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  • 特許-細胞構造体連結方法および連結補助具 図1
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  • 特許-細胞構造体連結方法および連結補助具 図7C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】細胞構造体連結方法および連結補助具
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20221202BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20221202BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20221202BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M3/00 A
C12N5/07
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020512950
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2018014891
(87)【国際公開番号】W WO2019198124
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】511155187
【氏名又は名称】株式会社サイフューズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】松林 久美香
(72)【発明者】
【氏名】岸井 保人
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/100782(WO,A1)
【文献】特表2013-529081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0342373(US,A1)
【文献】国際公開第2010/115187(WO,A1)
【文献】松林久美香ら,血管再生の最前線 1.バイオ3Dプリンタを用いた人工血管再生,最新医学,2017年,Vol.72, No.12,pp.1686-1692
【文献】松林久美香ら,細胞構造体連結による臨床利用可能な血管様細胞構造体の作製,再生医療,2015年,Vol.14, Suppl.,p.307, P-01-072
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
C12N 5/07
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に中空部を有する管状の2以上の細胞構造体を所定の期間の培養を経て成熟させて連結するための連結補助具であって、前記連結補助具は、
前記2以上の細胞構造体のそれぞれの前記中空部に挿入可能な棒状体であって、前記中空部に挿入され、前記成熟の後に前記棒状体が収縮して前記細胞構造体の内面に密着可能な外径を有する円形状の断面と、前記2以上の細胞構造体のそれぞれの長さの合計より長い全長と、を有する棒状体と、
前記棒状体を挟持して嵌合して前記棒状体に固定可能な挟持部であって、前記挟持部はアームで連結される第一嵌合部と第二嵌合部とに二分割され、前記アームは前記第一嵌合部と前記第二嵌合部とが組み合う方向に付勢力を生じる前記挟持部を有する2つの押さえ具と、を備え、
前記棒状体は酸素透過性のある材料でできていて、
前記2つの押さえ具のそれぞれの前記挟持部は、前記アームの前記付勢力により前記第一嵌合部と前記第二嵌合部とが組み合った際に前記挟持部の内径が前記棒状体の前記断面の前記外径と同じとなり、
前記2つの押さえ具のそれぞれについて、前記2以上の細胞構造体の一端同士を接触状態にして前記細胞構造体を前記棒状体に挿入したときにおける前記接触状態にない前記細胞構造体の両端部において、前記挟持部は前記第一嵌合部と前記第二嵌合部とが組み合った状態で前記細胞構造体のそれぞれの端面と少なくとも一部で接触を行う連結補助具。
【請求項2】
請求項1に記載の連結補助具であって、
前記酸素透過性のある材料はジメチルポリシロキサンである連結補助具。
【請求項3】
請求項2に記載の連結補助具であって、
前記棒状体は、前記棒状体の一端から他端まで前記棒状体の軸方向に沿って貫通して培養液が流れる管路を有する連結補助具。
【請求項4】
請求項1に記載の連結補助具であって、
前記挟持部と、前記両端部のそれぞれの前記端面との前記接触は、前記2以上の細胞構造体の前記両端部のそれぞれの全周にわたっての接触である連結補助具。
【請求項5】
内側に中空部を有する管状の2以上の細胞構造体を所定の期間の培養を経て成熟させて連結するための連結補助具であって、前記連結補助具は、
前記2以上の細胞構造体のそれぞれの前記中空部に挿入可能な棒状体であって、前記中空部に挿入された、前記成熟の後に前記棒状体が収縮して前記細胞構造体の内面に密着可能な外径を有する円形状の断面と、前記2以上の細胞構造体のそれぞれの長さの合計より長い全長と、を有する棒状体と、
前記棒状体を挟持して嵌合して前記棒状体に固定可能な挟持部であって、前記挟持部はアームで連結される第一嵌合部と第二嵌合部とに二分割され、前記アームは前記第一嵌合部と前記第二嵌合部とが組み合う方向に付勢力を生じる前記挟持部を有する押さえ具と、を備え、
前記棒状体は、前記棒状体の一端から他端まで前記棒状体の軸方向に沿って貫通して培養液が流れる管路を有し、
前記押さえ具は、前記2以上の細胞構造体の一端同士を接触状態にして前記細胞構造体を前記棒状体に挿入したときにおける前記接触状態にない両端部の一方において、その一方の端部の端面に接触する円周に沿って配置される突起を備え、
前記棒状体は酸素透過性のある材料でできていて、
前記押さえ具の前記挟持部は、前記アームの前記付勢力により第一嵌合部と前記第二嵌合部とが組み合った際に前記挟持部の内径が前記棒状体の前記断面の前記外径と同じとなり、
前記押さえ具について、前記接触状態にない前記細胞構造体の両端部の他方において、前記挟持部は前記第一嵌合部と前記第二嵌合部とが組み合った状態で前記細胞構造体の端面と少なくとも一部で接触を行う連結補助具。
【請求項6】
請求項5に記載の連結補助具であって、
前記押さえ具の前記挟持部は、前記棒状体の前記断面の前記外径と同じ内径を有する連結補助具。
【請求項7】
請求項5に記載の連結補助具であって、
前記酸素透過性のある材料はジメチルポリシロキサンである連結補助具。
【請求項8】
請求項7に記載の連結補助具であって、
前記棒状体は、前記棒状体の一端から他端まで前記棒状体の軸方向に沿って貫通して培養液が流れる管路を有する連結補助具。
【請求項9】
内側に中空部を有する管状の2以上の細胞構造体を、一端から他端まで軸方向に沿って貫通する管路を内部に有し酸素透過性のある材料でできた前記2以上の細胞構造体のそれぞれの長さの合計より長い全長を有する棒状体と押さえ具を使用して連結するための細胞構造体連結方法であって、
前記前記棒状体を挟持して嵌合して前記棒状体に固定可能な挟持部であって、前記挟持部はアームで連結される第一嵌合部と第二嵌合部とに二分割され、前記アームは前記第一嵌合部と前記第二嵌合部とが組み合う方向に付勢力を生じ、前記アームの前記付勢力により前記第一嵌合部と前記前記第二嵌合部とが組み合った際に前記挟持部の内径が前記棒状体の前記断面の前記外径と同じとなる前記挟持部をそれぞれが有する2つの押さえ具であって、
前記細胞構造体連結方法は、
前記棒状体を前記2以上の細胞構造体のそれぞれの前記中空部に挿入する挿入工程と、
前記2以上の細胞構造体の一端同士を接触状態にして前記細胞構造体を前記棒状体に挿入したときにおける前記接触状態にない側の前記細胞構造体の両端部において、前記2つの押さえ具のそれぞれの前記挟持部が前記アームの前記付勢力により前記第一嵌合部と前記前記第二嵌合部とを組み合わされて前記挟持部の内径が前記棒状体の前記断面の前記外径と同じとなった状態でその両端部の端面の少なくとも一部に接触するように前記細胞構造体を前記棒状体に固定する固定工程と、
前記棒状体の前記管路に培養液を流して所定の期間前記2以上の細胞構造体を培養して成熟させる成熟工程と、を備える細胞構造体連結方法。
【請求項10】
請求項9に記載の細胞構造体連結方法であって、
前記固定工程は、前記2以上の細胞構造体の前記接触状態にある箇所が離間したときに、再度その箇所を接触状態にして2つの押さえ具で、その両端部の端面に接触するように前記細胞構造体を前記棒状体に固定する工程と、を備える細胞構造体連結方法。
【請求項11】
請求項9に記載の細胞構造体連結方法であって、
前記成熟工程は、前記2以上の細胞構造体の前記中空部が収縮して前記中空部が前記棒状体の外周の面と密着する工程を有する細胞構造体連結方法。
【請求項12】
請求項9に記載の細胞構造体連結方法であって、
前記酸素透過性のある材料はジメチルポリシロキサンである細胞構造体連結方法。
【請求項13】
内側に中空部を有する管状の2以上の細胞構造体を、一端から他端まで軸方向に沿って貫通する管路を内部に有し酸素透過性のある材料でできた前記2以上の細胞構造体のそれぞれの長さの合計より長い全長を有する棒状体と押さえ具を使用して連結するための細胞構造体連結方法であって、前記前記棒状体を挟持して嵌合して前記棒状体に固定可能な挟持部であって、前記挟持部はアームで連結される第一嵌合部と第二嵌合部とに二分割され、前記アームは前記第一嵌合部と前記第二嵌合部とが組み合う方向に付勢力を生じ、前記アームの前記付勢力により前記第一嵌合部と前記前記第二嵌合部とが組み合った際に前記挟持部の内径が前記棒状体の前記断面の前記外径と同じとなる前記挟持部を有する押さえ具であって、
前記細胞構造体連結方法は、
前記棒状体を前記2以上の細胞構造体のそれぞれの前記中空部に挿入する挿入工程と、
前記2以上の細胞構造体の一端同士を接触状態にして前記細胞構造体を前記棒状体に挿入したときにおける前記接触状態にない側の前記細胞構造体の両端部の一方において、前記棒状体の円周に沿って配置される突起に一方の端部の端面に接触させ、他方の端部の端面において、前記押さえ具の前記挟持部が前記アームの前記付勢力により前記第一嵌合部と前記前記第二嵌合部とを組み合わされて前記挟持部の内径が前記棒状体の前記断面の前記外径と同じとなった状態で前記他方の前記端部の前記端面と少なくとも一部で接触するように前記細胞構造体を前記棒状体に固定する固定工程と、
前記棒状体の前記管路に培養液を流して所定の期間前記2以上の細胞構造体を培養して成熟させる成熟工程と、を備える細胞構造体連結方法。
【請求項14】
請求項13に記載の細胞構造体連結方法であって、
前記固定工程は、前記2以上の細胞構造体の前記接触状態にある箇所が離間したときに、再度その箇所を接触状態にして前記細胞構造体の両端部の一方において、前記棒状体の前記突起にその一方の端部の端面に接触させ、その他方の端部の端面において前記押さえ具で前記他方の端部の端面に接触するように前記細胞構造体を前記棒状体に固定する工程と、を備える細胞構造体連結方法。
【請求項15】
請求項13に記載の細胞構造体連結方法であって、
前記成熟工程は、前記2以上の細胞構造体の前記中空部が収縮して前記棒状体の外周の面と密着する工程を有する細胞構造体連結方法。
【請求項16】
請求項13に記載の細胞構造体連結方法であって、
前記酸素透過性のある材料はジメチルポリシロキサンである細胞構造体連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側に中空部を有する管状の2以上の細胞構造体を連結するための連結方法および連結補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、隣接するように接触した細胞塊同士が融合する性質を利用し、基板の法線方向に延在するように予め固定されている複数の針状体からなる支持体を利用し、複数の細胞塊が隣接するように細胞塊(スフェロイド)を立体的に積層して立体構造体を作製する手法が知られている。
【0003】
この手法では、細胞塊51を取り出してその支持体の複数の針状体の各々にそれぞれに突き刺して細胞塊が串刺しになった状態を製作する手法が開示されている。たとえば、血管用の細胞構造体5としては、針状体を管状にならべて、細胞塊51をそれぞれに穿刺させるものである。そして一定時間培養すると、図7Bのように、隣接する細胞塊51が融合して、針状体52には管状の細胞構造体5が形成される。そして、図7Cのように、細胞構造体5を針状体から抜き去ると、長さLの管状の内側に中空部を有する管状の細胞構造体5を取り出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4517125号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この手法では、管状の細胞構造体5の長さLを長くするには、針状体52の長さを長くし、それに穿刺させる細胞塊51の数を増やすことになる。しかし、針状体52の長さを長くすると針状体52の真直度、および隣接する針状体52との平行度の問題が生じ、または製造上の問題から、針状体52の長さを長くする手法には限界がある。
【0006】
このため、針状体52の長さを長くすること無く、細胞構造体5の長さLを長くできる方法および装置が求められる。
【0007】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、容易に細胞構造体5の長さLを長くできる方法および連結補助具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
内側に中空部を有する管状の2以上の細胞構造体を所定の期間の培養を経て成熟させて連結するための連結補助具であって、前記連結補助具は、前記2以上の細胞構造体のそれぞれの前記中空部に挿入可能な棒状体であって、前記中空部に挿入され、前記成熟の後に前記棒状体が収縮して前記細胞構造体の内面に密着可能な外径を有する円形状の断面と、前記2以上の細胞構造体のそれぞれの長さの合計より長い全長と、を有する棒状体と、前記棒状体を挟持して嵌合して前記棒状体に固定可能な挟持部を有する2つの押さえ具と、を備え、前記棒状体は酸素透過性のある材料でできていて、前記2つの押さえ具のそれぞれは、前記2以上の細胞構造体の一端同士を接触状態にして前記細胞構造体を前記棒状体に挿入したときにおける前記接触状態にない前記細胞構造体の両端部において、前記挟持部はその両端部のそれぞれの端面と接触を行う連結補助具により解決する。
【0009】
内側に中空部を有する管状の2以上の細胞構造体を所定の期間の培養を経て成熟させて連結するための連結補助具であって、前記連結補助具は、前記2以上の細胞構造体のそれぞれの前記中空部に挿入可能な棒状体であって、前記中空部に挿入された、前記成熟の後に前記棒状体が収縮して前記細胞構造体の内面に密着可能な外径を有する円形状の断面と、前記2以上の細胞構造体のそれぞれの長さの合計より長い全長と、を有する棒状体と、前記棒状体を挟持して嵌合して前記棒状体に固定可能な挟持部を有する押さえ具と、を備え、前記棒状体は、前記棒状体の一端から他端まで前記棒状体の軸方向に沿って貫通して培養液が流れる管路を有し、前記押さえ具は、前記2以上の細胞構造体の一端同士を接触状態にして前記細胞構造体を前記棒状体に挿入したときにおける前記接触状態にない両端部の一方において、その一方の端部の端面に接触する円周に沿って配置される突起を備え、前記棒状体は酸素透過性のある材料でできていて、前記押さえ具は、前記接触状態にない前記細胞構造体の両端部の他方において、その他方の端部の端面に接触する連結補助具により解決する。
【0010】
内側に中空部を有する管状の2以上の細胞構造体を、一端から他端まで軸方向に沿って貫通する管路を内部に有し酸素透過性のある材料でできた前記2以上の細胞構造体のそれぞれの長さの合計より長い全長を有する棒状体で連結するための細胞構造体連結方法であって、前記棒状体を前記2以上の細胞構造体のそれぞれの前記中空部に挿入する挿入工程と、前記2以上の細胞構造体の一端同士を接触状態にして前記細胞構造体を前記棒状体に挿入したときにおける前記接触状態にない側の前記細胞構造体の両端部において、前記棒状体を挟持して嵌合して前記棒状体に固定可能な挟持部を有し前記棒状体の断面の外径とほぼ同じ内径を有する2つの押さえ具で、その両端部の端面に接触するように前記細胞構造体を前記棒状体に固定する固定工程と、前記棒状体の前記管路に培養液を流して所定の期間前記2以上の細胞構造体を培養して成熟させる成熟工程と、を備える細胞構造体連結方法により解決する。
【0011】
内側に中空部を有する管状の2以上の細胞構造体を、一端から他端まで軸方向に沿って貫通する管路を内部に有し酸素透過性のある材料でできた前記2以上の細胞構造体のそれぞれの長さの合計より長い全長を有する棒状体で連結するための細胞構造体連結方法であって、前記棒状体を前記2以上の細胞構造体のそれぞれの前記中空部に挿入する挿入工程と、前記2以上の細胞構造体の一端同士を接触状態にして前記細胞構造体を前記棒状体に挿入したときにおける前記接触状態にない側の前記細胞構造体の両端部の一方において、前記棒状体の円周に沿って配置される突起に一方の端部の端面に接触させ、他方の端部の端面において、前記棒状体を挟持して嵌合して前記棒状体に固定可能な挟持部を有し前記棒状体の断面の外径とほぼ同じ内径を有する押さえ具で、前記他方の端部の端面に接触するように前記細胞構造体を前記棒状体に固定する固定工程と、前記棒状体の前記管路に培養液を流して所定の期間前記2以上の細胞構造体を培養して成熟させる成熟工程と、を備える細胞構造体連結方法により、解決する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の連結方法および連結補助具によれば、長い細胞構造体を製造する場合において、短い細胞構造体を複数作って連結することにより製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1における細胞構造体の連結補助具と、連結方法を示した図である。
図2】本発明の実施の形態1における細胞構造体の連結補助具と、連結方法であって、細胞構造体が縮んだ状態を示した図である。
図3】本発明の細胞構造体の連結補助具の押さえ具の一の実施の形態を示した図である。
図4】本発明の細胞構造体の連結補助具の押さえ具の一の実施の形態を示した図である。
図5】本発明における細胞構造体を連結する際に連結補助具を取り付けた細胞構造体を取り付ける培養装置を示した図である。
図6】本発明の実施の形態2における細胞構造体の連結補助具と、連結方法を示した図である。
図7A】細胞構造体を形成する工程において、細胞塊を針状体に穿刺した状態を示した模式図である。
図7B】細胞構造体を形成する工程において、隣接した細胞塊が融合して細胞構造体が形成された状態を示した模式図である。
図7C】細胞構造体を形成する工程において、形成された細胞構造体を針状体から抜き去る上程を示した状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
まず、本発明の細胞構造体5の連結方法とそれを実現する連結補助具1の実施の形態1について図1から図4を用いて説明する。図1は、2つの細胞構造体5が取り付けられている連結補助具1を示している。図2は、2つの細胞構造体5の接合面が離間して隙間6ができた状態を示している。図3は、連結補助具1を構成する押さえ具3の一実施の形態を示した図である。図3の左側の図は細胞構造体5の軸方向から見た図であり、図3の右側の図は図3の左側と直交する方向から見た図である。図4は、連結補助具1を構成する押さえ具3の他の実施の形態を示した図である。
【0015】
連結補助具1は、棒状体2と、押さえ具3と、を備えている。細胞構造体5は、たとえば図7Aから図7Cおよび前記のとおりの工程で形成されたもので、細胞構造体5の内側に、断面の円形状の中空部を有する管状の構造をしている。ここで、細胞構造体5aと細胞構造体5bとを準備して、それらを連結するものである。この明細書では、細胞構造体5a,5bの内径をRとする。
【0016】
棒状体2は、断面が円の細長い円筒状の部材である。棒状体2の外径はRである。細胞構造体5a,5bを連結するための工程で、棒状体2を細胞構造体5a,5bに挿入すると、細胞構造体5a,5bの内径は棒状体2の外径Rより若干大きい。しかし、細胞構造体5a,5bの内径は、培養した状態での時間の経過にしたがって細胞構造体5a,5bを構成する細胞が成熟する過程で徐々に収縮する性質があるので、棒状体2は、培養した状態で時間が経過すると細胞構造体5a,5bと棒状体2との間に隙間無くぴったりと細胞構造体5a,5bに挿嵌された状態となる。その内部には、棒状体2の一端から他端までに至る棒状体2の長手方向の軸方向に沿って貫通するような管路2aを有する。棒状体2の長さは、棒状体2は、少なくとも細胞構造体5aと細胞構造体5bとを合わせた長さの合計よりも長い。すなわち、棒状体2を細胞構造体5aと細胞構造体5bとの中空部に挿嵌した際に、細胞構造体5aの一端と細胞構造体5bの一端とを接触状態にしても、連結された細胞構造体5aと細胞構造体5bの両端には棒状体2が一定量露出される程度の長さがある。棒状体2の先端2bは細胞構造体5aの中空部が挿入しやすいようにテーパ形状になっている。
【0017】
棒状体2は、管路2aと棒状体2の外表面との間に酸素透過性を有するような構造を有している。たとえば、管路2aと棒状体2の外表面との間に酸素透過用の小さい貫通孔を配置させてもよい。また、酸素透過用の小さい貫通孔を配置させることなく、ジメチルポリシロキサン(PDMS)のような酸素透過性の或る材料としてもよい。酸素が溶解した培養液を管路2a内に導入することで、その培養液の通過において、酸素が棒状体2の外表面に至って細胞構造体5aの全長にわたって、細胞構造体5aが内面から酸素を受け入れることができる。
【0018】
押さえ具3は、挟持部31と、握り部32とを有している。挟持部31は棒状体2を挟持して嵌合して棒状体2に固定可能である。挟持部31は、嵌合部31a(第一嵌合部)と嵌合部31b(第二嵌合部)とに二分割されていて、嵌合部31aと嵌合部31bとが組み合ったときに内周の径がRの円形状となる。挟持部31の嵌合部31aと嵌合部31bのそれぞれは、握り部32のアーム32aとアーム32bとに接続されている。握り部32はバネ部33を有していて、アーム32aとアーム32bとが広がって嵌合部31aと嵌合部31bとが組み合って、内周が半径Rの円形状を構成するように、握り部32を付勢している。この状態では、嵌合部31aと嵌合部31bとが棒状体2の外周を挟持するとともに、棒状体2に嵌りこむ(図3の実線の状態)。アーム32aとアーム32bとが狭めて、握り部32の付勢方向と反対方向に力を加えることで、嵌合部31aと嵌合部31bとが二分割されて、嵌合部31aと嵌合部31bとが棒状体2を挟持した状態から解除される(図3の一点鎖線)。
【0019】
図3に示すように、嵌合部31aと嵌合部31bとが棒状体2を挟持した状態では、細胞構造体5a,細胞構造体5bの端部の端面7に嵌合部31aと嵌合部31bが閉じ、挟持部31の側面8が接触する。この状態では、細胞構造体5a,細胞構造体5bが棒状体2の上で移動しないように、押さえ具3が細胞構造体5a,細胞構造体5bの両端で規制する。このとき、押さえ具3は、理想的には、図3に示すように、挟持部31の側面8と、細胞構造体5a,5bの両端部のそれぞれの端面7とが、端面7の全周にわたって接触する構造となっている。特に、押さえ具3の挟持部31の側面8が平面であることが好ましい。これにより、培養が進行した状態において、細胞構造体5a,5bの両端部のそれぞれの端面7の平面度が高くなる。ただし、挟持部31の側面8と、細胞構造体5a,5bの両端部のそれぞれの端面7とが、端面7の全周にわたって接触しなくても、少なくとも一部と接触する構造となっていて、細胞構造体5a,細胞構造体5bの端部が棒状体2の上で移動しないように、押さえ具3が細胞構造体5a,細胞構造体5bの両端で規制することができる限り、細胞構造体5a,5bの連結に必要な効果を奏する。また、押さえ具3のアーム32a,32bをピンセットで広げたり狭めたりできるように、アーム32a,32bにピンセットの先端2bを挿入可能な挿入孔34a,34bを、アーム32a,32bのそれぞれに配置することができる(図4)。
【0020】
続いて、連結補助具1を用いて、細胞構造体5a,細胞構造体5bを如何に連結させるかについて、実施の形態1における細胞構造体連結方法を説明する。まず、棒状体2を、細胞構造体5a,細胞構造体5bを、細胞構造体5a,細胞構造体5bの中空部に挿入する(挿入工程)。続いて、細胞構造体5aと細胞構造体5bとの対向する一端同士の間に隙間6がないように接触状態にする。この状態で、接触状態にない細胞構造体5aと細胞構造体5bの両端部において、棒状体2を2つの押さえ具3a,3bで挟持して、押さえ具3aと押さえ具3bとを棒状体2に嵌合させる。このとき、2つの押さえ具3a,3bは、2つの押さえ具3a,3bのそれぞれの側面8が、細胞構造体5a,5bの両端部の端面7に接触して、細胞構造体5a,5bの接触状態にある端面に細胞構造体5a,5bのそれぞれが相対的に互いに近づく方向に押圧力がかかるような位置で、棒状体2を2つの押さえ具3a,3bで挟持して細胞構造体5a,5bを固定する(固定工程)。
【0021】
この状態で、酸素を透過した培養液を棒状体2の管路2a内を通して、細胞構造体5a,5bの内外を培養液に浸して所定の期間培養して成熟させる(成熟工程)。図5を参照して、成熟工程において、細胞構造体5a,5bに挿入された棒状体2に培養液を供給する例として、培養維持装置41を使用する例を説明する。図5は培養維持装置41の概略図である。培養維持装置41は、密閉された培養チャンバ43からなり、内部は培養液43aで満たされている。培養チャンバ43は、培養チャンバ43の内部に導入する第一入口46dおよび第二入口47dと、その培養液43aを培養チャンバ43から排出する第一出口46cおよび第二出口47cとを備える。また、培養維持装置41は、第一出口46cからポンプ44を経由して第一入口46dに流体的に連通する第一管路46と、第二出口47cからポンプ44を経由して第二入口47dに流体的に連通する第二管路47とを備えている。第二入口47d、第一出口46c、第二出口47cは、開放端部であり、第一入口46dにはアダプタを介して棒状体2が取り付けられる。
【0022】
培養液43aは、第一管路46と第二管路47の内部をポンプ44の駆動力で還流する。培養液43aで満たされた培養チャンバ43を始点にみると、培養液43aは第一出口46cから第一管路46bに流れ出てポンプ44に向かう。また、培養液43aは第二出口47cから第二管路47bに流れ出てポンプ44に向かう。その後、ポンプ44にて必要な栄養と酸素が供給された培養液43aは、ポンプ44の駆動力で、第一管路46aから第一入口46dを経て培養チャンバ43に戻る。また、第二管路47aから第二入口47dを経て培養チャンバ43に戻る。第一管路46は主に棒状体2の内部の貫通管路を通って、細胞構造体5a,5bの内部に培養液43aを供給するためのものである。また、第二管路47は主に細胞構造体5a,5bの外部に培養液43aを行き渡らせるためのものである。培養液43aを所定の期間、培養維持装置41内で循環させることにより、細胞構造体5a,5bが培養されて成熟する。
【0023】
成熟工程の進行とともに、細胞構造体5a,5bは棒状体2の軸方向に縮むため、細胞構造体5a,5bの接触状態にある端面に押圧力が減少し、場合によってはその接触状態にあった端面が離間して隙間6を生じることがある。その際には、2つの押さえ具3a,3bのそれぞれの距離を近づけて、再度、離間した隙間6を接触状態にして、細胞構造体5a,5bの接触状態にある端面に押圧力が維持されるような位置で、再度、2つの押さえ具3a,3bで棒状体2を圧接挟持させる。
【0024】
所定期間の培養を経て細胞構造体5a,5bの細胞が成熟する成熟工程の完了により、細胞構造体5a,5bの接触状態にある箇所の細胞が融合して、細胞構造体5a,5bが連結する。
【0025】
(実施の形態2)
続いて、本発明の細胞構造体5の連結方法とそれを実現する連結補助具1の実施の形態2について図6を用いて説明する。実施の形態1では、2つの押さえ具3a,3bを使用した。実施の形態2の連結補助具4では、棒状体2と1つの押さえ具3とを使用して、細胞構造体5a,5bを連結させる点で異なっている。以下、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点について説明する。図6は本発明の実施の形態2における細胞構造体の連結補助具4と、連結方法を示した図である。
【0026】
実施の形態2の棒状体2には、テーパを施した棒状体2の先端2bと反対側の端部付近に突起2cが配置されている。突起2cは、その端部付近に棒状体2の円周に沿って、棒状体2の半径方向に突出して配置される鍔形状を有している。半径方向の距離は、細胞構造体5a,細胞構造体5bの厚さより厚く、細胞構造体5aの端部を突起2cに突き当てることが可能である。その他の点では、棒状体2は実施の形態1と同じである。実施の形態2の押さえ具3は、図3および図4に示すように、実施の形態1と全く同じである。ただし、実施の形態1では2つの押さえ具3a,3bが必要であるが、実施の形態2では1つの押さえ具3のみが使用される。
【0027】
続いて、連結補助具4を用いて、細胞構造体5a,細胞構造体5bを如何に連結させるか、実施の形態2における細胞構造体連結方法について説明する。まず、棒状体2を細胞構造体5a,細胞構造体5bを、細胞構造体5a,細胞構造体5の中空部に挿入する(挿入工程)。そして、細胞構造体5aと細胞構造体5bとの対向する一端同士の間に隙間6がないように接触状態にする。この時、細胞構造体5aの端面が突起2cに突き当たるようにする。細胞構造体5aと細胞構造体5bとの対向する一端同士の間に隙間がないように接触状態にする工程と、細胞構造体5aの端面が突起2cに突き当たるようにする工程の順序は問わない。
【0028】
細胞構造体5aの端面が突起2cに突き当たった状態で、接触状態にない細胞構造体5bの端部において、棒状体2を押さえ具3で挟持して押さえ具3を棒状体2に嵌合させる。このとき、押さえ具3は、その側面が細胞構造体5bの端部の端面に接触して、細胞構造体5bの接触状態にある端面に細胞構造体5a,5bのそれぞれが相対的に互いに近づく方向に押圧力がかかるような位置で、棒状体2を押さえ具3で挟持して細胞構造体5a,5bを固定する(固定工程)。そうすると、押さえ具3と反対側にある細胞構造体5aの端面が突起2cに突き当たって押圧される。この結果、接触状態にある細胞構造体5a,5bの端面が圧接される。
【0029】
この状態で、酸素を透過した培養液を棒状体2の管路2a内を通して、細胞構造体5a,5bの内外を培養液に浸して所定の期間培養して成熟させる(成熟工程)。成熟工程は実施の形態1の図5に示した装置と同様の装置で行う。その成熟工程の進行とともに、細胞構造体5a,5bは棒状体2の軸方向に縮むため、細胞構造体5a,5bの接触状態にある端面に押圧力が減少し、場合によってはその接触状態にあった端面が離間して隙間6を生じることがある。その際には、実施の形態1と同じように、押さえ具3を突起2cの方向に近づけて、再度、離間した隙間6を接触状態にして、細胞構造体5a,5bの接触状態にある端面に押圧力が維持されるような位置で、再度、押さえ具3で棒状体2を圧接挟持させる。
【0030】
所定の期間の培養を経て細胞構造体5a,5bの細胞が成熟する成熟工程の完了により、細胞構造体5a,5bの接触状態にある箇所の細胞が融合して、細胞構造体5a,5bが連結する。
【符号の説明】
【0031】
1,4 連結補助具
2 棒状体
3 押さえ具
5 細胞構造体
6 隙間
2c 突起
31 挟持部
31a,31b 嵌合部
32 握り部
32a,32b アーム
33 バネ部
34a,34b 挿入孔
41 培養維持装置
43 培養チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C