコンポジション)イベントによると思われる吸熱ピークが続く。本発明の共結晶Form VIは、90~100℃の融解範囲を有することによって更に特徴付けることもできる。
【0095】
純粋な市販のCBD(98.6%a/aHPLC)から調製された本発明のForm VIの共結晶は、出発物質と同様の純度を有する。この分析で使用されるHPLC条件でコフォーマが検出されないことは注目に値する。
【0096】
本発明の共結晶Form VIは、モル比1:1(CBD:(2S,3aS,7aS)-オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸)である。
【0097】
本発明の第2の態様は、上記で定義された本発明の共結晶の調製方法の提供である。本発明のCBDとコフォーマとの共結晶は、純粋な形態として、又は2つの異なる方法による混合物として調製することができる。
【0098】
従って、本発明の共結晶の調製方法は、以下を含む:(a)CBDとコフォーマとの混合物を溶媒中で湿式粉砕する工程;並びに(b)このようにして得られた共結晶を乾燥させる工程。
【0099】
一実施形態では、工程(a)は、水;(C-C)アルカン、(C-C)アルコール、(C-C)アルキル-CO-(C-C)アルキル、ハロゲン-(C-C)アルカン、(C-C)アルキル-CO-O-(C-C)アルキル、シクロ(C-C)アルカン、フェニル-(C-C)アルキル、(C-C)-CN、H-CO-N((C-C)アルキル)から選択される有機溶媒;及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒の存在下で行われる。「アルコール」という用語は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換され、明細書又は特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含む「アルカン」を指す。「アルカン」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含む、飽和した分枝又は直鎖の炭化水素を指す。例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、及びsec-ブタノールが挙げられる。「アルキル」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含む、飽和した直鎖又は分枝の炭化水素鎖を指す。例としては、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルの基が挙げられる。「ハロゲン-アルカン」という用語は、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換され、明細書又は特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含む「アルカン」を指す。ハロゲン-アルカンの例としては、クロロホルム、トリクロロエタン、及びジクロロエタンが挙げられる。シクロアルカンという用語は、明細書又は特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含む「環状」アルカンを指す。シクロアルカンという用語には、炭素環式アルカン又は複素環式アルカンが含まれる。「炭素環式」アルカンという用語は、環の各メンバー炭素原子である環状アルカンを指す。炭素環式アルカンの例としては、シクロペンタン及びシクロヘキサンが挙げられる。「複素環」アルカンという用語は、少なくとも1つの炭素原子がN、NH、O、又はS原子で置換されている「炭素環」化合物を指す。複素環式アルカンの例としては、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンが挙げられる。
【0100】
一実施形態では、工程(a)は、(C-C)アルカン、(C-C)アルコール、(C-C)アルキル-CO-(C-C)アルキル、ハロゲン-(C-C)アルカン、(C-C)アルキル-CO-O-(C-C)アルキル、シクロ(C-C)アルカン、フェニル-(C-C)アルキル、(C-C)-CN、H-CO-N((C-C)アルキル)、及びそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒の存在下で行われる。この方法は、純粋な形態で共結晶を得ることができるため、特に有利である。
【0101】
一実施形態では、工程(a)は、ヘプタン、水、アセトニトリル、メタノール、イソブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、キシレン、シクロヘキサン、及びそれらの混合物の存在下で行われる。
【0102】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form Iである場合、工程(a)は、水、アセトニトリル、メタノール、イソブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、キシレン、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中で実施される。
【0103】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form IIである場合、工程(a)は、(C-C)アルキル-CO-(C-C)アルキル、(C-C)アルキル-CO-O-(C-C)アルキル、シクロ(C-C)アルカン、フェニル-(C-C)アルキル、H-CO-N((C-C)アルキル)、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中で実施される。一実施形態では、工程(a)は、イソブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、キシレン、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒の存在下で行われる。
【0104】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form IIIである場合、工程(a)の溶媒はシクロ(C-C)アルカン及びそれらの混合物である。一実施形態では、工程(a)はシクロヘキサン及びその混合物である。
【0105】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form IVである場合、工程(a)の溶媒は(C-C12)アルカン及びそれらの混合物である。一実施形態では、工程(a)はヘプタン及びその混合物である。
【0106】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form Vである場合、工程(a)の溶媒は(C-C12)アルカン及びそれらの混合物である。一実施形態では、工程(a)はヘプタン及びその混合物である。
【0107】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form VIである場合、工程(a)の溶媒は(C-C12)アルカン及びそれらの混合物である。一実施形態では、工程(a)はヘプタン及びその混合物である。
【0108】
一実施形態では、本発明の共結晶の調製方法の工程(a)において、CBDとコフォーマとのモル比は2:1~1:2、好ましくは1:1で構成される。
【0109】
一実施形態では、工程(a)は室温で行われる。別の実施形態では、工程(a)は、振動製粉の下で、特に15Hz~60Hzで構成される、好ましくは、20~50Hzで構成される、より好ましくは25~35Hz、特に30Hzで構成される出力で行われる。
【0110】
一実施形態では、工程(b)は、このようにして得られた共結晶を室温において、好ましくは真空条件下で乾燥させる工程により行われる。一般に、真空には0.5mbar~3mbar、好ましくは、1~2mbarの圧力で構成される。
【0111】
本発明の共結晶の代替の調製方法は以下を含む:(c)CBDとコフォーマとを有機溶媒と共にスラリー化する工程;及び(d)このようにして得られた共結晶を単離する工程。
【0112】
一実施形態では、工程(c)は、(C-C)アルコール、(C-C)アルキル-CO-(C-C)アルキル、ハロゲン-(C-C)アルカン、(C-C)アルキル-CO-O-(C-C)アルキル、シクロ(C-C)アルカン、フェニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒の存在下で行われる。一実施形態では、工程(c)は、シクロヘキサン、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、ヘプタン、及びトルエンからなる群から選択される溶媒の存在下で行われる。
【0113】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form Iである場合、工程(c)は、シクロヘキサン、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、ヘプタン、及びトルエン、好ましくはシクロヘキサン及びヘプタンからなる群から選択される溶媒中で実施される。
【0114】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form IIである場合、工程(c)は、(C-C)アルコール、シクロ(C-C)アルカン、(C-C)アルカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中で実施される。一実施形態では、工程(c)は、イソプロパノール及びヘプタン、並びにそれらの混合物、好ましくはヘプタンからなる群から選択される溶媒の存在下で行われる。
【0115】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form IIIである場合、工程(c)は、シクロ(C-C)アルカン、(C-C)アルカン、及びそれらの混合物、好ましくは、シクロヘキサン及びヘプタンからなる群から選択される溶媒中で実施される。
【0116】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form IVである場合、工程(c)は、シクロ(C-C)アルカン、(C-C)アルカン、及びそれらの混合物、好ましくは、ヘプタンからなる群から選択される溶媒中で実施される。
【0117】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form Vである場合、工程(c)は、シクロ(C-C)アルカン、(C-C)アルカン、及びそれらの混合物、好ましくは、ヘプタンからなる群から選択される溶媒中で実施される。
【0118】
一実施形態では、共結晶が共結晶Form VIである場合、工程(c)は、シクロ(C-C)アルカン、(C-C)アルカン、及びそれらの混合物、好ましくは、ヘプタンからなる群から選択される溶媒中で実施される。
【0119】
一実施形態では、本発明の共結晶の調製方法の工程(c)において、CBDとコフォーマとのモル比は2:1~1:3で構成され、好ましくは1:1~1:2で構成される。特定の実施形態では、共結晶が共結晶Form Iである場合、CBDとコフォーマとのモル比は1:1である。特定の実施形態では、共結晶が共結晶Form IIである場合、CBDとコフォーマとのモル比は1:1である。特定の実施形態では、共結晶が共結晶Form IIIである場合、CBDとコフォーマとのモル比は1:2である。特定の実施形態では、共結晶が共結晶Form IVである場合、CBDとコフォーマとのモル比は1:1である。特定の実施形態では、共結晶が共結晶Form Vである場合、CBDとコフォーマとのモル比は1:1である。特定の実施形態では、共結晶が共結晶Form VIである場合、CBDとコフォーマとのモル比は1:1である。
【0120】
一実施形態では、工程(c)は室温で行われる。別の実施形態において、工程(c)は一晩撹拌下で維持される。
【0121】
一実施形態では、単離工程(d)は、例えば、ろ過、真空下でのろ過、デカンテーション及び遠心分離の操作、又は当業者に公知の他の適切な技術のうちの1又は複数によって溶媒を除去する工程を含み得る。好ましくは、工程(d)は、固体の濾過とそれに続く、好ましくは水による洗浄工程により行われる。一実施形態では、工程(d)は、単離された共結晶を乾燥させる工程を更に含み、好ましくは、共結晶は室温において好ましくは真空条件下で乾燥される。一般に、真空には0.5mbar~3mbarで構成される圧力が含まれる。
【0122】
特定の実施形態では、工程(a)、又は代替的に工程(c)の混合物は、結晶化を開始するために播種される。一実施形態では、工程(a)又は代替的に工程(c)に、本発明の共結晶、特に共結晶Form I、共結晶Form II、共結晶Form III、共結晶Form IV、共結晶Form V、及び共結晶Form VIを播種する。播種する共結晶形は、湿式粉砕過程によって得られてもよい。
【0123】
本発明の第3の態様は、CBDの精製方法であって、(e)上記の共結晶、特に共結晶Form I、Form IV、及びForm V、特に共結晶Form I及びForm Vを、CBDを得るための反応条件下で解離させる工程、並びに(f)このようにして得られたCBDを単離する工程、を含む方法に関する。
【0124】
一実施形態では、この精製方法は、工程(c)及び(d)の実施を含む本発明の第2の態様において上記で定義した方法により共結晶を調製する前記の工程を更に含む。工程(c)及び(d)について上に開示された全ての実施形態は、本発明の第3の態様のCBDの精製方法にも適用される。
【0125】
一実施形態では、工程(e)は、本発明の共結晶を水と1又は複数の水非混和性有機溶媒との混合物に溶解し、続いて二相混合物の相を分離する工程により行われる。「非混和性有機溶媒」という用語は、組み合わされると2つの相を形成する有機溶媒を指し、このようにして得られた混合物が、特定の成分濃度及び温度等の条件下で「二相性」であることを意味する。更に、「水非混和性有機溶媒」という用語は、反応が行われる温度において水と二相の相を形成できる有機溶媒を指す。本明細書で使用される場合、「二相性」という用語は、2つの非混和性液相、例えば水相と水非混和性有機溶媒相とを含む反応媒体を指す。「二相性」という用語は、このような反応媒体を使用する方法を説明するためにも使用することができる。一実施形態では、工程(e)において、水非混和性有機溶媒は、(C-C)アルカン、(C-C)アルキル-O-(C-C)アルキル、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは(C-C)アルカンである。(C-C)アルカンの例としては、とりわけ、ヘプタン、シクロヘキサン、ペンタン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0126】
単離工程(f)は、結晶化後に、蒸発乾固によって溶媒を除去する工程、又は例えば、ろ過、真空下でのろ過、デカンテーション及び遠心分離、又は当業者に公知の他の適切な技術の操作のうちの1又は複数によってCBDを単離する工程を含み得る。一実施形態では、工程(f)は、単離されたCBDを乾燥させる工程を更に含み、好ましくは、共結晶は室温において好ましくは真空条件下で乾燥される。一般に、真空には0.5mbar~3mbarで構成される圧力が含まれる。
【0127】
本発明の第4の態様は、薬学的有効量のCBDと本発明の第1の態様で定義される「薬学的に許容されるコフォーマ」との共結晶、特に共結晶Form I、Form II、Form III、Form IV、Form V、及びForm VIと共に、1又は複数の適切な許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物に関する。
【0128】
「医薬組成物」という用語は、希釈剤又は担体等の他の化学成分を含む本明細書で開示される共結晶を指す。医薬組成物は、生物への本発明の共結晶の投与を容易にする。
【0129】
「薬学的有効量」という用語は、その適用後に治療効果を提供する共結晶の量を指す。一実施形態では、「薬学的有効量の共結晶」とは、投与後に、解離した後で治療有効量のCBDを提供する共結晶の量を指す。
【0130】
「薬学的に許容される賦形剤又は担体」という用語は、液体又は固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料等の許容される材料、組成物、又はビヒクルを指す。各成分は、組成物の他の成分と適合性があるという意味で許容されなければならない。また、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性もしくは他の問題、又は合理的な利益/リスク比に見合った合併症なしに、ヒト及び動物の組織又は臓器と接触して使用するのに適している必要がある。
【0131】
本発明の組成物は、限定するものではないが、経口、局所、経皮、及び非経口組成物を含むいくつかの形態で製剤化することができる。
【0132】
一実施形態では、本発明の組成物は、限定するものではないが、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、及び希釈剤を含む経口投与に適切な賦形剤又は担体を含む経口組成物である。経口組成物は、限定するものではないが、溶液、錠剤、カプセル、顆粒、懸濁液、分散液、粉末、口内錠、濃縮物、ドロップ、エリキシル剤、エマルジョン、香錠、ペレット、及びスプレーを含むいくつかの形態で製剤化できる。一実施形態では、本発明の組成物は、ドロップ、スプレー、及びカプセルの形態である。
【0133】
本発明の組成物は、最新技術で周知の方法に従って調製することができる。適切な賦形剤及び/又は担体、並びにそれらの量は、調製される製剤のタイプに従って、当業者によって容易に決定することができる。
【0134】
本発明の第5の態様は、医薬品として使用するための上記で定義されたCBDとコフォーマとの共結晶、特にForm I、Form II、Form III、Form IV、Form V、及びForm VIに関する。一実施形態は、抗炎症剤、抗精神病剤及び抗痙攣剤としての上記で定義されたCBDの共結晶の使用を指す。この態様は、本発明の第1の態様で定義されたCBDとコフォーマとの共結晶、特に、共結晶Form I、Form II、Form III、Form IV、Form V、及びForm VIの、上記で定義された炎症、精神病、又は痙攣で生じる疾患又は状態の予防及び/又は治療用医薬品の調製のための使用としても製剤化することができる。本発明はまた、上記で定義された炎症、精神病、又は痙攣で生じる疾患又は状態に罹患している、あるいは罹患しやすい哺乳動物を予防及び/又は治療するための方法であって、有効量の本発明で定義されるCBDとコフォーマとの共結晶、特に共結晶Form I、Form II、Form III、Form IV、Form V、及びForm VIと共に、1又は複数の許容される賦形剤又は担体を前記哺乳動物に投与する工程を含む方法に関する。
【0135】
説明及び特許請求の範囲を通して、「含む」という単語及びその単語の変形は、他の技術的特徴、添加物、成分、又は工程を除外することを意図しない。更に、「含む」という言葉は、「からなる」という場合も包含する。本発明の追加の目的、利点、及び特徴は、説明を検討することにより当業者に明らかになるか、又は本発明の実施により習得することができる。以下の実施例及び図面は例示のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。図面に関連し、特許請求の範囲の中で括弧内に配置された参照符号は、特許請求の範囲の明瞭度を高めるための試みであり、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。更に、本発明は、本明細書に記載された特定の好ましい実施形態のすべての可能な組み合わせを網羅する。
【実施例
【0136】
一般事項
プロトン核磁気共鳴分析は、5mmの広帯域プローブATB1H/19F/Xを備えたVarian Mercury400MHz分光計において重溶媒中で記録した。サンプルを0.7mLの重溶媒に溶解して、スペクトルを取得した。
【0137】
X線パワー回折(XRPD)測定を、Cu Kα放射線及びPIXcel検出器を備えた反射配置の半径240mmのPANalytical X’Pert PRO θ-θ回折計で45kV及び40mAで操作して周囲条件において実施した。各サンプルをゼロバックグラウンドのシリコンホルダーに取り付け、データ収集の間に0.25回転/秒で回転させた。本発明の共結晶形については、測定角度範囲は3.0~40.0°(2θ)、ステップサイズ0.013°及び走査速度0.328°/秒(10.20秒/ステップ)であり、出発物質として使用した市販のCBD及び本発明の共結晶の解離後に得られた精製CBDについては、3.0~30.0°(2θ)でステップサイズ0.013°及び走査速度0.082°/秒(40.80秒/ステップ)であった。
【0138】
DSC分析を、Mettler Toledo DSC2で記録した。サンプル(4.0200mgの共結晶Form I、3.2500mgの共結晶Form II及び3.56mgの共結晶Form III)をピンホール蓋付きの40μLアルミニウムるつぼに量り取り、窒素下(50mL/分)において10℃/分の速度で25から300℃に加熱した。
【0139】
HPLC分析は、真空脱気装置(G1322A)、クォータナリポンプ(G1311A)、オートサンプラー(G1313A)及びVW検出器(G1314A)を備えたAgilent 1100 HPLCシステムで記録した。カラムZorbax Eclipse XDB-C18 150×4.6mm、5μmを使用した。サンプル(5mg)をメタノール(5mL)に溶解し、HPLC測定のために注入し(1μL)、均一溶媒条件(ACN:水80:20)で225nmにおいて検出器で検出した。
【0140】
熱重量分析(TGA)は、熱重量分析装置Mettler Toledo TGA/SDTA851eで記録した。サンプル(4.5290mgの共結晶Form I)を100μLのアルミナるつぼに量り取り、蓋で密閉した。蓋に、分析の直前にロボットによって自動的にパンチした。サンプルを、窒素下(50mL/分)において10℃/分で25から300℃に加熱した。
【0141】
1.1.A、1.1.B.1、1.2.、及び1.3.の節で使用した抽出方法によって得られたCBD出発物質は市販されている(CBDepot s.r.o.)。1.2.B.2.の節で出発物質として使用した約50%w/wのCBDを含むカンナビス・サティバ(Cannabis sativa)画分も市販されている(CBDepot s.r.o.)。
【0142】
1.CBDと双性イオンコフォーマとの共結晶
1.1.共結晶Form I
調製方法
A.湿式粉砕による調製
CBD(20mg、0.064mmol、98.8%a/aHPLC)、L-プロリン(7.3mg、0.064mmol、1当量)を含む2mLのエッペンドルフチューブに、2滴のアセトニトリル及び3つのステンレス鋼粉砕ボールを加え、その後Retsch Ball Mill MM400で30Hzの速度で45分間(15分の3サイクル)製粉した。真空下(約1~2mbar)で室温において乾燥後、本発明の共結晶Form Iを白色固体として得た。
【0143】
B.スラリー化による調製
B.1.高純度CBDからのスラリー化による共結晶Form Iの調製
CBD(1.00g、3.18mmol、1.5当量、98.8%a/aHPLC)とL-プロリン(244mg、2.120mmol)との混合物を含む、磁気撹拌及びN雰囲気を備えた丸底フラスコにヘプタン(20mL)を加えた。得られた混合物にCBD・L-プロリンForm Iを播種し、室温で15時間撹拌した。次いで、反応をXRPD分析によりモニターし、L-プロリンの完全な変換が観察されるまで、追加量のCBD(584mg、1.85mmol、0.87当量)を加えた。懸濁液を焼結漏斗(多孔度3)でろ過し、3×3.0mLのヘプタンで洗浄した。真空下で室温において乾燥後、本発明の共結晶Form Iを白色固体として得た(662mg、31%)。
【0144】
このようにして得られた共結晶Form Iは、図1のような粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)、図2のようなTGAを示す。このようにして得られた共結晶Form Iは、上記に開示のH NMR及びDSCスペクトルも示す。TGAは、化学量論的水和物ではないことを示している。
【0145】
B.2.Form Iの共結晶化によるカンナビス・サティバ(Cannabis sativa)花抽出物からのCBDの精製方法
共結晶Form Iの調製
カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)の花画分、50%w/wCBD(100mg、0.159理論的mmol)とL-プロリン(18.3mg、0.159mmol)との混合物を含む、磁気撹拌とN雰囲気を備えた丸底フラスコに、ヘプタン(1mL)を加えた。得られた混合物に本発明の共結晶Form Iを播種し、室温で15時間撹拌した。懸濁液を焼結漏斗(多孔度3)でろ過し、3×0.2mLのヘプタンで洗浄した。真空下で室温において乾燥後、微量のL-プロリンを含む共結晶Form Iを白色固体として得た(51mg)。
【0146】
共結晶Form IからのCBDの解離
このようにして得られた共結晶Form Iをヘプタン:水(1:1)の混合物5mLに溶解し、ヘプタン相を水で洗浄し(2×1mL)、無水NaSOで乾燥させた後、減圧及び真空下で溶媒を除去した。このようにして、CBDを白色のペースト状固体として回収した(35mg、最大収率50%からの全収率35%、99.4%a/aHPLC)。
【0147】
このようにして得られたCBDは、純粋な市販のCBDと同一の粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を図6において示している。出発物質として使用した約50%w/wのCBDを含むカンナビス・サティバ(Cannabis sativa)花抽出物と、Form Iの共結晶化から回収したCBD(実施例1.1.B.2)とのH NMRスペクトル及びHPLC分析の比較により、精製方法は優れた精製を示している(下記の第2節も参照されたい)。
【0148】
1.2.共結晶Form II
調製方法
A.湿式粉砕による調製
CBD(20mg、0.064mmol、98.8%a/aHPLC)、ベタイン(9.3mg、0.064mmol、1当量)を含む2mLのエッペンドルフチューブに、2滴のイソブチルアセテート及び3つのステンレス鋼粉砕ボールを加え、その後Retsch Ball Mill MM400で30Hzの速度で45分間(15分の3サイクル)製粉した。真空下(約1~2mbar)で室温において乾燥後、本発明の共結晶Form Ilを白色固体として得た(定量的収率)。
【0149】
B.スラリー化による調製
CBD(50mg、0.159mmol、2当量、98.8%a/aHPLC)とベタイン(9.3mg、0.080mmol)との混合物を含む、磁気撹拌及びN雰囲気を備えた密閉チューブにヘプタン(0.5mL)を加えた。得られた混合物に共結晶Form IIを播種し、室温で15時間撹拌した。懸濁液を焼結漏斗(多孔度3)でろ過し、2×0.1mLのヘプタンで洗浄した。真空下で室温において乾燥後、共結晶Form IIを白色固体として得た(34mg、50%)。
【0150】
このようにして得られた共結晶Form IIは、図3のような粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示し、更に、上記に開示のH NMR及びDSCスペクトルも示している。
【0151】
1.3.共結晶Form III
調製方法
A.湿式粉砕による調製
CBD(20mg、0.064mmol)、L-カルニチン(10.3mg、0.064mmol、1当量)を含む2mLのエッペンドルフチューブに、2滴のシクロヘキサン及び3つのステンレス鋼粉砕ボールを加え、その後Retsch Ball Mill MM400で30Hzの速度で45分間(15分の3サイクル)製粉した。真空下(約1~2mbar)で室温において乾燥後、純粋な共結晶Form IIIを白色固体として得た。
【0152】
B.スラリー化による調製
CBD(300mg、0.954mmol、98.8%a/aHPLC)とL-カルニチン(307mg、1.908mmol、2当量)との混合物を含む、磁気撹拌を備えた丸底フラスコにヘプタン(3mL)を加えた。得られた混合物に共結晶Form IIIを播種し、室温で15時間撹拌した。懸濁液を焼結漏斗(多孔度3)でろ過し、2×1.0mLのヘプタンで洗浄した。真空下で室温において乾燥後、共結晶Form IIIを白色固体として得た(483mg、80%)。
【0153】
このようにして得られた共結晶Form IIIは、図4のような粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示し、更に、上記に開示のH NMR及びDSCスペクトルも示している。
【0154】
1.4.共結晶Form IV
高純度CBDからのスラリー化による調製方法
CBD(399mg、1.269mmol、2当量、)とD-プロリン(74mg、0.643mmol)との混合物を含む、磁気撹拌及びN雰囲気を備えた円筒バイアルにヘプタン(4mL)を加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。次に、溶媒がほぼ完全に蒸発したため、ヘプタンを加えた(4mL)。懸濁液を焼結漏斗(多孔度3)でろ過し、3×0.4mLのヘプタンで洗浄した。真空下で室温において乾燥後、本発明の共結晶Form IVを白色固体として得た(264mg、48%)。
【0155】
このようにして得られた共結晶Form IVは、図7のような粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示し、更に、上記に開示のH NMR及びDSCスペクトルも示している。
【0156】
1.5.共結晶Form V
高純度CBDからのスラリー化による調製方法
CBD(399mg、1.269mmol、2当量)とDL-プロリン(74mg、0.643mmol)との混合物を含む、磁気撹拌及びN雰囲気を備えた円筒バイアルにヘプタン(4mL)を加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。次に、溶媒が部分的に蒸発したため、ヘプタンを加えた(3mL)。懸濁液を焼結漏斗(多孔度2)でろ過し、3×0.4mLのヘプタンで洗浄した。真空下で室温において乾燥後、本発明の共結晶Form Vを白色固体として得た(252mg、46%)。
【0157】
このようにして得られた共結晶Form Vは、図9のような粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)を示し、更に、上記に開示のH NMR及びDSCスペクトルも示している。
【0158】
1.5.共結晶Form VI
高純度CBDからのスラリー化による調製方法
CBD(79mg、0.251mmol、3当量)と(2S,3aS,7aS)-オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸(14mg、0.084mmol)との混合物を含む、磁気撹拌を備えた試験管にヘプタン(0.55mL)を加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。懸濁液を焼結漏斗(多孔度3)でろ過し、3×0.08mLのヘプタンで洗浄した。真空下で室温において乾燥後、本発明の共結晶Form VI((2S,3aS,7aS)-オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸の混入の可能性あり)を白色固体として得た(25.2mg、48%)。
【0159】
このようにして得られた共結晶Form Vlは、図12のような粉末X線ディフラクトグラム(XRPD)、図13のようなDSCを示す。このようにして得られた共結晶Form VIは、下記に開示のH NMRも示す。
【0160】
2.CBDの精製試験
この研究の目的は、本発明のCBDの共結晶の純度の測定、及び出発物質として使用するCBDサンプルと、共結晶Form Iの共結晶化による精製から得られたCBDとの純度の比較である。
【0161】
2.1.サンプル
サンプル1:抽出物の総重量に対して50重量%のCBDを含む市販のカンナビス・サティバ(Cannabis sativa)花抽出物。
サンプル2:CBD共結晶の調製において出発物質として使用する純粋な市販のCBD。
サンプル3:カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)花抽出物から、Form Iの共結晶化及びその後の共結晶解離工程による精製後に得られた純粋なCBD。
【0162】
2.2.方法
各サンプル(5mg)をメタノール(5mL)に溶解し、HPLC測定のために注入し(1μL)、均一溶媒条件(アセトニトリル:水80:20)で225nmにおいて検出器で検出した。
【0163】
2.3.結果
出発物質として使用したCBD(サンプル1及びサンプル2)及びサンプル1の精製後に得られたCBD(サンプル3)の純度及び不純物プロファイルを表4Aに開示する。サンプル1から調製された本発明の共結晶Form I及びForm IIの純度及び不純物プロファイルを表4Bに開示する。
【0164】
出発物質、本発明の共結晶及び本発明の共結晶の解離後に得られるCBDの純度、並びに不純物の量は、面積%で表す。
【0165】
【数4】
【0166】
上記の表に示すように、本発明の共結晶の調製は、最新技術と比較して、より手間がかからず、より安価で、より容易に拡張可能な方法で、CBD、特に粗CBDの精製を可能にする。本発明の共結晶、特に共結晶Form I及びForm IIの調製は、出発物質として使用するCBDが約50%w/wの純度を有する場合でも、出発CBDが既に高純度(約98面積%)である場合でも、CBDの精製を可能にする。
【0167】
サンプル1から得られたForm Iを二相性ヘプタン/水混合物中で解離すると、Form I(99.26%a/a)よりもわずかに純度が高く(99.66%a/a)、サンプル1(純度50重量%、98.00a/a)より大幅に純度の高いCBD(サンプル3)が、全体的な収率35%(最大収率50%からの共結晶化及び共結晶解離の工程を含む)で得られた。更に、H NMR分析は、コフォーマ及びUVにより検出不能な不純物が除去されることを示し(図5参照)、HPLC分析では、UVで検出可能な不純物も減少することを示している。実際、カンナビジバリンは0.88%a/aから検出不能な量に減少し、CBD C4アナログは0.28%a/aから0.16%a/aに減少し、XRPD分析は市販の純粋なCBDと同じ結晶形を示している(図6)。
【0168】
更に、本発明のサンプル2からの共結晶の調製は、同定された不純物の全ての量を減少させることもできる。特に、THCの量は半分に削減される。
【0169】
3.安定性試験
この研究の目的は、本発明の共結晶Form Iの安定性を評価することである。
【0170】
3.1.サンプル
1.1.B.1節に開示された方法により得られた本発明の共結晶Form I。
【0171】
3.2.方法
共結晶Form I(55mg)を、オープンバイアルに保存し、ICHガイドライン(業界向けガイダンスQ1A(R2)新規原薬及び製品の安定性試験(Stability Testing of New Drug Substances and Products)-Webサイトhttp://www.ich.org/products/guidelines/quality/quality-single/article/stability-testing-of-new-drug-substances-and-products.html、2017年8月4日に入手可能)に従って加速安定条件(40℃及び75±5%相対湿度)に曝露した。
【0172】
3.3.結果
上述の条件下で、本発明の共結晶Form Iは、少なくとも3週間安定なままであった。
【0173】
引用リスト
1 T.Petrzilkaら、「synthese und chiralitaet des(-)-cannabidiols vorlaeufige mitteilung」Helvetica Chimica Acta.1967、vol.50(2)、pp719-23。
2 T.Petrzilkaら、「synthese von haschisch-inhaltsstoffen.4.Mitteilung」Helvetica Chimica Acta.1969、vol.52(4)、pp1102-34。
3.P.G.Jonesら、「Cannabidiol」Acta Crystallographica Section B.1977、B33、p3211-3214。
4.Seung-HwaBaekら、「Boron triflouride etherate on alimina-a modified Lewis acid reagent.:An improved synthesis of cannabidiol」Tetrahedron letters.1985、vol.26(8)、pp1083-1086。
5.Q1A(R2)Stability Testing of New Drug Substances and Products)-Webサイトhttp://www.ich.org/products/guidelines/quality/quality-single/article/stability-testing-of-new-drug-substances-and-products.html、2017年8月4日に入手可能
6.国際公開第2009018389号パンフレット。
7.国際公開第2006133941号パンフレット。
8.国際公開第2007041167号パンフレット。
9.国際公開第2015032519号パンフレット。
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