(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】身体搬送車
(51)【国際特許分類】
A61G 1/02 20060101AFI20221202BHJP
A61G 1/017 20060101ALI20221202BHJP
A61G 5/06 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
A61G1/02
A61G1/017
A61G5/06
(21)【出願番号】P 2021110659
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】521293431
【氏名又は名称】株式会社明石発動機工作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104640
【氏名又は名称】西村 陽一
(72)【発明者】
【氏名】前林 清和
(72)【発明者】
【氏名】田中 綾子
(72)【発明者】
【氏名】金井 清
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-000662(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101283944(CN,A)
【文献】特開2004-097419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/02,5/06
B62B 5/02,9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送者の下半身を載せる固定載置台と、
頭部側を起こすことができるように回動可能に前記固定載置台に連結された、被搬送者の上半身を載せる可動載置台と、
前記可動載置台を起こす方向に付勢する付勢手段と、
前記可動載置台を任意の角度に保持する保持手段と、
前記保持手段による前記可動載置台の保持を解除する保持解除手段と、
前記固定載置台に
近接した状態で設けられた固定側無限軌道と、
前記可動載置台に
近接した状態で設けられた可動側無限軌道と、
前記固定載置台に設けられた走行用車輪と
を備え、
前記走行用車輪の接地位置が前記固定側無限軌道の接地位置より低く設定されていることを特徴とする身体搬送車。
【請求項2】
前記可動載置台には、操作フレームが取り付けられており、
前記保持解除手段を操作する操作部が前記操作フレームに配設されている請求項1に記載の身体搬送車。
【請求項3】
前記操作フレームは、前記可動載置台に対する取付角度を変更可能に前記可動載置台に取り付けられている請求項2に記載の身体搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病人や高齢者等の歩行困難な人を、階段を使って階下に搬送する際に使用する身体搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の身体搬送車としては、例えば、特許文献1に開示された患者搬送車がある。この患者搬送車は、
図14に示すように、患者を寝かせるベッド51と、このベッド51の前端部及び後端部にそれぞれ取り付けられた前輪52及び後輪53と、ベッド51の両端部に連設された押手部54、54と、ベッド51における前輪52と後輪53との間に配設された無限軌道55とを備えており、廊下等の平坦面を移動する際に無限軌道55が接地しないように、無限軌道55の接地位置が前輪52及び後輪53の接地位置よりも僅かに高く設定されている。
【0003】
従って、廊下等の平坦面では、無限軌道55が移動抵抗とはならず、
図15に示すように、押手部54を握って押すと、前輪52及び後輪53が回転することで円滑に移動させることができる。一方、階段では、
図16に示すように、無限軌道55が階段の複数の段鼻(踏面の先端部分)SNに接触することで、ベッド51が大きく浮き沈みすることがなく、しかも、無限軌道55がブレーキの役割を果たすため、各段の段鼻SNを結ぶ線に沿って、適切な速度で安全に階段を下りることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した患者搬送車は、被搬送者を寝かせた状態で階段を下りるので、被搬送者が恐怖心を抱き難いといった利点があるが、その全長が2mを超える長さになるので、踊り場で180°向きを変える折り返し階段の場合、踊り場で患者搬送車を方向転換するのが難しく、円滑に階段を下りることができないといった問題がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、被搬送者を寝かせた状態で階段を下りることができ、しかも、階段の踊り場での方向転換を円滑かつ容易に行うことができる身体搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、被搬送者の下半身を載せる固定載置台と、頭部側を起こすことができるように回動可能に前記固定載置台に連結された、被搬送者の上半身を載せる可動載置台と、前記可動載置台を起こす方向に付勢する付勢手段と、前記可動載置台を任意の角度に保持する保持手段と、前記保持手段による前記可動載置台の保持を解除する保持解除手段と、前記固定載置台に近接した状態で設けられた固定側無限軌道と、前記可動載置台に近接した状態で設けられた可動側無限軌道と、前記固定載置台に設けられた走行用車輪とを備え、前記走行用車輪の接地位置が前記固定側無限軌道の接地位置より低く設定されていることを特徴とする身体搬送車を提供するものである。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の身体搬送車において、前記可動載置台には、操作フレームが取り付けられており、前記保持解除手段を操作する操作部が前記操作フレームに配設されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の身体搬送車において、前記操作フレームは、前記可動載置台に対する取付角度を変更可能に前記可動載置台に取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、請求項1に係る発明の身体搬送車は、被搬送者の身体の上半身を載せる可動載置台が、その頭部側を起こすことができるように、被搬送者の下半身を載せる固定載置台に回動可能に連結されており、可動載置台を起こす方向に付勢する付勢手段と、可動載置台を任意の角度に保持する保持手段と、保持手段による可動載置台の保持を解除する保持解除手段とを備えているので、階段を下りる際は、可動載置台を倒して被搬送者を寝かせた状態に保持し、階段の踊り場では、可動載置台を起こして全長を短くした状態に保持して方向転換した後、再度、可動載置台を倒して被搬送者を寝かせた状態で階段を下りればよい。
【0011】
特に、可動載置台を起こす際は、保持解除手段による可動載置台の保持を解除することで付勢手段の付勢力によって可動載置台が起き上がるので、可動載置台が適正な角度まで起き上がったときに、保持手段によってその角度に保持すればよく、また、可動載置台を倒すときは、保持解除手段による可動載置台の保持を解除して搬送者が可動載置台の頭部側に体重をかけて所定角度まで押し下げ、保持手段によってその角度に保持すればよいので、腕力のない搬送者であっても可動載置台の起倒作業を容易に行うことができ、階段から踊り場への身体搬送車の移行、踊り場での身体搬送車の方向転換及び踊り場から階段への身体搬送車の移行といった一連の動作を円滑かつ容易に行うことができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明の身体搬送車は、可動載置台に操作フレームが取り付けられており、保持解除手段を操作する操作部が操作フレームに配設されているので、保持解除手段の操作部によって保持解除操作を行いながら、操作フレームを介して可動載置台の起倒作業を行うことができるので、可動載置台の起倒作業性に優れている。
【0013】
また、請求項3に係る発明の身体搬送車は、可動載置台に対する操作フレームの取付角度を変更することができるので、搬送者の体格に応じた最適位置に操作フレームを設定することができ、身体搬送車の操作性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明に係る身体搬送車の一実施形態を示す斜視図である。
【
図6】同上の身体搬送車からシートマット、バックマット及びヘッドレストを取り外した状態を示す平面図である。
【
図7】同上の身体搬送車からシートマット、バックマット及びヘッドレストを取り外すと共に可動載置台を倒した状態を示す底面図である。
【
図8】(a)は
図4のY-Y線に沿った断面図、(b)は(a)の状態から可動載置台を倒してフラットにした同上の身体搬送車を
図4のY-Y線の位置で切断した断面図、(c)は(a)の状態から可動載置台を起こした同上の身体搬送車を
図4のY-Y線の位置で切断した断面図である。
【
図9】(a)は同上の身体搬送車を折り畳んだ状態を示す側面図、(b)は同上の折り畳んだ状態の身体搬送車を
図4のY-Y線の位置で切断した断面図である。
【
図10】(a)~(c)は同上の身体搬送車の廊下搬送動作を示す動作説明図である。
【
図11】(a)~(c)は同上の身体搬送車の階段搬送動作を示す動作説明図である。
【
図12】(a)~(c)は同上の身体搬送車の踊り場搬送動作から階段搬送動作を示す動作説明図である。
【
図13】(a)~(c)は同上の身体搬送車の階段搬送動作から廊下搬送動作を示す動作説明図である。
【
図14】従来の身体搬送車である患者搬送車を示す側面図である。
【
図15】同上の患者搬送車による廊下搬送状態を示す側面図である。
【
図16】同上の患者搬送車による階段搬送状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1~
図7に示すように、この身体搬送車1は、被搬送者の下半身を載せる固定載置台2と、頭部側を起こすことができるように回動可能に固定載置台2に連結された、被搬送者の上半身を載せる可動載置台3と、この可動載置台3の頭部側の端部に回動可能に取り付けられた門形の操作フレーム4と、可動載置台3を起こす方向に付勢するロック機構付きガススプリングユニット5と、固定載置台2に設けられた左右一対の固定側無限軌道6と、可動載置台3に設けられた左右一対の可動側無限軌道7と、固定載置台2に設けられた車輪8とを備えている。
【0016】
前記固定載置台2は、金属製のシートフレーム11及びこのシートフレーム11に取り付けられた、クッション性を有するシートマット12を、前記可動載置台3は、金属製のバックフレーム13及びこのバックフレーム13に取り付けられた、クッション性を有するバックマット16及びヘッドレスト17をそれぞれ備えており、可動載置台3は、バックフレーム13の下端部(前端部)が固定載置台2のシートフレーム11の後端部に回動可能に軸支されている。
【0017】
前記操作フレーム4は、握り部が横方向に延びる主ハンドル18と、主ハンドル18の両側部にそれぞれ連設された握り部が縦方向に延びる左右一対の補助ハンドル19とを備えており、門形の操作フレーム4の下端部がバックフレーム13の上端部に回動可能に軸支されている。
【0018】
操作フレーム4を支持しているバックフレーム13の支持部14には、回動軸を中心とした同心円上に一定角度間隔で複数の穴15が形成されており、支持部14に形成されたいずれかの穴15と操作フレーム4の先端部に形成された穴(図示せず)との双方に固定ピン20を差し込むことで、操作フレーム4を複数の回動角度に段階的に保持することができるようになっている。従って、操作フレーム4の回動角度を適宜変更することによって、この身体搬送車1を走行させる搬送者の体格等に応じて握り部の高さ位置を調整することができる。
【0019】
前記ガススプリングユニット5は、圧縮空気や圧縮窒素ガス等の加圧ガスと潤滑液としての油液とが封入された一対のシリンダ21と、各シリンダ21から延出する、ロック開放ピンが挿通されたピストンロッド22と、ピストンロッド22を任意の位置に保持またはその保持を解除するロック機構とを備えており、ピストンロッド22は、シリンダ21内の加圧ガスによって常時延出方向に付勢されている。
【0020】
前記シリンダ21の閉塞側端部がブラケット23を介してシートフレーム11の左右方向の中央部に、ピストンロッド22の延出側の端部がブラケット24を介してバックフレーム13の左右方向の中央部にそれぞれ支持されており、ピストンロッド22が延出することで、バックフレーム13が起こされるようになっている。
【0021】
前記ロック機構は、操作ワイヤ25を介してロック開放ピンを進退操作する操作レバー26を備えており、この操作レバー26を操作してロック開放ピンを進退させることで、延出方向に付勢されているピストンロッド22を任意の位置に保持またはその保持を解除することができるようになっている。
【0022】
前記操作レバー26及び操作ワイヤ25は2組用意されており、一方の操作レバー26は操作フレーム4の主ハンドル18に、他方の操作レバー26は一方の補助ハンドル19にそれぞれ取り付けられている。従って、搬送者が主ハンドル18または補助ハンドル19のいずれの握り部を握っていても、その握り部を持ち変えることなく、ピストンロッド22の保持操作または保持解除操作を行うことができ、操作性に優れている。
【0023】
一対の固定側無限軌道6は、固定載置台2のシートフレーム11の両側部の下側にそれぞれ取り付けられており、シートフレーム11の後端部から中間部まで延びている。一対の可動側無限軌道7は、その前端部が左右一対の固定側無限軌道6の後端部の内側にそれぞれ隣接するように、可動載置台3のバックフレーム13の下側にそれぞれ取り付けられており、バックフレーム13の後方まで延びている。なお、固定側無限軌道6及び可動側無限軌道7は、例えば、各無限軌道を構成する各無端ベルトにテンションが生じるように、前後に配置されたプーリーの軸間距離を調整することで、走行時にブレーキの役割を果たすようになっている。
【0024】
前記車輪8は、バックフレーム13の左右一対の回動軸におけるバックフレーム13の外方への突出部分にそれぞれ回転可能に支持された左右一対の大径の後輪27と、シートフレーム11の前後方向における固定側無限軌道6の前端部に対応する位置においてシートフレーム11の左右方向の中央部に取り付けられた中間輪28と、シートフレーム11の前端部における左右のコーナ部にそれぞれ取り付けられた左右一対の前輪29とから構成されており、廊下等の平坦面を移送する際は、左右一対の後輪27及び中間輪28が走行用車輪となるように、即ち、前輪29や固定側無限軌道6が接地しないように、後輪27及び中間輪28の接地位置が、前輪29や固定側無限軌道6の接地位置よりも数mm程度低く設定されている。
【0025】
以上のように構成された身体搬送車1は、例えば、
図8(a)に示すように、可動載置台3をある程度起こした状態で、搬送者がガススプリングユニット5のロック機構の操作レバー26を操作してピストンロッド22の保持を解除し、下方側に体重をかけて操作フレーム4を押し下げると、シリンダ21内の加圧ガスの付勢力に抗してピストンロッド22がシリンダ21内に押し込まれて可動載置台3が倒れるので、例えば、同図(b)に示すように、可動載置台3をフラットな状態まで倒して操作レバー26の操作を解除すると、可動載置台3がその状態に保持され、被搬送者を完全に寝かせた状態で搬送することができる。
【0026】
一方、同図(a)または同図(b)に示す状態で、搬送者がガススプリングユニット5のロック機構の操作レバー26を操作してピストンロッド22の保持を解除すると、シリンダ21内の加圧ガスの付勢力によってピストンロッド22が延出して可動載置台3が起こされるので、例えば、同図(c)に示すように、可動載置台3が必要な角度まで起き上がったときに操作レバー26の操作を解除すると、可動載置台3がその角度に保持され、全長を短くすることができる。
【0027】
また、可動載置台3に対して操作フレーム4を最も起こした状態に固定し、操作レバー26を操作してピストンロッド22の保持を解除すると、可動載置台3を、最大、
図9(a)、(b)に示す状態まで回動させることができるので、この最大回動状態で操作レバー26の操作を解除することで、身体搬送車1を折り畳んだ状態に保持することができる。従って、この身体搬送車1を用いて被搬送者を階下に搬送し終えた後に、次の被搬送者を階下に搬送するために、この身体搬送車1を階上に持ち運ぶ際、折り畳んだ状態で持ち運ぶことができるので使い勝手が良い。
【0028】
以下、この身体搬送車1を用いて被搬送者を階上から階段の踊り場を経由して階下に搬送する方法について説明する。まず、
図10(a)に示すように、固定載置台2に対して可動載置台3を少し起こした状態に保持した身体搬送車1に被搬送者(図示省略)を載せ、搬送者Cが補助ハンドル19を握って身体搬送車1を押しながら廊下CDを階段の方向に移送する。このとき、上述したように、走行用車輪である左右一対の後輪27及び中間輪28だけが廊下面に接地しており、前輪29及び固定側無限軌道6は廊下面から僅かに浮いた状態になっているので、固定側無限軌道6が移動抵抗になることがなく、身体搬送車1を円滑に走行させることができる。
【0029】
同図(b)に示すように、前輪29が廊下面と面一の下り階段の最上段の段鼻SNを超えた後、中間輪28が下り階段の最上段の段鼻SNを超える手前で身体搬送車1の走行を停止させ、搬送者Cが補助ハンドル19から主ハンドル18に持ち替えて操作レバー26を操作してピストンロッド22の保持を解除し、下方側に体重をかけて操作フレーム4を押し下げることで、同図(c)に示すように、可動載置台3をフラットな状態まで倒して操作レバー26の操作を解除して被搬送者を完全に寝かせた状態に保持する。
【0030】
このように被搬送者を完全に寝かせた状態で可動載置台3側を持ち上げながら、
図11(a)に示すように、固定側無限軌道6及び可動側無限軌道7を階段の複数の段鼻SNに接触させるようにして階段を下りていく。このとき、上述したように、後輪27及び中間輪28の接地位置と、前輪29や固定側無限軌道6(可動側無限軌道7)の接地位置との差が数mm程度であるので、固定載置台2及び可動載置台3が大きく浮き沈みすることがなく、しかも、固定側無限軌道6及び可動側無限軌道7がブレーキの役割を果たすため、各段の段鼻SNを結ぶ線に沿って、適切な速度で安全に階段を下りることができる。
【0031】
同図(b)に示すように、身体搬送車1の前輪29が踊り場LSに当接すると、同図(c)に示すように、可動側無限軌道7が階段の複数の段鼻SNに接触する状態を維持するように、操作レバー26を操作することによって、固定載置台2に対して可動載置台3を徐々に起こしながら、後輪27及び中間輪28が踊り場LSに接地するまで階段を下りていく。
【0032】
身体搬送車1の後輪27及び中間輪28が踊り場LSに接地すると、
図12(a)に示すように、搬送者Cが主ハンドル18から補助ハンドル19に持ち替えて操作レバー26を操作することにより、固定載置台2に対して可動載置台3をさらに起こして、身体搬送車1の全長を短くする。
【0033】
続いて、身体搬送車1を、その前側が下り階段を向くように、踊り場LSで方向転換する。このとき、上述したように、可動載置台3を起こすことで、身体搬送車1の全長が短くなっているので、踊り場LSが狭くても、容易に方向転換を行うことができる。
【0034】
そして、同図(b)に示すように、前輪29が踊り場面と面一の下り階段の最上段の段鼻SNを超えた後、中間輪28が下り階段の最上段の段鼻SNを超える手前で身体搬送車1の移動を停止させ、以降は、上階の廊下CDから踊り場LSまで階段を下りていく場合と同様の動作を行いながら、後輪27及び中間輪28が階下の廊下CDに接地するまで階段を下りていき、階下の廊下CDを目的地まで移送する(
図12(c)、
図13(a)~(c)参照)。
【0035】
このようにして被搬送者の搬送が完了した後、次の被搬送者を搬送しなければならない場合は、
図9に示すように、折り畳んだ身体搬送車1を手に持って、階下から階上に階段を上っていき、次の被搬送者の搬送作業を行う。
【0036】
以上のように、この身体搬送車1は、操作レバー26を操作してピストンロッド22の保持を解除するだけで可動載置台3が起き上がるので、可動載置台3が適正な角度まで起き上がったときに、操作レバー26の操作を解除することでその角度に保持すればよく、また、可動載置台3を倒すときは、操作レバー26を操作してピストンロッド22の保持を解除して搬送者が可動載置台3の頭部側に体重をかけて所定角度まで押し下げ、操作レバー26の操作を解除することでその角度に保持すればよいので、腕力のない搬送者であっても可動載置台3の起倒作業を容易に行うことができ、階段CDから踊り場LSへの身体搬送車1の移行、踊り場LSでの身体搬送車1の方向転換及び踊り場LSから階段への身体搬送車1の移行といった一連の動作を円滑かつ容易に行うことができる。
【0037】
また、この身体搬送車1は、主ハンドル18及び補助ハンドル19を有する操作フレーム4が可動載置台3に取り付けられており、操作レバー26が主ハンドル18及び補助ハンドル19にそれぞれ配設されているので、主ハンドル18または補助ハンドル19を握っている搬送者がそれぞれの操作レバー26によって保持解除操作を行いながら、操作フレーム4を介して可動載置台3の起倒作業を行うことができ、可動載置台3の起倒作業性に優れている。
【0038】
また、この身体搬送車1は、可動載置台3に取り付けられた操作フレーム4の回動角度を適宜変更することによって、搬送者の体格等に応じて主ハンドル18や補助ハンドル19の高さ位置を調整することができるので、操作性に優れている。
【0039】
なお、上述した実施形態では、可動載置台3を起こす方向に付勢するロック機構付きガススプリングユニット5を採用しているが、これに限定されるものではなく、可動載置台3を起こす方向に付勢する付勢手段と、可動載置台3を任意の角度に保持する保持手段と、保持手段による可動載置台3の保持を解除する保持解除手段とを備えていればよく、例えば、可動載置台3を起こす方向に付勢するコイルバネと、そのコイルバネを任意の圧縮状態に保持またはその保持を解除するロック機構とを設けることも可能である。
【0040】
また、上述した実施形態では、走行用車輪である後輪27及び中間輪28以外に、最初に踊り場LSに当接する前輪29を備えているが、これに限定されるものではなく、前輪29に代えて、踊り場に当接した状態で身体搬送車1を前後方向に滑らすことができる摺接部材を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、病人や高齢者等の歩行困難な人を、階段を使って階下に搬送する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 身体搬送車
2 固定載置台
3 可動載置台
4 操作フレーム
5 ガススプリングユニット(付勢手段、保持手段、保持解除手段)
6 固定側無限軌道
7 可動側無限軌道
8 車輪
11 シートフレーム
12 シートマット
13 バックフレーム
14 支持部
15 穴
16 バックマット
17 ヘッドレスト
18 主ハンドル
19 補助ハンドル
20 固定ピン
21 シリンダ
22 ピストンロッド
23 ブラケット
24 ブラケット
25 操作ワイヤ
26 操作レバー
27 後輪(走行用車輪)
28 中間輪(走行用車輪)
29 前輪
【要約】
【課題】被搬送者を寝かせた状態で階段を下りることができ、しかも、階段の踊り場での方向転換を円滑かつ容易に行うことができる身体搬送車を提供する。
【解決手段】被搬送者の下半身を載せる固定載置台2と、頭部側を起こすことができるように回動可能に固定載置台2に連結された、被搬送者の上半身を載せる可動載置台3と、この可動載置台3の頭部側の端部に回動可能に取り付けられた門形の操作フレーム4と、可動載置台3を起こす方向に付勢するロック機構付きガススプリングユニット5と、固定載置台2に設けられた左右一対の固定側無限軌道6と、可動載置台3に設けられた左右一対の可動側無限軌道7と、固定載置台2に設けられた、走行用車輪である後輪27及び中間輪28と前輪29とからなる車輪8とを備えており、固定載置台2に対して可動載置台3を所定の角度範囲内で任意の角度に保持することができるようになっている。
【選択図】
図8